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特許7081255蛍光体含有シリコーンゴム成形体及びその製造方法並びに蛍光体含有シリコーンゴム成形体を含む発光装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】蛍光体含有シリコーンゴム成形体及びその製造方法並びに蛍光体含有シリコーンゴム成形体を含む発光装置
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20220531BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20220531BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20220531BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20220531BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
B32B27/00 101
C09K11/08 G
B32B27/20 Z
H01L33/50
G02B5/20
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018058547
(22)【出願日】2018-03-26
(65)【公開番号】P2019166813
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松井 純
(72)【発明者】
【氏名】澤井 泰徳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀次
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆信
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-151418(JP,A)
【文献】特開2007-045102(JP,A)
【文献】特開2007-099835(JP,A)
【文献】特開2007-103494(JP,A)
【文献】特開2007-036030(JP,A)
【文献】特開平09-207275(JP,A)
【文献】特開2014-138999(JP,A)
【文献】特開2016-064598(JP,A)
【文献】特開2015-008266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンゴムシートの少なくとも片面に薄膜層を備え、蛍光体を含有するシリコーンゴム成形体であって、
JIS K6253-3:2012に基づいて測定される前記シリコーンゴムシートのタイプAデュロメータ硬さが1~50であり、かつ、前記蛍光体含有シリコーンゴム成形体の薄膜層を備えた側の表面の粘着力が、接触圧2.16kgf/cm、圧着速度10mm/秒、接触時間10秒、剥離速度10mm/秒の条件で測定したプローブタック強度において50~180gfであることを特徴とする蛍光体含有シリコーンゴム成形体。
【請求項2】
前記薄膜層が、アルケニル基及びアルキル基を有するシリコーン樹脂を含む、請求項1に記載の蛍光体含有シリコーンゴム成形体。
【請求項3】
前記薄膜層が、アルケニル基を有するシリコーン樹脂(a)及びアルキル基を有するシリコーン樹脂(b)を含む、請求項1又は2に記載の蛍光体含有シリコーンゴム成形体。
【請求項4】
前記シリコーンゴムシートが蛍光体を含有し、その含有量が、シリコーンゴムシートを構成する樹脂成分100質量部に対し0.01~80質量部である、請求項1~3のいずれか1項に記載の蛍光体含有シリコーンゴム成形体。
【請求項5】
前記薄膜層の表面に保護フィルムを有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の蛍光体含有シリコーンゴム成形体。
【請求項6】
前記保護フィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムである、請求項5に記載の蛍光体含有シリコーンゴム成形体。
【請求項7】
前記シリコーンゴムシートの少なくとも片面に薄膜層を形成する工程を備え、該薄膜層を形成する工程を、前記保護フィルムに形成された薄膜層を該シリコーンゴムシートに転写することにより行うことを特徴とする、請求項5又は6に記載の蛍光体含有シリコーンゴム成形体の製造方法。
【請求項8】
前記薄膜層を形成する工程後に、前記蛍光体含有シリコーンゴム成形体から前記保護フィルムを剥離する工程を備える、請求項7に記載の蛍光体含有シリコーンゴム成形体の製造方法。
【請求項9】
発光装置に用いる、請求項1~6のいずれか1項に記載の蛍光体含有シリコーンゴム成形体。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか1項に記載の蛍光体含有シリコーンゴム成形体を含む発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、発光ダイオード(LED)の発光の一部又は全部を波長変換することにより白色又はその他の色を発する発光装置の構成部材として使用する際の追従性に優れ、かつ、保護フィルムに対する剥離性が改良された蛍光体を含有するシリコーンゴム成形体及びその製造方法に関し、より詳しくは、シリコーンゴムシート表面の粘着力が適宜調整された蛍光体含有シリコーンゴム成形体及びその製造方法に関する。
本発明はまた、この蛍光体含有シリコーンゴム成形体を含む発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、シリコーンゴム成形体は、耐熱性、耐候性、電気絶縁性に優れていることから、電子機器又は液晶関連機器等の分野において、ゴム本来の弾性、高い摩擦係数及び柔らかな触感が望まれる部品の構成材料に利用されており、具体的には、クッション材、スペーサ、滑り止め、パッキング材、タッチパネルの表面材等に、例えばシート状の形態のものが適用される。
【0003】
このように、多くの用途があるシリコーンゴム成形体は、装着される機器の小型・軽量化の要請及び製造コスト低減の要請に応じて、様々な機器を密着・接着固定させるための部品となることが多い。
【0004】
シリコーンゴム成形体を用いて様々な機器を密着・接着固定する場合、シリコーンゴム成形体は各部品に対する追従性が求められる。また、シリコーンゴム成形体は通常、使用されるまで保護フィルムで保護されているが、この保護フィルムに対する易剥離性も求められる。
【0005】
例えば、特許文献1には、仮着用支持体の表面に極性基を含有するオルガノポリシロキサンの薄膜層を重ねて接着し、この薄膜層に未架橋状態のシリコーンゴムを重ねた状態で架橋することにより薄膜層を一体に接着した架橋シリコーンゴム成形体を形成し、次いで架橋シリコーンゴム成形体から仮着用支持体を剥離することによりシリコーンゴム成形体表面の極性を高めることからなるシリコーンゴム成形体の表面処理方法が開示されている。
【0006】
一方、前述の多数用途の中でも、携帯電話のテンキー照明やバックライト、液晶ディスプレイのバックライト、車のヘッドライト、車載照明、或いは一般照明用途に、その高輝度、高発光効率、低消費電力、高寿命の特徴を活かして、LEDが幅広く使用されている。
【0007】
LEDを用いて液晶ディスプレイのバックライトや一般照明用の白色光を得るためには、LEDチップと、その発光波長に適したLEDの発光を波長変換する蛍光体とを組み合わせて用いる必要がある。例えば、青色LEDでは、黄色蛍光体を組み合わせ、更に光の演色性を高めるために、赤及び緑の蛍光体を組み合わせることが行われている。また、更に演色性を高めるために、近紫外LEDに、赤、緑、及び青の蛍光体を組み合わせることが行われている。
【0008】
従来、LEDに対して蛍光体を配置する方法としては、リードフレームパッケージ(Pkg)やチップオンボード(COB)基板において、LEDを封止する封止樹脂(エポキシ樹脂やシリコーン樹脂等)に予め所定量の蛍光体を添加、混練し、ディスペンサーで封止する方法が採用されてきた。しかし、この方法では、封止部内で蛍光体の含有量のバラつきが生じやすく、白色LED発光装置とした場合に、装置間での発光色のバラつきが問題であった。
【0009】
そこで、近年、予め波長変換部材として蛍光体を含有した成形体を作成し、本部材をLED素子へと載置する方法が用いられるようになってきた。具体的には、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂に予め所定量の蛍光体を添加、混練した樹脂組成物を、シートやキャップ状に成形し、PkgやCOBに直接又は他の構成部材を介して配置する方法である。この方法であれば、蛍光体の含有量のバラつきが少なく、色度のバラつきの少ない白色光を得ることが可能である。また、蛍光体配置部をLEDから離すこともでき、LEDの発熱による蛍光体の特性低下も防止される。
