IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電線工業株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人大阪大学の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】光ファイバ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/00 20060101AFI20220601BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
G02B6/00 326
G02B6/02 411
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020126351
(22)【出願日】2020-07-27
(62)【分割の表示】P 2018084938の分割
【原出願日】2018-04-26
(65)【公開番号】P2020181209
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2020-07-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 浩一
(72)【発明者】
【氏名】金 正高
(72)【発明者】
【氏名】田中 正俊
(72)【発明者】
【氏名】山本 和久
(72)【発明者】
【氏名】石野 正人
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/191690(WO,A1)
【文献】特表2017-523577(JP,A)
【文献】特表2014-523603(JP,A)
【文献】特開平10-142428(JP,A)
【文献】特開2000-171638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00- 6/02
G02B 6/245-6/25
G02B 6/44- 6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアを有し且つ接合部を有さない光ファイバであって、
前記コアに接触して前記コアの外側の全周を覆うように設けられたクラッドを有し、
前記クラッドは、前記コアに接触して前記コアの外側の全周を覆うように設けられるとともに、ガラス材料又はポリマー材料で形成され、且つ側面発光のための光散乱因子又は発光因子を含む第1クラッド部分と、前記コアに接触して前記コアの外側の全周を覆うように設けられるとともに、ガラス材料又はポリマー材料で形成され、且つ前記第1クラッド部分が含む前記光散乱因子又は発光因子を含まず且つ側面発光のための蓄光因子を含む第2クラッド部分とを有する光ファイバ。
【請求項2】
請求項1に記載された光ファイバにおいて、
前記第1及び第2クラッド部分は、長さ方向に隣接して配設されている光ファイバ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された光ファイバにおいて、
前記第2クラッド部分は、前記クラッドのうちの前記第1クラッド部分以外の部分で構成されている光ファイバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
照明等に用いられる側面発光する光ファイバが知られている。例えば、特許文献1には、コア及びクラッドが光散乱物質を含む側面発光型光ファイバが開示されている。特許文献2には、コアの外側を覆うように、クラッド、光散乱物質を含む散乱層、及び発光体層が順に設けられた光拡散性ファイバが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5341391号公報
【文献】特表2015-510603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、多様な用途に対応することができる側面発光の光ファイバを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、コアを有し且つ接合部を有さない光ファイバであって、前記コアの外側を覆うように設けられた側面発光機能層を有し、前記側面発光機能層は、側面発光のための光散乱因子又は発光因子を含む第1機能層部分と、前記第1機能層部分が含む前記光散乱因子又は発光因子を含まず且つ側面発光のための蓄光因子を含む第2機能層部分とを有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、コアの外側を覆うように設けられた側面発光機能層が、側面発光のための機能性因子を含む第1機能層部分と、それを含まない第2機能層部分とを有するので、第1機能層部分の側面発光位置を自在に設定することができ、そのため多様な用途に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】実施形態1に係る光ファイバの斜視図である。
