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特許7081350立体造形用樹脂粉末、立体造形物の製造装置、立体造形物の製造方法、及び立体造形用樹脂粉末の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】立体造形用樹脂粉末、立体造形物の製造装置、立体造形物の製造方法、及び立体造形用樹脂粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/153 20170101AFI20220531BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20220531BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220531BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220531BHJP
   B33Y 40/00 20200101ALI20220531BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20220531BHJP
   B29B 9/06 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
B29C64/153
B33Y70/00
B33Y30/00
B33Y10/00
B33Y40/00
B29C64/314
B29B9/06
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018129626
(22)【出願日】2018-07-09
(65)【公開番号】P2019084817
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2017216021
(32)【優先日】2017-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】岩附 仁
(72)【発明者】
【氏名】山下 康之
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 充
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 啓
(72)【発明者】
【氏名】阿萬 康知
(72)【発明者】
【氏名】樋口 信三
(72)【発明者】
【氏名】飯田 崇一朗
(72)【発明者】
【氏名】鴨田 紀一
(72)【発明者】
【氏名】武藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】井関 敏之
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/112723(WO,A1)
【文献】特開2000-330468(JP,A)
【文献】国際公開第2017/179139(WO,A1)
【文献】特開2009-175447(JP,A)
【文献】特開2016-210958(JP,A)
【文献】特開2010-214858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B29B 9/00- 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略平面部を有し、且つ下記条件1を満たす粉末Aを含む立体造形用樹脂粉末であって、
前記粉末Aの下記条件2により求められる個数平均平面径Dy(μm)と、前記立体造形用樹脂粉末の個数平均粒子径Dn(μm)と、の比Dy/Dnは、0.50以上1.50以下である立体造形用樹脂粉末。
[条件1]
SEM(走査型電子顕微鏡)観察で得られた画像から、前記立体造形用樹脂粉末に含まれる所定の樹脂粉末における投影面積と同等面積に相当する円の直径X(μm)と、前記所定の樹脂粉末における略平面部の投影面積と同等面積に相当する円の直径Y(μm)と、を算出したときに、比Y/Xは0.5以上1.0以下である。
[条件2]
SEM(走査型電子顕微鏡)観察で得られた画像中の複数の前記粉末Aにおいて、それぞれ、略平面部の投影面積と同等面積に相当する円の直径Y(μm)を算出し、算出した複数の前記直径Yの平均を個数基準で算出した個数平均平面径Dy(μm)を求める。
【請求項2】
前記比Dy/Dnは、0.70以上1.20以下である請求項1に記載の立体造形用樹脂粉末。
【請求項3】
前記条件2で算出した複数の前記直径Yの分布において、前記直径Yが2.0μm以下である前記粉末Aの個数の積算値は、前記粉末Aの全個数に対して20.0%以下である請求項1又は2に記載の立体造形用樹脂粉末。
【請求項4】
前記条件2で算出した複数の前記直径Yの分布において、前記直径Yが2.0μm以下である前記粉末Aの個数の積算値は、前記粉末Aの全個数に対して10.0%以下である請求項1又は2に記載の立体造形用樹脂粉末。
【請求項5】
前記個数平均平面径Dyは、40.0μm以上100.0μm以下である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の立体造形用樹脂粉末。
【請求項6】
前記略平面部は、略円形である請求項1乃至5のいずれか一項に記載の立体造形用樹脂粉末。
【請求項7】
前記略平面部は、円形度が0.85以上である請求項1乃至6のいずれか一項に記載の立体造形用樹脂粉末。
【請求項8】
前記粉末Aは、柱体である請求項1乃至7のいずれか一項に記載の立体造形用樹脂粉末。
【請求項9】
前記柱体は、高さが5.0μm以上100.0μm以下である請求項8に記載の立体造形用樹脂粉末。
【請求項10】
前記粉末Aは、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアセタール、及びポリエーテルエーテルケトンから選択される少なくとも一種を含む請求項1乃至9のいずれか一項に記載の立体造形用樹脂粉末。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の立体造形用樹脂粉末が収容されている収容手段と、前記立体造形用樹脂粉末を含む層を形成する層形成手段と、前記層に電磁照射して溶融させる溶融手段と、を有する立体造形物の製造装置。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の立体造形用樹脂粉末を含む層を形成する層形成工程と、前記層に電磁照射して溶融させる溶融工程と、を繰り返す立体造形物の製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の立体造形用樹脂粉末の製造方法であって、
前記立体造形用樹脂粉末を構成する材料を線維状材料に形成する線維化工程と、
同方向に配置された複数の前記線維状材料を一体化させて一体化材料を形成する一体化工程と、
前記一体化材料を裁断する裁断工程と、
を有する立体造形用樹脂粉末の製造方法。
【請求項14】
略平面部を有し、且つ下記条件1を満たす粉末Aを含む樹脂粉末であって、
前記粉末Aの下記条件2により求められる個数平均平面径Dy(μm)と、前記樹脂粉末の個数平均粒子径Dn(μm)と、の比Dy/Dnは、0.50以上1.50以下である樹脂粉末。
[条件1]
SEM(走査型電子顕微鏡)観察で得られた画像から、前記樹脂粉末に含まれる所定の樹脂粉末における投影面積と同等面積に相当する円の直径X(μm)と、前記所定の樹脂粉末における略平面部の投影面積と同等面積に相当する円の直径Y(μm)と、を算出したときに、比Y/Xは0.5以上1.0以下である。
[条件2]
SEM(走査型電子顕微鏡)観察で得られた画像中の複数の前記粉末Aにおいて、それぞれ、略平面部の投影面積と同等面積に相当する円の直径Y(μm)を算出し、算出した複数の前記直径Yの平均を個数基準で算出した個数平均平面径Dy(μm)を求める。
【請求項15】
略平面部を有し、且つ下記条件1を満たす粉末Aを含む立体造形用樹脂粉末であって、
前記粉末Aの下記条件2により求められる個数平均平面径Dy(μm)と、前記立体造形用樹脂粉末の個数平均粒子径Dn(μm)と、の比Dy/Dnは、0.50以上1.50以下である立体造形用樹脂粉末。
[条件1]
投影画像から、前記立体造形用樹脂粉末に含まれる所定の樹脂粉末における投影面積と同等面積に相当する円の直径X(μm)と、前記所定の樹脂粉末における略平面部の投影面積と同等面積に相当する円の直径Y(μm)と、を算出したときに、比Y/Xは0.5以上1.0以下である。
[条件2]
投影画像中の複数の前記粉末Aにおける略平面部の各投影面積と同等面積に相当する各円の直径Y(μm)を算出し、算出した複数の前記直径Y の平均を個数基準で算出した個数平均平面径Dy(μm)を求める。
【請求項16】
略平面部を有し、且つ下記条件1を満たす粉末Aを含む樹脂粉末であって、
前記粉末Aの下記条件2により求められる個数平均平面径Dy(μm)と、前記樹脂粉末の個数平均粒子径Dn(μm)と、の比Dy/Dnは、0.50以上1.50以下である樹脂粉末。
[条件1]
投影画像から、前記樹脂粉末に含まれる所定の樹脂粉末における投影面積と同等面積に相当する円の直径X(μm)と、前記所定の樹脂粉末における略平面部の投影面積と同等面積に相当する円の直径Y(μm)と、を算出したときに、比Y/Xは0.5以上1.0以下である。
[条件2]
投影画像中の複数の前記粉末Aにおける略平面部の各投影面積と同等面積に相当する各円の直径Y(μm)を算出し、算出した複数の前記直径Y の平均を個数基準で算出した個数平均平面径Dy(μm)を求める。
