(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】粒状ポリカーボネートの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/14 20060101AFI20220601BHJP
【FI】
C08J3/14 CFD
(21)【出願番号】P 2021527086
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 KR2020000819
(87)【国際公開番号】W WO2020149673
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2021-05-17
(31)【優先権主張番号】10-2019-0007087
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0019348
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョンチュ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョン-ヒ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、チェ-フン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ムホ
(72)【発明者】
【氏名】イ、キ-チェ
(72)【発明者】
【氏名】チ、ソヨン
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/159727(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0052437(KR,A)
【文献】特開平6-200042(JP,A)
【文献】特開平7-268092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28
C08G 63/00-64/42
B29B 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネートおよび有機溶媒を含む重合反応溶液と、水および反溶媒を含む反溶媒溶液とを混合して混合溶液を製造する段階;
前記混合溶液を加熱して前記有機溶媒を除去する段階;および
前記混合溶液を乾燥またはろ過して粒状ポリカーボネートを得る段階を含み、
前記反溶媒は、下記式1~3を全て満足する、粒状ポリカーボネートの製造方法。
[式1]
11.8<Ra<14.1
式1中、Raは、ポリカーボネートに対する反溶媒のハンセン溶解度パラメータ(Hansen Solubility Parameter、HSP)を意味し;
[式2]
-0.88<△μ<1.95
式2中、△μは、反溶媒とポリカーボネートとの混合エネルギー(mixing energy)を意味し;
[式3]
△μ’<4.0
式3中、△μ’は、反溶媒と水との混合エネルギー(mixing energy)を意味する。
【請求項2】
前記反溶媒は、アセトニトリル(acetonitrile)、
(e)-2-ブテンニトリル((e)-2-butenenitrile)、
2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンニトリル(2-hydroxy-2-methylpropanenitrile)、
1-ブタノール(1-butanol)、
2,2,2-トリフルオロエタノール(2,2,2-trifluoroethanol)、
2-ブタノール(2-butanol)、
2-メチル-1-ブタノール(2-methyl-1-butanol)、
イソブタノール(isobutanol)、
tert-ブタノール(tert-butanol)、
2-メルカプトエタノール(2-mercaptoethanol)、
o-メチルヒドロキシルアミン(o-methylhydroxylamine)、
2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンニトリル(2-hydroxy-2-methylpropanenitrile)、
tert-ブチルヒドロペルオキシド(tert-butyl hydroperoxide)、
2-アミノプロパノール(2-aminopropanol)、
1-アミノ-2-プロパノール(1-amino-2-propanol)、
プロピオン酸(propionic acid)、
2-2’-(メチルイミノ)ビスエタノール(2-2’-(methylimino)bis ethanol)、
2-クロロエタノール(2-chloroethanol)、
1,2-ジアミノエタン(1,2-diaminoethane)、
2-プロペン-1-オール(2-propen-1-ol)、
4-メチル-2-ペンタノール(4-methyl-2-pentanol)、
2-(2-アミノエチル)アミノエタノール(2-(2-aminoethyl)aminoethanol)、
1-ヒドロキシ-2-プロパノン(1-hydroxy-2-propanone)、
ピルビン酸(pyruvic acid)、
n,n-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチルアミン(n,n-bis(2-hydroxyethyl)ethylamine)、
3-アミノ-1-プロパノール(3-amino-1-propanol)、
1,1,1-トリフルオロ-2-プロパノール(1,1,1-trifluoro-2-propanol)、
ピナコリルアルコール(pinacolyl alcohol)、
プロパルギル酸(propargylic
acid)、
ジメトキシジメチルシラン(dimethoxy dimethylsilane)、
3-メトキシ-1-ブタノール(3-methoxy-1-butanol)、
エチルヒドロペルオキシド(ethyl hydroperoxide)、および
