(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】計測用X線CT装置、及び、その干渉防止方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/046 20180101AFI20220601BHJP
【FI】
G01N23/046
(21)【出願番号】P 2018007743
(22)【出願日】2018-01-19
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】特許業務法人MTS国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100076129
【氏名又は名称】松山 圭佑
(74)【代理人】
【識別番号】100144299
【氏名又は名称】藤田 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100150223
【氏名又は名称】須藤 修三
(72)【発明者】
【氏名】有我 幸三
(72)【発明者】
【氏名】張 玉武
(72)【発明者】
【氏名】浅野 秀光
(72)【発明者】
【氏名】今 正人
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-133008(JP,A)
【文献】特開2007-206019(JP,A)
【文献】特開2006-189342(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0074136(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/2276
A61B 6/00 - A61B 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転テーブル上に配置した被検体を回転させながらX線源からX線を照射し、その投影画像を再構成して被検体の断層画像を得るようにした計測用X線CT装置において、
前記回転テーブル上の被検体を上方又は側方から撮像する撮像手段と、
前記被検体を回転させながら該被検体の画像を取得する手段と、
取得した被検体画像を使って被検体回転時の最大外径を計算する手段と、
該最大外径に基づいて、前記回転テーブルの移動リミットを設定する手段と、
を備え、前記撮像手段の向きが、前記X線源と前記回転テーブルの中心を結ぶ直線に直交する方向と
されると共に、
前記回転テーブルの前記X線源側の前端が、前記撮像手段の中心と一致するようにされていることを特徴とする計測用X線CT装置。
【請求項2】
前記撮像手段が、カメラ又はラインセンサであることを特徴とする請求項
1に記載の計測用X線CT装置。
【請求項3】
回転テーブル上に配置した被検体を回転させながらX線源からX線を照射し、その投影画像を再構成して被検体の断層画像を得るようにした計測用X線CT装置の干渉防止に際して、
撮像手段を用いて、前記回転テーブル上の被検体を上方又は側方から撮像し、
前記被検体を回転させながら該被検体の画像を取得し、
取得した被検体画像を使って被検体回転時の最大外径を計算し、
該最大外径に基づいて、前記回転テーブルの移動リミットを設定すると共に、
前記撮像手段の向きを、前記X線源と前記回転テーブルの中心を結ぶ直線に直交する方向と
し、更に、前記回転テーブルの前記X線源側の前端が、前記撮像手段の中心と一致するように設置することを特徴とする計測用X線CT装置の干渉防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測用X線CT装置、及び、その干渉防止方法に係り、特に、X線管と被検体の干渉防止のための移動リミット設定を自動的に行うことが可能な計測用X線CT装置、及び、その干渉防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非破壊で被検体(測定物)の断層画像を得る計測用X線CT装置が知られている(特許文献1~3参照)。この計測用X線CT装置では、被検体を回転テーブル中心に配置して被検体を回転させながらX線照射を行う。
【0003】
計測で使用する一般的なX線CT装置の構成を
図1に示す。X線を遮蔽するエンクロージャ10の中にX線13を照射するX線管12、X線13を検出するX線検出器14、被検体8を置いてCT撮像の為に被検体8を回転させる回転テーブル16、X線検出器14に映る被検体8の位置や倍率を調整するためのXYZ移動機構部18があり、それらのデバイスを制御するコントローラ20、及び、ユーザ操作によりコントローラ20に指示を与える制御パソコン(PC)22などで構成される。
【0004】
制御PC22は、各デバイス制御の他に、X線検出器14に映る被検体8の投影画像を表示する機能や、被検体8の複数の投影画像から断層画像を再構成する機能を有する。
【0005】
