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特許7082172アライメント装置、成膜装置、アライメント方法、成膜方法、及び電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】アライメント装置、成膜装置、アライメント方法、成膜方法、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/04 20060101AFI20220531BHJP
【FI】
C23C14/04 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020192632
(22)【出願日】2020-11-19
(65)【公開番号】P2021095633
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】10-2019-0170224
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100188868
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 智丈
(74)【代理人】
【識別番号】100221327
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 亮
(72)【発明者】
【氏名】阿部 大和
(72)【発明者】
【氏名】菅原 洋紀
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-300056(JP,A)
【文献】特開2019-189943(JP,A)
【文献】特開2010-138467(JP,A)
【文献】特開2007-157623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成されたアライメントマークと、所定の開口パターンが形成されているマスク箔の外周面を固定するためのマスクフレームを含むマスクに形成されたアライメントマークとを撮影する第1のカメラと、前記第1のカメラより高い解像度を有し前記アライメントマークを撮影する第2のカメラと、を含むカメラ部と、
前記マスクを支持するマスク支持ユニットと、
前記マスク支持ユニットに対して前記カメラ部と同じ側に位置して前記アライメントマークに光を照射する反射光取得用の第1の光源と、
前記マスク支持ユニットに対し前記カメラ部と反対側に位置し、前記マスク箔の法線方向に対して傾斜して前記マスクフレームに形成されている貫通孔を通して前記アライメントマークに光を照射する透過光取得用の第2の光源と、
前記第1の光源または前記第2の光源によって光が照射された前記アライメントマークを前記第1のカメラまたは前記第2のカメラで撮像した画像に基づいて、前記基板と前記マスクとの相対位置を調整する位置調整機構とを備え、
前記第1のカメラで前記アライメントマークの画像を取得する場合は前記第1の光源によって前記アライメントマークに光を照射し、前記第2のカメラで前記アライメントマークの画像を取得する場合は前記第2の光源によって前記アライメントマークに光を照射することを特徴とするアライメント装置。
【請求項2】
マスクを介して基板に蒸着材料を成膜するための成膜装置であって、請求項1に記載のアライメント装置を含むことを特徴とする成膜装置。
【請求項3】
基板と、所定の開口パターンが形成されているマスク箔の外周面を固定するためのマスクフレームを含みマスク支持ユニットに支持されたマスクと、の相対位置を調整するためのアライメント方法であって、
第1のカメラと第2のカメラとを含むカメラ部のうち前記第1のカメラで、前記マスク支持ユニットに対して前記カメラ部と同じ側に位置する反射光取得用の第1の光源によって光が照射された基板またはマスクに形成されたアライメントマークを撮像して、第1の画像を取得する第1の画像取得ステップと、
前記第1の画像に基づいて、前記基板と前記マスクの相対位置を調整する第1の相対位置調整ステップと、
前記マスク支持ユニットに対し前記カメラ部と反対側に位置し、前記マスク箔の法線方向に対して傾斜して前記マスクフレームに形成されている貫通孔を通して前記アライメントマークに光を照射する透過光取得用の第2の光源によって光が照射された前記アライメントマークを前記第1のカメラより高い解像度を有する前記第2のカメラで撮像して、第2の画像を取得する第2の画像取得ステップと、
前記第2の画像に基づいて、前記基板と前記マスクの相対位置を調整する第2の相対位置調整ステップとを含むことを特徴とするアライメント方法。
【請求項4】
マスクを介して基板に蒸着材料を成膜するための成膜方法であって、
請求項に記載されたアライメント方法を含むことを特徴とする成膜方法。
【請求項5】
請求項に記載の成膜方法を用いて電子デバイスを製造することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アライメント装置、成膜装置、アライメント方法、成膜方法、及び電子デバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置(有機ELディスプレイ)の製造においては、有機EL表示装置を構成する有機発光素子(有機EL素子;OLED)を形成する際に、成膜装置の蒸発源から蒸発した蒸着材料を、画素パターンが形成されたマスクを介して、基板に蒸着させることで、有機物層や金属層を形成する。
【0003】
成膜装置においては、成膜精度を高めるために、成膜工程の前に、基板とマスクの相対的位置を測定し、相対的位置がずれている場合には、基板および/またはマスクを相対的に移動させて位置を調整(アライメント)する。
【0004】
基板とマスクの相対的位置の測定は、真空容器の外側(大気側)の上面に設置されたアライメントカメラで、基板とマスクに形成されているアライメントマークを撮像することにより行われる。真空容器内部は暗いので、アライメント用の光源で基板とマスクのアライメントマークを照らしながら、撮像が行われる。
【0005】
