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特許7081608農業用フッ素樹脂フィルムおよび農業用ハウス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】農業用フッ素樹脂フィルムおよび農業用ハウス
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/14 20060101AFI20220531BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
A01G9/14 S
A01G9/14 T
C08J5/18 CEW
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019544570
(86)(22)【出願日】2018-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2018034051
(87)【国際公開番号】W WO2019065281
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2017185017
(32)【優先日】2017-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田 康一
(72)【発明者】
【氏名】中村 順悦
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-189728(JP,A)
【文献】特開2013-212069(JP,A)
【文献】実開昭59-150816(JP,U)
【文献】特開2007-162029(JP,A)
【文献】実開昭60-141753(JP,U)
【文献】特開2010-259406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14 - 9/26
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂を含有し、通気性を有し、片方の表面に凹凸を有するフィルムであって、波長300~800nmにおける透過率Tが20~70%であり、下記透過率Tが75%以上であり、
光源から発せられた光を入射させたとき、拡散角が2.5度以下の透過光のうちの平行光線透過率が15~55%であることを特徴とするフッ素樹脂フィルム。
透過率T:前記フィルムの凹凸を有する面を水で完全に満たし、その上に厚さ50μmのエチレン-テトラフルオロエチレン系共重合体のみからなるフィルムであって、波長300~800nmにおける透過率が94%であり両方の表面の算術平均粗さRaが0.04μmである試験用フィルムを積層した積層体の、波長300~800nmにおける透過率。
【請求項2】
ヘーズが15~60%である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記凹凸を有する面の算術平均粗さRaが0.30~2.0μmである、請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記凹凸を有する面の最大高さ粗さRzが1~8μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項5】
前記フッ素樹脂が、エチレン-テトラフルオロエチレン系共重合体である、請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項6】
紫外線吸収剤をさらに含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項7】
光源から発せられた光を、前記フィルムにおける前記凹凸を有する面と反対側の表面に対して入射角0度で入射させたとき、拡散角0度の透過光の光線強度の10%に相当する光線強度で拡散される透過光の拡散角θが6~10度である、請求項1~6のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項8】
厚さが25~130μmである、請求項1~のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載のフィルムを用いた農業用ハウス。
【請求項10】
4m以上の軒高を有する、請求項に記載の農業用ハウス。
【請求項11】
さらにガラス窓を有し、前記ガラス窓の内側に前記フィルムが展張された請求項または10に記載の農業用ハウス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用フッ素樹脂フィルムおよび農業用ハウスに関する。
【背景技術】
【0002】
