(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】サワークリーム様食品
(51)【国際特許分類】
A23C 13/14 20060101AFI20220607BHJP
A23L 9/20 20160101ALI20220607BHJP
A23D 9/00 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
A23C13/14
A23L9/20
A23D9/00 518
(21)【出願番号】P 2018028849
(22)【出願日】2018-02-21
【審査請求日】2020-07-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】下總 裕美
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-070032(JP,A)
【文献】特開2001-057844(JP,A)
【文献】米国特許第04150163(US,A)
【文献】ニッケル触媒による食用油脂の水素添加(第4報),油化学, 1982, vol.31, no.1, p.16-22
【文献】アサマNEWSパートナー, [online], 2004, No.102, <URL: https://www.asama-chemical.co.jp/PN/P102.PDF>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C
A23L
A23D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸と、食用油脂とを含んでなるサワークリーム様食品であって、
前記サワークリーム様食品全量中、乳酸を2.5~3.0重量%、乳タンパクを2.0~4.0重量%含有し、
20℃における食用油脂の固体脂肪含有量が
13~20%、
35℃における食用油脂の固体脂肪含有量が5%以下であり、
且つ水分活性が0.850aw以下であり、
乳化剤を含まないことを特徴とするサワークリーム様食品。
【請求項2】
サワークリーム様食品全量中、食用油脂を45~85重量%含有することを特徴とする請求項1記載のサワークリーム様食品。
【請求項3】
更に、糖質を含むことを特徴とする請求項
1記載のサワークリーム様食品。
【請求項4】
サワークリーム様食品全量中、糖質を10~40重量%含有することを特徴とする請求項
1記載のサワークリーム様食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サワークリームに類似した食品(以下「サワークリーム様食品」という)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サワークリームは、生クリームを乳酸菌で発酵させることで得られる乳製品あり、乳酸に由来する軽い酸味と、乳脂肪に由来するなめらかで均質な食感が特徴である。サワークリームを使用する代表的な料理としてはボルシチなどが知られている。
【0003】
ところが、サワークリームは、水分含有量が高いため常温では保存が出来ず、冷蔵でも2~3週間程度しか保存できない。また、冷凍すると水分と乳脂肪が分離してしまうため、サワークリームの食感や風味が失われてしまうという課題があった。
【0004】
また、特許文献1、2には、発酵乳製品様食品が開示されているが、いずれも水分活性が高く、長期保存を実現するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-276069号公報
【文献】特開2004-357522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
