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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】測定装置及び測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/28 20060101AFI20220606BHJP
   G01B 5/20 20060101ALI20220606BHJP
   G01B 3/22 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
G01B5/28
G01B5/20 R
G01B3/22 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017233259
(22)【出願日】2017-12-05
(65)【公開番号】P2019100907
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】阿部 信策
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03942253(US,A)
【文献】特開2017-151958(JP,A)
【文献】特開2008-039621(JP,A)
【文献】特開平06-034353(JP,A)
【文献】米国特許第06121890(US,A)
【文献】特開2013-200248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 3/00-3/08
3/11-5/30
21/00-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースと、
前記本体ケースから突設されるスピンドルと、
前記スピンドルの先端に設けられ、被測定物に当接する測定子と、
測定開始から測定終了までの間、前記測定子が前記被測定物の表面を相対的に一定の方向に摺動する過程において、前記測定子の変位量を、前記スピンドルを介して検出する検出手段と、
記憶手段と、
前記検出手段が検出する前記変位量を所定の周期で取得し、前記記憶手段に逐次記憶させるデータ収集手段と、
前記本体ケースの表面に設けられ、グラフィック表示が可能な表示手段と、
前記所定の周期ごとの前記変位量に基づく所定の情報を前記表示手段に表示させる表示制御手段と、
を備え、
前記検出手段、前記記憶手段、前記データ収集手段及び前記表示制御手段は、前記本体ケース内に設けられ、
前記表示制御手段は、前記所定の周期ごとの前記変位量を、前記変位量の位置的推移を示すグラフの形式で前記表示手段に表示させる
ことを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記グラフは、前記データ収集手段により前記変位量が所定の周期で取得される都度、伸長されていくことを特徴とする請求項に記載の測定装置。
【請求項3】
前記記憶手段は、前記測定開始から前記測定終了までに前記記憶手段に記憶された前記所定の周期ごとの前記変位量を一回の測定データとして、複数回の測定データを記憶し、
前記表示制御手段は、前記測定データごとの前記グラフを関連付けて前記表示手段に表示させる
ことを特徴とする請求項に記載の測定装置。
【請求項4】
前記複数回の測定データは、当該複数回の測定を所定の手順で行うことにより得られたものであることを特徴とする請求項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記複数回の測定データは、基準測定データと、前記基準測定データと対比する対比測定データであり、
前記表示制御手段は、前記基準測定データの前記グラフと前記対比測定データの前記グラフとを重畳して前記表示手段に表示させる
ことを特徴とする請求項に記載の測定装置。
【請求項6】
本体ケースと、
前記本体ケースから突設されるスピンドルと、
前記スピンドルの先端に設けられ、被測定物に当接する測定子と、
測定開始から測定終了までの間、前記測定子が前記被測定物の表面を相対的に一定の方向に摺動する過程において、前記測定子の変位量を、前記スピンドルを介して検出する検出手段と、
記憶手段と、
前記検出手段が検出する前記変位量を所定の周期で取得し、前記記憶手段に逐次記憶させるデータ収集手段と、
