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特許7081770芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムとその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムとその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20220531BHJP
   C08G 73/14 20060101ALI20220531BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
C08G73/14
C08L79/08 C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020501819
(86)(22)【出願日】2018-12-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-17
(86)【国際出願番号】 KR2018015472
(87)【国際公開番号】W WO2019135500
(87)【国際公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-01-17
(31)【優先権主張番号】10-2018-0000881
(32)【優先日】2018-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0153913
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リュ、ビ オ
(72)【発明者】
【氏名】パク、スーンヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヨンソク
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、イル ファン
(72)【発明者】
【氏名】テ、ヨン ジ
(72)【発明者】
【氏名】ペク、クァンヨル
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-119133(JP,A)
【文献】国際公開第2017/010566(WO,A1)
【文献】特開2016-125063(JP,A)
【文献】特開2010-202714(JP,A)
【文献】特開2008-169363(JP,A)
【文献】特表2017-503887(JP,A)
【文献】特開2012-241196(JP,A)
【文献】特開平07-165915(JP,A)
【文献】特開昭59-204518(JP,A)
【文献】特許第6578581(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/14
C08L 79/08
C08J 5/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体100重量部と、ベンゾトリアゾール系又はベンゾフェノン系芳香族化合物0.001~10重量部と、を含み、
550nmの波長に対して厚さ方向のリターデーション(Rth)が3,000nm以上であり、下記一般式1による水分吸収率が3.6%以下である、
ィルム。
[一般式1]
水分吸収率(%)=(W1-W2)*100/W2
(前記一般式1で、W1は前記ィルムを超純水に24時間含浸して測定した重量であり、
W2は前記含浸以降、前記ィルムを150℃で30分間乾燥して測定した重量である。)
【請求項2】
前記ィルムは、550nmの波長に対して厚さ方向のリターデーション(Rth)が3,000nmから4,500nmであり、
前記一般式1による水分吸収率が2.0から3.6%である、請求項1に記載のィルム。
【請求項3】
ASTM E424に準拠して25から55μmの厚さを有する試片に対して測定したUV-cut傾き(dT/dλ)が透過度10から80%範囲で2.80以上である、請求項1または2に記載のィルム。
【請求項4】
前記ィルムは、芳香族ジアミンモノマー、ジアンハイドライドモノマーおよび芳香族ジカルボニルモノマー間の芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体を含み、
前記ジアンハイドライドモノマーは、芳香族ジアンハイドライドモノマー又はシクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物である、
請求項1から3のいずれか一項に記載のィルム。
【請求項5】
前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体のうち、
前記芳香族ジカルボニルモノマーに由来する繰り返し単位は、前記ジアンハイドライドモノマーおよび前記芳香族ジカルボニルモノマーに由来する繰り返し単位の総モルに対して51モル%以上含まれ、
前記芳香族ジカルボニルモノマーに由来する繰り返し単位は、4,4'-ビフェニルジカルボニル繰り返し単位10から60モル%;イソフタロイル繰り返し単位10から50モル%;およびテレフタロイル繰り返し単位20から70モル%;を含む、
請求項4に記載のィルム。
【請求項6】
前記芳香族ジアミンモノマーは、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニルジアミン(2,2'-bis(trifluoromethyl)-4,4'-biphenyldiamine)を含み、
前記芳香族ジアンハイドライドモノマーは、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3',4,4'-biphenyltetracarboxylic acid dianhydride)を含む、請求項4または5に記載のィルム。
【請求項7】
前記ベンゾトリアゾール系又はベンゾフェノン系芳香族化合物は、
2-(2'-ヒドロキシ-5'-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール[2-(2'-Hydroxy-5'-tert-octylphenyl)benzotriazole]およびオクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート[Octadecyl-3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)-propionate]からなる群より選択された1種以上の芳香族化合物含む、請求項4から6のいずれか一項に記載のィルム。
【請求項8】
前記ィルムは、未延伸状態で550nmの波長に対して3,000nm以上の厚さ方向のリターデーション(Rth)を有する、
請求項1から7のいずれか一項に記載のィルム。
【請求項9】
前記ィルムは、1μmから100μmの厚さを有し、
2%以下のヘイズおよび98%以上の可視光線透光度を有する、
請求項1から8のいずれか一項に記載のィルム。
【請求項10】
芳香族ジアミンモノマー、ジアンハイドライドモノマーおよび芳香族ジカルボニルモノマーを反応させて芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体を形成する段階;および
前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体を炭素数3以上の脂肪族グループを含むアミド溶媒で溶解して形成されたコーティング液を基材にコーティングする段階を含み、
前記ジアンハイドライドモノマーは、芳香族ジアンハイドライドモノマー又はシクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物である、
請求項1から9のいずれか一項に記載のィルムの製造方法。