通常、アライメント用光源は、アライメントカメラと同様に、真空容器の外側上面に設置される。この場合に、アライメントカメラは、基板及びマスクからの反射光を受け取って、アライメントマークを含む画像を取得することになるが、基板のアライメントマークが設けられている部分とその周囲の部分においての、反射光量の差が小さいためコントラストが低く、高解像度の画像を取得するのは難しい問題がある。アライメントカメラで取得する画像の解像度が十分に高くなければ、アライメント精度が低下して成膜精度を低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アライメントマークを高解像度で撮像するために、アライメント用光源を、真空容器の内部に設置する方法が考慮される。これによれば、アライメントカメラは、基板とマスクに対して、反対側に設置されたアライメント用光源から照射されて、基板とマスクを通過した透過光を用いて、画像を取得するので、相対的に高解像度の画像取得が可能である。しかし、透過光の経路上にアライメントマークが位置しなければ、取得した画像にはアライメントマークが写らないので、アライメントマークを認識することができない問題がある。
【0007】
本発明は、アライメント精度を向上させることができるアライメント装置、成膜装置、アライメント方法、成膜方法、電子デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様によるアライメント装置は、基板に形成されたアライメントマークと、所定の開口パターンが形成されているマスク箔の外周面を固定するためのマスクフレームを含むマスクに形成されたアライメントマークとを撮影する第1のカメラと、前記第1のカメラより高い解像度を有し前記アライメントマークを撮影する第2のカメラと、を含むカメラ部と、前記マスクを支持するマスク支持ユニットと、前記マスク支持ユニットに対して前記カメラ部と同じ側に位置して前記アライメントマークに光を照射する反射光取得用の第1の光源と、前記マスク支持ユニットに対し前記カメラ部と反対側に位置し、前記マスク箔の法線方向に対して傾斜して前記マスクフレームに形成されている貫通孔を通して前記アライメントマークに光を照射する透過光取得用の第2の光源と、前記第1の光源または前記第2の光源によって光が照射された前記アライメントマークを前記第1のカメラまたは前記第2のカメラで撮像した画像に基づいて、前記基板と前記マスクとの相対位置を調整する位置調整機構とを備え、前記第1のカメラで前記アライメントマークの画像を取得する場合は前記第1の光源によって前記アライメントマークに光を照射し、前記第2のカメラで前記アライメントマークの画像を取得する場合は前記第2の光源によって前記アライメントマークに光を照射することを特徴とする。


【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アライメント精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】電子デバイスの製造装置の一部の模式図である。
図2】本発明の一実施形態による成膜装置の模式図である。
図3】本発明の一実施形態によるアライメント装置の模式図である。
図4A】本発明の一実施形態による貫通穴の形状を示すマスクの一部の断面模式図である。
図4B】貫通穴の形状を示すマスクの一部の断面模式図である。
図5】本発明の一実施形態によるアライメント方法を示すフローチャートである。
図6】電子デバイスを示す模式図である。
図7】円形の基板とアライメントマークの配置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態及び実施例を説明する。ただし、以下の実施形態及び実施例は本発明の構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲はそれらの構成に限定されない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、処理フロー、製造条件、寸法、材質、形状などは、特定的な記載がないかぎりは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0012】
本発明は、基板の表面に各種材料を堆積させて成膜を行う装置に適用することができ、真空蒸着によって所望のパターンの薄膜(材料層)を形成する装置に望ましく適用することができる。基板の材料としては、ガラス、高分子材料のフィルム、金属、シリコンなどの任意の材料を選択することができる。基板は、例えば、ガラス基板上にポリイミドなどのフィルムが積層された基板またはシリコンウエハであってもよい。また、蒸着材料としても、有機材料、金属性材料(金属、金属酸化物など)などの任意の材料を選択してもいい。なお、以下の説明において説明する真空蒸着装置以外にも、スパッタ装置やCVD(ChemicalVaporDeposition)装置を含む成膜装置にも、本発明を適用することができる。本発明の技術は、具体的には、有機電子デバイス(例えば、有機EL素子、薄膜太陽電池)、光学部材などの製造装置に適用可能である。その中でも、蒸着材料を蒸発させてマスクを介して基板に蒸着させることで有機EL素子を形成する有機EL素子の製造装置は、本発明の適用例の一つである。
【0013】
<電子デバイスの製造装置>
図1は、電子デバイスの製造装置の一部の構成を模式的に示す平面図である。
【0014】
図1の製造装置は、例えば、有機EL表示装置の表示パネルの製造に用いられる。VRHMD用の表示パネルの場合、所定のサイズのシリコンウエハに有機EL素子の形成のための成膜を行った後、素子形成領域の間の領域(スクライブ領域)に沿って該シリコンウエハを切り出して、複数の小さなサイズのパネルを製作する。スマートフォン用の表示パネルの場合は、4.5世代の基板(約700mm×約900mm)や6世代のフルサイズ(約1500mm×約1850mm)又はハーフカットサイズ(約1500mm×約925mm)の基板に、有機EL素子の形成のための成膜を行った後、該基板を切り抜いて複数の小さなサイズのパネルを製作する。
【0015】
電子デバイスの製造装置は、一般的に、複数のクラスタ装置1と、クラスタ装置の間を繋ぐ中継装置とを含む。
【0016】