前記本体ケースの表面に設けられ、グラフィック表示が可能な表示手段と、
前記所定の周期ごとの前記変位量に基づく所定の情報を前記表示手段に表示させる表示制御手段と、
を備え、
前記検出手段、前記記憶手段、前記データ収集手段及び前記表示制御手段は、前記本体ケース内に設けられ、
前記記憶手段は、前記測定開始から前記測定終了までに前記記憶手段に記憶された前記所定の周期ごとの前記変位量を一回の測定データとして、複数回の測定データを記憶し、
前記複数回の測定データは、基準測定データと、前記基準測定データと対比する対比測定データであり、
前記表示制御手段は、前記基準測定データと前記対比測定データとの差分の位置的推移を示すグラフを前記表示手段に表示させる
ことを特徴とする測定装置。
【請求項7】
本体ケースと、
前記本体ケースから突設されるスピンドルと、
前記スピンドルの先端に設けられ、被測定物に当接する測定子と、
測定開始から測定終了までの間、前記測定子が前記被測定物の表面を相対的に一定の方向に摺動する過程において、前記測定子の変位量を、前記スピンドルを介して検出する検出手段と、
記憶手段と、
前記検出手段が検出する前記変位量を所定の周期で取得し、前記記憶手段に逐次記憶させるデータ収集手段と、
前記本体ケースの表面に設けられ、グラフィック表示が可能な表示手段と、
前記所定の周期ごとの前記変位量に基づく所定の情報を前記表示手段に表示させる表示制御手段と、
を備え、
前記検出手段、前記記憶手段、前記データ収集手段及び前記表示制御手段は、前記本体ケース内に設けられ、
前記記憶手段は、前記測定開始から前記測定終了までに前記記憶手段に記憶された前記所定の周期ごとの前記変位量を一回の測定データとして、複数回の測定データを記憶し、
前記複数回の測定データは、複数の基準測定物それぞれについての測定データである複数の基準測定データと、それぞれの前記基準測定物と対比する被測定物の測定データである対比測定データであり、
前記表示制御手段は、前記対比測定データにおける変位量の位置的推移と、それぞれの前記基準測定データにおける変位量の位置的推移とを、所定の類似性を尺度として対比することにより前記被測定物が最も類似している前記基準測定物を特定し、特定された前記基準測定物を示す情報を前記表示手段に表示させる
ことを特徴とする測定装置。
【請求項8】
前記表示手段は、タッチパネルディスプレイであり、
前記測定開始と前記測定終了は、前記タッチパネルディスプレイへのタッチ入力により実行される
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項9】
前記測定装置は、スピンドル式ダイヤルゲージ又はてこ式ダイヤルゲージであることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項10】
本体ケースと、
前記本体ケースから突設されるスピンドルと、
前記スピンドルの先端に設けられ、被測定物に当接する測定子と、
測定開始から測定終了までの間、前記測定子が前記被測定物の表面を相対的に一定の方向に摺動する過程において、前記測定子の変位量を、前記スピンドルを介して検出する検出手段と、
記憶手段と、
前記検出手段が検出する前記変位量を所定の周期で取得し、前記記憶手段に逐次記憶させるデータ収集手段と、
前記本体ケースの表面に設けられ、グラフィック表示が可能な表示手段と、
前記所定の周期ごとの前記変位量に基づく所定の情報を前記表示手段に表示させる表示制御手段と、
を備え、
前記検出手段、前記記憶手段、前記データ収集手段及び前記表示制御手段は、前記本体ケース内に設けられる測定装置と、
前記所定の周期ごとの前記変位量のデータを前記測定装置から取得し、所定の解析を施して解析結果を得る解析装置と、
撮像手段と拡張現実表示手段とを有する拡張現実デバイスと、
を備える測定システムであって、
前記測定装置は、前記解析装置から前記解析結果に対応するマーカ情報を取得し、前記所定の情報とともに前記マーカ情報に基づくマーカを前記表示手段に表示し、
前記拡張現実デバイスは、前記撮像手段により前記測定装置の表示手段を含む画像が捕捉された際に、当該表示手段に前記所定の情報とともに表示されている前記マーカに対応する前記解析結果を前記解析装置から取得し、前記撮像手段により捕捉された前記測定装置の表示手段を含む画像に重畳して前記拡張現実表示手段に表示する
