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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】ヒートシンク
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/427 20060101AFI20220607BHJP
【FI】
H01L23/46 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018204302
(22)【出願日】2018-10-30
(65)【公開番号】P2020072161
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】508312522
【氏名又は名称】株式会社 エヌ・テック
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富樫 健吾
(72)【発明者】
【氏名】小西 和弘
(72)【発明者】
【氏名】萩原 貴之
【審査官】多賀 和宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-024122(JP,A)
【文献】特開2015-053311(JP,A)
【文献】特開2012-141082(JP,A)
【文献】特開2016-189415(JP,A)
【文献】米国特許第5506032(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/427-23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体に対して熱的に接続する受熱面と、当該受熱面と表裏をなす背面とを有する受熱部材と、
前記受熱部材に対して熱的に接続する第1のヒートパイプと、
前記受熱部材及び前記第1のヒートパイプに対してそれぞれ熱的に接続する第2のヒートパイプとを備え、
前記第1のヒートパイプ及び前記第2のヒートパイプは、
前記受熱面から前記背面に向かう第1の方向に沿って前記第1のヒートパイプ及び前記第2のヒートパイプの順に積層され、
前記受熱部材は、
前記発熱体が配設される第1の領域と当該第1の領域以外の第2の領域とに区画され、
前記第2のヒートパイプは、
前記第1の領域に配設される近接ヒートパイプと、前記第2の領域に配設される離間ヒートパイプとを備え、
前記第1のヒートパイプは、
前記近接ヒートパイプと重なり合う面積よりも前記離間ヒートパイプと重なり合う面積の方が大きい
ことを特徴とするヒートシンク。
【請求項2】
前記近接ヒートパイプ及び前記離間ヒートパイプは、
一端側の部位が前記受熱部材とそれぞれ重なり合い、他端側の部位が前記受熱部材から離間する方向にそれぞれ延在し、
前記近接ヒートパイプ及び前記離間ヒートパイプの他端側の部位には、
当該近接ヒートパイプ及び当該離間ヒートパイプの延在方向に並列する複数のフィンが取り付けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項3】
前記近接ヒートパイプ及び前記離間ヒートパイプは、
一端側の部位間の離間距離よりも他端側の部位間の離間距離の方が大きい
ことを特徴とする請求項2に記載のヒートシンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子等の発熱体を冷却するヒートシンクとして、密閉のコンテナに封入された作動流体が相変化する際の潜熱を利用して当該発熱体を冷却するヒートシンク、すなわち、熱輸送機能を有するヒートパイプを使用したヒートシンクが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載のヒートシンクは、3つのアルミ板が積層された積層体であり、発熱体に対して熱的に接続する受熱面を有する受熱部材と、隣接するアルミ板間に配設された複数のヒートパイプとを備える。
