(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20220606BHJP
【FI】
H01L21/92 602D
H01L21/92 604C
(21)【出願番号】P 2018005186
(22)【出願日】2018-01-16
【審査請求日】2020-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100192773
【氏名又は名称】土屋 亮
(72)【発明者】
【氏名】中牟田 雄
(72)【発明者】
【氏名】松本 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大地
(72)【発明者】
【氏名】堀内 俊
(72)【発明者】
【氏名】不破 耕
【審査官】川原 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-229623(JP,A)
【文献】特開2015-135974(JP,A)
【文献】特開2016-121377(JP,A)
【文献】特開2008-277677(JP,A)
【文献】特開平08-031836(JP,A)
【文献】特開平06-342796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性部材からなる接合体を有する半導体装置の製造方法であって、
基材の一面に導電部と絶縁部が順に積層され、前記絶縁部に設けた開口部において、前記導電部が露呈部を有する基板を用い、前記導電部と前記絶縁部を覆うように第一レジスト膜及び第二レジスト膜を順に形成する第一工程と、
前記導電部の前記露呈部が露呈するように、前記第二レジスト膜に開口部C、前記第一レジスト膜に開口部Bを形成する第二工程と、
前記導電部の前記露呈部の表面の自然酸化膜を除去する第三工程と、
前記第一レジスト膜の開口部B及び前記第二レジスト膜の開口部Cから露呈する前記導電部の前記露呈部上に、接合体の第一部位として機能する銅(Cu)膜を形成する第四工程と、
前記第一部位の上面に接するように、前記接合体の第二部位として機能するニッケル(Ni)膜を形成する第五工程と、
前記第一レジスト膜及び第二レジスト膜を剥離する第六工程と、を順に備え、
前記銅(Cu)膜、及び、前記ニッケル(Ni)膜は、スパッタ法により形成し、
前記ニッケル(Ni)膜を形成する際のスパッタ成膜時の圧力を0.2Pa以上0.58Pa以下とすることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記開口部B及び開口部Cは、開口部Bの幅<開口部Cの幅という関係式を満たし、
前記銅(Cu)膜は、ターゲットと基板との離間距離を300~400mmとして形成されることを特徴とする請求項
1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第五工程の次工程として、前記第二部位の上面に接するように、はんだ膜をスパッタ法により形成する工程と、
前記第六工程の次工程として、前記はんだ膜をリフローする工程と、をさらに備えることを特徴とする請求項
1または請求項
2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記はんだ膜の形成には錫合金ターゲットを用いることを特徴とする請求項
3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記はんだ膜の形成に用いる錫合金ターゲットが、錫(Sn)と銀(Ag)と銅(Cu)の三元素を含む錫合金からなることを特徴とする請求項
4に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンプの小径化やバンプの狭ピッチ化に対応可能な、電気的接続部を備えた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、高機能化に伴って、機器に組み込まれる電子部品や半導体チップも小型化、高集積化が進んでいる。このような電子部品や半導体チップと実装基板との電気的な接続部には、はんだバンプが多用されている。
【0003】
前記接合部として「はんだバンプ」を用いる技術(はんだ接合と呼ぶ)では、上述した小型化、高集積化を図るために、バンプの小径化やバンプの狭ピッチ化が必須となる。バンプの小径化は、バンプ間の距離を縮めて、単位面積あたりに設けるバンプ数を増やすこと(狭ピッチ化)に有効である。しかしながら、バンプの小径化やバンプの狭ピッチ化は、バンプ内における電流密度の増加を促し、エレクトロマイグレーションが発生し易くなる(非特許文献1)。
はんだバンプは、サイズが大きい場合(15μm~)、電解めっき法により作製されるが、微細化が進むと、高さの制御性に優れる無電解めっき法が用いられる。無電解めっき法の場合、多元素の成長は困難のため、信頼性や機械的強度の問題(ウィスカ発生)が生じる。
【0004】