【0010】
この方法で用いられる蛍光体含有シートにおいて、LEDの高輝度化に伴い、シート基材となる樹脂としては、耐熱性、耐光性が高いシリコーン樹脂が用いられるようになってきている。
例えば、特許文献2には、ポリオルガノシロキサンおよび蛍光体を含有する蛍光体含有シリコーンシートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2004-250487号公報
【文献】特開2015-008266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献2に開示された方法で得られる蛍光体含有シリコーンシートは、シート厚み、蛍光体の分散が均等な高品質蛍光体含有シリコーンシートを得ることを目的としており、例えば、PkgやCOBに直接又は空間を介して配置する際の表面凹凸や装置構成部品に対する追従性や、保護フィルムに対する剥離性に関しては改良の余地があり、装置の構成によっては、作業性に問題が発生する場合があった。
【0013】
このような問題対しては、特許文献1に開示された方法で得られるシリコーンゴム基材接着フィルムであっても、近年の小型部品・機器を密着固定用には追従性が不十分な場合がある。加えて、特許文献1に開示された方法は、架橋シリコーンゴムから仮着用支持体を剥離した際に、該シリコーンゴム層の表面に極性の高い処理面を形成し、そこに種々の接着剤を確実に接着させることを目的としており、仮着用支持体を剥離してそのまま使用することを前提としたものではないため、仮着用支持体とシリコーンゴム層を剥離する際の剥離性に乏しい場合があり、作業性に問題が発生する場合があった。
【0014】
そこで、本発明は、シリコーンゴムシートの少なくとも片面に薄膜層を備えた蛍光体含有シリコーンゴム成形体に関し、発光特性を有し、各発光装置部品への追従性と保護フィルムに対する剥離性を同時に高めることができ、それでいて扱い易い、新たな成形体を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者等は、上述した課題を解決すべく鋭意検討したところ、シリコーンゴムシートと薄膜層を備えた蛍光体含有シリコーンゴム成形体において、シリコーンゴムシートの硬さと薄膜層側の表面粘着力を特定の範囲とすることにより、発光特性を有し、追従性と保護フィルムに対する剥離性を同時に高めることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0017】
[1] シリコーンゴムシートの少なくとも片面に薄膜層を備え、蛍光体を含有するシリコーンゴム成形体であって、JIS K6253-3:2012に基づいて測定される前記シリコーンゴムシートのタイプAデュロメータ硬さが1~50であり、かつ、前記蛍光体含有シリコーンゴム成形体の薄膜層を備えた側の表面の粘着力が、接触圧2.16kgf/cm、圧着速度10mm/秒、接触時間10秒、剥離速度10mm/秒の条件で測定したプローブタック強度において50~180gfであることを特徴とする蛍光体含有シリコーンゴム成形体。
【0018】
[2] 前記薄膜層が、アルケニル基及びアルキル基を有するシリコーン樹脂を含む、[1]に記載の蛍光体含有シリコーンゴム成形体。
【0019】
[3] 前記薄膜層は、アルケニル基を有するシリコーン樹脂(a)及びアルキル基を有するシリコーン樹脂(b)を含む、[1]又は[2]に記載の蛍光体含有シリコーンゴム成形体。
【0020】
[4]前記シリコーンゴムシートが蛍光体を含有し、その含有量が、シリコーンゴムシートを構成する樹脂成分100質量部に対し0.01~80質量部である、[1]~[3]のいずれかに記載の蛍光体含有シリコーンゴム成形体。
【0021】
[5] 前記薄膜層の表面に保護フィルムを有する、[1]~[4]のいずれかに記載の蛍光体含有シリコーンゴム成形体。
【0022】
[6] 前記保護フィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムである、[5]に記載の蛍光体含有シリコーンゴム成形体。
【0023】
[7] 前記シリコーンゴムシートの少なくとも片面に薄膜層を形成する工程を備え、該薄膜層を形成する工程を、前記保護フィルムに形成された薄膜層を該シリコーンゴムシートに転写することにより行うことを特徴とする、[5]又は[6]に記載の蛍光体含有シリコーンゴム成形体の製造方法。
【0024】
[8] 前記薄膜層を形成する工程後に、前記蛍光体含有シリコーンゴム成形体から前記保護フィルムを剥離する工程を備える、[7]に記載の蛍光体含有シリコーンゴム成形体の製造方法。
【0025】
[9] 発光装置に用いる、[1]~[6]のいずれかに記載の蛍光体含有シリコーンゴム成形体。
[10] [1]~[4]のいずれかに記載の蛍光体含有シリコーンゴム成形体を含む発光装置
【発明の効果】
【0026】
本発明が提案する蛍光体含有シリコーンゴム成形体は、JIS K6253-3:2012に基づいて測定される前記シリコーンゴムシートのタイプAデュロメータ硬さが1~50であり、かつ、前記蛍光体含有シリコーンゴム成形体の薄膜層を備えた側の粘着力が、接触圧2.16kgf/cm、圧着速度10mm/秒、接触時間10秒、剥離速度10mm/秒の条件で測定したプローブタック強度において50~180gfであるため、部品に対する追従性と保護フィルムからの剥離性の両方を優れたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】シリコーンゴム成形体の一例である。
図2】プローブタックテスターを用いた粘着力の測定方法を示す概略図である。
図3】Pkg型発光装置の一例を示す模式的断面図である。
図4】COB型発光装置の一例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0029】
本発明の蛍光体含有シリコーンゴム成形体(「本成形体」と称することがある)は、シリコーンゴムシート(「本シリコーンゴムシート」と称することがある)と薄膜層とを備えた成形体である。
【0030】
[蛍光体含有シリコーンゴム成形体]
本成形体は、シリコーンゴムシートの少なくとも片面に薄膜層を備え、蛍光体を含有するものである。薄膜層を設ける方法は特に限定されず、従来公知の方法を採用すればよいが、例えば、シリコーンゴムシートに塗布して設ける方法や、後述する基材フィルムから転写する転写法により設けることができる。工程の簡便性や保護フィルムを積層した形でのハンドリング性等の観点から、転写法によることが好ましい。
【0031】
<シリコーンゴムシート>
本発明のシリコーンゴムシートは、JIS K6253-3:2012に基づいて測定されるタイプAデュロメータ硬さが1~50である。硬さが1以上であることにより、本シリコーンゴムシートに、取扱い性及び保護フィルムに対する剥離性を付与することができる。かかる観点から、硬さは5以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましい。一方、硬さが50以下であれば、PkgやCOB等に直接又は他の構成部材を介して配置する際の表面凹凸や装置構成部品等に対する追従性及び密着性を付与することができる。かかる観点から、硬さは40以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましい。
【0032】
本発明のシリコーンゴムシートに用いるシリコーンゴムは、特に限定されるものではないが、例えば、下記式(1)で示されるシロキサン骨格を有するシリコーンエラストマー樹脂が好ましく使用でき、これを硬化してシリコーンゴムシートとすることが好ましい。下記式(1)において、式中のRの全てがメチル基であるポリジメチルシロキサンが好ましく、その他に、メチル基の一部が他のアルキル基、ビニル基、フェニル基、フルオロアルキル基等の1種又は2種以上と置換された各種ポリジメチルシロキサンを適宜選択することができる。
【0033】
【化1】
【0034】
シリコーンエラストマー樹脂を硬化する手段は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用できる。例えば、硬化触媒を添加する方法、高温加熱する方法、架橋剤を添加する方法、そして放射線照射による架橋方法等が挙げられ、中でも、タイプAデュロメータ硬さを1~50の範囲に調整しやすいという観点から、放射線照射による方法を採用することが好ましい。
シリコーンゴムシートのタイプAデュロメータ硬さを1~50に調整する方法としては、例えば、放射線の照射量を調整する方法、シリコーンゴムに配合する蛍光体の充填量を調整する方法、シリコーンゴムに補強材として配合するシリカ等のフィラーの充填量を調整する方法、原料のシリコーンエラストマー樹脂の種類を適宜選択する方法、具体的には、フェニル基を有する樹脂を採用しフェニル基の含有量を調整する方法等が好ましく挙げられるが、上述したように、放射線照射量を調整する方法が簡便でより好ましい。
【0035】