農業用ハウス(以下、単に「ハウス」ということがある。)の被覆材には、優れた透明性を有する樹脂フィルムが広く使用されている。該樹脂フィルムには、ハウス内の作物に充分な量の光を到達させることが要求される。また、太陽光線の直射による葉焼けや尻腐れ、上部の葉の影になった下部の葉の生育阻害の抑制も重要である。
【0003】
農業用樹脂フィルムとしては、例えば、ポリ塩化ビニル等からなる基材フィルムとアクリル酸エステル系重合体等からなる樹脂層との積層体において、前記樹脂層の表面に凹凸を有する農業用樹脂フィルムが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-115838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、トマトやきゅうり等を栽培する農業用ハウスとしては、作物の背丈を高くして収穫量を増やす目的で、軒高の高いハウスが増えている。しかし、本発明者は、特許文献1に記載の農業用樹脂フィルムを軒高の高いハウスに適用すると、収穫量があまり増えないことに気付いた。その理由は、拡散した透過光のうち、地表に到達する前にハウスの側面から外に出る光の割合が多く、地表近くの作物に光が充分に到達しにくいためと考えられる。
【0006】
特に冬季の午前中は、日照時間が短く、太陽光線も弱いため、光量が不足しがちである。軒高が高いハウスで収穫量を上げるには、そのような時間帯であってもハウス内の作物に到達する充分な光量を確保することが重要である。一方、特に夏季においては、太陽光線の直射による葉焼けや尻腐れの抑制が重要である。
【0007】
本発明は、軒高が高いハウスにおいても、太陽光線の作物への直射が強い期間や日照時間が短い期間も含めて作物の収穫量を増やせる農業用フッ素樹脂フィルム、および該農業用フッ素樹脂フィルムを用いた農業用ハウスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の[1]~[12]の構成を有する農業用フッ素樹脂フィルムおよび農業用ハウスを提供する。
[1]フッ素樹脂を含有し、片方の表面に凹凸を有する樹脂フィルムであって、波長300~800nmにおける透過率が20~70%であり、下記透過率Tが75%以上であることを特徴とする農業用フッ素樹脂フィルム。
透過率T:前記樹脂フィルムの凹凸を有する面を水で完全に満たし、その上に厚さ50μmのエチレン-テトラフルオロエチレン系共重合体のみからなるフィルムであって、波長300~800nmにおける透過率が94%であり両方の表面の算術平均粗さRaが0.04μmである試験用フィルムを積層した積層体の、波長300~800nmにおける透過率。
[2]ヘーズが15~60%である、[1]の農業用フッ素樹脂フィルム。
[3]前記凹凸を有する面の算術平均粗さRaが0.30~2.0μmである、[1]または[2]の農業用フッ素樹脂フィルム。
[4]前記凹凸を有する面の最大高さ粗さRzが1~8μmである、[1]~[3]のいずれかの農業用フッ素樹脂フィルム。
[5]前記フッ素樹脂が、エチレン-テトラフルオロエチレン系共重合体である、[1]~[4]のいずれかの農業用フッ素樹脂フィルム。
[6]紫外線吸収剤をさらに含有する、[1]~[5]のいずれかの農業用フッ素樹脂フィルム。
[7]光源から発せられた光を、前記樹脂フィルムにおける前記凹凸を有する面と反対側の表面に対して入射角0度で入射させたとき、拡散角0度の透過光の光線強度の10%に相当する光線強度で拡散される透過光の拡散角θが6~10度である、[1]~[6]のいずれかの農業用フッ素樹脂フィルム。
[8]光源から発せられた光を入射させたとき、拡散角が2.5度以下の透過光のうちの平行光線透過率が15~55%である、[1]~[7]のいずれかに記載の農業用フッ素樹脂フィルム。
[9]厚さが25~130μmである、[1]~[8]のいずれかの農業用フッ素樹脂フィルム。
[10]前記[1]~[9]のいずれかの農業用フッ素樹脂フィルムを用いた農業用ハウス。
[11]ハウスの軒高が4m以上である、[10]の農業用ハウス。
[12]ガラス窓の内側に前記農業用フッ素樹脂フィルムが展張された[10]または[11]の農業用ハウス。
【発明の効果】
【0009】
本発明の農業用フッ素樹脂フィルムを用いれば、軒高が高いハウスにおいても、太陽光線の作物への直射が強い期間や日照時間が短い期間も含めて作物の収穫量を増やせる。
本発明の農業用ハウスでは、軒高が高くても、太陽光線の作物への直射が強い期間や日照時間が短い期間も含めて作物の収穫量を増やせる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】フィルムの波長300~800nmにおける透過率を測定する様子を示した側面図である。
図2】透過率Tの測定に用いる積層体を示した断面図である。