【請求項11】
前記炭素数3以上の脂肪族グループを含むアミド溶媒は、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド(3-methoxy-N,N-dimethyl propionamide)またはN,N-ジメチルプロピオンアミド(N,N-Dimethylpropionamide)である、請求項10に記載のィルムの製造方法。
【請求項12】
前記芳香族ジカルボニルモノマーは、前記ジアンハイドライドモノマーおよび前記芳香族ジカルボニルモノマーの総モルに対して51モル%以上含まれ、
前記芳香族ジカルボニルモノマーは、4,4'-ビフェニルジカルボニルクロライド(4,4'-biphenyldicarbonyl chloride)10から60モル%;イソフタロイルクロライド(isophthaloyl chloride)10から50モル%;およびテレフタロイルクロライド(terephthaloyl chloride)20から70モル%;を含む、
請求項10または11に記載のィルムの製造方法。
【請求項13】
前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体を炭素数3以上の脂肪族グループを含むアミド溶媒で溶解して形成されたコーティング液は、
2-(2'-ヒドロキシ-5'-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール[2-(2'-Hydroxy-5'-tert-octylphenyl)benzotriazole]およびオクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート[Octadecyl-3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)-propionate]からなる群より選択された1種以上の芳香族化合物をさらに含む、
請求項10から12のいずれか一項に記載のィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリイミド樹脂は、大部分非結晶性構造を有する高分子であって、剛直な鎖構造により優れた耐熱性、耐化学性、電気的特性、および寸法安定性を示す。このようなポリイミド樹脂は、電気/電子材料として広く使用されている。しかし、ポリイミド樹脂は、イミド鎖内に存在するπ電子のCTC(charge transfer complex)形成により濃い褐色を帯びる限界があるため、使用上多くの制限が伴う。
【0003】
前記制限を解消し、無色透明なポリイミド樹脂を得るために、トリフルオロメチル(-CF)グループのような強い電子受容体グループを導入してπ電子の移動を制限する方法;主鎖にスルホン(-SO)グループ、エーテル(-O-)グループなどを導入して曲げた構造を作って前記CTCの形成を減らす方法;または脂肪族環化合物を導入してπ電子の共鳴構造形成を阻害する方法などが提案されている。
【0004】
しかし、前記提案によるポリイミド樹脂は、曲げた構造または脂肪族環化合物により十分な耐熱性を示し難く、これを使用して製造されたフィルムは劣悪な機械的物性を示す限界が依然として存在する。
【0005】
そこで、最近はポリイミドの耐スクラッチ性を改善するためにポリアミド単位構造を導入した芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体が開発されている。しかし、ポリイミドにポリアミド単位構造を導入する場合、耐スクラッチ性は向上するが、UV遮蔽機能の確保には限界が存在してきた。
【0006】
したがって、耐スクラッチ性および機械的物性を向上させると同時に、UV遮蔽機能を改善することができる芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体の開発が依然として要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、優れた耐スクラッチ性および機械的物性を示しながら、UV遮蔽機能が改善された芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムを提供することにある。
【0008】
また、本発明の目的は、前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書では、550nmの波長に対して厚さ方向のリターデーション(Rth)が3,000nm以上であり、下記一般式1による水分吸収率が3.6%以下である、芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムが提供される。
【0010】
[一般式1]
水分吸収率(%)=(W1-W2)*100/W2
【0011】
前記一般式1で、W1は前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムを超純水に24時間含浸して測定した重量であり、W2は前記含浸以降、前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムを150℃で30分間乾燥して測定した重量である。
【0012】
また、本明細書では、芳香族ジアミンモノマー、芳香族ジアンハイドライドモノマーおよび芳香族ジカルボニルモノマーを反応させて芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体を形成する段階;および前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体を炭素数3以上の脂肪族グループを含むアミド溶媒で溶解して形成されたコーティング液を基材にコーティングする段階を含む、前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムの製造方法が提供される。
【0013】
以下、発明の具体的な実施形態による芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムおよびその製造方法についてより具体的に説明する。
【0014】
発明の一実施形態によれば、550nmの波長に対して厚さ方向のリターデーション(Rth)が3,000nm以上であり、前記一般式1による水分吸収率が3.6%以下である、芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムが提供され得る。
【0015】
本発明者らは、芳香族単量体から形成される芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体を利用し、後述する製造方法を適用して製造される高分子フィルムが、未延伸状態で550nmの波長に対して厚さ方向のリターデーション(Rth)が3,000nm以上であり、下記一般式1による水分吸収率が3.6%以下であるという物性を満たすことができるという点を実験を通じて確認して発明を完成した。
【0016】
前記実施形態の芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムは、未延伸状態で550nmの波長に対して厚さ方向のリターデーション(Rth)が3,000nm以上、または3,000nmから4,500nmであってもよいが、これによって黄色度指数とヘイズ値が低くなり、フィルム内部の高分子の配向により機械的強度が向上することができ、また水分吸水性が低くなり得る。
【0017】
また、前記実施形態の芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムは、前記一般式1による水分吸収率が3.6%以下、または2.0から3.6%であってもよいが、前述した厚さ方向のリターデーション(Rth)値と共に前記範囲の水分吸収率を満たすことによって、黄色度指数とヘイズ値が低くなり、フィルム内部の高分子の配向により機械的強度が向上することができ、また水分吸水性が低くなり得る。
