(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-02
(45)【発行日】2022-06-10
(54)【発明の名称】パルプ用洗浄剤
(51)【国際特許分類】
D21C 9/02 20060101AFI20220603BHJP
C11D 1/722 20060101ALI20220603BHJP
C07C 43/13 20060101ALI20220603BHJP
【FI】
D21C9/02
C11D1/722
C07C43/13 C
(21)【出願番号】P 2018155302
(22)【出願日】2018-08-22
【審査請求日】2021-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104813
【氏名又は名称】古谷 信也
(72)【発明者】
【氏名】橋本 直也
(72)【発明者】
【氏名】西本 剛
(72)【発明者】
【氏名】小松 充
(72)【発明者】
【氏名】二木 栄
(72)【発明者】
【氏名】山本 英男
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-270222(JP,A)
【文献】特表2011-524940(JP,A)
【文献】特表2005-531644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21C 9/02
C11D 1/722
C07C 43/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される非イオン性界面活性剤(X)を含むパルプ用洗浄剤
であって、一般式(1)において、R
1
が3,5,5-トリメチルヘキサン-1-イルである、パルプ用洗浄剤。
R
1O[(C
2H
4O)
p/(C
3H
6O)
q]H (1)
[一般式(1)中、R
1は炭素数8~9の分岐のアルキル基を表し;pはエチレンオキシ基の数平均付加モル数で、1~5の数であり;qはプロピレンオキシ基の数平均付加モル数で、1~10の数であり;[(C
2H
4O)
p/(C
3H
6O)
q]はエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の付加形式がランダム状又はブロック状であることを表す。]
【請求項2】
一般式(1)において、p+qが3~10の数である請求項
1に記載のパルプ用洗浄剤。
【請求項3】
一般式(1)において、q≧pである請求項1
又は2に記載のパルプ用洗浄剤。
【請求項4】
一般式(1)において、[(C
2H
4O)
p/(C
3H
6O)
q]のエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の付加形式が、ブロック状である請求項1~
3のいずれか1項に記載のパルプ用洗浄剤。
【請求項5】
エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基のブロック状である付加形式が、[(C
3H
6O)
q-(C
2H
4O)
p]である請求項
4に記載のパルプ用洗浄剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパルプ用洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
パルプを製造する工程は、木材チップを蒸解してパルプを得る蒸解手順と、このパルプとリグニンを含む黒液とを分離し、分離されたパルプを洗浄する洗浄手順と、洗浄されたパルプを漂白する漂白手順と、を有する(例えば、特許文献1参照)。このようにして製造される漂白されたパルプは、製紙等に使用されることになる。
【0003】
パルプの洗浄系(酸素脱リグニン工程を含む)において、リグニン等の抽出成分を効率よくパルプから除去することは、プロセスの生産性向上に大きく寄与する。これまでは、主に洗浄機の改良によってパルプの洗浄効率の改善がなされてきたが、これには多くのコストがかかることから、設備改造を伴わない薬品による実用的な改善も試みられている。
【0004】
例えば、パルプの洗浄効率の高める薬品としては界面活性剤が挙げられるが、その中でも、非イオン系界面活性剤が広く適用されている(例えば、特許文献2及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公昭48-39763号公報
【文献】特開2011-26713号公報
【文献】特開平5-302284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2及び3に記載の非イオン性界面活性剤のリグニンに対する洗浄性は、満足のいくものではなく、また、樹脂等の有機物(汚れ成分)に対する洗浄性も十分でないという問題があった。