図3図3(A)は、拡散角0度の透過光の光線強度の10%に相当する光線強度で拡散される透過光の拡散角θを測定する様子を示した側面図であり、図3(B)は、透過光の拡散角と透過光の光線強度との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書における下記の用語の意味は以下の通りである。
「算術平均粗さRa」および「最大高さ粗さRz」は、JIS B0601:2013(ISO4287:1997,Amd.1:2009)に記載された方法によって測定される値を意味する。
「ヘーズ」は、JIS K 7136:2000(対応国際規格:ISO 14782:1999)に従って測定される値を意味する。
農業用ハウスの「軒高」とは、ハウス内の地表からハウス構造体の軒部までの高さを意味する。
【0012】
[農業用フッ素樹脂フィルム]
本発明の農業用フッ素樹脂フィルム(以下、「本発明のフィルム」とも記す。)は、フッ素樹脂を含有し、片方の表面に凹凸を有するフィルムである。本発明のフィルムは、農業用ハウスにおいて、凹凸を有する面(以下、「凹凸面」とも記す。)がハウス内を向くように適用される。
【0013】
フッ素樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニル、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン系共重合体(以下、「ETFE」ともいう。)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、パーフルオロ(アルキルビニルエール)-テトラフルオロエチレン系共重合体が挙げられる。フッ素樹脂は、1種であっても2種以上であってもよい。
【0014】
フッ素樹脂としては、低コストで、低温成形性に優れ、強度が高いフィルムが得られやすい点から、ETFE、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)-テトラフルオロエチレン系共重合体が好ましく、ETFEが特に好ましい。
【0015】
フッ素樹脂の数平均分子量は、10,000~1,000,000が好ましく、100,000~700,000が特に好ましい。フッ素樹脂の数平均分子量が前記範囲の下限値以上であれば、フィルムの強度がより高くなる。フッ素樹脂の数平均分子量が前記範囲の上限値以下であれば、成形加工性により優れる。
【0016】
本発明のフィルムは、耐候性に優れる点から、フッ素樹脂に加えて、紫外線吸収剤をさらに含有することが好ましい。紫外線吸収剤としては、公知のものが使用でき、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の無機紫外線吸収剤や、市販の有機紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線吸収剤は、1種であっても2種以上であってもよい。
【0017】
本発明のフィルムが紫外線吸収剤を含有する場合、本発明のフィルムの100質量部に対する紫外線吸収剤の含有量は、0.4~5質量部が好ましく、0.5~3質量部が特に好ましい。紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、耐候性に優れる。紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、ヘーズが高くなりすぎず、ハウス内に光を充分に採り込める。
【0018】
本発明のフィルムの波長300~800nmにおける透過率(以下、「透過率T」とも記す。)は、20~70%であり、30~70%が好ましく、40~70%がより好ましく、50~70%が特に好ましい。透過率Tが前記範囲の下限値以上であれば、透過光が過度に拡散されないため、軒高が高いハウスにおいても透過光を地表近くまで充分に到達させられる。そのため、作物における地表近くの部分でも生育が充分に促進される。透過率Tが前記範囲の上限値以下であれば、太陽光線の直射による葉焼けや尻腐れを抑制できる。
透過率Tは、例えば、樹脂フィルムの凹凸面の算術平均粗さRaおよび最大高さ粗さRzを調節することにより調節できる。RaおよびRzを小さくするほど、透過率Tが高くなる傾向がある。
【0019】
本発明のフィルムの透過率Tは、75%以上であり、80%以上が好ましい。透過率Tが前記範囲の下限値以上であれば、外気温が低く、凹凸面に結露が生じるような場合に効率的に光がハウス内に採り込まれるため、冬季等の日照時間が短い期間においてもハウス内の光量を充分に確保できる。
【0020】
透過率Tおよび透過率Tの測定方法は特に限定されないが、以下の測定装置を使用することが好ましい。