【0018】
前記厚さ方向のリターデーション(Rth)は、通常知られた測定方法および測定装置を通じて確認することができる。例えば、厚さ方向のリターデーション(Rth)の測定装置としては、AXOMETRICS社製の商品名「アクソスキャン(AxoScan)、プリズムカプラー(Prism Coupler)などが挙げられる。そして、厚さ方向のリターデーション(Rth)の測定条件としては、前記ポリアミドイミド樹脂フィルムに対して、屈折率(589nm)値を前記測定装置にインプットした後、温度:25℃、湿度:40%の条件下、波長590nmの光を用いて、ポリアミドイミド樹脂フィルムの厚さ方向のリターデーションを測定し、求められた厚さ方向のリターデーション測定値(測定装置の自動測定(自動計算)による測定値)に基づき、フィルムの厚さ10μm当たりリターデーション値に換算することによって求めることができる。また、測定試料のポリイミドフィルムのサイズは、測定器のステージの測光部(直径:約1cm)よりも大きければよいため、特に制限されないが、縦:76mm、横52mm、厚さ13μmの大きさとすることができる。
【0019】
また、厚さ方向のリターデーション(Rth)の測定に利用する「前記ポリアミドイミド樹脂フィルムの屈折率(589nm)」の値は、リターデーションの測定対象になるフィルムを形成するポリアミドイミド樹脂フィルムと同一の種類のポリアミドイミド樹脂フィルムを含む未延伸フィルムを形成した後、このような未延伸フィルムを測定試料として用い(また、測定対象になるフィルムが未延伸フィルムである場合には、そのフィルムをそのまま測定試料として用いることができる)、測定装置として屈折率測定装置(株式会社アタゴ社製の商品名「NAR-1T SOLID」)を用い、589nmの光源を用い、23℃の温度条件で、測定試料の面内方向(厚さ方向とは垂直な方向)の589nmの光に対する屈折率を測定して求めることができる。
【0020】
また、測定試料が未延伸である場合、フィルムの面内方向の屈折率は、面内の如何なる方向においても一定になり、このような屈折率の測定によって、そのポリアミドイミド樹脂フィルムの固有の屈折率を測定することができる(また、測定試料が未延伸であるため、面内の遅延軸方向の屈折率をNxとし、遅延軸方向と垂直な面内方向の屈折率をNyとした場合、Nx=Nyになる)。
【0021】
このように、未延伸フィルムを利用してポリアミドイミド樹脂フィルムの固有の屈折率(589nm)を測定し、得られた測定値を前述した厚さ方向のリターデーション(Rth)の測定に利用する。ここで、測定試料のポリアミドイミド樹脂フィルムのサイズは、前記屈折率測定装置に利用可能な大きさであればよく、特に制限されず、一辺が1cmである正四角形(縦横1cm)で厚さ13μmの大きさとしてもよい。
【0022】
通常剛直な(rigid)内部構造を有する高分子樹脂フィルムは、相対的に高いヘイズまたは黄色度を有するか、または低い透光度を示すことができる。
【0023】
これに反し、前記実施形態の芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムは、前述した厚さ方向のリターデーション(Rth)を示して結晶性のあるリジッドな(rigid)内部構造を有しながらも、これと共に3.6%以下の水分吸収率を有して水分浸透などが防止され、これによって低いヘイズ値と高い透光度を有することができる。このような理由から、前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムは、より低い黄色度指数とヘイズ値を有しながらも、より高い機械的強度を有することができる。
【0024】
より具体的に、前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムは、1μmから100μmの厚さを有することができ、このような厚さ範囲で2%以下のヘイズおよび98%以上の可視光線透光度を有することができる。
【0025】
一方、前記実施形態の芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムは、所定の芳香族単量体を利用して共重合体を形成した以降に、後述する製造方法のように形成された共重合体を炭素数3以上の脂肪族グループを含むアミド溶媒で溶解し、これをコーティングすることによって形成されてもよく、このような単量体の選択および特定の製造方法により前述した特徴を有することができる。
【0026】
具体的に、前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムは、芳香族ジアミンモノマー、芳香族ジアンハイドライドモノマーおよび芳香族ジカルボニルモノマー間の芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体を含むことができ、このような芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体は、芳香族ジアミンモノマー、芳香族ジアンハイドライドモノマーおよび芳香族ジカルボニルモノマーが共重合されたポリアミック酸のイミド化物であってもよい。
【0027】
より詳細には、前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体のうち、前記芳香族ジカルボニルモノマーに由来する繰り返し単位は、前記芳香族ジアンハイドライドモノマーおよび前記芳香族ジカルボニルモノマーに由来する繰り返し単位の総モルに対して51モル%以上含まれてもよい。そして、前記芳香族ジカルボニルモノマーに由来する繰り返し単位は、4,4'-ビフェニルジカルボニル繰り返し単位10から60モル%;イソフタロイル繰り返し単位10から50モル%;およびテレフタロイル繰り返し単位20から70モル%;を含むことができる。
【0028】
前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体の具体的な組成によって、優れた耐スクラッチ性および高い機械的物性を示しながら、UV遮蔽機能に優れた高分子フィルムが提供可能であり、より具体的に前記特定組成の前記芳香族ジカルボニルモノマーを含むことによって前記実施形態の芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムがより向上した機械的物性と共に高いUV-cut傾きを有することができ、無色の透明な光学特性を有することができる。
【0029】
前記実施形態の芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムに含まれる前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体は、ブロック共重合体またはランダム共重合体であってもよい。
【0030】
例えば、前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体は、前記芳香族ジアミンモノマーと前記芳香族ジアンハイドライドモノマーの共重合に由来する第1単位構造;および前記芳香族ジアミンモノマーと前記芳香族ジカルボニルモノマーの共重合に由来する第2単位構造を含むことができる。
【0031】
そして、前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体は、前記芳香族ジアミンモノマー、前記芳香族ジアンハイドライドモノマーおよび前記芳香族ジカルボニルモノマーがそれぞれアミド結合を形成してランダムに共重合された単位構造を含むことができる。このようなポリアミック酸は、イミド化によりイミド結合とアミド結合を同時に有する芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体を形成する。