【請求項17】
立体造形用樹脂粉末を含む層を形成する層形成工程と、前記層に電磁照射して溶融させる溶融工程と、を繰り返す立体造形物の製造方法であって、
前記立体造形用樹脂粉末は、略平面部を有し、且つ下記条件1を満たす粉末Aを含み、
前記粉末Aの下記条件2により求められる個数平均平面径Dy(μm)と、前記立体造形用樹脂粉末の個数平均粒子径Dn(μm)と、の比Dy/Dnは、0.50以上1.50以下である立体造形物の製造方法。
[条件1]
投影画像から、前記立体造形用樹脂粉末に含まれる所定の樹脂粉末における投影面積と同等面積に相当する円の直径X(μm)と、前記所定の樹脂粉末における略平面部の投影面積と同等面積に相当する円の直径Y(μm)と、を算出したときに、比Y/Xは0.5以上1.0以下である。
[条件2]
投影画像中の複数の前記粉末Aにおける略平面部の各投影面積と同等面積に相当する各円の直径Y(μm)を算出し、算出した複数の前記直径Y の平均を個数基準で算出した個数平均平面径Dy(μm)を求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体造形用樹脂粉末、立体造形物の製造装置、立体造形物の製造方法、及び立体造形用樹脂粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立体造形物を製造する方式として、粉末床溶融(PBF:powder bed fusion)方式が知られている。PBF方式としては、選択的にレーザーを照射して立体造形物を形成するSLS(selective leser sintering)方式や、マスクを使い平面状にレーザーを当てるSMS(selective mask sintering)方式などが知られている。また、PBF方式以外の立体造形物を製造する方式としては、インクを用いたHSS(high speed sintering)方式、BJ(Binder jetting)方式などが知られている。
【0003】
立体造形物を製造する際に用いられる樹脂の粉末としては、例えば、樹脂溶融液を押し出した後、延伸して形成した樹脂繊維を、可動式のクランプで固定して切断ブレードに向かって移動させ、樹脂繊維を切断して得られる略円筒状の樹脂粉末が開示されている(特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の樹脂粉末は、該樹脂粉末を用いて形成した立体造形物表面の平滑性、及び該樹脂粉末の流動性に劣る課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、略平面部を有し、且つ下記条件1を満たす粉末Aを含む立体造形用樹脂粉末であって、前記粉末Aの下記条件2により求められる個数平均平面径Dy(μm)と、前記立体造形用樹脂粉末の個数平均粒子径Dn(μm)と、の比Dy/Dnは、0.50以上1.50以下である。
[条件1]
SEM(走査型電子顕微鏡)観察で得られた画像から、前記立体造形用樹脂粉末に含まれる所定の樹脂粉末における投影面積と同等面積に相当する円の直径X(μm)と、前記所定の樹脂粉末における略平面部の投影面積と同等面積に相当する円の直径Y(μm)と、を算出したときに、比Y/Xは0.5以上1.0以下である。
[条件2]
SEM(走査型電子顕微鏡)観察で得られた画像中の複数の前記粉末Aにおいて、それぞれ、略平面部の投影面積と同等面積に相当する円の直径Y(μm)を算出し、算出した複数の前記直径Yの平均を個数基準で算出した個数平均平面径Dy(μm)を求める。
【発明の効果】
【0006】
本発明の立体造形用樹脂粉末は、該樹脂粉末を用いて形成した立体造形物表面の平滑性、及び樹脂粉末の流動性に優れる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、立体造形用樹脂粉末の一例を示す写真である。
図2図2は、円柱状の樹脂を斜め方向に切断することで形成された略平面部を有する樹脂粉末の一例を示す模式図である。
図3A図3Aは、円柱体形状の粉末Aの一例を示す概略斜視図である。
図3B図3Bは、図3Aにおける円柱体形状の粉末Aの一例を示す側面図である。
図3C図3Cは、円柱体形状の端部に頂点を有さない粉末Aの一例を示す側面図である。
図3D図3Dは、円柱体形状の端部に頂点を有さない粉末Aの一例を示す側面図である。
図3E図3Eは、円柱体形状の端部に頂点を有さない粉末Aの一例を示す側面図である。
図3F図3Fは、円柱体形状の端部に頂点を有さない粉末Aの一例を示す側面図である。
図3G図3Gは、円柱体形状の端部に頂点を有さない粉末Aの一例を示す側面図である。
図3H図3Hは、円柱体形状の端部に頂点を有さない粉末Aの一例を示す側面図である。
図3I図3Iは、円柱体形状の端部に頂点を有さない粉末Aの一例を示す側面図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る立体造形物の製造装置を示す概略図である。
図5図5は、立体造形物の製造方法を説明するための概念図である。
図6図6は、立体造形物の製造方法を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について説明する。なお、以降で説明する立体造形用樹脂粉末は、樹脂粉末の一例であり、本願はこれに限定されない。従って、樹脂粉末は、立体造形用樹脂粉末以外に、例えば、表面収縮剤、スペーサー、滑剤、塗料、砥石、添加剤、二次電池セパレーター、食品、化粧品、衣服、自動車、精密機器、半導体、航空宇宙、医療、金属代替材料等の用途で用いる粉末であってもよい。
【0009】
<<樹脂粉末>>
樹脂粉末の一例である本実施形態の立体造形用樹脂粉末は、略平面部を有し、且つ所定の条件1を満たす粉末Aを含む立体造形用樹脂粉末であって、粉末Aの所定の条件2により求められる個数平均平面径Dy(μm)と、立体造形用樹脂粉末の個数平均粒子径Dn(μm)と、の比Dy/Dnは、0.50以上1.50以下である。
なお、立体造形用樹脂粉末は、複数の樹脂粉末の集合体である。また、後述する粉末A以外に、粉末Aに相当しない粉末を含んでいてもよい。粉末Aの立体造形用樹脂粉末に対する含有量は、50質量%以上100質量%以下が好ましく、75質量%以上100質量%以下がより好ましく、85質量%以上100質量%以下が特に好ましい。
【0010】
-個数平均粒子径Dn-
後述する粉末Aを含む立体造形用樹脂粉末の個数平均粒子径Dn(μm)は、45μm以上110μm以下であることが好ましく、45μm以上70μm以下であることがより好ましい。
45μm以上110μm以下であることにより、立体造形用樹脂粉末全体における過度に微小な粉末の割合を低下させ、大きさのばらつきが少ない立体造形用樹脂粉末とすることができ、これにより、流動性に優れる立体造形用樹脂粉末を得ることができる。
なお、立体造形用樹脂粉末における体積平均粒子系/個数平均粒子径(Dv/Dn)は、立体造形物の造形精度向上の観点で、2.00以下が好ましく、1.50以下がより好ましく、1.20以下が特に好ましい。
個数平均粒子径Dnは、例えば、粒度分布測定装置(シスメックス製F-PIA3000)などを用いて測定することができ、体積平均粒子系Dvは、例えば、粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、microtrac MT3300EXII)などを用いて測定することができる。
【0011】
<粉末A>
-略平面部-
粉末Aは、特定の要件を満たす樹脂粉末のことであり、1つの樹脂粉末である。まず、図1を用いて、粉末Aについて説明する。図1は、立体造形用樹脂粉末の一例を示す写真である。また、図1において点線の円で囲まれた立体造形用樹脂粉末は、図1において複数個存在する粉末Aのうちの一部を示す。なお、立体造形用樹脂粉末を示す写真は、SEM(走査型電子顕微鏡)観察による写真である。なお、以降の説明では、投影画像を得る手段の一例としてSEM(走査型電子顕微鏡)を用いた場合について説明するが、投影画像を得る手段としてはSEMに限定されず、光学顕微鏡などの公知の画像解析装置を用いることができる。
図1に示すように、粉末Aは、略平面部を有する。略平面部を有する粉末Aが本実施形態の立体造形用樹脂粉末を用いて形成した立体造形物の表面を形成することで、表面の平滑性が優れる立体造形物を得ることができる。
なお、略平面部は、立体造形物表面の平滑性を優れるものとすることができる範囲内であれば、完全に平面である必要はなく、部分的に凸部や凹部を有する形状等であってもよい。但し、略平面部は、粉末Aの有する略平面部以外の面と区別可能な面である必要があり、例えば、重合法で作製される略球形の立体形状が有する曲面は略平面部には相当しない。重合法で作製される樹脂粉末を用いた場合、立体造形物表面に、平滑面を有さない樹脂粉末が並ぶため、立体造形物表面の平滑性に劣る。
【0012】
また、略平面部は、SEM(走査型電子顕微鏡)観察で得られた粉末Aの投影画像において、略円形の形状であることが好ましい。略円形としては、例えば、真円、楕円などの形状が挙げられるが、真円形状であることが好ましい。なお、略円形の外縁部は一部が欠けていてもよい。また、略円とは、長径と短径との比(長径/短径)が1以上10以下であるものを意味する。
また、略平面部は、円形度が0.85以上であることが好ましい。なお、円形度は、略平面部の面積をS、略平面部の周囲長をLとしたときに、下式により求められる。
円形度=4πS/L ・・・(式)
