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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】切断方法、切断装置および積層体
(51)【国際特許分類】
   B26D 3/02 20060101AFI20220531BHJP
   B26F 1/40 20060101ALI20220531BHJP
   B26F 1/44 20060101ALI20220531BHJP
   B26D 7/10 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
B26D3/02
B26F1/40 A
B26F1/44 B
B26F1/44 J
B26F1/44 Z
B26F1/40 B
B26D7/10
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019231343
(22)【出願日】2019-12-23
(65)【公開番号】P2021098255
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-11-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(72)【発明者】
【氏名】高田 晃右
(72)【発明者】
【氏名】川崎 周馬
(72)【発明者】
【氏名】照井 弘敏
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-288578(JP,A)
【文献】登録実用新案第3217508(JP,U)
【文献】国際公開第2018/096681(WO,A1)
【文献】特開2015-080823(JP,A)
【文献】特開2015-182202(JP,A)
【文献】特開2002-303730(JP,A)
【文献】特開2015-030054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 3/02
B26F 1/40
B26F 1/44
B26D 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも支持基材と樹脂層とが積層された樹脂基材のうち、前記樹脂層を刃を用いて切断する切断方法であって、
前記刃は、刃先を形成する2つの面のうち、一方が傾斜面である片刃であり、前記刃先を形成する2つの前記面のなす角度が30°~50°であり、
前記刃先を、前記樹脂層の表面の法線方向に沿って、前記樹脂層に進入させて、前記樹脂層に前記刃の前記傾斜面を押し当てて切断する工程を有し、
前記刃による前記樹脂層の切断面が斜面であり、前記斜面の大気と接する外側の外面と、前記支持基材の表面とのなす角度が110°~130°である、切断方法。
【請求項2】
少なくとも支持基材と樹脂層とが積層された樹脂基材のうち、前記樹脂層を刃を用いて切断する切断方法であって、
刃は、刃先を形成する2つの面が、それぞれ傾斜面である両刃であり、前記刃先を形成する2つの前記面のなす角度が60°~90°であり、
前記刃先を、前記樹脂層の表面の法線方向に沿って、前記樹脂層に進入させて、前記樹脂層に前記刃の前記傾斜面を押し当てて切断する工程を有し、
前記刃による前記樹脂層の切断面が斜面であり、前記斜面の大気と接する外側の外面と、前記支持基材の表面とのなす角度が110°~130°である、切断方法。
【請求項3】
前記切断する工程は、前記刃の両側に弾性を有する押圧部を配置し、前記押圧部で前記樹脂基材を押さえて切断する工程である、請求項1または2に記載の切断方法。
【請求項4】
前記押圧部は、アスカーC硬度計による硬度が45以上である、請求項3に記載の切断方法。
【請求項5】
前記切断する工程では、前記樹脂基材および前記刃のうち、少なくとも一方を加熱して切断する、請求項1~4のいずれか1項に記載の切断方法。
【請求項6】
前記切断する工程では、2つの刃を用い、2つの前記刃は、互いの前記傾斜面が対向して配置されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の切断方法。
【請求項7】
前記刃は、矩形の環状であり、かつ前記傾斜面が環の内側に向いている、請求項1~5のいずれか1項に記載の切断方法。
【請求項8】
前記樹脂基材は、前記支持基材と前記樹脂層との間に積層された接着層と、前記樹脂層に積層された保護フィルムとを有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の切断方法。
【請求項9】
前記樹脂層がポリイミド樹脂層である、請求項1~8のいずれか1項に記載の切断方法。
【請求項10】
少なくとも支持基材と樹脂層とが積層された樹脂基材のうち、前記樹脂層を刃を用いて切断する切断装置であって、
前記刃は、刃先を形成する2つの面のうち、一方が傾斜面である片刃であり、前記刃先を形成する2つの前記面のなす角度が30°~50°であり、
前記刃先を、前記樹脂層の表面の法線方向に沿って、前記樹脂層に進入させて、前記樹脂層に前記刃の前記傾斜面を押し当てて切断する切断部を有し、
前記刃による前記樹脂層の切断面が斜面であり、前記斜面の大気と接する外側の外面と、前記支持基材の表面とのなす角度が110°~130°である、切断装置。
【請求項11】
少なくとも支持基材と樹脂層とが積層された樹脂基材のうち、前記樹脂層を刃を用いて切断する切断装置であって、
刃は、刃先を形成する2つの面が、それぞれ傾斜面である両刃であり、前記刃先を形成する2つの前記面のなす角度が60°~90°であり、
前記刃先を、前記樹脂層の表面の法線方向に沿って、前記樹脂層に進入させて、前記樹脂層に前記刃の前記傾斜面を押し当てて切断する切断部を有し、
前記刃による前記樹脂層の切断面が斜面であり、前記斜面の大気と接する外側の外面と、前記支持基材の表面とのなす角度が110°~130°である、切断装置。
【請求項12】
前記刃の両側に配置される、弾性を有する押圧部を有し、前記切断部は、前記押圧部で前記樹脂基材を押さえて切断する、請求項10または11に記載の切断装置。
【請求項13】
前記押圧部は、アスカーC硬度計による硬度が45以上である、請求項12に記載の切断装置。
【請求項14】
前記樹脂基材および前記刃のうち、少なくとも一方を加熱する加熱部を有する、請求項11~13のいずれか1項に記載の切断装置。
【請求項15】
