(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/54 20100101AFI20220601BHJP
H01L 33/48 20100101ALI20220601BHJP
【FI】
H01L33/54
H01L33/48
(21)【出願番号】P 2018067211
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【氏名又は名称】梶谷 美道
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【氏名又は名称】三宅 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100184985
【氏名又は名称】田中 悠
(72)【発明者】
【氏名】市原 良男
(72)【発明者】
【氏名】磯野 允宏
【審査官】小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-216369(JP,A)
【文献】特開2011-199219(JP,A)
【文献】特表2006-516816(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0241028(US,A1)
【文献】特開2011-176247(JP,A)
【文献】特開2008-041917(JP,A)
【文献】特開2010-206039(JP,A)
【文献】特開2009-111352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/54
H01L 33/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と前記上面に位置する開口を備えた凹部とを有するパッケージと、
前記凹部の底面に配置された発光素子と、
前記凹部内に充填された透光性の封止部材と、
を備え、
前記パッケージは、前記上面において前記開口を囲む溝を有し、
前記溝内の表面は凹凸を有し、
前記封止部材
の一部は、前記溝内の表面の凹凸における凹部を覆い、かつ、凸部を露出させている、発光装置。
【請求項2】
前記溝内の表面の表面粗さは、0.4μm以上1.0μm以下である、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記溝内を被覆する前記封止部材は、前記溝内の表面の凹凸に起因する凹凸を表面に有する請求項1
または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記パッケージは、前記上面に凹凸を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記溝の側面部分の上部は、断面視において、前記溝内に向かって凸の曲線形状を有している、請求項1から4のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記溝の底面部分は断面視でU字形状を有する請求項1から
5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記溝の側面は
、前記パッケージの前記開口を備えた前記凹部の側面と連続しており、
断面視において、前記溝の側面部分が、前記開口との接続点において鉛直方向となす角度は、80°以下である、請求項1から6のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記溝内の
表面の表面粗さと前記上面の表面粗さは略等しい、請求項1から7のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記上面の表面粗さは、0.4μm以上1.0μm以下である、請求項1から8のいずれか一項に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光装置が画素としてマトリクス状に配置された大型の表示装置や発光装置が複数配置された信号機等は、屋外で使用される場合がある。このような表示装置では、外光等が発光装置の発光面に入射すると、発光領域の周囲において外光が反射することによって、間接グレアが発生したり、表示コントラストが低下したりするという課題が生じる。例えば、パッケージの凹部に発光素子が配置された発光装置において、凹部に充填する封止部材が凹部の外側にも配置されると、凹部の外側に配置された封止部材で外光の反射が生じ、表示コントラストが低下し得る。
【0003】