本発明で用いるシリコーンエラストマー樹脂の重量平均分子量は、通常10000~700000であり、分類からすればシリコーンオイルと呼ばれる低分子量のものも使用することができる。ただし、シリコーンエラストマー樹脂の重量平均分子量が小さい場合(例えば、液状シリコーン)は、シリコーンエラストマー樹脂に蛍光体を混練した際に、蛍光体が沈降しやすく、シート化する際にシート内で含有量のバラつきが生じる可能性があるため、未架橋時の粘度がある程度高い、重量平均分子量として400000~700000程度のミラブル型シリコーンエラストマー樹脂を使用することが好ましい。
【0036】
さらに、上記シリコーンエラストマー樹脂は、フュームドシリカ、沈殿シリカ、ケイソウ土、石英粉等の補強性充填剤や各種加工助剤、耐熱性向上剤等の他、エラストマーとしての機能性を持たせる各種添加剤を含有していてもよい。この機能性添加剤としては、難燃性付与剤、放熱性フィラー、導電性フィラー等が挙げられる。
【0037】
本シリコーンゴムシートの厚さは、30μm以上2000μm以下であることが好ましい。シリコーンゴムシートの厚さが30μm以上であることにより、クッション性や追従性を発揮しやすいため好ましい。一方、2000μm以下であることにより、厚み精度のよいシリコーンゴムシートとなりやすく好ましい。かかる観点から、シリコーンゴムシートの厚さは、より好ましくは50μm以上、さらに好ましくは100μm以上であり、より好ましくは1000μm以下、さらに好ましくは500μm以下である。
【0038】
また、後述するように、本シリコーンゴムシートは蛍光体を含有することが好ましく、その含有量が、シリコーンゴムシートを構成する樹脂成分100質量部に対し0.01~80質量部であることが好ましい。このような範囲で蛍光体を含有することで、シートを成形した際の厚みが適切な範囲になりやすく、例えば、本成形体を用いた発光装置の色度のバラつきを抑制しやすくなり好ましい。蛍光体含有量は、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上、特に好ましくは3質量部以上であり、より好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは60質量部以下、特に好ましくは50質量部以下である。
【0039】
<薄膜層>
薄膜層としては、付加型シリコーン樹脂、縮合型シリコーン樹脂、UV硬化型シリコーン樹脂等のシリコーン樹脂であって、塗布後、加熱あるいはUV照射等で架橋被膜を形成するものや、前述のシリコーンゴムシート架橋時に同時に架橋被膜を形成するもの等が挙げられる。中でも、前述のシリコーンゴムシートと親和性を有し、また、保護フィルムに対する剥離性を向上させる観点から、アルケニル基及びアルキル基を有するシリコーン樹脂を含むことが好ましい。アルケニル基及びアルキル基を有するシリコーン樹脂としては、官能基としてアルケニル基及びアルキル基の両方を含むシリコーン樹脂を1種類用いてもよいし、官能基としてアルケニル基を有するシリコーン樹脂(a)とアルキル基を有するシリコーン樹脂(b)をそれぞれ別々に含むことも好ましい。本発明においては、薄膜層は、アルケニル基を有するシリコーン樹脂(a)とアルキル基を有するシリコーン樹脂(b)を両方含むことがより好ましい。
【0040】
アルケニル基を有するシリコーン樹脂(a)としては、ジオルガノポリシロキサンが好ましく、例えば、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(例えば、ジメチルシロキサン単位96モル%、メチルヘキセニルシロキサン単位4モル%)、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(例えば、ジメチルシロキサン単位97モル%、メチルヘキセニルシロキサン単位3モル%)、分子鎖両末端ジメチルヘキセニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(例えば、ジメチルシロキサン単位95モル%、メチルヘキセニルシロキサン単位5モル%)等が挙げられる。
【0041】
アルキル基を有するシリコーン樹脂(b)としては、オルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましく、例えば、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体等が挙げられる。
【0042】
アルケニル基を有するシリコーン樹脂(a)とアルキル基を有するシリコーン樹脂(b)を併用する場合は、その含有質量比率(b)/(a)が、20/80~80/20であることが好ましい。当該比率が上記範囲であることにより、シリコーンゴムシートの保護フィルムに対する剥離性をより良好にすることができる。かかる観点から、含有質量比率は、25/75~75/25であることがより好ましく、30/70~70/30であることがさらに好ましい。
【0043】
本発明で好適に使用し得るシリコーン樹脂(a)、シリコーン樹脂(b)の具体例としては、信越化学工業(株)製のKS-774、KS-775、KS-778、KS-779H、KS-847H、K-856、X-62-2422、X-62-2461;東レ・ダウコーニング(株)製のDKQ3-202、DKQ3-203、DKQ3-204、DKQ3-205、DKQ3-210;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のYSR-3022、TPR-6700、TPR-6720、TPR-6721;東レ・ダウコーニング(株)製のLTC300B、LTC303E、LTC310、LTC314、SRX357、BY24-749、SD7333、BY24-179、SP7015、SP7259、SD7220、SD7226、SD7229等が挙げられる。
【0044】
薄膜層は、さらに剥離性等を調整するために、剥離コントロール剤を併用してもよい。本発明で用いられる剥離コントロール剤としては、RSiO1/2単位(式中、Rは1価の炭化水素基)及びSiO4/2単位を含むシリコーンレジンを挙げることができる。このシリコーンレジン中におけるRSiO1/2単位とSiO4/2単位の比(モル比)は、RSiO1/2単位:SiO4/2単位=0.1:1.0~1.3:1.0であることが好ましく、0.5:1.0~1.0:1.0であることがより好ましい。
【0045】
さらに上記シリコーンレジン中に、RSiO2/2単位(式中、Rは1価の炭化水素基)やRSiO3/2単位(式中、Rは1価の炭化水素基)を含んでいてもよい。また、分子中にアルケニル基などの官能基を有していても良い。
【0046】
上記剥離コントロール剤の市販品としては、例えば、商品名「KS-3800」(信越化学工業(株)製)、商品名「X-92-183」(信越化学工業(株)製)、商品名「SD7292」(東レ・ダウコーニング(株)製)、「BY24-843」(東レ・ダウコーニング(株)製)等が挙げられる。
【0047】
剥離コントロール剤の含有量(固形分)は、薄膜層を形成する樹脂成分(例えば、シリコーン樹脂)と剥離コントロール剤の合計量に対して10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。一方上限は、70質量%であることが好ましく、60質量%であることが好ましく、50質量%であることがさらに好ましい。剥離コントロール剤の含有量が上記範囲であることにより、本シリコーンゴムシートにおいて、粘着性と保護フィルムとの剥離性を同時に高めやすくすることができる。
【0048】
薄膜層には上述した剥離コントロール剤の他に、後述する蛍光体や、触媒、架橋剤等のその他の添加剤を含んでいてもよい。特に、本シリコーンゴムシートに蛍光体を含有させることが難しい場合は、薄膜層に含有させることが効果的である。
【0049】
薄膜層の厚さは、シリコーンゴムシートの厚さよりも薄ければよく、特に限定はされないが、0.01μm以上10μm以下であることが好ましい。薄膜層の厚さが0.01μm以上であることにより、シリコーンゴムシートを保持しやすくなり、かつ、保護フィルムに対するシリコーンゴムシートの剥離性をより向上させることができる。一方、10μm以下であることにより、シリコーンゴムシートの粘着力を保持し、部材への密着性及び追従性の両方を維持しやすくなる。
かかる観点から、薄膜層の厚さはより好ましくは0.015μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上であり、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下、特に好ましくは0.5μm以下である。
【0050】
本成形体において、薄膜層はシリコーンゴムシートの少なくとも片面に設けられる。本成形体を貼り合わせ材や固定材として設ける場合には、薄膜層はシリコーンゴムシートの両面に設けられることがより好ましい。
【0051】
<蛍光体>