図1B】実施形態1に係る光ファイバの内部構造を示した斜視図である。
図1C】実施形態1に係る光ファイバの縦断面図である。
図2A】実施形態1に係る光ファイバの製造方法の第1説明図である。
図2B】実施形態1に係る光ファイバの製造方法の第2説明図である。
図3A】実施形態1に係る光ファイバの第1変形例の縦断面図である。
図3B図3AにおけるIIIB-IIIB断面図である。
図4】実施形態1に係る光ファイバの第2変形例の内部構造を示した斜視図である。
図5】実施形態2に係る光ファイバの内部構造を示した斜視図である。
図6A】実施形態2に係る光ファイバの製造方法の第1説明図である。
図6B】実施形態2に係る光ファイバの製造方法の第2説明図である。
図7】実施形態2に係る光ファイバの第1変形例の内部構造を示した斜視図である。
図8A】実施形態2に係る光ファイバの第2変形例の横断面図である。
図8B】実施形態2に係る光ファイバの第3変形例の横断面図である。
図8C】実施形態2に係る光ファイバの第4変形例の横断面図である。
図9A】実施形態3に係る光ファイバの斜視図である。
図9B】実施形態3に係る光ファイバの縦断面図である。
図10】実施形態3に係る光ファイバの製造方法の説明図である。
図11】実施形態3に係る光ファイバの変形例の斜視図である。
図12】実施形態4に係る光ファイバの斜視図である。
図13】実施形態4に係る光ファイバの製造方法の説明図である。
図14】実施形態4に係る光ファイバの第1変形例の斜視図である。
図15A】実施形態4に係る光ファイバの第2変形例の横断面図である。
図15B】実施形態4に係る光ファイバの第3変形例の横断面図である。
図15C】実施形態4に係る光ファイバの第4変形例の横断面図である。
図16A】第1及び第2クラッド部分並びに第1及び第2被覆層部分が長さ方向に隣接して配設されたその他の実施形態の第1の光ファイバの縦断面図である。
図16B】第1及び第2クラッド部分並びに第1及び第2被覆層部分が周方向に隣接して配設されたその他の実施形態の第1の光ファイバの横断面図である。
図17A】第1及び第2クラッド部分並びに第1及び第2被覆層部分が長さ方向に隣接して配設されたその他の実施形態の第2の光ファイバの縦断面図である。
図17B】第1及び第2クラッド部分並びに第1及び第2被覆層部分が周方向に隣接して配設されたその他の実施形態の第2の光ファイバの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
【0009】
(実施形態1)
図1A~Cは、実施形態1に係る光ファイバ10を示す。実施形態1に係る光ファイバ10は、例えば、交差点の横断歩道等の注意喚起表示装置、駅ホームでの線路内転落防止表示装置、階段などの注意喚起照明、地震災害時の避難誘導表示システム、植物工場等で用いられる照明装置、光ファイバの側面発光を利用した空間光通信などに適用されるものである。
【0010】
実施形態1に係る光ファイバ10は、光ファイバ素線11と被覆層12とを備える。実施形態1に係る光ファイバ10は、接合部を有さない連続ファイバである。光ファイバ素線11は、コア111及びクラッド112を有する。クラッド112は、コア111の外側を覆うように設けられた側面発光機能層を構成する。クラッド112は、側面発光のための機能性因子13を含む第1クラッド部分112aと、第1クラッド部分112aが含む機能性因子13を含まない第2クラッド部分112bとを有する。
【0011】
以上の構成を有する実施形態1に係る光ファイバ10によれば、コア111の外側を覆うように設けられた側面発光機能層を構成するクラッド112が、側面発光のための機能性因子13を含む第1クラッド部分112aと、それを含まない第2クラッド部分112bとを有するので、第1クラッド部分112aの側面発光位置を自在に設定することができ、そのため多様な用途に対応することができる。
【0012】
ここで、光ファイバ素線11のコア111の形成材料としては、例えば、純粋石英、多成分ガラス、ゲルマニウムのような屈折率を高めるドーパントがドープされた石英などのガラス材料;アクリル系樹脂などのポリマー材料が挙げられる。コア111は、典型的には、断面形状が円形であり、その直径は例えば10μm以上2000μm以下である。なお、コア111の断面形状は、三角形や矩形等の多角形であってもよい。
