(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】新規な化合物およびこれを利用した有機発光素子
(51)【国際特許分類】
C07D 213/16 20060101AFI20220531BHJP
C07D 239/26 20060101ALI20220531BHJP
C07D 405/04 20060101ALI20220531BHJP
C07D 409/04 20060101ALI20220531BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220531BHJP
C07D 251/24 20060101ALI20220531BHJP
C07D 403/04 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
C07D213/16
C07D239/26
C07D405/04
C07D409/04
H05B33/14 A
H05B33/22 D
H05B33/22 B
C07D251/24 CSP
C07D403/04
(21)【出願番号】P 2020538814
(86)(22)【出願日】2019-05-02
(86)【国際出願番号】 KR2019005993
(87)【国際公開番号】W WO2019212325
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2020-07-17
(31)【優先権主張番号】10-2018-0051361
(32)【優先日】2018-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム、スンミン
(72)【発明者】
【氏名】チャ、ヨンブム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、サン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、イェオン ファン
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108117511(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0045695(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第108117508(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0095602(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物:
[化学式1]
【化1】
上記化学式1中、
Lは、単結合;置換または非置換の炭素数6~60のアリーレン;または置換または非置換のN、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上を含む炭素数2~60のヘテロアリーレンであり、
Arは、下記で構成される群から選択されるいずれか一つである:
【化5】
上記中、
X
1~X
3はN、またはCHであり、但し、X
1~X
3のうちの少なくとも一つはNであり、
Ar
1およびAr
2は、それぞれ独立して、非置換の炭素数6~60のアリール;または置換または非置換のN、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上を含む炭素数2~60のヘテロアリールであり、
X
4およびX
5はN、またはCHであり、但し、X
4およびX
5のうちの少なくとも一つはNであり、
Ar
3は、置換または非置換の炭素数6~60のアリール;または置換または非置換のN、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上を含む炭素数2~60のヘテロアリールであり、
Yは、N(Ar
5)、O、またはSであり、
Ar
4は、水素、置換または非置換の炭素数6~60のアリール;または置換または非置換のN、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上を含む炭素数2~60のヘテロアリールであり、
Ar
5は、置換または非置換の炭素数6~60のアリールである。
【請求項2】
上記化学式1は下記化学式1-1、1-2、または1-3で表される、請求項1
に記載の化合物:
[化学式1-1]
【化2】
[化学式1-2]
【化3】
[化学式1-3]
【化4】
。
【請求項3】
Lは、単結合、フェニレンまたはカルバゾールジイルである、請求項1
または2に記載の化合物。
【請求項4】
Ar
1およびAr
2は、それぞれ独立して、フェニル、ビフェニリル、ターフェニリル、ナフチル、フェナントレニル、トリフェニレニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、または9-フェニル-9H-カルバゾリルである、請求項1から
3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
Ar
3はフェニル、ビフェニリル、またはナフチルである、請求項
1に記載の化合物。
【請求項6】
Ar
4は水素、フェニル、ビフェニリル、またはナフチルである、請求項1から
5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
Ar
5はフェニルである、請求項1から
6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
下記で構成される群から選択されるいずれか一つである、化合物:
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
。
【請求項9】
第1電極;前記第1電極と対向して具備された第2電極;および前記第1電極と前記第2電極との間に具備された1層以上の有機物層を含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上は、請求項1~