前記切断部は、2つの刃を有し、2つの前記刃は、互いの前記刃先の前記傾斜面が対向して配置されている、請求項11~14のいずれか1項に記載の切断装置。
【請求項16】
前記刃は、矩形の環状であり、かつ前記刃先の前記傾斜面が環の内側に向いている、請求項11~15のいずれか1項に記載の切断装置。
【請求項17】
前記樹脂基材は、前記支持基材と前記樹脂層との間に積層された接着層と、前記樹脂層に積層された保護フィルムとを有する、請求項11~16のいずれか1項に記載の切断装置。
【請求項18】
前記樹脂層がポリイミド樹脂層である、請求項11~17のいずれか1項に記載の切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断方法、切断装置および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池;液晶パネル(LCD);有機ELパネル(OLED);電磁波、X線、紫外線、可視光線、赤外線等を感知する受信センサーパネル;等の電子デバイスを製造する際に、ポリイミド樹脂層が基板として用いられる。ポリイミド樹脂層は、ガラス基板上に設けられた積層体の状態で用いられ、積層体が電子デバイスの製造に提供されている。
上述のように、ガラス基板上にポリイミド樹脂層を設ける場合、例えば、ポリイミド樹脂層の大きさはガラス基板に比べて小さい。この場合、例えば、ポリイミド樹脂層は支持基材全面に形成された後、ポリイミド樹脂層が切断されて、貼合されるガラス基板よりも小さく加工される。
切断方法としては、特許文献1に記載されているように、物理特性値が異なる複数の材料を積層したシート状多層材料を、鋭角刃の上刃と、上刃の受け部材とを有する打ち抜き切断装置を用いて、シート状多層材料を上刃で打ち抜き切断するシート状多層材料の打ち抜き切断方法であって、受け部材に上刃の刃先の逃げ部が設けられている打ち抜き切断方法が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-154913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
切断後のポリイミド樹脂層の外周面について、様々な要求があり、例えば、外周面を斜面にすることも一例としてある。しかしながら、上述の特許文献1の切断方法では、切断後のポリイミド樹脂層の外周面を斜面にすることが難しい。
本発明の目的は、前述の従来技術に基づく問題点を解消し、外周面が斜面で構成された積層体を得る切断方法、切断装置および、外周面が斜面で構成された積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するために、本発明の第1の態様は、少なくとも支持基材と樹脂層とが積層された樹脂基材のうち、樹脂層を刃を用いて切断する切断方法であって、刃は、刃先を形成する2つの面のうち、一方が傾斜面である片刃であり、刃先を形成する2つの面のなす角度が30°~50°であり、刃先を、樹脂層の表面の法線方向に沿って、樹脂層に進入させて、樹脂層に刃の傾斜面を押し当てて切断する工程を有し、刃による樹脂層の切断面が斜面であり、斜面の大気と接する外側の外面と、支持基材の表面とのなす角度が鈍角である、切断方法を提供するものである。
本発明の第2の態様は、少なくとも支持基材と樹脂層とが積層された樹脂基材のうち、樹脂層を刃を用いて切断する切断方法であって、刃は、刃先を形成する2つの面が、それぞれ傾斜面である両刃であり、刃先を形成する2つの面のなす角度が60°~90°であり、刃先を、樹脂層の表面の法線方向に沿って、樹脂層に進入させて、樹脂層に刃の傾斜面を押し当てて切断する工程を有し、刃による樹脂層の切断面が斜面であり、斜面の大気と接する外側の外面と、支持基材の表面とのなす角度が鈍角である、切断方法を提供するものである。
【0006】
切断する工程は、刃の両側に弾性を有する押圧部を配置し、押圧部で樹脂基材を押さえて切断する工程であることが好ましい。
押圧部は、アスカーC硬度計による硬度が45以上であることが好ましい。
樹脂基材および刃のうち、少なくとも一方を加熱して切断することが好ましい。
切断する工程では、2つの刃を用い、2つの刃は、互いの傾斜面が対向して配置されていることが好ましい。
刃は、矩形の環状であり、かつ傾斜面が環の内側に向いていることが好ましい。
樹脂基材は、支持基材と樹脂層との間に積層された接着層と、樹脂層に積層された保護フィルムとを有することが好ましい。樹脂層がポリイミド樹脂層であることが好ましい。
【0007】
本発明の第3の態様は、少なくとも支持基材と樹脂層とが積層された樹脂基材のうち、樹脂層を刃を用いて切断する切断装置であって、刃は、刃先を形成する2つの面のうち、一方が傾斜面である片刃であり、刃先を形成する2つの面のなす角度が30°~50°であり、刃先を、樹脂層の表面の法線方向に沿って、樹脂層に進入させて、樹脂層に刃の傾斜面を押し当てて切断する切断部を有し、刃による樹脂層の切断面が斜面であり、斜面の大気と接する外側の外面と、支持基材の表面とのなす角度が鈍角である、切断装置を提供するものである。
本発明の第4の態様は、少なくとも支持基材と樹脂層とが積層された樹脂基材のうち、樹脂層を刃を用いて切断する切断装置であって、刃は、刃先を形成する2つの面が、それぞれ傾斜面である両刃であり、刃先を形成する2つの面のなす角度が60°~90°であり、刃先を、樹脂層の表面の法線方向に沿って、樹脂層に進入させて、樹脂層に刃の傾斜面を押し当てて切断する切断部を有し、刃による樹脂層の切断面が斜面であり、斜面の大気と接する外側の外面と、支持基材の表面とのなす角度が鈍角である、切断装置を提供するものである。
【0008】
刃の両側に配置される、弾性を有する押圧部を有し、切断部は、押圧部で樹脂基材を押さえて切断することが好ましい。
押圧部は、アスカーC硬度計による硬度が45以上であることが好ましい。
樹脂基材および刃のうち、少なくとも一方を加熱する加熱部を有することが好ましい。
切断部は、2つの刃を有し、2つの刃は、互いの刃先の傾斜面が対向して配置されていることが好ましい。
刃は、矩形の環状であり、かつ刃先の傾斜面が環の内側に向いていることが好ましい。
樹脂基材は、支持基材と樹脂層との間に積層された接着層と、樹脂層に積層された保護フィルムとを有することが好ましい。樹脂層がポリイミド樹脂層であることが好ましい。
【0009】
本発明の第3の態様は、少なくとも支持体と、支持体に積層された樹脂層とを有し、樹脂層は矩形状であり、全ての側面が斜面で構成されており、斜面の大気と接する外側の外面と、支持体の表面とのなす角度が鈍角であり、側面は、辺に沿って長さ100mm当たりのうねり幅が100μm以下である、積層体を提供するものである。
