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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/56 20060101AFI20220531BHJP
【FI】
G05F1/56 310F
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018098211
(22)【出願日】2018-05-22
(65)【公開番号】P2019204236
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-03-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年1月16日にラピスセミコンダクダ株式会社の顧客事業所にて試供品を配布
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】大森 鉄男
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0176875(US,A1)
【文献】特開2002-344261(JP,A)
【文献】特開2011-24086(JP,A)
【文献】特開2009-3660(JP,A)
【文献】国際公開第99/31797(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタ対を含んで構成された差動回路と、
前記差動回路の出力に接続されたカスコード接続型のカレントミラー回路と、
前記カレントミラー回路の出力で制御される出力回路と、を含み、
前記トランジスタ対の一方のトランジスタのゲートに基準電圧が印加され、
前記トランジスタ対の他方のトランジスタのゲートに前記出力回路の出力が印加され、
前記カレントミラー回路は、前記トランジスタ対の一方のトランジスタの出力が接続されるノードに各々接続された第1のトランジスタと第2のトランジスタ、および前記第2のトランジスタに接続された第1の定電流源、並びに前記トランジスタ対の他方のトランジスタの出力が接続されるノードに各々接続された第3のトランジスタと第4のトランジスタ、および前記第4のトランジスタに接続された第2の定電流源、を備え、
前記第1のトランジスタ、前記第2のトランジスタ、前記第3のトランジスタ、前記第4のトランジスタの各々のゲートは前記第4のトランジスタと第2の定電流源との間に接続され、
前記出力回路は出力電圧を出力する出力トランジスタであって、前記第2のトランジスタと前記第1の定電流源とが接続されたノードの出力によって制御される
半導体装置。
【請求項2】
前記トランジスタ対の他方のトランジスタのゲートに前記出力回路の出力を抵抗分割した電圧が印加される
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2のトランジスタと前記第1の定電流源とが接続されるノードの電位と、前記第4のトランジスタと前記第2の定電流源とが接続されるノードの電位とが異なる
請求項に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1のトランジスタおよび前記第3のトランジスタの閾値と、前記第2のトランジスタおよび前記第4のトランジスタの閾値とが異なる
請求項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1のトランジスタおよび前記第3のトランジスタの閾値が、前記第2のトランジスタおよび前記第4のトランジスタの閾値より大きい
請求項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1のトランジスタおよび前記第3のトランジスタのサイズと、前記第2のトランジスタおよび前記第4のトランジスタのサイズが異なる
請求項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1のトランジスタおよび前記第3のトランジスタのサイズが、前記第2のトランジスタおよび前記第4のトランジスタのサイズより大きい
請求項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2のトランジスタと前記第1の定電流源との間に接続された第1の抵抗と、
前記第4のトランジスタと前記第2の定電流源との間に接続された第2の抵抗と、をさらに含む