そこで、本発明は、従来の非イオン性界面活性剤に比して、パルプに付着しているリグニン分解物及び樹脂等の有機物(汚れ成分)を取り除く機能に優れた界面活性剤を含有するパルプ洗浄剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者はこれらの問題を解決すべく誠意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は、下記一般式(1)で表される非イオン性界面活性剤(X)を含むパルプ用洗浄剤である。
R1O[(C2H4O)p/(C3H6O)q]H (1)
[一般式(1)中、R1は炭素数8~9の分岐のアルキル基を表し;pはエチレンオキシ基の数平均付加モル数で、1~5の数であり;qはプロピレンオキシ基の数平均付加モル数で、1~10の数であり;[(C2H4O)p/(C3H6O)q]はエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の付加形式がランダム状又はブロック状であることを表す。]
【発明の効果】
【0008】
本発明のパルプ用洗浄剤は、パルプ洗浄工程に用いることで白色度が高く、かつ汚れ成分である有機物の付着量が少ないパルプを得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のパルプ用洗浄剤は、下記一般式(1)で表される非イオン性界面活性剤(X)を含む。
なお、非イオン性界面活性剤(X)は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。
R1O[(C2H4O)p/(C3H6O)q]H (1)
【0010】
一般式(1)中、R1は炭素数8~9の分岐のアルキル基を表す。
炭素数8~9の分岐のアルキル基としては、炭素数8~9の分岐のアルキル基であって、メチル基を2個有するアルキル基(r1)、メチル基を3個有するアルキル基(r2)、メチル基を4個有するアルキル基(r3)及びメチル基を5個以上有するアルキル基(r4)等が挙げられる。
【0011】
前記のメチル基を2個有するアルキル基(r1)としては、2-オクチル基、2-エチルヘキサン-1-イル基、6-メチルヘプタン-1-イル基、2-ノニル基、7-メチルオクタン-1-イル基等が挙げられる。
【0012】
前記のメチル基を3個有するアルキル基(r2)としては、3-メチルヘプタン-3-イル及び3,5-ジメチル-ヘキサン-1-イル等が挙げられる。
【0013】
前記のメチル基を4個有するアルキル基(r3)としては、3,5,5-トリメチルヘキサン-1-イル基及び2,6-ジメチルヘプタン-4-イル基及び2,3,5-トリメチルヘキサン-1-イル等が挙げられる。
【0014】
前記のメチル基を5個以上有するアルキル基(r4)としては、2,2-ジメチル-5-メチルヘキサン-4-イル等が挙げられる。
【0015】
これらのR1の内、リグニン等に対する洗浄性の観点から好ましいのは、前記のメチル基を3個有するアルキル基(r2)、メチル基を4個有するアルキル基(r3)及びメチル基を5個以上有するアルキル基(r4)であり、更に好ましいのは、メチル基を4個有するアルキル基(r3)及びメチル基を5個以上有するアルキル基(r4)であり、特に好ましいのは3,5,5-トリメチルヘキサン-1-イルである。
【0016】
一般式(1)中、pはエチレンオキシ基の数平均付加モル数で、1~5の数である。数平均付加モル数は整数の場合もあれば小数の場合もあり得る(以下、おなじ)。
pが1未満であるとリグニン等に対する洗浄性が悪化する。
pが5を超えるとリグニン等に対する洗浄性が悪化する。
また、pは、リグニン等に対する洗浄性の観点から1~3の数であることが好ましい。
【0017】
一般式(1)中、qはプロピレンオキシ基の数平均付加モル数で、1~10の数である。
qが1未満であるとリグニン等に対する洗浄性が悪化する。
qが10を超えるとリグニン等に対する洗浄性が悪化する。
また、qは、リグニン等に対する洗浄性の観点から2~8の数であることが好ましく、3~7の数であることが更に好ましい。
【0018】
pとqの関係としては、リグニン等に対する洗浄性の観点からp+qが3~10の数であることが好ましく、p+qが4~8の数であることが更に好ましい。
なお、p又はqで表される数平均付加モル数は、非イオン性界面活性剤(X)の分子集団における各付加モル数の分子当たりの数平均値である。
p及びqは、非イオン性界面活性剤(X)が後に詳述する通り、「R1に水酸基が結合したアルコール」に、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加反応させて製造した場合には、反応原料の仕込みモル数に基づいて算出することもできる。
また、pとqの関係としては、リグニン等に対する洗浄性の観点からq≧pであることが好ましい。