粉末Aが略円柱体であった場合、粉末Aの投影画像において円形度が高いほど、粉末の流動性が高くなるため、粉末Aを上方から観察した際に、略平面部の投影面積が粉末Aの投影面積に対して占める割合が多くなる。また、粉末Aの投影画像において円形度が高いほど、粉末Aが均一・緻密に配置されやすくなるため、粉末Aの略平面部が立体造形物の表面を形成しやすくなり、表面の平滑性が優れる立体造形物を得ることができる。
【0013】
-比Y/X-
粉末Aは、比Y/Xに関する下記の条件1を満たす。
[条件1]
SEM(走査型電子顕微鏡)観察で得られた画像から、立体造形用樹脂粉末に含まれる所定の樹脂粉末における投影面積と同等面積に相当する円の直径X(μm)と、所定の樹脂粉末における略平面部の投影面積と同等面積に相当する円の直径Y(μm)と、を算出したときに、比Y/Xは0.5以上1.0以下である。
比Y/Xが0.5以上1.0以下であることにより、所定の樹脂粉末を上方から観察した際に、略平面部の投影面積が所定の樹脂粉末の投影面積に対して占める割合が多くなる。言い換えると、所定の樹脂粉末を用いた立体造形物の表面を上方から観察した際に、略平面部の投影面積が所定の樹脂粉末の投影面積に対して占める割合が多くなる粉末であることを意味する。そのため、比Y/Xが0.5以上1.0以下であることにより、所定の樹脂粉末の略平面部が立体造形物の表面を形成しやすくなり、表面の平滑性が優れる立体造形物を得ることができる。なお、所定の樹脂粉末とは、SEM観察で得られた画像中における立体造形用樹脂粉末に含まれる樹脂粉末の1つをいう。
なお、粉末が略平面部を有する略円柱体形状であったとしても、例えば、略円柱体の高さ方向が、略円柱体の上面および底面(略平面部)の直径に比べて過度に長い形状(以下、棒形状粉末とも称する)であった場合、このような粉末は略平面部を上方に向けて立つことが困難となる(例えば、図1において実線で囲まれた立体造形用樹脂粉末)。従って、棒形状粉末では、略円柱体の側面(略平面部ではない面)を上方に向けた状態の粉末(略円柱体が倒れた状態の粉末)の占める割合が多くなり、比Y/Xが0.5以上1.0以下となる粉末が存在しないか、非常に少なくなる。
比Y/Xの具体的な算出方法は、次の手順で行われる。まず、平面板上に配置された立体造形用樹脂粉末を、SEM(走査型電子顕微鏡)を用い150倍の倍率で写真撮影する。次に、撮影した画像の中から所定の樹脂粉末の投影面積および所定の樹脂粉末の略平面部1箇所の投影面積を求める。次に、所定の樹脂粉末の投影面積と同等面積に相当する円の直径X(μm)と、略平面部の投影面積と同等面積に相当する円の直径Y(μm)と、を算出し、比Y/Xを得る。ここで、「同等面積」について説明する。例えば、図1に示すように、所定の樹脂粉末の略平面部の形状は、真円であるもの以外に、真円以外の歪んだ形状などをとり得る。そのため、一律に面積を算出することが困難な場合もあるため、投影面積と同等面積としている。なお、SEM(走査型電子顕微鏡)の倍率は立体造形用樹脂粉末の大きさにより適宜変更可能である。また、本願において投影面積とは、平面上への投影像の面積をいい、具体的にはSEM画像から算出される面積をいう。より具体的には、試料(立体造形物用樹脂粉末)配置面の鉛直方向から観察したときの面積をいう。
なお、破砕法で作製される粉末は、破砕面が略平面部として観察される場合があるが、破砕面1箇所の投影面積は小さく、比Y/Xを満たさない。破砕法で作製される樹脂粉末を用いた場合、立体造形物表面に、各粉末が共通する立体形状をとらず且つ粒径のばらつきが大きい樹脂粉末が並ぶため、立体造形物表面の平滑性に劣る。また、粒径のばらつきが大きいことにより、樹脂粉末の流動性が劣る。なお、重合法で作製される粉末も、平滑面を持たないため、比Y/Xを満たさない。
なお、本願では、略平面部を有する粉末を粉末Aと定義するのではなく、略平面部を有する粉末であって且つ比Y/Xが0.5以上1.0以下である粉末を粉末Aと定義する。
【0014】
-個数平均平面径Dy-
立体造形用樹脂粉末に含まれる複数の粉末Aは、個数平均平面径Dy(μm)が40.0μm以上100.0μm以下であることが好ましい。個数平均平面径Dy(μm)は、投影画像中の複数の粉末Aにおける略平面部の各投影面積と同等面積に相当する各円の直径Y(μm)から求められ、具体的には、下記条件2により求められる。
[条件2]
SEM(走査型電子顕微鏡)観察で得られた画像中の複数の粉末Aにおいて、それぞれ、略平面部の投影面積と同等面積に相当する円の直径Y(μm)を算出し、算出した複数の直径Yの平均を個数基準で算出した個数平均平面径Dy(μm)を求める。
個数平均平面径Dy(μm)が40.0μm以上であることにより、略平面部を有するが微小である粉末の割合を低下させ、大きさのばらつきが少ない複数の粉末Aとすることができ、これにより、流動性に優れる立体造形用樹脂粉末を得ることができる。また、個数平均平面径Dy(μm)が100.0μm以下であることにより、過度に大きい略平面部を有するもの、例えば、図2の模式図で示すような円柱状の樹脂を斜め方向に切断することで形成された略平面部を有する樹脂粉末の割合を低下させることができる。これにより、形状のばらつきが少ない複数の粉末Aとすることができ、立体造形物の表面の平滑性が優れる立体造形物を得ることができるとともに、流動性に優れる立体造形用樹脂粉末を得ることができる。
個数平均平面径Dyの具体的な算出方法は、次の手順で行われる。まず、平面板上に配置された立体造形用樹脂粉末を、SEM(走査型電子顕微鏡)を用い150倍の倍率で写真撮影する。次に、撮影した画像中の立体造形用樹脂粉末から粉末Aに相当するものを判断する。次に、粉末Aに相当すると判断された複数の樹脂粉末において、それぞれ、略平面部の投影面積と同等面積に相当する円の直径Y(μm)を算出し、算出された複数の直径Yの総和を粉末Aの数で除算することで個数平均平面径Dyを求める。なお、個数平均平面径Dyを求める際に用いられる複数の粉末Aの数は、100個以上である。なお、SEM(走査型電子顕微鏡)の倍率は立体造形用樹脂粉末の大きさにより適宜変更可能である。
【0015】
また、上記条件2で算出した複数の直径Yの分布において、直径Yが2.0μm以下である粉末Aの個数の総和である積算値は、粉末Aの全個数に対して20.0%以下であることが好ましく、10.0%以下であることが好ましい。
20.0%以下であることにより、略平面部を有するものの微小となった粉末の割合を低下させ、大きさのばらつきが少ない粉末Aとすることができ、これにより、流動性に優れる立体造形用樹脂粉末を得ることができる。また、20.0%以下であることにより、立体造形用樹脂粉末を、立体造形物を作製する場所に供給ローラやブレード等の供給手段を用いて供給するときに、供給手段に対する立体造形用樹脂粉末の付着を抑制することができ、それにより均一な樹脂粉末の供給を行うことができる。
【0016】
-比Dy/Dn-
上記の複数の粉末Aの個数平均平面径Dy(μm)と、上記の立体造形用樹脂粉末の個数平均粒子径Dnと、の比Dy/Dnは、0.50以上1.50以下である。
比Dy/Dnが0.50以上であることにより、略平面部を有するが微小である粉末の割合を低下させ、大きさのばらつきが少ない複数の粉末Aとすることができ、これにより、流動性に優れる立体造形用樹脂粉末を得ることができる。また、比Dy/Dnが0.50以上であることにより、粉末Aが十分な面積の略平面部を有することができ、それにより立体造形物表面が均一な状態になり、平滑性が向上するため好ましい。
また、比Dy/Dnが1.50以下であることにより、立体造形用樹脂粉末全体における微小な粉末の割合を低下させ、大きさのばらつきが少ない立体造形用樹脂粉末とすることができ、これにより、流動性に優れる立体造形用樹脂粉末を得ることができる。また、比Dy/Dnが1.50以下であることにより、粉末Aが扁平形状とならず、粉末A同士の付着、凝集を抑制することができる。それにより、立体造形用樹脂粉末を立体造形物の造形エリアに供給する際にスジなどが生じることを抑制することができ、平滑性が向上するため好ましい。
なお、粉末が上記のような棒形状粉末であった場合、Dnが大きくなるため、比Dy/Dnが0.50以上となることは困難である。
【0017】
-粉末Aの立体形状-
粉末Aの形状としては、柱体であることが好ましい。また、柱体の底面において引ける最長の直線の長さに対する高さの比が、0.8倍以上2.0倍以下が好ましく、0.8倍以上1.8倍以下がより好ましく、0.8倍以上1.5倍以下が更に好ましい。高さの比が、0.8倍以上1.5倍以下であることにより、テーブル上に硬貨を撒いたときのように、略平面部が上方を向いて配置されやすくなる。略平面部が立体造形物の表面を形成しやすくなることで、表面の平滑性が優れる立体造形物を得ることができる。
【0018】
柱体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、略円柱体、略角柱などが挙げられる。形状が、柱体であることにより、隙間なく詰めることができ、得られる立体造形物の引張強度を向上することができる。
柱体としては、向かい合う面を有することが好ましい。向かい合う面は傾斜がついていてもよく、生産性と立体造形時の安定性から、平行で互いに傾斜がついていないものがより好ましい。なお、柱体は、角部の平滑化処理などがなされることで、粉末流動性をさらに向上してもよい。
【0019】
--略円柱体--
略円柱体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真円柱体、楕円柱体などが挙げられる。これらの中でも、真円柱体が好ましい。なお、略円柱体の円部分は、一部が欠けていてもよい。また、略円とは、長径と短径との比(長径/短径)が、1以上10以下であるものを意味する。