n-エチル-n-ヒドロキシエタンアミン(n-ethyl-n-hydroxyethanamine)からなる群より選ばれる1つ以上を含む、請求項1に記載の粒状ポリカーボネートの製造方法。
【請求項3】
前記反溶媒は、アセトニトリル(acetonitrile)、1-ブタノール(1-butanol)、2-プロペン-1-オール(2-propen-1-ol)、または2-クロロエタノール(2-chloroethanol)である、
請求項1または2に記載の粒状ポリカーボネートの製造方法。
【請求項4】
前記反溶媒溶液および重合反応溶液は、2:8~5:5の重量比で混合する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の粒状ポリカーボネートの製造方法。
【請求項5】
前記反溶媒溶液は、前記反溶媒を反溶媒溶液の全重量に対して5~40重量%含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の粒状ポリカーボネートの製造方法。
【請求項6】
前記有機溶媒は、メチレンクロライドを含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の粒状ポリカーボネートの製造方法。
【請求項7】
前記加熱は、前記混合溶液の温度が40~70℃となるように行われる、
請求項1~6のいずれか一項に記載の粒状ポリカーボネートの製造方法。
【請求項8】
前記乾燥は、前記混合溶液の温度が80~150℃となるように行われる、
請求項1~7のいずれか一項に記載の粒状ポリカーボネートの製造方法。
【請求項9】
前記粒状ポリカーボネートは、ASTM D1895方法で測定したバルク密度が0.40~0.70g/cm
3である、
請求項1~8のいずれか一項に記載の粒状ポリカーボネートの製造方法。
【請求項10】
前記粒状ポリカーボネートの平均粒径は、0.3~10mmである、
請求項1~9のいずれか一項に記載の粒状ポリカーボネートの製造方法。
【請求項11】
前記加熱工程によって、前記ポリカーボネート重合
反応溶液に含まれている有機溶媒が、最初の100重量%に対して80~90重量%除去される、
請求項1~10のいずれか一項に記載の粒状ポリカーボネートの製造方法。
【請求項12】
前記粒状ポリカーボネートの粒径の標準偏差は、0.26mm以下である、
請求項1~11のいずれか一項に記載の粒状ポリカーボネートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状ポリカーボネートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートは、エンジニアリングプラスチックの一つとしてプラスチック産業で幅広く使用されている材料である。前記ポリカーボネートは、透明性、耐衝撃性、機械的強度、耐熱性などに優れ、透明シート、自動車バンパーおよび光ディスクなどの広範囲な分野で適用されている。
【0003】
このようなポリカーボネートは、通常、2価の芳香族ヒドロキシ化合物とホスゲンとを反応させる方法、または2価の芳香族ヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを反応させる交換法により製造されている。
【0004】
前記方法で製造されたポリカーボネート重合生成物内には、目的のポリカーボネート以外に、ポリカーボネートの製造に良く使用される有機溶媒であるメチレンクロライド(CH2Cl2)、トリエチルアミン(TEA)のような触媒成分、および塩化ナトリウム、炭酸ナトリウムのような塩成分などの不純物が存在する。したがって、ポリカーボネートの重合工程後には、高分子溶液中に存在する不純物を除去するための一連の精製工程が進行する。
【0005】
精製工程を経たポリカーボネート重合物は、溶媒除去過程を経てパウダー状、フレーク状、粒状などに形状をとるようになり、これを熱押出して最終的にペレット状に作る。
【0006】
ところが、パウダー状の場合には、作業中に飛散する問題があり、フレーク状の場合には、体積対比重量が顕著に小さくて他の高分子とのalloy製品の生産時に非効率的であるので、通常ペレットに加工して使用する。しかし、ペレットに加工するために高温の熱に露出させるため、本来のポリカーボネートが有する物性が低下する問題点があった。
【0007】
これを解決するために、熱への露出なく、溶媒除去過程中にてペレットと類似して高いバルク密度の粒状の形態を有するポリカーボネートを製造する研究が多く進められている。
【0008】
従来、精製方法として、反溶媒(antisolvent)を使用する方法がUS Patent No.5196507A、US Patent No.5726223Aなどに開示されている。前記文献には、溶媒とは混ざるものの、ポリカーボネートを溶解させない反溶媒を用いて、溶媒が除去されたポリカーボネート粒子を得る方法が開示された。しかし、前記文献に開示された方法によれば、多量の反溶媒を用いなければならず、球状のポリカーボネート粒子を得るために安定剤を使用しなければならないなどの問題点があった。
【0009】
US Patent No.4546172Aには、反溶媒なしに水のみを用いて高分子粒子を得る方法が開示されている。しかし、この方法の場合は、工程時間が長く、粒子の大きさが均一でなくて粉砕などの追加的な工程を経なければならない問題点があった。
【0010】
この他にも、スプレードライング(drying)、高温のスチーム噴射などの方法で溶媒を短時間に除去させてポリカーボネート粒子を製造する方法もあるが、前記方法によって得られるポリカーボネート粒子は、内部空隙が多くて粒子のバルク密度が低下する問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第5196507号明細書
【文献】米国特許第5726223号明細書