このような課題を解決するため、例えば、特許文献1は、パッケージの凹部の周囲にはみ出した封止部材を覆うように、暗色系の層を配置することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願の限定的ではないある例示的な一実施形態は、簡単な構造によって、外光の反射による間接グレアや表示コントラストの低下を抑制し得る発光装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の発光装置は、上面と前記上面に位置する開口を備えた凹部とを有するパッケージと、前記凹部の底面に配置された発光素子と、前記凹部内に充填された透光性の封止部材とを備え、前記パッケージは、前記上面において前記開口を囲む溝を有し、前記溝内の表面は凹凸を有し、前記封止部材は前記溝内の表面の少なくとも一部を被覆し、前記溝内を被覆する前記封止部材は表面に凹凸を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の発光装置によれば、外光の反射による間接グレアや表示コントラストの低下を抑制し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、発光装置の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、封止部材を取り除いた発光装置の平面図である。
【
図3】
図3は、
図2におけるA-A線における発光装置の断面図である。
【
図5】
図5は、溝の表面の凹凸を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本開示の発光装置の実施形態を説明する。以下に説明する発光装置は、実施形態の一例であって、以下に説明する発光装置において種々の改変が可能である。図面が示す構成要素の寸法、形状等は、わかり易さのために誇張されている場合があり、実際の発光装置および製造装置における寸法、形状、および、構成要素間の大小関係を反映していない場合がある。また、図面が過度に複雑になることを避けるために、一部の要素の図示を省略することがある。
【0010】
以下の説明において、実質的に同じ機能を有する構成要素は共通の参照符号で示し、説明を省略することがある。以下の説明では、特定の方向または位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」およびそれらの用語を含む別の用語)を用いる場合がある。しかしながら、それらの用語は、参照した図面における相対的な方向または位置をわかり易さのために用いているに過ぎない。参照した図面における「上」、「下」等の用語による相対的な方向または位置の関係が同一であれば、本開示以外の図面、実際の製品、製造装置等において、参照した図面と同一の配置でなくてもよい。
【0011】
本開示の発光装置は、上面と上面に位置する開口を備えた凹部とを有するパッケージと、凹部の底面に配置された発光素子と、凹部内に充填された透光性の封止部材と、を備える。パッケージは、上面において開口を囲む溝を有する。溝内の表面は凹凸を有し、封止部材は溝内の表面の少なくとも一部を被覆し、溝内を被覆する前記封止部材は表面に凹凸を有する。
【0012】
図1は、本開示の発光装置101の斜視図であり、
図2は、発光装置から封止部材を取り除き、発光素子を露出させた平面図である。また、
図3は、
図2におけるA-A断面を示している。
【0013】
発光装置101は、パッケージ10と、発光素子21、22、23と、封止部材30とを備える。以下、各構成要素を詳細に説明する。
【0014】
パッケージ10は、発光素子21、22、23を収納する筐体として機能する。パッケージ10は、上面10aおよび下面10bと、上面10aに位置する開口11aを備えた凹部11とを有する。本実施形態では、上面10aは、角が丸められた略矩形形状を有し、パッケージ10は、上面10aの矩形の4つの辺に対応する4つの側部10c、10d、10e、10fを有する。また、パッケージは、上面10aにおいて開口11aを囲む溝12を有する。
【0015】
開口11aの平面視形状は、略円形、角が丸められた略矩形形状等が挙げられ、溝12は、開口11aに沿って、パッケージの上面10aに設けられている。溝12は開口11aを囲む溝であってもよいし、開口11aに沿って部分的に設けられた溝でもよい。なかでも、溝12の平面視形状は、開口11aの外縁に沿って開口11aを囲む枠状とすることが好ましい。
【0016】
