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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】電極群及び亜鉛電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20220606BHJP
   H01M 10/30 20060101ALI20220606BHJP
   H01M 4/06 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/30 Z
H01M4/06 T
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018060427
(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公開番号】P2019175615
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【弁理士】
【氏名又は名称】古下 智也
(72)【発明者】
【氏名】櫛部 有広
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敦
【審査官】近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-007107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/30
H01M 4/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の負極及び複数の正極を備える電極群であって、
前記複数の負極のそれぞれが、亜鉛を含む活物質を含有する負極材を有し、
前記負極及び前記正極が交互に積層されており、
前記複数の負極が、前記電極群における前記負極及び前記正極の積層方向の両端部の少なくとも一方に配置された第1の負極と、前記正極を介して前記第1の負極に隣接する第2の負極と、を含み、
前記第2の負極における前記活物質の質量が前記第1の負極における前記活物質の質量よりも大きい、電極群。
【請求項2】
前記第2の負極における前記活物質が、前記複数の負極における前記活物質の質量のうちの最大の質量を有する、請求項1に記載の電極群。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電極群を備える、亜鉛電池。
【請求項4】
ニッケル亜鉛電池である、請求項3に記載の亜鉛電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極群及び亜鉛電池に関する。
【背景技術】
【0002】
亜鉛負極を用いる亜鉛電池としては、ニッケル亜鉛電池、空気亜鉛電池、銀亜鉛電池等が知られている。例えば、ニッケル亜鉛電池は、水酸化カリウム水溶液等の水系電解液を用いる水系電池であることから、高い安全性を有すると共に、亜鉛電極とニッケル電極との組み合わせにより、水系電池としては高い起電力を有することが知られている。さらに、ニッケル亜鉛電池は、優れた入出力性能に加えて、低コストであることから、産業用途(例えば、バックアップ電源等の用途)及び自動車用途(例えば、ハイブリッド自動車等の用途)への適用可能性が検討されている。
【0003】
ニッケル亜鉛電池は、多孔膜を介して対向する正極及び負極を備えている。ニッケル亜鉛電池に用いられる多孔膜としては、表面にニッケル層を有する微孔性フィルムセパレータが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-343096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、亜鉛電池に対しては、優れた寿命性能を得ることが求められている。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、優れた寿命性能を有する亜鉛電池を得ることが可能な電極群を提供することを目的とする。また、本発明は、優れた寿命性能を有する亜鉛電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電極群の一実施形態は、複数の負極及び複数の正極を備える電極群であって、前記複数の負極のそれぞれが、活物質を含有する負極材を有し、前記負極及び前記正極が交互に積層されており、前記複数の負極が、前記電極群における前記負極及び前記正極の積層方向の両端部の少なくとも一方に配置された第1の負極と、前記正極を介して前記第1の負極に隣接する第2の負極と、を含み、前記第2の負極における前記活物質の質量が前記第1の負極における前記活物質の質量よりも大きい。このような電極群によれば、優れた寿命性能を有する亜鉛電池を得ることができる。