【文献】米国特許第4546172号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、安定剤や界面活性剤を用いずに、優れた物性の粒状(グラニュール)のポリカーボネート粒子が得られる、粒状ポリカーボネートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明は、
ポリカーボネート、および有機溶媒を含む重合反応溶液と、水および反溶媒を含む反溶媒溶液を混合して混合溶液を製造する段階;
前記混合溶液を加熱して有機溶媒を除去する段階;および
前記混合溶液を乾燥またはろ過して粒状ポリカーボネート粒子を得る段階を含み、
前記反溶媒は、下記式1~3を全て満足する、ポリカーボネートの製造方法を提供する。
【0014】
【0015】
式1中、Raは、ポリカーボネートに対する反溶媒のハンセン溶解度パラメータ(Hansen Solubility Parameter、HSP)を意味し;
【0016】
【0017】
式2中、△μは、反溶媒とポリカーボネートとの混合エネルギー(mixing energy)を意味し;
【0018】
【0019】
式3中、△μ’は、反溶媒と水との混合エネルギー(mixing energy)を意味する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ポリカーボネートの重合工程後の重合反応溶液中に核形成のための界面活性剤、安定剤、またはポリカーボネート粉末を用いなくても、バルク密度や粒径範囲の面で優れた物性の球状の粒状ポリカーボネート粒子を得ることができる。
【0021】
また、本発明の製造方法によれば、得られる粒状ポリカーボネートは、高温に露出しないため、高温の熱によるポリカーボネート固有の物性の低下の恐れがなく、適切な粒径範囲を有して微粉で飛散せず、流れ性が良くて作業環境に有利であるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施例により得られるポリカーボネート粒状のSEM写真である。
【
図2】本発明の実施例により得られるポリカーボネート粒状のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書で使用される用語は単に例示的な実施例を説明するために使用されたもので、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上、明らかに異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、1つまたはそれ以上の他の特徴や段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないことが理解されなければならない。
【0024】
本発明は、多様な変更が加えられて様々な形態を有し得るが、特定の実施例を例示し下記に詳しく説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるあらゆるの変更、均等物乃至代替物を含むことが理解されなければならない。
【0025】
以下、発明の具体的な実施形態による粒状ポリカーボネートの製造方法に関してより詳しく説明する。
【0026】
本発明の一実施形態により、ポリカーボネート、および有機溶媒を含む重合反応溶液と、水および反溶媒を含む反溶媒溶液を混合して混合溶液を製造する段階;前記混合溶液を加熱して有機溶媒を除去する段階;および前記混合溶液を乾燥またはろ過して粒状ポリカーボネートを得る段階を含み、前記反溶媒は、下記式1~3を全て満足する、粒状ポリカーボネートの製造方法が提供される:
【0027】
【0028】
式1中、Raは、ポリカーボネートに対する反溶媒のハンセン溶解度パラメータ(Hansen Solubility Parameter、HSP)を意味し;
【0029】
【0030】
式2中、△μは、反溶媒とポリカーボネートとの混合エネルギー(mixing energy)を意味し;
【0031】
【0032】
式3中、△μ’は、反溶媒と水との混合エネルギー(mixing energy)を意味する。
【0033】
具体的には、本発明の粒状ポリカーボネートの製造方法を各段階別に説明する。
【0034】
まず、ポリカーボネート、および有機溶媒を含む重合反応溶液と、水および反溶媒を含む反溶媒溶液を混合して混合溶液を製造する。
【0035】
本発明において、ポリカーボネートの重合方法は特に限定されず、2価のヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体を出発物質として、一般的なポリカーボネート樹脂の知られた重合方法により直接製造することができる。
【0036】
前記2価のヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体としては、ポリカーボネートの製造に使用されるものであれば特に限定されない。
【0037】
より具体的には、前記2価のヒドロキシ化合物としては、ビスフェノールA、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、またはα,ω-ビス[3-(ο-ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、これらのいずれか1つまたは2つ以上の混合物が使用できる。
【0038】
また、前記カーボネート前駆体としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ジ-m-クレシルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ホスゲン、トリホスゲン、ジホスゲン、ブロモホスゲン、またはビスハロホルメートなどが挙げられ、これらのいずれか1つまたは2つ以上の混合物が使用できる。
【0039】
前記重合方法としては、一例として界面重合方法を用いることができ、この場合、常圧と低い温度で重合反応が可能であり、分子量調節が容易な効果がある。前記界面重合は、通常塩成分および有機溶媒の存在下で行われる。
【0040】