溝12の深さは、パッケージ10の大きさにもよるが、例えば50~150μm程度が挙げられる。平面視における溝の幅は、例えば100~300μm程度が挙げられる。平面視において、溝12と開口11aとの距離は近いほど好ましく、溝12は開口11aに接して設けられることがより好ましい。つまり、平面視において、溝12と開口11aとは境界を共有することが好ましい。
【0017】
パッケージ10は、本実施形態では、基体13およびリード端子14A、14B、14C、14D、14E、14Fを含む。基体13は、パッケージ10の主要部分であり、上述した上面10a、下面10b、開口11aを備えた凹部11を構成している。
【0018】
凹部11は、底面11bを有しており、底面11bに発光素子21、22、23が配置される。凹部11は、開口11aおよび底面11bをそれぞれ上面および下面とする略逆円錐台形状を有し、内側面11c~11fを有する。内側面11c~11fは、発光素子21、22、23から出射する光を反射及び/又は遮光する面として機能する。
【0019】
基体13は、樹脂などの絶縁性材料によって形成される。また、発光素子21、22、23からの光および外光が透過しにくい材料によって形成されていることが好ましい。特に基体の外表面は太陽光等の外光に対して光反射率の低い部材を用いることが好ましく、黒色または濃い色であることが好ましい。また、基体13は、パッケージ10として構造を維持する主要部分であるため、所定の強度を有することが好ましい。基体13は、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等によって形成される。より具体的には、基体13は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ガラスエポキシ樹脂、BTレジンや、PPAなどによって形成される。また、基体13は、凹部11の内側面11c~11fにおいて、発光素子からの光を反射する材料によって形成されていてもよい。つまり、内側面11c~11fに、基体の外表面を構成する材料よりも、発光素子の光に対して反射率が高い別の部材を用いてもよい。これによって、発光装置101の光取り出し効率を向上させることが可能である。
【0020】
リード端子14A、14B、14C、14D、14E、14Fは、発光素子21、22、23をパッケージ10の外部の配線などと電気的に接続するための端子として機能する。リード端子14A、14B、14C、14D、14E、14Fはそれぞれ一部が基体13の凹部11の底面11bで露出している。また、リード端子14A、14B、14C、14D、14E、14Fの他の一部は、側部10e、10fおよび下面10bにおいて露出しており、リード端子14A、14B、14C、14D、14E、14Fの残りの部分は基体13内に埋設されている。
【0021】
リード端子14A、14B、14C、14D、14E、14Fの形状に特に制限はなく、少なくとも上述したように、各リード端子の一部が凹部11の底面11bに露出し、他の一部が、パッケージ10の下面10bに露出、または、
図3に示すように、側面から露出した各リード端子の他の一部はパッケージの外面に沿って折り曲げられて下面側に配置していればよい。この構造によって、凹部11内に配置される発光素子21、22、23がパッケージ10の外部と電気的に接続可能となる。
【0022】
リード端子14A、14B、14C、14D、14E、14Fの材料には、熱伝導率の比較的大きな材料を用いることが好ましい。このような材料で各リード端子を形成することにより、発光素子21、22、23で発生する熱を効率的にパッケージ10の外部へ逃すことができる。例えば、200W/(m・K)程度以上の熱伝導率を有しているものが好ましい。さらに、比較的大きい機械的強度を有するものが好ましい。例えばアルミニウム、鉄、ニッケル、銅、これらを含む合金などの金属板を、打ち抜き等のプレス加工またはエッチング加工等により所望の形状に加工したものを用いることができる。さらに、リード端子14A、14B、14C、14D、14E、14Fは、表面が金属膜で被膜されていることが好ましく、金属膜としては、例えば、Ag、Ag合金、Au、Au合金などが好適に利用できる。また、金属膜の下地層として、Niを含む層を有することが好ましく、下地層としては、Ni/Pd、又はNi/Au、又はNi/Pd/Auなどを含む層が挙げられる。金属膜の形成方法としては、例えばめっき処理が挙げられる。リード端子がこのような金属膜を有することにより、光反射性及び/又は後述する金属ワイヤ等との接合性を高めることができる。リード端子の厚みは、例えば110~250μmである。また、リード端子は、上記加工等により部分的にその厚みが異なっていてもよい。
【0023】