樹脂層の斜面の外面の反対側の内面と支持体の表面とのなす角度が50°~80°であることが好ましい。
支持体と樹脂層との間に積層された接着層と、樹脂層に積層された保護層とを有することが好ましい。樹脂層がポリイミド樹脂層であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外周面が斜面で構成された積層体を得る切断方法、切断装置、および、外周面が斜面で構成された積層体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態の切断装置の第1の例を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態の切断装置の切断部の第1の例を拡大して示す模式的断面図である。
図3】(a)および(b)は本発明の実施形態の切断方法の第1の例を示す模式的平面図である。
図4】(a)は本発明の実施形態の樹脂基材の切断部を示す模式的断面図であり、(b)は本発明の実施形態の樹脂基材の切断部を拡大して示す模式的断面図である。
図5】本発明の実施形態の積層体の第1の例を示す模式的平面図である。
図6】(a)は本発明の実施形態の積層体の第1の例を示す模式的断面図であり、(b)は本発明の実施形態の積層体の側面を拡大して示す模式的断面図である。
図7】(a)は本発明の実施形態の積層体の外周面を示す模式図であり、(b)はうねり幅の測定方法を示す模式的斜視図である。
図8】本発明の実施形態の切断装置の切断部の第2の例を拡大して示す模式的断面図である。
図9】本発明の実施形態の切断装置の切断部の第3の例を示す模式的斜視図である。
図10】樹脂基材の第2の例を示す模式的断面図である。
図11】本発明の実施形態の積層体の第2の例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の切断方法、切断装置および積層体を詳細に説明する。
なお、以下に説明する図は、本発明を説明するための例示的なものであり、以下に示す図に本発明が限定されるものではない。
なお、以下において数値範囲を示す「~」とは両側に記載された数値を含む。例えば、εが数値α~数値βとは、εの範囲は数値αと数値βを含む範囲であり、数学記号で示せばα≦ε≦βである。
「具体的な数値で表された角度」、「平行」、「垂直」および「直交」等の角度は、特に記載がなければ、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。
【0013】
<切断装置>
図1は本発明の実施形態の切断装置の一例を示す模式図である。
図1に示す切断装置10は、プレス型の装置であり、第1の台12と、第2の台14とが対向して配置されている。第1の台12と第2の台14とはボールねじ15により結合されている。ボールねじ15の第1の台12側の端部に駆動部16が設けられており、駆動部16により、ボールねじ15を回転させて第1の台12と第2の台14との間の距離を変えることができる。これにより、後述する刃30を、切断対象である樹脂基材20に進入させて切断することができる。
第1の台12と第2の台14との間の距離を変えることができれば、ボールねじ15に限定されるものではなく、垂直移動機構等を適宜利用可能である。また、駆動部16は、ボールねじ15を回転させることができれば、特に限定されるものではないが、例えば、モーターが用いられる。
【0014】
第1の台12上に、例えば、加熱テーブル17が載置される。加熱テーブル17上に、切断対象である樹脂基材20が配置される。加熱テーブル17は、加熱部を構成するものである。加熱テーブル17は、切断時に、樹脂基材20を加熱して、樹脂基材20を25℃(室温)よりも高い特定の温度に保持するためのものであり、例えば、ヒーターが用いられる。加熱テーブル17には、樹脂基材20の温度を一定範囲に保つために、フィードバック制御部を有することが好ましい。また、加熱テーブル17は、第1の台12上で面内回転できることが好ましい。
切断時に、樹脂基材20を必ずしも加熱する必要がないため、加熱テーブル17がない構成でもよい。この場合、単に、樹脂基材20が載置され、かつ第1の台12上で面内回転できるテーブルであればよい。加熱テーブル17がある場合には、加熱テーブル17が切断台になる。加熱テーブル17がない場合には、第1の台12が切断台になる。切断時には、樹脂基材20の支持基材22と、切断台との間委に下敷きを設けてもよい。下敷きは、例えば、リエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)、ポリプロピレンフィルム(PPフィルム)、ポリテトラフルオロエチレンフィルム(PTFEフィルム)を用いることができる。
【0015】
樹脂基材20は、少なくとも支持基材22と樹脂層24とが積層されたものであり、支持基材22の表面22aに樹脂層24が積層されている。切断装置10は、樹脂基材20の樹脂層24を切断して、後述する積層体を得る。
第2の台14上に刃型18が設けられている。刃型18上に切断部19が設けられている。
【0016】
[切断部の第1の例]
切断部19は、2つの刃30を有し、2つの刃30は、切断対象である、樹脂基材20の樹脂層24の大きさに応じた長さを有する。2つの刃30は互いの刃先30aの傾斜面30cが対向して配置されている。例えば、駆動部16によりボールねじ15を回転させて第2の台14を第1の台12に近づけて、2つの刃30の刃先30aを樹脂層24の表面24aの法線方向に沿って、進入させて、樹脂層24に、各刃30のそれぞれの傾斜面30cを押し当てて樹脂層24を切断する。なお、刃30については後に詳細に説明する。
【0017】
図2は本発明の実施形態の切断装置の切断部の第1の例を拡大して示す模式的断面図である。図2は刃30が樹脂層24に進入している状態を示す。なお、図2において、刃30の底面30b側の樹脂層24が取り除かれる外縁部24dであり、刃30の傾斜面30c側の樹脂層24が,後に積層体を構成する部分24cである。
図2に示すように切断部19は、例えば、刃30を有し、刃30は刃型18上に設けられている。
刃30の刃型18側の基部30dに加熱部32が設けられている。加熱部32上に固定部33が設けられており、この固定部33上に押圧部34が設けられている。刃30の両側に押圧部34が配置される。
