(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】タクシーの配車を支援するための方法およびそれを用いたタクシー配車支援システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/123 20060101AFI20220601BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20220601BHJP
G06Q 50/30 20120101ALI20220601BHJP
【FI】
G08G1/123 A
G08G1/09 F
G06Q50/30
(21)【出願番号】P 2017219882
(22)【出願日】2017-11-15
【審査請求日】2020-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】517400063
【氏名又は名称】リンクスウェア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【氏名又は名称】中道 佳博
(72)【発明者】
【氏名】岡本 明義
(72)【発明者】
【氏名】潮 俊光
【審査官】菅家 裕輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-207504(JP,A)
【文献】特開2001-222656(JP,A)
【文献】特開2011-135745(JP,A)
【文献】特開2014-195343(JP,A)
【文献】特開2004-310335(JP,A)
【文献】広本将基 他,モデル予測制御によるタクシーの最適配車問題の定式化,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人 電子情報通信学会,2017年01月19日,Vol.116 No.426,Page 113-116
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G06Q10/00-99/00
G16Z99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タクシーの配車を支援するための方法であって、
(a)所定の営業地域内に存在する複数のタクシーからの個々の走行情報を管理サーバユニットにて受信する工程;
(b)該管理サーバユニット内で、外部環境情報を用いて該営業地域におけるタクシー利用者の需要予測情報を作成する工程;
(c)該管理サーバユニット内で、該需要予測情報および該個々の走行情報に基づいてダイナミカルシステムを用いた最適化計算を行うことにより、最適化需要予測情報を作成する工程;
(d)該最適化需要予測情報を、該営業地域内に存在する該複数のタクシーに取り付けられた車載ユニットに送信する工程;
(e)該営業地域における該複数のタクシーが、該車載ユニットを介して該個々の走行情報を他のタクシー走行情報として互いに送受信する工程;ならびに
(f)該複数のタクシーが、該車載ユニットにおいて、該最適化需要予測情報および該他のタクシー走行情報に基づいて該個々の走行情報をアップデートする工程;
を包含し、
該(b)工程で作成される該需要予測情報が、
(b1)該複数のタクシーからの該個々の走行情報と、該外部環境情報とを該管理サーバユニットから上位管理サーバユニットに送信し、
(b2)該上位管理サーバユニットにおいて、該外部環境情報、1つまたは複数の他の営業地域より得られた他の外部環境情報、および上位外部環境情報を用いて、該営業地域と、該営業地域から離れた該1つまたは複数の他の営業地域との結合領域における結合領域需要予測情報を作成し、
(b3)該結合領域需要予測情報、該複数のタクシーからの該個々の走行情報、および該1つまたは複数の他の営業地域より得られた他の複数のタクシーからの他の個々の走行情報に基づいて該ダイナミカルシステムを用いた最適化計算を行って、上位最適化需要予測情報を作成し、そして
(b4)該上位最適化需要予測情報を該上位管理サーバユニットから該管理サーバユニットに送信することにより、得られた情報であ
り、
該外部環境情報が、該営業地域に存在する稼働タクシーの総数、該営業地域に存在するタクシーの空車率、年月日、曜日、時刻、該営業地域内の過去の乗車実績情報、天候、交通情報、公共交通機関の運行情報、および該営業地域におけるイベント情報からなる群から選択される少なくとも1つの情報であり、そして
該上位外部環境情報が、該営業地域以外の地域における公共交通機関の運行に連動して予想される該営業地域の運行情報、該営業地域以外の地域における天候情報、該営業地域以外の地域におけるイベント情報、および該営業地域以外の地域における交通情報からなる群から選択される少なくとも1つの情報である、方法。
【請求項2】
前記個々の走行情報が、タクシーの位置情報、走行速度、走行方位、および乗車または空車情報からなる群から選択される少なくとも1つの情報である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記(c)工程で作成される前記最適化需要予測情報が、所定時間における、
前記営業地域から複数に分割された領域セルのうちの1つの領域セル内に存在する空車タクシーの数と、
該1つの領域セル内に存在する実車タクシーの数と
該1つの領域セル内において所定時間内に空車となるタクシー数と、
該1つの領域セルから隣接する他の領域セルに移動するタクシー数と、
該隣接する他の領域セルから該1つの領域セルに移動するタクシー数と、
該1つの領域セル内に存在する、タクシー1台毎を単位とする実績タクシー利用者数と
から算出される情報である、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
所定の営業地域に存在する複数のタクシーの配車を支援するためのシステムであって、
管理サーバユニット、
該複数のタクシーのそれぞれに取り付けられた車載ユニット、および
上位管理サーバユニット、
を備え、
該管理サーバユニットが:
所定の営業地域に存在する複数のタクシーからの個々の走行情報を受信し、かつ該複数のタクシーに対して最適化需要予測情報を送信する、支援側通信モジュール;
該営業地域に関連する外部環境情報を記憶する、データベース手段;ならびに