この問題を解決するため、前記接合部として「はんだバンプ」に代えて、たとえば、めっき法により形成された「金属ピラー(金属ポストとも呼ぶ)」を用いる技術(加圧接合と呼ぶ)が提案されている(特許文献1、2)。
図18A~
図18Dおよび
図19A~
図19Eは、めっき法により形成された「金属ピラー」の作製方法の一工程例を示す模式断面図である。ピラーを形成する金属としては、たとえば、Cuが用いられる。金属ピラーは、接合時の濡れ広がりの影響が、はんだバンプより少ないため、狭ピッチ化に好適である。また、はんだバンプに比べると、金属ピラーは導電性と熱伝導性に優れ、機械的強度が高く、さらに信頼性の向上が図れる。しかし、金属ピラーは、加圧時の接合温度が高く、接合時にダメージが生じ易いという課題があった。
【0005】
加圧接合に比べて低温で接合が可能であり、かつ、はんだ接合より導電性と熱伝導性に優れる技術として、「ナノペースト」を用いて接合する技術が挙げられる(特許文献3)。ナノペースト接合は、金属ピラーの課題である、加圧接合時のダメージを解消できる利点も備えている。しかし、ナノペースト接合は印刷法を用いるため、微細化(バンプの小径化やバンプの狭ピッチ化)には不向きである。
【0006】
表1は、接合部がCuからなる場合について、上述した3種類の技術の諸特性(接合温度、熱伝導、電気抵抗、接合によるダメージ)、長所、短所を纏めた一覧表である。
【0007】
【0008】
表1より、上述した3種類の技術には、一長一短あることが分かる。ナノペースト接合は印刷法ゆえに、微細化に適さない。加圧接合やはんだ接合は現在、めっき法により作製されるため、廃液処理などの環境負荷の低減が求められている。
したがって、バンプの小径化やバンプの狭ピッチ化に対応可能であり、かつ、環境負荷の低減も図ることが可能な、電気的接続部を有する半導体装置及びその製造方法の開発が期待されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2016-213238号公報
【文献】特表2014-522115号公報
【文献】特開2016-079499号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】鳥山和重、岡本圭司、小原さゆり、折井靖光:”マイクロバンプ接合技術の開発動向”、エレクトロニクス実装学会誌、Vol.14, No.5, pp. 372-376, 2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、バンプの小径化やバンプの狭ピッチ化に対応可能であり、かつ、環境負荷の低減も図ることが可能な、電気的接続部を有する半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の参考形態の半導体装置は、基材の一面に導電部と絶縁部が順に積層され、前記絶縁部に設けた開口部において、前記導電部が露呈部を有する基板と、前記露呈部上に配置され、該露呈部と電気的に接続された底部と、該露呈部から離れる方向に位置する頂部とを有する、導電性部材からなる接合体と、を備えた半導体装置であって、前記接合体が、前記底部を含む第一部位、及び、前記第一部位に重ねて配置され前記頂部を含む第二部位から構成され、前記第一部位が銅(Cu)、前記第二部位がニッケル(Ni)であり、前記第二部位のニッケル(Ni)の膜厚が300nm以上であり、内部応力が-100MPa以上+100MPa以下である、ことを特徴とする。
本発明の参考形態の半導体装置は、前記接合体が円柱状であってもよい。
本発明の参考形態の半導体装置は、前記接合体のうち、前記接合体の頂部をなす領域を覆うように、はんだ膜からなる第三部位をさらに備えていてもよい。
本発明の参考形態の半導体装置は、前記はんだ膜が錫(Sn)合金であってもよい。
本発明の参考形態の半導体装置は、前記はんだ膜が錫(Sn)に加えて、銀(Ag)、銅(Cu)、アンチモン(Sb)、ニッケル(Ni)、インジウム(In)、ビスマス(Bi)、ゲルマニウム(Ge)、リン(P)、亜鉛(Zn)から選択される1つ以上の元素を含んでもよい。
本発明の参考形態の半導体装置は、前記はんだ膜が錫(Sn)と銀(Ag)と銅(Cu)の三元素を含む錫合金であってもよい。
本発明の参考形態の半導体装置は、前記はんだ膜の表面形状が、側(縦断面)方向から見て、半球状であってもよい。
【0013】
本発明の請求項1に記載の半導体装置の製造方法は、導電性部材からなる接合体を有する半導体装置の製造方法であって、