【0019】
一般式(1)中、(C2H4O)はエチレンオキシ基を表し、(C3H6O)はプロピレンオキシ基を表す。
[(C2H4O)p/(C3H6O)q]はエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の付加形式がランダム状又はブロック状であることを表す。
ここで、[(C2H4O)p/(C3H6O)q]のエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の付加形式は、リグニン等に対する洗浄性の観点からブロック状であることが好ましく、その場合、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基のブロック付加形式はエチレンオキシ基ブロック-プロピレンオキシブロックの順とその逆の場合もあり得るが、なかでも[(C3H6O)q-(C2H4O)p]であること[即ち、「R1O」に(C3H6O)qが結合し、続いて(C2H4O)pがブロック状に結合する付加形式]が更に好ましい。
【0020】
本発明のパルプ用洗浄剤は、必要に応じて、水、有機溶剤、キレート剤、ビルダー、酵素、消泡剤、他の非イオン性界面活性剤等を含有しても良い。
【0021】
前記のキレート剤は、金属を錯体化する作用を有する化合物を指す。使用できるキレート剤としては、特に限定されないが、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、HEDTA(ヒドロキシエチレンジアミン四酢酸)、EDDS(エチレンジアミンコハク酸)、TTHA(トリエチレンテトラアミン六酢酸)、HEDP(ヒドロキシエタンホスホン酸)、NTMP(ニトリロトリスメチレンホスホン酸)及びPBTC(ホスホノブタントリカルボン酸)等が挙げられる。
前記のキレート剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記のビルダーとしては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸系ポリマー、マレイン酸系ポリマーが使用できる。
前記のビルダーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
本発明のパルプ用洗浄剤が含有する前記の非イオン性界面活性剤(X)の重量割合は、リグニン等に対する洗浄性の観点から、60~100重量%であることが好ましい。
【0024】
前記の非イオン性界面活性剤(X)は、公知の方法により製造することができる。例えば、前記のR1に水酸基が結合したアルコールに、アルカリ触媒(水酸化カリウム等)又は酸触媒(三フッ化ホウ素等)を加え窒素雰囲気下にてエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加反応させて製造することができる。
【0025】
<パルプ洗浄方法>
パルプの洗浄工程は、向流多段洗浄が一般的である。真空型フィルターや加圧型フィルター、プレスフィルター等様々な洗浄装置を2台~6台連結してパルプを洗浄する方法である。最後段の洗浄装置にのみ、ボイラー回収温水を使用し、その洗浄ろ液を一段前の洗浄装置の洗浄水として用い、その洗浄ろ液を更にもう一段前の洗浄装置の洗浄水として用いるので、向流洗浄と呼ぶ。この場合、リグニン等の汚れ成分有機物は、最前段のろ液に濃縮される事となり、回収が容易になる。また、洗浄装置の中間に、酸素脱リグニン反応塔を設置し、リグニンの脱離を促進する例もある。
【0026】
<パルプ洗浄剤>
パルプ洗浄剤はこの洗浄工程に添加する。具体的には、パルプ移送ライン及びろ液循環ライン等への添加であり、上記の向流多段洗浄では、最後段の洗浄機入口に添加する事が効率的である。ただし、最後段の洗浄機への添加に限定するものではなく、パルプの滞留時間及び洗浄機形式等の因子によっては、すべての洗浄機入口への添加が効率的な場合もある。パルプ洗浄剤の添加量は、0.1~1.5kg/パルプt(この場合のパルプは乾燥パルプを指す)であることが好ましい。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
製造例1
撹拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ボンベ、減圧及び窒素導入ラインの付いた2Lオートクレーブ中に3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール144重量部(1モル部)、水酸化カリウム0.5重量部を加え撹拌を開始し窒素封入し100℃に昇温した後、圧力-0.1MPaGで1時間脱水した。次いで130℃に昇温し、圧力0.3MPaG以下でプロピレンオキサイド232重量部(4モル部)を5時間かけて逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで1時間撹拌した(1段階目)。次いでエチレンオキサイド88重量部(2モル部)を3時間かけて逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで1時間撹拌した(2段階目)。その後60℃に冷却し、酢酸0.5重量部で中和し、非イオン性界面活性剤(X-1)を得た。