【0008】
本発明に係る亜鉛電池の一実施形態は、上述の電極群を備える。このような亜鉛電池によれば、優れた寿命性能を得ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、亜鉛電池において優れた寿命性能を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。また、本明細書において「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。また、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0012】
本実施形態に係る亜鉛電池(例えば亜鉛二次電池)としては、ニッケル亜鉛電池、空気亜鉛電池、銀亜鉛電池等が挙げられる。本実施形態に係る亜鉛電池の基本構成としては、従来の亜鉛電池と同様の構成を用いることができる。
【0013】
本実施形態に係る亜鉛電池は、本実施形態に係る電極群を備える。本実施形態に係る電極群は複数の負極及び複数の正極を備えており、負極及び正極は交互に積層されている。複数の負極のそれぞれは、活物質を含有する負極材を有している。複数の負極は、電極群における負極及び正極の積層方向の両端部の少なくとも一方に配置された負極A(第1の負極。負極及び正極の積層における最外層に位置する電極)と、正極を介して負極Aに隣接する負極B(第2の負極。負極及び正極の積層において負極Aの次に配置された負極)と、を含んでおり、負極Bにおける活物質の質量は、負極Aにおける活物質の質量よりも大きい。
【0014】
電極群が複数の負極及び複数の正極を備え、且つ、負極及び正極が交互に積層されていることにより、本実施形態に係る電極群は、電極群における負極及び正極の積層方向の一端部から順に少なくとも負極A、正極A、負極B及び正極Bを備えている。本実施形態に係る電極群は、負極A、正極A、負極B及び正極Bに加えて更に負極及び/又は正極を備えていてよい。負極A、負極B及びその他の負極は、互いに同一の活物質を含有することができる。
【0015】
ところで、本発明者の知見によれば、従来の亜鉛電池では、充放電を繰り返すに伴い、正極を介して負極Aに隣接する負極Bが消耗しやすく、デンドライトの成長、負極のシェイプチェンジ等が負極Bで生じて寿命性能が低下しやすいことを見出した。一方、本実施形態によれば、亜鉛電池において優れた寿命性能を得ることができる。このような効果が得られる原因は明らかではないが、本発明者の知見によれば、下記のように推察される。但し、原因は下記の内容に限定されない。
【0016】
亜鉛電池では、充電時(例えば過充電時)に正極で酸素ガスが発生し得る。酸素ガスが電池内を移動して負極に吸収されることで、充電反応によって負極に生成した金属亜鉛が酸化されて酸化亜鉛が生成する。酸素ガスは電池内の各負極に吸収され得るが、電極が密に積層される傾向にある電極群内には、酸素ガスが移動しやすい空間が少ない。一方、電池内における電極群の外周部は、酸素ガスが移動可能な空間が比較的充分に確保されている。そのため、酸素ガスは、電池内における電極群の外周部を移動し、電極群における負極及び正極の積層方向の端部に配置された負極Aに到達し吸収されやすい。これにより、負極Aでは、充放電反応に寄与する酸化亜鉛が充分に確保されているため、負極Aと、当該負極Aに隣接する正極Aとの間で充放電反応が生じやすい。そして、正極Aにおいて充放電反応の反応活性が高いことから、正極Aと、当該正極Aに隣接する負極Bとの間においても充放電反応が生じやすい。
ここで、負極A及び負極Bの双方において充放電反応が生じやすいが、負極Aでは、酸素ガスを吸収することに伴い酸化亜鉛が充分に確保されるのに対し、電極群の内層に位置する負極Bでは、酸素ガスが吸収されにくいことから、負極Aと比較して酸化亜鉛が確保されにくい。また、電極群における負極及び正極の積層方向の端部に配置された負極Aでは、正極Aと対向する面とは反対側の面は充放電反応に寄与しにくいのに対し、負極Bでは、正極Aに対向する面のみならず、正極Aとは反対側の正極Bに対向する面においても充放電反応が生じる。そのため、負極Bは消耗しやすく、充放電を繰り返すに伴い、デンドライトの成長、負極のシェイプチェンジ等が負極Bで生じることにより寿命性能が低下しやすい。
これに対し、本実施形態では、負極Bにおける活物質の質量が負極Aにおける活物質の質量よりも大きい。これにより、消耗しやすい負極Bに、負極Aと比較して多くの活物質が含まれることから、負極Bが消耗して寿命性能が低下することを抑制しやすい。そのため、本実施形態によれば、亜鉛電池において優れた寿命性能を得ることができる。
【0017】