【0013】
光ファイバ素線11のクラッド112は、コア111を被覆するように設けられている。クラッド112の断面外郭形状は、典型的には円形であり、その直径、つまり、光ファイバ素線11の外径は、例えば100μm以上10000μm以下である。なお、クラッド112の断面外郭形状は、三角形や矩形等の多角形であってもよい。
【0014】
クラッド112の第1クラッド部分112aは、コア111の全周を被覆する円筒部分を構成しているとともに、長さ方向に間隔をおいて複数設けられている。クラッド112の第2クラッド部分112bは、第1クラッド部分112a以外の部分を構成している。したがって、クラッド112における第1及び第2クラッド部分112a,112bは、長さ方向に交互に相互に隣接して配設されている。第1クラッド部分112aの長さは、例えば0.1mm以上100000mm以下であり、また、第1クラッド部分112a間の間隔、つまり、第2クラッド部分112bの長さは、例えば0.1mm以上100000mm以下である。なお、第1及び第2クラッド部分112a,112bの長さは、目的により適宜設計されるので、その最大値は上記に限定されるものではない。また、この構造は、第1クラッド部分112aの長さ及び間隔がそれぞれ均一である周期的構造であっても、第1クラッド部分112aの長さ及び間隔のうちの少なくとも一方が不均一である非周期的構造であっても、どちらでもよい。
【0015】
第1及び第2クラッド部分112a,112bの形成材料としては、例えば、多成分ガラス、フッ素のような屈折率を低くするドーパントがドープされた石英などのガラス材料;シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、フッ化ビニリデン系樹脂、フッ素系樹脂などのポリマー材料が挙げられる。第1及び第2クラッド部分112a,112bは、両者がガラス材料で形成されていても、前者がガラス材料及び後者がポリマー材料でそれぞれ形成されていても、両者がポリマー材料で形成されていても、いずれでもよい。なお、本出願における「光ファイバ素線」は、ガラス材料のみで形成され、ポリマー材料で形成された部分を有さないものも含む。また、第1及び第2クラッド部分112a,112bの屈折率は、機能性因子13による側面発光機能が高くなるように調整されている。
【0016】
機能性因子13は、第1クラッド部分112aに分散して含まれる。かかる機能性因子13としては、例えば、光散乱因子、発光因子、蓄光因子が挙げられる。
【0017】
光散乱因子としては、例えば、酸化チタン、酸化カルシウム、ガラス、セラミックスなどの粉状の無機材料;アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂などの粉状の有機材料;金、銀、銅、アルミニウムなどの粉状の金属材料;気泡;レーザ照射によって導入されるガラスの構造欠陥等が挙げられる。光散乱因子の径は、例えば数nm以上100μm以下である。光散乱因子の濃度は、クラッド112の第1クラッド部分112aへの上記材料の分散性、コア111を伝送する光の減衰量、光散乱因子による多重散乱効果等を考慮して適宜設定される。なお、光の多重散乱効果は、散乱光のスペックル強度に影響を与えるので、スペックル強度の調整には、光散乱因子の径及び濃度を選択して設定することが好ましい。また、光散乱因子として、光反射性材料を分散することで、第1クラッド部分112aを光反射構造とすることができる。
【0018】
発光因子としては、例えば、希土類元素が添加された無機材料、半導体量子ドット等の粉状材料が挙げられる。具体的には、例えば、赤色蛍光体のCaAlSiN:Eu2+(CASN)、緑色蛍光体のCaSc:Ce3+(CSO)、青色蛍光体の(Sr,Ba)10(POCl:Eu2+(SBCA)、黄色蛍光体のYAl12:Ce3+(YAG)、半導体量子ドットのCdSe、CdSeTe等が挙げられる。発光因子は、励起光となる光ファイバ10に入力する伝送光の波長及び発光波長を考慮して適宜選択される。発光因子の粒子径は、例えば数nm以上100μm以下である。発光因子の濃度は、クラッド112の第1クラッド部分112aへの分散性、コア111を伝送する光の減衰量、発光因子の発光効率等を考慮して適宜設定される。
【0019】
蓄光因子としては、アルミン酸ストロンチウム(SrAl)系、硫化亜鉛(ZnS)系等の粉状材料が挙げられる。蓄光因子は、励起光となる光ファイバ10に入力する伝送光の波長及び燐光波長を考慮して適宜選択される。蓄光因子の粒子径は、例えば数nm以上100μm以下である。蓄光因子の濃度は、クラッド112の第1クラッド部分112aへの分散性、コア111を伝送する光の減衰量、蓄光因子の残高輝度や残光時間等を考慮して適宜設定される。