請求項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1のトランジスタのゲートおよび前記第3のトランジスタのゲートは、各々前記第4のトランジスタと前記第2の抵抗とが接続されたノードに接続され、
前記第2のトランジスタのゲートおよび前記第4のトランジスタのゲートは、各々前記第2の抵抗と前記第2の定電流源とが接続されたノードに接続される
請求項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1のトランジスタおよび前記第3のトランジスタが、各々直列に接続された複数のトランジスタで構成され、前記複数のトランジスタの各々のゲートは前記第4のトランジスタと前記第2の定電流源とが接続されたノードに接続される
請求項から請求項のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、特にカスコード接続型のカレントミラー回路を用いた電圧レギュレータ回路を含む半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電圧レギュレータ回路に関する文献として、例えば特許文献1が知られている。特許文献1に開示されたレギュレータは、出力用トランジスタに直列に接続された分圧器により分圧されて得られた帰還電圧が反転入力端子に入力される差動増幅器と、出力電圧の変化に対応して変化する対応出力電圧として差動増幅器から入力される対応出力電圧から出力用トランジスタにおける所定電流量以上のオフリーク電流を検知し、検知結果に応じた制御用電圧を出力するP型トランジスタと、分圧器と並列に接続されており、P型トランジスタから入力された制御用電圧により制御されるN型トランジスタと、を含んで構成されている。
【0003】
また、カスコード接続型のカレントミラーに関する文献として、例えば特許文献2が知られている。特許文献2に開示された差動増幅回路は、レイル・トウ・レイルの同相入力電圧範囲のある差動入力回路と、差動入力回路の電流出力信号が入力されるすべてのゲートを接続した折り返しカスコードカレントミラー回路と、カスコードカレントミラー回路の出力により制御される出力トランジスタ回路を含み、レイル・トウ・レイルの同相出力電圧範囲の出力を得ることを特徴としている。
【0004】
カスコード接続型のカレントミラーに関する文献として、さらに特許文献3も知られている。特許文献3に開示された電流生成回路は、正の温度特性を有する第1電流を生成する第1電流源と、第2電流を生成する第2電流源と、第2電流の経路上に設けられた、NPN型バイポーラトランジスタである補償用トランジスタと、補償用トランジスタのベース電流を第1係数倍して第3電流を生成する第1カレントミラー回路と、を備え、第1電流と第3電流の差に比例した第4電流を出力し、第2電流源は、第1固定電圧端子と第2固定電圧端子の間に順の直列に設けられた、第2コレクタ抵抗、そのベースエミッタ間が接続されたNPN型バイポーラトランジスタである第3トランジスタ、およびダイオードと、そのベースが第3トランジスタのベースと接続されたNPN型バイポーラトランジスタである第4トランジスタと、第4トランジスタのエミッタと第2固定電圧端子の間に設けられたポリ抵抗である第2エミッタ抵抗と、を含み、第4トランジスタに流れる電流を、第2電流として出力している。すなわち特許文献3には、カスコード接続型カレントミラーについて、各ペアとなっているトランジスタのゲートがダイオードを介して接続された構成が開示されている。
【0005】
図5に示す比較例に係る電圧レギュレータ回路100を参照し、電圧レギュレータ回路についてより詳細に説明する。図5に示すように比較例に係る電圧レギュレータ回路100は、定電流源12とN型MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタN3によってノードvbに生成されるバイアス電圧で制御されて定電流源を構成するN型MOSトランジスタN0、差動対を構成するN型MOSトランジスタN1、N2、差動対の負荷となるP型MOSトランジスタP1、P2、出力トランジスタであるP型MOSトランジスタP0を含んで構成されている。差動対の一方であるN型MOSトランジスタN2のゲートには基準電圧Vrefが入力され、差動対の他方であるN型MOSトランジスタN1のゲートには、出力電圧Voutを抵抗R0、R1によって分割した帰還電圧Vfbが入力されている。また、電圧レギュレータ回路100は電源Vddとグランド(GND)との間に接続されている。
【0006】
