(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】位置検出装置、位置検出方法および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G01B 7/00 20060101AFI20220531BHJP
B65H 7/02 20060101ALI20220531BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
G01B7/00 101C
B65H7/02
G03G15/00 480
(21)【出願番号】P 2018102406
(22)【出願日】2018-05-29
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100110607
【氏名又は名称】間山 進也
(72)【発明者】
【氏名】松村 恭平
(72)【発明者】
【氏名】櫛田 陽平
(72)【発明者】
【氏名】近藤 友秀
(72)【発明者】
【氏名】上羽 涼太
(72)【発明者】
【氏名】井口 純宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆一
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-019501(JP,A)
【文献】国際公開第2009/013787(WO,A1)
【文献】特開2015-044314(JP,A)
【文献】特開2017-114634(JP,A)
【文献】特開平09-328240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00-7/34
G03G 15/00
B65H 7/00-7/20
43/00-43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体の位置を検出する装置であって、
前記媒体の搬送方向に向けて離間して配置され、各々が平行な一対の平板により構成される第1の平行電極および第2の平行電極と、
前記第1の平行電極間および前記第2の平行電極間の各々に供給された電流により発生する静電容量を測定する測定手段と、
を含み、
前記第1の平行電極の搬送方向の長さが、前記媒体の搬送方向の長さより短く、かつ前記第2の平行電極の搬送方向の長さが、前記媒体の搬送方向の長さより長いことを特徴とする、位置検出装置。
【請求項2】
前記媒体が前記第1の平行電極間を通過した際に前記測定手段により測定された第1の静電容量と、前記媒体が前記第2の平行電極間に進入しているときに前記測定手段により測定される第2の静電容量とに基づき、前記媒体が前記第2の平行電極間に進入した進入長さを算出する演算手段を含む、請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記演算手段は、前記第1の静電容量として、前記媒体の搬送方向の先端が前記第1の平行電極間を通過してから該媒体の搬送方向の末端が該第1の平行電極間
へ進入するまでの間に測定された静電容量を用い、前記進入長さを算出する、請求項2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記第1の平行電極と前記第2の平行電極とが、前記搬送方向に延びる連結部により連結され、
前記第1の平行電極と前記第2の平行電極との間隔が、前記媒体の搬送方向の長さ以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記第1の平行電極および前記第2の平行電極は、前記媒体の先端の少なくとも2点が時間的にずれて該第1の平行電極間および該第2の平行電極間に進入するような平板の形状または配置とされる、請求項1~4のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項6】
媒体の位置を検出する方法であって、
前記媒体の搬送方向に向けて離間して配置され、各々が平行な一対の平板により構成される第1の平行電極および第2の平行電極のうちの、搬送方向の長さが前記媒体の搬送方向の長さより短い前記第1の平行電極間を、前記媒体が通過する際の、該第1の平行電極間に供給された電流により発生する第1の静電容量を測定するステップと、
搬送方向の長さが前記媒体の搬送方向の長さより長い前記第2の平行電極間に進入させるステップと、
前記第2の平行電極間に進入させているときに、該
第2の平行電極間に供給された電流により発生する第2の静電容量を測定するステップと、