クラスタ装置1は、基板Wに対する処理(例えば、成膜)を行う複数の成膜装置11と、使用前後のマスクMを収納する複数のマスクストック装置12と、その中央に配置される搬送室13と、を具備する。搬送室13は、図1に示すように、複数の成膜装置11およびマスクストック装置12のそれぞれと接続されている。
【0017】
搬送室13内には、基板またはマスクを搬送する搬送ロボット14が配置されている。搬送ロボット14は、上流側に配置された中継装置のパス室15から成膜装置11へと基板Wを搬送する。また、搬送ロボット14は、成膜装置11とマスクストック装置12との間でマスクMを搬送する。搬送ロボット14は、例えば、多関節アームに、基板W又はマスクMを保持するロボットハンドが取り付けられた構造を有するロボットである。
【0018】
成膜装置11(蒸着装置とも呼ぶ)では、蒸発源に収納された蒸着材料がヒータによって加熱されて蒸発し、マスクを介して基板上に蒸着される。搬送ロボット14との基板W/マスクMの受け渡し、基板WとマスクMの相対位置の調整(アライメント)、マスクM上への基板Wの固定、成膜(蒸着)などの一連の成膜プロセスは、成膜装置11によって行われる。
【0019】
マスクストック装置12には、成膜装置11での成膜工程に使われる新しいマスクと、使用済みのマスクとが、二つのカセットに分けて収納される。搬送ロボット14は、使用済みのマスクを成膜装置11からマスクストック装置12のカセットに搬送し、マスクストック装置12の他のカセットに収納された新しいマスクを成膜装置11に搬送する。
【0020】
クラスタ装置1には、基板Wの流れ方向において上流側からの基板Wを当該クラスタ装置1に伝達するパス室15と、当該クラスタ装置1で成膜処理が完了した基板Wを下流側の他のクラスタ装置に伝えるためのバッファー室16が連結される。搬送室13の搬送ロボット14は、上流側のパス室15から基板Wを受け取って、当該クラスタ装置1内の成膜装置11の一つ(例えば、成膜装置11a)に搬送する。また、搬送ロボット14は、当該クラスタ装置1での成膜処理が完了した基板Wを複数の成膜装置11の一つ(例えば、成膜装置11b)から受け取って、下流側に連結されたバッファー室16に搬送する。
【0021】
バッファー室16とパス室15との間には、基板の向きを変える旋回室17が設置されてもいい。旋回室17には、バッファー室16から基板Wを受け取って基板Wを180°回転させ、パス室15に搬送するための搬送ロボット18が設けられる。これにより、上流側のクラスタ装置と下流側のクラスタ装置で基板Wの向きが同じくなり、基板処理が容易になる。
【0022】
パス室15、バッファー室16、旋回室17は、クラスタ装置間を連結する、いわゆる中継装置であり、クラスタ装置の上流側及び/又は下流側に設置される中継装置は、パス室、バッファー室、旋回室のうち少なくとも1つを含む。
【0023】
成膜装置11、マスクストック装置12、搬送室13、バッファー室16、旋回室17などは、有機発光素子の製造の過程で、高真空状態に維持される。パス室15は、通常低真空状態に維持されるが、必要に応じて高真空状態に維持されてもいい。
【0024】
本実施例では、図1を参照して、電子デバイスの製造装置の構成について説明したが、本発明はこれに限定されず、他の種類の装置やチャンバーを有してもよく、これらの装置やチャンバー間の配置が変わってもいい。例えば、本発明は、基板WとマスクMを、成膜装置11ではなく、別の装置またはチャンバーで合着させた後、これをキャリアに乗せて、一列に並んだ複数の成膜装置を通して搬送させながら成膜工程を行うインラインタイプの製造装置にも適用することができる。
【0025】
以下、成膜装置11の具体的な構成について説明する。
【0026】
<成膜装置>
図2は、成膜装置11の構成を示す模式図である。以下の説明においては、基板Wの成膜面に平行な面(XY平面)において交差する2つの方向をX方向(第1方向)とY方向(第2方向)とし、基板Wの成膜面に垂直な鉛直方向をZ方向(第3方向)とするXYZ直交座標系を用いる。また、Z軸まわりの回転角(回転方向)をθで表す。
【0027】
成膜装置11は、真空雰囲気又は窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持される真空容器21と、真空容器21の内部に設けられる、基板支持ユニット22と、マスク支持ユニット23と、静電チャック24と、蒸発源25とを含む。
【0028】
基板支持ユニット22は、搬送室13に設けられた搬送ロボット14によって搬送された基板Wを受取って保持する手段であり、基板ホルダとも呼ばれる。
【0029】
マスク支持ユニット23は、搬送室13に設けられた搬送ロボット14によって搬送されたマスクMを受取って保持する手段であり、マスクホルダとも呼ばれる。
【0030】
マスク支持ユニット23によって支持されるマスクMは、マスク箔とマスクフレームとを含む。マスク箔には、基板W上に形成される薄膜パターンに対応する開口パターンが形成されている。開口パターンが形成されていない外周部には、所定の形状のアライメントマークが形成されている。そして、マスクフレームは、マスク箔の外周部が固定設置される部材である。マスク箔の素材は、シリコンやガラスなどの可視光や近赤外光に対して透光性を有するものであってもよい。一方、マスクフレームの材質には、特別な制限がなく、光が透過しない素材で形成されてもよい。
【0031】
基板支持ユニット22の上方には、基板Wを吸着し固定するための基板吸着手段としての静電チャック24が設けられる。
【0032】
静電チャック24は、電極と吸着面との間に相対的に抵抗が高い誘電体が介在して、電極と被吸着体との間のクーロン力によって吸着が行われるクーロン力タイプの静電チャックであってもよく、電極と吸着面との間に相対的に抵抗が低い誘電体が介在して、誘電体の吸着面と被吸着体との間に発生するジョンソン・ラーベック力によって吸着が行われるジョンソン・ラーベック力タイプの静電チャックであってもよく、不均一電界によって被吸着体を吸着するグラジエント力タイプの静電チャックであってもよい。
【0033】
被吸着体が導体または半導体(シリコンウエハ)である場合には、クーロン力タイプの静電チャックまたはジョンソン・ラーベック力タイプの静電チャックを用いてもよく、被吸着体がガラスのような絶縁体である場合には、グラジエント力タイプの静電チャックを用いてもよい。
【0034】