本実施形態では、負極Bにおける活物質の質量が負極Aにおける活物質の質量よりも大きければよく、負極Bにおける活物質は、優れた寿命性能を得やすい観点から、複数の負極(電極群に含まれる全ての負極)における活物質の質量のうちの最大の質量を有することが好ましい。但し、負極Bにおける活物質の質量と、負極A及び負極B以外の負極における活物質の質量との関係は任意である。負極Bにおける活物質の質量は、負極A及び負極B以外の負極における活物質の質量と同等であってもよく、大きくてもよく、小さくてもよい。
【0018】
本実施形態に係る電極群では、電極群における負極及び正極の積層方向の両端部の少なくとも一方に負極が配置されていればよく、一端部に負極が配置されているのに対し、他端部の電極は、負極であってもよく、正極であってもよい。本実施形態に係る電極群では、高いエネルギー密度を得やすい観点から、電極群における負極及び正極の積層方向の一端部に負極が配置され、且つ、電極群における負極及び正極の積層方向の他端部に負極が配置されている態様が好ましい。
【0019】
負極Aにおける活物質の質量に対する負極Bにおける活物質の質量の比率(負極Bにおける活物質の質量/負極Aにおける活物質の質量)は、下記の範囲が好ましい。前記比率は、優れた寿命性能を得やすい観点から、1.1以上が好ましく、1.3以上がより好ましく、1.5以上が更に好ましい。前記比率は、高いエネルギー密度を得やすい観点から、3.0以下が好ましく、2.6以下がより好ましく、2.2以下が更に好ましい。
【0020】
以下、本実施形態に係る亜鉛電池の一例として、ニッケル亜鉛電池について説明する。
【0021】
本実施形態に係る亜鉛電池は、例えば、電槽、電解液及び電極群(例えば極板群)を備えている。電解液及び電極群は、電槽内に収容されている。本実施形態に係る亜鉛電池は、化成前及び化成後のいずれであってもよい。
【0022】
電解液は、例えば、溶媒及び電解質を含有している。溶媒としては、水(例えばイオン交換水)等が挙げられる。電解質としては、塩基性化合物等が挙げられ、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)等のアルカリ金属水酸化物などが挙げられる。本実施形態に係る亜鉛電池は、アルカリ電解液を用いたアルカリ亜鉛電池として用いることができる。電解液は、溶媒及び電解質以外の成分を含有してもよく、例えば、リン酸カリウム、フッ化カリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、二酸化チタン等を含有してもよい。
【0023】
電極群は、例えば、セパレータと、セパレータを介して対向する正極(正極板等)及び負極(負極板等)とによって構成されている。正極及び負極は、例えば、正極の主面と負極の主面とが対向した状態で、セパレータを介して交互に積層されている。電極群において、正極同士及び負極同士は、例えば、ストラップで連結されている。
【0024】
セパレータの材料としては、有機材料(樹脂材料等)、無機材料などが挙げられる。樹脂材料としては、ポリアミド系ポリマー(例えばポリアミド)、オレフィン系ポリマー(ポリオレフィン)、ナイロン系ポリマー(例えばナイロン)等が挙げられる。無機材料としては、アルミナ、チタニア、二酸化珪素等の酸化物;窒化アルミニウム、窒化珪素等の窒化物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩などが挙げられる。セパレータの製造方法としては、湿式法(相分離法)、乾式法(延伸開孔法)、メルトブロー、エレクトロスピニング等が挙げられる。
【0025】
セパレータは、親水化する観点から、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等を含有してもよく、スルホン化処理、フッ素ガス処理、アクリル酸グラフト重合処理、コロナ放電処理、プラズマ処理等により表面処理が施されていてもよい。親水化することにより、電解液と馴染みやすく、充分な電流密度を得やすい。
【0026】
正極は、例えば、正極集電体と、当該正極集電体に支持された正極材と、を有している。正極は、化成前及び化成後のいずれであってもよい。
【0027】
正極集電体は、正極材からの電流の導電路を構成する。正極集電体は、例えば、平板状、シート状等の形状を有している。正極集電体は、発泡金属、エキスパンドメタル、パンチングメタル、金属繊維のフェルト状物等によって構成された3次元網目構造の集電体などであってもよい。正極集電体は、導電性及び耐アルカリ性を有する材料で構成されている。このような材料としては、例えば、正極の反応電位でも安定である材料(正極の反応電位よりも貴な酸化還元電位を有する材料、アルカリ水溶液中で基材表面に酸化被膜等の保護被膜を形成して安定化する材料など)を用いることができる。また、正極においては、副反応として電解液の分解反応が進行し酸素ガスが発生するが、酸素過電圧の高い材料はこのような副反応の進行を抑制できる点で好ましい。正極集電体を構成する材料の具体例としては、白金;ニッケル;ニッケル等の金属メッキを施した金属材料(銅、真鍮、鋼等)などが挙げられる。