該外部環境情報を用いて該営業地域におけるタクシー利用者の需要予測情報を作成し、かつ該需要予測情報および該複数のタクシーの該個々の走行情報に基づいてダイナミカルシステムを用いた最適化計算により最適化需要予測情報を作成する、計算手段;
を備え、
該車載ユニットが:
該管理サーバユニットおよび該複数のタクシーに対して自らの走行情報を該個々の走行情報として送信し、そして該管理サーバユニットから該最適化需要予測情報を受信し、そして該複数のタクシーからの該個々の走行情報のうち、他のタクシーからの該個々の走行情報を受信する、車載通信モジュール;
該最適化需要予測情報および該他のタクシーからの該個々の走行情報を記憶する、車載データベース手段;
該最適化需要予測情報および該他のタクシーからの該個々の走行情報に基づいて該自らの走行情報をアップデートする、走行情報更新手段;ならびに
該最適化需要予測情報、該他のタクシーからの該個々の走行情報および該自らの走行情報を表示する、ディスプレイ;
を備え、
該上位管理サーバユニットが:
該管理サーバユニットより、該営業地域に存在する該複数のタクシーからの該個々の走行情報と該外部環境情報とを受信し、かつ該管理サーバユニットに対して、上位最適化需要予測情報を該最適化需要予測情報として送信する、上位支援側通信モジュール;
該営業地域と1つまたは複数の他の営業地域との結合領域における外部情報によって書換可能な上位外部環境情報を記憶する、上位データベース手段;ならびに
該外部環境情報、1つまたは複数の他の営業地域より得られた他の外部環境情報、および該上位外部環境情報を用いて、該結合領域における結合領域需要予測情報を作成し、かつ該結合領域需要予測情報、該複数のタクシーからの該個々の走行情報、および該1つまたは複数の他の営業地域より得られた他の複数のタクシーからの他の個々の走行情報に基づいてダイナミカルシステムを用いた最適化計算を行って、該上位最適化需要予測情報を作成する、上位計算手段;
を備え
、
該外部環境情報が、該営業地域に存在する稼働タクシーの総数、該営業地域に存在するタクシーの空車率、年月日、曜日、時刻、該営業地域内の過去の乗車実績情報、天候、交通情報、公共交通機関の運行情報、および該営業地域におけるイベント情報からなる群から選択される少なくとも1つの情報であり、そして
該上位外部環境情報が、該営業地域以外の地域における公共交通機関の運行に連動して予想される該営業地域の運行情報、該営業地域以外の地域における天候情報、該営業地域以外の地域におけるイベント情報、および該営業地域以外の地域における交通情報からなる群から選択される少なくとも1つの情報である、システム。
【請求項5】
前記個々の走行情報が、タクシーの位置情報、走行速度、走行方位、および乗車または空車情報からなる群から選択される少なくとも1つの情報である、請求項
4に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タクシーの配車を支援するための方法およびそれを用いたタクシー配車支援システムに関し、より詳細には、予め設定された地域の需要を予測して、タクシーを適切に配車することができる、タクシーの配車を支援するための方法およびそれを用いたタクシー配車支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
タクシーは、鉄道や航空機と比較して大規模なインフラ設備を必要とせず、かつ移動距離を問わず、利用者が目的地を自由に設定することができる。現代社会において、タクシーは我が国を含め世界中にとって重要な交通移動手段の1つである。
【0003】
このようなタクシーを用いた利用者の輸送事業には、例えば、我が国においては「付け待ち」、「無線配車」、「流し」など呼ばれる複数の営業手法が存在する。
【0004】
特に「流しのタクシー」は、乗務員が予め設定された地域(営業地域または営業区画とも言う)内を走行して移動しながら利用者を探す営業手法を言う。しかし、従来の「流しのタクシー」による営業手法では、1日の1台当たりの利用者の乗車数は乗務員の経験および勘に左右され易いことが指摘されている。このため、多くのタクシー乗務員とっては、利用者の乗車数を増加させるために、より長時間にわたる「流し」が必要になることもある。
【0005】
一方、長時間の「流し」に伴って、走行のための燃料の増加や、それに伴う排出CO2による環境への悪影響、車両自体の走行劣化、長時間勤務による乗務員への身体的負荷等も無視することができない。このため、タクシー乗務員およびタクシー事業者(例えば、タクシー事業を行う企業体)にとっては、より効率的な利用者の獲得が所望されている。
【0006】
さらに、スポーツ競技大会、コンサート、祭り、花火大会などの大規模なイベントが行われた際の会場周辺、あるいは災害、事故等によって鉄道、バス、航空機等の交通機関の遅延や運行中止があった駅、停留所、空港等の周辺では、一時的にタクシーの需要が高まることがある。営業地域におけるこのような需要に関する情報を早期に取得することができれば、タクシーによる利用者獲得の効率は一層高まるとも考えられている。
【0007】
このようなタクシーによる利用者獲得の効率性を高めるために、タクシーの需要予測を行うための種々の技術が提案されている。
【0008】
例えば、特許文献1は、時間帯とその時間帯における地域毎の人口の増減を記憶する記憶手段と、車両配車時の時間帯における地域毎の人口の増減に基づいて車両配車の需要を予測する需要予測手段とを備える需要予測装置を開示する。
【0009】
しかし、特許文献1に記載の需要予測装置は、タクシー車両毎に配置される。このため、同一営業地域内に、当該需要予測装置を搭載した複数のタクシーが存在すると、需要予測に基づいて特定の場所に多数のタクシーが集中し、一定数の利用者を奪い合うことにもなりかねない。また、このような需要予測装置は、搭載するタクシー毎の予測が必要なため、大量の情報を短時間で処理するための高度な情報処理機能を有していなければならず、その一方で乗車スペースを考慮すると小型化されていなければならない。
【0010】
さらに、このような需要予測装置は、タクシー事業者には導入コストを増加させる恐れがある。このため、タクシー事業者にとっては、導入コストと期待される利用者獲得数との収支を考慮すると、当該装置の導入には慎重とならざるを得ない。
【0011】