ことを特徴とする測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定データを記憶することが可能な測定装置及び測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
比較測定を行う測定装置のひとつとして、ダイヤルゲージが知られている。ダイヤルゲージは、先端に測定子が設けられたスピンドルの直線運動の変位量を測定するものが一般的であるが、てこ状の測定子の揺動の変位量を測定するものもある(てこ式ダイヤルゲージ)。
【0003】
ダイヤルゲージは上記のような分類の仕方のほか、測定結果の表示形式により分類することができる。具体的には、変位量を指針の回転角によって表示する指針式のダイヤルゲージと、変位量をデジタル表示するデジタル式のダイヤルゲージ(例えば特許文献1参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-103901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のダイヤルゲージでは、例えば、芯出しのために行うスピンドル等の振れの有無を知るための測定、変位量の大まかな大小を知るための測定、リミット値により合否判定を行うための測定などについては、容易にかつ速やかに行うことができる。しかし、真円度、平面度、真直度など被測定物の形状を把握するための測定の場合、被測定物の表面において測定子を相対的に一定の方向に摺動させる過程における変位量の動向を詳細に読み取っていく必要があるため、ゆっくり摺動させる必要があり測定に時間がかかる。
【0006】
また、ダイヤルゲージに表示される変位量は、測定子を摺動させることで変動してしまうため、被測定物の形状を正確に把握したい場合や測定結果を事後的に利用したい場合には、摺動を逐次停止して変位量を確認又は記録していかなればならず、更に時間を要する。
【0007】
本発明の目的は、被測定物の表面において測定子を摺動させる過程における測定子の変位量の動向から被測定物の形状を把握したい場合に、速やかに測定することを可能とし、かつ、測定結果を容易に利用することを可能とする測定装置及び測定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の測定装置は、被測定物に当接する測定子と、測定開始から測定終了までの間、測定子が被測定物の表面を相対的に一定の方向に摺動する過程において測定子の変位量を検出する検出手段と、記憶手段と、検出手段が検出する変位量を所定の周期で取得し、記憶手段に逐次記憶させるデータ収集手段と、グラフィック表示が可能な表示手段と、所定の周期ごとの変位量に基づく所定の情報を表示手段に表示させる表示制御手段と、を備える。
【0009】
このように検出手段により検出された変位量を記憶手段に逐次記憶させることで、測定中の変位量の読み取りや記録作業が不要になるため、測定を速やかに行うことができる。また、測定結果が記憶手段に記憶されているため、容易に利用することができる。更に、グラフィック表示が可能な表示手段を採用することで、様々な情報を柔軟に表示することができる。
【0010】
(2)表示制御手段が、所定の周期ごとの変位量を、変位量の位置的推移を示すグラフの形式で表示手段に表示させるようにしてもよい。
【0011】
測定結果がグラフ形式で表示されることで、最大値や最小値、ピーク・ボトムの数など、被測定物の形状を容易に把握することができる。
【0012】
(3)グラフは、データ収集手段により変位量が所定の周期で取得される都度、伸長されるようにしてもよい。
【0013】
これにより、測定中にリアルタイムで被測定物の形状を把握することができる。
【0014】
(4)記憶手段が、測定開始から測定終了までに記憶手段に記憶された所定の周期ごとの変位量を一回の測定データとして、複数回の測定データを記憶し、表示制御手段が、当該複数回の測定データごとのグラフを関連付けて表示手段に表示させるようにしてもよい。
【0015】
(5)複数回の測定データとしては、例えば、複数回の測定を所定の手順で行うことにより得られたものが挙げられる。
【0016】
3次元の形状を把握したい場合、例えば、平面度を測定したい場合、平面上に定義した四角形の4つの辺のそれぞれに対する測定を順次行い、これにより得られた4回の測定データを表示制御手段が表示手段に3次元グラフィック表示させることで、平面度を視覚的に把握できるようになる。
【0017】