具体的に、複数のヒートパイプは、3つのアルミ板の積層方向に沿って積層された2層で構成されている。以下では、受熱面側から順に、1層目の複数のヒートパイプを第1のヒートパイプと記載し、2層目の複数のヒートパイプを第2のヒートパイプと記載する。すなわち、特許文献1に記載のヒートシンクでは、互いに積層された第1,第2のヒートパイプの熱輸送機能を利用することにより発熱体を冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭57-80748号公報(第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、発熱体のサイズが小さくなった場合には、ヒートパイプの設計上、第2のヒートパイプを構成する全てのヒートパイプと発熱体との離間距離を同一にすることは難しい。すなわち、第2のヒートパイプでは、発熱体との離間距離が比較的に小さいヒートパイプ(以下、近接ヒートパイプと記載)と、発熱体との離間距離が比較的に大きいヒートパイプ(以下、離間ヒートパイプと記載)とが存在することとなる。
この場合、近接ヒートパイプは、発熱体との離間距離が比較的に小さいため、受熱部材を介して発熱体からの熱を十分に取り込み、熱輸送機能を十分に発揮することができると考えられる。一方、離間ヒートパイプは、発熱体との離間距離が比較的に大きいため、受熱部材を介して発熱体からの熱を十分に取り込むことができず、熱輸送機能を十分に発揮することができないと考えられる。すなわち、発熱体のサイズが小さい場合には、ヒートパイプの熱輸送機能を十分に発揮させることができず、ヒートシンクの冷却性能を向上させることが難しい、という問題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、発熱体のサイズが小さい場合であっても、ヒートパイプの熱輸送機能を十分に発揮させ、冷却性能を向上させることができるヒートシンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るヒートシンクは、発熱体に対して熱的に接続する受熱面と、当該受熱面と表裏をなす背面とを有する受熱部材と、前記受熱部材に対して熱的に接続する第1のヒートパイプと、前記受熱部材及び前記第1のヒートパイプに対してそれぞれ熱的に接続する第2のヒートパイプとを備え、前記第1のヒートパイプ及び前記第2のヒートパイプは、前記受熱面から前記背面に向かう第1の方向に沿って前記第1のヒートパイプ及び前記第2のヒートパイプの順に積層され、前記第2のヒートパイプは、前記第1の方向に沿って見て、前記受熱部材全体の領域を前記発熱体が配設される第1の領域と当該第1の領域以外の第2の領域とに区画した場合に、前記第1の領域に配設される近接ヒートパイプと、前記第2の領域に配設される離間ヒートパイプとを備え、前記第1のヒートパイプは、前記第1の方向に沿って見た場合に、前記近接ヒートパイプと重なり合う面積よりも前記離間ヒートパイプと重なり合う面積の方が大きいことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係るヒートシンクでは、上記発明において、前記近接ヒートパイプ及び前記離間ヒートパイプは、前記第1の方向に沿って見た場合に、一端側の部位が前記受熱部材とそれぞれ重なり合い、他端側の部位が前記受熱部材から離間する方向にそれぞれ延在し、前記近接ヒートパイプ及び前記離間ヒートパイプの他端側の部位には、当該近接ヒートパイプ及び当該離間ヒートパイプの延在方向に並列する複数のフィンが取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るヒートシンクでは、上記発明において、前記近接ヒートパイプ及び前記離間ヒートパイプは、一端側の部位間の離間距離よりも他端側の部位間の離間距離の方が大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るヒートシンクによれば、発熱体のサイズが小さい場合であっても、ヒートパイプの熱輸送機能を十分に発揮させ、冷却性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態1に係るヒートシンクの構成を示す斜視図である。
図2図2は、ヒートシンクの分解斜視図である。
図3図3は、ヒートシンクの平面図である。
図4図4は、実施の形態2に係るヒートシンクの構成を示す斜視図である。
図5図5は、ヒートシンクの分解斜視図である。
図6図6は、ヒートシンクの平面図である。
図7図7は、実施の形態1及び実施の形態2の変形例1を示す図である。
図8図8は、実施の形態1及び実施の形態2の変形例1を示す図である。
図9図9は、実施の形態1及び実施の形態2の変形例2を示す図である。
図10図10は、実施の形態1及び実施の形態2の変形例3を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態)について説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実と異なる場合がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0012】