すなわち、本発明は、保存性が良く、サワークリームの風味を有し、且つハンドリングの良いサワークリーム様食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、乳酸と、食用油脂とを含んでなるサワークリーム様食品であって、20℃における食用油脂の固体脂肪含有量(SFC)が5~35%であり、且つ水分活性が0.850aw以下のサワークリーム様食品により、本願発明の課題を解決得ることを見出した。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水分活性が低いため保存性が良く、サワークリームの風味を有し、且つペースト状であるためハンドリングの良いサワークリーム様食品を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、具体的に説明する。
【0010】
本発明は、乳酸と、食用油脂とを含んでなるサワークリーム様食品であって、20℃における食用油脂の固体脂肪含有量(SFC)が5~35%、且つ水分活性が0.850aw以下であることを特徴とするサワークリーム様食品を提供するものである。以下詳細に説明する。
【0011】
(1)水分活性
本発明において、サワークリーム様食品の水分活性は0.850aw以下であり、0.600aw以下であることがより好ましい。水分活性を0.850aw以下にすることで、大腸菌、サルモネラ菌、赤痢菌等のグラム陰性菌の繁殖を抑え、食中毒のリスクを低減することができる。さらに、水分活性を0.600aw以下にすることで、ほぼ全ての微生物の繁殖を抑えることができ食品の腐敗を防止することができる。
【0012】
(2)原料
(2-1)乳酸
本発明のサワークリーム様食品は、乳酸を含有する。サワークリームの酸味は主に乳酸に由来しており、本発明においても乳酸が必須である。乳酸以外にクエン酸やリンゴ酸等のその他の酸を含んでいても良いが、酸味の観点から酸の主成分(酸全量中、50重量%以上)は乳酸であることが好ましい。
【0013】
なお、サワークリームのような酸味を再現する観点から、乳酸の添加量は、サワークリーム様食品全量に対して、0.1~6.0重量%が好ましく、1.0~3.0重量%がより好ましい。
【0014】
(2-2)食用油脂
サワークリームには水分が多量に含まれているため流動性が高く、ハンドリングが良好である。したがって、食用油脂の性状に留意する必要はなかった。一方、本発明のサワークリーム様食品は、水分をほとんど含んでいないため、食用油脂の性状が流動性に大きく影響している。
【0015】
そこで、サワークリーム様食品は、20℃における固体脂肪含有量(Solid Fat Content(SFC))が5~35%の食用油脂を含むことが必要である。食用油脂の20℃におけるSFC(以下「SFC(20℃)」と表現する場合がある)が35%を超える場合には、ホワイトチョコレート(カカオバター含有)のような固形状になり、乳糖や乳酸等の粉体原料を濡らすための分散溶媒(ビヒクル)として機能しない。一方、SFC(20℃)が5%未満の場合には、粘度が低く、微粒化後に乳酸や乳糖等が分離してしまう。なお、SFC(20℃)は8~20%とすることがより好ましい。
【0016】
さらに、本発明においては、SFC(35℃)が5%以下の食用油脂を用いることが好ましい。SFC(35℃)が5%を超える場合には、口の中に食用油脂やその他材料(乳酸、乳糖、乳タンパク等)が残存しやすく、サワークリームの風味から乖離してしまう。
【0017】
食用油脂の添加量としては、サワークリーム様食品全量に対して、45~85重量%が好ましく、60~75重量%がより好ましい。食用油脂の添加量が多すぎると、相対的に乳糖や乳タンパクが減少するため後味が弱くなる。一方、食用油脂の添加量が少なすぎると、乳糖等が口に残存するためサワークリームの風味と乖離してしまう。
【0018】
食用油脂は、ショートニングなどの硬化油、乳脂、牛脂、豚脂、カカオバター、ピーナッツバター、パーム油等を単独又は組み合わせて使用することができる。なお、全粉乳には、乳糖や乳タンパク以外に乳脂肪 が含まれているため、食用油脂の供給源として利用できる。
【0019】
本発明に使用する食用油脂としては、風味の観点からは乳脂肪が好ましく、流動性や口溶けを調整する観点からはSFCの調整が容易な硬化油が好ましい。さらに、良好な風味、流動性及び口溶けをする実現する観点から、乳脂と硬化油の併用がより好ましい。