前記界面重合に使用される物質は、ポリカーボネートの重合に使用できる物質であれば特に限定されず、その使用量も必要に応じて調節可能である。
【0041】
前記塩成分としては、一例として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物またはピリジンなどのアミン化合物を使用することができる。
【0042】
前記有機溶媒としては、通常ポリカーボネートの重合に使用される溶媒であれば特に限定されず、一例として、メチレンクロライド、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素を使用することができる。
【0043】
また、前記界面重合は、反応促進のために、トリエチルアミン、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド、テトラ-n-ブチルホスホニウムブロミドなどの3級アミン化合物、4級アンモニウム化合物、4級ホスホニウム化合物などのような反応促進剤を追加的に使用することができる。
【0044】
したがって、前記方法で製造されたポリカーボネート重合反応生成物内には、目的のポリカーボネート以外に、有機溶媒であるメチレンクロライド(MC)、トリエチルアミン(TEA)のような触媒成分、および塩化ナトリウム、炭酸ナトリウムのような塩成分などの不純物が存在する。
【0045】
本発明の一実施例によれば、有機溶媒を除去する段階を行う前に、前記重合反応生成物内に含まれている触媒成分および塩成分を除去する段階を追加的に行うことができる。前記触媒成分および塩成分を除去する段階は、本発明の属する技術分野で使用される通常の方法で行われ、特に限定されるものではない。例えば、遠心分離機を用いて、密度の差によって、ポリカーボネート、および有機溶媒を含む重合溶液と、触媒、および塩成分などのその他の成分が溶解している不純物溶液をそれぞれ分離することができる。
【0046】
本発明の明細書では、前記のように、ポリカーボネート重合反応生成物で触媒成分および塩成分を除去、分離し、実質的にポリカーボネート樹脂および有機溶媒のみを含むものに分離された溶液を「重合反応溶液」と称する。
【0047】
前記ポリカーボネート重合反応溶液には、重合反応溶液の全重量に対して、通常、ポリカーボネート樹脂が約5~約20重量%、有機溶媒が約80~約95重量%存在する。
【0048】
本発明は、このようなポリカーボネート重合反応溶液に含まれている有機溶媒を除去して、溶液の形態であるポリカーボネート樹脂を粒(グラニュール、granule)状のポリカーボネート粒子に製造する粒状化工程になってもよい。
【0049】
このようなポリカーボネート重合反応溶液と、水および特定の条件を満足する反溶媒を含む反溶媒溶液を混合して混合溶液を製造する。
【0050】
従来、ポリカーボネートの精製工程で、反溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールのようなアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類溶媒、エチルアセテートなどを使用する方法が知られている。しかし、このような反溶媒を用いる場合、多量の反溶媒を使用しなければならない。また、ポリカーボネートの粒状化のために界面活性剤や安定剤を投入するか、核生成および成長過程を補助するためのポリカーボネート粉末を追加投入しなければならないという欠点がある。
【0051】
本発明では、水および下記式1~3を満足する反溶媒の混合溶媒を用いる場合、ポリカーボネートの粒状化のために、界面活性剤、安定剤、またはポリカーボネート粉末を投入する必要がなく、少量の反溶媒でも優れた物性の粒状ポリカーボネートが得られることに着目して、本発明に至るようになった:
【0052】
【0053】
式1中、Raは、ポリカーボネートに対する反溶媒のハンセン溶解度パラメータ(Hansen Solubility Parameter、HSP)を意味する。
【0054】
【0055】
式2中、△μは、反溶媒とポリカーボネートとの混合エネルギー(mixing energy)を意味する。
【0056】
【0057】
式3中、△μ’は、反溶媒と水との混合エネルギー(mixing energy)を意味する。
【0058】
まず、上記式1中、ハンセン溶解度パラメータは、1つの物質が他の物質に溶解して溶液を形成する場合、溶解度を予測する方法の一種としてチャールズ・ハンセン(Charles Hansen)によって提案された。前記ハンセン溶解度パラメータに関するより詳しい説明は、例えば、「INDUSTRIAL SOLVENTS HANDBOOK」(pp.35-68,Marcel Dekker,Inc.,1996年発行)や、「DIRECTORY OF SOLVENTS」(pp.22-29,Blackie Academic&Professional,1996年発行)などに記載の事項を参照できる。
【0059】
通常、溶解度パラメータを計算するためには、凝集エネルギー(cohesive energy)を求めなければならないが、ハンセン溶解度パラメータでは、溶解度定数に影響する凝集エネルギーを下記の3つに分類して求める。
【0060】
δD:非極性分散エネルギーによって発生する溶解度定数(単位:(J/cm3)1/2)
δP:双極子極性エネルギーによって発生する溶解度定数(単位:(J/cm3)1/2)
δH:水素結合エネルギーによって発生する溶解度定数(単位:(J/cm3)1/2)
このようなパラメータを求めて2つの物質の溶解度の類似性を計算できる。例えば、ポリカーボネート(A)と反溶媒(B)の2つの物質に対してそれぞれのハンセン溶解度パラメータ値がそれぞれAの場合(δD1、δP1、δH1)、Bの場合(δD2、δP2、δH2)と仮定する時、ポリカーボネートに対する反溶媒のハンセン溶解度パラメータ(Ra)は、以下の式4で計算できる:
【0061】
【0062】
溶解度の面で、Ra値が小さいほど2つの物質の類似性が大きく、Ra値が大きいほど2つの物質の類似性が低下すると考えられる。