又、X線13が物体を透過する際、照射方向とは別の方向に反射する散乱X線が少なからず発生し、その散乱X線がX線CT撮像結果にノイズとして表われることが知られている。その散乱X線を抑えるために、X線管12の付近にX線コリメータ24を設けている。X線コリメータ24は、X線の照射範囲を上下方向で制限するために、X線非透過素材(タングステンなど)でできた上側可動部24Aと下側可動部24Bの部品で構成され、それらの部品24A、24Bがそれぞれ上下方向に移動できるようになっている。このX線コリメータ24の上側可動部24A及び下側可動部24Bの位置は、被検体8の撮像範囲に合わせて制御PC22から調整される。
【0006】
前記X線管12を含むX線源から照射されたX線13は、
図2(斜視図)及び
図3(平面図)に示す如く、回転テーブル16上の被検体8を透過してX線検出器14に届く。被検体8を回転させながらあらゆる方向の被検体8の透過画像(投影画像)をX線検出器14で得て、逆投影法や逐次近似法などの再構成アルゴリズムを使って再構成することにより、被検体8の断層画像を生成する。
【0007】
前記XYZ移動機構部18のXYZ軸と回転テーブル16のθ軸を制御することにより、被検体8の位置を移動することができ、被検体8の撮影範囲(位置、倍率)や撮影角度を調整することができる。
【0008】
ここで、回転テーブル16の中心X0を
図4に示す如くX軸に沿ってX線管12の方向に移動すると、回転テーブル16の周辺部は、破線に示す如くX線管12より先の位置X1まで移動することができる。これは、小さい被検体8を拡大して撮影する場合にX線管12を近づける必要があるためであり、回転テーブル16の範囲内にX線管12が入ることを許容する機構になっている。なお、X線管12と回転テーブル16は、
図2に示すように垂直位置が異なるため干渉することはない。
【0009】
このように、回転テーブル16の範囲内に収まる被検体8であっても、X線管12に近づけすぎると、X線管12と干渉(衝突)する可能性があるため、撮影者は被検体8を設置する毎に、X線13を照射するX線管12と回転中の被検体8が干渉しないよう、予め回転テーブル16のX軸方向の移動リミットを設定する必要がある(特許文献4~6参照)。
【0010】
具体的には、次のような干渉防止手順が行われる。
(1)位置X0にある回転テーブル16の被検体8を回転して、目測により、回転時に被検体8がX線管12に干渉する可能性がある向き(θ1)に移動する。
(2)X線管12と被検体8が干渉しないように注意しながら、回転テーブル16をX線管12に近づける。
(3)X線管12と被検体8が充分に近づいた位置(X1)で、被検体8がX線管12に干渉しないように注意しながら、被検体8を再度回転する。もし干渉しそうな場合は、回転テーブル16をX線管12から少しだけ遠ざける。
(4)被検体8を回転して干渉しないことが確認できたら、その位置(X1)を回転テーブル16のX軸方向の移動リミット値(下限値)として設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2002-55062号公報
【文献】特開2004-12407号公報
【文献】特許第5408873号公報
【文献】特開2004-45212号公報(段落0305~0308)
【文献】特開2004-301860号公報(段落0286~0289)
【文献】特開2004-301861号公報(段落0286~0289)
【文献】特開2002-71345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、干渉防止作業は被検体8を交換する度、あるいは回転テーブル16上で被検体8を移動する毎に行う必要があり、非常に手間がかかっていた。
【0013】
一方、特許文献7には、X線CT装置と探触プローブ式計測装置が併用された3次元寸法測定装置において、X線CTによる断層像を用いて外郭形状データを作成し、プローブと被検体の接触の有無を確認して、測定不能範囲を設定することが記載されているが、X線CT装置のみの干渉防止には用いることができなかった。
【0014】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、X線管と被検体の干渉チェックと、その結果を反映した回転テーブルの移動リミット設定を自動的に行えるようにして、手間のかからない正確な干渉防止を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、回転テーブル上に配置した被検体を回転させながらX線源からX線を照射し、その投影画像を再構成して被検体の断層画像を得るようにした計測用X線CT装置において、前記回転テーブル上の被検体を上方又は側方から撮像する撮像手段と、前記被検体を回転させながら該被検体の画像を取得する手段と、取得した被検体画像を使って被検体回転時の最大外径を計算する手段と、該最大外径に基づいて、前記回転テーブルの移動リミットを設定する手段と、を備え、前記撮像手段の向きが、前記X線源と前記回転テーブルの中心を結ぶ直線に直交する方向とされると共に、前記回転テーブルの前記X線源側の前端が、前記撮像手段の中心と一致するようにされていることにより、前記課題を解決したものである。