【0032】
前述のように、前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体のうち、前記芳香族ジカルボニルモノマーに由来する繰り返し単位は、前記芳香族ジアンハイドライドモノマーおよび前記芳香族ジカルボニルモノマーに由来する繰り返し単位の総モルに対して51モル%以上含まれてもよい。前記芳香族ジカルボニルモノマーに由来する繰り返し単位は、前記芳香族ジアンハイドライドモノマーおよび前記芳香族ジカルボニルモノマーに由来する繰り返し単位の総モルに対して51モル%未満含まれる場合、前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルム内部で相対的に水素結合力が減少して表面硬度、弾性係数、引張強度などの機械的物性および黄色度指数、透過度などの光学物性が低下することがある。
【0033】
前記芳香族ジアンハイドライドモノマーおよび前記芳香族ジカルボニルモノマーに由来する繰り返し単位の総モルに対する前記芳香族ジカルボニルモノマーに由来する繰り返し単位の含有量の最大値は、別途に限定されるのではないが、例えば90モル%以下、あるいは85モル%以下、あるいは80モル%以下であってもよい。
【0034】
前記芳香族ジカルボニルモノマーは、4,4'-ビフェニルジカルボニルクロライド(4,4'-biphenyldicarbonyl chloride、BPC)、イソフタロイルクロライド(isophthaloyl chloride、IPC)およびテレフタロイルクロライド(terephthaloyl chloride、TPC)からなる。
【0035】
前記イソフタロイルクロライド(IPC)およびテレフタロイルクロライド(TPC)は、中心のフェニレングループに対してメタまたはパラの位置に二つのカルボニルグループが結合された化合物である。
【0036】
このようなイソフタロイルクロライド(IPC)およびテレフタロイルクロライド(TPC)を芳香族ジカルボニルモノマーとして使用する場合、共重合体内のメタ結合に起因した加工性の向上とパラ結合に起因した機械的物性の向上に有利な効果を奏することができるが、UV-cut性能の確保には限界があった。
【0037】
そこで、芳香族ジカルボニルモノマーとして中心のビフェニレングループにパラ位置で二つのカルボニル基が結合された化合物である前記4,4'-ビフェニルジカルボニルクロライド(BPC)を追加的に使用する場合、前記4,4'-ビフェニルジカルボニルクロライド(BPC)がイソフタロイルクロライド(IPC)およびテレフタロイルクロライド(TPC)よりも高い結晶性を有することによって、芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体の硬度をより向上させ、同時にUV-cut傾きを増加させることができる。
【0038】
また、前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体のうち、前記芳香族ジカルボニルモノマーに由来する繰り返し単位は、4,4'-ビフェニルジカルボニル繰り返し単位10から60モル%;イソフタロイル繰り返し単位10から50モル%;およびテレフタロイル繰り返し単位20から70モル%;を含むことができる。前記芳香族ジカルボニルモノマーをなす4,4'-ビフェニルジカルボニルクロライド(BPC)、イソフタロイルクロライド(IPC)およびテレフタロイルクロライド(TPC)、前記モル比の範囲で芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体の透明性と黄色度を維持しながらも、硬度および機械的物性を向上させ、紫外線遮蔽機能を改善することができる。
【0039】
特に、前記4,4'-ビフェニルジカルボニルクロライド(BPC)が前記芳香族ジカルボニルモノマーの総モルに対して10モル%未満で含まれる場合、耐スクラッチング性および機械的物性の向上効果が微々であり、60モル%超過で含まれる場合、コーティングおよび硬化後のフィルムのヘイズが高いという問題があり得る。したがって、前記4,4'-ビフェニルジカルボニルクロライド(BPC)は、前記芳香族ジカルボニルモノマーの総モルに対して10モル%以上、12モル%以上、または14モル%以上;そして、60モル%以下、または55モル%以下含まれてもよい。
【0040】
また、前記イソフタロイルクロライド(IPC)は、前記芳香族ジカルボニルモノマーの総モルに対して10モル%以上、または14モル%以上;そして、50モル%以下含まれてもよい。
【0041】
また、前記テレフタロイルクロライド(TPC)は、前記芳香族ジカルボニルモノマーの総モルに対して20モル%以上、35モル%以上;そして、60モル%以下、または55モル%以下含まれてもよい。
【0042】
前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体において、(前記芳香族ジアミンモノマー):(前記芳香族ジアンハイドライドモノマーおよび前記芳香族ジカルボニルモノマー)のモル比が1:0.95から1:1.05であってもよい。具体的に、前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体において、(前記芳香族ジアミンモノマー):(前記芳香族ジアンハイドライドモノマーおよび前記芳香族ジカルボニルモノマー)のモル比は1:1であってもよい。
【0043】
前述のように、一実施形態による芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体において、前記芳香族ジカルボニルモノマーの組成が前述した2つの条件を同時に充足してこそ優れた硬度および機械的物性、優れた耐スクラッチ性(高い等級の鉛筆硬度)および優れたUV遮蔽機能を示すことができる。
【0044】
前記芳香族ジアミンモノマーは、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニルジアミン(2,2'-bis(trifluoromethyl)-4,4'-biphenyldiamine、TFDB)、シクロヘキサンジアミン(1,3-cyclohexanediamine、13CHD)、またはm-メチレンジアミン(meta-methylenediamine、mMDA)であってもよい。このうち、前記芳香族ジアミンモノマーとして2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニルジアミン(TFDB)を使用することが硬度向上および低い黄色度指数の維持の側面から好ましい。
【0045】
そして、前記芳香族ジアンハイドライドモノマーは、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3',4,4'-biphenyltetracarboxylic acid dianhydride、BPDA)、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(cyclobutane-1,2,3,4-tetracarboxylic dianhydride、CBDA)、または2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンハイドライド(2,2'-bis(3,4-dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6FDA)であってもよい。このうち、前記芳香族ジアンハイドライドモノマーとして3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3',4,4'-biphenyltetracarboxylic acid dianhydride)またはシクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(Cyclobutane-1,2,3,4-tetracarboxylic dianhydride)を使用することが硬度、UV遮蔽性、UV耐喉性および化学的イミド化加工性向上の側面から好ましい。