前記第1の静電容量と前記第2の静電容量とに基づき、前記媒体が前記第2の平行電極間に進入した進入長さを算出するステップとを含む、位置検出方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の位置検出装置を含み、前記位置検出装置により検出される位置に基づき、媒体の搬送を制御し、前記媒体に画像を形成する、画像形成装置。
【請求項8】
前記媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段を駆動する駆動手段と、前記駆動手段を制御する制御手段とを含み、
前記制御手段は、前記位置検出装置により検出される位置から前記媒体の移動量を算出し、算出した移動量に応じて、前記駆動手段の駆動量を制御する、請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段を駆動する駆動手段と、前記駆動手段を制御する制御手段とを含み、
前記制御手段は、前記位置検出装置により検出される位置と経過時間とから前記媒体の移動速度を算出し、算出した移動速度に応じて、前記媒体の搬送異常の有無を判断する、請求項7または8に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体の位置を検出する装置、方法および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを利用した複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの機能を備えた複合機等では、用紙等の媒体が適切に供給されない場合、印刷の位置がずれ、所望の印刷物を得ることができないことがある。
【0003】
このことに鑑み、光学センサを用いて用紙の位置を検出し、用紙の搬送速度を調整して、用紙を適切に給紙する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、各センサ位置に用紙があるかないかの検出しかできないため、用紙の位置を段階的にしか検出することができないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、用紙等の媒体の位置を連続的に検出することができる装置や方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、発明の一実施形態では、媒体の位置を検出する装置であって、
媒体の搬送方向に向けて離間して配置され、各々が平行な一対の平板により構成される第1の平行電極および第2の平行電極と、
第1の平行電極間および第2の平行電極間の各々に供給された電流により発生する静電容量を測定する測定手段と、
を含み、
第1の平行電極の搬送方向の長さが、媒体の搬送方向の長さより短く、かつ第2の平行電極の搬送方向の長さが、媒体の搬送方向の長さより長いことを特徴とする、位置検出装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、媒体の位置を連続的に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】従来の静電容量センサを用いた位置検出について説明する図。
【
図4】本実施形態の静電容量センサを用いた位置検出について説明する図。
【
図8】従来の搬送ローラを駆動するモータ制御について説明する図。
【
図9】静電容量センサを用いたモータ制御について説明する図。
【
図10】用紙の移動距離と時間との関係を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、位置検出装置を備える画像形成装置の構成例を示した図である。
図1に示す画像形成装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、スキャナの機能を搭載した複合機であるが、画像形成装置は、複合機に限られるものではなく、複写機やプリンタやファクシミリ等であってもよい。
【0010】
画像形成装置は、複数の装置やユニットから構成される。画像形成装置は、自動原稿送り装置(ADF)10、画像読み取り装置11、プリンタユニット12、媒体としての用紙を供給する給紙ユニット13、手差しユニット14、排紙ユニット15、操作パネル16等を含む。また、画像形成装置は、用紙の位置を検出する位置検出装置としての静電容量センサ17を含む。
【0011】