【0016】
ここで、前記撮像手段を、カメラ又はラインセンサとすることができる。
【0017】
本発明は、又、回転テーブル上に配置した被検体を回転させながらX線源からX線を照射し、その投影画像を再構成して被検体の断層画像を得るようにした計測用X線CT装置の干渉防止に際して、撮像手段を用いて、前記回転テーブル上の被検体を上方又は側方から撮像し、前記被検体を回転させながら該被検体の画像を取得し、取得した被検体画像を使って被検体回転時の最大外径を計算し、該最大外径に基づいて、前記回転テーブルの移動リミットを設定すると共に、前記撮像手段の向きを、前記X線源と前記回転テーブルの中心を結ぶ直線に直交する方向とし、更に、前記回転テーブルの前記X線源側の前端が、前記撮像手段の中心と一致するように設置することにより、同様に前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、被検体を回転テーブル上に配置した後、1回の操作でX線管と被検体の干渉防止のための移動リミット設定を自動的に行うことができ、撮影者による手動且つ目測による移動リミット設定が不要になる。従って、被検体を交換する度、あるいは回転テーブル上で被検体を移動する度に行っていた移動リミット設定が自動化され、作業効率が大幅に向上する。更に、被検体から離れた位置で画像を撮像すればよく、被検体をX線管に近づける必要が無いので安全性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】計測用で使用する一般的なX線CT装置の全体構成を示す断面図
【
図5】本発明に係る計測用X線CT装置の第1実施形態の要部構成を示す平面図
【
図6】第1実施形態における干渉防止手順を示すフローチャート
【
図7】本発明に係る計測用X線CT装置の第2実施形態の要部構成を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態及び実施例に記載した内容により限定されるものではない。又、以下に記載した実施形態及び実施例における構成要件には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。更に、以下に記載した実施形態及び実施例で開示した構成要素は適宜組み合わせてもよいし、適宜選択して用いてもよい。
【0021】
本発明の第1実施形態では、
図5に要部構成を示す如く、従来の機構に対して撮像カメラ30を回転テーブル16の側方に設置し、回転テーブル16がある基準位置(以下、ホームポジションと称する)にある場合に、被検体8の側面の形状が撮像できるようにする。前記撮像カメラ30の向きは、X線管12と回転テーブル16の中心を結ぶ直線に直交する方向とし、位置は回転テーブル16の前端(
図5の左端)が撮像カメラ30の中心と一致するように設置する。なお、配設位置は、これに限定されず、被検体8の側方であってもよい。
【0022】
回転テーブル16の移動リミット設定は、例えば制御PC22に内蔵されたソフトウェアにより
図6に示す手順で行う。
【0023】
まず、ステップ101で、回転テーブル16をホームポジションに移動する。
【0024】
次いでステップ102で、回転テーブル16がホームポジションにある状態で、被検体8を回転させながら一定ピッチ毎に撮像を行い、複数枚の被検体画像を得る。
【0025】
次いでステップ103で、取得した被検体画像を使って、被検体回転中の回転中心からの最大外径Dmaxを計算する。この計算には、予め用意してある被検体8が無い画像と、被検体回転時の画像を比較することで、被検体8の存在位置を画像ピクセル毎に計算し、全ピクセルの計算結果から、被検体回転時の最大外径Dmaxを計算する。
【0026】
次いでステップ104に進み、被検体回転時の最大外径Dmaxから次式により回転テーブル16のX軸の移動リミット値Xminを求める。
Xmin=Dmax/2+α …(1)
ここで、αはマージン量である。
【0027】
次いでステップ105に進み、計算した回転テーブル16のX軸の移動リミット値Xminを制御PC22にセットする。
【0028】
なお、第1実施形態においては、撮像手段として撮像カメラ30が用いられ、回転テーブル16の前端の真横に配置されていたが、撮像手段や配置位置はこれに限定されず、
図7に示す第2実施形態のように、ラインセンサ32を被検体8の上方に配置してもよい。
【0029】
又、撮像手段は、撮像カメラ30やラインセンサ32に限定されない。
【符号の説明】
【0030】
8…被検体
12…X線管
13…X線
14…X線検出器
16…回転テーブル
18…XYZ移動機構部
20…コントローラ
22…制御パソコン(PC)
30…撮像カメラ
32…ラインセンサ