(6)複数回の測定データを、基準測定データと当該基準測定データと対比する対比測定データとし、表示制御手段が、基準測定データのグラフと対比測定データのグラフとを重畳して表示手段に表示させるようにしてもよい。
【0018】
(7)また、表示制御手段が、基準測定データと対比測定データとの差分の位置的推移を示すグラフを表示手段に表示させるようにしてもよい。
【0019】
基準測定データをマスターワークの測定データとし、対比測定データをマスターワークと比較したい検査対象ワークの測定データとしたとき、本発明によれば、検査対象ワークの状態がマスターワークとどの程度異なっているかを視覚的に把握することが可能となる。
【0020】
(8)記憶手段が、測定開始から測定終了までに記憶手段に記憶された所定の周期ごとの変位量を一回の測定データとして複数回の測定データを記憶し、当該複数回の測定データを、複数の基準測定物それぞれについての測定データである複数の基準測定データと、それぞれの基準測定物と対比する被測定物の測定データである対比測定データとし、表示制御手段が、対比測定データにおける変位量の推移と、それぞれの基準測定データにおける変位量の推移とを、所定の類似性を尺度として対比することにより被測定物が最も類似している基準測定物を特定し、特定された基準測定物を示す情報を表示手段に表示するようにしてもよい。
【0021】
それぞれの基準測定物が測定物の種類を代表するものである場合、本発明によれば、被測定物がいずれの種類に属している可能性が最も高いかを容易に特定することができる。
【0022】
(9)表示手段としてタッチパネルディスプレイを採用し、測定開始と測定終了をタッチパネルディスプレイへのタッチ入力により実行指示できるようにしてもよい。
【0023】
これにより、測定開始及び測定終了の指示入力操作が容易になる。
【0024】
(10)本発明は、例えば、スピンドル式ダイヤルゲージ又はてこ式ダイヤルゲージへの適用が好適である。
【0025】
(11)本発明の測定装置と、所定の周期ごとの変位量のデータを測定装置から取得し、所定の解析を施して解析結果を得る解析装置と、撮像手段及び拡張現実表示手段を有する拡張現実デバイスと、で測定システムを構成し、測定装置が、解析装置から解析結果に対応するマーカ情報を取得して、所定の情報とともにマーカ情報に基づくマーカを表示手段に表示し、拡張現実デバイスが、撮像手段により測定装置の表示手段を含む画像が捕捉された際に、当該表示手段に所定の情報とともに表示されているマーカに対応する解析結果を解析装置から取得し、撮像手段により捕捉された測定装置の表示手段を含む画像に重畳して拡張現実表示手段に表示するようにしてもよい。
【0026】
このような測定システムによれば、測定結果の表示方法のバリエーションを増やすことができる。また、解析機能を解析装置が担うため、測定装置自身に解析機能を持たせるより、柔軟かつ高度な解析を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】測定装置100の外観の一例を示す図である。
図2】本体ケース110の内部構成の一例を示す図である。
図3】被測定物Wの真直度の把握のための測定における、変位量の取得からグラフの表示までの流れを説明する図である。
図4】被測定物Wの真円度の把握のための測定における、変位量の取得からグラフの表示までの流れを説明する図である。
図5】被測定物Wの平面度の把握のための測定を説明する図である。
図6】基準測定データと対比測定データの収集態様を説明する図である。
図7】基準測定データと対比測定データとの関係を示す表示の一例を示す図である。
図8】複数の基準測定データと対比測定データの収集態様を説明する図である。
図9】測定システム200の構成の一例を示す図である。
図10】表示手段161による表示方法のバリエーションを示す図である。
図11】測定システム300の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の測定装置の実施形態について説明する。なお、以下では測定装置がスピンドル式のダイヤルゲージである場合を例にとって説明するが、被測定物の表面で測定子を移動させる過程での測定子の変位を測定する装置であれば同様に適用可能である。例えば、てこ式などの他の方式のダイヤルゲージでもよいし、ダイヤルゲージ以外の測定装置であっても構わない。
【0029】
<第1実施形態>