図1に示す装置構成は一例であるため、ADF10や手差しユニット14等がない構成であってもよいし、その他の装置やユニットを含む構成であってもよい。媒体は、用紙に限られるものではなく、はがき、封筒、ラベル、フィルム等であってもよい。
【0012】
以下、用紙の位置を検出する装置を静電容量センサ17として説明するが、位置検出装置は、静電容量センサに限定されるものではない。
【0013】
ADF10は、原稿を載せる原稿台と、原稿台上の原稿を搬送する搬送機構と、搬送した原稿を排出する排出トレイとを含む。ADF10は、原稿台に載せられた原稿を、画像読み取り装置11のコンタクトガラス上へ移動させる。
【0014】
画像読み取り装置11は、光源と、複数のミラーと、結像レンズと、撮像素子とを含む。画像読み取り装置11は、光源からの光をコンタクトクトガラス上の原稿に照射し、反射した光を、複数のミラー、結像レンズを介して撮像素子へ入射させる。撮像素子は、入射された光を電気信号に変換し、画像データとして出力する装置で、例えばCCD(Charged Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary
metal oxide semiconductor)イメージセンサ等を用いることができる。
【0015】
プリンタユニット12は、書き込みユニット20と、感光体ドラム21と、現像装置22と、搬送ベルト23と、定着装置24とを含む。書き込みユニット20は、画像形成装置を制御するコントローラからの指示を受けて、感光体ドラム21に光を照射し、感光体ドラム21の表面に潜像を形成する。現像装置22は、トナーが充填され、感光体ドラム21にトナーを吐出し、感光体ドラム21の表面に形成された潜像を顕像化する。搬送ベルト23は、用紙を搬送し、顕像化により現像された画像を用紙に転写する。定着装置24は、画像が転写され、搬送ベルト23により搬送された用紙に、熱と圧力を加えて用紙に画像を定着させる。
【0016】
給紙ユニット13は、用紙が収納される給紙トレイ25と、給紙トレイ25に収納された用紙を1枚ずつ給紙する給紙ローラ26とを含む。給紙ユニット13は、コントローラからの指示を受けて、給紙ローラ26を駆動し、給紙トレイ25から用紙を供給する。
【0017】
手差しユニット14は、用紙を載せる手差しトレイと、手差しトレイ上の用紙を1枚ずつ給紙する給紙ローラとを含む。手差しユニット14は、コントローラからの指示を受けて、手差しトレイ上の用紙を供給する。排紙ユニット15は、定着装置24により画像が定着した用紙を排紙する排紙トレイを含む。
【0018】
操作パネル16は、ユーザの操作を受け付け、コントローラに対して原稿の読み取りや印刷等の実行を指示する。また、操作パネル16は、ユーザの操作を受け付けるための機能を選択するためのボタンや印刷等の実行開始ボタン等の表示、その実行状況やエラー等の表示を行う。
【0019】
静電容量センサ17は、用紙が搬送される搬送経路に設置され、各々が平行な一対の平板により構成される第1の平行電極および第2の平行電極を含む。給紙トレイ25から給紙ローラ26により搬送されてきた用紙は、第1の平行電極間、第2の平行電極間を通過する。
【0020】
第1の平行電極および第2の平行電極は、導電性を有し、同じ形状、大きさ、厚さの平板が平行に配置されたものである。平板には、金属板を用いることができ、金属板としては、例えばステンレス板、銅板、アルミニウム板等を用いることができる。
【0021】
第1の平行電極および第2の平行電極は、用紙の搬送方向に離間して設けられ、その取り付け位置は、給紙ユニット13および手差しユニット14と感光体ドラム21との間等とされる。
【0022】
ここで、
図2を参照して、従来の静電容量センサを用いた位置検出について簡単に説明しておく。従来の静電容量センサは、平行な一対の平板により構成される平行電極30を含む。平行電極30を構成する2枚の平板は、平板間を用紙31が通過するように離間して配置され、その大きさは、用紙サイズより大きいサイズとされる。
【0023】
平行電極30には、電流が供給される。電極間に電流が流れると、平行電極30はコンデンサとして機能し、電極間には電荷が蓄えられる。電荷が蓄えられる量は、静電容量と呼ばれ、静電容量C(F)は、電極の面積S(m2)、電極18の間隔d(m)、誘電率εとすると、次の式1により計算することができる。
【0024】
【0025】
電極間に電流を流すと、電極間に存在する空気等の絶縁体により電流は流れないが、一方の板が正極、他方の板が負極に分かれる分極が発生し、これにより、電荷を蓄えることができる。なお、片側の電極は、グランドGNDでもよいため(自己容量方式)、接地のために設けられる筐体板金であってもよい。