【0020】
また、略円柱体は、略円の向かい合う面を有することが好ましい。
向かい合う面の円の大きさが多少ずれていてもよいが大きい面と小さい面との円の直径の比(大きい面/小さい面)としては、1.5倍以下が好ましく、形が統一されている方が密度を詰めることができる点から、1.1倍以下がより好ましい。
【0021】
略円柱体の直径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm以上100μm以下が好ましい。なお、略円柱体の円形部分が楕円形である場合は、直径とは、長径を意味する。
略円柱体の高さ(両面間の距離)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm以上100μm以下が好ましい。
【0022】
--略角柱--
略角柱としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、略長方体、略立方体、略三角柱、略六角柱などが挙げられる。これらの中でも、略六角柱が好ましく、略正六角柱であることがより好ましい。形状が、略角柱であることにより、隙間なく詰めることができ、得られる立体造形物の引張強度を向上することができる。なお、略角柱は、一部が欠けていてもよい。
また、略角柱は、多角形の向かい合う面を有することが好ましい。
【0023】
略角柱の底面において引ける最長の直線の長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm以上100μm以下が好ましい。
略角柱の高さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm以上100μm以下が好ましい。
【0024】
柱体の面と面の間の高さを形成する辺は、切断時に樹脂が軟化し、つぶれた状態(円柱形ではたる型)も本実施形態の範囲に含まれるが、弧を描くもの同士で空間を空けてしまうことから、粉末を密に詰めることができる点から、辺が直線状になっているものが好ましい。
【0025】
--頂点を有さない柱体-
粉末Aは、頂点を有さない柱体であることが好ましい。頂点とは、柱体を側面から観察したときに存在する角の部分をいう。柱体の形状について、図3A図3Iを用いて説明する。図3Aは、円柱体形状の粉末Aの一例を示す概略斜視図である。図3Bは、図3Aにおける円柱体形状の粉末Aの一例を示す側面図である。図3Cは、円柱体形状の端部に頂点を有さない粉末Aの一例を示す側面図である。図3D図3Iは、いずれも、円柱体形状の端部に頂点を有さない粉末Aの他の一例を示す側面図である。
【0026】
図3Aに示す円柱体を、側面から観察すると、図3Bに示すように長方形の形状を有しており、角の部分、すなわち、頂点が4箇所存在する。この端部に頂点を持たない形状の一例が図3Cから図3Iである。柱体の頂点の有無の確認は、柱体の側面における投影像から判別することができる。例えば、柱体粒子の側面に対して走査型電子顕微鏡(装置名:S4200、株式会社日立製作所製)等を用いて観察し、二次元像として取得する。この場合、投影像は4辺形となり、各々隣り合う2辺によって構成される部位を端部とすると、隣り合う2つの直線のみで構成される場合は、角が形成され頂点を持つことになり、図3C図3Iのように端部が円弧によって構成される場合は端部に頂点を持たないことになる。
【0027】
-粉末Aの結晶性-
粉末Aは、熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂とは、熱をかけると可塑化し、溶融するものを意味する。熱可塑性樹脂の中でも、結晶性樹脂を用いてもよい。なお、結晶性樹脂とは、ISO 3146(プラスチック転移温度測定方法、JIS K7121)の測定した場合に、融解ピークを有するものを意味する。
【0028】
結晶性樹脂としては、結晶制御された結晶性熱可塑性樹脂が好ましく、熱処理、延伸、結晶核材、超音波処理等、外部刺激の方法により、結晶サイズや結晶配向が制御されている結晶性熱可塑性樹脂がより好ましい。
【0029】
結晶性熱可塑性樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂のガラス転移温度以上の温度で加熱し、結晶性を高めるアニーリング処理や、より結晶性を高めるために結晶核剤を添加し、その後アニーリング処理する方法がある。また、超音波を当てることにより結晶性を高めることや、溶媒に溶解しゆっくりと揮発させることにより結晶性を高める方法、外部電場印加処理による結晶性成長等の工程を経ること、もしくは、延伸することにより高配向、高結晶にしたものを粉砕、裁断等の加工を施す方法などが挙げられる。
【0030】
アニーリングとしては、樹脂をガラス転移温度から50℃高い温度にて3日間加熱し、その後、室温までゆっくりと冷却することにより行うことができる。
【0031】
延伸としては、押し出し加工機を用いて、融点より30℃以上高い温度にて撹拌しながら、繊維状に立体造形用樹脂溶解液を伸ばす。この際、溶融液は、1倍以上10倍以下程度に延伸し繊維にする。延伸は、樹脂ごと溶融粘度ごとに最大の延伸倍率を変えることができる。
【0032】
超音波としては、グリセリン(東京化成工業株式会社製、試薬グレード)溶媒を樹脂に対して5倍ほど加えた後、融点より20℃高い温度まで加熱し、超音波発生装置(ヒールシャー社製、ultrasonicator UP200S)にて24kHz、振幅60%での超音波を2時間与えることにより行うことができる。その後、室温にてイソプロパノールの溶媒で洗浄後、真空乾燥することが好ましい。
【0033】
外部電場印加処理としては、樹脂をガラス転移温度以上にて過熱した後に600V/cmの交流電場(500ヘルツ)を1時間印加した後にゆっくりと冷却することにより行うことができる。
【0034】
PBF方式では、結晶層変化についての温度幅(温度窓)が大きな方が、立体造形物作成時の反り返りを抑制できるために好ましい。結晶層変化は、融解開始温度と冷却時の再結晶点間の差が大きな樹脂粉末の方が、造形性がよくなるため、より差がある方が好ましい。
【0035】
-粉末Aの組成-
粉末Aを構成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー(LCP)、ポリアセタール(POM、融点:175℃)、ポリイミド、フッ素樹脂等のポリマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。熱可塑性樹脂としては、上記ポリマー以外に、難燃化剤や可塑剤、熱安定性添加剤や結晶核剤等の添加剤、非結晶性樹脂等のポリマー粒子を含んでいてもよい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP、融点:180℃)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
ポリアミドとしては、例えば、ポリアミド410(PA410)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66、融点:265℃)、ポリアミド610(PA610)、ポリアミド612(PA612)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12);半芳香族性のポリアミド4T(PA4T)、ポリアミドMXD6(PAMXD6)、ポリアミド6T(PA6T)、ポリアミド9T(PA9T、融点:300℃)、ポリアミド10T(PA10T)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、PA9Tは、ポリノナメチレンテレフタルアミドとも呼ばれ、炭素が9つのジアミンにテレフタル酸モノマーから構成され、一般的にカルボン酸側が芳香族であるため半芳香族と呼ばれる。さらには、ジアミン側も芳香族である全芳香族としてp-フェニレンジアミンとテレフタル酸モノマーとからできるアラミドと呼ばれるものも本実施形態のポリアミドに含まれる。
【0038】
ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET、融点:260℃)やポリブタジエンテレフタレート(PBT、融点:218℃)、ポリ乳酸(PLA)などが挙げられる。耐熱性を付与するため一部テレフタル酸やイソフタル酸が入った芳香族を含むポリエステルも本実施形態に好適に用いることができる。
【0039】
ポリエーテルとしては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK、融点:343℃)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)などが挙げられる。ポリエーテル以外にも、結晶性ポリマーであればよく、例えば、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルスルフォンなどが挙げられる。PA9Tのように融点ピークが2つあるものを用いてもよい(完全に溶融させるには2つ目の融点ピーク以上に樹脂温度を上げる必要がある)。
【0040】
なお、粉末Aを含む立体造形用樹脂粉末は、任意の流動化剤(外添剤)、粒度化剤、強化剤、酸化防止剤等を含有していてもよい。流動化剤の含有量としては、粒子表面上に覆うために十分な量であればよく、粉末Aに対して、0.1質量%以上10質量%以下が好ましい。流動化剤としては、10μm未満の体積平均粒径を有する粒状無機材料を好適に用いることができる。但し、流動化剤は、立体造形用樹脂粉末中に微粉を発生させ、比Dy/Dnに影響を与える場合があるため立体造形用樹脂粉末に含まれないことが好ましい。