このため、タクシー利用者の需要を効率的に予測することができ、かつ需要が予測される地域に対し、タクシーの適切な配車を支援するためのさらなる技術開発が所望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、走行中のタクシーに対し、大型の機器を導入することなく、予測されたタクシー利用者の需要予測情報に基づいてタクシーを適切に配車することのできる、タクシーの配車を支援するための方法およびそれを用いたタクシー配車支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、タクシーの配車を支援するための方法であって、
(a)所定の営業地域内に存在する複数のタクシーからの個々の走行情報を管理サーバユニットにて受信する工程;
(b)該管理サーバユニット内で、外部環境情報を用いて該営業地域におけるタクシー利用者の需要予測情報を作成する工程;
(c)該管理サーバユニット内で、該需要予測情報および該個々の走行情報に基づいて最適化計算を行うことにより、最適化需要予測情報を作成する工程;
(d)該最適化需要予測情報を、該営業地域内に存在する該複数のタクシーに取り付けられた車載ユニットに送信する工程;
(e)該営業地域における該複数のタクシーが、該車載ユニットを介して該個々の走行情報を他のタクシー走行情報として互いに送受信する工程;ならびに
(f)該複数のタクシーが、該車載ユニットにおいて、該最適化需要予測情報および該他のタクシー走行情報に基づいて該個々の走行情報をアップデートする工程;
を包含する、方法である。
【0015】
1つの実施形態では、上記個々の走行情報は、タクシーの位置情報、走行速度、走行方位、および乗車または空車情報からなる群から選択される少なくとも1つの情報である。
【0016】
1つの実施形態では、上記外部環境情報は、上記営業地域に存在する稼働タクシーの総数、該営業地域に存在するタクシーの空車率、年月日、曜日、時刻、該営業地域内の過去の乗車実績情報、天候、交通情報、公共交通機関の運行情報、および該営業地域におけるイベント情報からなる群から選択される少なくとも1つの情報である。
【0017】
1つの実施形態では、上記(b)工程で作成される上記需要予測情報は、
(b1)上記複数のタクシーからの上記個々の走行情報と、上記外部環境情報とを上記管理サーバユニットから上位管理サーバユニットに送信し、
(b2)該上位管理サーバユニットにおいて、該外部環境情報、1つまたは複数の他の営業地域より得られた他の外部環境情報、および上位外部環境情報を用いて、該営業地域と該1つまたは複数の他の営業地域との結合領域における結合領域需要予測情報を作成し、
(b3)該結合領域需要予測情報、該複数のタクシーからの該個々の走行情報、および該1つまたは複数の他の営業地域より得られた他の複数のタクシーからの他の個々の走行情報に基づいて最適化計算を行って、上位最適化需要予測情報を作成し、そして
(b4)該上位最適化需要予測情報を該上位管理サーバユニットから該管理サーバユニットに送信することにより、得られた情報である。
【0018】
1つの実施形態では、上記(c)工程で作成される上記最適化需要予測情報は、所定時間における、
上記営業地域から複数に分割された領域セルのうちの1つの領域セル内に存在する空車タクシーの数と、
該1つの領域セル内に存在する実車タクシーの数と
該1つの領域セル内において所定時間内に空車となるタクシー数と、
該1つの領域セルから隣接する他の領域セルに移動するタクシー数と、
該隣接する他の領域セルから該1つの領域セルに移動するタクシー数と、
該1つの領域セル内に存在する、タクシー1台毎を単位とする実績タクシー利用者数と
から算出される情報である。
【0019】
1つの実施形態では、上記(c)工程で作成される上記最適化需要予測情報は、所定時間における、
上記営業地域内の個々のタクシーが走行する道路の進行方向に位置する、交差点から次の交差点までの区間におけるタクシー1台毎を単位とする実績タクシー利用者数と、
該交差点から該次の交差点までの該区間における該タクシーの通過予想時間と、
から算出される情報である。
【0020】
本発明はまた、所定の営業地域に存在する複数のタクシーの配車を支援するためのシステムであって、
管理サーバユニット、および
該複数のタクシーのそれぞれに取り付けられた車載ユニット、
を備え、
該管理サーバユニットが:
所定の営業地域に存在する複数のタクシーからの個々の走行情報を受信し、かつ該複数のタクシーに対して最適化需要予測情報を送信する、支援側通信モジュール;
該営業地域に関連する外部環境情報を記憶する、データベース手段;ならびに
該外部環境情報を用いて該営業地域におけるタクシー利用者の需要予測情報を作成し、かつ該需要予測情報および該複数のタクシーの該個々の走行情報に基づいて最適化計算により最適化需要予測情報を作成する、計算手段;
を備え、そして
該車載ユニットが:
該管理サーバユニットおよび該複数のタクシーに対して自らの走行情報を該個々の走行情報として送信し、そして該管理サーバユニットから該最適化需要予測情報を受信し、そして該複数のタクシーからの該個々の走行情報のうち、他のタクシーからの該個々の走行情報を受信する、車載通信モジュール;
該最適化需要予測情報および該他のタクシーからの該個々の走行情報を記憶する、車載データベース手段;
該最適化需要予測情報および該他のタクシーからの該個々の走行情報に基づいて該自らの走行情報をアップデートする、走行情報更新手段;ならびに
該最適化需要予測情報、該他のタクシーからの該個々の走行情報および該自らの走行情報を表示する、ディスプレイ;
を備える、システムである。
【0021】
1つの実施形態では、上記個々の走行情報は、タクシーの位置情報、走行速度、走行方位、および乗車または空車情報からなる群から選択される少なくとも1つの情報である。
【0022】
1つの実施形態では、上記外部環境情報は、上記営業地域に存在する稼働タクシーの総数、該営業地域に存在するタクシーの空車率、年月日、曜日、時刻、該営業地域内の過去の乗車実績情報、天候、交通情報、公共交通機関の運行情報、および該営業地域におけるイベント情報からなる群から選択される少なくとも1つの情報である。
【0023】
1つの実施形態では、本発明のシステムは、さらに上位管理サーバユニットを備え、
該上位管理サーバユニットは:
上記管理サーバユニットより、上記営業地域に存在する上記複数のタクシーからの上記個々の走行情報と上記外部環境情報とを受信し、かつ該管理サーバユニットに対して、上位最適化需要予測情報を上記最適化需要予測情報として送信する、上位支援側通信モジュール;