【0046】
一方、前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムは、前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体を含む高分子基材内に分散される。
【0047】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾエート系化合物、シアノアクリレート系化合物、サリチル酸エステル系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、無機系化合物などを挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0048】
ここでベンゾトリアゾール系化合物としては、2-(2'-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)-5-カルボン酸ブチルエステルベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)-5,6-ジクロロベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)-5-エチルスルホンベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-アミノフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジメチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジメチルフェニル)-5-メトキシベンゾトリアゾル、2-(2'-メチル-4'-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ステアリルオキシ-3',5'-ジメチルフェニル)-5-メチルベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5-カルボン酸フェニル)ベンゾトリアゾールエチルエステル、2-(2'-ヒドロキシ-3,5'-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3'-メチル-5'-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3'-t-ブチル-5'-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-シクロヘキシルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-4',5'-ジメチルフェニル)-5-カルボン酸ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-カルボン酸ブチルエステルベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-4',5'-ジクロロフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジメチルフェニル)-5-エチルスルホベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-4'-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メトキシフェニル)-5-メチルベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)-5-カルボン酸エステルベンゾトリアゾール、2-(2'-アセトキシメチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどを例示することができる。
【0049】
ベンゾフェノン系化合物としては、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2'-カルボキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンゾイルオキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホンベンゾフェノン、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-5-クロロベンゾフェノン、ビス-(2-メトキシ-4-ヒドロキシ-5-ベンゾイルフェニル)メタンなどを例示することができる。
【0050】
ベンゾエート系化合物としては、フェニルサリチレート、4-t-ブチルフェニルサリチレート、2,5-t-ブチル-4-ヒドロキシ安息香酸n-ヘキサデシルエステル、2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシベンゾエートなどを例示することができる。
【0051】
またシアノアクリレート系化合物としては、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレートを例示することができる。サリチル酸エステル系化合物としては、フェニルサリチレート、4-t-ブチルフェニルサリチレートを例示することができる。
【0052】
オキシベンゾフェノン系化合物としては、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノンを例示することができる。
【0053】
トリアジン系化合物としては、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノールを例示することができる。
【0054】
無機系化合物としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄、硫酸バリウムなどを例示することができる。
【0055】
前記具体的な例のうち、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系のうちの一つを利用することが好ましく、具体的には2-(2'-ヒドロキシ-5'-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール[2-(2'-Hydroxy-5'-tert-octylphenyl)benzotriazole]およびオクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート[Octadecyl-3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)-propionate]からなる群より選択された1種以上の芳香族化合物をさらに含むことができる。
【0056】
このような芳香族化合物は、前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムの製造過程で添加されてもよく、これによって前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムの黄色度指数およびヘイズが低くなり、また機械的物性が改善されながら水分吸湿特性も改善され得る。
【0057】
