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特許7084449光ファイバテープ心線、光ファイバケーブル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】光ファイバテープ心線、光ファイバケーブル
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20220607BHJP
【FI】
G02B6/44 371
G02B6/44 366
G02B6/44 381
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020119436
(22)【出願日】2020-07-10
(65)【公開番号】P2022016133
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2021-03-09
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】安冨 徹也
【審査官】井部 紗代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-062431(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094560(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111175887(CN,A)
【文献】特表2019-523460(JP,A)
【文献】特開2017-223730(JP,A)
【文献】特開2018-205689(JP,A)
【文献】国際公開第2019/137628(WO,A1)
【文献】特開平11-258431(JP,A)
【文献】特開平10-160987(JP,A)
【文献】国際公開第03/098307(WO,A1)
【文献】特開2016-146003(JP,A)
【文献】特開2011-185992(JP,A)
【文献】特開平01-251005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02 - 6/036
G02B 6/10
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバが並列して連結された光ファイバテープ心線であって、
隣接する光ファイバが、長手方向に間欠的に連結部で連結されており、
前記連結部で前記光ファイバテープ心線の上下両面から樹脂で連結されており、
前記連結部は、隣接する光ファイバの間において、樹脂量が、前記光ファイバの長手方向に均一でなく、
前記連結部は、隣接する光ファイバの間において複数の小接着部によって構成され、前記複数の小接着部はつながって連続しており、少なくとも一部は前記小接着部の樹脂の幅広部と、前記小接着部同士がつながっている樹脂の幅狭部とが交互に繰り返され、
前記連結部において、樹脂量が、前記光ファイバの上下方向に均一でなく、
前記連結部の樹脂のヤング率が130MPa以下であり、
前記光ファイバは、ITU-T G.654.E、またはG652にカテゴライズされる光ファイバであることを特徴とする光ファイバテープ心線。
【請求項2】
前記連結部の樹脂のヤング率が80MPa以下であることを特徴とする請求項1記載の光ファイバテープ心線。
【請求項3】
前記光ファイバテープ心線の幅方向に隣り合う前記連結部同士は、前記光ファイバテープ心線の長手方向に対してずれて配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光ファイバテープ心線。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の光ファイバテープ心線が用いられ、
複数本の前記光ファイバテープ心線が撚り合わせられたケーブルコアと、
前記ケーブルコアを覆うように設けられる外被と、
を具備することを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項5】
波長1550nmにおける最大伝送損失が、0.27dB/km未満であることを特徴とする請求項4記載の光ファイバケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送損失の小さな光ファイバテープ心線等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大容量のデータを高速で伝送するための光ファイバとして、ケーブルへの収納や作業の簡易化のため、複数本の光ファイバが並列に配置されて接着された光ファイバテープ心線が用いられている。光ファイバテープ心線は、並列した光ファイバを全長にわたって樹脂で固着されたものが用いられている他、光ファイバ同士が長手方向に間欠的に接着されたものがある(例えば特許文献1)。
【0003】
また、このような光ファイバテープ心線を製造する方法として、複数の塗布孔を有する塗布ロールから樹脂を押出して光ファイバ間に接着樹脂を塗布する方法がある(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-8923号公報