(実施の形態1)
〔ヒートシンクの構成〕
図1は、本実施の形態1に係るヒートシンク1の構成を示す斜視図である。図2は、ヒートシンク1の分解斜視図である。図3は、ヒートシンク1の平面図である。
なお、図1において、Z軸は、鉛直方向に平行な軸(+Z軸側が上側、-Z軸側が下側)を示している。また、X軸及びY軸は、Z軸に直交する2つの軸である。図2以降の図面も同様である。
ヒートシンク1は、熱輸送機能を有するヒートパイプを使用したヒートシンクであり、発熱体である半導体素子等の電気部品100(図3)を冷却する。本実施の形態1では、電気部品100は小型の部品であって、密閉筐体200(図1)内部に収納されている。そして、ヒートシンク1は、ヒートパイプを利用して電気部品100からの熱を密閉筐体200外部に熱輸送し、当該密閉筐体200外部において放熱する。
このヒートシンク1は、図1ないし図3に示すように、受熱部材2と、複数(本実施の形態1では6本)の第1のヒートパイプ3(図2図3)と、複数(本実施の形態1では5本)の第2のヒートパイプ4と、複数のフィン5とを備える。
【0013】
受熱部材2は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等の金属材料で構成された板体をZ軸方向に沿って複数層(本実施の形態では3層)、積層した積層体で構成されている。そして、受熱部材2は、密閉筐体200内部において、各板面がXY平面に平行となる姿勢で配置される。以下では、図2に示すように、-Z軸側から順に、1層目を受熱プレート21と記載し、2層目を第1の均熱用プレート22と記載し、3層目を第2の均熱用プレート23と記載する。
受熱プレート21は、電気部品100よりも大きい平面形状(Z軸に沿って見た場合での平面形状)を有する略正方形状の板体で構成されている。ここで、受熱プレート21において、-Z軸側の板面は、本発明に係る受熱面2a(図1図2)に相当する。そして、受熱面2aの中心位置P1には、電気部品100が熱的に接続される(図3)。
【0014】
第1の均熱用プレート22は、受熱プレート21と略同一の外形形状を有する。そして、第1の均熱用プレート22は、受熱プレート21における+Z軸側の板面に対して貼り合わせられる。すなわち、第1の均熱用プレート22は、受熱プレート21に対して熱的に接続している。
この第1の均熱用プレート22には、図2に示すように、表裏を貫通し、6本の第1のヒートパイプ3の平面形状(Z軸に沿って見た場合での平面形状)と略同一の平面形状を有する第1の配置用開口221が形成されている。
【0015】
第2の均熱用プレート23は、受熱プレート21及び第1の均熱用プレート22と略同一の外形形状を有する。そして、第2の均熱用プレート23は、第1の均熱用プレート22における+Z軸側の板面に対して貼り合わせられる。すなわち、第2の均熱用プレート23は、第1の均熱用プレート22に対して熱的に接続している。ここで、第2の均熱用プレート23において、+Z軸側の板面は、本発明に係る背面2b(図1図2)に相当する。すなわち、受熱面2aから背面2bに向かう方向である+Z軸方向は、本発明に係る第1の方向に相当する。
この第2の均熱用プレート23には、図1または図2に示すように、+X軸側の端面から-X軸側に向けてそれぞれ延在し、5本の第2のヒートパイプ4の平面形状(Z軸に沿って見た場合での平面形状)とそれぞれ略同一の平面形状を有する5つの第2の配置用開口231が形成されている。
【0016】
6本の第1のヒートパイプ3は、同様の構成、同様の熱輸送機能、及び同様の断面形状(長手方向に直交する断面形状)を有している。
第1のヒートパイプ3は、具体的な図示は省略したが、長尺状のコンテナ内部に作動流体が封入された構成を有する。なお、当該コンテナの材質としては、熱伝導率に優れた点から銅や銅合金、軽量性の点からアルミニウムやアルミニウム合金等を例示することができる。本実施の形態1では、第1のヒートパイプ3(当該コンテナ)は、第1の均熱用プレート22の厚み寸法と略同一の厚み寸法を有するように扁平状の断面形状(長手方向に直交する断面形状)を有する。また、当該コンテナの内面には、一端31(図2図3)から他端32(図2図3)まで、ウィック構造体が設けられている。すなわち、当該ウィック構造体は、当該コンテナの長手方向に延在している。また、当該ウィック構造体としては、毛細管力を生じる構造体であればよく、当該コンテナの長手方向に延在した複数の細溝(グルーブ)、金属粉の焼結体、金属繊維の焼結体、金属メッシュ等を例示することができる。さらに、当該作動流体としては、コンテナの材料との適合性に応じて適宜選択可能であり、水、代替フロン、パーフルオロカーボン、シクロペンタン等を例示することができる。