【0063】
前記ハンセン溶解度パラメータにおいて、ポリカーボネートおよび反溶媒として使用できる物質について、Dr.Hansenグループで開発したHSPiP(Hansen Solubility Parameters in Practice、3rd edition version 3.1 published by Hansen-Solubility.com)プログラムにより計算される。
【0064】
一方、反溶媒としてジエチルエーテル(diethyl ether)を用いて粒状ポリカーボネートを製造する場合、粒状化されたポリカーボネートではない、粒子が非常に小さいパウダー状のポリカーボネートが得られ、ヘキサン(hexane)を反溶媒として用いて粒状ポリカーボネートを製造する場合、大きすぎる粒子のポリカーボネートが形成されてかたまる現象が現れることを確認した。また、このようなポリカーボネート粒子の大きさは、ポリカーボネートと反溶媒とのハンセン溶解度パラメータ(Ra)に比例することを確認した。
【0065】
つまり、反溶媒がジエチルエーテル(diethyl ether)の時、上記式4によって計算したポリカーボネートとのハンセン溶解度パラメータ(Ra)が11.8であり、反溶媒がヘキサン(hexane)の時、上記式4によって計算したポリカーボネートとのハンセン溶解度パラメータ(Ra)が14.1であるが、Ra値が11.8以下である反溶媒の場合、ポリカーボネートが粒状化されないパウダー状のポリカーボネートとして得られ、Ra値が14.1以上である反溶媒の場合、逆にポリカーボネートが一塊にかたまって粒子形態をとらないことを実験的に確認した。
【0066】
例えば、前記Ra値が8.5であるエチルアセテート(ethyl acetate)、前記Ra値が7.2であるメチルエチルケトン(methyl ethyl ketone)、前記Ra値が8.5であるアセトン(acetone)などを反溶媒として用いた場合、いずれもパウダー状のポリカーボネートのみ得られ、前記Ra値が15.7であるエタノール(ethanol)、前記Ra値が19.6であるメタノール(methanol)、前記Ra値が38.2である水を反溶媒として用いた場合、ポリカーボネートが一塊にかたまって、粒状ポリカーボネートを得るための反溶媒として適合しなかった。
【0067】
このようなハンセン溶解度パラメータとポリカーボネートの粒状化との関係に着目して、本発明の製造方法では、上記式1を満足すること(Raが11.8より大きくかつ、14.1より小さい条件)を反溶媒の一条件とする。
【0068】
好ましくは、前記反溶媒のRa値が11.9以上、または12.0以上でかつ、13.8以下、または13.5以下、または13.3以下であってもよい。
【0069】
一方、粒状ポリカーボネートを形成するための反溶媒の条件として、ハンセン溶解度パラメータだけでなく、ポリカーボネートとの混合エネルギーも影響するもので、下記式2を満足する反溶媒を他の一条件をする。
【0070】
【0071】
式2中、△μは、反溶媒とポリカーボネートとの混合エネルギー(mixing energy)を意味する。
【0072】
上記式2中、△μは、反溶媒とポリカーボネートとの混合エネルギー(mixing energy)で、ポリカーボネートが反溶媒内に液状で混合されて存在する時の化学ポテンシャル値を意味する。前記混合エネルギーは、COSMO-RS理論を利用して計算した値を意味し、より詳しい内容は、2011 John Wiley&Sons,Ltd.WIREs ComputMol Sci 2011 1 699-709 DOI:10.1002/wcms.56を参照できる。
【0073】
前記混合エネルギー値が小さいほど反溶媒がポリカーボネートとの溶液でより安定的に混合されると考えられる。
【0074】
ハンセン溶解度パラメータと類似して、反溶媒としてジエチルエーテル(diethyl ether)を用いて粒状ポリカーボネートを製造する場合、粒状化されたポリカーボネートではない、粒子が非常に小さいパウダー状のポリカーボネートが得られ、エタノール(ethanol)を反溶媒として用いて粒状ポリカーボネートを製造する場合、大きすぎる粒子のポリカーボネートが形成されてかたまる現象が現れることを確認した。また、このようなポリカーボネート粒子の大きさは、ポリカーボネートと反溶媒との混合エネルギー(mixing energy)に比例することを確認した。
【0075】
つまり、反溶媒がジエチルエーテルの時、前記△μが-0.88であり、反溶媒がエタノールの時、ポリカーボネートとの前記△μが1.95であるが、前記△μが-0.88以下である反溶媒の場合、粒状化されないパウダー状のポリカーボネートとして得られ、前記△μが1.95以上である反溶媒の場合、逆にポリカーボネートが一塊にかたまって粒子形態をとらないことを実験的に確認した。
【0076】
例えば、前記△μが-1.27であるエチルアセテート(ethyl acetate)、前記△μが-1.41であるメチルエチルケトン(methyl ethyl ketone)、前記△μが-1.73であるアセトン(acetone)などを反溶媒として用いた場合、いずれもパウダー状のポリカーボネートのみ得られ、前記△μが2.05であるヘキサン(hexane)、前記△μが2.61であるメタノール(methanol)、前記△μが16.23である水を反溶媒として用いた場合、ポリカーボネートが一塊にかたまって、粒状ポリカーボネートを得るための反溶媒として適合しなかった。
【0077】
このようなポリカーボネートとの混合エネルギーの差とポリカーボネートの粒状化との関係に着目して、本発明の製造方法では、上記式2を満足すること(前記ポリカーボネートとの混合エネルギーの差(△μ)が-0.88より大きくかつ、1.95より小さい条件)を反溶媒の他の一条件とする。
【0078】
好ましくは、前記反溶媒の△μが0.1以上、または0.5以上、または1.0以上でかつ、1.8以下、または1.7以下、または1.65以下であってもよい。
【0079】