発光素子21、22、23は、半導体レーザー、発光ダイオード等の半導体発光素子である。発光素子21、22、23の発光波長は任意に選択し得る。例えば、青色、緑色の発光素子としては、ZnSeや窒化物系半導体(InXAlYGa1-X-YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)を用いた発光素子を用いることができる。また、赤色の発光素子としては、GaAs、AlInGaP、AlGaAs系の半導体などを用いることができる。さらに、これ以外の材料からなる半導体発光素子を用いることもできる。用いる発光素子の組成や発光色、大きさや、個数などは目的に応じて適宜選択することができる。また、可視光領域の光だけでなく、紫外線や赤外線を出力する発光素子とすることができる。さらには、半導体発光素子とともに、受光素子などを搭載することができる。また、半導体発光素子の周囲に半導体発光素子の発光を波長変換する蛍光体を配置して、任意の発光を得ることができる。例えば、青色発光の半導体発光素子と黄色発光の蛍光体を組み合わせて、白色を得ることができる。発光装置101が、例えばカラー表示に用いられる場合には、発光素子21、22、23は、それぞれ、赤色、青色、緑色の光を出射してもよい。発光素子の数および発光色の組み合わせは一例であって、この例に限られない。
【0024】
本実施形態では、発光素子21、22、23は、凹部11の底面11bに露出したリード端子14F上に配置される。発光素子21および22の正負一対の電極は、凹部11の底面11bに露出したリード端子14A、14Dと金属ワイヤ15によって電気的に接続されている。発光素子23の正負一方の電極は発光素子23の裏面側に配置されており半田、導電性ペースト等によって凹部11の底面11bに露出したリード端子14Fと電気的に接続されている。また、発光素子23の正負他方の電極は、凹部11の底面11bに露出したリード端子14Cと金属ワイヤ15によって電気的に接続されている。
【0025】
封止部材30は、凹部11内に配置された、発光素子21、22、23、金属ワイヤ15等を水分、外力、塵芥から保護する。封止部材30は、凹部11内に充填されており、上述した発光素子21、22、23および金属ワイヤ15を凹部11内で被覆する。また、以下において詳細に説明するように、封止部材30の一部は、パッケージ10の上面10aに設けられた溝12内の表面の少なくとも一部を被覆している。
【0026】
封止部材30は、発光素子21、22、23から出射する光を透過させる透光性を有することが好ましい。具体的には、封止部材30は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の材料によって形成されていることが好ましい。封止部材30は、充填剤として、光反射性物質、蛍光物質等の粒子を含んでいてもよい。例えば、封止部材30は、光反射性物質の粒子を含んでいてもよい。封止部材30に含めることのできる粒子は、球形状を有していてもよいし、破砕形状を有していてもよい。また封止部材30は、透光性が損なわれない程度に、光吸収性物質を含んでいてもよい。封止部材30に適量の光吸収性物質を含有させることで、凹部内に露出するリード端子の表面などでの正反射光の光取り出し面からの出射を抑制することができる。これによって、発光装置からの出射光の配光特性を改善することができる。
【0027】
封止部材30に含まれる充填剤の粒子が球形状を有する場合、球形の粒子は、封止部材30の未硬化の材料中で沈降しやすい。このため、封止部材30の表面に粒子の形状に対応した凸部が形成されにくく、発光素子21、22、23からの光は、封止部材30の表面近傍で散乱されずに外部へ出射しやすい。このため、封止部材30からの光の取り出し効率を向上させることができる。しかし、封止部材30の表面が平滑であることによって、外光を封止部材30の表面で反射し、いわゆる「ギラツキ」が発生し易い。
【0028】
一方、封止部材30に含まれる充填剤の粒子が破砕形状を有する場合、同程度の大きさの球形形状の粒子より大きな表面積を有するため、封止部材30の未硬化の材料中での沈降が抑制される。その結果、粒子を封止部材30の表面近傍に配置することが可能となり、封止部材30の表面に粒子の形状を反映した凹凸が形成されやすくなる。これにより、封止部材30は、表面において外光の反射を散乱させ、外光の照り返しによるコントラストの低下を低減できる。つまり、外光の反射によるコントラストの低下を抑制するためには、封止部材30は、破砕形状の粒子を含むことが好ましい。
【0029】