該営業地域と1つまたは複数の他の営業地域との結合領域における外部情報によって書換可能な上位外部環境情報を記憶する、上位データベース手段;ならびに
該外部環境情報、1つまたは複数の他の営業地域より得られた他の外部環境情報、および該上位外部環境情報を用いて、該結合領域における結合領域需要予測情報を作成し、かつ該結合領域需要予測情報、該複数のタクシーからの該個々の走行情報、および該1つまたは複数の他の営業地域より得られた他の複数のタクシーからの他の個々の走行情報に基づいて最適化計算を行って、該上位最適化需要予測情報を作成する、上位計算手段;
を備える。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、営業地域におけるタクシー利用者の経時的な需要変化に応じて、当該営業地域における需要予測情報をタクシー乗務員に提供することにより、タクシーの配車を支援することができる。また、本発明によれば、タクシーの無用な「流し」走行を低減することができるため、走行に要する燃料を削減することができ、それに伴うCO2の排出量も低下させることができる。さらに、タクシー乗務員の労働環境の改善にも寄与し得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明のタクシー配車支援システムの一例を模式的に表す図である。
【
図2】
図1に示す本発明のタクシー配車支援システムを構成する車載ユニットの一例を模式的に表す図である。
【
図3】本発明のタクシー配車支援システムの他の例を模式的に表す図である。
【
図4】本発明のシステムのさらに別の例を模式的に表す図であって、上位管理サーバユニットを配置することにより、複数の管理サーバユニットが管理する結合領域におけるタクシーの配車支援を一元的に行うためのシステムの例に表す図である。
【
図5】本発明のシステムのまたさらに別の例を模式的に表す図であって、複数(n)箇所の営業地域に対して、複数(m)層の管理サーバユニットを配置することにより、より広範な結合領域におけるタクシーの配車支援を一元的に行うためのシステムの一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を添付の図面を参照して説明する。
【0027】
図1は、本発明のタクシー配車支援システムの一例を模式的に表す図である。
【0028】
図1において、タクシー配車支援システム100は、管理サーバユニット110と、タクシー150に取り付けられた車載ユニット152とを備える。
【0029】
本発明では、まず、所定の営業地域30に存在する複数のタクシー150からの個々の走行情報が管理サーバユニット110にて受信される。
【0030】
本明細書中に用いられる用語「営業地域」とは、本発明の方法および/またはシステムを導入する団体(例えば、タクシー事業者、タクシー事業組合)が、タクシー事業を行う地域である。当該団体が分割された複数の営業地域にてタクシー事業を行う場合は、例えば、分割された営業地域の各々であっても、それらを統合した1つの営業地域であってもよい。
【0031】
本明細書中に用いられる用語「営業地域に存在する複数のタクシー」とは、当該営業地域内で団体が所有または管理するタクシーのうち、営業中、すなわち実車(タクシー利用者が乗車中の場合に加え、タクシー利用者の乗車に向けて予約走行中の場合も包含する)または空車の状態にあるタクシー(以下、「稼働タクシー」とも言う)を指して言う。このため、たとえ営業地域で団体が所有または管理するタクシーであっても、修理または故障中、乗務員の交代または休憩中、タクシー利用者が乗車して営業地域外を走行中、タクシー利用者の降車後に営業地域外からの営業地域に向けて帰路中のタクシーは除外される。さらに、営業地域に存在する複数のタクシーは、道路を走行中(いわゆる「流し」)のものに加え、所定の乗車場にて待機中(いわゆる「付け待ち」)のもの、タクシー支援センターからの通信を受けて配車中(いわゆる「無線配車」)のもののいずれをも包含する。
【0032】
タクシー150からの個々の走行情報は、営業地域30における当該タクシー150から得られる種々の情報である。個々の走行情報としては、例えば、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)を通じて得られるタクシー150の位置情報(地理的位置情報)や、走行速度、走行方位(例えば、南北に延びる道路について南向きに走行中等)、乗車または空車情報(例えば、当該タクシーにタクシー利用者が乗車中である、料金精算中である、タクシー利用者は乗車していないが無線配車中である、空車中である等の情報)、当日の水揚げ高(売上高)、エンジン回転数、燃料残量、バッテリ残量、タクシー車両の全走行距離数、車外温度(気温)、車外湿度、車内温度、車内湿度、および乗務員の体温・血圧・心拍数・当日の乗車勤務の合計時間、ならびそれらの組み合わせが挙げられる。特に、タクシー150の位置情報、走行速度、走行方位、および乗車または空車情報、ならびにそれらの組み合わせが好ましい。
【0033】
こうしたタクシー150からの個々の走行情報は、タクシー150の車載ユニット152内に設けられた後述の車載通信モジュールを通じて、当業者に周知の手法によって管理サーバユニット110の支援側通信モジュール112に無線通信される。管理サーバユニット110は、通常、タクシー150から隔離した場所(タクシー事業者および/または団体が所有または管轄する営業所、支所、指令センター等)に設置されている。
【0034】
図1に示す本発明のシステム100において、管理サーバユニット110は、支援側通信モジュール112、データベース手段114、計算手段120を備える。管理サーバユニット110において、支援側通信モジュール112、データベース手段114、および計算手段120は電気通信的に接続されている。
【0035】
本発明においては、支援側通信モジュール112にて受信した個々の走行情報は、管理サーバユニット110内のデータベース手段114にて、一時的に記憶される。
【0036】