電圧レギュレータ回路100では、電源Vddの電圧が高い範囲では、差動アンプ(N型MOSトランジスタN0、N1、N2で構成される回路)のノードVpgによって出力トランジスタであるP型MOSトランジスタP0のゲート電圧が制御され、基準電圧Verfと、抵抗R0およびR1とで設定された電圧が出力電圧Voutとして出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-210662号公報
【文献】特開2001-144558号公報
【文献】特開2011-232931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、比較例に係る電圧レギュレータ回路100では、以下の問題点があった。すなわち、電源Vddの電圧が低くなると、差動アンプのノードVpgの電位とノードtopの電位とが衝突して、N型MOSトランジスタN2がいわゆるカットオフ動作となりP型MOSトランジスタP0のゲート電圧が制御できなくなるという問題である。その結果、出力電圧Voutは基準電圧Vrefと抵抗R0、R1で設定された目標電圧を維持できなくなる。本問題について図示したのが図2(b)である。図2(b)の点線円の領域でノードVpgの電位とノードtopの電位とが衝突しており、実線円の領域で出力電圧Voutの目標電圧が維持できなくなっている。
【0009】
すなわち、電源Vddの電圧が低い領域であるN型MOSトランジスタN2のカットオフ動作付近の電源Vddの電圧では、出力トランジスタであるP型MOSトランジスタP0のゲート電圧を下げることができない。ここで、ノードtopの電圧は定電流源N0のほぼVth(閾値)分である。従って、P型MOSトランジスタP0のサイズを大きくした場合の出力電流の増加率は小さいのでトランジスタサイズを余計に大きくしなければならず、レイアウト面積が大きくなってしまう。その結果、低電源電圧でかつ入出力間電位差の小さい低飽和レギュレータ(LDO:Low Drop Out)を構成することが困難となる。
【0010】
上記点についてより詳細に説明する。すなわち、電圧レギュレータ回路100では差動アンプのノードvpgの電圧(P型MOSトランジスタP0のゲート電圧)とノードvpgxの電圧は、ノードtopの電圧より低い電圧にすることができない。この時のP型MOSトランジスタP0のゲート電圧は、定電流源であるN型MOSトランジスタN0のほぼVth(閾値)分以下には下がらないので、低電源電圧におけるP型MOSトランジスタP0の特性はこのゲート電圧での飽和特性になる。そのため、P型MOSトランジスタP0のトランジスタサイズを大きくしても電流増加が少ないために所望の電流にするためにはサイズがさらに大きくなってしまう。
【0011】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、低電源電圧でも動作可能な電圧レギュレータ回路を含む半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る半導体装置は、トランジスタ対を含んで構成された差動回路と、前記差動回路の出力に接続されたカスコード接続型のカレントミラー回路と、前記カレントミラー回路の出力で制御される出力回路と、を含み、前記トランジスタ対の一方のトランジスタのゲートに基準電圧が印加され、前記トランジスタ対の他方のトランジスタのゲートに前記出力回路の出力が印加され、前記カレントミラー回路は、前記トランジスタ対の一方のトランジスタの出力が接続されるノードに各々接続された第1のトランジスタと第2のトランジスタ、および前記第2のトランジスタに接続された第1の定電流源、並びに前記トランジスタ対の他方のトランジスタの出力が接続されるノードに各々接続された第3のトランジスタと第4のトランジスタ、および前記第4のトランジスタに接続された第2の定電流源、を備え、前記第1のトランジスタ、前記第2のトランジスタ、前記第3のトランジスタ、前記第4のトランジスタの各々のゲートは前記第4のトランジスタと第2の定電流源との間に接続され、前記出力回路は出力電圧を出力する出力トランジスタであって、前記第2のトランジスタと前記第1の定電流源とが接続されたノードの出力によって制御されるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低電源電圧でも動作可能な電圧レギュレータ回路を含む半導体装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施の形態に係る半導体装置の構成の一例を示す回路図である。
図2】第1の実施の形態に係る半導体装置の動作点を示す図である。
図3】第3の実施の形態に係る半導体装置の構成の一例を示す回路図である。
図4】第4の実施の形態に係る半導体装置の構成の一例を示す回路図である。