8のいずれか一項に記載の化合物を含む、有機発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年5月3日付の韓国特許出願第10-2018-0051361号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、新規な化合物およびこれを含む有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に、有機発光現象とは、有機物質を利用して電気エネルギーを光エネルギーに転換させる現象をいう。有機発光現象を利用する有機発光素子は、広い視野角、優れたコントラスト、速い応答時間を有し、輝度、駆動電圧および応答速度特性に優れて多くの研究が進められている。
【0004】
有機発光素子は、一般的に正極と負極および前記正極と負極との間に有機物層を含む構造を有する。前記有機物層は、有機発光素子の効率と安全性を高めるために、それぞれ異なる物質から構成された多層の構造からなる場合が多く、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などからなる。このような有機発光素子の構造において、2つの電極の間に電圧をかけると、正極からは正孔が、負極からは電子が有機物層に注入され、注入された正孔と電子が接した時、エキシトン(exciton)が形成され、このエキシトンが再び底状態に落ちる時、光が出るようになる。
【0005】
このような有機発光素子に使用される有機物に対して新たな材料の開発が要求され続けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国特許公開第10-2000-0051826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、新規な化合物およびこれを含む有機発光素子に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記化学式1で表される化合物を提供する:
[化学式1]
【化1】
上記化学式1中、
Lは、単結合;置換または非置換の炭素数6~60のアリーレン;または置換または非置換のN、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上を含む炭素数2~60のヘテロアリーレンであり、
Arは、置換または非置換のN、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上を含む炭素数2~60のヘテロアリールである。
【0009】
また、本発明は、第1電極;前記第1電極と対向して具備された第2電極;および前記第1電極と前記第2電極との間に具備された1層以上の有機物層を含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上は、上記化学式1で表される化合物を含む、有機発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0010】
上述した化学式1で表される化合物は、有機発光素子の有機物層の材料として用いられ、有機発光素子において効率の向上、低い駆動電圧および/または寿命特性を向上させることができる。特に、上述した化学式1で表される化合物は、正孔注入、正孔輸送、正孔注入および輸送、発光、電子輸送、または電子注入材料として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】基板1、正極2、有機物層3、負極4からなる有機発光素子の例を示す図である。
【
図2】基板1、正極2、正孔注入層5、正孔輸送層6、電子抑制層7、発光層8、正孔抑制層9、電子輸送層10、電子注入層11および負極4からなる有機発光素子の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の理解を助けるためにより詳しく説明する。
【0013】
本発明は、上記化学式1で表される化合物を提供する。
【0014】
本明細書において、
【化2】
または
【化3】
は、他の置換基に連結される結合を意味する。
【0015】
本明細書において、「置換または非置換の」という用語は、重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルボニル基;エステル基;イミド基;アミノ基;ホスフィンオキシド基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;シリル基;ホウ素基;アルキル基;シクロアルキル基;アルケニル基;アリール基;アラルキル基;アラルケニル基;アルキルアリール基;アルキルアミン基;アラルキルアミン基;ヘテロアリールアミン基;アリールアミン基;アリールホスフィン基;またはN、OおよびS原子のうちの1個以上を含むヘテロ環基からなる群から選択される1個以上の置換基で置換または非置換されるか、前記例示された置換基のうちの2以上の置換基が連結された置換または非置換されることを意味する。例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」は、ビフェニル基であってもよい。すなわち、ビフェニル基は、アリール基であってもよく、2個のフェニル基が連結された置換基と解釈されてもよい。
【0016】
本明細書において、カルボニル基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~40であることが好ましい。具体的には、下記のような構造の化合物であり得るが、これに限定されるものではない。
【化4】
【0017】
本明細書において、エステル基は、カルボキシル基の酸素が、炭素数1~25の直鎖、分枝鎖もしくは環鎖アルキル基、または炭素数6~25のアリール基で置換されていてもよい。具体的には、下記構造式の化合物であり得るが、これに限定されるものではない。
【化5】
【0018】
本明細書において、イミド基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~25であることが好ましい。具体的には、下記のような構造の化合物であり得るが、これに限定されるものではない。
【化6】
【0019】