【0020】
(2-3)糖質
本発明のサワークリーム様食品は、糖質を含むことが好ましい。サワークリームには乳糖が含まれているため、糖質を加えることでよりサワークリームの甘味に近づけることができる。
【0021】
糖質としては、乳糖、グルコース、スクロース、オリゴ糖、デキストリン等を単独又は組み合わせることで調整することができる。なお、全粉乳や脱脂粉乳には、乳糖が含まれているため、乳糖の供給源として利用できる。
【0022】
本発明に使用する糖質としては乳糖が好ましい。サワークリームの甘味は主として乳糖に由来しており、乳糖を加えることで、よりサワークリームらしい甘味を再現できる。なお、サワークリームらしい甘味を再現する観点から、糖質の主成分(糖質全量中、50重量%以上)は乳糖であることが好ましい。
【0023】
糖質の添加量は、サワークリーム様食品全量に対して、10~40重量%が好ましく、20~30重量%がより好ましい。この範囲であれば、サワークリームに近い甘味を再現することができる。
【0024】
(2-4)乳タンパク
本発明のサワークリーム様食品は、乳タンパクを含有することが好ましい。サワークリームには生クリーム由来の乳タンパクが含まれており、乳製品らしい風味を実現するのに寄与している。このため、乳タンパクを加えることで、よりサワークリームに近い風味を再現することができる。
【0025】
本発明における乳タンパクとは、乳に含まれるカゼイン、ホエイタンパク質等を指し、これらのタンパクを含有している全粉乳や脱脂粉乳を供給源として利用できる。
【0026】
乳タンパクの添加量が多すぎると、乳タンパクが口の中に残留して後味が悪くなり、逆に乳タンパクの添加量が少なすぎると、乳タンパクが薄く、後味が無くなってしまう。したがって、本発明における乳タンパクの添加量は、サワークリーム様食品全量に対して、1.0~5.0重量%が好ましく、2.0~4.0重量%がより好ましい。
【0027】
(2-5)その他材料
本発明では、乳タンパク、乳酸、食用油脂、糖質以外の材料を適宜添加してもよい。具体的には、食塩、にがり等の塩味成分、グルタミン酸やイノシン酸等の旨味成分、及び香辛料などを風味や保存性が低下しない範囲で適宜加えることができる。中でも、乳を乳酸菌で発酵した際に生成される香気成分を濃縮した香料(乳酸フレーバー)は、よりサワークリームに近い風味を再現する観点から、好適に使用できる。
【0028】
(3)製造方法
本発明におけるサワークリーム様食品は、粉体原料と、食用油脂とを混合してペースト状のサワークリームペーストを調整し(混合工程)、次いで、ロールミルを用いてサワークリームペーストを微粒化(微粒化工程)することにより製造できる。
【0029】
(混合工程)
混合工程とは、粉体原料を食用油脂で濡らす工程である。粉体原料を食用油脂で充分に濡らすことで、サワークリームペーストがロールを通過しやすくなり、微粒化が進みやすくなる。一方、混合工程を設けない場合には、粉体原料が食物油脂で充分に濡れていないためロールを通過しにくく、微粒化が進みにくい。仮にロールを通過できたとしても、ペーストとロール間の粘着力が充分でないため、ロールの遠心力で飛散してしまう。
【0030】
(微粒化工程)
微粒化工程とは、サワークリームペーストに含まれる粉体原料を、ロールミルを用いて微粒化する工程である。上述のペーストをロールミルに通すことで、乳糖などの粒状物が微細化し、且つ油脂中と混練されるため口当たりの良いサワークリーム様食品が得ることができる。
【0031】
ロールミルとは、回転数及び回転方向が異なる二本以上のロールからなる分散機であり、サワークリームペーストが狭いロール間に押し込まれることによる圧縮と、ロール速度差によるせん断により、効率よく混練と微粒化を進めることができる。
【0032】
本発明におけるロールミルとしては、三本以上のロールからなるロールミルが好ましい。三本以上のロールからなるロールミルを用いることで、前半のニップ部(三本ロールミルの場合には一本目と二本目の間のニップ部)では、主に粗大粒子の粉砕と混練が進み、後半のニップ部(三本ロールミルの場合には二本目と三本目の間のニップ部)では微粒化が進むため、効率の良い混練及び微粒化を実現できる。