図5】比較例に係る半導体装置の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。以下の実施の形態では、本発明に係る半導体装置を電圧レギュレータ回路を含む半導体装置に適用した形態を例示して説明する。
【0016】
[第1の実施の形態]
図1および図2を参照して、本実施の形態に係る電圧レギュレータ回路10について説明する。図1に示すように電圧レギュレータ回路10は、N型MOSトランジスタN0、N1、N2、N3、N4、N5、P型MOSトランジスタP0、P1、P2、P3、P4、抵抗R0、R1、基準電源14、および電流値がIbの定電流源12を含んで構成されている。定電流源12、P型MOSトランジスタP0、P1、P2のソースは各々高電位側の電源Vddに接続され、低電位側の電源は一例としてグランド(GND)とされている。
【0017】
N型MOSトランジスタN0、N1、N2によって、N型MOSトランジスタN0を定電流源とする差動アンプが構成されている。N型MOSトランジスタN2の出力はノードVnに接続され、N型MOSトランジスタN1の出力はノードVnxに接続されている。定電流源12、N型MOSトランジスタN3、N0によってカレントミラー回路が構成され、ダイオード接続されたN型MOSトランジスタN3のゲート(ドレイン)が接続されたノードvbの電圧がバイアス電圧としてN型MOSトランジスタN0のゲートに供給されている。なお、上記「差動アンプ」が本発明に係る「差動回路」に相当し、N型MOSトランジスタN1、N2が本発明に係る「トランジスタ対」に相当する。
【0018】
N型MOSトランジスタN4、N5、およびP型MOSトランジスタP1、P2、P3、P4によって、カスコード接続型のカレントミラー回路であるカスコードカレントミラー回路20が構成されている。すなわち、定電流源であるN型MOSトランジスタN4、N5の各々に接続された能動負荷としてのP型MOSトランジスタP4、P3によってカレントミラー回路が構成されている。さらにP型MOSトランジスタP4、P3の各々には、P型MOSトランジスタP2、P1がカスコード接続されて、カスコードカレントミラー回路20が構成されている。N型MOSトランジスタN4、N5のゲートは各々ノードvbに接続され、バイアス電圧が印加されている。
【0019】
本実施の形態に係る電圧レギュレータ回路10ではさらに、P型MOSトランジスタP1、P2、P3、P4の各々のゲートが、P型MOSトランジスタP3とN型MOSトランジスタN5とが接続されたノード(節点)vpgxに接続されている。すなわち、P型MOSトランジスタP1、P2、P3、P4は自己バイアスされている。
【0020】
カスコードカレントミラー回路20の出力である、P型MOSトランジスタP4とN型MOSトランジスタN4とが接続されたノードvpgにP型MOSトランジスタP0のゲートが接続され、P型MOSトランジスタP0はノードvpgの電圧によって制御される。なお、P型MOSトランジスタP0が本発明に係る「出力回路」に相当する。P型MOSトランジスタP0のドレインはノードvoに接続され、ノードvoから出力電圧Voutが出力される。また、P型MOSトランジスタP0のドレインには直列に接続された抵抗R0とR1が接続されており、抵抗R0とR1とが接続されたノードvfからの帰還電圧VfbがN型MOSトランジスタN1のゲートに入力されている。
【0021】
以上のように構成された電圧レギュレータ回路10は、基準電圧Vrefおよび帰還電圧Vfbによる制御の下、目標電圧に維持された出力電圧Voutがノードvoから出力される。
【0022】
次に図2を参照して、本実施の形態に係る電圧レギュレータ回路10の特性について説明する。図2(a)は、電圧レギュレータ回路10について電源Vddの電圧を横軸にとった場合に、各ノードの電位がどのように変化するかを示したグラフである。図2(b)は、先述したように比較例に係る電圧レギュレータ回路100の各ノードの電位である。
【0023】
図2(b)に示すように、電圧レギュレータ回路100では電源Vddの電圧がV1となる付近(以下、「Vdd=V1」と表記)でノードvpgの電位とノードtopの電位とが重なっている(衝突している)。つまり、電圧レギュレータ回路100では、電源Vddの電圧低下に伴い電源Vdd=V1の付近でN型MOSトランジスタN2が飽和し、カットオフ動作が始まっている。従って、電圧レギュレータ回路100では出力電圧Voutが目標値に制御されるのは電源Vdd=V1以上の領域となる。
【0024】