【0029】
製造例2
撹拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ボンベ、減圧及び窒素導入ラインの付いた2Lオートクレーブ中に3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール144重量部(1モル部)、水酸化カリウム0.5重量部を加え撹拌を開始し窒素封入し100℃に昇温した後、圧力-0.1MPaGで1時間脱水した。次いで130℃に昇温し、圧力0.3MPaG以下でエチレンオキサイド88重量部(2モル部)を3時間かけて逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで1時間撹拌した(1段階目)。次いでプロピレンオキサイド232重量部(4モル部)を5時間かけて逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで1時間撹拌した(2段階目)。その後60℃に冷却し、酢酸0.5重量部で中和し、非イオン性界面活性剤(X-2)を得た。
【0030】
製造例3
撹拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ボンベ、減圧及び窒素導入ラインの付いた2Lオートクレーブ中に3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール144重量部(1モル部)、水酸化カリウム0.5重量部を加え撹拌を開始し窒素封入し100℃に昇温した後、圧力-0.1MPaGで1時間脱水した。次いで130℃に昇温し、圧力0.3MPaG以下でエチレンオキサイド88重量部(2モル部)及びプロピレンオキサイド232重量部(4モル部)を同時に5時間かけて逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで1時間撹拌した。その後60℃に冷却し、酢酸0.5重量部で中和し、非イオン性界面活性剤(X-3)を得た。
【0031】
製造例4
製造例1において、プロピレンオキサイド232重量部(4モル)を174重量部(3モル部)に、エチレンオキサイド88重量部(2モル部)を132重量部(3モル部)に変更した以外は製造例1と同様に製造し、非イオン性界面活性剤(X-4)を得た。
【0032】
製造例5
製造例1において、プロピレンオキサイド232重量部(4モル)を58重量部(1モル部)に、エチレンオキサイド88重量部(2モル部)を220重量部(5モル部)に変更した以外は製造例1と同様に製造し、非イオン性界面活性剤(X-5)を得た。
【0033】
製造例6
製造例1において、プロピレンオキサイド232重量部(4モル)を174重量部(3モル部)に、エチレンオキサイド88重量部(2モル部)を44重量部(1モル部)に変更した以外は製造例1と同様に製造し、非イオン性界面活性剤(X-6)を得た。
【0034】
製造例7
製造例1において、プロピレンオキサイド232重量部(4モル)を580重量部(10モル部)に、エチレンオキサイド88重量部(2モル部)を44重量部(1モル部)に変更した以外は製造例1と同様に製造し、非イオン性界面活性剤(X-7)を得た。
【0035】
参考製造例8
製造例1において、3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール144重量部(1モル部)を2-エチル-1-ヘキサノール130重量部(1モル部)に変更した以外は製造例1と同様に製造し、非イオン性界面活性剤(X-8)を得た。
【0036】
比較製造例1
製造例1において、3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール144重量部(1モル部)を2-デカノール158重量部(1モル部)に変更した以外は製造例1と同様に製造し、比較用の非イオン性界面活性剤(X’-1)を得た。
【0037】
比較製造例2
製造例1において、3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール144重量部(1モル部)を4-メチル-1-ペンタノール102重量部(1モル部)に変更した以外は製造例1と同様に製造し、比較用の非イオン性界面活性剤(X’-2)を得た。
【0038】
比較製造例3