本成形体は、蛍光体を含有する。蛍光体を含有することにより、例えば、発光装置等の構成部材として用いた場合に、優れた発光特性を発揮することができる。蛍光体は、シリコーンゴムシート、薄膜層又は必要に応じて設けられるその他の層のいずれに含有させてもよいが、発光特性と加工性の観点から、シリコーンゴムシートに含有させることが好ましい。
【0052】
本発明で用いられる蛍光体の種類は適宜選択されるが、無機蛍光体であることが好ましく、赤色(橙色)、緑色、青色、黄色蛍光体については、代表的な蛍光体として下記のものが挙げられる。
蛍光体は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせてもよい。2種類以上の蛍光体を用いることにより、色温度を低下させたり、演色性を向上させたりすることができる。
【0053】
特に、放射線架橋を行って後述の保護フィルムの適用を可能とすることによる、雰囲気中の湿気による蛍光体の劣化を防止する効果を有効に得る点において、本発明で用いる蛍光体としては、湿気により劣化し易い蛍光体が挙げられ、このような蛍光体としては、以下に例示する蛍光体のうち、アルカリ土類金属を含有し、湿気によりアルカリ土類金属炭酸塩を生じやすい蛍光体(具体的には、特開2007-314626号公報に記載の蛍光体)又は硫黄を含有し、湿気により硫化水素ガスが発生しやすい蛍光体(具体的には、国際公開第2013/021990号公報に記載の蛍光体)等が挙げられる。
【0054】
(赤色蛍光体)
赤色蛍光体の発光ピーク波長は、通常565nm以上、好ましくは575nm以上、より好ましくは580nm以上、また、通常780nm以下、好ましくは700nm以下、より好ましくは680nm以下の波長範囲にあることが好適である。
【0055】
赤色蛍光体の発光ピークの半値幅は、通常1~120nmの範囲である。また、外部量子効率は、通常60%以上、好ましくは70%以上であり、重量メディアン径は、通常0.1μm以上、好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、通常40μm以下、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。
【0056】
このような赤色蛍光体として、例えば、特開2006-008721号公報に記載されているCaAlSiN:Eu(以下、「CASN」と略称することがある。)、特開2008-007751号公報に記載されている(Sr,Ca)AlSiN:Eu(以下、「SCASN」と略称することがある。)、特開2007-231245号公報に記載されているCa1-xAl1-xSi1+x3-x:Eu等のEu付活酸化物、窒化物又は酸窒化物蛍光体等や、特開2008―38081号公報(Sr,Ba,Ca)SiO:Eu(以下、「SBS蛍光体」と略称することがある。)を用いることも可能である。
【0057】
そのほか、赤色蛍光体としては、(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Eu等のEu付活アルカリ土類シリコンナイトライド系蛍光体、(La,Y)S:Eu等のEu付活酸硫化物蛍光体、(Y,La,Gd,Lu)S:Eu等のEu付活希土類オキシカルコゲナイド系蛍光体、Y(V,P)O:Eu、Y:Eu等のEu付活酸化物蛍光体、(Ba,Mg)SiO:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、LiW:Eu、LiW:Eu,Sm、Eu、Eu:Nb、Eu:Sm等のEu付活タングステン酸塩蛍光体、(Ca,Sr)S:Eu等のEu付活硫化物蛍光体、YAlO:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、Ca(SiO:Eu、LiY(SiO:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、(Y,Gd)Al12:Ce、(Tb,Gd)Al12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Eu等のEu付活酸化物、窒化物又は酸窒化物蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、BaMgSi:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)(Zn,Mg)Si:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn等のMn付活ゲルマン酸塩蛍光体、Eu付活αサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La):Eu,Bi等のEu,Bi付活酸化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)S:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸硫化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)VO:Eu,Bi等のEu,Bi付活バナジン酸塩蛍光体、SrY:Eu,Ce等のEu,Ce付活硫化物蛍光体、CaLa:Ce等のCe付活硫化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgP:Eu,Mn、(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn):Eu,Mn等のEu,Mn付活リン酸塩蛍光体、(Y,Lu)WO:Eu,Mo等のEu,Mo付活タングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)Si:Eu,Ce(但し、x、y、zは、1以上の整数を表す。)等のEu,Ce付活窒化物蛍光体、(Ca,Sr,Ba,Mg)10(PO(F,Cl,Br,OH):Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、((Y,Lu,Gd,Tb)1-x-yScCe(Ca,Mg)1-r(Mg,Zn)2+rSiz-qGe12+δ等のCe付活珪酸塩蛍光体等を用いることもできる。
【0058】
そのほか、LED発光装置からの放射光の演色性を高めるため、あるいは、発光装置の発光効率を高めるために、赤色蛍光体として、赤色発光スペクトルの半値幅が20nm以下の赤色蛍光体を単独で、又は他の赤色蛍光体、特に赤色発光スペクトルの半値幅が50nm以上の赤色蛍光体と混合して用いることができる。そのような赤色蛍光体としては、A2+xMn(AはNa及び/又はK;MはSi及びAl;-1≦x≦1かつ0.9≦y+z≦1.1かつ0.001≦z≦0.4かつ5≦n≦7)で表されるKSF、KSNAF、及びKSFとKSNAFの固溶体、(k-x)MgO・xAF・GeO:yMn4+(ただし、式中、kは2.8~5の実数であり、xは0.1~0.7の実数であり、yは0.005~0.015の実数であり、AはCa、Sr、Ba、Zn、又はこれらの混合物である。)の化学式で示される、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn等のマンガン活性の深赤色(600~670nm)ジャーマネート蛍光体、(La1-x-y,Eu,LnS(x及びyは、それぞれ0.02≦x≦0.50及び0≦y≦0.50を満たす数を表し、LnはY、Gd、Lu、Sc、Sm及びErの少なくとも1種の3価希土類元素を表す。)の化学式で示されるLOS蛍光体等が挙げられる。
【0059】
また、国際公開WO2008-096300号公報に記載されているSrAlSiや、米国特許第7524437号公報に記載されているSrAlSi14:Euを用いることもできる。
【0060】
以上の中でも、赤色蛍光体としては、高温においても波長変換効率の高い蛍光体が好ましく、CASN蛍光体、SCASN蛍光体、SBS蛍光体が好ましい。また、LED発光装置からの放射光の演色性を高めるため、あるいは、発光装置の発光効率を高めるために、赤色蛍光体として、赤色発光スペクトルの半値幅が狭いKSF蛍光体を用いることが好ましい。
【0061】
(緑色蛍光体)
緑色蛍光体の発光ピーク波長は、通常500nmより大きく、中でも510nm以上、さらには515nm以上であることが好ましく、また、通常550nm以下、中でも540nm以下、さらには535nm以下の範囲であることが好ましい。この発光ピーク波長が短過ぎると青味を帯びる傾向がある一方で、長過ぎると黄味を帯びる傾向があり、何れも緑色光としての特性が低下する可能性がある。
【0062】
緑色蛍光体の発光ピークの半値幅は、通常1~80nmの範囲である。また、外部量子効率は、通常60%以上、好ましくは70%以上であり、重量メディアン径は、通常0.1μm以上、好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、通常40μm以下、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。
【0063】