静電チャック24は、一つのプレートで形成されてもよく、吸着力を独立的に制御できる複数のサブプレートを有するように形成されてもいい。また、一つのプレートで形成される場合にも、その内部に複数の電極部を有し、一つのプレート内で電極部毎に吸着力を独立的に制御することができるようにしてもいい。
【0035】
基板吸着手段として、静電引力による静電チャックの他に、粘着力による粘着式のチャックを使ってもいい。
【0036】
成膜装置11の一実施形態においては、静電チャック24の吸着面とは反対側に基板Wの温度上昇を抑える冷却板30を設けることで、基板W上に堆積された有機材料の変質や劣化を抑制する構成としてもよい。
【0037】
蒸発源25は、基板に成膜される蒸着材料が収納されるるつぼ(不図示)、るつぼを加熱するためのヒータ(不図示)、蒸発源からの蒸発レートが一定になるまで蒸着材料が基板に飛散することを阻むシャッタ(不図示)などを含む。蒸発源25は、点(point)蒸発源や線状(linear)蒸発源、面状蒸発源など、用途に従って多様な構成を有することができる。
【0038】
図2に図示しなかったが、成膜装置11は、基板に蒸着された膜の厚さを測定するための膜厚モニタ(不図示)及び膜厚算出ユニット(不図示)を含む。
【0039】
真空容器21の上部外側(大気側)には、基板支持ユニットアクチュエータ26、マスク支持ユニットアクチュエータ27、静電チャックアクチュエータ28、位置調整機構29などが設けられる。これらのアクチュエータと位置調整機構は、例えば、モータとボールねじ、或いはモータとリニアガイドなどで構成される。基板支持ユニットアクチュエータ26は、基板支持ユニット22を昇降(Z方向移動)させるための駆動手段である。マスク支持ユニットアクチュエータ27は、マスク支持ユニット23を昇降(Z方向移動)させるための駆動手段である。静電チャックアクチュエータ28は、静電チャック24を昇降(Z方向移動)させるための駆動手段である。
【0040】
位置調整機構29は、基板WとマスクMとの相対位置を調整するための手段としてのアライメントステージ機構である。例えば、図2に示した実施形態においては、位置調整機構29は、静電チャック24又は静電チャックアクチュエータ28全体を基板支持ユニット22及びマスク支持ユニット23に対して、XYθ方向(X方向、Y方向、回転方向の少なくとも一つの方向)に移動及び/又は回転させる。なお、本実施形態では、基板Wを吸着した状態で、静電チャック24をXYθ方向に位置調整することで、基板WとマスクMの相対位置を調整するアライメントを行う。ただし、本発明は、このような構成に限定されず、例えば、位置調整機構29は、静電チャック24又は静電チャックアクチュエータ28ではなく、基板支持ユニット22又は基板支持ユニットアクチュエータ26及びマスク支持ユニット23又はマスク支持ユニットアクチュエータ27を静電チャック24に対してXYθ方向に相対的に移動させることができる構成を有しても良い。
【0041】
真空容器21の外側上面には、上述した駆動機構及び位置調整機構の他に、真空容器21の上面に設けられた透明窓21a(図3参照)を介して、基板W及びマスクMに形成されたアライメントマークを撮影するためのアライメント用カメラ31を設置される。アライメント用カメラ31は、基板W及びマスクMに形成されたアライメントマークに対応する位置に設けられる。例えば、円形の基板Wにおいて矩形をなす4つのコーナーのうち、少なくとも対角上の二つのコーナーまたは4つのコーナーすべてにアライメント用カメラ31を設置してもよい。
【0042】
成膜装置11に設置されるアライメント用カメラ31は、基板WとマスクMとの相対的な位置を高精度で調整するのに使われるファインアライメント用カメラであり、その視野角は狭いが高解像度を持つ(レンズ倍率の高い光学系を有する)カメラである。成膜装置11は、ファインアライメント用カメラ31の他に相対的に視野角が広くて低解像度である(レンズ倍率の低い光学系を有する)ラフアライメント用カメラを有してもよい。アライメント用カメラ31がファインアライメント用カメラとラフアライメント用カメラの両方を含む構成において、例えば、ラフアライメント用カメラは、2つのカメラが、矩形の対角上の2つのコーナー部に設置され、ファインアライメント用カメラは残りの2つのコーナー部に設置される。
【0043】
図7は、円形の基板とアライメントマークの配置を説明する図である。円形の基板Wにおいて矩形をなす4つのコーナーの位置にアライメントマークが設けられている。4つのコーナーのうち対角の2つのコーナーにラフアライメントマークが設けられている。また、4つのコーナーのうちラフアライメントマークが設けられていない対角の2つのコーナーにファインアライメントマークが設けられている。
【0044】
ラフアライメントマークの上方にラフアライメント用カメラが設けられている。ラフアライメント用カメラは、反射光を用いてアライメントマークの撮像を行う。ファインアライメントカメラの上方にファインアライメント用カメラが設けられている。ファインアライメント用カメラは、透過光を用いてアライメントマークの撮像を行う。
【0045】
本発明の実施形態によれば、図2には図示していないが、成膜装置11は、アライメント用カメラ31によってアライメントマークを撮影する間、アライメントマーク光を照射する光源部102a、102b(図3参照)をさらに含む。これは、成膜工程が進行される過程で、密閉される真空容器21の内部が暗いので、光源でアライメントマークを照明することにより、より鮮明な画像を取得するためである。
【0046】
本発明の一実施形態によれば、光源部は、真空容器21の外部上側に設置され、アライメントマークの上方から光を照射する反射光取得用の光源102aと、アライメントマークの下方から光を照射するよう真空容器21の内部に設置された透過光取得用の光源102bとを含む。この場合に、アライメント用カメラ31は、反射光取得用の光源102aによって光が照射されたアライメントマークからの反射光を受け取るか、または透過光取得用の光源102bによって光が照射されたアライメントマークの透過光を受け取って、アラインメントマークが含まれている画像を取得する。反射光取得用の光源102aまたは透過光取得用の光源102bで選択的に光を照射しながら、アライメント用カメラ31でアライメントマークを撮像する具体的な手順については、後述する。