基材の一面に導電部と絶縁部が順に積層され、前記絶縁部に設けた開口部において、前記導電部が露呈部を有する基板を用い、前記導電部と前記絶縁部を覆うように第一レジスト膜及び第二レジスト膜を順に形成する第一工程と、前記導電部の前記露呈部が露呈するように、前記第二レジスト膜に開口部C、前記第一レジスト膜に開口部Bを形成する第二工程と、前記導電部の前記露呈部の表面の自然酸化膜を除去する第三工程と、前記第一レジスト膜の開口部B及び前記第二レジスト膜の開口部Cから露呈する前記導電部の前記露呈部上に、接合体の第一部位として機能する銅(Cu)膜を形成する第四工程と、前記第一部位の上面に接するように、前記接合体の第二部位として機能するニッケル(Ni)膜を形成する第五工程と、前記第一レジスト膜及び第二レジスト膜を剥離する第六工程と、を順に備え、前記銅(Cu)膜、及び、前記ニッケル(Ni)膜は、スパッタ法により形成し、前記ニッケル(Ni)膜を形成する際のスパッタ成膜時の圧力を0.2Pa以上0.58Pa以下とすることを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の半導体装置の製造方法は、請求項1において、前記開口部B及び開口部Cは、開口部Bの幅<開口部Cの幅という関係式を満たし、前記銅(Cu)膜は、ターゲットと基板との離間距離を300~400mmとして形成されることを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の半導体装置の製造方法は、請求項1または請求項2において、前記第五工程の次工程として、前記第二部位の上面に接するように、はんだ膜をスパッタ法により形成する工程と、前記第六工程の次工程として、前記はんだ膜をリフローする工程と、をさらに備えることを特徴とする。
本発明の請求項4に記載の半導体装置の製造方法は、請求項3において、前記はんだ膜の形成には錫合金ターゲットを用いることを特徴とする。
本発明の請求項5に記載の半導体装置の製造方法は、請求項4において、前記はんだ膜の形成に用いる錫合金ターゲットが、錫(Sn)と銀(Ag)と銅(Cu)の三元素を含む錫合金からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の参考形態の半導体装置は、基板上に導電部と絶縁部が順に積層され、前記絶縁部に設けた開口部によって、導電部の一部が露呈されており、この露呈された導電部上に、導電性部材からなる接合体を備えている。この接合体は、前記導電部と接する側から順に、銅(Cu)からなる第一部位、ニッケル(Ni)からなる第二部位、により構成されている。なお、本発明では、この「接合体」のことを「ピラー」とも呼ぶ。
上記構成によれば、絶縁部に設けた開口部の大きさを制御することにより、接合体の太さを任意の大きさに制御することが可能となる。特に、絶縁部に設けた開口部の大きさを狭めることによって、接合体の太さが所望の細さとなるように制御できる。
この開口部によって局所的に露呈した導電部と接するように、第一部位/第二部位/第三部位からなる接合体が配置される。これにより、開口部の大きさや形状に基づいて、接合体の太さや横断面形状が制限されるので、所望のサイズや形状からなる接合体が導電部上に構築される。
また、開口部どうしの離散配置された位置情報に基づいて、接合体どうしの離間距離を正確に決定することも可能となる。
ゆえに、本発明は、バンプの小径化やバンプの狭ピッチ化に高精度に対応可能な、電気的接続部として機能する接合体を備えた半導体装置をもたらす。
【0015】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、第一部位/第二部位/第三部位からなる接合体(ピラー)を全てスパッタ法により作製することができる。従来はめっき法によりピラーを形成する必要があったため、廃液処理などの環境負荷の低減が求められていた。これに対して、本発明は、ピラーをスパッタ法によって作製するので、廃液処理などの環境負荷を考慮する必要がない、半導体装置の製造方法の提供に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャート。
【
図2】
図1におけるSD工程を示すフローチャート。
【
図3】
図1におけるSF工程を示すフローチャート。
【
図4A】
図1の半導体装置の製造方法における最初のステップを示す模式断面図。
【
図6A】
図2に示すSD工程における最初のステップを示す模式断面図。
【
図8A】SE工程に相当するPE工程を示す模式断面図。
【
図8B】SF工程に含まれる最初の工程(PB)を示す模式断面図。
【
図9】本発明に係る半導体装置どうしを接合した状態を示す模式断面図。
【
図10A】T/S距離を150mmとして形成した接合体を示す写真。
【
図10B】T/S距離を200mmとして形成した接合体を示す写真。
【
図10C】T/S距離を300mmとして形成した接合体を示す写真。
【
図10D】T/S距離を400mmとして形成した接合体を示す写真。
【
図12A】Niからなる第二部位を備えた接合体を示す断面SEM写真。矢印βは第二部位と第三部位の界面付近を表わす。
【
図12B】
図12Aに対応し、第二部位のNiを灰色で示すEDS写真。矢印αは第一部位と第二部位の界面付近を、矢印βは第二部位と第三部位の界面付近を表わす。
【
図12C】
図12Aに対応し、第一部位のCuを灰色で示すEDS写真。矢印αは第一部位と第二部位の界面付近を表わす。