図1に本発明の測定装置100の外観の一例を、図2に本体ケース110の内部構成の一例を、それぞれ示す。測定装置100は、本体ケース110、スピンドル120、測定子121、検出手段130、データ収集手段140、記憶手段150、表示制御手段160、及び表示手段161を備える。
【0030】
スピンドル120は、軸方向に変位自在に本体ケース110に設けられる。スピンドル120の先端には、測定時に被測定物Wに当接する測定子121が設けられ、被測定物Wの凹凸による測定子121の変位がスピンドル120の変位に反映される。
【0031】
検出手段130は、測定開始から測定終了までの間、測定子121が被測定物Wの表面を相対的に一定の方向に摺動する過程において、スピンドル120の変位量を検出する。変位量の検出方式は、光電式、静電容量式、電磁式など、変位量を電気信号として出力できる方式であれば任意の方式を採用してよい。
【0032】
データ収集手段140は、検出手段130が検出する変位量を所定の周期で取得し、任意の記憶手段150に逐次記憶させる。
【0033】
表示制御手段160は、所定の周期ごとの変位量に基づく所定の情報を表示手段161に表示させる。
【0034】
表示制御手段160の機能は、例えば、測定装置100がCPUを備えて、表示制御手段160の機能が記述されたプログラムをCPUで実行させることにより実現することができる。この場合、プログラムの記述内容に応じて、高度な処理や解析を行うことができ、それを表示手段161への表示に反映することができる。
【0035】
表示手段161としてグラフィック表示が可能なディスプレイを採用することで、様々な情報を柔軟に表示することが可能となる。例えば、所定の周期ごとの変位量を、変位量の位置的推移を示すグラフの形式で表示させることができる。
【0036】
被測定物Wの真直度の把握のための測定を例にとって、変位量の取得からグラフの表示までの流れを説明する。図3(a)に示すように、測定開始から測定終了までの間、測定子121が被測定物Wの表面を図面の左側から右側に摺動する過程において、検出手段130がスピンドル120の変位量を検出する。測定開始と測定終了の指示入力は、例えば、本体ケース110に入力ボタンや入力スイッチを設けて行えるようにしてもよいし、表示手段161にタッチパネルディスプレイを採用して、タッチ入力により行えるようにしてもよい。
【0037】
検出手段130により検出された変位量は、データ収集手段140により所定の周期で取得され記憶手段150に逐次記憶される。表示制御手段160は、変位量の位置的推移を示す図3(b)に示すようなグラフを表示手段161に表示させる。表示手段161には、変位量の位置的推移のグラフを表示するとともに、又は表示する代わりに、変位量の位置的推移の測定データに基づく、真直度の計算値や変位量の最大値・最小値などデータの解析結果を表示してもよい。
【0038】
また、例えば図4(a)に示すような被測定物Wにおいて真円度を把握する場合には、測定開始から測定終了までの間、測定子121が被測定物Wの外周を摺動する過程において、検出手段130により検出された変位量はデータ収集手段140により所定の周期で取得されて記憶手段150に逐次記憶され、表示制御手段160は変位量の被測定物Wの外周における位置的推移を示す図4(b)に示すようなグラフを表示手段161に表示させる。
【0039】
以上説明した第1実施形態の測定装置100によれば、検出手段により検出された変位量を記憶手段に逐次記憶させることで、測定中の変位量の読み取りや記録作業が不要になるため、測定を速やかに行うことができる。また、測定結果が記憶手段に記憶されているため、容易に利用することができる。
【0040】
なお、表示制御手段160は、表示手段161にグラフを表示させるに際し、データ収集手段140により変位量が所定の周期で取得される都度、グラフが伸長されるようにしてもよい。
【0041】
これにより、測定中にリアルタイムで被測定物Wの形状を把握することができる。
【0042】
また、測定装置100は、外部機器と通信可能な通信手段を更に備えて、測定結果、測定エラー発生情報、変位の限界値の超過情報、変位の限界振動数の超過情報などを外部機器に通知可能に構成してもよいし、測定開始及び測定終了の指示を外部機器から実行可能に構成してもよい。
【0043】
<第2実施形態>