【0047】
成膜装置11は、制御部33を具備する。制御部は、基板W/マスクMの搬送及びアライメント、蒸発源25の制御、成膜動作の制御などの機能を有する。特に、本実施形態による制御部33は、アライメント工程の際に、アライメントマークを含む画像を取得する際に、アライメントマークに光を照射する光源を選択する。
【0048】
制御部33は、例えば、プロセッサ、メモリー、ストレージ、I/Oなどを持つコンピューターによって構成可能である。この場合、制御部33の機能はメモリーまたはストレージに格納されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。コンピューターとしては、汎用のパーソナルコンピューターを使用してもよく、組込み型のコンピューターまたはPLC(programmable logic controller)を使用してもよい。または、制御部33の機能の一部または全部をASICやFPGAのような回路で構成してもよい。また、成膜装置ごとに制御部が設置されていてもよく、一つの制御部33が複数の成膜装置を制御するように構成してもよい。
【0049】
<アライメント装置>
図3は、本発明の一実施形態によるアライメント装置の構成を示す模式図である。
【0050】
図3を参照すると、本実施形態のアライメント装置100は、第1カメラと第2カメラを含むカメラ部101と、反射光取得用の光源102aと透過光取得用の光源102bを含む光源部102a、102bと、位置調整機構103とを含む。また、アライメント装置100は、反射光取得用の光源102aと透過光取得用の光源102bのうち、アライメントマークに光を照射する光源を選ぶための光源選択部104をさらに含む。
【0051】
アライメント装置100は、成膜装置11に搬入される基板Wに、成膜材料を蒸着する成膜動作を実施する前に、基板WとマスクMの相対的な位置調整を行うための装置である。基板WとマスクMの相対位置の調整は、第1のカメラ(ラフアライメント用カメラ)で撮影されたアライメントマークの画像に基づいて、基板WとマスクMの相対位置を大まかに調整するラフアライメント(第1のアライメント)工程と、第2のカメラ(ファインアライメント用カメラ)で撮影されたアライメントマークの画像に基づいて、基板WとマスクMの相対位置を高精度に調整するファインアライメント(第2のアライメント)工程を含む。
【0052】
本実施形態のアライメント装置100は、ラフアライメント(第1のアライメント)工程とファインアライメント(第2のアライメント)工程それぞれで画像を取得するときに、アライメントマークが形成された位置及びその工程で必要とされる画像の特性を考慮して、異なる光源を使用する。つまり、反射光取得用の光源102aと透過光取得用の光源102bのうち、ラフアライメント工程時に用いる光源と、ファインアライメント工程時に用いる光源が、異なっている。
【0053】
基板WとマスクMのアライメント工程のために取得する画像は、基板WとマスクMのアライメントマークの両方が画像内に照らされなければならず、アライメントの精度を高めるために、アライメントマークのコントラストが大きいほど良い。ところで、光源からの光(可視光または近赤外光)を透過する基板WとマスクMにアライメントマークが形成されても、アライメントマークからの反射光量とアライメントマークが設けられていない基板Wの部分からの反射光量との差が小さいため、高いコントラストの画像を取得することが難しい問題がある。
【0054】
より高いコントラストの画像を取得する一つの方法として、アライメントマークの透過光を利用する方法がある。基板WやマスクMが光源からの光(可視光または近赤外光)に対し透過性を有する場合に、透過光は、アライメントマークのない領域は明るく、アライメントマークのある領域は暗くなり、明暗がはっきりして高いコントラストの画像が得られ、より高解像度の画像を取得することができる。ただし、透過光を利用して画像を取得するためには、透過光取得用の光源102bからカメラ部101に至る光の経路(光路)が確保されなければならず、また、光路上に基板WとマスクMのアライメントマークが位置しなければならない。
【0055】
しかし、マスクMのアライメントマークは、マスクフレームに固定される、マスク箔の外周部に形成されている。従って、本実施形態では、透過光取得用の光源102bからの光が通過することができる貫通孔Hをマスクフレームに形成する。貫通孔Hの位置は、マスク箔Maの外周部において、マスクMのアライメントマークが設けられる位置に対応する位置である。
【0056】
図4Aおよび図4Bは、マスクフレームMbに形成される貫通孔Hの位置及び形状を模式的に示す断面図である。
【0057】
図4Aを参照すると、マスク箔Maの外周部がマスクフレームMbの上面に固定されている。そして、貫通孔Hは、マスク箔Maの法線方向に対し、傾斜して形成されている。これによれば、透過光取得用の光源102bによって貫通孔Hに沿って傾斜して照射された光は、アライメントマークが形成されているマスク箔Maの外周部を照らすことができる。そして、成膜工程中に蒸発源25から基板WやマスクMの方向に飛散する蒸着材料が、貫通孔Hの内部に蒸着されることを抑制することができる。また、基板WやマスクMに向かう蒸着材料の飛散経路の外側に透過光取得用の光源102bを置くことができるので、蒸着材料が不必要に透過光取得用の光源102bに蒸着されることを低減することができる。
【0058】
図4Bを参照すると、マスク箔Maの外周部がマスクフレームMbの上面に固定されている。そして貫通孔Hは、マスク箔Maの法線方向に平行に形成されている。これによれば、透過光取得用の光源102bによって貫通孔Hに沿って垂直方向に照射された光は、アライメントマークが形成されているマスク箔Maの外周部を照らすことができる。そして、図4Aに図示された実施形態に比べて、アライメントマークの影ができにくいので、より高いコントラストの画像を取得することができる。
【0059】
ところで、より高いコントラストを有する画像を取得するために透過光取得用の光源102bからの透過光を利用する構成においては、基板Wのアライメントマークを認識できない可能性がある。つまり、図4Aまたは図4Bに示すように、マスクフレームMbに形成された貫通孔Hが透過光の光路となるが、仮に貫通孔Hの領域内に基板Wのアライメントマークが位置していない場合には、カメラ部101で取得した画像には、基板Wのアライメントマークが写らないので、アライメントマークを正確に認識できないことがある。