【0017】
そして、第1のヒートパイプ3では、一端31側の部位が加熱されると、当該部位の作動流体は、蒸発し、コンテナの内部で一端31側から他端32側に向かい、熱を放出することにより液化する。また、液化した作動流体は、ウィック構造体を辿って、一端31側に戻り、再び蒸発する。すなわち、第1のヒートパイプ3は、上述した蒸発、液化、及び蒸発を繰り返すことにより、一端31側の部位で受熱した熱を他端32側に向けて輸送する熱輸送機能を有する。
【0018】
以上説明した6本の第1のヒートパイプ3は、受熱プレート21及び第2の均熱用プレート23に挟まれた状態で第1の配置用開口221内にそれぞれ配置される。すなわち、6本の第1のヒートパイプ3は、密閉筐体200内部において、同一のXY平面内に配置される。なお、6本の第1のヒートパイプ3と受熱プレート21における+Z軸側の板面、第1の配置用開口221の縁部分、及び第2の均熱用プレート23における-Z軸側の板面との間の隙間には、半田やグリース等の熱伝導性の部材がそれぞれ介在している。すなわち、6本の第1のヒートパイプ3は、受熱プレート21及び第1,第2の均熱用プレート22,23に対してそれぞれ熱的に接続している。
【0019】
また、6本の第1のヒートパイプ3の各一端31側の部位は、図3に示すように、Z軸に沿って見た場合に、電気部品100とそれぞれ重なり合うとともに、X軸(Y軸)に対して略45°で交差する方向にそれぞれ延在する。そして、6本の第1のヒートパイプ3は、Z軸に沿って見た場合に、受熱部材2全体に亘るように、複数回(例えば、1回または2回)、屈曲しつつ各他端32までそれぞれ延在する。
すなわち、電気部品100から受熱プレート21における中心位置P1付近に伝達された熱は、6本の第1のヒートパイプ3の熱輸送機能により、各一端31側の部位から各他端32に向けて輸送され、受熱部材2全体に拡散されることとなる。
【0020】
5本の第2のヒートパイプ4は、第1のヒートパイプ3と同様の構成、同様の熱輸送機能、及び同様の断面形状(長手方向に直交する断面形状)を有している。
そして、5本の第2のヒートパイプ4は、5つの第2の配置用開口231内にそれぞれ配置される。すなわち、5本の第2のヒートパイプ4は、同一のXY平面内に配置される。また、第1のヒートパイプ3及び第2のヒートパイプ4は、+Z軸方向に沿って第1のヒートパイプ3及び第2のヒートパイプ4の順に積層されている。なお、5本の第2のヒートパイプ4と第1の均熱用プレート22における+Z軸側の板面、6本の第1のヒートパイプ3における+Z軸側の面、及び5つの第2の配置用開口231の縁部分との間の隙間には、半田やグリース等の熱伝導性の部材がそれぞれ介在している。すなわち、5本の第2のヒートパイプ4は、受熱プレート21、第1の均熱用プレート22、第2の均熱用プレート23、及び6本の第1のヒートパイプ3に対して熱的に接続している。
【0021】
また、5本の第2のヒートパイプ4は、図3に示すように、各一端41から各他端42までX軸に沿って略直線状にそれぞれ延在し、Y軸に沿って並列されている。すなわち、本実施の形態1では、互いに隣接する第2のヒートパイプ4同士の各一端41側の部位間の離間距離と、各他端42側の部位間の離間距離とは略同一に設定されている。より具体的に、5本の第2のヒートパイプ4のうち、Y軸方向の中央に位置する1本の第2のヒートパイプ4は、Z軸に沿って見た場合に、中心位置P1に重なる位置に配設されている。また、他の4本の第2のヒートパイプ4は、Y軸方向の中央に位置する1本の第2のヒートパイプ4を基準として+Y軸側及び-Y軸側に略均等な間隔を空けて配設されている。また、5本の第2のヒートパイプ4は、Z軸に沿って見た場合に、一端41(図3)側の部位が受熱部材2とそれぞれ重なり合い、他端42(図3)側の部位が受熱部材2から離間する+X軸方向に向けてそれぞれ延在している。そして、5本の第2のヒートパイプ4の他端42側の部位は、図1に示すように、密閉筐体200外部に突出する。