第1実施形態の測定装置100において、測定開始から測定終了までに記憶手段150に記憶された所定の周期ごとの変位量を一回の測定データとして、複数回の測定データを記憶し、表示制御手段160が、当該複数回の測定データごとのグラフを関連付けて表示手段161に表示させるようにしてもよい。測定データごとのグラフの関連付け方法は、測定したい事項に応じて任意に決定してよい。
【0044】
記憶手段150が記憶する複数回の測定データとして、例えば、所定の手順により行われた複数回の測定により得られたものが挙げられる。
【0045】
被測定物Wの形状を3次元で把握したい場合、例えば平面度を測定したい場合、図5(a)に示すように、平面上に定義した四角形の4つの辺のそれぞれに対する測定((1)~(4))を順次行い、これにより得られた4回の測定データを、表示制御手段160が表示手段161に図5(b)に示すように3次元グラフィック表示させる。これにより、平面度を視覚的に把握できるようになる。表示手段161には、グラフィック表示とともに、又は表示の代わりに、平面度の計算値を表示させてもよい。
【0046】
また、円筒度を測定したい場合には、例えば円筒の外周の測定を中心軸方向の位置を変えた複数の箇所で行い、これにより得られた複数回の測定データを表示制御手段160が表示手段161に3次元グラフィック表示させる。これにより、円筒度を視覚的に把握できるようになる。
【0047】
<第3実施形態>
第1実施形態の測定装置100において、記憶手段150に、マスターワークMWを図6(a)に示すように測定した基準測定データと、マスターワークMWと対比する被測定物である検査対象ワークTWを図6(b)に示すように測定した対比測定データと、を記憶させ、表示制御手段160が、これらの測定データを関連付けて表示手段161に表示させるようにしてもよい。
【0048】
この場合に基準測定データと対比測定データとを関連付けた表示形態としては、例えば、図7(a)に示すように、基準測定データのグラフと対比測定データのグラフとを重畳表示する形態が挙げられる。これにより、変位の傾向の比較や、変位の差異が大きい部分の特定に役立てることができる。また例えば、図7(b)に示すように、基準測定データと対比測定データとの差分の位置的推移を示すグラフを表示する形態を採用してもよい。これにより、差分の許容値を満たしているか否かの合否判定に役立てることができる。
【0049】
なお、複数の測定データについてグラフを重畳表示したり、差分のグラフを表示したりする場合に、それぞれの測定データの取得時における変位量の取得周期や測定子の摺動速度が異なっていると、重畳表示や差分表示をする際に各測定データの整合をとる必要が生じる。そのため、可能であればそれぞれの測定データの取得を同じ取得周期、同じ摺動速度で行うとよいが、異なる取得周期や摺動速度の下で、例えば、ピーク・ボトム点などの特徴点で位置合わせを行う方法、輪郭などによるベストフィットを行って位置合わせを行う方法、又は測定開始から測定終了までの測定長さを同じと判断して強制的に測定結果を揃える方法などにより各測定データの整合をとることとしてもよい。
【0050】
<第4実施形態>
第1実施形態の測定装置100において、記憶手段150に、基準測定物である複数のマスターワークMWを例えば図8(a)~(d)に示すように測定して得られた、それぞれのマスターワークMWの測定データである複数の基準測定データと、それぞれのマスターワークMWと対比する被測定物である検査対象ワークTWを例えば図8(e)に示すように測定して得られた測定データである対比測定データと、を記憶させておき、表示制御手段160が、対比測定データにおける変位量の推移と、それぞれの基準測定データにおける変位量の推移とを、所定の類似性を尺度として対比することにより、複数(図8の例では4個)のマスターワークMWの中から検査対象ワークTWに最も類似しているマスターワークMWを特定して、特定されたマスターワークMWを示す任意の情報を任意の形態で表示手段161に表示させてもよい。
【0051】
これにより、それぞれの基準測定物が測定物の種類を代表するものである場合、本発明によれば、被測定物がいずれの種類に属している可能性が最も高いかを容易に特定することができる。
【0052】