【0041】
<<樹脂粉末の物性>>
粉末Aを含む樹脂粉末の一例としての立体造形用樹脂粉末は、下記(1)~(3)から選択される少なくとも1種を満たすことが好ましい。
(1)示差走査熱量測定において、ISO 3146に準拠して、10℃/minにて、融点より30℃高い温度まで昇温したときの吸熱ピークの融解開始温度をTmf1とし、その後、10℃/minにて、-30℃以下まで降温し、さらに、10℃/minにて、融点より30℃高い温度まで昇温したときの吸熱ピークの融解開始温度をTmf2としたときに、Tmf1>Tmf2となる。なお、吸熱ピークの融解開始温度は、融点での吸熱が終了した後に、熱量の一定となった所から低温側へx軸に対して平行な直線を引き、直線から-15mW下がった時点での温度である。
(2)示差走査熱量測定において、ISO 3146に準拠して、10℃/minにて、融点より30℃高い温度まで昇温したときの吸熱ピークのエネルギー量から求められる結晶化度をCd1とし、その後、10℃/minにて、-30℃以下まで降温し、さらに、10℃/minにて、融点より30℃高い温度まで昇温したときの吸熱ピークのエネルギー量から求められる結晶化度をCd2としたときに、Cd1>Cd2となる。
(3)X線回折測定により得られる結晶化度をCx1とし、窒素雰囲気下10℃/minにて、融点より30℃高い温度まで昇温し、その後、10℃/minにて、-30℃以下まで降温し、さらに、10℃/minにて、融点より30℃高い温度まで昇温したときのX線回折測定により得られる結晶化度をCx2としたときに、Cx1>Cx2となる。
【0042】
上記(1)~(3)は、同一の立体造形用樹脂粉末について、異なる視点から特性を規定したものであり、上記(1)~(3)は互いに関連している。
【0043】
[条件(1)の示差走査熱量測定による溶解開始温度の測定方法]
条件(1)の示差走査熱量測定(DSC)による溶解開始温度の測定方法としては、ISO 3146(プラスチック転移温度測定方法、JIS K7121)の測定方法に準じて、示差走査熱量測定装置(例えば、株式会社島津製作所製、DSC-60A等)を使用し、10℃/minにて、融点より30℃高い温度まで昇温したときの吸熱ピークの融解開始温度(Tmf1)を測定する。その後、10℃/minにて、-30℃以下まで降温し、さらに、10℃/minにて、融点より30℃高い温度まで昇温したときの吸熱ピークの融解開始温度(Tmf2)を測定する。なお、吸熱ピークの融解開始温度は、融点での吸熱が終了した後に、熱量の一定となった所から低温側へx軸に対して平行な直線を引き、直線から-15mW下がった時点での温度である。
【0044】
[条件(2)の示差走査熱量測定による結晶化度の測定方法]
条件(2)の示差走査熱量測定(DSC)による結晶化度の測定方法としては、ISO 3146(プラスチック転移温度測定方法、JISK7121)に準拠して、10℃/minにて、融点より30℃高い温度まで昇温したときの吸熱ピークのエネルギー量(融解熱量)を測定し、完全結晶熱量に対する融解熱量から結晶化度(Cd1)を求めることができる。その後、10℃/minにて、-30℃以下まで降温し、さらに、10℃/minにて、融点より30℃高い温度まで昇温したときの吸熱ピークのエネルギー量を測定し、完全結晶熱量に対する融解熱量から結晶化度(Cd2)を求めることができる。
【0045】
[条件(3)のX線解析装置による結晶化度の測定方法]
条件(3)のX線解析装置による結晶化度の測定方法としては、二次元検出器を有するX線解析装置(例えば、Bruker社、Discover8等)を使用し、室温にて2θ範囲を10~40に設定し、得られた粉末をガラスプレート上に置き、結晶化度を測定(Cx1)することができる。次に、DSC内において、窒素雰囲気化にて10℃/minで加熱し、融点より30℃高い温度まで昇温し、10分間保温した後、10℃/min、-30℃まで冷却後のサンプルを室温に戻し、Cx1と同様にして、結晶化度(Cx2)を測定することができる。
【0046】
<<樹脂粉末の製造方法>>
樹脂粉末の一例としての立体造形用樹脂粉末は、立体造形用樹脂粉末を構成する材料を含有するペレット等から柱状の繊維状材料を作製する線維化工程と、作製した複数の繊維状材料を一体化させて一体化材料を作製する一体化工程と、一体化材料を裁断する裁断工程と、を経て製造されることが好ましい。
【0047】
繊維化工程は、押し出し加工機を用い、融点より30℃以上高い温度にて撹拌しながら、繊維状に樹脂溶解液を伸ばすことが好ましい。樹脂溶解液は、1倍以上10倍以下に延伸し繊維化することが好ましい。この時、押出し加工機のノズル口の形状により繊維断面の形状を決めることができる。例えば、断面を円形形状とする場合は、ノズル口も円形形状であることが好ましい。なお、この工程により、上述の通り、樹脂の結晶性を制御することができる。
【0048】
一体化工程は、線維化工程で作製した繊維状材料を同方向に複数並べて配置し、加熱しながら加圧することでシート状に一体化させることが好ましい。付加する熱は、用いる樹脂の種類により異なるが、融点以下であることが好ましく、また、融点より100°低い温度以上であることが好ましい。また、付加する圧力は、10MPa以下であることが好ましい。この工程により、繊維状材料を固定化させることができる。なお、上記の熱、及び圧力は、次の切断工程を経ると一体化していた各線維が分離する範囲であることが好ましい。また、「加熱しながら加圧する」とは、加熱工程と加圧工程を同時に行う場合が好ましいが、加熱工程後の予熱が残っている状態において加圧工程を後から行う場合など、加熱工程と加圧工程を同時に行わない場合であってもよい。また、一体化材料はシート状に限らず、次の裁断工程が適切に行われる範囲であれば特に形状は限定されない。また、繊維を並べる方向は完全に同一の方向でなくてもよく、略同一の方向であればよい。
なお、線維化工程で得られた繊維状材料の断面形状が円である場合、一体化工程で加熱しながら加圧することで、繊維状材料の一部又は全部が変形しながら密度の高い形状に変形する。それにより、多角形の断面を有する繊維状材料が一体化した一体化材料を作成することができる。
【0049】
裁断工程は、一体化工程で作製したシート状の一体化材料を連続的に裁断することが好ましい。裁断する手段としては、ギロチン方式といった上刃と下刃が共に刃物になっている裁断装置、押し切り方式と呼ばれる下側の板と上刃で裁断していく裁断装置、及びCO2レーザー等を用いて裁断する裁断装置などを用いることができる。これら裁断装置を用いて、シート状の一体化材料を形成する繊維の長手方向と垂直な裁断面を有するように裁断することができる。なお、裁断装置のカット幅は、5.0μm以上100.0μm以下であることが好ましい。また、裁断装置のカット速度は、特に制限はないが、10spm(shots per minute)以上1000spm以下であることが好ましい。
【0050】
これらの工程では、一体化工程で繊維を一体化材料にして繊維の位置、方向を固定した上で裁断工程を行うため、立体造形用樹脂の裁断幅、裁断方向を均一にすることが可能となり、均一な形状の複数の粉末Aを得ることができる。すなわち、従来のように、繊維を可動式のクランプで固定して裁断手段に向かって移動させ樹脂繊維を裁断して粉末を得る方法や、繊維に水を付与してから冷却して氷中に固定した繊維を裁断して粉末を得る方法(但し、従来の方法は、立体造形用の粉末を得る方法ではない)等では、繊維が十分に固定化されていないため、裁断時において繊維に動きが生じることに起因して裁断幅、及び裁断方向のばらつきが起こる。裁断幅のばらつきは、略平面部を有するものの微小な粉末、及び略平面部を有さない微小な粉末を多数生じさせる。また、裁断方向のばらつきは、前述した図2の模式図で示すような円柱状の樹脂を斜め方向に切断することで形成された略平面部を有する粉末など、想定していない形状の粉末を多数生じさせる。
従って、上記の比Dy/Dnが0.50以上1.50以下となる立体造形用樹脂粉末を得るためには従来の方法では困難であり、比Dy/Dnを0.50以上1.50以下とする一手段として線維化工程、一体化工程、及び裁断工程を経ることが好ましく、加熱しながら加圧することでシート状に一体化させる一体化工程を経ることがより好ましい。なお、線維化工程で形成される繊維の直径、裁断工程における裁断幅、裁断速度等を適宜調整することで、より比Dy/Dnを0.50以上1.50以下とすることが容易になる。
【0051】
<<樹脂粉末の用途>>
本実施形態の樹脂粉末は、粒度、粒度分布、熱移動特性、溶融粘度、嵩密度、流動性、溶融温度、及び再結晶温度のようなパラメータについて適切なバランスを有し、SLS方式、SMS方式、MJF(Multi Jet Fusion)方式、又はBJ(Binder Jetting)法などの樹脂粉末を用いた各種立体造形方法において好適に利用される。また、本実施形態の樹脂粉末は、表面収縮剤、スペーサー、滑剤、塗料、砥石、添加剤、二次電池セパレーター、食品、化粧品、衣服等の用途においても好適に利用される。更に、自動車、精密機器、半導体、航空宇宙、医療等の分野において用いられる材料や金属代替材料として用いてもよい。
【0052】
<<立体造形物の製造装置>>
本実施形態の立体造形物の製造装置は、上記の立体造形用樹脂粉末を含む層を形成する層形成手段と、層に電磁照射して溶融させる溶融手段と、を有し、更に必要に応じてその他の手段を含む。
【0053】
層形成手段としては、例えば、ローラ、ブレード、ブラシ等、又はこれらの組合せなどが挙げられる。
【0054】