すなわち、電気部品100から受熱プレート21に伝達され、6本の第1のヒートパイプ3の熱輸送機能により受熱部材2全体に拡散された熱は、5本の第2のヒートパイプ4の熱輸送機能により、各他端42に向けて輸送され、密閉筐体200外部に排熱されることとなる。
【0022】
複数のフィン5は、アルミニウム等の金属材料でそれぞれ構成され、薄い平板形状をそれぞれ有する。そして、複数のフィン5は、密閉筐体200外部において、板面がYZ平面にそれぞれ平行となる姿勢でX軸方向に特定のピッチで並列し、5本の第2のヒートパイプ4の各他端42側の部位がそれぞれ貫通する。すなわち、複数のフィン5は、5本の第2のヒートパイプ4に対して熱的に接続している。そして、5本の第2のヒートパイプ4の熱輸送機能により密閉筐体200外部に排熱された熱は、複数のフィン5により放熱されることとなる。
【0023】
〔第1のヒートパイプ及び第2のヒートパイプの位置関係について〕
次に、図3を参照しつつ、第1のヒートパイプ3及び第2のヒートパイプ4の位置関係を説明する。
以下では、説明の便宜上、Z軸に沿って見て、受熱部材2全体の領域を電気部品100が配設される(中心位置P1を含む)第1の領域Ar1(図3)と当該第1の領域Ar1以外の2つの第2の領域Ar2(図3)とに区画する。そして、5本の第2のヒートパイプ4のうち、Z軸に沿って見た場合に、第1の領域Ar1に配設される3本の第2のヒートパイプ4は、本発明に係る近接ヒートパイプ43(図3)に相当する。一方、2つの第2の領域Ar2にそれぞれ配設される2本の第2のヒートパイプ4は、本発明に係る離間ヒートパイプ44(図3)に相当する。言い換えれば、Z軸に沿って見て電気部品100とそれぞれ重なり合う3本の近接ヒートパイプ43が配設される領域が第1の領域Ar1であり、その他の領域が第2の領域Ar2である。
【0024】
そして、6本の第1のヒートパイプ3は、Z軸に沿って見た場合に、近接ヒートパイプ43と重なり合う面積よりも離間ヒートパイプ44と重なり合う面積の方が大きくなるようにそれぞれ配設されている。なお、図3では、6本の第1のヒートパイプ3のうち、1本の第1のヒートパイプ3にのみ注目し、当該1本の第1のヒートパイプ3と近接ヒートパイプ43及び離間ヒートパイプ44とそれぞれ重なり合う領域に斜線を付している。
【0025】
以上説明した本実施の形態1によれば、以下の効果を奏する。
近接ヒートパイプ43は、第1の領域Ar1に配設されているため、電気部品100との離間距離が離間ヒートパイプ44に比べて小さい。すなわち、近接ヒートパイプ43は、受熱部材2を介して電気部品100からの熱を十分に取り込み、熱輸送機能を十分に発揮することができる。一方、離間ヒートパイプ44は、第2の領域Ar2に配設されているため、電気部品100との離間距離が近接ヒートパイプ43に比べて大きい。すなわち、離間ヒートパイプ44は、受熱部材2を介して電気部品100からの熱を十分に取り込むことが難しく、熱輸送機能を十分に発揮することが難しい。
【0026】
そこで、本実施の形態1に係るヒートシンク1では、電気部品100から受熱プレート21における中心位置P1付近に伝達された熱を受熱部材2全体に拡散する機能を有する第1のヒートパイプ3の位置を工夫している。
すなわち、第1のヒートパイプ3は、Z軸に沿って見た場合に、近接ヒートパイプ43と重なり合う面積よりも離間ヒートパイプ44と重なり合う面積の方が大きくなるように配設されている。このため、離間ヒートパイプ44は、第1のヒートパイプ3の熱輸送機能により、電気部品100からの熱を十分に取り込むことができる。すなわち、離間ヒートパイプ44の熱輸送機能を十分に発揮することができる。
したがって、電気部品100のサイズが小さい場合であっても、ヒートパイプの熱輸送機能を十分に発揮させ、ヒートシンク1の冷却性能を向上させることができる。
【0027】
また、本実施の形態1に係るヒートシンク1では、第2のヒートパイプ4は、他端42側の部位が密閉筐体200外部に突出している。また、第2のヒートパイプ4における他端42側の部位には、複数のフィン5が取り付けられている。すなわち、フィン5のサイズが密閉筐体200のサイズによって制限されることがなく、フィン5の設計の自由度が向上する。また、電気部品100の熱を密閉筐体200外部に排熱することができるため、密閉筐体200内部の温度が必要以上に高くなることがなく、電気部品100を効果的に冷却することができる。
【0028】
(実施の形態2)
次に、本実施の形態2について説明する。
以下の説明では、上述した実施の形態1と同様の構成に同一の符号を付し、その詳細な説明を省略または簡略化する。