【0020】
第1クラッド部分112aは、これらの機能性因子13のうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。つまり、第1クラッド部分112aは、1種又は2種以上の光散乱因子、1種又は2種以上の発光因子、及び1種又は2種以上の蓄光因子のうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0021】
実施形態1に係る光ファイバ10において、コア111の入力端に光を入力すると、その光は、長さ方向に伝送されると共に、コア111からクラッド112に抜け、クラッド112の第1クラッド部分112aにおいて、機能性因子13と反応し、そして、それにより側面発光が得られる。すなわち、コア111からの光が光散乱因子で散乱し、その散乱光が側面発光として得られる。コア111からの光によって発光因子が励起状態とされ、それが基底状態に戻る際に放出される光が側面発光として得られる。コア111からの光を蓄光因子が蓄え、それを放出する燐光が側面発光として得られる。なお、コア111からクラッド112に抜ける光の量は、それらの形成材料の屈折率で制御することができる。また、コア111に光を入力する光源としては、例えば、半導体レーザ(LD)、ガスレーザ、固体レーザ(波長変換方式の物も含む)、ファイバレーザ等が挙げられる。光源が出力する光は、例えば、波長が200nm以上1100nm以下である紫外光、可視光、赤外光であることが好ましい。
【0022】
第2クラッド部分112bは、第1クラッド部分112aが含む機能性因子13とは異なる側面発光のための機能性因子を含む構成であってもよい。例えば、第1クラッド部分112aが光散乱因子又は発光因子を含み、且つ第2クラッド部分112bが蓄光因子を含んでいてもよい。この場合、光ファイバ10に光を入力したときには、第1クラッド部分112aからの散乱光又は発光、及び第2クラッド部分112bからの燐光が側面発光として得られる一方、光ファイバ10への光の入力を遮断したときには、第1クラッド部分112aからの側面発光は停止されるものの、第2クラッド部分112bからの燐光による側面発光だけが一定時間継続して得られる。また、第1及び第2クラッド部分112a,112bを発光させるエネルギーは、コア111から同時並列に供給されるため、遅延無く、高効率な並列発光動作が可能である。なお、クラッド112は、第1及び第2クラッド部分112a,112bが含むのとは更に異なる側面発光のための機能性因子を含む第3クラッド部分を有していてもよい。なお、これらのクラッド112の各部分においては、同じ種類の機能性因子を粒子径や濃度を変えて含んでいてもよい。例えば、光の入力端に近い側のクラッド112の部分では、伝送される光の強度が強いので、機能性因子の濃度を低くして、側面発光の強度を抑える一方、光の入力端から遠い側のクラッド112の部分では、伝送される光の強度が低くなるので、機能性因子の濃度を高くして、側面発光の強度を高めるようにし、それにより長さ方向の側面発光の強度バランスをとるようにしてもよい。
【0023】
一方、第2クラッド部分112bは、第1クラッド部分112aが含む機能性因子13を含むあらゆる側面発光のための機能性因子を含まない構成であってもよい。光ファイバの全長に渡って機能性因子を含ませた場合、光ファイバの入力端から側面発光させたい部分までの伝送距離が長いと、その部分に達するまでに伝送光のパワーが低下するため、使用可能な光ファイバの長さに制約が生じる。しかしながら、このように第2クラッド部分112bがあらゆる側面発光のための機能性因子を含んでいなければ、光ファイバ11の入力端から側面発光させたい第1クラッド部分112aまでの伝送距離が長くても、機能性因子を含まない第2クラッド部分112bにおける伝送光のパワーの低下を抑制することができ、したがって、使用可能な光ファイバ10の長さの制約を解消することができる。
【0024】
被覆層12は、クラッド112の第1クラッド部分112aからの側面発光が透過可能なポリマー材料で形成されていることが好ましく、その形成材料としては、例えば、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ナイロン系樹脂、フッ素系樹脂などのポリマー材料が挙げられる。被覆層12は、単一層で構成されていても、複数層で構成されていても、どちらでもよい。被覆層12の断面外郭形状は、通常は円形であり、その直径、つまり、光ファイバ10の外径は、例えば200μm以上30000μm以下である。
【0025】