外光を遮断するボックスと、前記ボックス内に設けられた光源と、前記光源からの光の一部を通過させるスリットを有するスリット板と、前記スリットを通過した光を集光させるトロイダルミラーと、前記トロイダルミラーにより集光された光が、入射窓に対して入射角0度で入射するように配置された積分球と、前記トロイダルミラーと前記積分球の間の光路上に配置され、前記トロイダルミラーにより集光された光の全部を通過させる開口部を有するサンプルフォルダとを備え、前記入射窓の大きさが縦15mm×横17.5mmであり、光路上に前記サンプルフォルダ以外に何もない状態で、前記トロイダルミラーによって、前記スリットを通過した光が前記入射窓において幅3mm×長さ12.5mmの範囲に集光される測定装置。
【0021】
例えば、図1(A)に例示した測定装置100を用いる。測定装置100は、外光を遮断するボックス10と、光源12と、スリット13aを有するスリット板13と、トロイダルミラー14と、縦15mm×横17.5mm四方の入射窓16aを有する積分球16と、10mm×30mm四方の開口部18aを有するサンプルフォルダ18とを備える。光源12、スリット板13、トロイダルミラー14、積分球16およびサンプルフォルダ18は、いずれもボックス10内に配置されている。積分球16の入射窓16aに対して垂直な直線上に、サンプルフォルダ18とトロイダルミラー14とがこの順に間隔を空けて配置されている。光源12は、積分球16の入射窓16aに垂直な直線に対して、トロイダルミラー14の位置で垂直に交差する直線上に配置されている。スリット板13は、光源12とトロイダルミラー14の間に配置されている。
【0022】
測定装置100においては、光源12から発せられた光の一部がスリット板13のスリット13aを通過し、トロイダルミラー14により集光され、集光された光の全部がサンプルフォルダ18の開口部18aを通過して積分球16の入射窓16aに対して入射角0度で入射するようになっている。スリット13aを通過した光が、トロイダルミラー14によって、入射窓16aにおいて幅3mm×長さ12.5mmの範囲に集光されるようになっている。
【0023】
トロイダルミラーの数は特に限定されず、光源の位置はトロイダルミラーの向きや数に応じて適宜設定すればよい。例えば、光源から発せられる光が、ボックス内に設置された2つ以上のトロイダルミラーで順次集光された後に積分球の入射窓に対して入射角0度で入射するようにしてもよい。
【0024】
透過率Tは、下記のように算出できる。
前記測定装置において測定波長を300~800nmとし、前記トロイダルミラーと前記入射窓の間の光路上にサンプルフォルダ以外に何もない状態で、光源から発せられた光のうち、積分球に入った光の光量QA0を測定する(「工程a」)。次いで、フィルムを、前記サンプルフォルダの前記入射窓側に、開口部を覆うように取り付けて光路上に配置する。フィルムの凹凸面は前記入射窓側に向け、前記入射窓と平行させ、かつ前記入射窓から前記樹脂フィルムにおける凹凸面と反対側の表面までの距離を180mmとする。フィルムを配置した以外は前記工程aと同じ条件で前記積分球に入った光量QA1を測定する(「工程b」、図1(B))。次いで、下式1により透過率T(%)を算出する(「工程c」)。
=QA1/QA0×100 式1
なお、光路に何もない状態とは、いかなる部材も配置されず、空気以外は何もない状態を意味するものとする。また、QA1はQA0の前に測定してもよい。
【0025】
透過率Tは、前記した測定装置を使用して、下記のように算出できる。
フィルムの凹凸面全体を完全に水で満たす。次いでフィルムの凹凸面側に、厚さ50μmのETFEのみからなるフィルムであって、波長300~800nmにおける透過率が94%であり両方の表面の算術平均粗さRaが0.04μmである試験用フィルムを積層して積層体とする(「工程d」)。次いで、前記積層体を、前記サンプルフォルダの前記入射窓側に、開口部を覆うように取り付けて光路上に配置する。前記積層体の前記凹凸面は前記入射窓側に向け、前記入射窓と平行させ、かつ前記入射窓からフィルムにおける前記凹凸面と反対側の表面までの距離を180mmとする。前記積層体を配置した以外は前記工程aと同条件で前記積分球に入った光量QA2を測定する(「工程e」)。次いで、下式2により透過率T(%)を算出する(「工程f」)。
=QA2/QA0×100 式2
【0026】
工程dにおいては、図2に示すように、農業用フッ素樹脂フィルム1(以下、「フィルム1」とも記す。)の凹凸面1aの全体に水をなじませた後、フィルム1の凹凸面1a側に試験用フィルム2を重ね、フィルム1と試験用フィルム2の間に水膜3が形成された積層体4とする。透過率Tの測定では、フィルム単体の代わりに、このような積層体を用いる。該積層体においては、本発明のフィルムと試験用フィルムの間に水膜が形成されている。透過率Tの測定は、本発明のフィルムの凹凸を有する面に結露が生じて水膜が形成された状態を想定したものである。
【0027】