前記2-(2'-ヒドロキシ-5'-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール[2-(2'-Hydroxy-5'-tert-octylphenyl)benzotriazole]およびオクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート[Octadecyl-3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)-propionate]からなる群より選択された1種以上の芳香族化合物は、前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体を含む高分子基材100重量部に対して0.001から10重量部で含まれてもよい。
【0058】
前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体は、10,000から1,000,000g/mol、あるいは50,000から1,000,000g/mol、あるいは50,000から500,000g/mol、あるいは50,000から300,000g/molの重量平均分子量を有することができる。
【0059】
具体的に、前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体は、ASTM D3363に準拠して25から55μmの厚さを有する試片に対して測定した鉛筆硬度(Pencil Hardness)が2H等級以上であってもよい。
【0060】
また、前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体は、ASTM D638に準拠して25から55μmの厚さを有する試片に対して測定した引張強度が180MPa以上であってもよい。好ましくは、前記引張強度は190MPa以上、200MPa以上、または220MPa以上であってもよい。前記引張強度が高いほど機械的物性に優れるため、その上限に制限はないが、一例として300MPa以下、280MPa以下、または270MPa以下であってもよい。
【0061】
また、前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体は、ASTM D638に準拠して25から55μmの厚さを有する試片に対して測定した引張伸び率が18%以上であってもよい。好ましくは、前記引張伸び率は、20%以上、22%以上、または25%以上であってもよい。前記引張伸び率が高いほど機械的物性に優れるため、その上限に制限はないが、一例として35%以下、33%以下、または30%以下であってもよい。
【0062】
また、前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体は、ASTM E424に準拠して25から55μmの厚さを有する試片に対して測定したUV-cut傾き(dT/dλ)は、透過度10から80%範囲で2.80以上であってもよい。また、この時、UV-cut off波長(透過度1%未満である時の波長)は353nmから355nmであってもよい。
【0063】
一方、発明の他の実施形態によれば、芳香族ジアミンモノマー、芳香族ジアンハイドライドモノマーおよび芳香族ジカルボニルモノマーを反応させて芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体を形成する段階;および前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体を炭素数3以上の脂肪族グループを含むアミド溶媒で溶解して形成されたコーティング液を基材にコーティングする段階を含む、前述した実施形態の芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムの製造方法が提供され得る。
【0064】
芳香族ジアミンモノマー、芳香族ジアンハイドライドモノマーおよび芳香族ジカルボニルモノマーを反応させて芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体を形成した以降に、炭素数3以上の脂肪族グループを含むアミド溶媒で溶解し、これをコーティングすることによって前述した特性を有する芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムが提供され得る。
【0065】
前記芳香族ジアミンモノマー、芳香族ジアンハイドライドモノマーおよび芳香族ジカルボニルモノマーに関する具体的な内容は前述したとおりである。
【0066】
前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体を形成する重合条件は、大きく限定されるのではなく、例えば前記芳香族ジアミンモノマー、芳香族ジアンハイドライドモノマーおよび芳香族ジカルボニルモノマーを利用してポリアミック酸を形成し、これをイミド化して前記共重合体を形成することができる。前記ポリアミック酸の形成のための重合は、不活性雰囲気下の0から100℃で溶液重合で行われてもよい。前記ポリアミック酸の形成のための溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、N-メチル-2-ピロリドン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、γ-ブチロラクトンなどが用いられてもよい。前記ポリアミック酸の形成後のイミド化は、熱的にまたは化学的に行われてもよい。例えば、化学的イミド化には無水酢酸(acetic anhydride)、ピリジン(pyridine)のような化合物が用いられてもよい。
【0067】
一方、前述のように、前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体を炭素数3以上の脂肪族グループを含むアミド溶媒で溶解して形成されたコーティング液を基材にコーティングして製造される芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムは、未延伸状態で550nmの波長に対して厚さ方向のリターデーション(Rth)が3,000nm以上であり、前記一般式1による水分吸収率が3.6%以下であってもよい。また、前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムは、1μmから100μmの厚さで、2%以下のヘイズおよび98%以上の可視光線透光度を有することができる。
【0068】
このような芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムの特性は、前述した炭素数3以上の脂肪族グループを含むアミド溶媒を使用することに起因するとみられる。より具体的に、前述した炭素数3以上の脂肪族グループを含むアミド溶媒は、ポリ(アミド-イミド)高分子の溶解度を高め、コーティング乾燥時に高分子配向により有利な作用をすることができ、これによって前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体から形成されるフィルムが低い黄色度指数とヘイズ指数、高い機械的強度、低い吸湿性などの特性を有することができるようにする。
【0069】
前記炭素数3以上の脂肪族グループを含むアミド溶媒の具体的な例としては、メチル3-メトキシプロピオネート(Methyl 3-Methoxypropionate)、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド(3-methoxy-N,N-dimethyl propionamide)またはN,N-ジメチルプロピオンアミド(N,N-Dimethylpropionamide)が挙げられる。
【0070】