データベース手段114は、支援側通信モジュール112を介して、管理サーバユニット110の外部に設けられた他のデータベース手段184とも電気通信的に接続されており、支援側通信モジュール112にて受信した上記個々の走行情報の他、営業地域30に関係する外部環境情報が例えば書換可能な様式で記憶されている。このような外部環境情報としては、例えば、営業地域30内で所有または管理されるタクシーの総数、営業地域30に存在する稼働タクシーの総数、営業地域30に存在するタクシーの空車率、営業地域30に存在するタクシーの乗車率、年月日、曜日、時刻、営業地域内の過去の乗車実績情報(当該営業地域30における過去のタクシー利用者の乗車記録(例えば、乗車地点とその年月日、曜日、時刻、および/または天候;降車地点とその年月日、曜日、時刻、および/または天候)、天候、営業地域30における交通情報(例えば、渋滞情報、工事情報、および事故情報)、営業地域30における公共交通機関(例えば、鉄道、バス、航空機、および船舶)の運行情報、営業地域30におけるイベント情報(例えば、スポーツ競技大会、コンサート、祭り、花火大会等のイベントの有無、ならびにその動員人数、開催時間、終了(見込み)時間、)、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。特に、営業地域30に存在する稼働タクシーの総数、営業地域30に存在するタクシーの空車率、年月日、曜日、時刻、営業地域30内の過去の乗車実績情報、天候、交通情報、公共交通機関の運行情報、および営業地域30におけるイベント情報、ならびにそれらの組み合わせが好ましい。
【0037】
本発明では、このようなデータベース手段114に記憶されている外部環境情報を用いて、管理サーバユニット110内でタクシー利用者の需要予測情報が作成される。
【0038】
このような需要予測情報の作成は、例えば、計算手段120内の需要予測部116において行われる。
【0039】
本発明の1つの実施形態では、上記計算手段120はコンピュータである。タクシー利用者の需要予測情報は、コンピュータに実装された所定のアルゴリズムを含むコンピュータプログラムが需要予測部116として機能することにより作成される。
【0040】
具体的には、需要予測情報は、例えば:
A)営業地域から複数に分割された領域セルのうちの1つの領域セル(i)に対して、時刻tから時刻t+Tまでの有限区間で、当該領域セル(i)内で乗車することができないタクシー利用者の数を最小化した数を、現在および/または過去の上記外部環境情報に基づいて算出する;あるいは
B)営業地域から複数に分割された領域セルのうちの1つの領域セル(i)に対して、時刻tから時刻t+Tまでの有限区間における、当該領域セル(i)内で乗車することができたるタクシー利用者の数を最大化した数を、現在および/または過去の上記外部環境情報に基づいて算出する;
することにより、営業地域の分割された領域セル毎に作成することができる。
【0041】
需要予測部116で作成された需要予測情報は、上記の通り営業地域30内の現在および/または過去の乗車実績情報、現在および/または過去の外部環境情報等からこれらを組み合わせて用いることにより作成されたものである。タクシー乗務員は、当該情報を入手して当該情報に基づいて営業地域30内の特定の場所(特定の領域セル内)にまで移動することにより、タクシー利用者を新たに獲得することができる場合がある。しかし、このような需要予測情報は、上記外部環境情報のみから見出された、営業地域内の複数のタクシーが共通して受容し得る情報であるため、タクシー乗務員が需要予測情報に基づいて所定の場所にタクシーを移動させたとしても、同一営業地域内で同一の需要予測情報を受容した他のタクシーが先にタクシー利用者を獲得すること等により、当該需要予測の的確性が低下することが考えられる。
【0042】
このため、本発明では、営業地域内に存在する複数のタクシーからの個々の走行情報を用いて、上記で作成された需要予測情報を「最適化」することにより、需要予測の精度を一層高めることができる。
【0043】
すなわち、本発明では、管理サーバユニット110内で、需要予測情報および営業地域内に存在する複数のタクシーからの個々の走行情報に基づいて最適化計算を行うことにより、最適化需要予測情報が作成される。
【0044】
本発明の1つの実施形態では、当該最適化は、計算手段120に実装された所定のアルゴリズムを含むコンピュータプログラムが最適化部118として機能することにより行われる。
【0045】
最適化部118における最適化は、例えば、当該分野における公知の混合理論ダイナミカルシステムを使ってモデル化することが可能である。モデル予測制御を応用し、営業地域を複数に分割して構成される部分領域(領域セル)でのタクシーの最適移動分布を求めることによって行うことができる。
【0046】
本発明の1つの実施形態では、上記最適化需要予測情報は、所定時間(tからt+Tまで)における、
営業地域から複数に分割された領域セルのうちの1つの領域セル(i)内に存在する空車タクシーの数(xi(k))と、
1つの領域セル(i)内に存在する実車タクシーの数(si(k))と
1つの領域セル(i)内において所定時間内に空車となるタクシー数(ei(k))と、
1つの領域セル(i)から隣接する他の領域セル(j)に移動するタクシー数(ui,j(k))と、
隣接する他の領域セル(j)から1つの領域セル(i)に移動するタクシー数(uj,i(k))と、
1つの領域セル(i)内に存在する、タクシー1台毎を単位とする実績タクシー利用者数(di(k+1))と
から算出される情報である。
【0047】
具体的には、上記を用いて、以下のようなタクシー移動モデルが構築可能であり、時刻tから時刻t+Tまでの有限区間の最適化が行われる。
【0048】
【0049】
ここで、上記(1)~(7)の各式において、
xi(k)は、営業地域から複数に分割された領域セルのうちの1つの領域セル(i)内に存在する空車タクシーの数を表し、
si(k)は、1つの領域セル(i)内に存在する実車タクシーの数を表し、
ei(k)は、1つの領域セル(i)内において所定時間内に空車となるタクシー数を表し、
ui,j(k)は、1つの領域セル(i)から隣接する他の領域セル(j)に移動するタクシー数を表し、
uj,i(k)は、隣接する他の領域セル(j)から1つの領域セル(i)に移動するタクシー数を表し、
di(k+1)は、1つの領域セル(i)内に存在する、タクシー1台毎を単位とする実績タクシー利用者数を表し、
pi(k)は、1つの領域セル(i)内に存在する、新たなタクシー利用者数を表し、
βiは、1つの領域セル(i)内で乗車から空車になるタクシーの割合を表し、
αiは、1つの領域セル(i)内で乗車することができるタクシー利用者の割合を表し、そして
【0050】
【0051】
は、時間区間[k k+1)において、1つの領域セル(i)における実車の総数を表す。
【0052】