このような緑色蛍光体として、例えば、国際公開WO2007/091687号公報に記載されている(Ba,Ca,Sr,Mg)SiO:Eu(以下、「BSS蛍光体」と略称することがある。)で表されるEu付活アルカリ土類シリケート系蛍光体等が挙げられる。
【0064】
また、そのほか、緑色蛍光体としては、例えば、特許第3921545号公報に記載されているSi6-zAl8-z:Eu(但し、0<z≦4.2である。以下、「β-SiAlON蛍光体」と略称することがある。)等のEu付活酸窒化物蛍光体や、国際公開WO2007/088966号公報に記載されているMSi12:Eu(但し、Mはアルカリ土類金属元素を表す。以下、「BSON蛍光体」と略称することがある。)等のEu付活酸窒化物蛍光体や、特開2008-274254号公報に記載されているBaMgAl1017:Eu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体(以下、「GBAM蛍光体」と略称することがある。)を用いることも可能である。
【0065】
その他の緑色蛍光体としては、(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Eu等のEu付活アルカリ土類シリコンオキシナイトライド系蛍光体、SrAl1425:Eu、(Ba,Sr,Ca)Al:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ba)AlSi:Eu、(Ba,Mg)SiO:Eu、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn)Si:Eu、(Ba,Ca,Sr,Mg)(Sc,Y,Lu,Gd)(Si,Ge)24:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、YSiO:Ce,Tb等のCe,Tb付活珪酸塩蛍光体、Sr-Sr:Eu等のEu付活硼酸リン酸塩蛍光体、SrSi-2SrCl:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体、ZnSiO:Mn等のMn付活珪酸塩蛍光体、CeMgAl1119:Tb、YAl12:Tb等のTb付活アルミン酸塩蛍光体、Ca(SiO:Tb、LaGaSiO14:Tb等のTb付活珪酸塩蛍光体、(Sr,Ba,Ca)Ga:Eu,Tb,Sm等のEu,Tb,Sm付活チオガレート蛍光体、Y(Al,Ga)12:Ce、(Y,Ga,Tb,La,Sm,Pr,Lu)(Al,Ga)12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、CaScSi12:Ce、Ca(Sc,Mg,Na,Li)Si12:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaSc:Ce等のCe付活酸化物蛍光体、Eu付活βサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、SrAl:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(La,Gd,Y)S:Tb等のTb付活酸硫化物蛍光体、LaPO:Ce,Tb等のCe,Tb付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al等の硫化物蛍光体、(Y,Ga,Lu,Sc,La)BO:Ce,Tb、NaGd:Ce,Tb、(Ba,Sr)(Ca,Mg,Zn)B:K,Ce,Tb等のCe,Tb付活硼酸塩蛍光体、CaMg(SiOCl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga,In):Eu等のEu付活チオアルミネート蛍光体やチオガレート蛍光体、(Ca,Sr)(Mg,Zn)(SiOCl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、MSi:Eu等のEu付活酸窒化物蛍光体等を用いることもできる。
【0066】
また、国際公開WO2009/072043号公報に記載されているSrAlSi2135:Euや、国際公開WO2007/105631号公報に記載されているSrSi13Al21:Euを用いることもできる。
【0067】
以上の中でも、緑色蛍光体としては、BSS蛍光体、β-SiAlON蛍光体、BSON蛍光体が好ましい。また、高温においても波長変換効率の高い蛍光体が好ましく、そのような蛍光体として、LuAl12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、β-SiAlON蛍光体が好ましい。
以上に例示した緑色蛍光体は、何れか1種のみを使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0068】
そのほか、LED発光装置からの放射光の演色性を高めるため、あるいは、発光装置の発光効率を高めるため、緑色蛍光体として、緑色発光スペクトルの半値幅が20nm以下の緑色蛍光体を単独で用いることができる。
【0069】
(青色蛍光体)
青色蛍光体の発光ピーク波長は、通常420nm以上、好ましくは430nm以上、より好ましくは440nm以上で、通常500nm未満、好ましくは490nm以下、より好ましくは480nm以下、さらに好ましくは470nm以下、特に好ましくは460nm以下の波長範囲である。
【0070】
青色蛍光体の発光ピークの半値幅は、通常10~100nmの範囲である。また、外部量子効率は、通常60%以上、好ましくは70%以上であり、重量メディアン径は、通常0.1μm以上、好ましくは1.0μm以上、さらに好ましくは5.0μm以上であり、通常40μm以下、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。
【0071】
このような青色蛍光体として、例えば、(Ca,Sr,Ba)(POCl:Euで表されるユウロピウム付活ハロリン酸カルシウム系蛍光体、(Ca,Sr,Ba)Cl:Euで表されるユウロピウム付活アルカリ土類クロロボレート系蛍光体、(Sr,Ca,Ba)Al:Eu又は(Sr,Ca,Ba)Al1425:Euで表されるユウロピウム付活アルカリ土類アルミネート系蛍光体等が挙げられる。
【0072】
また、そのほか、青色蛍光体としては、Sr:Sn等のSn付活リン酸塩蛍光体、SrAl1425:Eu、BaMgAl1017:Eu、BaAl13:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、SrGa:Ce、CaGa:Ce等のCe付活チオガレート蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu、BaMgAl1017:Eu,Tb,Sm等のEu,Tb,Sm付活アルミン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Eu、(Ba,Sr,Ca)(PO(Cl,F,Br,OH):Eu,Mn,Sb等のEu,Tb,Sm付活ハロリン酸塩蛍光体、BaAlSi:Eu、(Sr,Ba)MgSi:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、Sr:Eu等のEu付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Ag、ZnS:Ag,Al等の硫化物蛍光体、YSiO:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaWO等のタングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)BPO:Eu,Mn、(Sr,Ca)10(PO・nB:Eu、2SrO・0.84P・0.16B:Eu等のEu,Mn付活硼酸リン酸塩蛍光体、SrSi・2SrCl:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
このうち、(Sr,Ca,Ba)10(POCl:Eu2+、BaMgAl1017:Euを好ましく用いることができる。また、(Sr,Ca,Ba)10(POCl:Eu2+で示される蛍光体のうち、SrBaEu(POCl(c、d及びxは、2.7≦c≦3.3、0.9≦d≦1.1、0.3≦x≦1.2を満足する数であり、xは好ましくは0.3≦x≦1.0である。さらに、a及びbは、a+b=5-xかつ0.05≦b/(a+b)≦0.6の条件を満足するものであり、b/(a+b)は好ましくは0.1≦b/(a+b)≦0.6である。)で示される蛍光体を好ましく用いることができる。
【0073】
以上に例示した青色蛍光体は、何れか1種のみを使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0074】
そのほか、LED発光装置からの放射光の演色性を高めるため、あるいは、発光装置の発光効率を高めるため、青色蛍光体として、青色発光スペクトルの半値幅が20nm以下の青色蛍光体を単独で用いることができる。
【0075】
(黄色蛍光体)