一方、図2(a)に示すように、本実施の形態に係る電圧レギュレータ回路10では、出力電圧Voutは電源Vddが高電位側から電源Vdd=V2(<V1)となるまで略一定値を維持している。つまり、電圧レギュレータ回路10の電源Vdd=V2までの動作は、電圧レギュレータ回路100の電源Vdd=V1までの動作と同様の動作となっている。その結果、出力電圧Voutを目標電圧に制御可能な電源Vddの電圧が、図2に矢印で示すように電圧V1からV2まで、つまり差分(V1-V2)だけ下がる。すなわち、電圧レギュレータ回路10は電圧レギュレータ回路100と比較してより低電源電圧でも動作可能となっている。これは、電源Vddの電圧の低下に伴って電圧レギュレータ回路100ではノードtopの電位とノードvpgの電位とが衝突して、N型MOSトランジスタN2がカットオフ動作に移行するのに対し、電圧レギュレータ回路10では、ノードtopとノードvpgとが分離しているため相互の衝突が発生せず、トランジスタのカットオフ動作が抑制されているためである。
【0025】
また、電源Vddの電圧(図2で「vdd」と表記された直線で示された電圧)と出力電圧Voutの差分について検討すると、電圧レギュレータ回路100では図2(b)にΔVで示された差分となっている。これに対し電圧レギュレータ回路10では、図2(a)の実線円の部分を参照して明らかなように、電源Vddの電圧と出力電圧Voutの差分は電圧レギュレータ回路100と比較してごく微小なものとなっている。このことからも、本実施の形態に係る電圧レギュレータ回路10によれば、低電源電圧時に入力間電位差が小さい低飽和レギュレータ(LDO)を構成することが可能となっていることがわかる。
【0026】
さらに、電圧レギュレータ回路10では、出力トランジスタであるP型MOSトランジスタP0のゲートを制御するノードvpgは、定電流源であるN型MOSトランジスタN4に接続されているため、GNDレベルの電圧まで制御することが可能である。従って、出力電流を増加させる場合でも出力トランジスタ(P型MOSトランジスタP0)は例えば電圧レギュレータ回路100より縮小することが可能であり、電圧レギュレータ回路100と比較してレイアウト面積への影響も少なくなっている。その結果、本実施の形態に係る電圧レギュレータ回路10によれば、低電源電圧時に入力間電位差が小さい低飽和レギュレータ(LDO)を構成することが可能となっている。
【0027】
換言すると、上述したように、本実施の形態に係る電圧レギュレータ回路10は、低電源電圧でもカットオフ動作を起こさず、出力トランジスタ(P型MOSトランジスタP0)が制御可能となっている。また、出力トランジスタ(P型MOSトランジスタP0)のサイズを、例えば電圧レギュレータ回路100より大きくせずに出力電流を増加させることも可能となっている。さらに、本実施の形態に係る電圧レギュレータ回路10は電圧レギュレータ回路100に対して4素子の追加で実現可能であり、少ない素子数で低飽和レギュレータ(LDO)を構成することが可能となっている。
【0028】
ここで、特許文献1にはカレントミラー回路を用いたレギュレータが開示され、特許文献2にはカスコードカレントミラー回路が開示されている。しかしながら、特許文献2に係る差動増幅回路はレイル・トウ・レイルの同相出力電圧範囲の出力を得ることを目的としたものであり、そもそも基本構成が異なるので特許文献1に係るレギュレータと単純に組み合わせて本実施の形態に係る電圧レギュレータ回路10を構成することはできない。
【0029】
[第2の実施の形態]
本実施の形態は、電圧レギュレータ回路10に対して、電流増幅率の改善を図った形態である。図1に示すP型MOSトランジスタP1、P2は各々ゲートがノードvpgxに接続された自己バイアスによるカスコード接続であるため、バイアス電源を別回路としたカスコード接続と比較すると電流増幅率が低く、その結果低電源電圧動作において出力部であるP型MOSトランジスタP0の出力電流が低下することも想定される。
【0030】
そこで本実施の形態では、P型MOSトランジスタP1、P2、P3、P4について以下の構成を採用することで、P型MOSトランジスタP0の出力電流の低下を抑制している。
<構成1>
P型MOSトランジスタP1およびP2の閾値をVth1、P型MOSトランジスタP3およびP4の閾値をVth2とした場合に、
Vth1>Vth2 ・・・ (式1)
の関係を充足するように構成する。本構成は、(式1)の関係を満たす素子を備えたプロセスを採用してを実現する。
<構成2>
P型MOSトランジスタP1およびP2のL長サイズ(トランジスタのゲートのサイズ)をL1、P型MOSトランジスタP3およびP4のL長サイズをL2とした場合に、サイズ比が、