【文献】特開2016-80849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の方法では、塗布ロールが用いられる。塗布ロールは、内部が中空のロールであり、塗布ロールの外周面には、複数の塗布孔が形成される。塗布孔は、例えば、連続した一つの長穴ではなく、複数の小孔が周方向に一列に整列して構成される。塗布孔は、塗布ロールの内部の空間と外部とを連通する。
【0006】
塗布ロールの内部には、接着樹脂が連続的に供給される。塗布ロールの内部には、ダイスが設けられる。塗布ロールが回転することで、塗布ロールの内面に保持された接着樹脂が、ダイスと塗布ロールの内面との隙間に押し込まれ、ダイスの外周側に塗布孔が位置すると、ダイスによって、接着樹脂が塗布孔から外部に押し出される。
【0007】
塗布孔から押し出された接着樹脂は、塗布ロールと接触して送られる光ファイバ同士の間に塗布される。この際、光ファイバの上部から塗布された接着樹脂は、重力や表面張力等によって、光ファイバの下部側に流れる。したがって、光ファイバの表裏に接着樹脂が塗布される。このように、光ファイバを並列させて、その片側から接着樹脂を塗布しても、光ファイバの隙間を接着樹脂が流れて反対側にも接着樹脂が回るため、光ファイバ同士を確実に連結することができる。
【0008】
塗布ロールを通過した光ファイバに、例えば紫外線を照射することにより、塗布ロールで塗布された接着樹脂が硬化する。以上により光ファイバテープ心線が製造される。
【0009】
しかし、上記の方法では、光ファイバの上下面で樹脂の塗布量に差が生じる。接着樹脂は、紫外線で硬化する際に、体積がわずかに収縮するため、光ファイバテープ心線の上下面で接着樹脂の塗布量に差があると、樹脂の収縮量の違いが発生する。このように、接着樹脂が多い面側の収縮量が大きくなると、光ファイバテープ心線に曲げ力が生じる。
【0010】
また、塗布孔を有する塗布ロールから接着樹脂を押出して光ファイバ間に接着樹脂を塗布すると、連結部の長手方向に対して、接着樹脂が一定の塗布量とはならず、塗布量が長手方向に不均一となりやすい。このように接着樹脂の塗布量が不均一となると、連結部の長手方向に対しても収縮量が不均一となるため、曲げ力の要因となりやすい。
【0011】
一方、従来の光ファイバケーブルにはITU-T G.657にカテゴライズされる光ファイバが用いられてきた。この光ファイバは、曲げられた際の損失増加が少ないため、上述したような曲げ力の影響がほぼなく、伝送損失の悪化は小さかった。
【0012】
これに対し、比較的コストが安価なITU-T G.652にカテゴライズされる光ファイバ、あるいは、長距離伝送を可能とするコア径を大きくしたITU-T G.654.Eにカテゴライズされる光ファイバは、曲げに対する伝送損失の増加がITU-T G.657にカテゴライズされる光ファイバと比較して大きい。このため、これらの光ファイバを用いると、上述した曲げ力によって、伝送損失が高くなるという問題がある。
【0013】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、曲げに対する伝送損失の増加が比較的大きな光ファイバを用いても、損失増加を抑制することが可能な光ファイバテープ心線等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した目的を達するために第1の発明は、複数の光ファイバが並列して連結された光ファイバテープ心線であって、隣接する光ファイバが、長手方向に間欠的に連結部で連結されており、前記連結部で前記光ファイバテープ心線の上下両面から樹脂で連結されており、前記連結部は、隣接する光ファイバの間において、樹脂量が、前記光ファイバの長手方向に均一でなく、前記連結部は、隣接する光ファイバの間において複数の小接着部によって構成され、前記複数の小接着部はつながって連続しており、少なくとも一部は前記小接着部の樹脂の幅広部と、前記小接着部同士がつながっている樹脂の幅狭部とが交互に繰り返され、前記連結部において、樹脂量が、前記光ファイバの上下方向に均一でなく、前記連結部の樹脂のヤング率が130MPa以下であり、前記光ファイバは、ITU-T G.654.E、またはG652にカテゴライズされる光ファイバであることを特徴とする光ファイバテープ心線である。
【0015】
前記連結部の樹脂のヤング率が80MPa以下であることがさらに望ましい。
前記光ファイバテープ心線の幅方向に隣り合う前記連結部同士は、前記光ファイバテープ心線の長手方向に対してずれて配置されていることが望ましい。
【0016】
第1の発明によれば、あえて連結部の樹脂のヤング率を小さくすることで、部位による樹脂の収縮量の不均一を起因とする、光ファイバへの曲げ応力の影響を小さくすることができる。このため、より安価な光ファイバも適用が可能となる。
【0017】
第2の発明は、第1の発明にかかる光ファイバテープ心線が用いられ、複数本の前記光ファイバテープ心線が撚り合わせられたケーブルコアと、前記ケーブルコアを覆うように設けられる外被と、を具備することを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0018】