実施形態1に係る光ファイバ10は、例えば、まず、光ファイバ素線11を線引きし、その光ファイバ素線11の外周に、図2Aに示すように、周方向に全周に渡って延びるコの字溝112a’を、長さ方向に間隔をおいて複数形成した後、図2Bに示すように、それらのコの字溝112a’に第1クラッド部分112aの形成材料を埋め込み、その上に被覆層12を設けることにより製造することができる。光ファイバ素線11へのコの字溝112a’の形成加工方法としては、例えば、レーザアブレーション加工、機械加工、エッチング加工等が挙げられる。また、コの字溝112a’への第1クラッド部分112aの形成材料の埋め込み加工としては、例えば、コの字溝112a’を形成した光ファイバ素線11を、機能性因子13を含む液状の第1クラッド部分112aの形成材料に浸漬して引き上げることによりコの字溝112a’に形成材料を充填し、ダイス等を通して余分な形成材料を除去した後、加熱或いは光を照射してコの字溝112a’に充填した形成材料を硬化させる加工等が挙げられる。
【0026】
なお、実施形態1に係る光ファイバ10は、図3A及びBに示すように、被覆層12の周方向の一部分(図3A及びBでは半周部分)に、光反射性材料15を分散させて含ませた構成であってもよい。このような構成によれば、クラッド112の第1クラッド部分112aからの光が光反射性材料15に反射し、そのため被覆層12の光反射性材料15を含ませていない部分のみから側面発光が得られるので、光反射性材料15を含ませる部分の設定により、側面発光の方向を制御することができる。光反射性材料15としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウムなどの粉状の金属材料や酸化チタンなどの粉状のセラミックス材料等が挙げられる。
【0027】
また、実施形態1に係る光ファイバ10は、図4に示すように、所定長の単一の第1クラッド部分112aが設けられた構成であってもよい。
【0028】
(実施形態2)
図5は、実施形態2に係る光ファイバ10を示す。なお、実施形態1と同一構成及び名称の部分は、実施形態1と同一符号を用いて示す。
【0029】
実施形態2に係る光ファイバ10では、光ファイバ素線11におけるクラッド112の機能性因子13を含む第1クラッド部分112aが、コア111の外周の周方向の一部分(図5では半周部分)を被覆するように形成されているとともに、全長に渡って設けられている。クラッド112の第2クラッド部分112bは、第1クラッド部分112a以外の部分を構成している。したがって、クラッド112における第1及び第2クラッド部分112a,112bは、周方向に隣接して配設されている。
【0030】
以上の構成を有する実施形態2に係る光ファイバ10によれば、コア111の外側を覆うように設けられた側面発光機能層を構成するクラッド112が、側面発光のための機能性因子13を含む第1クラッド部分112aと、それを含まない第2クラッド部分112bとを有するので、第1クラッド部分112aの側面発光位置を自在に設定することができ、そのため多様な用途に対応することができる。
【0031】
実施形態2に係る光ファイバ10は、例えば、まず、光ファイバ素線11を線引きし、図6Aに示すように、その光ファイバ素線11におけるクラッド112の周方向の一部分を除去した後、図6Bに示すように、そのクラッド112の除去部分112a”に第1クラッド部分112aの形成材料を設け、その上に被覆層12を設けることにより製造することができる。クラッド112の除去加工方法としては、例えば、レーザアブレーション加工、機械加工、エッチング加工等が挙げられる。また、クラッド112の除去部分112a”に第1クラッド部分112aの形成材料を設ける加工としては、例えば、クラッド112の一部分を除去した光ファイバ素線11を、機能性因子13を含む液状の第1クラッド部分112aの形成材料に浸漬して引き上げることによりクラッド112の除去部分112a”に形成材料を付着させ、ダイス等を通して余分な形成材料を除去した後、加熱或いは光を照射してクラッド112の除去部分112a”に付着した形成材料を硬化させる加工等が挙げられる。
【0032】
なお、実施形態2に係る光ファイバ10は、図7に示すように、所定長の部分に、コア111の外周の周方向の一部分を被覆するように形成された第1クラッド部分112aが設けられた構成であってもよい。
【0033】