なお、複数の測定データを対比する場合に、それぞれの測定データの取得時における変位量の取得周期や測定子の摺動速度が異なっていると、対比する際に各測定データの整合をとる必要が生じる。そのため、可能であればそれぞれの測定データの取得は同じ取得周期、同じ摺動速度で行うとよいが、異なる取得周期や摺動速度の下で、例えば、ピーク・ボトム点などの特徴点で位置合わせを行う方法、輪郭などによるベストフィットを行って位置合わせを行う方法、又は測定開始から測定終了までの測定長さを同じと判断して強制的に測定結果を揃える方法などにより各測定データの整合をとることとしてもよい。
【0053】
<第5実施形態>
表示制御手段160の機能が記述されたプログラムをCPUで実行することにより表示制御手段160の機能を実現する場合、プログラムは測定装置100内に予め用意しておいてもよいし、測定装置100に外部機器との通信手段を備えて、外部機器からアップロードを受ける又は外部機器やクラウドからダウンロードするという形で必要に応じて入手して利用するように構成してもよい。
【0054】
プログラムを外部機器から入手する形態で測定装置100を使用する測定システム200の一例を、図9を参照して説明する。
【0055】
測定システム200は、CPU及び通信手段を更に備える本発明の測定装置100、外部機器であるスマートフォン210、測定子121が被測定物Wの表面を一定の方向に摺動するように測定装置100を移動させる駆動手段220、及び駆動手段220を制御するPCなどの端末装置230を備える。測定装置100とスマートフォン210及び端末装置230との間は、任意の通信方式により情報の送受信が可能とされている。
【0056】
スマートフォン210には、測定装置100により測定したい事項に応じたプログラムが用意され、測定したい事項の選択メニューがタッチパネルディスプレイに表示される。
【0057】
このような構成の下で、例えばまず、(1)測定者が輪郭解析プログラムをメニューから選択入力し、(2)更に輪郭解析の「円」解析プログラムを選択入力した上で、(3)「使う」を選択入力することで、輪郭解析プログラムが測定装置100にアップロードされる。
【0058】
続いて、(4)端末装置230から測定装置100に、移動長さや半径などの測定長さ及び解析条件を送信した後、(5)端末装置230から、駆動手段220及び測定装置100に同時に測定開始命令を送信して測定を実行する。
【0059】
(6)そして、端末装置230から、駆動手段220及び測定装置100に同時に測定終了命令を送信して測定を終了する。(7)測定結果は表示手段161に表示される。(8)測定結果は、測定装置100から端末装置230に送信するようにしてもよい。
【0060】
<第6実施形態>
表示手段161に液晶ディスプレイなど自由な表示が可能な手段を採用した場合、ボタン、スイッチ、タッチパネルなどからの指示入力により、表示手段161の表示をアナログ形式又はデジタル形式での測定値の表示に切替可能に構成してもよい。
【0061】
また、測定装置100に姿勢検出センサを備え、測定装置100が傾斜して使用される場合に、アナログ形式で表示される場合にはゼロ位置を指す際の針の向きが図10(a)に示すように重力に対して反対向きになるようにし、デジタル形式で表示される場合には、表示が図10(b)に示すように重力に対して水平方向になるようにしてもよい。なお、任意の傾斜角に対応するため、表示手段161の形状は円形が好適である。このように表示方向を変更可能にした場合、表示の方向をロックする機能を更に設けてもよいし、任意の手動操作による表示方向の変更を可能としてもよい。
【0062】
また、測定装置100に姿勢検出センサを備え、表示手段161が図10(c)に示すように重力方向を向いて使用される場合に、対向する鏡面で正常に表示されるように表示手段161における表示を構成してもよい。このように、使用姿勢に応じた表示を可能とすることで、表示が読みやすくなり作業性が向上する。
【0063】
また、図10(d)に示すように、アナログ形式の表示とデジタル形式の表示とを同時に行うように構成してもよいし、図10(e)(f)に示すように測定値とあわせて最大値や最小値を同時に表示するように構成してもよい。
【0064】
<第7実施形態>
表示手段161に、拡張現実デバイスを組み合わせて利用可能とする測定システム300を構成してもよい。図11に測定システム300の構成の一例を示す。測定システム300は、測定装置100、解析装置310、及び拡張現実デバイス361を備える。
【0065】
測定装置100、解析装置310、及び拡張現実デバイス361は、それぞれ相手方との情報の送受を可能とする図示しない任意の通信手段を備える。