溶融手段としての電磁照射源としては、例えば、COレーザー、赤外照射源、マイクロウエーブ発生器、放射加熱器、LEDランプ等、又はこれらの組合せなどが挙げられる。
【0055】
ここで、図4を用いて、上記の立体造形用樹脂粉末を用いる立体造形物の製造装置について説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る立体造形物の製造装置を示す概略図である。
【0056】
図4に示すように、造形装置1は、造形用の樹脂粉末Pを収容する収容手段の一例としての供給槽11、供給槽11に収容されている樹脂粉末Pを供給するローラ12、ローラ12によって供給された樹脂粉末Pが配され、レーザーLが走査されるレーザー走査スペース13、電磁線としてのレーザーLの照射源である電磁照射源18、及び電磁照射源18によって照射されたレーザーLをレーザー走査スペース13の所定位置へ反射させる反射鏡19を有する。また、造形装置1は、供給槽11、及びレーザー走査スペース13に収容される樹脂粉末Pをそれぞれ加熱するヒータ11H,13Hを有する。
【0057】
反射鏡19の反射面は、電磁照射源18がレーザーLを照射している間、3D(three-dimensional)モデルの2次元データに基づいて、移動する。3Dモデルの2次元データは、3Dモデルを所定間隔でスライスしたときの各断面形状を示す。これにより、レーザーLの反射角度が変わることで、レーザー走査スペース13のうち、2次元データによって示される部分に、選択的にレーザーLが照射される。レーザーL照射位置の樹脂粉末は、溶融し、焼結して層を形成する。すなわち、電磁照射源18は、樹脂粉末Pから造形物の各層を形成する層形成手段として機能する。
【0058】
また、造形装置1の供給槽11、及びレーザー走査スペース13には、ピストン11P,13Pが設けられている。ピストン11P,13Pは、層の造形が完了すると、供給槽11、及びレーザー走査スペース13を、造形物の積層方向に対し上、又は下方向に移動させる。これにより、供給槽11からレーザー走査スペース13へ、新たな層の造形に用いられる新たな樹脂粉末Pを供給することが可能になる。
【0059】
造形装置1は、反射鏡19によってレーザーの照射位置を変えることにより、樹脂粉末Pを選択的に溶融させるが、本発明はこのような実施形態に限定されない。本実施形態の樹脂粉末は、選択的マスク焼結(SMS: Selective Mask Sintering)方式の造形装置においても好適に用いられる。SMS方式では、例えば、樹脂粉末の一部を遮蔽マスクによりマスクし、電磁線が照射され、マスクされていない部分に赤外線などの電磁線を照射し、選択的に樹脂粉末を溶融することにより造形する。SMSプロセスを用いる場合、樹脂粉末Pは、赤外吸収特性を増強させる熱吸収剤、又は暗色物質などを1種以上含有することが好ましい。熱吸収剤、又は暗色物質としては、カーボンファイバー、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、及びセルロースナノファイバーなどが例示される。SMSプロセスについては、例えば、米国特許第6,531,086号明細書に記載されているものを好適に用いることができる。
【0060】
<<立体造形物の製造方法>>
本実施形態の立体造形物の製造方法は、上記の立体造形用樹脂粉末を含む層を形成する層形成工程と、層に電磁照射して溶融させる溶融工程と、を繰り返し、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0061】
層形成工程としては、例えば、ローラ、ブレード、ブラシ等、又はこれらの組合せなどで層形成する工程が挙げられる。
【0062】
溶融工程としては、例えば、COレーザー、赤外照射源、マイクロウエーブ発生器、放射加熱器、LEDランプ等、又はこれらの組合せなどである電磁照射源を用いて溶融する工程が挙げられる。
【0063】
図5、及び図6は、立体造形物の製造方法を説明するための概念図である。図5、及び図6を用いて、造形装置1を用いた立体造形物の製造方法について説明する。
【0064】
供給槽11に収容された樹脂粉末Pは、ヒータ11Hによって加熱される。供給槽5の温度としては、樹脂粒子Pをレーザー照射により溶融するとき反り返りを抑制する点では、樹脂粒子Pの融点以下のなるべく高い温度が好ましいが、供給槽11での樹脂粉末Pの溶融を防ぐ点では、樹脂粉末Pの融点より10℃以上低いことが好ましい。図5の(A)に示すように、造形装置1のエンジンは、供給工程の一例として、ローラ12を駆動して、供給槽5の樹脂粉末Pをレーザー走査スペース13へ供給して整地することで、1層分の厚さTの粉末層を形成する。レーザー走査スペース13へ供給された樹脂粉末Pは、ヒータ13Hによって加熱される。レーザー走査スペース13の温度としては、樹脂粒子Pをレーザー照射により溶融するときに反り返りを抑制する点では、なるべく高い方が好ましいが、レーザー走査スペース13での樹脂粉末Pの溶融を防ぐ点では、樹脂粉末Pの融点より5℃以上低温であることが好ましい。
【0065】
造形装置1のエンジンは、3Dモデルから生成される複数の二次元データの入力を受け付ける。図5の(B)に示すように、造形装置1のエンジンは、複数の二次元データのうち最も底面側の二次元データに基づいて、反射鏡19の反射面を移動させつつ、電磁照射源18にレーザーを照射させる。レーザーの出力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択されるが、10ワット以上150ワット以下が好ましい。レーザーの照射により、粉末層のうち、最も底面側の二次元データによって示される画素に対応する位置の樹脂粉末Pが溶融する。レーザーの照射が完了すると、溶融した樹脂は硬化して、最も底面側の二次元データが示す形状の焼結層が形成される。
【0066】
焼結層の厚みTとしては、特に限定されないが、平均値として、10μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、100μm以上が更に好ましい。また、焼結層の厚みTとしては、特に限定されないが、平均値として、200μm未満が好ましく、150μm未満がより好ましく、120μm未満が更に好ましい。
【0067】
図6の(A)に示すように、最も底面側の焼結層が形成されると、造形装置1のエンジンは、レーザー走査スペース13に1層分の厚さTの造形スペースが形成されるように、ピストン13Pによりレーザー走査スペース13を1層分の厚さT分降下させる。また、造形装置1のエンジンは、新たな樹脂粉末Pを供給可能とするため、ピストン11Pを上昇させる。続いて、図6の(A)に示すように、造形装置1のエンジンは、ローラ12を駆動して、供給槽5の樹脂粉末Pをレーザー走査スペース13へ供給して整地することで、1層分の厚さTの粉末層を形成する。
【0068】
図6の(B)に示すように、造形装置1のエンジンは、複数の二次元データのうち最も底面側から2層目の二次元データに基づいて、反射鏡19の反射面を移動させつつ、電磁照射源18にレーザーを照射させる。これにより、粉末層のうち、最も底面側から2層目の二次元データによって示される画素に対応する位置の樹脂粉末Pが溶融する。レーザーの照射が完了すると、溶融した樹脂は硬化して、最も底面側から2層目の二次元データが示す形状の焼結層が、最も底面側の焼結層に積層された状態で形成される。
【0069】
造形装置1は、上記の供給工程と、層形成工程と、を繰り返すことで、焼結層を積層させる。複数の二次元データのすべてに基づく造形が完了すると、3Dモデルと同形状の立体物が得られる。
【0070】
<<立体造形物>>
立体造形物は、本実施形態の立体造形物の製造方法により好適に製造される。
【実施例
【0071】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0072】
(実施例1)
ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂(商品名:ノバデュラン5020、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製、融点:218℃、ガラス転移温度:43℃)を融点より30℃高い温度にて撹拌後、ノズル口が円形形状である押し出し加工機(株式会社日本製鋼所製)を用いて繊維状に立体造形用樹脂溶解液を伸ばした。繊維は4倍延伸させることで繊維径(直径)が55μmとなるように調整した。その後、形成した繊維を同方向に並べて配置し、200℃で加熱しながら2MPaの圧力を付加することでシート状に一体化させた。更に、シート状に一体化させた繊維を、押し切り方式の裁断装置(株式会社荻野精機製作所製、NJシリーズ1200型)を用い、カット幅50μm、カット速度280spm(shots per minute)となるように調整して裁断した。得られた粉末の形状を日本電子株式会社製走査電子顕微鏡JSM-7800FPRIMEを用いて観察したところ、略平面部を有し、且つ比Y/Xが0.5以上1.0以下となる略円柱体の樹脂粉末(粉末A)を含んでいた。この得られた粉末を実施例1の立体造形用樹脂粉末とした。
【0073】
(実施例2)
実施例1において、カット速度280spmをカット速度400spmに変更した以外は、実施例1と同様にして、略平面部を有する略円柱体を含む実施例2の立体造形用樹脂粉末を得た。実施例1と同様にして観察したところ、実施例2の立体造形用樹脂粉末は、粉末Aを含んでいた。
【0074】
(実施例3)
実施例1において、カット速度280spmをカット速度500spmに変更した以外は、実施例1と同様にして、略平面部を有する略円柱体を含む実施例3の立体造形用樹脂粉末を得た。実施例1と同様にして観察したところ、実施例3の立体造形用樹脂粉末は、粉末Aを含んでいた。