また、実施形態2に係る光ファイバ10は、図8Aに示すように、第1クラッド部分112aがコア111の外周の周方向の半周未満の部分を被覆するように形成されていてもよい。実施形態2に係る光ファイバ10は、図8Bに示すように、第1クラッド部分112aがコア111の外周の周方向の半周よりも多い部分を被覆するように形成されていてもよい。この第1クラッド部分112aによるコア111の被覆量の設定により、側面発光の放射方向を制御することができ、また、光路の遮蔽を抑制して側面発光の高効率化を図ることができる。さらに加えて、実施形態2に係る光ファイバ10は、図8Cに示すように、複数の第1クラッド部分112aが周方向に沿って間隔をおいて設けられていてもよい。
【0034】
その他の構成は実施形態1と同一である。
【0035】
(実施形態3)
図9A及びBは、実施形態3に係る光ファイバ10を示す。なお、実施形態1と同一構成及び名称の部分は、実施形態1と同一符号を用いて示す。
【0036】
実施形態3に係る光ファイバ10は、光ファイバ素線11と被覆層12とを備える。実施形態3に係る光ファイバ10は、接合部を有さない連続ファイバである。被覆層12は、コア111の外側を覆うように設けられた側面発光機能層を構成する。被覆層12は、側面発光のための機能性因子13を含む第1被覆層部分12aと、第1被覆層部分12aが含む機能性因子13を含まない第2被覆層部分12bとを有する。
【0037】
以上の構成を有する実施形態3に係る光ファイバ10によれば、コア111の外側を覆うように設けられた側面発光機能層を構成する被覆層12が、側面発光のための機能性因子13を含む第1被覆層部分12aと、それを含まない第2被覆層部分12bとを有するので、第1被覆層部分12aの側面発光位置を自在に設定することができ、そのため多様な用途に対応することができる。
【0038】
ここで、被覆層12の第1被覆層部分12aは、光ファイバ素線11の全周を被覆する円筒部分を構成しているとともに、長さ方向に間隔をおいて複数設けられている。被覆層12の第2被覆層部分12bは、第1被覆層部分12a以外の部分を構成している。したがって、被覆層12における第1及び第2被覆層部分12a,12bは、長さ方向に交互に相互に隣接して配設されている。第1被覆層部分12aの長さは、例えば0.1mm以上100000mm以下であり、また、第1被覆層部分12a間の間隔、つまり、第2被覆層部分12bの長さは、例えば0.1mm以上100000mm以下である。なお、第1及び第2被覆層部分12a,12bの長さは、目的により適宜設計されるので、その最大値は上記に限定されるものではない。また、この構造は、第1被覆層部分12aの長さ及び間隔がそれぞれ均一である周期的構造であっても、第1被覆層部分12aの長さ及び間隔のうちの少なくとも一方が不均一である非周期的構造であっても、どちらでもよい。
【0039】
被覆層12の第1及び第2被覆層部分12a,12bの形成材料としては、例えば、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ナイロン系樹脂、フッ素系樹脂などのポリマー材料が挙げられる。第1及び第2被覆層部分12a,12bは、同一のポリマー材料で形成されていても、異なるポリマー材料で形成されていても、どちらでもよい。被覆層12の断面外郭形状は、通常は円形であり、その直径、つまり、光ファイバ10の外径は、例えば200μm以上30000μm以下である。
【0040】
第1被覆層部分12aが含む機能性因子13としては、実施形態1と同様の光散乱因子、発光因子、蓄光因子が挙げられる。第1被覆層部分12aは、それらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。つまり、第1被覆層部分12aは、1種又は2種以上の光散乱因子、1種又は2種以上の発光因子、及び1種又は2種以上の蓄光因子のうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0041】
実施形態3に係る光ファイバ10において、コア111の入力端に光を入力すると、その光は、長さ方向に沿って伝送されると共に、コア111からクラッド112に抜け、更にクラッド112から被覆層12へ抜け、被覆層12の第1被覆層部分12aにおいて、機能性因子13と反応し、そして、それにより側面発光が得られる。すなわち、光ファイバ素線11からの光が光散乱因子で散乱し、その散乱光が側面発光として得られる。また、光ファイバ素線11からの光によって発光因子が励起状態とされ、それが基底状態に戻る際に放出される光が側面発光として得られる。さらに、光ファイバ素線11からの光を蓄光因子が蓄え、それを放出する燐光が側面発光として得られる。なお、コア111からクラッド112に抜け、更にクラッド112から被覆層12へ抜ける光の量は、それらの形成材料の屈折率で制御することができる。
【0042】