図4は、本実施の形態2に係るヒートシンク1Aの構成を示す斜視図である。図5は、ヒートシンク1Aの分解斜視図である。図6は、ヒートシンク1Aの平面図である。
上述した実施の形態1に係るヒートシンク1では、電気部品100は、受熱面2aの中心位置P1に配設されていた。
これに対して本実施の形態2に係るヒートシンク1Aでは、電気部品100は、図6に示すように、受熱面2aにおいて、中心位置P1から離間した角隅位置P2に配設される。これに伴い、本実施の形態2に係るヒートシンク1Aでは、図5または図6に示すように、上述した実施の形態1で説明したヒートシンク1に対して、6本の第1のヒートパイプ3とは異なる平面形状(Z軸に沿って見た場合での平面形状)をそれぞれ有する複数(本実施の形態2では5本)の第1のヒートパイプ3Aを採用している。
【0029】
具体的に、5本の第1のヒートパイプ3Aの各一端31側の部位は、図6に示すように、Z軸に沿って見た場合に、電気部品100とそれぞれ重なり合うとともに、X軸(Y軸)に対して略45°で交差する方向にそれぞれ延在する。そして、5本の第1のヒートパイプ3Aは、Z軸に沿って見た場合に、受熱部材2全体に亘るように、1回または2回、屈曲しつつ各他端32までそれぞれ延在する。
すなわち、電気部品100から受熱プレート21における角隅位置P2付近に伝達された熱は、5本の第1のヒートパイプ3Aの熱輸送機能により、各一端31側の部位から各他端32に向けて輸送され、受熱部材2全体に拡散されることとなる。
【0030】
なお、電気部品100が配設される位置が変更されたことに伴い、受熱部材2における第1の領域Ar1及び第2の領域Ar2の位置が変更される(図6)。すなわち、本実施の形態2に係る第1の領域Ar1は、角隅位置P2を含む領域となる。また、第2の領域Ar2は、第1の領域Ar1以外の領域となる。そして、5本の第2のヒートパイプ4のうち、Z軸に沿って見た場合に、第1の領域Ar1に配設される2本の第2のヒートパイプ4は、本発明に係る近接ヒートパイプ43(図6)に相当する。一方、第2の領域Ar2に配設される3本の第2のヒートパイプ4は、本発明に係る離間ヒートパイプ44(図6)に相当する。言い換えれば、Z軸に沿って見て電気部品100とそれぞれ重なり合う2本の近接ヒートパイプ43が配設される領域が第1の領域Ar1であり、その他の領域が第2の領域Ar2である。
【0031】
そして、5本の第1のヒートパイプ3A(3A1~3A5)は、Z軸に沿って見た場合に、以下に示すように、5本の第2のヒートパイプ4とそれぞれ重なり合うように配設されている。
第1のヒートパイプ3A1は、5本の第2のヒートパイプ4のうち、図6中、最も下方に位置する第2のヒートパイプ4(離間ヒートパイプ44)と重なり合う面積が最も大きくなるように配設されている。なお、他の第1のヒートパイプ3A3も同様である。
第1のヒートパイプ3A2は、5本の第2のヒートパイプ4のうち、図6中、上下方向の中央に位置する第2のヒートパイプ4(離間ヒートパイプ44)と重なり合う面積が最も大きくなるように配設されている。
第1のヒートパイプ3A4は、5本の第2のヒートパイプ4のうち、図6中、下から2番目に位置する第2のヒートパイプ4(離間ヒートパイプ44)と重なり合う面積が最も大きくなるように配設されている。なお、他の第1のヒートパイプ3A5も同様である。
【0032】
なお、本実施の形態2に係る第1の配置用開口221は、上述した実施の形態1で説明した第1の配置用開口221に対して、5本の第1のヒートパイプ3Aの平面形状(Z軸に沿って見た場合での平面形状)と略同一の平面形状を有するように変更されている。また、第1の配置用開口221内において、5本の第1のヒートパイプ3Aが配置された際に形成される空間には、第1の均熱用プレート22と同一の厚み寸法を有する熱伝導性の部材からなる板体24(図5)が配置される。当該板体24は、隣接して配置される第1のヒートパイプ3A、受熱プレート21における+Z軸側の板面、第2の均熱用プレート23における-Z軸側の板面、及び隣接して配置される第2のヒートパイプ4に対してそれぞれ熱的に接続される。
【0033】
以上説明した本実施の形態2のように電気部品100の配設位置が変更された場合であっても、5本の第1のヒートパイプ3Aを採用することにより、上述した実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0034】
(その他の実施形態)