【0075】
(実施例4)
実施例1において、カット幅50μmをカット幅40μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、略平面部を有する略円柱体を含む実施例4の立体造形用樹脂粉末を得た。実施例1と同様にして観察したところ、実施例4の立体造形用樹脂粉末は、粉末Aを含んでいた。
【0076】
(実施例5)
実施例1において、カット幅50μmをカット幅60μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、略平面部を有する略円柱体を含む実施例5の立体造形用樹脂粉末を得た。実施例1と同様にして観察したところ、実施例5の立体造形用樹脂粉末は、粉末Aを含んでいた。
【0077】
(実施例6)
実施例1において、カット幅50μmをカット幅70μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、略平面部を有する略円柱体を含む実施例6の立体造形用樹脂粉末を得た。実施例1と同様にして観察したところ、実施例6の立体造形用樹脂粉末は、粉末Aを含んでいた。
【0078】
(実施例7)
実施例1において、繊維径55μmを繊維径65μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、略平面部を有する略円柱体を含む実施例7の立体造形用樹脂粉末を得た。実施例1と同様にして観察したところ、実施例7の立体造形用樹脂粉末は、粉末Aを含んでいた。
【0079】
(実施例8)
実施例1において、繊維径55μmを繊維径75μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、略平面部を有する略円柱体を含む実施例8の立体造形用樹脂粉末を得た。実施例1と同様にして観察したところ、実施例8の立体造形用樹脂粉末は、粉末Aを含んでいた。
【0080】
(実施例9)
実施例1において、繊維径55μmを繊維径85μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、略平面部を有する略円柱体を含む実施例9の立体造形用樹脂粉末を得た。実施例1と同様にして観察したところ、実施例9の立体造形用樹脂粉末は、粉末Aを含んでいた。
【0081】
(実施例10)
実施例1において、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂をポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂(商品名:トレリナA900、東レ株式会社製、融点:278℃、ガラス転移温度:93℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして、略平面部を有する略円柱体を含む実施例10の立体造形用樹脂粉末を得た。実施例1と同様にして観察したところ、実施例10の立体造形用樹脂粉末は、粉末Aを含んでいた。
【0082】
(実施例11)
実施例1において、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂をポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂(商品名:HT P22PF、VICTREX社製、融点:343℃、ガラス転移温度:143℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして、略平面部を有する略円柱体を含む実施例11の立体造形用樹脂粉末を得た。実施例1と同様にして観察したところ、実施例11の立体造形用樹脂粉末は、粉末Aを含んでいた。
【0083】
(実施例12)
実施例1において、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂をポリアセタール(POM)樹脂(商品名:ユピタール F10-01、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製、融点:175℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして、略平面部を有する略円柱体を含む実施例12の立体造形用樹脂粉末を得た。実施例1と同様にして観察したところ、実施例12の立体造形用樹脂粉末は、粉末Aを含んでいた。
【0084】
(実施例13)
実施例1において、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂をポリアミド66(PA66)樹脂(商品名:レオナ1300S、旭化成ケミカルズ株式会社製、融点:265℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして、略平面部を有する略円柱体を含む実施例13の立体造形用樹脂粉末を得た。実施例1と同様にして観察したところ、実施例13の立体造形用樹脂粉末は、粉末Aを含んでいた。
【0085】
(実施例14)
実施例1において、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂をポリプロピレン(PP)樹脂(商品名:ノバテック MA3、日本ポリプロ株式会社製、融点:180℃、ガラス転移温度:0℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして、略平面部を有する略円柱体を含む実施例14の立体造形用樹脂粉末を得た。実施例1と同様にして観察したところ、実施例14の立体造形用樹脂粉末は、粉末Aを含んでいた。
【0086】
(比較例1)
ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂(商品名:ノバデュラン5020、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製、融点:218℃、ガラス転移温度:43℃)を低温粉砕システム(装置名:リンレックスミルLX1、ホソカワミクロン株式会社製)を用いて、-200℃にて凍結粉砕した。得られた粉末の形状を日本電子株式会社製走査電子顕微鏡JSM-7800FPRIMEを用いて観察したところ、略平面部を有する粉末を含んでいた。但し、粉末における各略平面部はいずれも面積が小さく、比Y/Xが0.5以上1.0以下となる粉末Aは含まれていなかった。この得られた粉末を比較例1の立体造形用樹脂粉末とした。
【0087】
(比較例2)
重合法により得られたポリアミド(PA)樹脂(商品名:PA 2200 Balance 1.0、EOS社製)の粉末を比較例2の立体造形用樹脂粉末とした。この立体造形用樹脂粉末の形状を日本電子株式会社製走査電子顕微鏡JSM-7800FPRIMEを用いて観察したところ、略球形であって略平面部を有する粉末Aは含まれていなかった。
【0088】
(比較例3)
ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂(商品名:ノバデュラン5020、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製、融点:218℃、ガラス転移温度:43℃)を融点より30℃高い温度にて撹拌後、ノズル口が円形形状である押し出し加工機(株式会社日本製鋼所製)を用いて繊維状に立体造形用樹脂溶解液を伸ばした。繊維は4倍延伸させることで繊維径(直径)が55μmとなるように調整した。その後、形成した繊維を同方向に並べて配置し、油を付与した。更に、油を付与した繊維を、押し切り方式の裁断装置(株式会社荻野精機製作所製、NJシリーズ1200型)を用い、カット幅50μm、カット速度280spmとなるように調整して裁断した。得られた粉末の形状を日本電子株式会社製走査電子顕微鏡JSM-7800FPRIMEを用いて観察したところ、略平面部を有し、且つ比Y/Xが0.5以上1.0以下となる略円柱体の樹脂粉末(粉末A)を含んでいた。この得られた粉末を比較例3の立体造形用樹脂粉末とした。
【0089】
(比較例4)
比較例3において、繊維に付与した油を水に変更した以外は、実施例1と同様にして、略平面部を有する略円柱体を含む比較例4の立体造形用樹脂粉末を得た。実施例1と同様にして観察したところ、比較例4の立体造形用樹脂粉末は、粉末Aを含んでいた。
【0090】
(比較例5)
ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂(商品名:ノバデュラン5020、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製、融点:218℃、ガラス転移温度:43℃)を融点より30℃高い温度にて撹拌後、ノズル口が円形形状である押し出し加工機(株式会社日本製鋼所製)を用いて繊維状に立体造形用樹脂溶解液を伸ばした。繊維は4倍延伸させることで繊維径(直径)が55μmとなるように調整した。その後、形成した繊維を用いて不織布を作製した。更に、不織布を、押し切り方式の裁断装置(株式会社荻野精機製作所製、NJシリーズ1200型)を用い、カット幅50μm、カット速度280spmとなるように調整して裁断した。得られた粉末の形状を日本電子株式会社製走査電子顕微鏡JSM-7800FPRIMEを用いて観察したところ、略平面部を有し、且つ比Y/Xが0.5以上1.0以下となる略円柱体の樹脂粉末(粉末A)を含んでいた。この得られた粉末を比較例5の立体造形用樹脂粉末とした。