なお、このような最適化計算の手法は公知であり、例えば、広本ら,「モデル予想制御によるタクシーの最適配車問題の定式化」,一般社団法人電子情報通信学会,2017年,p.113~116に記載されている。
【0053】
あるいは、上記に代えて、本発明では以下の最適化計算を行うことも可能である。
【0054】
本発明の1つの実施形態では、上記最適化需要予測情報は、所定時間における、
営業地域内の個々のタクシーが走行する道路(l;実行可能経路)の進行方向に位置する、交差点(i)から次の交差点(j)までの区間におけるタクシー1台毎を単位とする実績タクシー利用者数(ai,j)と、
交差点(i)から次の交差点(j)までの区間におけるタクシーの通過予想時間(ti,j)と、
から算出される情報である。
【0055】
具体的には、以下のようにして最適化が行われる:
【0056】
【0057】
このようにして最適化需要予測情報が作成される。
【0058】
次いで、本発明では、上記で得られた最適化需要予測情報が、営業地域30内に存在する複数のタクシー150に取り付けられた車載ユニット152に送信される。
【0059】
図1において、計算手段120の最適化部118で作成された最適化需要予測情報は、管理サーバユニット110に設けられた支援側通信モジュール112を通じて、営業地域30内に存在する、好ましくはすべてのタクシー150の車載ユニット152に送信される。
【0060】
図2は、本発明のタクシー配車支援システムを構成する車載ユニットの一例を模式的に表す図である。
【0061】
図2に示す実施形態において、車載ユニット152は、車載通信モジュール158、車載データベース手段154、走行情報更新手段160、およびディスプレイ162を備える。車載ユニット152において、車載通信モジュール158、車載データベース手段154、走行情報更新手段160、およびディスプレイ162は電気通信的に接続されている。
【0062】
上記
図1に示す管理サーバユニット110に設けられた支援側通信モジュール112から送信された最適化需要予測情報は、
図2に示す個々のタクシー150に設けられた車載ユニット152内の車載通信モジュール158で受信し、車載のデータベース手段154にて一時的に記憶される。
【0063】
車載データベース手段154は、車載通信モジュール158を介して、車載ユニット152の外部に設けられた他のデータベース手段184とも電気通信的に接続されており、支援側通信モジュール112から受信した上記最適化需要予測情報の他、走行するタクシー150自体の走行情報(以下「自らの走行情報」ということがある)、および営業地域内に存在する他のタクシーからの走行情報(以下「他のタクシー走行情報」ということがある)が例えば書換可能な様式で記憶されている。ここで、「自らの走行情報」および「他のタクシー走行情報」は、上記「個々の走行情報」と同様である。
【0064】
なお、本発明では、営業地域における複数のタクシー150の個々の走行情報が、車載ユニット152を介して他のタクシー走行情報として互いに送受信される。
【0065】
当該送受信は、車載ユニット152の車載通信モジュール158を介して行われる。これにより、営業地域内のタクシー150は、
図1に示す上記管理サーバユニット110の支援側通信モジュール112から得られた最適化需要予測情報とともに、営業地域内の他のタクシーからの他のタクシー走行情報も取得することができる。こうして受信した他のタクシー走行情報もまた、車載通信モジュール158を介して車載データベース手段154に一時的に記憶される。
【0066】
車載データベース手段154に一時的に記憶された最適化需要予測情報および他のタクシー走行情報は、例えば、走行情報更新手段160を通じてディスプレイ162に表示され、タクシー乗務員はディスプレイ162の目視によって当該最適化需要予測情報とともに、営業地域を走行する他のタクシーの走行情報(例えば、位置や走行方位、乗車または空車情報)を取得することができる。あるいは、最適化需要予測情報は、ディスプレイ162による表示に代えて、または当該表示に加えて、当該技術分野において周知の手段を用いて音声情報に変換されることにより車載スピーカー(図示せず)を通じてタクシー乗務員に伝達され得る。
【0067】
なお、本発明では、複数のタクシーの車載ユニット152において、上記最適化需要予測情報および他のタクシー走行情報に基づいて個々の走行情報がアップデートされる。
【0068】
最適化需要予測情報および他のタクシー走行情報に接したタクシー乗務員は、タクシー利用者の効率的な獲得に向けて、例えば、これらの情報に基づいて自らが運転するタクシー150の走行速度、走行方位等(すなわち、自らの走行情報)を変更することができる。あるいは、タクシー乗務員の意思とは独立して、営業地域内に存在する複数のタクシーが当業者に公知の手段を用いて互いに自律的に協調し合うことにより自らの走行情報を変更するものであってもよい。
【0069】
図2に示す走行情報更新手段160は、上記車載データベース手段154に加えて、図示しないその他の計器類(図示せず)とも、例えば電気的または電気通信的に接続されている。上記のように自らの走行情報に変更があった場合、当該変更に伴う情報は、これら車載データベース手段154および/または計器類を通じて、走行情報更新手段160に伝達される。計器類の例としては、必ずしも限定されないが、タクシー150自体に設けられた計器類(例えば、スピードメータ、タコメータ、燃料計、バッテリメータ、乗車/空車表示器、料金計、温度計、および湿度計)、およびタクシー乗務員が装着する各種センサ(例えば、体温センサ、血圧センサ、および心拍センサ)、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0070】
こうして、走行情報更新手段160において、タクシー150の個々の走行情報のアップデートが行われる。その後、アップデートされたタクシー150の個々の走行情報は、車載データベース手段154に一時的に記憶され、車載通信モジュール158を通じて、
図1に示す営業地域30の管理サーバユニット110および当該地域30における他のタクシーに送信される。
【0071】
上記車載ユニット152は、タクシー150のために特別に設けられたものだけでなく、例えば、携帯電話端末、スマートフォン、タブレット、またはカーナビゲーション車載機器であってもよい。
【0072】