固定部33は、例えば、接着部材33aと弾性部材33bと接着部材33aとの積層構造体である。接着部材33aにより、加熱部32に押圧部34が固定される。なお、接着部材33aは、加熱部32の加熱温度でも接着力が維持されるもので構成される。
【0018】
加熱部32は、切断時に刃30を加熱して、刃30を25℃(室温)よりも高い特定の温度に保持するためのものであり、例えば、ヒーターが用いられる。加熱部32には、刃30の温度を一定範囲に保つために、フィードバック制御部を有することが好ましい。加熱部32による刃30の温度は55℃~65℃が好ましい。
切断時に刃30を必ずしも加熱する必要がないため、加熱部32がない構成でもよい。
加熱テーブル17および加熱部32は、両方あることが最も好ましく、少なくとも一方があることが好ましいが、両方ない構成でもよい。加熱テーブル17および加熱部32のうち、少なくとも一方を設ける場合、加熱テーブル17では、切断装置10全体に熱の影響が生じる可能性があるため、加熱部32を設けることが好ましい。
【0019】
押圧部34は、弾性を有するものであり、刃30の切断時に圧縮されて縮む。切断部19は、押圧部34で樹脂基材20を押さえて切断する。このため、押圧部34は、刃30よりも先に樹脂基材20に接触することが好ましく、押圧部34は刃30よりも高いことが好ましい。また、押圧部34による樹脂基材20の抑え込みの効果が高くなるため、押圧部34は刃30と隙間をあけることなく設けることが好ましい。なお、押圧部34は、例えば、天然ゴムまたは合成ゴムで構成される。
押圧部34は、アスカーC硬度計による硬度が45以上であることが好ましい。押圧部34のアスカーC硬度計による硬度が45以上であれば、切断により形成される斜面の角度のばらつきが小さくなる。これにより、切断の繰り返し精度が高くなり、品質安定性が優れる。押圧部34の硬度は45以上であることが好ましく、押圧部34の硬度は50~60であることがより好ましい。
また、押圧部34は、必ずしも必要ではなく、押圧部34がない構成でもよい。
【0020】
刃30は、2つの面で刃先30aが構成されており、一方の面が傾斜面30cである片刃である。片刃の場合、刃先30aを形成する2つの面のうち、上述のように一方の面が傾斜面30cである。残りの面は、刃30の底面30bを構成する。底面30bは、切断時には刃先30aの先端30eを通り、かつ支持基材22の表面22aに垂直な面Pである。
刃30は、刃先30aを形成する2つの面のなす角度が30°~50°である。刃先30aを形成する2つの面のなす角度のことを刃先角度という。図2に示す刃30の場合、刃先角度は、刃先30aの傾斜面30cと底面30bとのなす角αの角度であり、30°~50°である。
なお、傾斜面30cは、1つの平面で構成されているが、これに限定されるものではなく、複数の平面でも構成できる。
【0021】
刃先30aを形成する2つの面のなす角度が30°~50°であれば、樹脂層24を切断した際、樹脂層24の部分24c(図4(b)参照)の側面24b(図4(b)参照)を斜面26に形成でき、かつ、斜面26を、この斜面26の大気と接する外側の外面26aと、支持基材22の表面22aとのなす角γ(図4(b)参照)の角度を鈍角にできる。例えば、樹脂層24の斜面26の傾斜角θ(図4(b)参照)の角度は50°~80°であることが好ましく、より好ましくは60°~70°である。斜面26の傾斜角θとは、斜面26の外面26a(図4(b)参照)の反対側の内面26b(図4(b)参照)と、支持基材22の表面22aとのなす角である。
角αの角度は、マイクロスコープを用いて、刃30の側面画像または断面画像を得る。刃30の側面画像または断面画像において刃30の傾斜面30cと底面30bとを特定して角αを特定する。この角αの角度を求める。
角γおよび傾斜角θの角度は、マイクロスコープを用いて、樹脂基材20の切断部の側面画像または断面画像を得る。樹脂基材20の切断部の側面画像または断面画像において、斜面26の大気と接する外側の外面26aと、外面26aの反対側の内面26bと、支持基材22の表面22aとを特定して、角γおよび傾斜角θを特定する。特定した角γおよび傾斜角θの角度を求める。また、刃30は、例えば、超硬合金で構成される。刃30の厚みは、例えば、1mmであるが、刃30の厚みとしては、0.5~1mmであることが好ましい。
【0022】
刃型18と切断部19とで囲まれた領域18aは、切断時に樹脂層24により閉塞されるが、このとき、領域18a内を負圧にしてもよく、領域18a内を吸引してもよい。これにより、樹脂層24を安定して切断できる。
上述のように切断時には上述のように領域18a内を負圧にしてもよいが、刃30を樹脂層24から引き抜く際には、領域18a内を差圧ゼロまたは正圧にすることが好ましい。領域18a内が負圧状態で刃30を樹脂層24から引き抜くと、樹脂層24が刃型18に引っ付くので樹脂層24の切断面同士が擦れて断面品質が悪化する。
また、刃30の傾斜面30cに隣接する押圧部34、すなわち、内側の押圧部34を、外側の押圧部34に比して高くしてもよい。これにより、切断後に樹脂層24において積層体を構成する部分24cを残して、外縁部24d(図2参照)だけを良好に取り除くことができ、積層体に用いる樹脂層24の部分24cにおいて安定して良好な斜面が得られる。
【0023】
<切断方法>
上述の樹脂基材20は、例えば、上述の図1に示す切断装置10により切断される。
切断装置10では、刃先30aを、樹脂層24の表面24aの法線方向に沿って、樹脂層24に進入させて、樹脂層24に刃30の傾斜面30cを押し当てて切断する工程を有する。刃30による樹脂層24の切断面が斜面である。樹脂層24の切断面が側面24bである。
ここで、図3(a)および(b)は本発明の実施形態の切断方法の第1の例を示す模式的平面図である。図4(a)は本発明の実施形態の樹脂基材の切断部を示す模式的断面図であり、(b)は本発明の実施形態の樹脂基材の切断部を拡大して示す模式的断面図である。
【0024】
図1に示す切断装置10は、刃30が2つある構成であるため、1回の切断工程で、図3(a)に示すように樹脂層24において対向する2辺が切断され、対向する平行な2つの切断線25aが形成される。
刃30が2つであるため、1回の切断工程で、4辺を切断することができず、樹脂基材20の向きを変えて、2回目の切断をする必要がある。例えば、加熱テーブル17を90°回転させた後、1回目の切断工程と同様にして切断する。これにより、図3(b)に示すように対向する平行な2つの切断線25bが形成される。2回の切断工程により、樹脂層24の側面が斜面になるように切断される。これにより、樹脂層24は取り除かれる外縁部24dと、後に積層体を構成する部分24cとに分離される。