【0091】
(比較例6)
実施例1において、カット幅50μmをカット幅120μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、略平面部を有する略円柱体を含む比較例6の立体造形用樹脂粉末を得た。実施例1と同様にして観察したところ、比較例6の立体造形用樹脂粉末は、粉末Aを含んでいた。
【0092】
(比較例7)
ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂(商品名:ノバデュラン5020、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製、融点:218℃、ガラス転移温度:43℃)を融点より30℃高い温度にて撹拌後、ノズル口が円形形状である押し出し加工機(株式会社日本製鋼所製)を用いて繊維状に立体造形用樹脂溶解液を伸ばした。繊維は4倍延伸させることで繊維径(直径)が55μmとなるように調整した。その後、形成した繊維を同方向に並べて可動式のクランプで固定した。更に、クランプで固定した繊維を、押し切り方式の裁断装置(株式会社荻野精機製作所製、NJシリーズ1200型)を用い、カット幅50μm、カット速度280spmとなるように調整して裁断した。得られた粉末の形状を日本電子株式会社製走査電子顕微鏡JSM-7800FPRIMEを用いて観察したところ、略平面部を有し、且つ比Y/Xが0.5以上1.0以下となる略円柱体の樹脂粉末(粉末A)を含んでいた。この得られた粉末を比較例7の立体造形用樹脂粉末とした。
【0093】
(比較例8)
ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂(商品名:ノバデュラン5020、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製、融点:218℃、ガラス転移温度:43℃)を融点より30℃高い温度にて撹拌後、ノズル口が円形形状である押し出し加工機(株式会社日本製鋼所製)を用いて繊維状に立体造形用樹脂溶解液を伸ばした。繊維は4倍延伸させることで繊維径(直径)が55μmとなるように調整した。その後、形成した繊維を同方向に並べて配置し、水を付与してから冷却することで氷中に固定した。更に、氷中に固定した繊維を、押し切り方式の裁断装置(株式会社荻野精機製作所製、NJシリーズ1200型)を用い、カット幅50μm、カット速度280spmとなるように調整して裁断した。得られた粉末の形状を日本電子株式会社製走査電子顕微鏡JSM-7800FPRIMEを用いて観察したところ、略平面部を有し、且つ比Y/Xが0.5以上1.0以下となる略円柱体の樹脂粉末(粉末A)を含んでいた。この得られた粉末を比較例8の立体造形用樹脂粉末とした。
【0094】
各実施例、及び比較例で得られた立体造形用樹脂粉末について、以下のようにして、「個数平均平面径Dy」、「個数平均粒子径Dn」、「粉末Aの割合」、「体積平均粒子系Dv」、「直径Yが10μm以下の粉末Aの割合」、及び「略平面部の円形度」を測定した。結果を下記表1に示す。
【0095】
[個数平均平面径Dy]
まず、得られた立体造形用樹脂粉末を、日本電子株式会社製走査電子顕微鏡JSM-7800FPRIMEを用いて150倍の倍率で写真撮影した。撮影して得た画像から所定の樹脂粉末の投影面積および略平面部1箇所の投影面積を求め、所定の樹脂粉末の投影面積と同等面積に相当する円の直径X(μm)と、略平面部の投影面積と同等面積に相当する円の直径Y(μm)と、を算出し、比Y/Xを得た。そして、比Y/Xが0.5以上1.0以下である粉末Aを100個特定した。
次に、特定した粉末Aにおける直径YであるYの総和を、特定した粉末Aの数である100で除算することで個数平均平面径Dy(μm)を求めた。
【0096】
[粉末Aの割合]
まず、得られた立体造形用樹脂粉末を、日本電子株式会社製走査電子顕微鏡JSM-7800FPRIMEを用いて150倍の倍率で写真撮影した。撮影して得た画像から所定の樹脂粉末の投影面積および略平面部1箇所の投影面積を求め、所定の樹脂粉末の投影面積と同等面積に相当する円の直径X(μm)と、略平面部の投影面積と同等面積に相当する円の直径Y(μm)と、を算出し、比Y/Xを得た。そして、比Y/Xが0.5以上1.0以下である粉末Aを100個個特定した。
次に、粉末Aを特定する際に用いた画像中に存在する全粉末(立体造形用樹脂粉末)の数を計測し、特定した粉末Aの数である100を全粉末(立体造形用樹脂粉末)の数で除算することで粉末Aの個数の割合(%)を求めた。
【0097】
[個数平均粒子径Dn、及び体積平均粒子系Dv]
体積平均粒子系Dv(μm)は、粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、microtrac MT3300EXII)を用いて、樹脂粉末ごとの粒子屈折率を使用し、溶媒は使用せず乾式(大気)法にて測定した。粒子屈折率は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂:1.57、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂:1.70、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂:1.57、ポリアセタール(POM)樹脂:1.48、ポリアミド66(PA66)樹脂:1.53、ポリプロピレン(PP)樹脂:1.48と設定した。
また、個数平均粒子径Dn(μm)は、粒度分布測定装置(シスメックス製F-PIA3000)を用いて測定した。
また、得られた個数平均粒子径Dnと上記個数平均平面径Dyから個数平均平面径/個数平均粒子径(Dy/Dn)を算出した。また、得られた個数平均粒子径Dnと体積平均粒子系Dvから体積平均粒子系/個数平均粒子径(Dv/Dn)を算出した。
【0098】
[直径Yが2.0μm以下の粉末Aの割合]
まず、得られた立体造形用樹脂粉末を、日本電子株式会社製走査電子顕微鏡JSM-7800FPRIMEを用いて150倍の倍率で写真撮影した。撮影して得た画像から所定の樹脂粉末の投影面積および略平面部1箇所の投影面積を求め、所定の樹脂粉末の投影面積と同等面積に相当する円の直径X(μm)と、略平面部の投影面積と同等面積に相当する円の直径Y(μm)と、を算出し、比Y/Xを得た。そして、比Y/Xが0.5以上1.0以下である粉末Aを100個特定した。
次に、特定した粉末Aにおける直径YであるYの大きさを基準とする分布を作成した。この分布において、直径Yが2.0μm以下の粉末Aの数を計測し、特定した粉末Aの数である100で除算することで直径Yが2.0μm以下の粉末Aの個数の割合(%)を求めた。
【0099】
[略平面部の円形度]
まず、得られた立体造形用樹脂粉末を、日本電子株式会社製走査電子顕微鏡JSM-7800FPRIMEを用いて150倍の倍率で写真撮影した。撮影して得た画像から所定の樹脂粉末の投影面積および略平面部1箇所の投影面積を求め、所定の樹脂粉末の投影面積と同等面積に相当する円の直径X(μm)と、略平面部の投影面積と同等面積に相当する円の直径Y(μm)と、を算出し、比Y/Xを得た。そして、比Y/Xが0.5以上1.0以下である粉末Aを100個特定した。
次に、特定した粉末Aにおいて下式により各粉末Aの円形度を求めた。なお、Sは略平面部の面積であり、Lは略平面部の周囲長である。
円形度=4πS/L ・・・(式)
更に、各粉末Aの円形度の平均を算出することで、粉末Aの円形度を求めた。
【0100】
【表1】
【0101】
各実施例、及び比較例で得られた立体造形用樹脂粉末について、以下のようにして、「流動性」、及び「表面粗さRa」を評価した。結果を下記表2に示す。
【0102】
[流動性]
作製した立体造形用樹脂粉末の緩み密度を、かさ比重計(JIS Z-2504対応、蔵持科学器械製)を用いて測定し、測定した緩み密度を各樹脂の真密度で除算して緩み充填率(%)を求めた。なお、C以上であった場合を実用可能であるとした。
(評価基準)
A:40%以上
B:35%以上40%未満
C:33%以上35%未満
D:33%未満
【0103】
[表面粗さRa]
まず、SLS方式造形装置(株式会社リコー製、AM S5500P)で、作製した立体造形用樹脂粉末を用いて立体造形物の製造を行った。設定条件は、0.1mmの層平均厚み、10ワット以上150ワット以下のレーザー出力を設定し、0.1mmのレーザー走査スペース、融点より-3℃の温度を部品床温度に使用した。立体造形物としては、ISO(国際標準化機構)3167 Type1A 多目的犬骨様試験標本(標本は、80mm長さ、4mm厚さ、10mm幅の中心部分を有する)を作成した。
次に、作製した造形物の表面粗さRaを、ワンショット3D形状測定機(VR-3200、キーエンス社製)を用いて表面粗さRaを測定した。測定条件としては、低倍率(×38)で測定(但し、一部については高倍率(×40)で測定)し、基準面補正はありで測定した。また、表面粗さRaは、x方向3本の測定値と、y方向3本の測定値の平均値とした。なお、20μm以下であった場合を実用可能であるとした。
【0104】
【表2】
【符号の説明】
【0105】
1 造形装置
11 供給槽
11H ヒータ
11P ピストン
12 ローラ
13 レーザー走査スペース
13H ヒータ
13P ピストン
18 電磁照射源
19 反射鏡
【先行技術文献】
【特許文献】
【0106】
【文献】WO2017/112723号公報
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図4
図5
図6