【
図12D】
図12Aに対応し、第三部位に含まれるAgを灰色で示すEDS写真。矢印βは第二部位と第三部位の界面付近を表わす。
【
図12E】
図12Aに対応し、第三部位に含まれるSnを灰色で示すEDS写真。矢印βは第二部位と第三部位の界面付近を表わす。
【
図13A】Niからなる第二部位を備えず、第一部位の上に第三部位を形成した接合体を示す断面SEM写真。矢印γは第一部位と第三部位の界面付近を表わす。
【
図13C】
図13Aに対応し、第一部位のCuを明るい灰色で、第三部位のCuを暗い灰色で、それぞれ示すEDS写真。矢印γは第一部位と第三部位の界面付近を表わす。
【
図13D】
図13Aに対応し、第三部位に含まれるAgを明るい灰色で示すEDS写真。矢印γは第一部位と第三部位の界面付近を表わす。
【
図13E】
図13Aに対応し、第三部位に含まれるSnを灰色で示すEDS写真。矢印γは第一部位と第三部位の界面付近を表わす。
【
図14】ヒートサイクル前の組成分布を示すEDS写真。左側から右側へ順に、Si(基板)、Ti(膜)、Ni(膜)、Sn膜の結果である。
【
図15】ヒートサイクル後の組成分布を示すEDS写真。左側から右側へ順に、Si(基板)、Ti(膜)、Ni(膜)、Sn膜の結果である。
【
図16】スパッタ成膜時の圧力と形成されたNi膜の内部応力との関係を示すグラフ。
【
図17A】半導体装置における接合体の密着性がOKの場合を示すSEM写真。
【
図17B】半導体装置における接合体の密着性がNGの場合を示すSEM写真。
【
図18A】接合体をめっき法で形成する従来の作製方法を示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【0018】
<半導体装置の製造方法>
図1は、本発明に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
本発明の半導体装置の製造方法は、
図1に示す8つの工程(SA→SB→SC→SD→SE→SF→SG→SH)から構成されている。
図4Aは、
図1の半導体装置の製造方法における最初のステップを示す模式断面図である。
図4B~
図4E、
図5A~
図5Dは順に、
図4Aから続く次工程を表わす模式断面図または写真である。
【0019】
工程SAは、基材21を準備する工程である[
図4A]。本発明における基材21は、次工程において配線が形成される面(
図4Aでは上面)が電気的に絶縁性を備えていれば、特に限定はされない。基材21としては、たとえば、シリコン等からなる半導体部材の表面が酸化処理された、あるいは酸化膜が形成された基板、絶縁性のセラミックやプラスチックからなる基板、などが挙げられる。
【0020】
工程SBは、配線24を形成する工程である[
図4B]。基材21の絶縁性を備えた面上に導電膜を成膜し、所望のパターニングを行うことにより所定の配線24を形成する。配線24を形成する導電膜の材料としては、たとえばアルミニウム(Al)、銅(Cu)などが挙げられる。
【0021】
工程SCは、保護膜23を形成する工程である[
図4C]。基材21および配線24を覆うように、絶縁性の部材からなる保護膜23を成膜し、エッチングを行うことにより、配線24の表面の一部を露呈した状態とする。本発明では、この状態にあるものを被処理体20と呼ぶ。保護膜23の材料としては、たとえば窒化膜や酸化膜、窒化酸化膜などが挙げられる。
【0022】
工程SDは、リフトオフ用のレジスト25、26を形成する工程である[
図4D]。被処理体20にレジスト25、26を塗布し、配線の表面の一部が露呈した状態となるように、フォトリソ法によりレジスト25、26に開口部を形成する。
なお、工程SDの詳細については、
図2、
図6A~
図6E及び
図7A~
図7Dを用いて後述する。
【0023】
図4Eは、
図4Dに示したレジスト25、26の一構成例を示す写真である。
図4Eの場合、下部レジスト25は、レジストの合計厚である深さ5μmの位置に底面(幅13.5μm)を備え、その側壁は高さ方向に幅が広がる形状の第一孔部を有している。上部レジスト26も第二孔部を備えており、この第二孔部は、下部レジスト25の第一孔部と連通している。第二孔部の開口径は10μmであり、第一孔部と第二孔部は同一中心軸をなすように、重ねて配置されている。
図4Eは、下部レジスト25と上部レジスト26の厚さの比率が約3:1の場合を示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
工程SEは、自然酸化膜を除去する工程である[
図5A]。前段の工程SDにおいて、レジスト25、26に開口部を形成すると、保護膜23と配線24の表面に露呈した部位が生じる。この露呈した部位上には、自然酸化膜27が発生し易い。この自然酸化膜27が介在した上に、次工程で接合体(ピラー)を形成すると、導電性が不具合となり易い。これを解消するため、ドライエッチングを行うことにより、被処理体において、露呈した状態にある配線の表面を覆う自然酸化膜27を除去する。