【0026】
誘電率εは、この分極の大きさを示した値で、電極間に存在する絶縁体によって変化する。このため、電極間の絶縁体が、空気のみの場合と、用紙31が存在する場合とでは、誘電率εは変化する。また、用紙31が電極間に進入する割合によっても、誘電率εは変化する。
【0027】
図2は、平行電極30に対する用紙31の位置と静電容量の変化を示している。
図2に示すように、用紙31が電極間に進入するまでの移動距離(X1)未満の場合、空気のみの場合の誘電率で、低い静電容量の値である。用紙31の進入が開始され、用紙31全体が電極間に進入するまでの、移動距離がX1とX2の間では、用紙31の進入に伴い、静電容量が増加していく。
【0028】
用紙31全体が電極間に存在する間(X2とX3の間)では、静電容量がほぼ一定の値となり、用紙31が電極間から排出されていく間(X3とX4の間)では、静電容量が減少していく。
【0029】
このため、静電容量を測定すれば、用紙31の移動距離がX1未満か、X1とX2の間か、X2とX3の間か、X3とX4の間かが分かり、いずれの位置に用紙31が存在するかを検出することができる。これは、段階的な位置の検出であるため、用紙31が現在電極間に何mm進入しているかという連続的な位置を検出することはできない。
【0030】
そこで、静電容量センサを、
図3に示すような構成とする。静電容量センサは、各々が平行な一対の平板により構成される2つの平行電極(第1の平行電極と第2の平行電極)40、41を含む。第1の平行電極40と第2の平行電極41は、用紙42の搬送方向(副走査方向)に離間して設けられる。
【0031】
第1の平行電極40は、その副走査方向長さが、用紙42の副走査方向長さより短く、第2の平行電極41は、その副走査方向長さが、用紙42の副走査方向長さより長くされる。このような長さにする理由については後述する。また、この例では、第1の平行電極40と第2の平行電極41とが、副走査方向に対して垂直な方向(主走査方向)の一方の縁部にて連結部43により連結されている。
【0032】
静電容量センサは、そのほか、電流を発生させ、第1の平行電極40、第2の平行電極41に電流を供給する電流発生装置44と、第1の平行電極40間および第2の平行電極41間に発生した静電容量を測定する静電容量測定装置45を備える。
【0033】
電流発生装置44は、所定の電流値を有する電流を発生させ、第1の平行電極40間、第2の平行電極41間の各々に電流を流す。
【0034】
静電容量測定装置45は、上記の電流として交流電流を流し、電圧、電流の振幅比や位相差を検出し、検出した振幅比や位相差からインピーダンスRを計算し、インピーダンスRと交流の周波数からインダクタンスL、静電容量Cを計算するLCRメータを用いることができる。ここでは、静電容量測定装置45の一例としてLCRメータを挙げたが、これに限られるものではなく、静電容量Cを測定することができるものであればいかなる装置を用いてもよい。
【0035】
静電容量測定装置45は、用紙42が第1の平行電極40間を通過する際の静電容量を測定し、続いて、用紙42が第2の平行電極41間を通過する際の静電容量を測定する。
【0036】
静電容量センサは、さらに、電流発生装置44および静電容量測定装置45を制御するコントローラ46を備える。コントローラ46は、静電容量測定装置45により測定された静電容量に基づき、用紙42の位置を検出する。コントローラ46は、用紙42が第1の平行電極40間を通過する際の測定結果と、用紙42が第2の平行電極41間を通過する際に測定された静電容量とに基づき、用紙42が第2の平行電極41間にどの程度進入したかを連続的に算出する。
【0037】
コントローラ46は、電流発生装置44や静電容量測定装置45の制御や、用紙42の位置検出といった演算処理を実行するために、プログラムを記憶する記憶装置としてのROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリを備えることができる。また、コントローラ46は、その記憶装置からプログラムを読み出し実行するCPU(Central Processing Unit)、CPUに対して作業領域を提供するRAM(Random Access Memory)等を備えることができる。
【0038】
図4を参照して、静電容量センサを使用した用紙42の位置を検出する方法について説明する。
図4は、第1の平行電極40および第2の平行電極41に対する用紙42の位置と静電容量の変化を示している。