【0066】
解析装置310はコンピュータであり、測定装置100において収集された所定の周期ごとの変位量のデータを測定装置100から取得し(図11(1))、所定の解析を施して解析結果を得る。解析装置310は、例えば、LANに設けられたサーバとして構成してもよいし、WAN上のクラウド・サーバとして構成してもよい。
【0067】
測定装置100は、解析装置310から解析結果に対応するマーカ情報を取得して(図11(2))、解析対象とした所定の周期ごとの変位量のデータに基づく所定の情報161a(例えば、変位量の位置的推移を示すグラフ)とともに、マーカ情報に基づくマーカ161bを表示手段161に表示する。
【0068】
拡張現実デバイス361は、撮像手段と拡張現実表示手段を備える。拡張現実デバイス361は、撮像手段により測定装置100の表示手段161を含む画像が捕捉された際に(図11(3)(4))、表示手段161に所定の情報161aとともに表示されているマーカ161bに対応する解析結果を解析装置310に問い合わせて取得し(図11(5)(6))、撮像手段により捕捉された測定装置100の表示手段161を含む画像に重畳して拡張現実表示手段の所定の表示位置361aに表示する。所定の表示位置361aは、表示手段161が表示された位置に設定してもよいし、図11に示すように表示手段161が表示された位置の外側に設定してもよい。
【0069】
なお、解析装置310において複数の異なる解析を行い、測定装置100がそれぞれの解析結果に対応する複数のマーカ情報を解析装置310から取得して、それぞれのマーカ161bを任意の時間間隔で自動的に又は利用者が手動操作で切り替えつつ表示手段161に順次表示し、拡張現実デバイス361がマーカ161bの切り替わりに応じてそれぞれのマーカ161bに対応する解析結果を拡張現実表示手段に順次重畳表示するように構成してもよい。順次行う重畳表示は、例えば、1か所の表示位置361aにおいて切り替え表示されるようにしてもよいし、異なる表示位置361aに追加表示されていくようにしてもよい。
【0070】
また、複数の解析結果に対してひとつのマーカ161bを割り当て、マーカ161bが拡張現実デバイス361の撮像手段により捕捉されることで、複数の解析結果を同時に拡張現実表示手段に表示するようにしてもよい。
【0071】
また、マーカ161bを所定の情報161aの表示で代替してもよい。この場合例えば、解析装置310が、測定装置100から所定の周期ごとの変位量のデータを取得して解析するとともに、当該データに対応する所定の情報161aの表示画像データを取得する、又は、測定装置100から所定の周期ごとの変位量のデータを取得して解析するとともに自ら当該データに対応する所定の情報161aの表示画像データを生成する。これにより、拡張現実デバイス361は、撮像手段により捕捉した所定の情報161aの表示に対応する解析結果を解析装置310に問い合わせることで、拡張現実表示手段に表示する解析結果を取得することができる。
【0072】
以上のような測定システム300によれば、測定結果の表示方法のバリエーションを増やすことができる。また、解析機能を解析装置310が担うため、測定装置100自身に解析機能を持たせるより、柔軟かつ高度な解析を行うことができる。
【0073】
本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではない。各実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。すなわち、本発明において表現されている技術的思想の範囲内で適宜変更が可能であり、その様な変更や改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含む。
【符号の説明】
【0074】
100…測定装置
110…本体ケース
120…スピンドル
121…測定子
130…検出手段
140…データ収集手段
150…記憶手段
160…表示制御手段
161…表示手段
161a…所定の情報
161b…マーカ
200、300…測定システム
210…スマートフォン
220…駆動手段
230…端末装置
310…解析装置
361…拡張現実デバイス
361a…表示位置
MW…マスターワーク
TW…検査対象ワーク
W…被測定物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11