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態1及び実施の形態2によってのみ限定されるべきものではない。
図7及び図8は、本実施の形態1及び実施の形態2の変形例1を示す図である。具体的に、図7は、本変形例1に係るヒートシンク1BをY軸に沿って見た側面図である。図8は、ヒートシンク1BをZ軸に沿って見た平面図である。なお、図7及び図8では、説明の便宜上、第2のヒートパイプ4を3本のみ図示している。
上述した実施の形態1及び実施の形態2では、互いに隣接する第2のヒートパイプ4同士の各一端41側の部位間の離間距離と、各他端42側の部位間の離間距離とは略同一に設定されていたが、これに限らず、例えば図7に示すヒートシンク1Bの構成を採用しても構わない。
【0035】
具体的に、ヒートシンク1Bでは、3本の第2のヒートパイプ4のうち、Y軸方向の中央に位置する第2のヒートパイプ45は、X軸に沿って直線状に延在する。また、他の2本の第2のヒートパイプ46,47において、受熱部材2から+X軸側に突出した部位は、+Z軸側または-Z軸側に屈曲した後、X軸に沿って直線状に延在する。すなわち、ヒートシンク1Bでは、互いに隣接する第2のヒートパイプ4同士の各一端41側の部位間の離間距離よりも各他端42側の部位間の離間距離の方が大きい。
本変形例1のように構成した場合には、複数の第2のヒートパイプ4の熱輸送機能により密閉筐体200外部に排熱された熱がフィン5の一部に偏って伝達されることがないため、フィン5による放熱効率を向上させることができる。
【0036】
図9は、本実施の形態1及び実施の形態2の変形例2を示す図である。具体的に、図9は、本変形例2に係るヒートシンク1CをY軸に沿って見た側面図である。なお、図9では、説明の便宜上、第2のヒートパイプ4を3本のみ図示している。
本変形例2に係るヒートシンク1Cでは、上述した変形例1に係るヒートシンク1Bに対して、3本の第2のヒートパイプ4における受熱部材2から+X軸側に突出した部位全体を+Z軸側に押し上げ、全体として、+X軸に向かうにしたがって+Z軸に向けて傾斜した形状としている。
なお、本変形例2のように構成した場合であっても、上述した変形例1と同様の効果を奏する。
【0037】
図10は、本実施の形態1及び実施の形態2の変形例3を示す図である。具体的に、図10は、本変形例3に係るヒートシンク1DをY軸に沿って見た側面図である。なお、図10では、説明の便宜上、第2のヒートパイプ4を3本のみ図示している。
本変形例3に係るヒートシンク1Dでは、3本の第2のヒートパイプ4のうち、Y軸方向の中央に位置する第2のヒートパイプ45は、受熱部材2から+X軸側に突出した後、+Z軸側に屈曲して+X軸に向かうにしたがって+Z軸に向けて傾斜して延在する。また、他の2本の第2のヒートパイプ46,47は、受熱部材2から+X軸側に突出した後、第2のヒートパイプ45とは異なる傾斜角度で+X軸に向かうにしたがって+Z軸に向けて傾斜して延在する。この際、複数のフィン5は、3本の第2のヒートパイプ4毎に分割されている。
なお、本変形例3のように構成した場合であっても、上述した変形例1と同様の効果を奏する。
【0038】
上述した実施の形態1、実施の形態2、及び変形例1~3では、受熱部材2は、3層の積層体で構成されていたが、これに限らず、1体で構成してもよく、2層の積層体で構成してもよく、あるいは、4層以上の積層体で構成しても構わない。同様に、第1,第2のヒートパイプ3(3A),4の数は、上述した実施の形態1、実施の形態2、及び変形例1~3で説明した数に限らず、その他の数としても構わない。
上述した実施の形態1、実施の形態2、及び変形例1~3において、ヒートシンク1,1A~1Dが配設される姿勢は、当該実施の形態1、実施の形態2、及び変形例1~3で説明した姿勢に限らず、その他の姿勢としても構わない。
【符号の説明】
【0039】
1,1A~1D ヒートシンク
2 受熱部材
2a 受熱面
2b 背面
3,3A,3A1~3A5 第1のヒートパイプ
4,45~47 第2のヒートパイプ
5 フィン
21 受熱プレート
22 第1の均熱用プレート
23 第2の均熱用プレート
24 板体
31 一端
32 他端
41 一端
42 他端
43 近接ヒートパイプ
44 離間ヒートパイプ
100 電気部品
200 密閉筐体
221 第1の配置用開口
231 第2の配置用開口
Ar1 第1の領域
Ar2 第2の領域
P1 中心位置
P2 角隅位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10