2つの切断線25aと、2つの切断線25bとを境にして樹脂層24の外縁部24dを剥がすと図4(a)に示すように、樹脂層24において、切断面が斜面26である、積層体を構成する部分24cが得られる。さらに、樹脂層24を支持基材22から剥離した後、別の基材に樹脂層24を貼り付けてもよい。例えば、図4(a)に示す樹脂層24を支持基材22から剥離した後、例えば、ガラス製の支持体42に貼り付けることにより、後述の図5および図6(a)に示す積層体40を得ることができる。積層体40(図6(a)参照)は、少なくとも支持体42(図6(a)参照)と、支持体42に積層された樹脂層24とを有する。次に、積層体40(図6(a)参照)について具体的に説明する。
【0025】
<積層体の第1の例>
図5は本発明の実施形態の積層体の第1の例を示す模式的平面図である。図6(a)は本発明の実施形態の積層体の第1の例を示す模式的断面図であり、(b)は本発明の実施形態の積層体の側面を拡大して示す模式的断面図である。
図6(a)に示す第1の例の積層体40は、ガラス製の支持体42と、樹脂層24と、保護層44とが積層されたものである。例えば、保護層44は、支持体42上の樹脂層24を覆って配置されている。
積層体40の樹脂層24は、上述の図3(b)に示す外縁部24dが取り除かれた部分24cであって、外形が矩形状に形成されており、かつ支持体42の表面42aに比べて小さい。
樹脂層24は全ての側面24bが斜面26で構成されている。図6(b)に示すように、斜面26の大気と接する外側の外面26aと、支持体42の表面42aとのなす角γの角度が鈍角である。
また、樹脂層24の斜面26の外面26aの反対側の内面26bと、支持体42の表面42aとのなす角、すなわち、樹脂層24の斜面26の傾斜角θの角度は50°~80°であることが好ましく、より好ましくは60°~70°である。なお、角γおよび傾斜角θの角度は、上述のようにして求められる。
【0026】
図6(a)に示すように保護層44と樹脂層24との間に密着層46が設けられている。密着層46は樹脂層24および支持体42の表面42aのうち外縁部42cと接する。保護層44は密着層46により樹脂層24に貼合される。保護層44は、樹脂層24を利用する際には剥がされる。保護層44と樹脂層24との間に密着層46を設けたが、これに限定されるものではなく、密着層46を設けることなく、保護層44を樹脂層24に貼合してもよい。
【0027】
保護層44は、支持体42および樹脂層24を保護するものであり、特に外部からの受けた力による打痕、およびキズ等が樹脂層24に生じないように保護する。
第1の例の積層体40は、支持体42の表面42aに直接、樹脂層24が設けられている。なお、支持体42の表面42aに、樹脂層24を接着させるためにシランカップリング剤を設けることがあるが、この場合でも、支持体42の表面42aに直接、樹脂層24が設けられているとする。
【0028】
図5に示す積層体40の樹脂層24の側面24bは、辺に沿って長さ100mm当たりのうねり幅δ(図7(a)参照)が100μm以下である。図4(a)に示す樹脂層24の側面24bは、積層体40の樹脂層24の側面24bである。
ここで、図7(a)は本発明の実施形態の積層体の外周面を示す模式図であり、(b)はうねり幅の測定方法を示す模式的斜視図である。
図7(a)に示すように、うねり幅δは、樹脂層24の切断後、樹脂層24の表面24a側から樹脂基材20の斜面26を二次元測定機を用いて測定する。側面24bの辺に沿って測定距離Lを100mmとし、測定距離Lの両端をゼロ点として、基準線BLを設定する。基準線BLと直交する方向における最大値の差を、上述のうねり幅δとする。
測定距離Lについては、図7(b)に示すように、長さが100mm以上の樹脂層24の側面24bに対して、樹脂層24上に配置されたカメラDを、任意の位置から樹脂層24の側面24bに沿って、測定距離Lとして100mm移動させる。測定距離L分の側面24bの画像データを得る。上述のようにして測定距離L(100mm)間のうねり幅を測定する。
【0029】
[切断部の第2の例、第3の例]
図8は本発明の実施形態の切断装置の切断部の第2の例を拡大して示す模式的断面図であり、図9は本発明の実施形態の切断装置の切断部の第3の例を示す模式的斜視図である。図8および図9において、図1に示す切断装置10および図2に示す切断部19と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。図8は刃30が樹脂層24に進入している状態を示す。
図8に示す切断部19は、図2に示す切断部19に比して、刃30が両刃である点が異なり、それ以外の構成は図2に示す切断部19と同じ構成である。なお、図8において、刃30の傾斜面30f側の樹脂層24が取り除かれる外縁部24dであり、刃30の傾斜面30c側の樹脂層24が、積層体を構成する部分24cである。
【0030】
刃30が両刃の場合、刃先30aを形成する2つの面が、それぞれ傾斜面30c、30fである。樹脂層24に刃30の傾斜面30c、30fを押し当てて、樹脂層24を切断する、刃先30aを形成する2つの傾斜面30c、30fのなす角度、すなわち、角βの角度が60°~90°である。角βの角度が60°~90°であれば、樹脂層24を切断した際、樹脂層24の側面24bを斜面26に形成でき、かつ斜面26を、この斜面26の大気と接する外側の外面26aと、支持基材22の表面22aとのなす角γの角度を鈍角にできる。上述のように、例えば、樹脂層24の斜面26の傾斜角θの角度は50°~80°であることが好ましい。斜面26の傾斜角θは、上述のとおりである。
刃30が両刃の場合、2つの刃30は、互いの刃先30aの傾斜面30cを対向して配置する。
図8に示す刃30では、傾斜面30cと、刃先30aの先端30eを通り、かつ支持基材22の表面22aに垂直な面Pとのなす角を角Qとする。上述の垂直な面Pは、角βを2等分にしており、角Qは角βの半分である。傾斜面30cと傾斜面30fとの角度は同じである。刃30が両刃の場合、上述の傾斜面30cの角Qが30°~45°であることが好ましい。
図8に示す刃30は、上述の垂直な面Pに対して対称であるが、これに限定されるものではなく、傾斜面30cと傾斜面30fとの角度は異なっていてもよい。この場合、上述の垂直な面Pに対して非対称になる。