図4に示す例では、第1の平行電極40の副走査方向長さが、用紙42の副走査方向長さより短いL1とされ、第2の平行電極41の副走査方向長さが、用紙42の副走査方向長さより長いL0とされている。
【0039】
用紙42が第1の平行電極40間に進入するまで(
図4中、用紙移動距離が(1)の範囲)は、空気のみの場合の誘電率であるから、静電容量測定装置45により測定された静電容量は、低い一定の値を示す。第1の平行電極40間への用紙42の進入が開始されると(
図4中、(2)の範囲)、用紙42の進入に伴い、静電容量が増加していく。
【0040】
第1の平行電極40の副走査方向長さL1は、用紙42の副走査方向長さより短いので、用紙42の副走査方向の一端(末端)が第1の平行電極40間に進入する前に、用紙42の副走査方向の他端(先端)が第1の平行電極40間を出る。
【0041】
用紙42の先端が第1の平行電極40間を出てから、用紙42の末端が第1の平行電極40間へ進入するまでの間(
図4中、(3)の範囲)は、第1の平行電極40間に、副走査方向長さL1分の用紙42が常に存在する状態である。このため、この間は、静電容量がほぼ一定の値となる。このときの静電容量を静電容量測定装置45により測定し、静電容量C1として保存する。
【0042】
用紙42が搬送されていくと、第1の平行電極40間に、用紙42の末端が進入し、末端が第1の平行電極40間から出るまで(
図4中、(4)の範囲)、静電容量が減少していく。
【0043】
この例では、用紙42の末端が第1の平行電極40間から出るとすぐに、用紙42の先端が第2の平行電極41間に進入するように、間隔Kが用紙42の副走査方向長さと同一とされている。このため、第2の平行電極41間への用紙42の進入が開始されると(
図4中、(5)の範囲)、静電容量が増加していく。
【0044】
第2の平行電極41間への用紙42の進入が開始され、第2の平行電極41間へ進入した用紙42の副走査方向長さ(進入長さ)をXとし、そのときに測定された静電容量をC2とすると、次の式2で示される関係が成立する。
【0045】
【0046】
上記式2により、用紙42が第2の平行電極41間へ進入した際に、静電容量を測定するだけで、第2の平行電極41間にどれだけ用紙42が進入しているかを算出することができる。連続的に静電容量を測定すれば、連続的にどれだけ用紙42が進入しているかを算出することができるため、用紙42の位置を連続的に検出することができる。
【0047】
ちなみに、第1の平行電極40の副走査方向長さL1が、用紙42の副走査方向長さより長い場合、L1がどのような長さであっても、静電容量がほぼ一定の値になるため、上記式2で示される関係が成立しなくなり、用紙42の位置を検出することができなくなる。また、第2の平行電極41の副走査方向長さL0が、用紙42の副走査方向長さより短いと、用紙42の末端が第2の平行電極41間へ進入する前に、用紙42の先端が第2の平行電極41間から出ることになり、先端が第2の平行電極41間から出てから末端が第2の平行電極41間に進入するまでの用紙42の位置を検出することができなくなる。
【0048】
第1の平行電極40と第2の平行電極41とは、連結部43により一部が連結されるが、用紙42が搬送される経路部分は、離間している。間隔Kは、用紙42が第1の平行電極40間にも、第2の平行電極41間にも入っていると、
図4に示す(4)の範囲から(5)の範囲へ移行したことを検知することが困難になるため、用紙42の副走査方向長さ以上とされる。
【0049】
図3に示す例のように連結部43を設けることで、電流発生装置44や静電容量測定装置45と接続する配線を共通の配線とし、配線数を減らすことができる。なお、連結部43は、細長い板状のものを溶接する等して設けてもよいし、2枚の板の各々の同じ位置に同じ形状および大きさの切り欠きを設けて、第1の平行電極40および第2の平行電極41を形成するとともに形成してもよい。
【0050】
図5を参照して、静電容量センサ17による用紙42の位置を検出する処理について説明する。この処理は、印刷ジョブが実行され、給紙トレイ25から用紙42が給紙されることにより、ステップ500から開始する。ステップ501では、静電容量測定装置45による静電容量の測定を開始し、測定結果に基づき、第1の平行電極40間に用紙42が進入したかを判断する。以降、静電容量は、静電容量測定装置45により継続的に測定される。進入したと判断した場合、ステップ502へ進み、進入していないと判断した場合、進入するまで、ステップ501の処理を繰り返す。
【0051】