【0025】
工程SFは、スパッタ法により接合体(ピラー)を形成する工程である[
図5B]。被処理体に対してレジストで作ったパターンに、スパッタ法により所望の積層膜を成膜する。
工程SFの詳細については、
図3及び
図8A~
図8Eを用いて後述する。
【0026】
工程SGは、リフトオフ工程である[
図5C]。レジストで作ったパターンに成膜し(工程SF)、その後、ドライエッチング法によりレジストを取り除く。その結果、レジストがなかった部分にだけ、積層膜からなるパターンが残る。これにより、特定の位置にある配線24の表面上に、所望のサイズの前記積層膜からなる接合体(ピラー)30を形成する。
図5Dは、
図5Cに示した接合体(ピラー)30の一構成例を示す写真である。
【0027】
工程SHは、接合体(ピラー)30を備えた半導体装置を完成する工程である[不図示]。前記積層膜からなる接合体(ピラー)30が被処理体20上に形成された試料を、減圧雰囲気から大気雰囲気に取り出すことにより、接合体(ピラー)を備えた半導体装置が得られる。
【0028】
<SD工程>
図2は、
図1におけるSD工程(リフトオフ用のレジスト25、26を形成する工程[
図4D])を示すフローチャートである。
図6Aは、
図2に示すSD工程における最初のステップを示す模式断面図である。
図6B~
図6E、
図7A~
図7Dは順に、
図6Aから続く次工程を表わす模式断面図である。
【0029】
換言すると、
図6A~
図6E、
図7A~
図7Dは、本発明に係るレジスト構造体の製造方法の一例を工程順に示す模式断面図である。
図1の工程SA~SCは
図2のステップRSに、
図1の工程SDは
図2のステップRA~REに相当する。
【0030】
<被処理体10を準備するステップRS>(被処理体10は
図4、
図5の符号20に相当)
図6Aは、レジスト構造体を形成するために用いる被処理体10を表わしている。この被処理体10は、(少なくとも第一導電部12が形成される面が)絶縁性の基体11、第一導電部12、絶縁部13、及び、絶縁部13の内部に配され、前記第一導電部12と電気的に接する第二導電部14、を含んで構成されている。第二導電部14の上面は、第一導電部12の上面と面一を成しており、第二導電部14の上面と第一導電部12の上面は何れも、露呈された状態にある。
【0031】
<第一レジストからなる厚膜Aを形成するステップRA>
図6B~
図6Dは、第一レジストからなる厚膜Aを形成する工程RAを示している。本発明における第一レジストからなる厚膜Aは、全膜厚を一回に形成するのではなく、多数回に分けて積層形成する手法により積層する。
前記厚膜Aを形成するステップRAは、前記被処理体上に第一レジスト層をスピン塗布法により成膜する工程A1[
図6B]と、前記工程A1により形成された前記第一レジスト層を焼成する工程A2[
図6C]とを備え、前記工程A1と前記工程A2を繰り返すことにより、前記厚膜Aを所定の厚さ[
図6D]とする。 第一レジストとしては、アルカリ性現像液によって融解され、かつ感光性を持たないレジストが好適に用いられ、例えば、SF-7シリーズ(日本化薬株式会社製)、LORシリーズ(日本化薬株式会社製)などが挙げられる。
【0032】
図6Bは、被処理体10の一面、すなわち、絶縁部13、及び、第二導電部14、を被覆するように、第一レジスト層15a(15α)をスピン塗布法(R1は被処理体10の回転を表わす)により成膜する[工程A1]。塗布条件(単位時間あたりの塗布量、回転数R1など)は、適宜調整すればよい。
次いで、
図6Cに示すように、前記工程A1により形成された第一レジスト層15a(15α)を、加熱手段H1を用いて焼成する。これにより、焼成された第一レジスト層15aB(15β)が得られる[工程A2]。焼成条件(処理温度、処理時間など)は、適宜調整すればよい。
【0033】
図6Dは、工程A1と工程A2を複数回、繰り返すことにより、所定の厚さを有する厚膜Aを形成した状態を表わしている。
図1(d)には、工程A1と工程A2を3回繰り返した構成例[15aB、15bB、15cB(15β)]を表わしているが、本発明は3回に限定されるものではなく、4回以上でも構わない。また、工程A1で成膜する膜の厚さには特に制限はなく、同じ厚さを繰り返しても良いし、異なる厚さとしても構わない。つまり、繰り返し回数や各膜の厚さは、適宜選択される。
ただし、厚膜Aの全膜厚は、後工程においてミクロンオーダーの空間を形成するために
、少なくとも2μm以上、15μm以下とすることが好ましい。
【0034】
<第二レジストからなる厚膜Bを形成するステップRB>
図6E、
図7A、
図7Bは、第二レジストからなる厚膜Bを形成するステップRBを示している。本発明における第二レジストからなる厚膜Bは、膜厚に応じて、単膜を一度に積層する手法、及び多数回に分けて積層する手法が用いられる。
前記厚膜Bを形成するステップRBは、前記厚膜A(15β)上に第二レジスト層をスピン塗布法により成膜する工程B1[