最後に、本発明の製造方法において、反溶媒は、単独で使用されるのではなく、水と混合して反溶媒溶液として使用するので、水と安定的に混合溶液を形成することが要求される。
【0080】
水と安定的に混合溶液を形成するためには、水との混合エネルギーが低くなければならず、これによって下記式3を満足することを反溶媒の他の一条件とする。
【0081】
【0082】
式3中、△μ’は、水との混合エネルギー(mixing energy)を意味する。
【0083】
好ましくは、前記反溶媒の△μ’が-2.5以上、または-2.0以上、または0.1以上でかつ、2.0以下、または1.5以下、または1.0以下であってもよい。
【0084】
上記のような式1~3を満足する反溶媒を下記表1にまとめた。本発明の一実施例によれば、下記表1に例示した反溶媒を好適に使用できるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0085】
【0086】
前記のように式1~3を全て満足する場合、反溶媒として好適に使用できるが、経済性、取扱容易性などを追加的に考慮する時、本発明の一実施例によれば、好ましくは、アセトニトリル、1-ブタノール、2-プロペン-1-オール、または2-クロロエタノールなどを使用することができる。
【0087】
本発明の一実施例によれば、前記反溶媒溶液が前記重合反応溶液と同一またはより少ない重量で混合される。より具体的には、前記反溶媒溶液と、前記重合反応溶液との重量比(反溶媒溶液:重合反応溶液)は、2:8~5:5、または3:7~5:5、または4:6~5:5であってもよい。前記反溶媒溶液の含有量が上述した範囲を外れてより少なければ、粒状化されず、一塊にかたまってしまう現象が起こり、逆に多すぎると、パウダー化されることがあり、実際の生産時の生産率の低下および非経済的な欠点があり、このような観点から前記重量比範囲を有することが好ましい。
【0088】
本発明の一実施例によれば、前記反溶媒溶液は、全体反溶媒溶液(水+反溶媒)の重量に対して、前記反溶媒を5重量%以上、または10重量%以上、または20重量%以上、または25重量%以上、または30重量%以上でかつ、40重量%以下、または38重量%以下、または35重量%以下で含むことができる。前記反溶媒の含有量が少なすぎると、不定形粒子(ポリカーボネート粒子の長軸が150mm以上の粒子)が製造されるか、一塊にかたまってしまう現象が起こり、逆に多すぎると、粒状が形成されずにパウダー状に製造されることがあり、このような観点から前記重量範囲を有することが好ましい。
【0089】
また、本発明の一実施形態によれば、前記ポリカーボネート重合反応溶液内に含まれているポリカーボネート100重量部に対して、前記反溶媒は50~250重量部、好ましくは90~200重量部含まれる。前記反溶媒が50重量部未満と少なければ、不定形粒子が製造されるか、一塊にかたまってしまう現象が起こり、逆に前記反溶媒が250重量部超過と多すぎると、粒状が形成されずにパウダー状に製造されることがあり、このような観点から前記重量範囲を有することが好ましい。
【0090】
本発明の一実施形態において、前記反溶媒溶液は、水と反溶媒のみからなり、反溶媒として上述した条件を満足する反溶媒以外に、他の反溶媒を含まない。
【0091】
ポリカーボネートの粒状化のための界面活性剤、安定剤または追加のポリカーボネート粉末を投入する方法が従来使用されているが、界面活性剤や安定剤を投入して粒状を製造する場合、このような投入物が完全に除去されなければならず工程が煩わしくなり、完全に除去できない場合には、ポリカーボネートの物性、特に透明度が低下する問題点があった。
【0092】
また、核生成のためにポリカーボネート粉末を投入する場合も、粉末投入工程が追加されて工程経済上好ましくなく、粉末は流れ性が良くなくて移送システムの構築にも困難があった。
【0093】
一方、本発明の一実施形態において、ポリカーボネートの粒状化のための界面活性剤、安定剤または追加のポリカーボネート粉末を投入しないので、これらの追加投入によって発生しうる上記の問題点を防止することができる。
【0094】
前記ポリカーボネート重合反応溶液と前記反溶媒溶液とを混合する方法は特に限定されず、前記ポリカーボネート重合反応溶液を先に容器に入れて反溶媒溶液を投入するか、または容器に先に反溶媒溶液を入れて前記ポリカーボネート重合反応溶液を投入する方法、または前記ポリカーボネート重合反応溶液と反溶媒溶液を同時に投入する方法などのいずれの方式も使用可能である。
【0095】
また、混合温度は特に限定されず、常温(25±2℃)の範囲で行われる。
【0096】
次に、前記混合溶液を加熱して有機溶媒を除去する。
【0097】
前記加熱は、混合溶液の温度が40~70℃、または40~60℃の温度となるように行われる。前記加熱温度が40℃未満と低すぎると、有機溶媒の除去が十分でないことがあり、加熱温度が70℃超過と高すぎると、粒状の内部に空隙が多量発生したり、空隙の大きさが大きくなって、バルク密度低下の原因になりうるので、加熱温度の範囲は上述した範囲が好ましい。
【0098】
また、前記加熱は、30~250分、または30~200分間行われる。前記加熱時間が30分未満と短すぎると、有機溶媒の除去が十分でないことがあり、前記加熱時間が250分超過と長すぎると、微粉が多量発生し、生産時の生産量および経済的側面で不利でありうる。
【0099】
さらに、前記加熱は、湯煎、ジャケット、ヒーティングバンド、コイルジャケットなどの方法によって行われるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0100】
本発明の一実施例によれば、加熱時、前記混合溶液を一定の速度で、例えば、80~900rpm、または100~800rpmの速度で撹拌しながら加熱することが好ましい。
【0101】