【0031】
図9では、刃50の形状を示すために、樹脂基材20と刃50とだけを示している。図9に示す刃50は、矩形の環状であり、かつ刃先50aの斜面50cが環の内側に向いている。この構成により、樹脂層24を、1回の切断工程で、樹脂層24の側面を斜面にすることができる。なお、環状の刃50の大きさは、形成する積層体の大きさにより適宜決定されるものである。
環状の刃50は、片刃でも両刃でもよい。刃50が片刃の場合、刃先50aの刃先角度が30°~50°であることが好ましい。刃50が両刃の場合、刃先50aの刃先角度が30°~45°であることが好ましい。
図9に示す刃50は環状にできれば、特に限定されるものではなく、例えば、超硬刃で形成できる。
【0032】
<積層体の第2の例>
次に、積層体の第2の例について説明する。
図10は樹脂基材の第2の例を示す模式的断面図である。図11は本発明の実施形態の積層体の第2の例を示す模式的断面図である。図10において、図1に示す樹脂基材20と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。図11において、図6(a)および(b)に示す積層体40と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
切断対象である樹脂基材20は、図2に示す構成に限定されるものではなく、例えば、図10に示す樹脂基材21のように、支持基材22と樹脂層24との間に積層された接着層23と、樹脂層24に積層された保護フィルム28とを有する構成でもよい。保護フィルム28は、切断時に樹脂層24を保護するものである。接着層23は、例えば、シリコーン樹脂層である。
【0033】
図10に示す樹脂基材21を、上述の切断装置10を用いて切断することにより、保護フィルム28により樹脂層24が保護された状態で切断できる。切断後、支持基材22と接着層23との間で剥離し、例えば、ガラス製の支持体42に樹脂層24を接着層23を介して貼合する。このとき保護フィルム28があることが好ましい。貼合後、保護フィルム28を剥離し、樹脂層24上に密着層46を介して保護層44を貼合する。これにより、図11に示す積層体40を得ることができる。
なお、樹脂層24の切断時の保護フィルム28と、積層体40の保護層44とは、同じ材料を用いてもよく、別の材料を用いてもよい。
【0034】
以下、樹脂基材20、21を構成する支持基材22、接着層23、樹脂層24、積層体40を構成する支持体42および保護層44について詳述する。
【0035】
[樹脂基材]
<支持基材>
支持基材22は、樹脂層24を切断時に支持するものである。また、支持基材22は、樹脂層24の切断時に加熱テーブル17等に傷がつかないようにするものである。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)、ポリプロピレンフィルム(PPフィルム)、ポリテトラフルオロエチレンフィルム(PTFEフィルム)等で構成される。
【0036】
<樹脂層>
樹脂層24は、電子デバイス等が形成されるものであり、例えば、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、またはポリエチレンナフタレート樹脂で構成される。なかでも、樹脂層24は、ポリイミド樹脂からなるポリイミド樹脂層であることが好ましい。ポリイミド樹脂層は、例えば、ポリイミドフィルムが用いられる。ポリイミドフィルムの市販品の具体例としては、東洋紡株式会社製の「ゼノマックス」、宇部興産株式会社製の「ユーピレックス 25S」が挙げられる。
樹脂層24に電子デバイスが形成される。電子デバイスを構成する高精細な配線等を形成するために、樹脂層24の表面24aは平滑であることが好ましい。具体的には、樹脂層24の表面24aの表面粗度Raは、50nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましく、10nm以下がさらに好ましい。表面粗度Raの下限としては、0.01nm以上が挙げられる。
樹脂層24に電子デバイスが形成される場合、樹脂層24の全ての側面が斜面で構成されていることから、電子デバイスと導通するために側面に形成される配線の断線等を抑制できる。
樹脂層24の厚みは、製造工程でのハンドリング性の点から、1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上がさらに好ましい。柔軟性の点から、樹脂層24の厚みは1mm以下が好ましく、0.2mm以下がより好ましい。
樹脂層24の熱膨張係数と支持体42との熱膨張係数差は、小さい方が加熱後または冷却後の反りを抑制できるため好ましい。具体的には、樹脂層24と支持体42との熱膨張係数の差は、0~90×10-6/℃が好ましく、0~30×10-6/℃がより好ましい。
【0037】
樹脂層24の面積(表面24aの面積)は、特に制限されないが、保護層44を配置するため、支持体42よりも小さいことが好ましい。一方、樹脂層24の面積は、電子デバイスの生産性の点から、300cm以上が好ましい。
樹脂層24の形状は、特に制限されず、矩形状であっても円形状であってもよい。樹脂層24には、オリエンテーションフラット(基板の外周に形成された平坦部分)、およびノッチ(基板の外周縁に形成された、少なくとも1つのV型の切欠き)が形成されていてもよい。
【0038】
<接着層>
接着層は、例えば、シリコーン樹脂層で構成される。シリコーン樹脂層は、主に、シリコーン樹脂からなるものである。シリコーン樹脂の構造は特に制限されない。シリコーン樹脂は、通常、硬化処理によってシリコーン樹脂となり得る硬化性シリコーンを硬化(架橋硬化)して得られる。
硬化性シリコーンの具体例としては、その硬化機構により、縮合反応型シリコーン、付加反応型シリコーン、紫外線硬化型シリコーン、電子線硬化型シリコーンが挙げられる。硬化性シリコーンの重量平均分子量は、5,000~60,000が好ましく、5,000~30,000がより好ましい。
【0039】
シリコーン樹脂層の製造方法としては、樹脂層24の表面24aに上述のシリコーン樹脂となる硬化性シリコーンを含む硬化性組成物を塗布して、必要に応じて溶媒を除去して、塗膜を形成して、塗膜中の硬化性シリコーンを硬化させて、シリコーン樹脂層とする方法が好ましい。