図6E]と、前記工程B1により形成された前記第二レジスト層を焼成する工程B2[
図7A]とを備え、前記工程B1と前記工程B2を繰り返すことにより、前記厚膜Bを所定の厚さ[
図7B]とする。
【0035】
第二レジストとしては、フォトリソグラフィ処理によりエッチングされるレジストが好
適に用いられ、例えば、OFPRシリーズ(東京応化工業株式会社製)、KMPR100
0シリーズ(日本化薬株式会社製)、TZNRシリーズ(東京応化工業株式会社製)、S
U-8シリーズ(日本化薬株式会社製)、PMERシリーズ(東京応化工業株式会社製)
、ZPNシリーズ(日本ゼオン株式会社製)などが挙げられる。
【0036】
図6Eは、厚膜A(15β)の上面を被覆するように、第二レジスト層16a(16α)をスピン塗布法(R2は被処理体10の回転を表わす)により成膜する[工程B1]。塗布条件(単位時間あたりの塗布量、回転数R2など)は、適宜調整すればよい。
次いで、
図7Aに示すように、前記工程B1により形成された第二レジスト層16a(16α)を、加熱手段H2を用いて焼成する。これにより、焼成された第二レジスト層16aB(16β)が得られる[工程B2]。焼成条件(処理温度、処理時間など)は、適宜調整すればよい。
【0037】
図7Bは、工程B1と工程B2を複数回、繰り返すことにより、所定の厚さを有する厚膜Bを形成した状態を表わしている。
図1(g)には、工程B1と工程B2を2回繰り返した構成例[16aB、16bB(16β)]を表わしているが、本発明は2回に限定されるものではなく、3回以上でも構わない。また、工程B1で成膜する膜の厚さには特に制限はなく、同じ厚さを繰り返しても良いし、異なる厚さとしても構わない。つまり、繰り返し回数や各膜の厚さは、適宜選択される。
【0038】
ただし、厚膜Bの全膜厚は、後工程においてミクロンオーダーの空間を形成するために、少なくとも2μm以上、10μm以下とすることが好ましい。
後述する、「フォトリソ法を用いて前記厚膜Bに第二空間を形成するステップRC」において、第二空間を作製し易い程度の膜厚が、厚膜Bの全膜厚には求められる。
【0039】
<厚膜Bに第二空間を形成するステップRC>
図7Cは、フォトリソ法を用いて前記厚膜B(16β)に対して、該厚膜Bを貫通し、かつ、前記厚膜A(15β)の上面が露呈するように第二空間16Hを形成する。
フォトリソ法を行う際には、開口部が口径16WのマスクM1を用い、この開口部を通して、厚膜B(16β)に対して波長hν(λ)の光を照射することにより、第二空間16Hが形成される。
図1(h)において、符号16HSは第二空間16Hを規定する、厚膜B(16β)の内側面であり、符号16HBは、第二空間16Hを規定する、厚膜A(15β)の露呈した上面である。
【0040】
その場合、次工程で形成される第一空間15Hと前記第二空間16Hの重なり方向から見て、第一空間15Hの占有領域SAが、第二空間16Hの占有領域SBより広く、かつ、前記占有領域SAの中に前記占有領域SBが含まれるように、前記厚膜B(16β)に対する前記フォトリソが行われる。これにより、次工程において、前記厚膜A(15β)に対して第一空間15Hを形成する際のマスクの開口部として機能する、第二空間16Hを形成することができる。
【0041】
<厚膜Aに第一空間を形成するステップRD>
図7Dは、ウェットエッチング法を用いて前記厚膜A(15β)に対して、該厚膜Aを貫通し、かつ、前記被処理体10の上面(13、14)が露呈するように第一空間15Hを形成する。
【0042】
ウェットエッチング法を行う際には、薬液の温度などを適宜選択することにより、前記第一空間15Hと前記第二空間16Hの重なり方向から見て、前記第一空間15Hの占有領域SAが、前記第二空間16Hの占有領域SBより広くなるように、前記第一空間15Hを形成する。
図1(i)において、符号15HSは、第一空間15Hを規定する、厚膜A(15β)の内側面である。符号15HBは、第一空間15Hを規定する、被処理体10(絶縁部13、第二導電部14)の露呈した上面である。符号15HTは、前記第一空間15Hと前記第二空間16Hの重なり方向から見て、屋根状に延びる部位である。
【0043】
ステップRDにおいては、第一空間15Hの底面15HBに、被処理体10の上面(絶縁部13、第二導電部14)が露呈するように、前記第一空間15Hを形成することが重要である。これにより、後の工程において、スパッタ法を用いて形成される、はんだバンプが確実に、第二導電部14と電気的に接続された構成とすることができる。
【0044】
また、
図7Dに示した、各層を断面視する方向において、「(第二導電部14の幅)<(第二空間16Hの開口径16W)<(第一空間15Hの開口径15W)」という関係式を満たすように、屋根状に延びる部位15HTの寸法を調整することも重要である。これにより、後の工程において、スパッタ法を用い、はんだバンプを形成した場合、前記はんだバンプが第二導電部14を覆うとともに、はんだバンプの大きさ(直径、高さ)を制御して設けることが可能となる。