【0033】
一方、二本ロールミルを用いた場合には一つのニップ部で混練及び微粒化を行う必要があるが、微粒化を重視してロール締圧を強くすると、粗大粒子の粉砕や混練が進みにくくなり、混練を重視してロール締圧を弱くすると微粒化が進みにくくなる。したがって、二本ロールミルよりも三本以上のロールミルを用いる方が効率的である。
【0034】
次に、ロールミルとして最も一般的な三本ロールミルについて詳細に説明する。三本ロールミルとは、仕込みロール(一本目)、中間ロール(二本目)、仕上げロール(三本目)とからなるロールミルである。ロールの回転速度としては、仕込みロールの回転速度を1としたときに、中間ロールの回転速度2~4、仕上げロールの回転速度5~10とするのが一般的である。
【0035】
ロール締圧は、求める粒子径や、ロールの素材、機種等によって異なるが、一般的には、ロール締圧が高いと粒子径は細かくなるが、粗大な粒子がニップ部を通過しにくいため微粒化に時間が掛り、ロール締圧が低いと微粒化の時間は短縮できるが、粒子径が粗くなりやすい。
【0036】
微粒化時の温度は15~30℃が好ましい。温度が15℃未満の場合には、結露により水分を抱き込みやすく、水分活性が上昇しやすい。このため、結露が起こらないように作業環境を整える必要があり煩雑である。一方、工程温度が30℃を超える場合には、ペーストに含まれる食用油脂が溶解して粘度が低下するため、ロールミルで混練しにくくなる。
【0037】
(4)粒子径(メジアン径)
本発明では、サワークリーム様食品に含まれる粒状物の粒子径を40μm以下にすることが好ましい。なお、本発明で単に粒子径という場合には、メジアン径を指すものとする。粒状物の粒子径を40μm以下とすることで、滑らかな食感を実現することができる。さらに、粒状物の粒子径が30μm以下の場合には、舌が粒状物を認識しなくなるため、より滑らかで好ましい食感となる。なお、本発明の粒子径はレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置により測定したものを基準とする。
【実施例】
【0038】
(食用油脂)
市販されている食用油脂を適宜配合し、SFCの異なる油脂1~3を得た。その他、乳脂(油脂4)、豚脂(油脂5)、カカオバター(油脂6)、キャノラー油(油脂7)を用意した。20℃、30℃、35℃における油脂1~7のSFCは表1の通りである(小数点以下四捨五入)。
【0039】
【0040】
(脱脂粉乳)
本実施例で使用した粉乳の組成は表2の通りである(小数点以下四捨五入)。
【0041】
【0042】
粉乳(40部)、粉末乳酸(2.5部)及び油脂1(15部)を混合してペースト状のサワークリームペーストを製造した。このペーストを三本ロールミル用いて微粒化して微粒化物を得た。微粒化の条件は以下の通りである。
使用機器:油圧式三本ロール「HH-121×280」(井上製作所社製)
チラー温度:28℃
ロール締圧(前後同圧):1.5MPa
回転速度:仕込みロール(13rpm)、中間ロール(40rpm)、仕上げロール(120rpm)
【0043】
この微粒化物に残った油脂1(42.5部)を加えて均一に撹拌しサワークリーム様食品(実施例1)を得た。
【0044】
表3の通り配合を変更し、サワークリーム様食品(実施例2~9及び比較例1、2、4、5)を製造した。比較例3については、軟らかすぎて三本ロールミルで加工できなかったためその後の評価を実施しなかった。なお、表3中、カッコ書き内の数値は、微粒化後に添加した油脂量を示している。
【0045】
【0046】
サワークリーム様食品(実施例2~9及び比較例1、2、4、5)の粒子径は、全て40μm以下に調整した。粒子径が40μmを下回ると舌で認識することができなくなるため、後述の評価において、粒子径の違いによる影響はないと考えられる。粒子径の測定条件は以下の通りである。
装置:LA-950(HORIBA社製レーザー回折・散乱式粒子分布測定装置)
測定モード:湿式
分散媒:イソプロパノール
測定条件:循環5、撹拌10、超音波1分