第2被覆層部分12bは、第1被覆層部分12aが含む機能性因子13とは異なる側面発光のための機能性因子を含む構成であってもよい。例えば、第1被覆層部分12aが光散乱因子又は発光因子を含み、且つ第2被覆層部分12bが蓄光因子を含んでいてもよい。この場合、コア111に光を入力したときには、第1被覆層部分12aからの散乱光又は発光、及び第2被覆層部分12bからの燐光が側面発光として得られる一方、コア111への光の入力を遮断したときには、第1被覆層部分12aからの側面発光は停止されるものの、第2被覆層部分12bからの燐光による側面発光だけが一定時間継続して得られる。また、第1及び第2被覆層部分12a,12bを発光させるエネルギーは、コア111から同時並列に供給されるため、遅延無く、高効率な並列発光動作が可能である。なお、被覆層12は、第1及び第2被覆層部分12a,12bが含むのとは更に異なる側面発光のための機能性因子を含む第3被覆層部分を有していてもよい。
【0043】
一方、第2被覆層部分12bは、第1被覆層部分12aが含む機能性因子13を含むあらゆる側面発光のための機能性因子を含まない構成であってもよい。光ファイバの全長に渡って機能性因子を含ませた場合、光ファイバの入力端から側面発光させたい部分までの伝送距離が長いと、その部分に達するまでに伝送光のパワーが低下するため、使用可能な光ファイバの長さに制約が生じる。しかしながら、このように第2被覆層部分12bがあらゆる側面発光のための機能性因子を含んでいなければ、光ファイバ10の入力端から側面発光させたい第1被覆層部分12aまでの伝送距離が長くても、機能性因子を含まない第2被覆層部分12bにおける伝送光のパワーの低下を抑制することができ、したがって、使用可能な光ファイバ10の長さの制約を解消することができる。
【0044】
実施形態3に係る光ファイバ10は、例えば、図10に示すように、光ファイバ10の外周に、周方向に全周に渡って延びるコの字溝12a’を、長さ方向に間隔をおいて複数形成した後、それらのコの字溝12a’に第1被覆層部分12aの形成材料を埋め込むことにより製造することができる。光ファイバ10へのコの字溝12a’の形成加工方法としては、例えば、レーザアブレーション加工、機械加工、エッチング加工等が挙げられる。また、コの字溝12a’への第1被覆層部分12aの形成材料の埋め込み加工としては、例えば、コの字溝12a’を形成した光ファイバ10を、機能性因子13を含む液状の第1被覆層部分12aの形成材料に浸漬して引き上げることによりコの字溝12a’に形成材料を充填し、ダイス等を通して余分な形成材料を除去した後、加熱或いは光を照射してコの字溝12a’に充填した形成材料を硬化させる加工等が挙げられる。
【0045】
なお、実施形態3に係る光ファイバ10は、図11に示すように、所定長の単一の第1被覆層部分12aが設けられた構成であってもよい。
【0046】
その他の構成は実施形態1と同一である。
【0047】
(実施形態4)
図12は、実施形態4に係る光ファイバ10を示す。なお、実施形態1と同一構成及び名称の部分は、実施形態1と同一符号を用いて示す。
【0048】
実施形態4に係る光ファイバ10では、被覆層12の機能性因子13を含む第1被覆層部分12aが、光ファイバ素線11の外周の周方向の一部分(図12では半周部分)を被覆するように形成されているとともに、全長に渡って設けられている。被覆層12の第2被覆層部分12bは、第1被覆層部分12a以外の部分を構成している。したがって、被覆層12における第1及び第2被覆層部分12a,12bは、周方向に隣接して配設されている。
【0049】
以上の構成を有する実施形態4に係る光ファイバ10によれば、コア111の外側を覆うように設けられた側面発光機能層を構成する被覆層12が、側面発光のための機能性因子13を含む第1被覆層部分12aと、それを含まない第2被覆層部分12bとを有するので、第1被覆層部分12aの側面発光位置を自在に設定することができ、そのため多様な用途に対応することができる。
【0050】
実施形態4に係る光ファイバ10は、例えば、図13に示すように、光ファイバ10における被覆層12の周方向の一部分を除去した後、その被覆層12の除去部分12a”に第1クラッド部分112aの形成材料を設けることにより製造することができる。被覆層12の除去加工方法としては、例えば、レーザアブレーション加工、機械加工、エッチング加工等が挙げられる。また、被覆層12の除去部分12a”に第1被覆層部分12aの形成材料を設ける加工としては、例えば、被覆層12の一部分を除去した光ファイバ10を、機能性因子13を含む液状の第1被覆層部分12aの形成材料に浸漬して引き上げることにより被覆層12の除去部分12a”に形成材料を付着させ、ダイス等を通して余分な形成材料を除去した後、加熱或いは光を照射して被覆層12の除去部分12a”に付着した形成材料を硬化させる加工等が挙げられる。