本明細書において、シリル基は、具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルシリル基、フェニルシリル基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
本明細書において、ホウ素基は、具体的には、トリメチルホウ素基、トリエチルホウ素基、t-ブチルジメチルホウ素基、トリフェニルホウ素基、フェニルホウ素基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
本明細書において、ハロゲン基の例としては、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素がある。
【0022】
本明細書において、前記アルキル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1~40であることが好ましい。一実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~20である。他の一実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~10である。さらに他の一実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~6である。アルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチルブチル、1-エチルブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、イソヘキシル、2-メチルペンチル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
本明細書において、前記アルケニル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、2~40であることが好ましい。一実施形態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~20である。他の一実施形態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~10である。さらに他の一実施形態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~6である。具体的な例としては、ビニル、1-プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、1,3-ブタジエニル、アリル、1-フェニルビニル-1-イル、2-フェニルビニル-1-イル、2,2-ジフェニルビニル-1-イル、2-フェニル-2-(ナフチル-1-イル)ビニル-1-イル、2,2-ビス(ジフェニル-1-イル)ビニル-1-イル、スチルベニル基、スチレニル基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
本明細書において、シクロアルキル基は特に限定されないが、炭素数3~60であることが好ましく、一実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~30である。他の一実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~20である。さらに他の一実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~6である。具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、3-メチルシクロペンチル、2,3-ジメチルシクロペンチル、シクロヘキシル、3-メチルシクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、2,3-ジメチルシクロヘキシル、3,4,5-トリメチルシクロヘキシル、4-tert-ブチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
本明細書において、アリール基は特に限定されないが、炭素数6~60であることが好ましく、単環式アリール基または多環式アリール基であってもよい。一実施形態によれば、前記アリール基の炭素数は6~30である。他の一実施形態によれば、前記アリール基の炭素数は6~20である。前記単環式アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などであり得るが、これらに限定されるものではない。前記多環式アリール基としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などであり得るが、これらに限定されるものではない。
【0026】
本明細書において、フルオレニル基は置換されていてもよく、置換基2個が互いに結合してスピロ構造を形成してもよい。前記フルオレニル基が置換される場合、
【化7】
などであってもよい。ただし、これらに限定されるものではない。
【0027】
本明細書において、ヘテロ環基は、異種元素としてO、N、Si、およびSのうちの1個以上を含むヘテロ環基であって、炭素数は特に限定されないが、炭素数2~60であることが好ましい。ヘテロ環基の例としては、チオフェン基、フラニル基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、トリアゾル基、ピリジル基、ビピリジル基、ピリミジル基、トリアジニル基、アクリジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、キノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリル基、インドール基、カルバゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾカルバゾール基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、ベンゾフラニル基、フェナントロリン基(phenanthroline)、イソオキサゾリル基、チアジアゾリル基、フェノチアジニル基、およびジベンゾフラニル基などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0028】