【0060】
したがって、本発明の実施形態によれば、第1のカメラによってラフアライメントのための画像を取得する際には、反射光取得用の光源102aでアライメントマークを照らし、アライメントマークからの反射光を利用して、アライメントマークの画像を取得する。
【0061】
これによれば、たとえ基板Wのアライメントマークが貫通孔Hの領域内に位置していない場合にも、マスクMのアライメントマークはもちろん、基板Wのアライメントマークも含まれた画像を取得することができる。
【0062】
一方、第2のカメラによってファインアライメントのための画像を取得する際には、透過光取得用の光源102bで貫通孔Hを通してアライメントマークを照らし、アライメントマークからの透過光を利用して、アライメントマークの画像を取得する。これによれば、相対的にコントラストの高い画像を取得することができるので、アライメントの精度を向上させることができる。
【0063】
アライメント装置100のカメラ部101は、基板Wおよび/またはマスクMのアライメントマークを撮影して、これを含む画像を取得するためのものであり、ラフアライメント用カメラである第1カメラと、ファインアライメント用カメラである第2カメラを含む。カメラ部101は、真空容器21の壁に設けられている透明窓21aを介してアライメントマークを含む画像を撮影する。例えば、カメラ部101は、真空容器21の外壁に設けられた所定のマウント部材により、透明窓21aに向けるように設けられる。
【0064】
カメラ部101は、基板WまたはマスクMのアライメントマークに対し、移動可能なように取り付けられてもよい。例えば、カメラ部101は、図3に示すように、真空容器21の上側外壁に設置された、カメラ移動手段105を有するマウント部材によって、垂直(Z)方向に移動可能に取り付けられてもよい。カメラ移動手段105は、サーボモータなどで構成され、カメラ部101を垂直(Z)方向に移動させるための手段である。カメラ部101は、垂直(Z)方向だけでなく、水平(XYθ)方向にも移動可能に設置されてもよい。
【0065】
カメラ部101が移動可能に設置されると、アライメントのために、互いに近接したマスクMおよび/または基板Wの位置が、基板Wによって成膜装置11内で差がある場合でも、基板Wごとにカメラ部101の位置を調整することで、アライメントマークをより鮮明に撮影することができる。したがって、アライメント精度を高めることができる。
【0066】
光源部102a、102bは、カメラ部101でアライメントマークを撮影して画像を取得する際、アライメントマークを照らす機能を遂行する。光源部102a、102bは、図示されていない制御手段の制御に応じて設定された所定の出力で、アライメントマークに光を照射する、出力調整可能な照明手段であってもよいが、これに限定されない。例えば、光源部102a、102bは、波長350nm~3000nmの可視光および近赤外光を含む光を放射するハロゲンランプ、または波長350nm~3000nmの範囲から選択された所定範囲の波長の光を放射するLED光源であってもよい(例えば1000nm~1200nm)。
【0067】
本発明の一実施形態によれば、光源部102a、102bは、反射光取得用の光源102aと透過光取得用の光源102bとを備える。反射光取得用の光源102aによって光が照射されたアライメントマークからの反射光がカメラ部101、特に、第1のカメラに入射して、アライメントマークの画像が取得される。一方、透過光取得用の光源102bによって光が照射されたアライメントマークの透過光が、カメラ部101、特に、第2のカメラに入射して、アライメントマークの画像が取得される。
【0068】
本実施形態の一側面によれば、反射光取得用の光源102aは、マスクMを保持するマスク支持ユニット23に対し、カメラ部101と同じ方向(図3の場合には、上側方向)に設置される。例えば、反射光取得用の光源102aは、真空容器21の上側外部に設置される。透過光取得用の光源102bは、マスク支持ユニット23に対し、カメラ部101とは反対側の方向(図3の場合には、下側方向)に設置される。例えば、透過光取得用の光源102bは、真空容器21の内部であって、マスク支持ユニット23の下側に設置される。
【0069】
光源選択部104は、アライメント工程のための画像の取得時に、アライメントマークに光を照射する光源を選択する。
【0070】
前述したように、本発明の実施形態では、ラフアライメント(第1のアライメント)工程時には、反射光取得用の光源102aでアライメントマークを照らしながら、第1のカメラで撮像して画像を取得する。ファインアライメント(第2のアライメント)工程時には、透過光取得用の光源102bでアライメントマークを照らしながら、第2のカメラで撮像して画像を取得する。光源選択部104は、ラフアライメント工程時は、反射光取得用の光源102aを選択し、ファインアライメント工程時は、光源を透過光取得用の光源102bに切り替える。
【0071】
図3を参照すると、位置調整機構103は、基板WとマスクMの相対位置を調整するためのアライメントステージ機構であり、図2の成膜装置11の位置調整機構29に対応する。より具体的には、位置調整機構103は、カメラ部101で取得した画像を用いて、基板WとマスクMのX方向、Y方向及びZ軸を中心とした回転方向(θ方向)における相対位置ずれ量を算出した後、これに基づいて、基板WとマスクMを相対的に移動させて、基板WとマスクMの相対位置を調整する。本実施形態による位置調整機構103は、ラフアライメント工程時には、反射光取得用の光源102aでアライメントマークに光を照射しながら、第1のカメラで取得した画像を用いるが、ファインアライメント工程時には、透過光取得用の光源102bでアライメントマークに光を照射しながら、第2のカメラで取得した画像を用いる。
【0072】
<アライメント方法>
図5は、本発明の一実施形態によるアライメント方法を示すフローチャートである。以下、図5を参照して、基板WとマスクMの相対位置を調整(アライメント)する方法について説明する。
【0073】