黄色蛍光体の発光ピーク波長は、通常530nm以上、好ましくは540nm以上、より好ましくは550nm以上で、通常620nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下の波長範囲である。
【0076】
黄色蛍光体の発光ピークの半値幅は、通常80~130nmの範囲である。また、外部量子効率は、通常60%以上、好ましくは70%以上であり、重量メディアン径は、通常0.1μm以上、好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、通常40μm以下、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。
【0077】
このような黄色蛍光体として、例えば、各種の酸化物系、窒化物系、酸窒化物系、硫化物系、酸硫化物系等の蛍光体が挙げられる。特に、RE12:Ce(ここで、REは、Y、Tb、Gd、Lu、及びSmからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表し、Mは、Al、Ga、及びScからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表す。)やMaMbMc12:Ce(ここで、Maは2価の金属元素、Mbは3価の金属元素、Mcは4価の金属元素を表す。)等で表されるガーネット構造を有するガーネット系蛍光体、AEMdO:Eu(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg、及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表し、Mdは、Si、及び/又はGeを表す。)等で表されるオルソシリケート系蛍光体、これらの系の蛍光体の構成元素の酸素の一部を窒素で置換した酸窒化物系蛍光体、AEAlSiN:Ce(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表す。)等のCaAlSiN構造を有する窒化物系蛍光体をCeで付活した蛍光体、LaSi11:Ce、Ca1.5xLa3-xSi11:Ce(但し、xは0≦x≦1である)等のランタンケイ素窒化物結晶を母体とする蛍光体が挙げられる。
【0078】
また、その他、黄色蛍光体としては、CaGa:Eu、(Ca,Sr)Ga:Eu、(Ca,Sr)(Ga,Al):Eu等の硫化物系蛍光体、Ca(Si,Al)12(O,N)16:Eu等のSiAlON構造を有する酸窒化物系蛍光体等のEuで付活した蛍光体、(M1-A-BEuMn(BO1-P(POX(但し、Mは、Ca、Sr、及びBaからなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、Xは、F、Cl、及びBrからなる群より選ばれる1種以上の元素を表す。A、B、及びPは、各々、0.001≦A≦0.3、0≦B≦0.3、0≦P≦0.2を満たす数を表す。)等のEu付活又はEu,Mn共付活ハロゲン化ホウ酸塩蛍光体、アルカリ土類金属元素を含有していてもよい。なお、前述のCe付活窒化物系蛍光体は、その一部がCaやOで一部置換されていてもよい。
【0079】
これらの中で、ガーネット系蛍光体は好ましく用いられるが、その中でも特にYAl12:Ce(以下、「YAG」と略称することがある。)が好ましく用いられる。
また、高温においても波長変換効率の高い蛍光体が好ましく、そのような蛍光体として、LaSi11:Ce、Ca1.5xLa3-xSi11:Ce(但し、xは0≦x≦1である)等のランタンケイ素窒化物結晶を母体とする蛍光体(以下、「LSN」と略称することがある。)が好ましい。
【0080】
以上に例示した黄色蛍光体は、何れか1種のみを使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0081】
(平均粒径)
本発明で用いる蛍光体の平均粒径は5μm以上であることが好ましく、8μm以上であることがより好ましい。蛍光体の平均粒径を上記下限以上とすることで、本シリコーンゴム成形体を波長変換部材として用いたときの波長変換効率の低下を抑制しやすくなる。また、蛍光体の平均粒径は30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることが好ましい。蛍光体の平均粒径が上記上限以下であれば、蛍光体粒子が凝集しにくく、混練時のムラや蛍光体含有シートの厚みを薄くしやすい傾向となるため好ましい。
ここで、上記平均粒径とは、一次粒子の平均粒径であり、レーザ粒度計により測定された値である。
【0082】
(表面処理)
本発明で用いる蛍光体は表面処理が施されていてもよい。
表面処理剤としては、ポリジメチルシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等のシロキサン化合物、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキルトリメトキシシラン、ジアルキルジメトキシシラン、グリシジルトリメトキシシラン等のシラン化合物、チタネートカップリング剤等を好ましく使用することができる。これらの中で、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキルトリメトキシシランが特に好ましく、メチルハイドロジェンポリシロキサンが最も好ましい。これらは、1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて使用することができ、得られる蛍光体含有シリコーンゴム成形体の透明性を高めたり、着色を防いだりすることができる。
【0083】
(含有量)
蛍光体の含有量は、本成形体を構成する樹脂成分100質量部に対し、通常0.01質量部以上であるが、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましい。一方、蛍光体含有量の上限は、本成形体を構成する樹脂成分100質量部に対して通常80質量部であるが、70質量部であることが好ましく、60質量部であることがより好ましく、50質量部以下であることがさらに好ましい。このような範囲とすることで、シートとしたときの厚みが適切な範囲になりやすく、本成形体を用いたLED発光装置の色度のバラつきを抑制しやすい傾向となる。
【0084】
[保護フィルム]
本発明において、保護フィルムは、薄膜層の表面に設けられ、シリコーンゴム成形体を保護する役割を担う。また、シリコーンゴムシートに薄膜層を転写して設ける場合には、転写する前の薄膜層の支持体としての役割も担う。
【0085】
上記保護フィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等を主成分とするポリエステル樹脂からなるフィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリイミド等からなるフィルム状のもの等が挙げられ、2軸延伸されたものも好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、このうち、ポリエチレンテレフタレートの2軸延伸フィルムは、強靱で耐熱性及び剛性が優れており、入手も一般に容易であることから好ましいものである。
【0086】
保護フィルムは、必要に応じてさらに上述した薄膜層を形成させることにより、薄膜層の転写用フィルムとして使用することもできる。
【0087】
[本成形体の製造方法]
本成形体の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、以下のような方法を用いることができる。
【0088】
例えば、シリコーンゴムシート上に薄膜層を形成させ、その後に、薄膜層上に保護フィルムを、例えばラミネートすることにより、製造することができる。シリコーンゴムシート上に薄膜層を形成させる方法としては、公知の方法を適宜採用することができる。例えば、シリコーンゴムシート上に吹き付け塗装、浸漬コーティング、スピンコーティング、ナイフコーティング、キスコーティング、グラビアコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パッド印刷及びロールコーティング等を施すことにより、薄膜層を設けることができる。その後、上述した保護フィルムをラミネートすることにより本成形体を得ることができる。
【0089】
また、シリコーンゴムシートの少なくとも片面に薄膜層を形成する工程を備え、薄膜層を形成する工程を、保護フィルムに形成された薄膜層をシリコーンゴムシートに転写することにより行う方法がより好ましく挙げられる。この方法により、シリコーンゴムシート上に薄膜層をより簡便に設けることができ、かつ、保護フィルムも同時に形成することができる。
【0090】
後者の方法について、より具体的に説明する。