(ヘーズ)
本発明のフィルムのヘーズは、15~60%が好ましく、15~50%がより好ましく、15~40%が特に好ましい。ヘーズが前記範囲の下限値以上であれば、成長点での散乱光が得られる。ヘーズが前記範囲の上限値以下であれば、軒高が高いハウスにおいても透過光を地表近くまで充分に到達できる。
【0028】
(表面粗さ)
本発明のフィルムにおける凹凸面の算術平均粗さRaは、0.30~2.0μmが好ましく、0.8~1.8μmがより好ましく、1.0~1.6μmが特に好ましい。凹凸面のRaが前記範囲の下限値以上であれば、太陽光線の直射による葉焼けや尻腐れを抑制しやすい。凹凸面のRaが前記範囲の上限値以下であれば、軒高が高いハウスにおいても透過光を地表近くまで充分に到達できる。
【0029】
本発明のフィルムにおける凹凸面の最大高さ粗さRzは、1~8μmが好ましく、4~7μmがより好ましく、4~6μmが特に好ましい。凹凸面のRzが前記範囲の下限値以上であれば、太陽光線の直射による葉焼けや尻腐れを抑制しやすい。凹凸面のRzが前記範囲の上限値以下であれば、軒高が高いハウスにおいても透過光を地表近くまで充分に到達できる。
【0030】
(拡散角θ)
本発明のフィルムは、光源から、樹脂フィルムにおける凹凸面と反対側の表面に対して入射角0度で光を入射させたとき、拡散角0度の透過光の光線強度の10%に相当する光線強度で拡散される透過光の拡散角θが6~10度であることが好ましい。拡散角が0~θ度の範囲の透過光は、拡散角0度の透過光の光線強度に対して10%以上の光線強度を有する光である。拡散角θが小さいほど透過光の拡散の度合いが小さく、拡散角θが大きいほど透過光の拡散の度合いが大きいことを意味する。拡散角θが前記範囲内であれば、軒高の高いハウスにおいても、太陽光線の直射による葉焼けや尻腐れを抑制しつつ、地表近くまで光を充分に到達できる。そのため、作物の生育が充分に促進され、収穫量がさらに増大する。前記拡散角θは、6~8度が特に好ましい。
【0031】
拡散角θは、図3(A)に例示した測定装置200を用いて測定される。測定装置200は、光源50と、光源50の下方に設けられた受光器52とを備えており、光源50と受光器52との間にフィルム1を設置できるようになっている。フィルム1は、凹凸面1aが受光器52側、凹凸面1aと反対側の表面1bが光源50側を向くように設置する。測定装置200においては、フィルム1の凹凸面1aにおける、光源50から表面1bに入射角0度で入射した光が到達する地点Pから、半径Rの円周上を受光器52が移動し、拡散角が-85~85度の範囲の透過光の光線強度を測定できるようになっている。
図3(B)に示すように、拡散角が-85~85度の範囲の透過光の光線強度は、透過光の拡散角が0度のときに最も大きくなる。拡散角が0度のときの透過光の光線強度をSとしたとき、0.1Sに相当する拡散角を拡散角θとして求める。測定装置200における拡散角が0~-85度の範囲の透過光の光線強度は、拡散角が0~85度の範囲の透過光の光線強度と対称な結果となる。
【0032】
(拡散角が2.5度以下の透過光のうちの平行光線透過率)
本発明のフィルムは、光源から発せられた光を入射させたとき、拡散角が2.5度以下の透過光のうちの平行光線透過率(以下、「狭角度散乱」とも記す。)が、15~55%が好ましく、20~55%が特に好ましい。平行光線透過率が前記範囲であると、フィルムに対して斜めに入射した光でもハウス内に採り込みやすくなり、作物の収穫量がより増大する。
【0033】
(フィルムの厚さ)
本発明のフィルムの厚さは、25~130μmが好ましく、50~100μmが特に好ましい。樹脂フィルムの厚さが前記範囲の下限値以上であれば、充分な強度が得られやすい。樹脂フィルムの厚さが前記範囲の上限値以下であれば、透過性に優れ、また施工時のハンドリングに優れる。
【0034】
本発明のフィルムは、凹凸面に流滴材が塗工されたフィルムであってもよい。流滴材としては、特に限定されず、公知のものを使用できる。例えば、シリカ微粒子やアルミナ微粒子等の無機微粒子等が挙げられる。
凹凸面に流滴材を塗工する場合、塗工前のフィルムに流滴材の塗工性を高めるための表面処理を施してもよい。表面処理としては、特に限定されず、例えば、プラズマ処理、オゾン処理、火炎処理、化成処理、プライマー処理等が挙げられる。また、例えばプラズマ処理した上にさらにプライマー処理を施してもよい。プライマー処理としては、例えば、シランカップリング剤の塗工等が挙げられる。さらに、フィルムの凹凸面に、シランカップリング剤を主成分とし、かつシリカ微粒子やアルミナ微粒子等の無機微粒子を含む流滴材を塗工してもよい。
【0035】
(作用効果)