L1>L2 ・・・ (式2)
の関係を充足するように構成する。本構成は、(式2)の関係を満たすようにトランジスタのレイアウト設計を行って実現する。本構成は、例えば使用するプロセスが(式1)の関係を充足できない場合(すなわち、Vth1=Vth2である場合)に有効である。
【0031】
[第3の実施の形態]
図3を参照して、本実施の形態に係る電圧レギュレータ回路10Aについて説明する。電圧レギュレータ回路10Aは、上記実施の形態と同様電流増幅率の改善を図った形態であるが、本実施の形態ではカスコードカレントミラー回路を変更することにより電流増幅率の改善を図っている。
【0032】
図3に示すように、電圧レギュレータ回路10Aはカスコードカレントミラー回路20Aを備えている。カスコードカレントミラー回路20Aはカスコードカレントミラー回路20において、P型MOSトランジスタP1およびP2の各々を、直列に接続された(縦積みの)複数(図3ではN個の場合を例示している)のP型MOSトランジスタで構成している。本実施の形態によっても電流増幅率の改善を図ることができ、本実施の形態は特に使用するプロセスが(式1)の関係を充足できない場合(すなわち、Vth1=Vth2である場合)に有効である。特に、上記構成2はトランジスタのゲートのサイズを調整するので微調整が行いにくいが、電圧レギュレータ回路10A(カスコードカレントミラー回路20A)によれば、トランジスタのサイズの調整での微調整が可能であり、配線のマスクのみの変更で対応することが可能であるという効果がある。
【0033】
[第4の実施の形態]
図4を参照して、本実施の形態に係る電圧レギュレータ回路10Bについて説明する。電圧レギュレータ回路10Bは、上記実施の形態と同様電流増幅率の改善を図った形態であるが、本実施の形態ではカスコードカレントミラー回路を変更することにより電流増幅率の改善を図っている。
【0034】
図4に示すように、電圧レギュレータ回路10Bはカスコードカレントミラー回路20Bを備えている。カスコードカレントミラー回路20Bは、カスコードカレントミラー回路20において抵抗R2、R3を追加している。すなわち、抵抗R2はP型MOSトランジスタP4のドレインとN型MOSトランジスタN4のドレインとの間に接続され、抵抗R3はP型MOSトランジスタP3のドレインとN型MOSトランジスタN5のドレインとの間に接続されている。そして、P型MOSトランジスタP1およびP2のゲートはP型MOSトランジスタP3と抵抗R3とが接続されたノードに接続され、P型MOSトランジスタP3およびP4のゲートは抵抗R3とN型MOSトランジスタN5とが接続されたノードに接続されている。本実施の形態によっても電流増幅率の改善を図ることができ、本実施の形態は特に使用するプロセスが(式1)の関係を充足できない場合(すなわち、Vth1=Vth2である場合)に有効である。また、電圧レギュレータ回路10Bは、電圧レギュレータ回路10Aと比較して、閾値Vthに依存しないカスコード接続が実現されるという効果がある。
【0035】
ここで、特許文献3にはカスコード接続型カレントミラーについて開示されている。しかしながら、特許文献3に係るカスコード接続型カレントミラーは各ペアとなっているトランジスタのゲートをダイオードを介して接続することを前提とするものであり、抵抗を介して接続する本実施の形態に係る電圧レギュレータと10Bとは根本的に構成が異なるものである。
【0036】
なお、上記各実施の形態では、各々の実施の形態の電圧レギュレータ回路を個別に実施する形態を例示して説明したが、これに限られず実施の形態を組み合わせた形態としてもよい。例えば第3の実施の形態である複数のP型MOSトランジスタP1、P2を用いる形態と、第2の実施の形態である閾値Vthを異ならせる形態、あるいはトランジスタサイズを異ならせる形態とを組み合わせてもよい。このようにすることにより、P型MOSトランジスタP0の出力電流の低下を抑制させる構成の設計において、例えば設計の自由度が拡張されより微妙な調整を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0037】
10、10A、10B、100 電圧レギュレータ回路
12 定電流源
14 基準電源
20、20A、20B カスコードカレントミラー回路
N0~N5 N型MOSトランジスタ
P0~P4 P型MOSトランジスタ
R0~R3 抵抗
Vdd 電源
Vfb 帰還電圧
Vref 基準電圧
Vout 出力電圧
ΔV 差分
top、vb、vpg、vpgx、vn、vnx、vo、vf ノード
図1
図2
図3
図4
図5