まず。保護フィルムの表面に薄膜層を形成させる。薄膜層の形成方法としては、シリコーンゴムシート上に薄膜層を形成させる方法と同様に公知の方法を適宜採用することができる。また、保護フィルムと薄膜層との密着性を調整する目的で、保護フィルム表面はコロナ処理等の表面処理を行ってもよいし、保護フィルムと薄膜層との間に下塗り層等の他の層を適宜設けることもできる。
【0091】
次に、保護フィルムに形成された薄膜層上に、例えば、未硬化のシリコーンエラストマー樹脂を重ね、両者を同時に架橋して薄膜層とシリコーンゴムシートを一体的に成形することにより、シリコーンゴムシートに薄膜層が転写された本成形体を得ることができる。
【0092】
薄膜層と未架橋のシリコーンエラストマー樹脂を同時に架橋して薄膜層とシリコーンゴムシートを一体的に成形するためには、放射線を用いて硬化させることが好ましい。放射線による硬化は、触媒や架橋剤の残渣等による耐熱、耐光信頼性を損なう懸念が少ない。また、硬化時に熱が加わらないため、熱劣化の懸念も少なく好ましい。
【0093】
放射線としては、例えば、電子線、X線、γ線等が挙げられる。これらの放射線は工業的にも広く利用されているものであり、容易に利用可能であり、エネルギー効率の良い方法である。これらの中でも、吸収損失がほとんどなく、透過性が高いという観点から、γ線を利用することが好ましい。
【0094】
γ線の照射線量としては、樹脂種や架橋基の量、そして線源の種類により、適宜選択して決定することができる。本成形体において、例えば、γ線の照射線量は、20~150kGyであることが好ましい。照射線量が20kGy以上であれば、シリコーンゴムシートを十分に硬化させることができる。一方、照射線量が150kGy以下でれば、シリコーンゴムシートが過剰に硬化することを防ぐことができ、それに伴うシリコーンゴムシートの粘着力の低下を抑制することができる。特に、シリコーンゴムシートのタイプAデュロメータ硬さを1~50に調整しやすい観点から、照射線量はより好ましくは30kGy以上、さらに好ましくは40kGy以上であり、より好ましくは120kGy以下、さらに好ましくは100kGy以下である。
【0095】
このように、保護フィルム上に形成した薄膜層をシリコーンゴムシートに転写することによりシリコーンゴム成形体と保護フィルムとの積層体を得た後、該積層体から保護フィルムを剥離することにより、本発明の蛍光体含有シリコーンゴム成形体を得ることができ、このようにして得られた蛍光体含有シリコーンゴム成形体は、各種用途に適宜使用することができる。
【0096】
[本成形体の物性]
(粘着力)
本成形体は、薄膜層を備えた側の表面の粘着力が、接触圧2.16kgf/cm、圧着速度10mm/秒、接触時間10秒、剥離速度10mm/秒で測定したプローブタック強度において50~180gfである。なお、後述の通り、本発明におけるプローブタック強度とは、厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムをプローブに貼り付けて測定を行った際のプローブタック強度をいう。
【0097】
図1及び図2に従い、本発明の粘着力の測定方法をより具体的に説明する。まず、図1に本成形体1の一例を示す。粘着力の測定にあたり、シリコーンゴムシート(1a)と薄膜層(1b)と保護フィルム(1c)とを備えた積層体(1)について、保護フィルム(1c)を剥離した後の蛍光体含有シリコーンゴム成形体(2)を準備する。
図2は、プローブタックテスターを用いた粘着力の測定方法を示す。あらかじめ、プローブ(3)に、保護フィルム(1c)の代替となる厚み100μmのPETフィルム(1c)(三菱ケミカル(株)製二軸延伸PET:T-100)を、両面テープ(日東電工(株)製 No.501F)で貼り付けておく。次に、先端にPETフィルム(1c)が貼着されたプローブ(3)を、接触圧2.16kgf/cm、圧着速度10mm/秒、接触時間10秒の条件で蛍光体含有シリコーンゴム成形体(2)と接触させる。その後、ただちに10mm/秒の速度でプローブを粘着面から垂直方向に引きはがし、引きはがす際の最大荷重を蛍光体含有シリコーンゴム成形体の粘着力とした。
【0098】
プローブタック強度が50gf以上180gf以下であれば、例えば、密着固定する部材等への密着性を確保しつつ、かつ、本成形体から保護フィルムを容易に剥がすことができ、作業性に優れるため好ましい。かかる観点から、プローブタック強度はより好ましくは70gf以上、さらに好ましくは100gf以上であり、より好ましくは170gf以下、さらに好ましくは160gfである。
本発明においては、シリコーンゴムシートの硬さが1~50と比較的低硬度であるにもかかわらず、プローブタック強度を50~180gfの適切な範囲に調整することにより、部品に対する追従性と保護フィルムからの剥離性の相反する2つの特性をバランスよく優れたものとすることができる。
【0099】
プローブタック強度を上述の範囲に調整する方法としては、例えば、薄膜層に適当な表面粗さを付与する方法、薄膜層の材料(例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、オレフィン樹脂等)を調整する方法、薄膜層の表面を改質(コロナ処理、下塗り層を設ける等)する方法、シリコーンゴムシートのゴム硬度を調整する方法、剥離コントロール剤を適宜配合する方法等が挙げられるが、シリコーンゴムシートとの親和性の観点から、薄膜層に用いる樹脂種を調整する方法、具体的には、上述したように、アルケニル基及びアルキル基を有するシリコーン樹脂、特に、アルケニル基を有するシリコーン樹脂(a)及びアルキル基を有するシリコーン樹脂(b)使用する方法が特に好ましい。
また、薄膜層を形成させるにあたり、薄膜層と未架橋のシリコーンエラストマー樹脂を同時に架橋する際のγ線の照射量を適宜調整することもまた好ましい。粘着力を調整しやすい観点から、γ線の照射量は20kGy以上であることが好ましく、40kGy以上であることがより好ましく、50kGy以上であることがさらに好ましい。照射量の上限は150kGyであることが好ましく、120kGyであることがより好ましく、100kGyであることがさらに好ましい。
【0100】
(全光線透過率)
本成形体が光学用途に適用される場合、厚み300μmにおける全光線透過率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。全光線透過率が85%以上であれば、シートの透明性が十分であるために光学用途に好ましく適用することができる。なお、全光線透過率は、JIS K7361-1:1997に準じて分光光度計を用いて測定することができる。
【0101】
[用途]
本成形体の用途は特に限定されないが、部品への適度な密着性と追従性を活かして様々な用途に使用することができる。例えば、携帯電話やデジタルカメラ等の電子機器内のクッション材やパッキン材、液晶ディスプレイやフレームの固定、液晶パネルと保護パネルとの層間充填材、タッチパネル用貼り合わせ材、液晶テレビやモニターのフレーム内クッション材、固定材等に使用できる。より具体的には、良好な発光特性が要求されるLED発光装置等の光学用途部品に好適に使用することができる。
【0102】
<発光装置>
本成形体が好適に用いられる発光装置としては、例えば、図3に示すようなPkg型発光装置、図4に示すようなCOB型発光装置等が挙げられる。
【0103】
図3に示すPkg型発光装置10は、パッケージ11と、該パッケージ11に実装された発光素子(LED)12とを有する。パッケージ11は、第1のリード電極13、第2のリード電極14、該リード電極13,14と一体化するように成形された樹脂成形体15を有する。樹脂成形体15は凹穴状のカップ部15aを有した環形状であり、その外周形状は略正方形状となっている。発光素子12を実装した後、カップ部15a内には熱硬化性の封止樹脂(16)が充填される。この封止樹脂は、未硬化のものをカップ部15aに充填した後、硬化させることにより形成される。
【0104】
カップ部15a内において、リード電極14上にLED等の発光素子12が固着されている。発光素子12は、ワイヤボンディングによる金属細線17,18によって各リード電極13,14と接続されている。リード電極13,14の対峙縁同士の間に樹脂よりなるブリッジ部15bが充填されている。このブリッジ部15bは樹脂成形体15と一体となっている。
樹脂成形体15及び封止樹脂16の上面を覆うように蛍光体含有シリコーンゴム成形体19が設けられている。
【0105】
図4に示すCOB型発光装置20は、アルミ基板21と、該アルミ基板21上に形成された絶縁膜22と、該絶縁膜22上に形成された配線23,24と、該配線23,24間の絶縁膜22上に設置された発光素子(LED)25と、該発光素子25と各配線23,24とを接続するワイヤボンディングによる金属細線26,27と、配線23,24及び発光素子25を囲む環状のスペーサ28と、該スペーサ28の内側領域に充填された封止樹脂29と、スペーサ28及び封止樹脂29の上面を覆う蛍光体含有シリコーンゴム成形体30とで構成されている。
【0106】