以上説明した本発明のフィルムは、透過率Tが20~70%であるため、軒高が高いハウスに適用する場合においても、太陽光線の作物への直射を低減しつつ、地表近くまで光が充分に到達する。また、透過率Tが75%以上であるため、凹凸面に結露が生じて、水膜が形成された状態でハウス内に効率良く光を採り込める。そのため、冬季の午前中等、日照時間が短く光量が不足しがちな時間帯においても、ハウス内の作物に到達する充分な光量を確保できる。
また、本発明のフィルムは、フッ素樹脂を含有するため、透湿性に優れる。そのため、結露水やハウス内の水分を含んだ空気をハウス外へと効率的に逃がせる。そのため、ハウス内の温度が上昇した際に湿度が過剰に高まることを防止でき、作物がかいよう病等の病気にかかることを抑制できる。また、本発明の樹脂フィルムは、フッ素樹脂を含有するために耐候性にも優れる。そのため、ハウス内への光の採り込み効率や優れた透湿性が長期間維持できる。
以上のことから、本発明のフィルムを用いることで、軒高が高いハウスにおいても、太陽光線の作物への直射が強い期間や日照時間が短い期間も含めて作物の収穫量を増やせる。
【0036】
[農業用ハウス]
本発明の農業用ハウスは、軒高が4m以上である高軒高の農業用ハウスとして特に有効である。軒高が高くても、太陽光線の作物への直射を低減しつつ地表近くまで光が充分に到達し、ハウス内が高温多湿になることを抑制し、また日照時間が短い期間でも充分な光量が確保できる。
【0037】
本発明の農業用ハウスとしては、本発明のフィルムがハウス全面に展張された農業用ビニールハウスのほか、ガラス窓の内側の全面に本発明のフィルムが展張された農業用ガラスハウスとすることもできる。該農業用ガラスハウスにおいては、ハウス内における水分を含んだ空気がフィルムを透過し、次いでガラス窓と骨組み部分との隙間を通じてハウス外に出る。そのため、該農業用ガラスハウスにおいても、ハウス内が高温多湿になることを抑制できる。
【実施例
【0038】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。なお、例1~13および21~24のうち、例1~4および21は実施例、例5~13および22~24は比較例である。
【0039】
[評価方法]
(算術平均粗さRa、最大高さ粗さRz)
各例のフィルムについて、表面粗さ測定器(製品名「480A」、東京精密社製)を用いて、塗工面の算術平均粗さRaおよび最大高さ粗さRzを測定した。
【0040】
(ヘーズ)
各例のフィルムについて、ヘーズメーター(製品名「NDH5000」、日本電色社製)を用いてヘーズ(DRY)を測定した。
また、塗工面の全体に水をなじませたフィルムの塗工面側に、厚さ50μmの試験用フィルム(製品名「エフクリーン」、AGCグリーンテック社製)を重ね、樹脂フィルムと試験用フィルムの間に水膜が形成された積層体とし、該積層体のヘーズ(WET)を測定した。
光源:白色LEDを使用したD65光源
【0041】
(透過率TおよびT
各例のフィルムの透過率TおよびTを以下のように測定した。
外光を遮断するボックスとして大型試料室(製品名「MPC-3100」、島津製作所社製)を用いた。また、ボックスの内部に下記の分光光度計を設置し、図1に示した測定装置100と同等の測定装置を構成した。該分光光度計においては、光源から発せられた光の一部がスリットを通り、トロイダルミラーによって、積分球の入射窓において幅3mm×長さ12.5mmの範囲に集光され、入射窓に対して入射角0度で入射する。
<分光光度計>
製品名:「UV-3600」(島津製作所社製)
入射窓:縦15mm×横17.5mm四方
入射窓からトロイダルミラーまでの距離:350mm
入射窓からサンプルフォルダまでの距離:180mm
サンプルフォルダの開口部:10mm×30mm四方
スリット条件:スリット波長8nm
光源:重水素放電管ランプ(190nm~450nm)とタングステンハロゲンランプ(350nm~2300nm)
【0042】
前記測定装置において、トロイダルミラーと入射窓の間の光路上にサンプルフォルダ以外に何もない状態で、測定波長を300~800nmとして、光源から発せられた光のうち、入射窓から積分球に入った光の光量QA0を測定した。次いで、サンプルフォルダの積分球側に、開口部を覆うようにフィルムを取り付けた。フィルムの取り付けは、流滴材を塗工した表面(以下、「塗工面」とも記す。)が入射窓側に向き、かつ入射窓と平行となり、入射窓からフィルムにおける塗工面と反対側の表面までの距離が180mmとなるように行った。フィルムが配置されている以外は、前記光量QA0の測定と同条件で、入射窓から積分球に入った光の光量QA1を測定し、下式1により透過率T(%)を算出した。
=QA1/QA0×100 式1
【0043】