本明細書において、アラルキル基、アラルケニル基、アルキルアリール基、アリールアミン基中のアリール基は、上述したアリール基に関する説明が適用可能である。本明細書において、アラルキル基、アルキルアリール基、アルキルアミン基中のアルキル基は、上述したアルキル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロアリールアミン中のヘテロアリールは、上述したヘテロ環基に関する説明が適用可能である。本明細書において、アラルケニル基中のアルケニル基は、上述したアルケニル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、アリーレンは、2価の基であることを除けば、上述したアリール基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロアリーレンは、2価の基であることを除けば、上述したヘテロ環基に関する説明が適用可能である。本明細書において、炭化水素環は1価の基ではなく、2個の置換基が結合して形成したことを除けば、上述したアリール基またはシクロアルキル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロ環は1価の基ではなく、2個の置換基が結合して形成したことを除けば、上述したヘテロ環基に関する説明が適用可能である。
【0029】
好ましくは、上記化学式1は、下記化学式1-1、1-2、または1-3で表される:
[化学式1-1]
【化8】
[化学式1-2]
【化9】
[化学式1-3]
【化10】
【0030】
好ましくは、Lは、単結合、フェニレン、またはカルバゾールジイルである。より好ましくは、前記Lは、単結合、1,4-フェニレン、1,3-フェニレン、1,2-フェニレン、または
【化11】
である。
【0031】
好ましくは、Arは、下記で構成される群から選択されるいずれか一つである:
【化12】
【0032】
上記中、
X1~X3はN、またはCHであり、但し、X1~X3のうちの少なくとも一つはNであり、
Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~60のアリール;または置換または非置換のN、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上を含む炭素数2~60のヘテロアリールであり、
X4およびX5はN、またはCHであり、但し、X4およびX5のうちの少なくとも一つはNであり、
Ar3は、置換または非置換の炭素数6~60のアリール;または置換または非置換のN、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上を含む炭素数2~60のヘテロアリールであり、
Yは、N(Ar5)、O、またはSであり、
Ar4は、水素、置換または非置換の炭素数6~60のアリール;または置換または非置換のN、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上を含む炭素数2~60のヘテロアリールであり、
Ar5は、置換または非置換の炭素数6~60のアリールである。
【0033】
好ましくは、Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、フェニル、ビフェニリル、ターフェニリル、ナフチル、フェナントレニル、トリフェニレニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、または9-フェニル-9H-カルバゾリルである。
【0034】
好ましくは、Ar3はフェニル、ビフェニリル、またはナフチルである。
【0035】
好ましくは、Ar4は水素、フェニル、ビフェニリル、またはナフチルである。
【0036】
好ましくは、Ar5はフェニルである。
【0037】
上記化学式1で表される化合物の代表的な例は次の通りである:
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【0038】
また、本発明は、下記反応式1または2のように上記化学式1で表される化合物の製造方法を提供する。
[反応式1]
【化24】
[反応式2]
【化25】
【0039】
上記反応式1および2中、LおよびArは先に定義した通りであり、X'はハロゲンであり、好ましくは臭素、またはクロロである。上記反応式1および2は鈴木カップリング反応で、パラジウム触媒と塩基の存在下で行うことが好ましく、鈴木カップリング反応のための反応基は当業界で公知のものによリ変更可能である。前記製造方法は、後述する製造例でより具体化され得る。
【0040】
また、本発明は、上記化学式1で表される化合物を含む有機発光素子を提供する。一例として、本発明は、第1電極;前記第1電極と対向して具備された第2電極;および前記第1電極と前記第2電極との間に具備された1層以上の有機物層を含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上は、上記化学式1で表される化合物を含む、有機発光素子を提供する。
【0041】
本発明の有機発光素子の有機物層は、単層構造からなってもよいが、2層以上の有機物層が積層された多層構造からなってもよい。例えば、本発明の有機発光素子は、有機物層として正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを含む構造を有することができる。しかし、有機発光素子の構造はこれに限定されず、より少数の有機物層を含んでもよい。
【0042】
また、前記有機物層は発光層を含んでもよく、前記発光層は、上記化学式1で表される化合物を含む。特に、本発明に係る化合物は、発光層のドーパントとして使用してもよい。
【0043】
また、前記有機物層は、電子輸送層または電子注入層を含んでもよく、前記電子輸送層または電子注入層は、上記化学式1で表される化合物を含む。
【0044】