また、凹部11内に破砕形状の粒子を含む封止部材30を配置し、封止部材30の表面に暗色系の層を配置してもよい。これにより、暗色系の層の表面に、破砕形状の粒子の形状を反映した凹凸を形成し、さらに外光の照り返しを抑制でき、コントラストの低下を低減できる。
【0030】
封止部材30における充填剤の濃度は、20体積%より大きいことが好ましい。これにより、封止部材30の表面近傍に充填剤を滞留させ、粒子の形状に沿った凹凸を封止部材30の表面に形成することができる。一方、充填剤の濃度を大きくすると封止部材30から光が取り出されにくくなり、光度の低下や配光の偏りが生じ得る。このため、充填剤の濃度は60体積%以下が好ましく、さらに好ましくは40%体積以下である、30%体積以下であることがさらに好ましい。充填剤の粒子の大きさは、例えば0.5~10μm程度であってよい。
【0031】
充填剤の材料には、公知の材料を用いることができる。例えば、光反射性物質としては、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、酸化アルミニウムなどが挙げられる。蛍光物質としては、発光素子の出射光の波長、得ようとする光の色などを考慮して選択することができる。具体的には、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)、セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット(LAG)、ユウロピウム及び/又はクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム(CASN)などが挙げられる。蛍光体は、複数の種類の蛍光体を組み合わせて用いてもよい。例えば、発光色の異なる蛍光体を所望の色調に適した組み合わせや配合比で用いて、演色性や色再現性を調整することもできる。また、光吸収性物質としては、例えばカーボンブラックやグラファイトなどの黒色顔料を用いることもできる。このような充填剤を封止部材中に分散させることで、発光装置の色むら改善、表示コントラストの低下抑制等が実現できる。
【0032】
次に、発光装置101における溝12の構造を詳細に説明する。
図4は、パッケージ10の上面10aに設けられた溝12の断面を拡大して示す。溝12は、表面12aに凹凸を有しており、封止部材30は溝12内の表面12aの少なくとも一部を被覆している。より具体的には、封止部材30は、溝12内の表面12aが有する凹凸の、少なくとも凹部の一部を被覆している。
【0033】
図5は、溝12の表面12aに設けられた凹凸16を模式的に示す斜視図である。凹凸16の凸部16cと凸部16cとの間に形成される凹部16dに封止部材30が位置している。
図5に示すように、好ましくは、封止部材30は、凸部16c上には配置されていない。つまり、溝12内に配置される封止部材30は、表面の凹凸16に起因して凹部16dに選択的に配置された凹凸を有している。つまり、封止部材30は、溝12の表面12aの一部である、凹部16dを被覆しており、凸部16cの一部(少なくとも凸部16cの頂部)は封止部材30から露出している。
【0034】
発光装置101の製造において、封止部材30を構成する未硬化の樹脂材料をパッケージ10の凹部11内に配置する場合、封止部材30の材料が、凹部11の開口11aから溢れると、上面10aに未硬化の樹脂材料が配置されてしまう。この樹脂材料が硬化することによって、上面10aの開口11aの周囲に封止部材30が配置され、外光が反射しやすい領域が形成されてしまう。特に、開口11aの周囲に封止部材30が厚く配置されると、封止部材30の表面が平坦面となりやすく、外光が反射しやすくなる。
【0035】
これに対し、本実施形態の発光装置101は開口11aの周囲に、凹凸16が設けられた表面12aを有する溝12が形成されている。このため、開口11aから溢れた樹脂材料は、溝12に流れ伝わる。溝12の表面12aには凹凸16が形成されており、凸部16cと凸部cの間の凹部16dは狭い流路を形成しており、流体が凹部16dを伝って広がりやすい。よって、溝12内に溢れた封止部材30の材料は、凸部16cは被覆せずに、凹部16dを伝って凹凸16内に広がる。樹脂材料が硬化することによって形成される開口11aの周囲に位置する封止部材30は、溝12の表面12aの凹凸16に起因した凹凸16を有しており、外光を拡散して反射しやすい。その結果、凹部11の外側に封止部材30が配置されても、外光の照り返しによるコントラストの低下を低減することができる。また、このような凹凸16を表面に有する溝12は、パッケージ10を形成する際に、インサート成形などによって、パッケージ10の基体13の成形と同時に一体的に形成できる。したがって、比較的簡単構造および簡単な製造方法によって上述した効果を奏し得る発光装置を得ることが可能である。