【0028】
正極材は、層状(正極材層)であってもよい。例えば、正極集電体上に正極材層が形成されていてもよく、正極集電体が3次元網目構造を有する場合には、正極集電体の網目の間に正極材が充填されて正極材層が形成されていてもよい。
【0029】
正極材は、正極活物質を含有する。正極活物質としては、オキシ水酸化ニッケル(NiOOH)、水酸化ニッケル等が挙げられる。正極材は、例えば、満充電状態ではオキシ水酸化ニッケルを含有し、放電末状態では水酸化ニッケルを含有する。正極活物質の含有量は、例えば、正極材の全質量を基準として50~95質量%であってもよい。
【0030】
正極材は、正極活物質以外の添加剤を含有することができる。添加剤としては、結着剤、導電剤、膨張抑制剤等が挙げられる。結着剤としては、親水性又は疎水性のポリマー等が挙げられ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸ナトリウム(SPA)、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等)などが挙げられる。結着剤の含有量は、例えば、正極活物質100質量部に対して0.01~5質量部であってもよい。導電剤としては、コバルト化合物(金属コバルト、酸化コバルト、水酸化コバルト等)などが挙げられる。導電剤の含有量は、例えば、正極活物質100質量部に対して1~20質量部であってもよい。膨張抑制剤としては、酸化亜鉛等が挙げられる。膨張抑制剤の含有量は、例えば、正極活物質100質量部に対して0.01~5質量部であってもよい。
【0031】
負極は、例えば、負極集電体と、当該負極集電体に支持された負極材と、を有している。負極は、化成前及び化成後のいずれであってもよい。
【0032】
負極集電体は、負極材からの電流の導電路を構成する。負極集電体は、例えば、平板状、シート状等の形状を有している。負極集電体は、発泡金属、エキスパンドメタル、パンチングメタル、金属繊維のフェルト状物等によって構成された3次元網目構造の集電体などであってもよい。負極集電体は、導電性及び耐アルカリ性を有する材料で構成されている。このような材料としては、例えば、負極の反応電位でも安定である材料(負極の反応電位よりも貴な酸化還元電位を有する材料、アルカリ水溶液中で基材表面に酸化被膜等の保護被膜を形成して安定化する材料など)を用いることができる。また、負極においては、副反応として電解液の分解反応が進行し水素ガスが発生するが、水素過電圧の高い材料はこのような副反応の進行を抑制できる点で好ましい。負極集電体を構成する材料の具体例としては、亜鉛;鉛;スズ;スズ等の金属メッキを施した金属材料(銅、真鍮、鋼、ニッケル等)などが挙げられる。
【0033】
負極材は、層状(負極材層)であってもよい。例えば、負極集電体上に負極材層が形成されていてもよく、負極集電体が3次元網目構造を有する場合には、負極集電体の網目の間に負極材が充填されて負極材層が形成されていてもよい。
【0034】
負極材は、亜鉛を含む負極活物質を含有する。負極活物質としては、金属亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛等が挙げられる。負極材は、例えば、満充電状態では金属亜鉛を含有し、放電末状態では酸化亜鉛及び水酸化亜鉛を含有する。
【0035】
負極活物質の含有量は、負極材の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。負極活物質の含有量は、優れた寿命性能と放電性能とを両立しやすい観点から、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、75質量%以上が更に好ましい。負極活物質の含有量は、優れた寿命性能と放電性能とを両立しやすい観点から、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。これらの観点から、負極活物質の含有量は、50~95質量%が好ましい。
【0036】
負極材は、負極活物質以外の添加剤を含有することができる。添加剤としては、結着剤、導電剤等が挙げられる。結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。結着剤の含有量は、例えば、負極活物質100質量部に対して0.5~10質量部であってもよい。導電剤としては、インジウム化合物(酸化インジウム等)などが挙げられる。導電剤の含有量は、例えば、負極活物質100質量部に対して1~20質量部であってもよい。