また、前記電子輸送層、電子注入層、または電子注入および電子輸送を同時に行う層は、上記化学式1で表される化合物を含む。
【0045】
また、前記有機物層は発光層および電子輸送層を含み、前記電子輸送層は、上記化学式1で表される化合物を含んでもよい。
【0046】
また、本発明に係る有機発光素子は、基板上に、正極、1層以上の有機物層、および負極が順次に積層された構造(normal type)の有機発光素子であり得る。また、本発明に係る有機発光素子は、基板上に、負極、1層以上の有機物層、および正極が順次に積層された逆方向構造(inverted type)の有機発光素子であり得る。例えば、本発明の一実施形態による有機発光素子の構造は、
図1および
図2に示している。
【0047】
図1には、基板1、正極2、有機物層3、負極4からなる有機発光素子の構造を示している。この構造において、上記化学式1で表される化合物は前記有機物層に含まれ得る。
【0048】
図2には、基板1、正極2、正孔注入層5、正孔輸送層6、電子抑制層7、発光層8、正孔抑制層9、電子輸送層10、電子注入層11および負極4からなる有機発光素子の構造を示している。この構造において、上記化学式1で表される化合物は、前記正孔注入層、正孔輸送層、電子抑制層、発光層、正孔抑制層、電子輸送層および電子注入層のうちの1層以上に含まれ得る。
【0049】
本発明に係る有機発光素子は、前記有機物層のうちの1層以上が上記化学式1で表される化合物を含むことを除けば、当技術分野で知られている材料および方法で製造され得る。また、前記有機発光素子が複数の有機物層を含む場合、前記有機物層は、同一の物質または異なる物質で形成され得る。
【0050】
例えば、本発明に係る有機発光素子は、基板上に、第1電極、有機物層、および第2電極を順次に積層させて製造することができる。この時、スパッタリング法(sputtering)や電子ビーム蒸発法(e-beam evaporation)などのPVD(physical Vapor Deposition)方法を用いて、基板上に金属または導電性を有する金属酸化物またはこれらの合金を蒸着させて正極を形成し、その上に正孔注入層、正孔輸送層、発光層、および電子輸送層を含む有機物層を形成した後、その上に負極として用いられる物質を蒸着させて製造することができる。この方法以外にも、基板上に、負極物質から有機物層、正極物質を順に蒸着させて有機発光素子を作ることができる。
【0051】
また、上記化学式1で表される化合物は、有機発光素子の製造時、真空蒸着法のみならず、溶液塗布法によって有機物層に形成され得る。ここで、溶液塗布法とは、スピンコーティング、ディップコーティング、ドクターブレーディング、インクジェットプリンティング、スクリーンプリンティング、スプレー法、ロールコーティングなどを意味するが、これらにのみ限定されるものではない。
【0052】
この方法以外にも、基板上に、負極物質から有機物層、正極物質を順に蒸着させて有機発光素子を製造することができる(WO2003/012890)。ただし、製造方法がこれに限定されるものではない。
【0053】
一例として、前記第1電極は正極であり、前記第2電極は負極であるか、または前記第1電極は負極であり、前記第2電極は正極である。
【0054】
前記正極物質としては、通常有機物層への正孔注入が円滑となるように仕事関数の大きい物質が好ましい。前記正極物質の具体的な例としては、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金などの金属またはこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)などの金属酸化物;ZnO:AlまたはSNO2:Sbなどの金属と酸化物との組み合わせ;ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ[3,4-(エチレン-1,2-ジオキシ)チオフェン](PEDOT)、ポリピロールおよびポリアニリンなどの導電性高分子などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0055】
前記負極物質としては、通常有機物層への電子注入が容易となるように仕事関数の小さい物質であることが好ましい。前記負極物質の具体的な例としては、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタニウム、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズおよび鉛などの金属またはこれらの合金;LiF/AlまたはLiO2/Alなどの多層構造物質などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0056】
前記正孔注入層は電極から正孔を注入する層であって、正孔注入物質としては、正孔を輸送する能力を有して正極からの正孔注入効果、発光層または発光材料に対して優れた正孔注入効果を有し、発光層で生成された励起子の電子注入層または電子注入材料への移動を防止し、また、薄膜形成能力の優れた化合物が好ましい。正孔注入物質のHOMO(highest occupied molecular orbital)が正極物質の仕事関数と周辺有機物層のHOMOとの間であることが好ましい。正孔注入物質の具体的な例としては、金属ポルフィリン(porphyrin)、オリゴチオフェン、アリールアミン系の有機物、ヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン系の有機物、キナクリドン(quinacridone)系の有機物、ペリレン(perylene)系の有機物、アントラキノンおよびポリアニリンとポリチオフェン系の導電性高分子などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0057】
前記正孔輸送層は、正孔注入層から正孔を受け取って発光層まで正孔を輸送する層であって、正孔輸送物質としては、正極や正孔注入層から正孔輸送を受けて発光層に移し得る物質で、正孔に対する移動性の大きい物質が好適である。具体的な例としては、アリールアミン系の有機物、導電性高分子、および共役部分と非共役部分がともにあるブロック共重合体などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0058】