製造例1において、3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール144重量部(1モル部)を1-オクタノール130重量部(1モル部)に変更した以外は製造例1と同様に製造し、比較用の非イオン性界面活性剤(X’-3)を得た。
【0039】
比較製造例4
撹拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ボンベ、減圧及び窒素導入ラインの付いた2Lオートクレーブ中に2-エチル-1-ヘキサノール130重量部(1モル部)、水酸化カリウム0.5重量部を加え撹拌を開始し窒素封入し100℃に昇温した後、圧力-0.1MPaGで1時間脱水した。次いで130℃に昇温し、圧力0.3MPaG以下でプロピレンオキサイド232重量部(4モル部)を5時間かけて逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで1時間撹拌した。その後60℃に冷却し、酢酸0.5重量部で中和し、比較用の非イオン性界面活性剤(X’-4)を得た。
【0040】
比較製造例5
製造例8において、エチレンオキサイド88重量部(2モル部)を264重量部(6モル部)に変更した以外は製造例8と同様に製造し、比較用の非イオン性界面活性剤(X’-5)を得た。
【0041】
比較製造例6
撹拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ボンベ、減圧及び窒素導入ラインの付いた2Lオートクレーブ中に2-エチル-1-ヘキサノール130重量部(1モル部)、水酸化カリウム0.5重量部を加え撹拌を開始し窒素封入し100℃に昇温した後、圧力-0.1MPaGで1時間脱水した。次いで130℃に昇温し、圧力0.3MPaG以下でエチレンオキサイド88重量部(2モル部)を5時間かけて逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで1時間撹拌した。その後60℃に冷却し、酢酸0.5重量部で中和し、比較用の非イオン性界面活性剤(X’-6)を得た。
【0042】
比較製造例7
製造例8において、プロピレンオキサイド232重量部(2モル部)を638重量部(11モル部)に変更した以外は製造例8と同様に製造し、比較用の非イオン性界面活性剤(X’-7)を得た。
【0043】
<実施例1~7、参考例8及び比較例1~8>
表1に記載の非イオン界面活性剤(X-1)~(X-8)及び比較用の非イオン界面活性剤(X’-1)~(X’-7)をパルプ用洗浄剤として用いて、以下の方法により、白色度及び溶剤抽出量を評価した。
なお、表1においてのみ、「(EO)」と「(PO)」との間の「-」は、「(EO)」及び「(PO)」がブロック状に結合していることを示し、また、「(EO)」と「(PO)」との間の「/」は、「(EO)」及び「(PO)」がランダム状に結合していることを示す。
【0044】
<洗浄性試験>
針葉樹未晒しパルプ製造工場提供の洗浄工程出口パルプを純水で2%濃度に希釈し、試験スラリーとした。試験スラリー500部を恒温水槽で70℃に加温後、対パルプとして100ppmとなるよう0.001部のパルプ用洗浄剤を添加し、ブレンダー(ブラウン社製MR5555MCA 撹拌強度10)で1分間撹拌した。このスラリーを-30kPaで吸引ろ過してシートを作成した。次にシートをろ紙で挟み、シートマシン用プレス[熊谷理機工業(株)製]を用いて、圧力0.35MPaで3分間プレスした後、23℃、湿度20%の恒温恒湿室で24時間静置し、白色度測定装置(TECHNIDYNE社製 カラータッチ2ISOモデル)で白色度を測定した。
【0045】
<溶剤抽出量測定>
前記の白色度測定後のシートの重量を秤量し、ソックスレー抽出用円筒ろ紙に投入した。これを連続ソックスレー抽出装置[柴田科学(株)製B811型LSVタイプ]にセットし、溶媒(体積比ヘキサン:エタノール=1:1)で抽出した。抽出条件は加熱時間4時間10分、リンス時間は1時間とした。ヒーター設定は16でエタノールの沸点以上を維持した。抽出液の溶媒を除去し、抽出物の重量を秤量した。溶剤抽出量はシート10gに対する抽出物の固形分重量をmgで示した。
【0046】
【0047】
表1に示されるように、本発明の非イオン界面活性剤(X-1)~(X-7)を用いたパルプ用洗浄剤(実施例1~7)は、本発明の非イオン界面活性剤(X)を用いないパルプ用洗浄剤(比較例1~8)と比べ、大きく白色度が向上しており、また溶剤抽出量が少ないことから、汚れ成分が除去できていた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のパルプ用洗浄剤は、パルプを洗浄する工程で用いることで、最終的に得られるパルプの白色度を大きく向上させることができ、また、パルプから汚れ成分を効率よく除去できることから、パルプ用洗浄剤として最適である。