前記加熱工程によって、ポリカーボネート重合反応溶液に含まれている有機溶媒が、最初の100重量%含有量対比、80重量%以上、または84重量%以上でかつ、約90重量%以下、または約88重量%以下で除去される。有機溶媒の除去重量が80%未満の時は、粒状を形成できない段階で塊にかたまったり粘っこい形態のポリカーボネートが得られ、90%超過と過剰除去すると、生成された粒状が互いにぶつかって壊れながら多量の微粉を生成する。したがって、前記加熱によって有機溶媒を除去する段階は、有機溶媒が80~90%まで除去される程度に行われる。
【0102】
残りの有機溶媒は、後の段階でろ過や乾燥工程によって除去できる。
【0103】
次に、前記有機溶媒が80重量%以上除去された混合溶液を乾燥またはろ過して残りの水、および反溶媒を除去し、粒状ポリカーボネートを得る。
【0104】
前記乾燥は、混合溶液の温度が80~150℃、または100~150℃の温度となるように行われる。前記乾燥温度が80℃未満と低すぎると、有機溶媒および反溶媒の除去が完全にされないことがあり、乾燥温度が150℃超過と高すぎると、ポリカーボネートのガラス転移温度付近で物性の変化が起こりうるので、乾燥温度の範囲は上述した範囲が好ましい。
【0105】
一方、乾燥時間の場合には、工程効率などを考慮して、約60~約600分間進行できるが、これに限定されない。
【0106】
また、前記乾燥方法は、乾燥工程で通常使用されるものであれば、その構成の限定なく選択されて使用可能である。
【0107】
さらに、前記ろ過方法は、通常使用されるものであれば、その構成の限定なく選択されて使用可能である。
【0108】
上述した方法で粒状ポリカーボネートを得ることができ、得られる粒状ポリカーボネートは、ASTM D1895方法で測定したバルク密度が0.40~0.70g/cm3であってよい。
【0109】
より具体的には、前記粒状ポリカーボネートは、ASTM D1895方法で測定したバルク密度が0.40g/cm3以上、または0.42g/cm3以上、または0.45g/cm3以上、または0.50g/cm3以上であってもよい。このように本発明の製造方法によって得られる粒状ポリカーボネートは、高いバルク密度によって生産性に優れ、他のポリマーとコンパウンドしてポリマーアロイ(polymer alloy)を作る時、優れた相溶性を示すことができる。
【0110】
バルク密度の上限値は特に限定されないが、例えば、0.70g/cm3以下、または0.65g/cm3以下、または0.62g/cm3以下、または0.60g/cm3以下であってもよい。
【0111】
また、前記粒状ポリカーボネートの平均粒径は、0.3~10mmであってもよい。
【0112】
より具体的には、前記粒状ポリカーボネートの平均粒径は、0.3mm以上、または0.5mm以上、または0.7mm以上でかつ、10mm以下、または8mm以下、または7mm以下、または6mm以下であってもよい。
【0113】
前記粒状ポリカーボネートの平均粒径は、SEMイメージを用いて任意に選定された10区域でそれぞれ20個の粒状粒子を選定し、選定された粒状粒子の長軸の長さを測定してその平均値を求めるか、またはimage jプログラムにより5000個以上の粒状粒子の長軸の長さを測定してその平均値を求める方法で測定できる。
【0114】
また、前記粒状ポリカーボネートの粒径の標準偏差は、0.26mm以下、または0.25mm以下、または0.24mm以下、または0.23mm以下、または0.20mm以下、または0.18mm以下と非常に均一な粒径分布を示すことができる。標準偏差の下限値は低いほど優れているので、特に限定されないが、0.01mm以上、または0.03mm以上、または0.1mm以上であってもよい。
【0115】
さらに、得られる粒状ポリカーボネートは、実質的に球状であってもよい。
【0116】
また、前記粒状ポリカーボネートには、メチレンクロライドの残留量が50ppm以下、または30ppm以下、または10ppm以下と実質的にメチレンクロライドが全て除去された状態である。
【0117】
前記のように本発明の粒状ポリカーボネートの製造方法によれば、重合反応生成物中に存在する有機溶媒を効果的に除去することができ、バルク密度や粒径範囲の面で優れた物性の球状の粒状ポリカーボネート粒子を得ることができる。
【0118】
以下、本発明の好ましい実施例を詳しく説明する。ただし、これらの実施例は単に本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されるとは解釈されない。
【0119】
<実施例>
実施例1
ビスフェノールAとホスゲンを出発物質とし、溶媒としてメチレンクロライドを用いて、通常の界面重合によるポリカーボネート重合工程によって重合反応を行った。このような重合反応生成物を遠心分離して、ポリカーボネートおよびメチレンクロライドを含む重合反応溶液を準備した(重合反応溶液中にポリカーボネート17wt%、メチレンクロライド83wt%含む)。
【0120】
前記重合反応溶液3,500gと、水と1-ブタノールの反溶媒溶液(水90wt%、1-ブタノール10wt%)3,500gとを常温で混合し、50℃の温度で50分間1.5~3m/sの速度で撹拌してメチレンクロライドを85wt%まで除去した。
【0121】
次に、ポリカーボネートを100℃の温度に合わされたオーブンで120分間乾燥して、粒状ポリカーボネートを得た。
【0122】
実施例2
実施例1において、反溶媒溶液として水80wt%、1-ブタノール20wt%を含む反溶媒溶液を用いたことを除けば、実施例1と同様の方法で粒状ポリカーボネートを得た。
【0123】
実施例3
実施例1において、反溶媒溶液として水70wt%、1-ブタノール30wt%を含む反溶媒溶液を用いたことを除けば、実施例1と同様の方法で粒状ポリカーボネートを得た。
【0124】
実施例4
実施例1と同一のポリカーボネート重合反応溶液を準備した。
【0125】
前記重合反応溶液4,200gと、水と1-ブタノールの反溶媒溶液(水80wt%、1-ブタノール20wt%)2,800gとを常温で混合し、50℃の温度で50分間1.5~3m/sの速度で撹拌してメチレンクロライドを85wt%まで除去した。
【0126】
後の過程は実施例1と同様にして粒状ポリカーボネートを得た。