【0051】
なお、実施形態4に係る光ファイバ10は、図14に示すように、所定長の部分に、光ファイバ素線11の外周の周方向の一部分を被覆するように形成された第1被覆層部分12aが設けられた構成であってもよい。
【0052】
また、実施形態4に係る光ファイバ10は、図15Aに示すように、第1被覆層部分12aが光ファイバ11の外周の周方向の半周未満の部分を被覆するように形成されていてもよい。実施形態4に係る光ファイバ10は、図15Bに示すように、第1被覆層部分12aが光ファイバ素線11の外周の周方向の半周よりも多い部分を被覆するように形成されていてもよい。この第1被覆層部分12aによる光ファイバ11の被覆量の設定により、側面発光の放射方向を制御することができ、また、光路の遮蔽を抑制して側面発光の高効率化を図ることができる。さらに加えて、実施形態4に係る光ファイバ10は、図15Cに示すように、複数の第1被覆層部分12aが周方向に沿って間隔をおいて設けられていてもよい。
【0053】
その他の構成は実施形態1及び3と同一である。
【0054】
(その他の実施形態)
上記実施形態1及び2では、クラッド112に第1及び第2クラッド部分112a,112bが設けられた構成とし、上記実施形態3及び4では、被覆層12に第1及び第2被覆層部分12a,12bが設けられた構成としたが、これらの組み合わせ、つまり、クラッド112に第1及び第2クラッド部分112a,112bが設けられ、且つ被覆層12に第1及び第2被覆層部分12a,12bが設けられた構成であってもよい。
【0055】
具体的には、図16A及びBに示すように、クラッド112の第1クラッド部分112aと被覆層12の第1被覆層部分12aとが重複するように設けられていてもよい。この場合、例えば、クラッド112の第1クラッド部分112a及び被覆層12の第1被覆層部分12aに機能性因子13として光散乱因子を含めれば、光ファイバ素線11のコア111からの光をクラッド112の第1クラッド部分112aで散乱させ、それを同じ領域の被覆層12の第1被覆層部分12aで散乱させることができるので、散乱光による側面発光を効率よく得ることができる。また、クラッド112の第1クラッド部分112aに機能性因子13として光散乱因子を含め且つ被覆層12の第1被覆層部分12aに機能性因子13として発光因子又は蓄光因子を含めれば、光ファイバ素線11のコア111からの光をクラッド112の第1クラッド部分112aで散乱させ、その散乱光が同じ領域の被覆層12の第1被覆層部分12aに届いて発光又は燐光が助長されるので、発光又は燐光による側面発光を効率よく得ることができる。
【0056】
また、図17A及びBに示すように、クラッド112の第1クラッド部分112aと被覆層12の第1被覆層部分12aとがずれるように設けられていてもよい。この場合、例えば、クラッド112の第1クラッド部分112aに機能性因子13として光散乱因子を含め且つ被覆層12の第1被覆層部分12aに機能性因子13として発光因子又は蓄光因子を含めれば、或いは、クラッド112の第1クラッド部分112aに機能性因子13として発光因子又は蓄光因子を含め且つ被覆層12の第1被覆層部分12aに機能性因子13として光散乱因子を含めれば、散乱光及び発光又は燐光が相互に光路を塞がないので、それぞれの側面発光を効率よく得ることができる。
【0057】
上記実施形態1及び2では、光ファイバ素線11のクラッド112で側面発光機能層を構成したが、特にこれに限定されるものではなく、例えば、クラッドの外側を更に覆うように設けられたサポート層で側面発光機能層を構成してもよい。
【0058】
上記実施形態3及び4では、単一層の被覆層12に第1及び第2被覆層部分12a,12bを設けた構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、例えば、複数層で構成された被覆層のうちのいずれかの層に第1及び第2被覆層部分を設けた構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、光ファイバの技術分野について有用である。
【符号の説明】
【0060】
10 光ファイバ
11 光ファイバ素線
111 コア
112 クラッド(側面発光機能層)
112a 第1クラッド部分
112a’12a’ コの字溝
112a”,12a” 除去部分
112b 第2クラッド部分
12 被覆層(側面発光機能層)
12a 第1被覆層部分(第1機能層部分)
12b 第2被覆層部分(第2機能層部分)
13 機能性因子
14 光反射性材料
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B
図17A
図17B