【0036】
開口11aの周囲に封止部材30を構成する未硬化の樹脂材料が厚く配置されると、硬化によって表面が滑らかになり、外光を反射しやすくなる。このため、開口11aの周囲に溢れた封止部材30の材料は、溝12内をできるだけ薄く広がる方が、溝の表面の凹凸を反映し、外光を散乱させやすい。このため、溝12は溢れた封止部材30の材料を薄く広げる構造を有していることが好ましい。具体的には、溝12は、断面視、つまり、溝12の伸びる方向を横切る断面において、底面部分12Aと、底面部分12Aを挟む側面部分12B、12Cを有する。底面部分12AはU字形状を有しており、平な部分を有していないことが好ましい。底面部分12Aが平らではなく、断面視において曲線で構成されることによって、封止部材30の材料が底面部分で厚く溜まることがなく、広がりやすくなる。
【0037】
また、凹部11の開口11aから溢れた封止部材30の材料が溝12へ広がりやすいように、溝12は構成されていることが好ましい。具体的には、開口11aとの接続点における側面部分12Cの鉛直方向(例えば本実施形態においては凹部の底面に垂直な方向)とのなす角度αは80°以下であることが好ましい。溝12の側面部分12Cが開口11aにおいて傾斜を有していることによって、凹部11の開口11aを超えて溢れた封止部材30の材料は、開口11aの外側近傍に滞留せず溝12内へ導かれやすい。
【0038】
また、断面視において、側面部分12B、12Cの上部は、溝12内に向かって凸の曲線形状を有していることが好ましい。さらに、断面視において、側面部分12B、12Cの内、凹部11により近接する側面部分12Cは、凹部11の開口11aと曲線でつながっていることが好ましい。さらに溝12の側面部分12Bと開口11aとが接する角度を鋭角とすることが好ましい。この形状によって、溝12に流入した封止部材30の材料の流れの勢いを抑制することができ、開口11aを超えて多量に封止部材30を構成する未硬化の樹脂材料が溝12の底面部分12Aに溜まってしまうのを抑制することができる。
【0039】
溝12の表面12aの表面粗さは、例えば、0.4μm以上1.0μm以下であることが好ましい。この表面粗さは、算術平均高さSaで表される。この範囲の表面粗さを有することによって、封止部材30の材料が凹部16dを伝いやすいサイズとなり、封止部材30が凹部16dから溢れて凸部16cを被覆することを抑制できる。これにより、硬化した封止部材30は外光を散乱させ、外光の照り返しに起因するコントラストの低下を低減できる。
【0040】
好ましくは、上面10aの溝12以外の領域も凹凸を有していることが好ましい。これにより、溝12の外側の上面10aでも外光を散乱させ、外光の照り返しによるコントラストの低下を低減できる。例えば、上面10aの凹凸の表面粗さは、溝12の表面の表面粗さと同じであってもよい。このような形状を有するパッケージ10は、例えば、溝12を有する上面10aに対応する面が0.4μm以上1.0μm以下の表面粗さを有する金型を用いたインサート成形によって好適に形成することが可能である。
【0041】
このように本実施形態によれば、パッケージ上面において、表面に凹凸が設けられた溝が、凹部を囲んでいることによって、開口から溢れた封止部材30の材料が厚く形成され、外光を反射する封止部材30が開口の周囲に配置されるのを抑制することができる。よって、外光の反射による間接グレアや表示コントラストの低下を抑制し得る発光装置をえることが可能となる。
【0042】
なお上記実施形態において、溝12は開口11aの周囲を連続して覆っていたが、溝12は1または複数個所において、分断されていてもよい。この場合分断される部分は短いほうが好ましい。
【0043】
また、上記実施形態では、上面10aに1つの溝12が設けられていたが、複数の溝12は複数設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本開示の発光装置は種々の用途の発光装置に好適に使用され得る。特に、屋外で使用される大型の表示装置や信号機等に好適に使用される。
【符号の説明】
【0045】
10 パッケージ
10a 上面
10b 下面
10c~10f 側部
11 凹部
11a 開口
11b 底面
11c~11f 内側面
12 溝
12A 底面部分
12B、12C 側面部分
12a 表面
13 基体
14A~14F リード端子
15 金属ワイヤ
16 凹凸
16c 凸部
16d 凹部
21~23 発光素子
30 封止部材
101 発光装置