フィルムの塗工面の全体に水をなじませた後、該フィルムの塗工面側に、試験用フィルム(製品名「エフクリーン」、AGCグリーンテック社製、厚さ:50μm、波長300~800nmの全光線透過率:94%、表面の算術平均粗さRa:0.04μmのETFEのみからなるフィルム)を重ね、フィルムと試験用フィルムの間に水膜が形成された積層体を得た。測定装置におけるサンプルフォルダの積分球側に、開口部を覆うように前記積層体を取り付けた。積層体の取り付けは、該積層体のフィルムにおける塗工面が入射窓側に向き、かつ入射窓と平行となり、入射窓からフィルムにおける塗工面と反対側の表面までの距離が180mmとなるように行った。前記積層体が配置されている以外は、前記光量QA0の測定と同条件で、入射窓から積分球に入った光の光量QA2を測定し、下式2により透過率T(%)を算出した。
=QA2/QA0×100 式2
【0044】
(拡散角θ)
図3に示す測定装置200として、変角光度計(製品名「GC-5000L」、日本電色社製)を用い、塗工面が受光器側、塗工面と反対側の表面が光源側を向くようにフィルムを設置した。変角光度計において、光源からフィルムにおける塗工面と反対側の表面に対して入射角0度で光を入射させ、拡散角θの2分の1が0~90度の範囲で透過光の光線強度を測定した。拡散角0度の透過光の光線強度を100%としたときの、10%に相当する光線強度で拡散された透過光の拡散角θを求めた。(測定される角度はθ/2である。)
光源:タングステンハロゲンランプを使用したD65光源
【0045】
(狭角度散乱)
各例のフィルムについて、ヘイズ-ガードi(テツタニ社製)を用いて狭角度散乱を測定した。
光源:白色LEDを使用したD65光源
【0046】
[各例で使用した表面エンボスバックロール]
ロールA:Raが2.6μm、Rzが19.5μmのロール
ロールB:Raが0.35μm、Rzが2.4μmのロール
【0047】
[例1]
フッ素樹脂としてETFE(製品名「FluonETFE C-88AX」、旭硝子社製)を用い、フィルム状に押し出した樹脂を、一対の金属ロールと表1に示す種類の表面エンボスバックロールとを回転させつつそれらの間に通すTダイ式押出成形法により、片方の面に凹凸を有する樹脂フィルムを製造した。なお、表1における「未使用」とは、表面エンボスバックロールの代わりに、表面にエンボスのないバックロールを用いたことを意味する。成形条件としては、ダイ温度を310℃、金属ロールの温度を50℃、表面エンボスバックロールの温度を50℃、ロール間のエアギャップを150mmとし、引取り速度を表1に示す値とした。樹脂フィルムの凹凸面には、コロナ放電処理した後、流滴材(製品名「エフクリーン用流滴材」、AGCグリーンテック社製)をグラビアコート法で塗工し、70℃で30秒間乾燥して厚さ0.3μmの層を形成し、流滴材付きフィルムを得た。
【0048】
[例2]
例1と同様にして得た樹脂フィルムの凹凸面にコロナ放電処理をした後、下記アンダーコート液をグラビアコート法で塗工し、次いで80℃で5秒間乾燥し、塗工量0.03g/mのアンダーコート層を形成した。次いで下記流滴材をグラビアコート法で塗工した以外は例1と同様にして、流滴材付きフィルムを得た。
アンダーコート液:アミノシラン(製品名「KBM903」、信越化学工業社製)の1質量部、レベリング剤(製品名「サンフェノール420」、信越化学工業社製)の0.05質量部、工業用エタノール(製品名「ソルミックスAP-1」、日本アルコール販売社製)の98.95質量部を混合した液。
流滴材:下記液1と液2とを混合した液。
液1:イオン交換水の16.1質量部に1N硝酸の1.5質量部を加え、撹拌しながらシリカゾル(製品名「スノーテックスS」、日産化学社製、pH10、固形分濃度:30質量%)の9.7質量部を加え、30分撹拌を続けた後、室温(25℃)で1日静置した。
液2:イオン交換水の2.75質量部に1N硝酸の2質量部を加え、撹拌しながら、工業用エタノール(製品名「ソルミックスAP-1」、日本アルコール販売社製)の50質量部、ベーマイト(製品名「ケイスタッチZ20A」、ケイアイ化成社製、pH4.0、固形分濃度:20質量%)の17.8質量部、アミノシラン(製品名「KBM903」、信越化学工業社製)の0.2質量部を加え、30分撹拌を続けた後、室温(25℃)で1日静置した。
【0049】
[例3~5]
表面エンボスバックロールを表1に示すように変更し、また、引取り速度を表1に示すように変更した以外は、例1と同様にして、一方の面に凹凸を有する樹脂フィルムを製造した。該樹脂フィルムの凹凸面には、例1と同様にして、コロナ放電処理した後に流滴材を塗工し、流滴材付きフィルムを得た。
【0050】
[例6]
引取り速度を表1に示すように変更し、表面エンボスバックロールを使用しないで片側金属ロールのみで押出し成形した以外は、例1と同様にして樹脂フィルムを製造した。該樹脂フィルムでは、金属ロールに接しなかった面についてRaおよびRzを測定した。該樹脂フィルムにおけるRaおよびRzを測定した表面には、例1と同様にして、コロナ放電処理した後に流滴材を塗工し、流滴材付きフィルムを得た。