硬化性組成物は、硬化性シリコーンの他に、溶媒、白金触媒(硬化性シリコーンとして付加反応型シリコーンを用いる場合)、レベリング剤、および金属化合物等を含んでいてもよい。金属化合物に含まれる金属元素の具体例としては、3d遷移金属、4d遷移金属、ランタノイド系金属、ビスマス、アルミニウム、およびスズが挙げられる。金属化合物の含有量は、適宜調整される。
【0040】
シリコーン樹脂層の厚みは、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。一方、シリコーン樹脂層の厚みは、1μm超が好ましく、4μm以上がより好ましい。上述の厚みは、5点以上の任意の位置におけるシリコーン樹脂層の厚みを接触式膜厚測定装置で測定し、それらを算術平均したものである。
【0041】
<保護フィルム>
保護フィルム28は、樹脂層24を切断時に保護するものである。樹脂層24を切断時に保護する保護層は、後述の保護層44と同様の構成とすることができる。保護フィルム28は、樹脂層24に貼合される際、例えば、図6(a)に示す密着層46が積層される。
【0042】
[積層体]
<支持体>
支持体42は、例えば、ガラス板で構成される。
ガラスの種類としては、無アルカリホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、高シリカガラス、その他の酸化ケイ素を主な成分とする酸化物系ガラスが好ましい。酸化物系ガラスとしては、酸化物換算による酸化ケイ素の含有量が40~90質量%のガラスが好ましい。
ガラス板として、より具体的には、無アルカリホウケイ酸ガラスからなるガラス板(AGC株式会社製商品名「AN100」)が挙げられる。
ガラス板の製造方法としては、通常、ガラス原料を溶融し、溶融ガラスを板状に成形する方法が挙げられる。このような成形方法は、一般的なものであってよく、例えば、フロート法、フュージョン法、スロットダウンドロー法が挙げられる。
【0043】
支持体42の厚みは、樹脂層24よりも厚くてもよいし、薄くてもよい。積層体40の取り扱い性の点から、支持体42の厚みは樹脂層24よりも厚いことが好ましい。
支持体42は、補強板および搬送基板としての機能が要求されるものであることから、フレキシブルではないことが好ましい。そのため、支持体42の厚みは、0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましい。一方、支持体42の厚みは1.0mm以下が好ましい。
【0044】
<保護層>
保護層44の厚みは、外部から受けた力の影響を低減するために20μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることが更に好ましい。保護層44の厚みの上限値としては、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることが更に好ましい。
保護層44の厚みとは、保護層44と密着層46との合計の厚みである。保護層44の厚みの上限としては、厚すぎると、保護層44を剥離する際に過大な力が必要となる場合があるため、500μm以下が好ましい。
保護層44の厚みとは、5点以上の任意の位置における厚みを接触式膜厚測定装置で測定し、それらを算術平均したものである。
保護層44を構成する材料としては、例えば、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン(PE)、およびポリプロピレン等)、ポリウレタン樹脂等の樹脂で構成されることが好ましい。このうち、保護層44を構成する樹脂としては、ポリオレフィンが好ましく、ポリエチレンまたはポリプロピレンがより好ましい。
保護層44は、樹脂層24に貼合される際、例えば、図6(a)に示すように密着層46が積層される。
【0045】
密着層46は、特に限定されるものではなく、公知の粘着層を用いることができる。粘着層を構成する粘着剤の具体例としては、(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤が挙げられる。
また、密着層46は樹脂で構成されていてもよく、樹脂の具体例としては、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレンエラストマーが挙げられる。
なお、(メタ)アクリルとは、アクリルとメタクリルとを含む概念である。
【0046】
<積層体の用途の例>
本発明の積層体は、種々の用途に使用することができ、例えば、表示装置用パネル、PV(Photovoltaic)、薄膜2次電池、表面に回路が形成された半導体部品を製造する、実装する、または仮固定する用途等が挙げられる。
ここで、表示装置用パネルとは、LCD、OLED、電子ペーパー、プラズマディスプレイパネル、フィールドエミッションパネル、量子ドットLEDパネル、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)シャッターパネル等が含まれる。
【実施例
【0047】
以下に、実施例等により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって制限されるものではない。後述する例1~5は実施例である。
【0048】
<評価>
(傾斜面の品質)
傾斜面の品質の評価においては、各例において、切断された樹脂基材について、1辺につき3箇所、マイクロスコープを用いて傾斜角の角度を測定した。
傾斜角の角度は、マイクロスコープを用いて、積層体の側面画像を得て、樹脂基材の側面画像において、斜面の大気と接する外側の反対側の内面と、支持体の表面とを特定し、傾斜角を特定した。特定した傾斜角の角度を求めた。
傾斜角の角度のバラつきが1°以内であれば「A」とし、1°超3°未満であれば「B」とし、3°以上であれば「C」とした。傾斜面の品質の評価結果を下記表1に示す。
【0049】
<例1>
例1では、支持基材上に接着層と樹脂層とこの順で積層された樹脂基材を使用し、この樹脂基材を、刃先を形成する2つの面のなす角度(刃先の角度)が40°の片刃を用いて切断した。刃には超硬合金の刃を用いて、刃の厚みを1mmとした。押圧部にはアスカーC硬度計による硬度が35のものを用いた。
樹脂基材について説明する。
(硬化性シリコーンの調製)
1Lのフラスコに、トリエトキシメチルシラン(179g)、トルエン(300g)、酢酸(5g)を加えて、混合物を25℃で20分間撹拌後、さらに、60℃に加熱して12時間反応させた。得られた反応粗液を25℃に冷却後、水(300g)を用いて、反応粗液を3回洗浄した。