前記発光物質としては、正孔輸送層と電子輸送層から正孔および電子の輸送をそれぞれ受けて結合させることにより可視光線領域の光を発し得る物質で、蛍光や燐光に対する量子効率の良い物質が好ましい。具体的な例としては、8-ヒドロキシ-キノリンアルミニウム錯体(Alq3);カルバゾール系化合物;二量体化スチリル(dimerized styryl)化合物;BAlq;10-ヒドロキシベンゾキノリン-金属化合物;ベンゾキサゾール、ベンズチアゾールおよびベンズイミダゾール系の化合物;ポリ(p-フェニレンビニレン)(PPV)系の高分子;スピロ(spiro)化合物;ポリフルオレン、ルブレンなどがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0059】
前記発光層は、ホスト材料およびドーパント材料を含むことができる。ホスト材料は、縮合芳香族環誘導体またはヘテロ環含有化合物などがある。具体的には、縮合芳香族環誘導体としては、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、ナフタレン誘導体、ペンタセン誘導体、フェナントレン化合物、フルオランテン化合物などがあり、ヘテロ環含有化合物としては、カルバゾール誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ラダー型フラン化合物、ピリミジン誘導体などがあるが、これらに限定されない。
【0060】
ドーパント材料としては、芳香族アミン誘導体、スチリルアミン化合物、ホウ素錯体、フルオランテン化合物、金属錯体などがある。具体的には、芳香族アミン誘導体としては、置換または非置換のアリールアミノ基を有する縮合芳香族環誘導体で、アリールアミノ基を有するピレン、アントラセン、クリセン、ペリフランテンなどがあり、スチリルアミン化合物としては、置換または非置換のアリールアミンに少なくとも1個のアリールビニル基が置換されている化合物で、アリール基、シリル基、アルキル基、シクロアルキル基、およびアリールアミノ基からなる群から1または2以上選択される置換基が置換または非置換される。具体的には、スチリルアミン、スチリルジアミン、スチリルトリアミン、スチリルテトラアミンなどがあるが、これらに限定されない。また、金属錯体としては、イリジウム錯体、白金錯体などがあるが、これらに限定されない。
【0061】
前記電子輸送層は、電子注入層から電子を受け取って発光層まで電子を輸送する層であって、電子輸送物質としては、負極から電子注入をよく受けて発光層に移し得る物質で、電子に対する移動性の大きい物質が好適である。具体的な例としては、8-ヒドロキシキノリンのAl錯体;Alq3を含む錯体;有機ラジカル化合物;ヒドロキシフラボン-金属錯体などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。電子輸送層は、従来技術により使用されているような、任意の所望するカソード物質と共に使用可能である。特に、適切なカソード物質の例は、低い仕事関数を有し、アルミニウム層またはシルバー層が後に続く通常の物質である。具体的には、セシウム、バリウム、カルシウム、イッテルビウム、およびサマリウムであり、各場合、アルミニウム層またはシルバー層が後に続く。
【0062】
前記電子注入層は電極から電子を注入する層であって、電子を輸送する能力を有し、負極からの電子注入効果、発光層または発光材料に対して優れた電子注入効果を有し、発光層で生成された励起子の正孔注入層への移動を防止し、また、薄膜形成能力の優れた化合物が好ましい。具体的には、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フルオレニリデンメタン、アントロンなどとそれらの誘導体、金属錯体化合物、および含窒素5員環誘導体などがあるが、これらに限定されない。
【0063】
前記金属錯体化合物としては、8-ヒドロキシキノリナトリチウム、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)亜鉛、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)銅、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)マンガン、トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム、トリス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム、トリス(8-ヒドロキシキノリナト)ガリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)亜鉛、ビス(2-メチル-8-キノリナト)クロロガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナト)(o-クレゾラート)ガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナト)(1-ナフトラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリナト)(2-ナフトラート)ガリウムなどがあるが、これらに限定されない。
【0064】
本発明に係る有機発光素子は、使用される材料によって、前面発光型、後面発光型、または両面発光型であり得る。
【0065】
また、上記化学式1で表される化合物は、有機発光素子以外にも、有機太陽電池または有機トランジスターに含まれ得る。
【0066】
上記化学式1で表される化合物およびこれを含む有機発光素子の製造を以下の実施例で具体的に説明する。しかし、下記の実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらによって限定されるものではない。
【0067】
[実施例]
実施例1:化合物1の製造
【化26】