【0127】
実施例5
実施例1と同一のポリカーボネート重合反応溶液を準備した。
【0128】
前記重合反応溶液4,900gと、水と1-ブタノールの反溶媒溶液(水80wt%、1-ブタノール20wt%)2,100gとを常温で混合し、50℃の温度で50分間1.5~3m/sの速度で撹拌してメチレンクロライドを85wt%まで除去した。
【0129】
後の過程は実施例1と同様にして粒状ポリカーボネートを得た。
【0130】
実施例6
実施例1と同一のポリカーボネート重合反応溶液を準備した。
【0131】
前記重合反応溶液3,500gと、水と2-プロペン-1-オールの反溶媒溶液(水80wt%、2-プロペン-1-オール20wt%)3,500gとを常温で混合し、50℃の温度で50分間1.5~3m/sの速度で撹拌してメチレンクロライドを85wt%まで除去した。
【0132】
後の過程は実施例1と同様にして粒状ポリカーボネートを得た。
【0133】
実施例7
実施例1と同一のポリカーボネート重合反応溶液を準備した。
【0134】
前記重合反応溶液3,500gと、水と2-プロペン-1-オールの反溶媒溶液(水60wt%、2-プロペン-1-オール40wt%)3,500gとを常温で混合し、50℃の温度で50分間1.5~3m/sの速度で撹拌してメチレンクロライドを85wt%まで除去した。
【0135】
後の過程は実施例1と同様にして粒状ポリカーボネートを得た。
【0136】
実施例8
実施例1と同一のポリカーボネート重合反応溶液を準備した。
【0137】
前記重合反応溶液3,500gと、水と2-クロロエタノールの反溶媒溶液(水80wt%、2-クロロエタノール20wt%)3,500gとを常温で混合し、50℃の温度で50分間1.5~3m/sの速度で撹拌してメチレンクロライドを85wt%まで除去した。
【0138】
後の過程は実施例1と同様にして粒状ポリカーボネートを得た。
【0139】
実施例9
実施例1と同一のポリカーボネート重合反応溶液を準備した。
【0140】
前記重合反応溶液3,500gと、水とアセトニトリルの反溶媒溶液(水80wt%、アセトニトリル20wt%)3,500gとを常温で混合し、50℃の温度で50分間1.5~3m/sの速度で撹拌してメチレンクロライドを85wt%まで除去した。
【0141】
後の過程は実施例1と同様にして粒状ポリカーボネートを得た。
【0142】
実施例10
実施例1と同一のポリカーボネート重合反応溶液を準備した。
【0143】
前記重合反応溶液4,200gと、水とアセトニトリルの反溶媒溶液(水75wt%、アセトニトリル25wt%)2,800gとを常温で混合し、50℃の温度で60分間1.5~3m/sの速度で撹拌してメチレンクロライドを85wt%まで除去した。
【0144】
後の過程は実施例1と同様にして粒状ポリカーボネートを得た。
【0145】
実施例11
実施例1と同一のポリカーボネート重合反応溶液を準備した。
【0146】
前記重合反応溶液4,200gと、水とアセトニトリルの反溶媒溶液(水67.5wt%、アセトニトリル32.5wt%)2,800gとを常温で混合し、50℃の温度で60分間1.5~3m/sの速度で撹拌してメチレンクロライドを85wt%まで除去した。
【0147】
後の過程は実施例1と同様にして粒状ポリカーボネートを得た。
【0148】
実施例12
実施例1と同一のポリカーボネート重合反応溶液を準備した。
【0149】
前記重合反応溶液3,500gと、水とアセトニトリルの反溶媒溶液(水70wt%、アセトニトリル30wt%)3,500gとを常温で混合し、50℃の温度で50分間1.5~3m/sの速度で撹拌してメチレンクロライドを85wt%まで除去した。
【0150】
後の過程は実施例1と同様にして粒状ポリカーボネートを得た。
【0151】
比較例1
実施例1において、反溶媒溶液として水を70wt%、エチルアセテートを30wt%含む溶液を用いたことを除けば、実施例1と同様の方法でポリカーボネート粒子を得た。
【0152】
比較例2
実施例1において、反溶媒溶液として水を70wt%、アセトンを30wt%含む溶液を用いたことを除けば、実施例1と同様の方法でポリカーボネート粒子を得た。
【0153】
比較例3
実施例1において、反溶媒溶液として水を70wt%、ヘキサンを30wt%含む溶液を用いたことを除けば、実施例1と同様の方法でポリカーボネートを得た。得られたポリカーボネートは一塊にかたまって粒子形態をとることができなかった。
【0154】
比較例4
実施例1において、反溶媒溶液として水を100wt%含む溶液を用いたことを除けば、実施例1と同様の方法でポリカーボネートを得た。得られたポリカーボネートは一塊にかたまって粒子形態をとることができなかった。
【0155】
<実験例>
前記実施例および比較例から得られたポリカーボネート粒子に対して次の方法で物性を評価して、その結果を下記表2に示した。
【0156】
(1)平均粒径:SEMイメージ(30倍拡大)において任意の10区域それぞれ任意に20個の粒状ポリカーボネートを選定し、選定された粒状ポリカーボネートの長軸の長さを測定して平均値を求めた。
【0157】
また、実施例1のSEMイメージを
図1に、実施例12のSEMイメージを
図2に示した。
【0158】
(2)バルク密度:ASTM D1895方法で測定した。
【0159】
(3)標準偏差および変動係数(coefficient of variation、CV)
各実施例および比較例の粒状ポリカーボネートに対して、image Jプログラムを用いて、5,000個の粒子に対して粒径を測定し、標準偏差および変動係数を求めた。
【0160】
【0161】
表2を参照すれば、本発明の製造方法により水および本発明の反溶媒を含む反溶媒溶液を用いて有機溶媒を除去し、乾燥工程を行った実施例1~12の場合、球状の粒状ポリカーボネートを得ており、0.43g/cm3以上の優れたバルク密度と0.26mm以下の粒径標準偏差を示した。しかし、反溶媒溶液として従来の溶媒または水のみを用いた比較例1~4の場合、粒状ポリカーボネート粒子を得ることができなかった。