また、前述のように、前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムは、前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体の合成に使用される特定の単量体およびこれらの含有量などにより前述した特徴を有することができる。
【0071】
具体的に、前記芳香族ジカルボニルモノマーは、前記芳香族ジアンハイドライドモノマーおよび前記芳香族ジカルボニルモノマーの総モルに対して51モル%以上含まれてもよい。また、前記芳香族ジカルボニルモノマーは、4,4'-ビフェニルジカルボニルクロライド(4,4'-biphenyldicarbonyl chloride)10から60モル%;イソフタロイルクロライド(isophthaloyl chloride)10から50モル%;およびテレフタロイルクロライド(terephthaloyl chloride)20から70モル%を含むことができる。
【0072】
前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体を炭素数3以上の脂肪族グループを含むアミド溶媒で溶解して形成されたコーティング液は、2-(2'-ヒドロキシ-5'-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール[2-(2'-Hydroxy-5'-tert-octylphenyl)benzotriazole]およびオクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート[Octadecyl-3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)-propionate]からなる群より選択された1種以上の芳香族化合物をさらに含むことができる。
【0073】
このような芳香族化合物は、最終製造される芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルム内で前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体を含む高分子基材内に分散されてもよく、これによって前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体から形成されるフィルムが低い黄色度指数とヘイズ指数、高い機械的強度、低い吸湿性などの特性を有することができる。
【0074】
前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体を炭素数3以上の脂肪族グループを含むアミド溶媒で溶解して形成されたコーティング液をコーティングする方法は、大きく限定されるのではなく、例えば5℃から80℃の温度範囲で通常知られたコーティング方法および装置を使用することができる。
【0075】
前記基材の種類も限定されるのではなく、例えば通常の有機または無機基板や、ガラス基板、紙基板、高分子基板、金属基板など多様な例を使用することができる。
【発明の効果】
【0076】
本発明による芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体は、優れた耐スクラッチ性および機械的物性を示しながら、UV遮蔽機能が改善されたポリアミドイミドフィルムの提供を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0077】
以下、発明の理解のために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は発明を例示するためのものに過ぎず、発明をこれらだけに限定するのではない。
【0078】
[実施例および比較例:ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムの製造]
比較例1
【0079】
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を付着した100mLの4口丸底フラスコ(反応器)に窒素を通過させながらN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)42.5gを満たした後、反応器の温度を25℃に合わせた後、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニルジアミン(TFDB)4.3413g(0.01355mol)を投入および溶解してこの溶液を25℃に維持した。
【0080】
ここにシクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(CBDA)0.0213g(0.0001mol)を共に投入後、一定時間攪拌して溶解および反応させた。そして溶液の温度を-10℃に冷却させた後、ビフェニルジカルボニルクロライド(BPC)1.5136g(0.005422mol)、イソフタロイルクロライド(IPC)0.5505g(0.00271.mol)、テレフタロイルクロライド(TPC)1.0734g(0.00529mol)をそれぞれ投入攪拌した。固形分の濃度は15重量%であるポリアミック酸溶液を得た。
【0081】
前記ポリアミック酸溶液にDMACを投入して固形分含有量5%以下に薄め、これをメタノール10Lで沈殿させ、沈殿された固形分をろ過した後、100℃で真空で6時間以上乾燥して固形分形態のポリ(アミド-イミド)共重合体(Co-PAI #1)を得た(GPCで確認した重量平均分子量約147,211g/mol)。
【0082】
前記得たポリ(アミド-イミド)共重合体(Co-PAI #1)をN,N-ジメチルプロピオンアミド(N,N-Dimethylpropionamide)に溶かして約15wt%の高分子溶液を製造した。前記高分子溶液をプラスチック基材(UPILEX-75s、UBE社)に注ぎ、フィルムアプリケータを利用して高分子溶液の厚さを均一に調節し、80℃で10分間マティスオーブンで乾燥した後、窒素を流しながら250℃で30分間硬化して前記基材から剥離された厚さ50.0μmのPAIフィルムを得た。
【0083】
実施例1
【0084】
前記比較例1で得たポリ(アミド-イミド)共重合体(Co-PAI #1)100重量部に対して芳香族化合物であるOctadecyl-3-(3,5-di-tert。butyl-4-hydroxyphenyl)-propionate(Irganox 1076)5重量部をN,N-ジメチルプロピオンアミド(N,N-Dimethylpropionamide)に溶かして約15wt%の高分子溶液を製造した。
【0085】
前記高分子溶液をプラスチック基材(UPILEX-75s、UBE社)に注ぎ、フィルムアプリケータを利用して高分子溶液の厚さを均一に調節し、80℃で10分間マティスオーブンで乾燥した後、窒素を流しながら250℃で30分間硬化して前記基材から剥離された厚さ50.0μmのPAIフィルムを得た。
【0086】
実施例2
【0087】
前記比較例1で得たポリ(アミド-イミド)共重合体(Co-PAI #1)100重量部に対して芳香族化合物であるPentaerythritol Tetrakis(3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate(Irganox 1010)5重量部をN,N-ジメチルプロピオンアミド(N,N-Dimethylpropionamide)に溶かして約15wt%の高分子溶液を製造した。
【0088】
前記高分子溶液をプラスチック基材(UPILEX-75s、UBE社)に注ぎ、フィルムアプリケータを利用して高分子溶液の厚さを均一に調節し、80℃で10分間マティスオーブンで乾燥した後、窒素を流しながら250℃で30分間硬化して前記基材から剥離された厚さ50.0μmのPAIフィルムを得た。
【0089】
実施例3
【0090】