【0037】
本実施形態に係る亜鉛電池(ニッケル亜鉛電池)の製造方法は、例えば、電極(正極及び負極)を得る電極製造工程と、電極を含む構成部材を組み立てて亜鉛電池(ニッケル亜鉛電池)を得る組立工程と、を備える。
【0038】
電極製造工程では、電極(正極及び負極)を製造する。例えば、電極材(正極材及び負極材)の原料に対して溶媒(例えば水)を加えて混練することにより電極材ペースト(ペースト状の電極材)を得た後、電極材ペーストを用いて電極材層を形成する。
【0039】
正極材の原料としては、正極活物質の原料(例えば水酸化ニッケル)、添加剤(例えば前記結着剤)等が挙げられる。負極材の原料としては、負極活物質の原料(例えば金属亜鉛、酸化亜鉛及び水酸化亜鉛)、添加剤(例えば前記結着剤)等が挙げられる。
【0040】
電極材層を形成する方法としては、例えば、電極材ペーストを集電体に塗布又は充填した後に乾燥することで電極材層を得る方法が挙げられる。電極材層は、必要に応じて、プレス等によって密度を高めてもよい。
【0041】
組立工程では、例えば、まず、電極製造工程で得られた正極及び負極を、セパレータを介して交互に積層し、正極同士及び負極同士をストラップで連結させて電極群を作製する。次いで、この電極群を電槽内に配置した後、電槽の上面に蓋体を接着して未化成の亜鉛電池(ニッケル亜鉛電池)を得る。
【0042】
次いで、電解液を未化成の亜鉛電池の電槽内に注入した後、一定時間放置する。次いで、所定の条件にて充電を行うことで化成することにより亜鉛電池(ニッケル亜鉛電池)を得る。化成条件は、電極活物質(正極活物質及び負極活物質)の性状に応じて調整することができる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、正極がニッケル電極であるニッケル亜鉛電池(例えばニッケル亜鉛二次電池)の例を説明したが、亜鉛電池は、正極が空気極である空気亜鉛電池(例えば空気亜鉛二次電池)であってもよく、正極が酸化銀極である銀亜鉛電池(例えば銀亜鉛二次電池)であってもよい。
【0044】
空気亜鉛電池の空気極としては、空気亜鉛電池に使用される公知の空気極を用いることができる。空気極は、例えば、空気極触媒、電子伝導性材料等を含む。空気極触媒としては、電子伝導性材料としても機能する空気極触媒を用いることができる。
【0045】
空気極触媒としては、空気亜鉛電池における正極として機能するものを用いることが可能であり、酸素を正極活物質として利用可能な種々の空気極触媒が使用可能である。空気極触媒としては、酸化還元触媒機能を有するカーボン系材料(黒鉛等)、酸化還元触媒機能を有する金属材料(白金、ニッケル等)、酸化還元触媒機能を有する無機酸化物材料(ペロブスカイト型酸化物、二酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化コバルト、スピネル酸化物等)などが挙げられる。空気極触媒の形状は、特に限定されないが、例えば粒子状であってもよい。空気極における空気極触媒の含有量は、空気極の合計量に対して、5~70体積%であってもよく、5~60体積%であってもよく、5~50体積%であってもよい。
【0046】
電子伝導性材料としては、導電性を有し、かつ、空気極触媒とセパレータとの間の電子伝導を可能とするものを用いることができる。電子伝導性材料としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類;鱗片状黒鉛のような天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等のグラファイト類;炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維類;銅、銀、ニッケル、アルミニウム等の金属粉末類;ポリフェニレン誘導体等の有機電子伝導性材料;これらの任意の混合物などが挙げられる。電子伝導性材料の形状は、粒子状であってもよく、その他の形状であってもよい。電子伝導性材料は、空気極において厚さ方向に連続した相をもたらす形態で用いられることが好ましい。例えば、電子伝導性材料は、多孔質材料であってもよい。また、電子伝導性材料は、空気極触媒との混合物又は複合体の形態であってもよく、前述したように、電子伝導性材料としても機能する空気極触媒であってもよい。空気極における電子伝導性材料の含有量は、空気極の合計量に対して、10~80体積%であってもよく、15~80体積%であってもよく、20~80体積%であってもよい。
【0047】
銀亜鉛電池の酸化銀極としては、銀亜鉛電池に使用される公知の酸化銀極を用いることができる。酸化銀極は、例えば酸化銀(I)を含む。