特に、赤色と緑色の蛍光体を使用する発光装置の発光効率を高めるためには、緑色の光が赤色蛍光体にあたった場合、励起光として使用され、緑色の光成分が減少してしまう場合があるため、本成形体中に赤色と緑色の蛍光体を充填するよりも、本成形体には緑色蛍光体を充填し、PkgもしくはCOB型発光装置の封止樹脂中に赤色蛍光体を充填することが好ましい。この場合においては、蛍光体としては、緑蛍光体はβ-SiAlON蛍光体、赤色蛍光体はCASN蛍光体、SCASN蛍光体、KSF蛍光体を使用することが好ましい。
【0107】
[用語の説明]
一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚みが極めて小さく、最大厚みが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいい(日本工業規格JIS K6900:1994)、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚みが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0108】
本発明において、「主成分」と表現した場合には、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含する。また、当該主成分の含有割合を特定するものではないが、特に記載しない限り、主成分は対象物中の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上(100質量%含む)を占める意を包含するものである。また、2種類以上の樹脂が主成分を構成する場合、各樹脂の対象物中の割合は10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。
【0109】
また、本発明において「X~Y」(X、Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
さらにまた、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【実施例
【0110】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。
【0111】
<測定及び評価方法>
先ずは、実施例・比較例で得たサンプルの各種物性値の測定方法及び評価方法について説明する。
【0112】
(シリコーンゴムシートの硬さ(タイプAデュロメータ硬さ))
JIS K 6253-3:2012に基づき、タイプAデュロメータ(高分子計器(株)製)を用い、後述の方法で得られたシリコーンゴム成形体のシリコーンゴムシート側から測定した。得られた結果を表1に示す。
【0113】
(プローブタック強度(粘着力の評価))
ニチバン(株)製 NS PROBE TACK TESTERを用いて、上述の方法に従い測定した。得られた結果を表1に示す。
【0114】
(剥離性評価)
後述の方法で得られた蛍光体含有シリコーンゴム成形体と保護フィルムとの剥離性について、以下の基準により評価した。得られた結果を表1に示す。
○:剥離が軽く、作業性に問題のないレベル。
△:剥離がやや重く、作業性は問題のあるレベル。
×:剥離が重く、作業に支障をきたすレベル。
【0115】
(追従性評価)
保護フィルム剥離後の蛍光体含有シリコーンゴム成形体の薄膜層側を、段差500μmの凹面に押し込むことにより、追従性を以下基準により目視評価した。
○:蛍光体含有シリコーンゴム成形体が凹面に追従して段差に押し込まれている。
×:蛍光体含有シリコーンゴム成形体が凹面に追従して段差に押し込まれておらず、シワ、隙間がある。
【0116】
(色度の評価)
LEDチップ(ピーク波長449nm)から発光させた青色光を照射することができる発光装置を用い、保護フィルム剥離後の蛍光体含有シリコーンゴム成形体を、光源から2cm離れた箇所に空間を介して配置し、240mA、4Wの条件で通電した際の蛍光体含有シリコーンゴム成形体からの発光スペクトルを、TOPCON社製分光放射計SR-UL1Rを用いて観測し、色度(CIE-x,CIE-y)を計測した。測定結果を表1に示す。
【0117】
<実施例1>
まず、二軸延伸PETフィルム(厚み75μm)の表面に、下記薄膜層の組成物をバーコート法により塗布し、120℃で乾燥、固化して、下記組成の薄膜層(厚み0.1μm)を予め備えた保護フィルムを準備した。
シリコーンゴムシートの原料として、シリコーンエラストマー樹脂(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、TSE-200A)100質量部と緑色蛍光体(β-SiAlON、三菱ケミカル社製BG-601G、平均粒径23μm)11質量部とをプラネタリミキサーで混合してシリコーンゴムシート用樹脂組成物を得た。
得られたシリコーンゴムシート用樹脂組成物を、直径100mmの2本カレンダに沿って供給された上記保護フィルムの薄膜層間に投入し、ロール温度80℃の条件でロールにバンクを形成させ、保護フィルムとシリコーンゴムシートの積層体を作製した。得られた積層体に、吸収線量が50KGyとなるようにγ線を照射し、蛍光体含有シリコーンゴムを架橋させることにより保護フィルムと蛍光体含有シリコーンゴムシートとの積層体を得た。蛍光体含有シリコーンゴムシートの厚みは1000μmであった。得られた積層体から保護フィルムを剥離する際の剥離性と、剥離した後の蛍光体含有シリコーンゴムシートと薄膜層の一体成形体について、上記方法で評価した結果を表1に示す。
(薄膜層組成)
硬化型シリコーン樹脂(X-62-5039:信越化学工業(株)製)14質量部
剥離コントロール剤(KS-3800:信越化学工業(株)製)6.0質量部
架橋剤(X-92-185:信越化学工業(株)製)0.4質量部
触媒(PL-5000:信越化学工業(株)製)1.0質量部
MEK/トルエン/n-ヘプタン混合溶媒(混合比率は1:1:1(体積比))で希釈
【0118】
<実施例2>
実施例1において、シリコーンエラストマー樹脂をモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、TSE-2913Uに変更した以外は実施例1と同様にして、保護フィルムと蛍光体含有シリコーンゴム成形体との積層体を得た。得られた積層体から保護フィルムを剥離した後の蛍光体含有シリコーンゴム成形体について評価した結果を表1に示す。
【0119】
<比較例1>
実施例1において、薄膜層を有しない保護フィルム(三菱ケミカル(株)製二軸延伸PET、T-100、厚み100μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして保護フィルムと蛍光体含有シリコーンゴム成形体との積層体を得た。得られた積層体から保護フィルムを剥離した後の蛍光体含有シリコーンゴム成形体について評価した結果を表1に示す。
【0120】
<比較例2>
実施例1において、シリコーンエラストマー樹脂を、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、TES-2571-5Uに変更した以外は実施例1と同様にして、保護フィルムと蛍光体含有シリコーンゴム成形体との積層体を得た。得られた積層体から保護フィルムを剥離した後の蛍光体含有シリコーンゴム成形体について評価した結果を表1に示す。
【0121】
<比較例3>
実施例1において、保護フィルムをダイセルバリューコーティング(株)製、T788(薄膜層としてシリコーン樹脂を含有しない)に変更した以外は、実施例1と同様にして、保護フィルムと蛍光体含有シリコーンゴム成形体との積層体を得た。得られた積層体から保護フィルムを剥離した後の蛍光体含有シリコーンゴム成形体について評価した結果を表1に示す。
【0122】
【表1】
【0123】
(考察)
片面に薄膜層を備えた実施例1、2の蛍光体含有シリコーンゴム成形体は、低硬度ゴムであるにも関わらず保護フィルムに対する剥離性が高く、段差への追従性も良好であり、色度も良好であった。
一方、薄膜層を備えない比較例1の蛍光体含有シリコーンゴム成形体は、プローブタック強度が180gfを超え、追従性は良好であるものの、保護フィルムの剥離が重く作業上支障をきたすものであった。
シリコーンゴムシートの硬さが高い比較例2の蛍光体含有シリコーンゴム成形体は、プローブタック強度が180gfを超え保護フィルムの剥離がやや重く、段差への追従性にも劣るものであった。
シリコーン樹脂を有しない薄膜層を備えた比較例3の蛍光体含有シリコーンゴム成形体は、追従性は良好であるものの、プローブタック強度が180gfを超え保護フィルムの剥離性がやや重く、作業性が問題のあるレベルであった。
【符号の説明】
【0124】
1 積層体
1a シリコーンゴムシート
1b 薄膜層
1c 保護フィルム(PETフィルム)
2 蛍光体含有シリコーンゴム成形体
3 プローブ
4 SUS製枠体
5 調整スペーサ
6 サンプル固定錘
10 Pkg型発光装置
11 パッケージ
12,25 発光素子(LED)
15 樹脂成形体
16,29 封止樹脂
19,30 蛍光体含有シリコーンゴム成形体
20 COB型発光装置
21 アルミ基板
22 絶縁膜
28 スペーサ
図1
図2
図3
図4