まず、基板Wがアライメント装置内に搬入され、基板支持ユニット22によって支持される。このとき、マスクMは、以前の基板Wに対する成膜工程に使用されたものがマスク支持ユニット23によって支持されているか、または基板Wの搬入に先立ち、成膜装置11内に搬入されて、マスク支持ユニット23によって支持されている。
【0074】
次いで、静電チャック24を基板支持ユニット22に支持されている基板Wに向かって接近させた後(例えば、静電チャック24を基板Wに向かって下降させた後)、静電チャック24に所定の電圧を印加して、静電引力により基板Wを静電チャック24に吸着させる。そして、静電チャックアクチュエータ28及び/又はマスク支持ユニットアクチュエータ27を駆動し、静電チャック24とマスク支持ユニット23を相対的に接近させ、基板WとマスクMの相対位置が所定の計測位置になるようにする(S1)。
【0075】
そして、反射光を利用して、第1のカメラでアライメントマークが含まれた画像を取得する(S2)。反射光取得用の光源102aでアライメントマークに光を照射した状態で、第1のカメラでアライメントマークを撮像して、画像を取得する。本段階では、反射光を利用して画像を取得するので、基板WとマスクMの相対位置が大きくずれていても、基板WとマスクMのアライメントマークが画像に写るようになる。なお、基板Wのアライメントマークのみを用いて基板Wと静電チャックとを位置合わせしてラフアライメントを行ってもよい。
【0076】
そして、S2で取得した画像に基づいて、基板WとマスクMの位置を1次的に調整するラフアライメントを行う(S3)。ラフアライメント時には、基板WとマスクMのアライメントマークがすべて、ファインアライメント用カメラの視野角の範囲内に収まるように、基板WとマスクMのそれぞれの位置を大まかに調整する。そして、本実施形態によれば、ラフアライメント工程により、基板WのアライメントマークがマスクMのマスクフレームMbに形成されている貫通孔Hの領域内に入れることができる。
【0077】
続いて、ラフアライメントが完了すると、透過光を利用して、第2のカメラでアライメントマークが写った画像を取得する(S4)。透過光取得用の光源102bでアライメントマークに光を照射した状態では、第1のカメラより解像度の高い第2のカメラでアライメントマークを撮像して、画像を取得することができる。本段階では、ラフアライメント工程が完了した状態で、透過光を利用して画像を取得するので、マスクMのアライメントマークはもちろん、基板Wのアライメントマークも取得された画像内に写るようになり、より高いコントラストを有する画像を取得することが可能である。
【0078】
そして、S4で取得した画像に基づいて、基板WとマスクMの位置を2次的に調整するファインアライメントを行う(S5)。より具体的には、制御部33は、S4で取得した画像に基づいて、XYθ方向における基板WとマスクMの相対位置のずれ量を算出する。そして、算出された位置ずれ量が所定の閾値以上である場合には、算出された位置ずれ量に基づいて、XYθ方向における基板WとマスクMの相対位置を調整する。この過程は、基板WとマスクMの相対位置のずれ量が所定の閾値内に収まるまで繰り返される。本実施形態によれば、ファインアライメント工程においてより高いコントラストを有する画像を利用するので、アライメント精度を向上させることができる。
【0079】
<成膜プロセス>
以下、本実施形態によるアライメント方法を採用した成膜方法について説明する。
【0080】
真空容器21内のマスク支持ユニット23にマスクMが支持された状態で、搬送室13の搬送ロボット14によって成膜装置11の真空容器21内に基板Wが搬入される。
【0081】
真空容器21内に進入した搬送ロボット14のハンドが基板Wを基板支持ユニット22の支持部上に載置する。
【0082】
次いで、静電チャック24が基板Wに向かって下降し、基板Wに十分に近接或いは接触した後に、静電チャック24に所定の電圧を印加し、基板Wを吸着させる。そして、静電チャック24に基板Wが吸着された状態で、基板WのマスクMに対する相対的な位置ずれを計測するために、基板WとマスクMを接近させる。
【0083】
基板WとマスクMが相対位置計測位置まで接近すると、前述のアライメント方法に従って、アライメント工程を実施する。つまり、基板WとマスクMが相対位置計測位置まで接近した状態で、反射光を用いて取得した画像に基づいてラフアライメント工程を行った後、透過光を用いて取得した画像に基づいてファインアライメント工程を行う。
【0084】
本実施形態のアライメント方法によって、基板WとマスクMとの間の相対位置のずれ量が所定の閾値より小さくなると、蒸発源25のシャッタを開け、蒸着材料をマスクMを介して基板Wに蒸着させる。
【0085】
所望の厚さに蒸着した後、マスクMを分離し、静電チャック24に基板のみが吸着した状態で、静電チャックアクチュエータ28により、基板を上昇させる。
【0086】
次いで、搬送ロボット14のハンドが成膜装置11の真空容器21内に進入し、静電チャック24の電極部或いはサブ電極部にゼロ(0)または逆極性の電圧が印加され、基板Wを静電チャック24から分離する。分離された基板を搬送ロボット14によって真空容器21から搬出する。
【0087】
なお、上述の説明では、成膜装置11は、基板Wの成膜面が鉛直方向下方を向いた状態で成膜が行われる、いわゆる上向蒸着方式(デポアップ)の構成としたが、これに限定はされず、基板Wが真空容器21の側面側に垂直に立てられた状態で配置され、基板Wの成膜面が重力方向と平行な状態で成膜が行われる構成であってもよい。
【0088】
<電子デバイスの製造方法>
次に、本実施形態の成膜装置を用いた電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。
【0089】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。図6(a)は有機EL表示装置60の全体図、図6(b)は1画素の断面構造を表している。
【0090】