前記比較例1で得たポリ(アミド-イミド)共重合体(Co-PAI #1)100重量部に対して芳香族化合物であるPentaerythritol Tetrakis(3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate(Irganox 1010)5重量部をN,N-ジメチルプロピオンアミド(N,N-Dimethylpropionamide)に溶かして約15wt%の高分子溶液を製造した。
【0091】
前記高分子溶液をプラスチック基材(UPILEX-75s、UBE社)に注ぎ、フィルムアプリケータを利用して高分子溶液の厚さを均一に調節し、60℃で20分間マティスオーブンで乾燥した後、窒素を流しながら250℃で30分間硬化して前記基材から剥離された厚さ50.0μmのPAIフィルムを得た。
【0092】
比較例2
【0093】
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を付着した100mLの4口丸底フラスコ(反応器)に窒素を通過させながらN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)42.5gを満たした後、反応器の温度を25℃に合わせた後、FDB 4.505g(0.014067mol)を投入および溶解してこの溶液を25℃に維持した。ここにCBDA 0.0201g(0.0001mol)を共に投入後、一定時間攪拌して溶解および反応させた。そして溶液の温度を-10℃に冷却させた後、IPC 0.5355g(0.00263mol)、TPC 2.44g(0.012mol)をそれぞれ添加して攪拌し、固形分の濃度は15重量%であるポリアミック酸溶液を得た。
【0094】
前記ポリアミック酸溶液にDMACを投入して固形分含有量5%以下に薄め、これをメタノール10Lで沈殿させ、沈殿された固形分をろ過した後、100℃で真空で6時間以上乾燥して固形分形態のポリ(アミド-イミド)共重合体(Co-PAI #2)を得た(GPCで確認した重量平均分子量約154、197g/mol)。
【0095】
前記ポリ(アミド-イミド)共重合体(Co-PAI #2)をN,N-ジメチルプロピオンアミド(N,N-Dimethylpropionamide)に溶かして約15wt%の高分子溶液を製造した。前記高分子溶液をプラスチック基材(UPILEX-75s、UBE社)に注ぎ、フィルムアプリケータを利用して高分子溶液の厚さを均一に調節し、120℃で15分間マティスオーブンで乾燥した後、窒素を流しながら250℃で30分間硬化して前記基材から剥離された厚さ49.8μmのPAIフィルムを得た。
【0096】
実施例4
【0097】
前記比較例2で得たポリ(アミド-イミド)共重合体(Co-PAI #2)100重量部に対して芳香族化合物であるOctadecyl-3-(3,5-di-tert。butyl-4-hydroxyphenyl)-propionate(Irganox 1076)5重量部をN,N-ジメチルプロピオンアミド(N,N-Dimethylpropionamide)に溶かして約15wt%の高分子溶液を製造した。
【0098】
前記高分子溶液をプラスチック基材(UPILEX-75s、UBE社)に注ぎ、フィルムアプリケータを利用して高分子溶液の厚さを均一に調節し、80℃で10分間マティスオーブンで乾燥した後、窒素を流しながら250℃で30分間硬化して前記基材から剥離された厚さ50.0μmのPAIフィルムを得た。
【0099】
実施例5
【0100】
前記比較例2で得たポリ(アミド-イミド)共重合体(Co-PAI #2)100重量部に対して芳香族化合物であるPentaerythritol Tetrakis(3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate(Irganox 1010)5重量部をN,N-ジメチルプロピオンアミド(N,N-Dimethylpropionamide)に溶かして約15wt%の高分子溶液を製造した。
【0101】
前記高分子溶液をプラスチック基材(UPILEX-75s、UBE社)に注ぎ、フィルムアプリケータを利用して高分子溶液の厚さを均一に調節し、80℃で10分間マティスオーブンで乾燥した後、窒素を流しながら250℃で30分間硬化して前記基材から剥離された厚さ50.0μmのPAIフィルムを得た。
【0102】
実施例6
【0103】
前記比較例2で得たポリ(アミド-イミド)共重合体(Co-PAI #2)100重量部に対して芳香族化合物であるPentaerythritol Tetrakis(3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate(Irganox 1010)5重量部をN,N-ジメチルプロピオンアミド(N,N-Dimethylpropionamide)に溶かして約15wt%の高分子溶液を製造した。
【0104】
前記高分子溶液をプラスチック基材(UPILEX-75s、UBE社)に注ぎ、フィルムアプリケータを利用して高分子溶液の厚さを均一に調節し、60℃で20分間マティスオーブンで乾燥した後、窒素を流しながら250℃で30分間硬化して前記基材から剥離された厚さ50.0μmのPAIフィルムを得た。
【0105】
試験例
【0106】
(1)550nmの波長に対して厚さ方向のリターデーション(Rth)
【0107】
厚さ方向のリターデーション(Rth)は、各実施例および各比較例で製造した高分子フィルム(縦:76mm、幅:52mm、厚さ:13μm)をそのまま測定試料とし、測定装置としてAXOMETRICS社製の商品名「アクソスキャン(AxoScan)」を用い、それぞれの高分子フィルムの屈折率(前述した屈折率の測定により求められたフィルムの550nmの光に対する屈折率)の値をインプットした後、温度:25℃、湿度:40%の条件下、波長590nmの光を用い、厚さ方向のリターデーションを測定した後、求められた厚さ方向のリターデーション測定値(測定装置の自動測定による測定値)を用い、フィルムの厚さ10μm当たりリターデーション値に換算することによって求めた。
【0108】
(2)水分吸収率
【0109】
下記一般式1により水分吸収率を計算した。
【0110】
[一般式1]
水分吸収率(%)=(W1-W2)*100/W2
【0111】
前記一般式1で、W1は前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムを超純水に24時間含浸して測定した重量であり、W2は前記含浸以降、前記芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムを150℃で30分間乾燥して測定した重量である。
【0112】
(3)UV-cut off波長(λ)およびUV-cut傾き(dT/dλ)
【0113】
UV-Vis分光光度計(製造会社:Shimadzu、モデル名:UV2600)を利用してASTM E424の測定法によりフィルムのUV-cut off波長(λ)およびUV-cut傾き(dT/dλ)を測定した。UV-cut傾き(dT/dλ)は、透過度10から80%範囲で測定し、UV-cut offは透過度1%未満である時の波長で示した。
【0114】
[表1]
【表1】
【0115】
前記表1を参照すると、未延伸状態で550nmの波長に対して厚さ方向のリターデーション(Rth)が3,000nm以上であり、下記一般式1による水分吸収率が3.6%以下であるという物性を満たす実施例の芳香族ポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムは、相対的に高いUV-cut傾きを有し、優れたUV遮蔽機能と共に無色の透明な光学特性を有するという点が確認された。
【0116】
これに反し、比較例のポリ(アミド-イミド)共重合体フィルムは、相対的に低いUV-cut傾きを有し、UV遮蔽機能などが低いという点が確認された。