なお、本発明においては、営業地域内におけるタクシーの位置、タクシー利用者の乗車および降車状況、タクシー利用者の需要の変動があることを考慮して、上記アップデートは、一定の時間的間隔をおいて行うことが好ましい。アップデートを行うための時間的間隔は、対象となる営業地域の面積、営業地域内に存在するタクシーの台数、管理サーバユニットの規模および能力等によって変動するため、必ずしも限定されないが、例えば数分間、好ましくは1分間~2分間に設定される。
【0073】
図1に示す本発明のシステム100では、営業地域30内に存在する複数のタクシー150に対して、最適化された需要予測情報がタクシー150から離れた管理サーバユニット110で作成される。これにより、営業地域30内のタクシー150がそれぞれ独自の需要予測情報を作成する必要がなく、タクシー150の車載ユニット152の負荷を低減することができ、当該車載ユニット152の小型化も可能である。また、管理サーバユニット110には、必要に応じて大規模のコンピュータを採用することにより、処理速度を一層高めることもできる。
【0074】
図1は、1つの営業地域30に対して1つの管理サーバユニット110を設ける場合について説明したが、本発明は必ずしもこのような構成のみに限定されない。
【0075】
図3は、本発明のタクシー配車支援システムの他の例を模式的に表す図である。
【0076】
図3に示すタクシー配車支援システム200は、管理サーバユニット210と、タクシー150a,150b,150cに取り付けられた車載ユニット152a,152b,152cとを備え、複数の営業地域30a,30b,30cに存在する複数のタクシー150a,150b、150cの配車を営業地域30a,30b,30c毎に支援することができる。
【0077】
図3に示すシステム200では、まず、所定の営業地域30a,30b,30cのそれぞれに存在する複数のタクシー150a,150b、150cからの個々の走行情報が管理サーバユニット210内の支援側通信モジュール212を通じて受信される。
【0078】
支援側通信モジュール212にて受信した個々の走行情報は、管理サーバユニット210内のデータベース手段214にて、一時的に記憶される。
【0079】
一方、計算手段220内の需要予測部216では、他のデータベース手段184から得られた外部環境情報を用いて、例えば、営業地域30a,30b,30c毎に需要予測情報が作成される。その後、営業地域30a,30b,30c毎に作成された需要予測情報は、計算手段220内の最適化部218において上記と同様の最適化計算が営業地域30a,30b,30c毎に行われる。
【0080】
得られた営業地域30a,30b,30c毎の最適化需要予測情報は、管理サーバユニット210の支援側通信モジュール212を通じて、営業地域30a,30b,30cのそれぞれに存在する複数のタクシー150a,150b、150cに取り付けられた車載ユニット152a,152b,152cにそれぞれ送信される。
【0081】
その後、上記と同様にして、営業地域30a,30b,30c内に存在する複数のタクシー150a,150b、150cのタクシー乗務員は、車載ユニット152a,152b,152cを通じて各営業地域の当該最適化需要予測情報および同一営業地域内に存在する他のタクシー走行情報を取得することができる。そして、これらの情報に基づいてアップデートされた自らの走行情報を車載ユニット152a,152b,152cを通じて、再び管理サーバユニット210に送信することができる。
【0082】
このようにして、本発明のシステム200は、複数の営業地域30a,30b,30cにおける複数のタクシー152a,152b,152cの配車を支援することができる。
【0083】
上記のように、
図3に示す実施形態では、1つの管理サーバユニット210を用いて、複数の営業地域30a,30b,30cにおける複数のタクシー152a,152b,152cの配車を、営業地域毎に独立して支援することができる。
【0084】
図4は、本発明のタクシー配車支援システムのさらに別の例を模式的に表す図である。
【0085】
図4に示すタクシー配車支援システム300は、
図1と同様のシステム100a,100b,100cとは別に、これらを統合して管理することができる上位管理サーバユニット310を備える。
【0086】
上位管理サーバユニット310は、上位支援側通信モジュール312、上位データベース手段314、上位計算手段320を備える。上位管理サーバユニット310において、上位支援側通信モジュール312、上位データベース手段314、および上位計算手段320は電気通信的に接続されている。
【0087】
図4に示す実施形態においては、システム100a,100b,100cの支援側通信モジュール112a,112b,112cにて受信した個々の走行情報は、営業地域30a,30b,30cのそれぞれの外部環境情報とともに、各システムの支援側通信モジュール112a,112b,112cを通じて、一旦上位管理サーバユニット310に送信され、そして上位管理サーバユニット310内の上位データベース手段314にて、一時的に記憶される。
【0088】
上位データベース手段314は、上位支援側通信モジュール312を介して、上位管理サーバユニット310の外部に設けられた他のデータベース手段184にも電気通信的に接続されており、上位支援側通信モジュール312にて受信した上記個々の走行情報および外部環境情報(例えば、営業地域30aから得られた外部環境情報と、営業地域30a以外の営業地域30b、30cのそれぞれから得られた外部環境情報)の他、他のデータベース手段184から別途得られた上位外部環境情報が例えば書換可能な様式で記憶されている。
【0089】
上位外部環境情報としては、例えば、営業地域30a,30b,30c以外の地域における公共交通機関の運行に連動して予想される当該営業地域の運行情報(例えば、営業地域外を出発駅とする鉄道の出発遅延によって、営業地域内の到着駅での当該鉄道の到着遅延が生じるという情報);営業地域30a,30b,30c以外の地域における天候情報、イベント情報、および交通渋滞のような交通情報;ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0090】