ステップ502では、測定された静電容量がほぼ一定の値になったかを判断する。すなわち、静電容量が一定の範囲内の値になったかを判断する。ちなみに、この範囲は、静電容量の測定誤差を考慮して決定することができる。静電容量がほぼ一定の値になったと判断した場合、ステップ503へ進み、ほぼ一定の値となったときの静電容量C1を保存する。ほぼ一定の複数の値が得られた場合は、その平均値をC1として保存することができる。静電容量C1は、コントローラ46が備えるメモリに保存することができる。ステップ502で一定の値になっていないと判断した場合、ステップ502の判断を繰り返す。
【0052】
ステップ504では、静電容量測定装置45の測定結果に基づき、第2の平行電極41間に用紙42が進入したかを判断する。進入したと判断した場合、ステップ505で、そのときの測定結果C2と、保存された静電容量C1と、予め決められた第1の平行電極40の副走査方向長さL1とから、第2の平行電極41間への用紙42の進入長さXを算出する。この進入長さXにより、用紙42の位置が検出される。進入していないと判断した場合、進入するまで、ステップ504の判断を繰り返す。
【0053】
ステップ506では、静電容量測定装置45の測定結果に基づき、第2の平行電極41間を用紙42が通過したかを判断する。通過していないと判断した場合、ステップ505へ戻り、位置検出を連続的に行う。通過したと判断した場合は、ステップ507へ進み、用紙42の位置検出を終了する。なお、印刷ジョブで複数枚を連続して印刷する場合は、1枚毎にステップ500からステップ507の処理が繰り返される。
【0054】
図3に示す静電容量センサは、第1の平行電極40と第2の平行電極41とが、連結部43により連結された構成であったが、連結部43を設けず、
図6に示すように分離されていてもよい。
【0055】
第1の平行電極40と第2の平行電極41とが分離されている場合、電流発生装置44や静電容量測定装置45と接続する配線を別個に設ける必要があるが、別個に静電容量を測定することができるので、第1の平行電極40と第2の平行電極41との間隔Kを、用紙42の副走査方向長さより短い間隔にすることができる。間隔Kを短くすることで、装置の小型化を図ることができる。
【0056】
静電容量センサは、静電容量を測定することで、用紙42の位置のほか、用紙42の含水率の分布を検出することができる。用紙42に含水率の分布が存在せず、含水率が一定であれば、用紙42が一定距離搬送され、電極間に進入するごとに測定される静電容量は、
図4に示すように、一定量ずつ増加する。一方、含水率の分布が存在する場合は、電極間に進入するごとに静電容量が増加していくが、増加の割合が変化する。この変化から、含水率の分布を検出することができる。なお、静電容量から含水率への変換は、変換式または変換テーブルを使用して行うことができる。
【0057】
この場合の含水率の分布は、副走査方向の分布のみを検出することができる。検出された含水率の分布は、定着時に発生する用紙42が撓む現象(カール)を減少させるための加熱条件を変える制御等に使用することができる。この制御は、コントローラ46により実行することができ、この制御により、印刷品質の低下や紙詰まりをなくすことができる。
【0058】
第1の平行電極40と第2の平行電極41はそれぞれ、一対の同じ形状および大きさの平板を離間して配置し、その間を用紙42が通過する構成とされており、
図3および
図6に示す例では、用紙42の先端上のいずれの点も同時に第1の平行電極40間および第2の平行電極41間に進入するような配置とされている。すなわち、用紙42の先端の一辺と、第1の平行電極40および第2の平行電極41の、進入しようとする用紙42の先端に対向する一辺とが平行に配置されている。
【0059】
しかしながら、このような配置に限定されるものではなく、用紙42の先端上の少なくとも2点が時間的にずれて進入するような配置とされていてもよい。具体的には、
図7に示すように、用紙42の先端の一辺に対し、第1の平行電極40および第2の平行電極41の、進入しようとする用紙42の先端に対向する一辺が斜めになるように配置することができる。このため、用紙42の先端の、例えば点50a、50b、50cが同時ではなく、時間的にずれて各電極間に進入することになる。
【0060】
このような配置にすることで、用紙42の副走査方向の含水率の分布に加えて、副走査方向に垂直な主走査方向の含水率の分布も検出することができる。