洗浄された反応粗液にクロロトリメチルシラン(70g)を加えて、混合物を25℃で20分間撹拌後、さらに、50℃に加熱して12時間反応させた。得られた反応粗液を25℃に冷却後、水(300g)を用いて、反応粗液を3回洗浄した。
洗浄された反応粗液からトルエンを減圧留去し、スラリー状態にした後、真空乾燥機で終夜乾燥することにより、白色のオルガノポリシロキサン化合物である硬化性シリコーン1を得た。硬化性シリコーン1は、T単位の個数:M単位の個数=87:13(モル比)であった。
なお、M単位は、(R)3SiO1/2で表される1官能オルガノシロキシ単位を意味する。T単位は、RSiO3/2(Rは、水素原子または有機基を表す)で表される3官能オルガノシロキシ単位を意味する。
【0050】
(硬化性組成物の調製)
硬化性シリコーン1と、溶媒としてヘキサンを混合し、さらに2-エチルヘキサン酸ビスマス(III)を添加した。溶媒量は、固形分濃度が50質量%となるように調整した。また、金属化合物の添加量は、金属元素が樹脂100質量部に対して、0.01質量部となるように調整した。得られた混合液を、孔径0.45μmのフィルタを用いてろ過することにより、硬化性組成物を得た。
【0051】
(樹脂基材の作製)
調製した硬化性組成物を、厚さ0.015mmのポリイミドフィルム(東洋紡株式会社製商品名「ゼノマックス」)に塗布し、ホットプレートを用いて140℃で10分間加熱することにより、接着層としてシリコーン樹脂層を形成した。シリコーン樹脂層の厚さは、10μmであった。続いて、PETフィルムをシリコーン樹脂層上に設けた。
次に、エアブローを実施してポリイミドフィルムの表面から細かいほこりを除去した後、ポリイミドフィルム側に保護フィルムを貼り合わせて樹脂基材を得た。使用した保護フィルムには、PETフィルムを用いた。
【0052】
<例2>
押圧部をアスカーC硬度計による硬度が40とした、以外は、例1と同様にして、樹脂基材を切断した。
<例3>
押圧部をアスカーC硬度計による硬度が50とした、以外は、例1と同様にして、樹脂基材を切断した。
<例4>
押圧部をアスカーC硬度計による硬度が60とした、以外は、例1と同様にして、樹脂基材を切断した。
<例5>
押圧部を用いない構成とした、以外は、例1と同様にして、樹脂基材を切断した。
例5では、押圧部を用いていないため、表1の押圧部の硬度の欄に「-」と記した。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示すように、押圧部を設けることにより、傾斜角の角度を50°~80°の範囲内にすることができた。押圧部の硬度が高いと、傾斜角の角度のバラつきが少なくなり、繰り返し精度、すなわち、品質安定性が優れた。
例1~5において、樹脂基材の切断後、樹脂層を支持基材から剥離し、ガラス板に張り付け積層体を得た。積層体において、樹脂層端部5mm以内の範囲を観察したところ、樹脂層とガラス板との界面に空隙(気泡)が3個以内であった。また、積層体について、マイクロスコープで側面を観察したところ、辺に沿って長さ100mm当たりのうねり幅が100μm以下であった。
【0055】
後述する例10~13は実施例であり、樹脂基材の切断を評価した。
【0056】
<評価>
(切断)
切断の評価においては、各例において、切断された樹脂基材について、樹脂層と支持基材との界面で剥離が起きていないか確認した。切断方法としては、樹脂基材と加熱テーブルとの間に下敷きとなるPETフィルムを設けて、刃を樹脂基材の表面の法線方向に進入させて樹脂層を切断した。
樹脂基材の切断を5回実施し、5回のうち界面剥離の発生がないものを「a」とし、5回のうち界面剥離が1~3回発生したものを「b」とし、5回のうち界面剥離が4回発生したものを「c」とし、5回のうち全て界面剥離したものを「d」とした。
【0057】
<例10>
押圧部をアスカーC硬度計による硬度が60とし、刃の温度を25℃(常温)とし、樹脂基材の温度を25℃(常温)とした以外は、例1と同じ樹脂基材を、例1と同様にして、樹脂基材の切断を5回、実施した。
<例11>
樹脂基材を加熱し、温度を60℃とした以外は、例10と同様にして、樹脂基材を切断した。
<例12>
刃を加熱し、温度を60℃とした以外は、例10と同様にして、樹脂基材を切断した。
<例13>
刃を加熱し、温度を60℃とし、樹脂基材を加熱し、温度を60℃とした以外は、例10と同様にして、樹脂基材を切断した。
【0058】
【表2】
【0059】
刃および樹脂基材を加熱しなくとも、傾斜角の角度を50°~80°の範囲内にすることができた。しかし、刃および樹脂基材のうち、少なくとも1つを加熱して切断することにより、界面剥離の発生が抑制され、切断界面へのパーティクル侵入を防止でき、クリーン性が優れたものを得ることができた。
例10~13において、樹脂基材の切断後、樹脂層を支持基材から剥離し、ガラス板に張り付け積層体を得た。積層体において、樹脂層端部5mm以内の範囲を観察したところ、樹脂層とガラス板との界面に空隙(気泡)が3個以内であった。また、積層体について、樹脂層の表面側から斜面を二次元測定機を用いて測定したところ、側面は、辺に沿って長さ100mm当たりのうねり幅が100μm以下であった。
上述の例1~例14に用いた刃先の角度が40°の片刃に代えて、刃先を形成する2つの面が、それぞれ傾斜面であり、刃先を形成する2つの面のなす角度が80°の両刃を用いて切断した。なお、両刃は、図8に示すように傾斜面30cと、刃先30aの先端30eを通り、かつ支持基材22の表面22aに垂直な面Pとのなす角Qが40°である。上述の両刃を用いた場合でも、片刃と同じ結果が得られた。
【符号の説明】
【0060】
10 切断装置
12 第1の台
14 第2の台
15 ボールねじ
16 駆動部
17 加熱テーブル
18 刃型
19 切断部
20、21 樹脂基材
22 支持基材
22a 表面
23 接着層
24 樹脂層
24a 表面
24b 側面
24c 部分
24d 外縁部
25a 切断線
25b 切断線
26 斜面
26a 外面
26b 内面
28 保護フィルム
30 刃
30a 刃先
30b 底面
30c 傾斜面
30d 基部
30f 傾斜面
32 加熱部
33 固定部
33a 接着部材
33b 弾性部材
34 押圧部
40 積層体
42 支持体
42a 表面
42c 外縁部
44 保護層
46 密着層
50 刃
50a 刃先
50c 斜面
BL 基準線
L 測定距離
Q 角
α 角
β 角
γ 角
θ 傾斜角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11