【0051】
[例7~13]
樹脂フィルムとして、積水フィルム社製の製品名「スーパーキリナシ」(例7)、積水フィルム社製の製品名「花野果(登録商標)」(例8)、三菱樹脂アグリドリーム社製の製品名「散乱光農ビ SUNRUN(登録商標)」(例9)、三菱樹脂アグリドリーム社製の製品名「美サンランイースター(登録商標)」(例10)、三菱樹脂アグリドリーム社製の製品名「美サンランダイヤスター(登録商標)」(例11)、シーアイ化成社製の製品名「カゲナシ5」(例12)、サンテーラ社製の製品名「クリンテート(登録商標)SK」(例13)を用意した。
「スーパーキリナシ」(例7)と「花野果(登録商標)」(例8)の凹凸面には、例1と同様にして、コロナ放電処理した後に流滴材を塗工し、流滴材付きフィルムを得た。また、「散乱光農ビ SUNRUN(登録商標)」(例9)、「美サンランイースター(登録商標)」(例10)、「美サンランダイヤスター(登録商標)」(例11)、「カゲナシ5」(例12)、「クリンテート(登録商標)SK」(例13)の算術平均粗さRaおよび最大高さ粗さRzを測定した表面にも、例1と同様にして、コロナ放電処理した後に流滴材を塗工し、流滴材付きフィルムを得た。
【0052】
各例の表面エンボスバックロールの種類および使用有無、引取り速度、樹脂フィルムの厚さ、算術平均粗さRa、最大高さ粗さRz、ヘーズ、透過率TおよびT、狭角度散乱、散乱角θの測定結果を表1に示す。なお、拡散角θが「0度」であるとは、透過光が全く拡散されなかったことを意味する。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示すように、例1~4の樹脂フィルムは、透過率Tが20~70%で、かつ透過率Tが75%以上であった。一方、例5~13の樹脂フィルムは、透過率Tおよび透過率Tの少なくとも一方の条件が満たされていなかった。
【0055】
[例21]
例1で得た流滴材付きフィルムを用いて、ハウスによるトマト栽培を行った。具体的には、農業用フッ素樹脂フィルムを、凹凸面(流滴材の塗工面)を内側にして展張した軒高が4mの農業用屋根型ビニールハウスにおいて、ハイワイヤー誘引を用いて長期多段採りする栽培方法によりトマトを栽培した。トマト栽培においては、ハウスで8月に定植を行い、11月初旬~6月中旬にかけて収穫を実施した。トマト品種は「マイロック」とし、栽植本数は10aあたり2,400本とした。各月の10aあたりの収穫量と、冬季(1月~2月)、夏季(5月~6月)および収穫の全期間における10aあたりの合計収穫量(t)を表2に示す。
【0056】
[例22~24]
流滴材付きフィルムを表2に示すように変更した以外は、例21と同様にしてトマトを栽培した。各月の10aあたりの収穫量と、冬季(1月~2月)、夏季(5月~6月)および収穫の全期間における10aあたりの合計収穫量(t)を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
表2に示すように、透過率Tが20~70%で、透過率Tが75%以上である流滴材付きフィルムを用いた例21では、それらの少なくとも一方の条件を満たさない例22~24に比べて、収穫の全期間のトマトの合計収穫量が多かった。また、例21では、冬季(1月~2月)および夏季(5月~6月)の収穫量も例22~24に比べて多かった。これは、例21では、全期間にわたってハウス内の地表近くまで充分に光が到達して下部においても生育が充分に促進されたこと、ハウス内が高温多湿になってトマトがかいよう病等の病気にかかることが抑制されたことが要因であると考えられる。また、夏季には太陽光線が充分に拡散されることでトマトの葉や果実への直射による葉焼けや尻腐れが抑制されたこと、冬季にはフィルムの凹凸面に結露が生じた際に充分な光量が確保されたことも要因であると考えられる。
例22では、太陽光線の直射による葉焼けや尻腐れの影響により、例21に比べて収穫量が少なかったと考えられる。
例23では、ハウス内の地表近くまで光が到達しにくかった影響により、例21に比べて収穫量が少なかったと考えられる。
例24では、特に冬季においてハウス内の光量が不充分であった影響により、例21に比べて収穫量が少なかったと考えられる。
なお、2017年09月26日に出願された日本特許出願2017-185017号の明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0059】
1 農業用フッ素樹脂フィルム、1a 凹凸面、1b 凹凸面と反対側の表面、2 試験用フィルム、3 水膜、4 積層体、100,200,300 測定装置、10 ボックス、12 光源、13 スリット板、13a スリット、14 トロイダルミラー、16 積分球、16a 入射窓、18 サンプルフォルダ、18a 開口部、50 光源、52 受光器。
図1
図2
図3