図7に示す例では、用紙42の先端に対し、第1の平行電極40および第2の平行電極41を斜めに配置する例を示したが、配置を変えるほか、第1の平行電極40および第2の平行電極41を構成する平板の形状を変えてもよい。用紙42の先端の少なくとも2点が時間的にずれて進入するように、平板の形状を、例えば階段状のものとしてもよい。
【0061】
ところで、画像形成装置では、駆動手段としてのモータにより搬送ローラを駆動することで、用紙を搬送している。従来のモータ制御を
図8に例示する。従来のモータ制御では、モータに取り付けられるエンコーダ等の信号を、画像形成装置のコントローラにフィードバックし、コントローラでモータ回転数を検出し、その回転数が、設定された目標のモータ回転数となるようにモータ駆動信号を制御している。
【0062】
具体的には、検出した回転数と、目標とする回転数とを比較し、その差の分だけ回転数を上げ、または下げた信号を生成し、モータに対して生成した信号を出力する。
【0063】
このようなモータ回転数による制御では、モータ回転数と用紙の移動量との間に差がある場合、その差を制御に反映させることができないので、正確に用紙を搬送することができない。
【0064】
そこで、静電容量センサ17により検出した用紙の位置を用いて、モータ駆動信号を制御するように構成する。これにより、モータ回転数と用紙の移動量との間の差を制御に反映させて、正確に用紙を搬送することが可能となる。
【0065】
静電容量センサ17は、第2の平行電極41間へ進入した用紙42の進入長さXを算出し、算出したXから用紙42の現在の位置を検出する。
図9に示すように、静電容量センサ17から出力された位置の情報に基づき、画像形成装置のコントローラは、用紙42の移動距離を検出し、検出した移動距離を用いてモータを制御する。
【0066】
具体的には、コントローラは、用紙42の移動距離を検出するとともに、目標のモータ回転数に対応する用紙の移動距離を算出し、それらを比較する。そして、検出した移動距離が目標の移動距離になるように、その差の分だけモータ回転数を上げ、または下げた信号を生成し、モータに対して生成した信号を出力する。
【0067】
検出された用紙42の位置は、モータにより用紙42を正確に搬送する目的だけではなく、用紙42の搬送の異常を検出する目的でも使用することができる。搬送異常の一例としては、用紙42の滑り(スリップ)を挙げることができる。
【0068】
用紙42は、モータにより搬送ローラを駆動することで搬送される。モータの回転速度Vmは、エンコーダ等の信号から検出される。
【0069】
図10は、用紙42の移動距離と時間との関係を示した図である。用紙42の移動距離x(mm)は、
図10に示すように、経過時間t(sec)に比例して増加する。このため、任意の区間の移動距離x1と、その移動距離x1だけ移動するのにかかった時間t1とから傾きV1を求め、そのV1を用紙42の搬送速度Vpとして算出することができる。
【0070】
正常に動作していれば、モータの回転速度と用紙42の搬送速度とは同一の速度になることから、検出されたモータの回転速度Vmと算出された用紙42の搬送速度Vpとを比較する。ちなみに、モータが搬送ローラを回転させ、搬送ローラが自身の回転により用紙42を搬送するので、用紙42の搬送速度がモータの回転速度を超えることはない。
【0071】
比較した結果、Vm>Vpとなる場合、モータが回転しているのに用紙42が適切に搬送されていない(搬送異常がある)ことを示し、用紙42がスリップしていると判断することができる。
【0072】
これまで本発明を、位置検出装置、位置検出方法および画像形成装置として上述した実施の形態をもって説明してきた。しかしながら、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、他の実施の形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができるものである。また、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0073】
10…ADF
11…画像読み取り装置
12…プリンタユニット
13…給紙ユニット
14…手差しユニット
15…排紙ユニット
16…操作パネル
17…静電容量センサ
20…書き込みユニット
21…感光体ドラム
22…現像装置
23…搬送ベルト
24…定着装置
25…給紙トレイ
26…給紙ローラ
30…平行電極
31…用紙
40…第1の平行電極
41…第2の平行電極
42…用紙
43…連結部
44…電流発生装置
45…静電容量測定装置
46…コントローラ
50a~50c…点
【先行技術文献】
【特許文献】
【0074】