図4に示す実施形態では、これらの外部環境情報および上位外部環境情報を用いて、営業地域30a,30b,30cの結合領域におけるタクシー利用者の結合領域需要予測情報が、上位計算手段320内の上位需要予測部316において作成される。ここで、本発明の1つの実施形態では、当該上位計算手段320はコンピュータであり、結合領域需要予測情報は、コンピュータに実装された所定のアルゴリズムを含むコンピュータプログラムが上位需要予測部316として機能することにより、上記と同様にして作成される。
【0091】
次いで、上位需要予測部316で作成された結合領域需要予測情報は、営業地域30a,30b,30c内に存在する複数のタクシー150a,150b,150cからの個々の走行情報を用いて、最適化計算を行うことにより、上位最適化需要予測情報が作成される。ここで、本発明の1つの実施形態では、この最適化計算は、上位計算手段320に実装された所定のアルゴリズムを含むコンピュータプログラムが上位最適化部318として機能することにより行われる。上位最適化部118における最適化計算は、例えば、上記
図1に記載する最適化部118における計算と同様にして行うことができる。
【0092】
その後、得られた上位最適化需要予測情報は、上位管理サーバユニット310の上位支援側通信モジュール312を介して、営業地域30a,30b,30cにおける各管理サーバユニット110a,110b,110cの支援側通信モジュール112a,112b,112cにそれぞれ送信され、各管理サーバユニット110a,110b,110cの需要予測情報として取り扱われる。
【0093】
このようにして作成された需要予測情報は、各管理サーバユニット110a,110b,110cにおいて、営業地域30a,30b,30c内に存在するタクシー150a,150b,150cの個々の走行情報を用いて、それぞれ
図1と同様にした最適化計算が行われ、各営業地域における最適化需要予測情報が作成される。
【0094】
得られた営業地域30a,30b,30c毎の最適化需要予測情報は、管理サーバユニット110a,110b,110cの支援側通信モジュール112a,112b,112cを通じて、営業地域30a,30b,30cのそれぞれに存在する複数のタクシー150a,150b、150cに取り付けられた車載ユニット152a,152b,152cにそれぞれ送信される。
【0095】
その後、上記と同様にして、営業地域30a,30b,30c内に存在する複数のタクシー150a,150b、150cのタクシー乗務員は、車載ユニット152a,152b,152cを通じて各営業地域の当該最適化需要予測情報および同一営業地域内に存在する他のタクシー走行情報を取得することができる。そして、これらの情報に基づいてアップデートされた自らの走行情報を車載ユニット152a,152b,152cを通じて、再び管理サーバユニット110a,110b,110cに送信することができる。
【0096】
このようにして、本発明のシステム300は、複数の営業地域30a,30b,30cにおける複数のタクシー152a,152b,152cの配車を支援することができる。
【0097】
上記のように、
図4に示す実施形態では、複数の営業地域30a,30b,30cに対応する管理サーバユニット110a,110b,110cが設けられ、そしてこれらの上位に、上位管理サーバユニット310が設けられている。そして、当該上位管理サーバユニット310を設けることにより、
図1に示すシステム100よりもより広範囲の情報(例えば、営業地域30aに対して、営業地域30b,30cの外部環境情報や上述したような上位外部環境情報)に基づく需要予測およびそれを用いた最適化計算を行うことができる。さらに、複数の営業地域30a,30b,30cのそれぞれに特有の営業形態を反映した最適化を行うこともできる。ここで、「特有の営業形態を反映した最適化」とは、最適化問題において、複数の営業地域30a,30b,30cのそれぞれに特有の理由に基づいて別途コスト関数の設定や制約条件が付されることにより、上記最適化需要予測情報が作成されることを表す。例えば、営業地域30a,30b,30cのうち、営業地域30a,30bでは、タクシー利用者の獲得が主にタクシーの流しによって行われるのに対し、営業地域30cでは、タクシーを流すよりも、当該地域30c内の所定の待機場所で待機する方がタクシー利用者を獲得し易いような場合があることが想定される。このような場合、営業地域30cにおける上記最適化計算では、タクシーの移動に関する変数に対して別途ペナルティを導入する一方、営業地域30a,30bにおける上記最適化計算では、そのようなペナルティの導入が行われないことが挙げられる。
【0098】
なお、
図4の示す実施形態では、3箇所の営業地域30a,30b,30cに対し、2層の管理サーバユニット(管理サーバユニット110a,110b,110cおよび上位管理サーバユニット310)を用いる場合について説明したが、本発明は必ずしもこのような構成に限定されない。例えば、
図5に示すように、本発明のシステムでは、n箇所の営業地域30(1),30(2),・・・30(n)に対し、m段の管理サーバユニットを設けて構成してもよい。
【0099】
本発明によれば、営業地域におけるタクシー利用者の経時的な需要変化に応じて、タクシー利用者の需要情報(最適化需要予測情報)をより高い精度をもってタクシー乗務員に提供することができる。また、タクシー乗務員には、営業地域内の他のタクシーの走行情報も提供される。これにより、タクシー乗務員は、この最適化需要予測情報および営業地域内の他のタクシーの走行情報の両方を考慮して、タクシー利用者の需要が予測される場所に自らのタクシーを配車すべきか否かの判断を行うことが可能となる。本発明によれば、タクシーの無用な「流し」走行が低減され、走行に要する燃料を削減することができる。本発明はまた、タクシー乗務員の労働環境の改善にも寄与し得る。
【符号の説明】
【0100】
30,30a,30b,30c 営業地域
100,200,300,400 タクシー配車支援システム
110,210 管理サーバユニット
112,212 支援側通信モジュール
114,214 データベース手段
116,216 需要予測部
118,218 最適化部
120,220 計算手段
150,150a,150b,150c タクシー
152,152a,152b,152c 車載ユニット
154 車載データベース手段
158 車載通信モジュール
160 走行情報更新手段
162 ディスプレイ
184 他のデータベース手段
310 上位管理サーバユニット
312 上位支援側通信モジュール
314 上位データベース手段
316 上位需要予測部
318 上位最適化部
320 上位計算手段