【0045】
図7Dに示したレジスト構造体、すなわち第一空間と第二空間を備えたレジスト構造体の一例が、上述した
図4Eに示す断面SEM写真である。
図4Eより、本発明のレジスト構造体は、各層を断面視する方向において、「(第二導電部14の幅)<(第二空間16Hの開口径16W)<(第一空間15Hの開口径15W)」という関係式を満たしていることが分かる。
【0046】
<SF工程>
図3は、
図1におけてSE工程に続く、SF工程を示すフローチャートである。
図3において、PA工程は、自然酸化膜が除去された、被処理体が準備された状態(
図8A)を表わしており、これは、
図1におけるSE工程に相当する。
図8Aの状態は、所望のドライエッチング処理を施すことにより、自然酸化膜27(
図5A)が除去され、保護膜23の表面と配線24の表面が露呈された状態が得られる。
【0047】
本発明のSF工程は、(自然酸化膜が除去された)被処理体に対して、スパッタ法を用いて接合体を形成する。
図3に示すように、SF工程は、PB工程、PC工程、(PD工程、)PE工程から構成される。すなわち、
図1におけるSF工程は、最大4つの工程から構成されている。
【0048】
PB工程は、接合体を構成する第一部位31を形成する。第一部位31は、たとえば、Cuターゲットを用い、スパッタ法により形成される。これにより、
図8Bに示すように、第一部位31の下面は、配線24の表面に接すると共に、第一部位31の側面が保護膜23の内側面、レジスト25、26の内側面によって規制された構造体が得られる。
【0049】
PC工程は、接合体を構成する第二部位32を形成する。第二部位32は、たとえば、Niターゲットを用い、スパッタ法により形成される。これにより、
図8Cに示すように、第二部位32の下面は、第一部位31の上面に接すると共に、第二部位31の側面がレジスト26の内側面によって規制された構造体が得られる。
【0050】
PD工程は、接合体を構成する第三部位35を形成する。第三部位35は、たとえば、はんだ組成からなるターゲットを用い、スパッタ法により形成される。これにより、
図8Dに示すように、第三部位35の下面は、第二部位32の上面に接すると共に、第三部位35の側面がレジスト26の内側面によって規制された構造体が得られる。
【0051】
PE工程は、リフトオフ工程である[
図8E]。これは、
図1におけるSG工程に相当する。レジスト25、26で作ったパターンに成膜し(工程SF)、その後、ドライエッチング法によりレジスト25、26を取り除く。その結果、レジストがなかった部分にだけ、積層膜からなるパターンが残る。これにより、特定の位置にある配線24の表面上に、所望のサイズの前記積層膜からなる接合体(ピラー)30が得られる。
【0052】
接合体30の頂部に位置する第三部位35は、必要に応じて形成される。上述した接合体30は、たとえば、
図9に示すように、接合体30Aと接合体30Bを対向して配置し、両者の頂部を電気的に接続して用いられる。ゆえに、接合体30Aと接合体30Bの両方の頂部が、第三部位35を備える必要はない。すなわち、接合体30Aと接合体30Bのいずれか一方の頂部が第三部位35を備えていれば、電気的な接続が満たされる。
【0053】
(実験例1)
図10A~
図10Dは、T/S距離[ターゲットと基板(被処理体)との離間距離]を変更して、スパッタ法により形成した接合体(ピラー)を示す写真(SEM写真)である。
図10A、
図10B、
図10C、
図10Dは順に、T/S距離が150mm、200mm、300mm、400mmの結果を各々表わしている。
【0054】
図10A~
図10Dより、以下の点が明らかとなった。
(a1)T/S距離が短い場合(150mm、200mm)には、接合体の裾が捲れ上がった形状の部位(以下、バリとも呼ぶ)が発生する。このバリは、電気的な接続の障害となる虞があるため芳しく無い[
図10A、
図10B]。
(a2)T/S距離が中間の場合(300mm)には、バリの発生が無く、電気的な接続に良好な形状の接合体が得られる[
図10C]。
(a3)T/S距離が長い場合(400mm)には、バリの発生が無く、電気的な接続に良好な形状の接合体が得られる[
図10D]。しかしながら、成膜速度の低下により、生産性が悪くなる。
【0055】
以上の結果から、本発明に係る接合体(ピラー)を安定して作製するためには、T/S距離が影響を及ぼすことが確認された。適度なT/S距離を保つことにより、成膜速度を維持しながら、バリの発生が無く、電気的な接続に良好な形状を有する接合体が、スパッタ法により形成可能であることが判明した。
【0056】
【0057】
図12Aは、Niからなる第二部位を備えた接合体を示す断面SEM写真である。矢印βは第二部位と第三部位の界面付近を表わす。
図12Bは、
図12Aに対応し、第二部位のNiを灰色で示すEDS写真である。矢印αは第一部位と第二部位の界面付近を、矢印βは第二部位と第三部位の界面付近を表わす。