図6(a)に示すように、有機EL表示装置60の表示領域61には、発光素子を複数備える画素62がマトリクス状に複数配置されている。発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域61において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本実施例にかかる有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子62R、第2発光素子62G、第3発光素子62Bの組合せにより画素62が構成されている。画素62は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組合せで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0091】
図6(b)は、図6(a)のA-B線における部分断面模式図である。画素62は、基板63上に、陽極64と、正孔輸送層65と、発光層66R、66G、66Bのいずれかと、電子輸送層67と、陰極68と、を備える有機EL素子を有している。これらのうち、正孔輸送層65、発光層66R、66G、66B、電子輸送層67が有機層に当たる。また、本実施形態では、発光層66Rは赤色を発する有機EL層、発光層66Gは緑色を発する有機EL層、発光層66Bは青色を発する有機EL層である。発光層66R、66G、66Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。また、陽極64は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層65と電子輸送層67と陰極68は、複数の発光素子62R、62G、62Bに対して共通に形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、陽極64と陰極68とが異物によってショートするのを防ぐために、陽極64間に絶縁層69が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層70が設けられている。
【0092】
図6(b)では正孔輸送層65や電子輸送層67が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を含む複数の層で形成されてもよい。また、陽極64と正孔輸送層65との間には陽極64から正孔輸送層65への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成することもできる。同様に、陰極68と電子輸送層67の間にも電子注入層が形成されことができる。
【0093】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。
【0094】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)および陽極64が形成された基板63を準備する。
【0095】
陽極64が形成された基板63の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、陽極64が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層69を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0096】
絶縁層69がパターニングされた基板63を第1の有機材料成膜装置に搬入し、静電チャックにて基板を保持し、正孔輸送層65を、表示領域の陽極64の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層65は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層65は表示領域61よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。
【0097】
次に、正孔輸送層65までが形成された基板63を第2の有機材料成膜装置に搬入し、静電チャックにて保持する。基板とマスクとのアライメントを行い、静電チャック24に基板を介してマスクを吸着させた後、赤色を発する発光層66Rを成膜する。
【0098】
発光層66Rの成膜と同様に、第3の有機材料成膜装置により緑色を発する発光層66Gを成膜し、さらに第4の有機材料成膜装置により青色を発する発光層66Bを成膜する。発光層66R、66G、66Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域61の全体に電子輸送層67を成膜する。電子輸送層67は、3色の発光層66R、66G、66Bに共通の層として形成される。
【0099】
電子輸送層67まで形成された基板を金属性蒸着材料成膜装置で移動させて陰極68を成膜する。
【0100】
本発明によると、ラフアライメント工程では、反射光取得用の光源によってアライメントマークを照らしながらラフアライメント用カメラでアライメントマークの画像を取得して、基板WとマスクMの相対位置を調整する。また、ファインアライメント工程では、透過光取得用の光源によってアライメントマークを照らしながら、ファインアライメント用カメラでアライメントマークの画像を取得して、基板WとマスクMの相対位置を調整する。これによりアライメント工程の精度を向上させることができる。
【0101】
絶縁層69がパターニングされた基板63を成膜装置に搬入してから保護層70の成膜が完了するまでは、水分や酸素を多く含む雰囲気にさらしてしまうと、電極が酸化したり有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化したりしてしまうおそれがある。従って、本例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【0102】
前記実施例は本発明の一例を現わしたことで、本発明は前記実施例の構成に限定されないし、その技術思想の範囲内で適切に変形しても良い。
【符号の説明】
【0103】
22:基板支持ユニット、23:マスク支持ユニット、24:静電チャック、29:位置調整機構、31:アライメント用カメラ、33:制御部、101:カメラ部、102a:反射光取得用の光源、102b:透過光取得用の光源、103:位置調整機構、104:光源選択部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7