窒素雰囲気で500ml丸底フラスコに、化合物A(7.50g、20.05mmol)、および化合物a-1(7.43g、21.06mmol)をテトラヒドロフラン(240ml)に完全に溶かした後、2M炭酸カリウム水溶液(120ml)を添加し、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.70g、0.60mmol)を入れた後、4時間加熱攪拌した。常温に温度を下げ、水層を除去し無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮させテトラヒドロフラン(180ml)で再結晶して、化合物1(8.76g、収率67%)を製造した。
MS:[M+H]
+=648
【0068】
実施例2:化合物2の製造
【化27】
窒素雰囲気で500ml丸底フラスコに、化合物A(6.50g、17.38mmol)、および化合物a-2(6.44g、18.25mmol)をテトラヒドロフラン(260ml)に完全に溶かした後、2M炭酸カリウム水溶液(130ml)を添加し、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.60g、0.52mmol)を入れた後、3時間加熱攪拌した。常温に温度を下げ、水層を除去し無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮させ、酢酸エチル(270ml)で再結晶して、化合物2(7.46g、収率66%)を製造した。
MS:[M+H]
+=648
【0069】
実施例3:化合物3の製造
【化28】
窒素雰囲気で500ml丸底フラスコに、化合物A(8.50g、22.73mmol)、および化合物a-3(8.42g、23.86mmol)をテトラヒドロフラン(240ml)に完全に溶かした後、2M炭酸カリウム水溶液(120ml)を添加し、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.79g、0.68mmol)を入れた後、2時間加熱攪拌した。常温に温度を下げ、水層を除去し無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮させ、酢酸エチル(210ml)で再結晶して、化合物3(7.89g、収率54%)を製造した。
MS:[M+H]
+=647
【0070】
実施例4:化合物4の製造
【化29】
窒素雰囲気で500ml丸底フラスコに、化合物A(7.50g、20.05mmol)、および化合物a-4(9.03g、21.06mmol)をテトラヒドロフラン(220ml)に完全に溶かした後、2M炭酸カリウム水溶液(110ml)を添加し、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.70g、0.60mmol)を入れた後、5時間加熱攪拌した。常温に温度を下げ、水層を除去し無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮させ、酢酸エチル(320ml)で再結晶して、化合物4(9.11g、収率63%)を製造した。
MS:[M+H]
+=724
【0071】
実施例5:化合物5の製造
【化30】
窒素雰囲気で500ml丸底フラスコに、化合物A-1(15.58g、33.43mmol)、および化合物a-5(8.50g、31.84mmol)をテトラヒドロフラン(240ml)に完全に溶かした後、2M炭酸カリウム水溶液(120ml)を添加し、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(1.10g、0.96mmol)を入れた後、4時間加熱攪拌した。常温に温度を下げ、水層を除去し無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮させ、酢酸エチル(280ml)で再結晶して、化合物5(11.24g、収率62%)を製造した。
MS:[M+H]
+=572
【0072】
実施例6:化合物6の製造
【化31】
窒素雰囲気で500ml丸底フラスコに、化合物A-1(12.13g、26.02mmol)、および化合物a-6(8.50g、24.78mmol)をテトラヒドロフラン(260ml)に完全に溶かした後、2M炭酸カリウム水溶液(130ml)を添加し、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.86g、0.74mmol)を入れた後、5時間加熱攪拌した。常温に温度を下げ、水層を除去し無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮させ、酢酸エチル(270ml)で再結晶して、化合物6(10.67g、収率66%)を製造した。
MS:[M+H]
+=648
【0073】
実施例7:化合物7の製造
【化32】
窒素雰囲気で500ml丸底フラスコに、化合物A-1(10.28g、22.06mmol)、および化合物a-7(7.50g、21.01mmol)をテトラヒドロフラン(280ml)に完全に溶かした後、2M炭酸カリウム水溶液(140ml)を添加し、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.73g、0.63mmol)を入れた後、5時間加熱攪拌した。常温に温度を下げ、水層を除去し無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮させ、酢酸エチル(310ml)で再結晶して、化合物7(8.84g、収率64%)を製造した。
MS:[M+H]
+=662
【0074】
実施例8:化合物8の製造
【化33】
窒素雰囲気で500ml丸底フラスコに、化合物B(8.50g、23.81mmol)、および化合物a-1(11.65g、25.01mmol)をテトラヒドロフラン(280ml)に完全に溶かした後、2M炭酸カリウム水溶液(140ml)を添加し、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.83g、0.71mmol)を入れた後、4時間加熱攪拌した。常温に温度を下げ、水層を除去し無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮させ、酢酸エチル(280ml)で再結晶して、化合物8(10.22g、収率65%)を製造した。