図12Cは、
図12Aに対応し、第一部位のCuを灰色で示すEDS写真である。矢印αは第一部位と第二部位の界面付近を表わす。
図12Dは、
図12Aに対応し、第三部位に含まれるAgを灰色で示すEDS写真である。矢印βは第二部位と第三部位の界面付近を表わす。
図12Eは、
図12Aに対応し、第三部位に含まれるSnを灰色で示すEDS写真である。矢印βは第二部位と第三部位の界面付近を表わす。
ここで、SEMは走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)を、EDSはエネルギー分散型X線分析装置(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)を、各々表わしている。
【0058】
図12A~
図12Eより、第一部位(Cu)と第三部位(Ag、Sn)との間に、Niからなる第二部位(
図12Bにおける矢印αから矢印βの厚さ領域)が存在することにより、第一部位(Cu)と第三部位(Ag、Sn)が互いの領域へ侵入する現象が防止されることが分かった。これにより、後述するCuの拡散による接合強度の低下(
図13A~
図13E)という現象が発生しない。Niからなる第二部位の存在は、Cu拡散を抑制し、接続強度の信頼性をもたらす。
【0059】
図13Aは、Niからなる第二部位を備えず、第一部位の上に第三部位を形成した接合体を示す断面SEM写真である。矢印γは第一部位と第三部位の界面付近を表わす。
図13Bは、
図13Aに対応し、矢印γ付近の組成分布を追記したEDS写真である。
図13Cは、
図13Aに対応し、第一部位のCuを明るい灰色で、第三部位のCuを暗い灰色で、それぞれ示すEDS写真である。矢印γは第一部位と第三部位の界面付近を表わす。
図13Dは、
図13Aに対応し、第三部位に含まれるAgを明るい灰色で示すEDS写真である。矢印γは第一部位と第三部位の界面付近を表わす。
図13Eは、
図13Aに対応し、第三部位に含まれるSnを灰色で示すEDS写真である。矢印γは第一部位と第三部位の界面付近を表わす。
【0060】
図13A~
図13Eより、Niからなる第二部位が存在せず、第一部位(Cu)と第三部位(Ag、Sn)とが直接接触した場合は、第一部位(Cu)と第三部位(Ag、Sn)が互いの領域へ侵入する現象が発生することが分かった。特に、第一部位(Cu)と第三部位(Ag、Sn)の界面γを越えて、第一部位のCuが第三部位へ拡散し、接合強度が下がることが確認された。
【0061】
図14は、ヒートサイクル前の組成分布を示すEDS写真であり、左側から右側へ順に、Si(基板)、Ti(膜)、Ni(膜)、Sn(膜)の結果である。
図15は、ヒートサイクル後の組成分布を示すEDS写真であり、左側から右側へ順に、Si(基板)、Ti(膜)、Ni(膜)、Sn膜の結果である。
図14と
図15を比較することにより、ヒートサイクル前後において、Niからなる第二部位の厚さが、1000nm程度から700nm程度へ減少していることが分かった。
この結果より、前記第一部位の厚さをD1、前記第二部位の厚さをD2、前記第三部位の厚さをD3と定義した場合、前記D2は300nm以上であることが好ましい。安全を確保する意味から、前記D2は400nm以上がより好ましい。
【0062】
図16は、スパッタ成膜時の圧力と形成されたNi膜の内部応力との関係を示すグラフである。スパッタ成膜時の圧力を0.1Pa~2Paまで変化させると、Ni膜の内部応力が、マイナス側(圧縮側)からプラス側(引張側)へ移行することが確認された。
本発明では、Niからなる第二部位が、第一部位(Cu)と第三部位(Ag、Sn)との間に挿入配置されている。ゆえに、Niからなる第二部位は、その上下に位置する第一部位(Cu)や第三部位(Ag、Sn)に対する内部応力の影響を小さく抑えることが、得策となる。これにより、接続強度の信頼性を高めることができる。
この観点より、たとえば、Ni膜の内部応力[MPa]を「-100以上+100以下」に保つためには、スパッタ成膜時の圧力[Pa]を「およそ0.2以上0.58以下」として、Ni膜を形成すれば良いことが分かった。
【0063】
図17Aは、半導体装置における接合体の密着性がOKの場合を示すSEM写真である。これに対して、
図17Bは、半導体装置における接合体の密着性がNGの場合を示すSEM写真である。
密着性がNGの場合には、接合体(ピラー)そのものが欠損する領域(NG1)や、接合体(ピラー)の下層部に付属物が生じる領域(NG2)が発生し、電気的接続の安定性が確保されない虞がある。
このような問題を回避するためには、上述したNi膜の厚さや、Ni膜のスパッタ成膜時の圧力を制御することが大切である。
【0064】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0065】
20 基板、21 基材、23 絶縁部、24 導電部、25、26 レジスト、30 接合体、31 第一部位、32 第二部位、35 第三部位。