その他事項:上記条件で10回測定を行い、その平均値を小数点以下四捨五入した値を採用した
【0047】
表1、2、3に基づいて、サワークリーム様食品100部当りの乳タンパク、乳酸、油脂及び糖質の比率、並びに油脂のSFCを計算した。計算結果は表4に記載の通りである。
【0048】
【0049】
サワークリーム様食品(実施例1~9及び比較例1、2、4、5)の酸味、堅さ、後味を以下の基準で評価した。評価結果は表5の通りである。
【0050】
(酸味)
サワークリーム様食品の喫食直後の酸味を、パネラー10名が以下の通り評価した。
○:実施例2と比較して、同程度の酸味と評価したパネラーが9名以上
×:酸味を感じないと評価したパネラーが9名以上
△:上記“○”、“×”以外の評価となったサワークリーム様食品
※酸味を感じないわけでは無ないが、実施例2と比較して同程度の酸味ではないと判断されたもの
【0051】
(堅さ)
本発明における“堅さ”とは、喫食直後に感じる食感を指し、チョコレートのように喫食直後の流動性が全く感じられないサンプルを“堅い”と表現し、サワークリームのように喫食直後から流動性を感じられるサンプルを”軟らかい”と表現する。具体的には、パネラー10名が、実施例2をポジティブ(軟らかい)基準、比較例1をネガティブ(堅い)基準として以下の通り評価した。
○:実施例2と比較して、同程度又は軟らいと評価したパネラーが9名以上
×:比較例1と比較して、同程度又は堅い評価したパネラーが9名以上
△:上記“○”、“×”以外の評価となったもの
【0052】
(後味)
本発明における“後味”とは、喫食後に残留している乳酸や糖質に由来する酸味や甘味を指す。具体的には、実施例2を“後味良好なポジティブ標準”、比較例1を“後味が強いネガティブ基準1”、比較例4を“後味が弱いネガティブ基準2”として、以下の通り評価した。
1;比較例4と比較して、同程度又はそれ以上に後味が弱いと評価したパネラーが9名以上
2:“1”と“3”の中間評価
3:実施例2と比較して、同程度の後味と評価したパネラーが9名以上
4:“3”と“5”の中間評価
5:比較例1と比較して、同程度又はそれ以上に後味が強いと評価したパネラーが9名以上
【0053】
【0054】
(まとめ)
実施例2を基準に、SFC(20℃)を変更した場合について検討すると、SFC(20℃)が30%を超えた辺りから流動性の低下が顕著になり、SFC(20℃)が50%を超えると流動性が全く感じられなくなった(実施例2、3、4、比較例1,2)。一方、SFC(20℃)を下げた場合については、流動性の低下は起こらないが、SFC(20℃)を下げ過ぎると、油脂と乳タンパク等が分離し、サワークリーム様食品を製造することができなくなってしまった(実施例1、2、比較例3)
【0055】
次に、実施例2を基準に、SFC(35℃)を変更した場合について検討すると、SFC(35℃)が5%を超えると後味が強くなり、3%を下回ると後味が弱くなる傾向だった(実施例1~3、比較例1)。SFC(35℃)が高い場合は、油脂が口の中に残留しやすいため、油脂に分散されている乳酸等も同時に残留して後味が強まり、一方、SFC(35℃)が低い場合は、油脂が口の中に残留しにくく、油脂に分散されている乳酸等も残留しにくいため後味が弱まったものと考えられる。
【0056】
次に、糖質や乳タンパクの含有量を変更した場合について検討すると、糖質等の含有量が多い場合は、後味(主に甘味)が強くなり、糖質等の含有量が少ない場合は、後味が弱くなる傾向だった(実施例2、5、6、比較例4)。
【0057】
さらに、乳酸の含有量を変更した場合について検討すると、乳酸の含有量が概ね2.0~3.0%の範囲においては適切な酸味であったが、乳酸の含有量が少ないと酸味が弱くなり、多いと酸味が強くなる傾向だった。また、後味(主に酸味)についても同様の傾向だった(実施例2、実施例7~9、比較例5)。なお、表5の酸味評価において、実施例8と実施例9は同一評価であるが、2点比較を行うと、パネラー10名全員が実施例8の方が実施例9よりも酸味が強いと回答した。この点からも乳酸の含有量が酸味に与える影響は明らかである。