MS:[M+H]
+=648
【0075】
実施例9:化合物9の製造
【化34】
窒素雰囲気で500ml丸底フラスコに、化合物B-1(10.70g、22.96mmol)、および化合物a-6(7.50g、21.87mmol)をテトラヒドロフラン(180ml)に完全に溶かした後、2M炭酸カリウム水溶液(90ml)を添加し、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.76g、0.66mmol)を入れた後、4時間加熱攪拌した。常温に温度を下げ、水層を除去し無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮させ、酢酸エチル(280ml)で再結晶して、化合物9(8.71g、収率60%)を製造した。
MS:[M+H]
+=650
【0076】
実施例10:化合物10の製造
【化35】
窒素雰囲気で500ml丸底フラスコに、化合物C(9.50g、22.73mmol)、および化合物a-8(9.62g、23.86mmol)をテトラヒドロフラン(260ml)に完全に溶かした後、2M炭酸カリウム水溶液(130ml)を添加し、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.79g、0.68mmol)を入れた後、4時間加熱攪拌した。常温に温度を下げ、水層を除去し無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮させ、酢酸エチル(240ml)で再結晶して、化合物10(9.82g、収率62%)を製造した。
MS:[M+H]
+=698
【0077】
実施例11:化合物11の製造
【化36】
窒素雰囲気で500ml丸底フラスコに、化合物C-1(8.51g、21.11mmol)、および化合物a-9(4.63g、9.91mmol)をテトラヒドロフラン(260ml)に完全に溶かした後、2M炭酸カリウム水溶液(130ml)を添加し、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.70g、0.60mmol)を入れた後、5時間加熱攪拌した。常温に温度を下げ、水層を除去し無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮させ、酢酸エチル(310ml)で再結晶して、化合物11(7.85g、収率58%)を製造した。
MS:[M+H]
+=678
【0078】
[実験例]
実験例1
ITO(indium tin oxide)が1,000Åの厚さに薄膜コーティングされたガラス基板を洗剤を溶かした蒸留水に入れて超音波洗浄した。この時、洗剤としてはフィッシャー社(Fischer Co.)製品を使用し、蒸留水としてはミリポア社(Millipore Co.)製品のフィルタ(Filter)で2次ろ過した蒸留水を使用した。ITOを30分間洗浄した後、蒸留水で2回繰り返し超音波洗浄を10分間進行した。蒸留水洗浄が終わった後、イソプロピルアルコール、アセトン、メタノールの溶剤で超音波洗浄をし乾燥させた後、プラズマ洗浄機に輸送させた。また、酸素プラズマを用いて前記基板を5分間洗浄した後、真空蒸着機に基板を輸送させた。
【0079】
こうして準備されたITO透明電極上に、下記化合物HI1および下記化合物HI2を98:2(モル比)の比となるように100Åの厚さに熱真空蒸着して、正孔注入層を形成した。前記正孔注入層上に、下記のHT1化合物を1150Åの厚さに真空蒸着して、正孔輸送層を形成した。前記正孔輸送層上に下記化合物EB1を50Åの厚さに真空蒸着して、電子抑制層を形成した。前記電子抑制層上に、下記化合物BHおよび下記化合物BDを25:1の重量比で200Åの厚さに真空蒸着して、発光層を形成した。前記発光層上に、前記実施例1で製造した化合物1を50Åの厚さに真空蒸着して、正孔抑制層を形成した。前記正孔抑制層上に、下記化合物ET1と下記化合物LiQを1:1の重量比で310Åの厚さに真空蒸着して、電子注入および輸送層を形成した。前記電子注入および輸送層上に、順次に、12Åの厚さにフッ化リチウム(LiF)と1,000Åの厚さにアルミニウムを蒸着して、負極を形成した。
【化37】
【0080】
前記過程で、有機物の蒸着速度は0.4~0.7Å/secを維持し、負極のフッ化リチウムは0.3Å/sec、アルミニウムは2Å/secの蒸着速度を維持し、蒸着時の真空度は2x10-7~5x10-6torrを維持して、有機発光素子を製作した。
【0081】
実験例2~11
化合物1の代わりに下記表1に記載された化合物を使用したことを除いては、前記実験例1と同様の方法で、有機発光素子を製造した。
【0082】
比較実験例1~3
化合物1の代わりに下記表1に記載された化合物を使用したことを除いては、前記実験例1と同様の方法で、有機発光素子を製造した。下記表1において、化合物HB1、HB2、およびHB3はそれぞれ下記の通りである。
【化38】
【0083】
前記実験例および比較実験例で製造した有機発光素子に電流を印加して電圧、効率、色座標および寿命を測定し、その結果を下記表1に示す。T95は、輝度が初期輝度(1600nit)から95%に減少するのにかかる時間を意味する。
【0084】
【0085】
上記表1に示すように、本発明の化合物を電子抑制層に使用した有機発光素子は、有機発光素子の効率、駆動電圧および安定性の面において優れた特性を示した。特に、9,9'-spirobi[fluorine]および9,9-diphenyl-9H-fluoreneコアにトリアジン置換基が連結された化合物HB2およびHB3を使用して製造された比較実験例2および3の有機発光素子に比べて、本発明の化合物を使用した実験例1~11の有機発光素子は低電圧、高効率および長寿命特性を示した。また、本発明のコアにアミン系置換基が置換された構造の化合物HB-1を使用して製造された比較実験例1の有機発光素子ではこのような特性は示さなかった。
【符号の説明】
【0086】
1:基板
2:正極
3:有機物層
4:負極
5:正孔注入層
6:正孔輸送層
7:電子抑制層
8:発光層
9:正孔抑制層
10:電子輸送層
11:電子注入層