第2の発明によれば、部位による連結部の樹脂の収縮量の不均一に起因する損失増加を抑制することができる。このため、比較的安価な光ファイバや、より長距離伝送を可能とする光ファイバも用いることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、曲げに対する伝送損失の増加が比較的大きな光ファイバを用いても、損失増加を抑制することが可能な光ファイバテープ心線等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】光ファイバケーブル1の断面図。
図2】光ファイバテープ心線3を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図。
図3】(a)は、連結部19の拡大図、(b)は、図2(b)のA-A線断面図。
図4】(a)は光ファイバテープ心線3aを示す平面図であり、(b)は、連結部19の拡大図。
図5】光ファイバテープ心線3bを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、光ファイバケーブル1の断面図である。光ファイバケーブル1は、スロットを用いないスロットレス型ケーブルであり、テンションメンバ9、外被13、ケーブルコア15等により構成される。
【0022】
ケーブルコア15は、複数の光ファイバユニット5が撚り合わせられて形成される。また、光ファイバユニット5は、複数本の光ファイバテープ心線3が撚り合わせられて形成される。なお、光ファイバテープ心線3は、長手方向に対して間欠的に接着された、間欠接着型の光ファイバテープ心線である。光ファイバテープ心線3の詳細については後述する。
【0023】
複数の光ファイバテープ心線3の外周には、押さえ巻き7が設けられる。押さえ巻き7は、テープ状の部材や不織布等であり、例えば縦添えによって複数の光ファイバテープ心線3の外周を一括して覆うように配置される。すなわち、押さえ巻き7の長手方向が光ファイバケーブル1の軸方向と略一致し、押さえ巻き7の幅方向が光ファイバケーブル1の周方向となるように複数の光ファイバテープ心線3の外周に縦添えされる。なお、複数本の光ファイバテープ心線3の周囲に巻き付けられた押さえ巻き7を含めてケーブルコア15とする。
【0024】
光ファイバケーブル1の長手方向に垂直な断面図において、ケーブルコア15の両側方にはテンションメンバ9が設けられる。すなわち、一対のテンションメンバ9がケーブルコア15を挟んで対向する位置に設けられるまた、テンションメンバ9の対向方向と略直交する方向に、ケーブルコア15を挟んで対向するように引き裂き紐11が設けられる。
【0025】
ケーブルコア15の外周には、外被13が設けられる。テンションメンバ9および引き裂き紐11は、外被13に埋設される。すなわち、ケーブルコア15及びテンションメンバ9等を覆うように外被13が設けられる。外被13の外形は略円形である。外被13は、例えばポリオレフィン系の樹脂である。
【0026】
図2(a)は、間欠接着型の光ファイバテープ心線3を示す斜視図であり、図2(b)は平面図である。光ファイバテープ心線3は、複数の単心の光ファイバ4が並列した状態で連結されて構成される。光ファイバテープ心線3は、例えば、特開2016-80849号に記載されたように、塗布ロールに塗布孔を形成し、接着樹脂を塗布ロールの内部から押し出すことで、並列された光ファイバ4の上面から光ファイバ4同士の間に、所定の間隔で接着される。なお、光ファイバテープ心線3を構成する光ファイバの本数は、図示した例には限られない。
【0027】
それぞれ隣り合う光ファイバ4同士が、光ファイバテープ心線3の長手方向に所定の間隔をあけて間欠的に連結部19で接着される。また、幅方向に隣り合う連結部19同士は、光ファイバテープ心線3の長手方向に対してずれて配置されることが望ましい。例えば、互いに隣り合う連結部19が、光ファイバテープ心線3の長手方向に半ピッチずれて形成されることが望ましい。なお、連結部19の長さおよびピッチは図示した例には限られない。
【0028】
図3(a)は、連結部19近傍の拡大図である。連結部19は、複数の小接着部17によって構成される。小接着部17は、例えば点状に所定のピッチで光ファイバテープ心線3の長手方向に断続的に形成される。
【0029】
なお、光ファイバテープ心線3の長手方向に対するそれぞれの小接着部17の接着長さは、連結部19内における小接着部17のピッチよりも小さい。したがって、小接着部17同士は、光ファイバ4の長手方向に分離され、小接着部17同士の間には、非接着部が形成される。すなわち、光ファイバテープ心線3は、隣接する光ファイバ4が、長手方向に間欠的に連結部19で連結されており、連結部19の樹脂量が、光ファイバ4の長手方向に均一ではない。
【0030】
図3(b)は、図2(b)のA-A線断面図である。連結部19にいて、光ファイバテープ心線3の上面側と下面側とで、樹脂の塗布量が異なる。すなわち、連結部19の樹脂量は、光ファイバ4の長手方向に対して部位によって不均一であるだけでなく、光ファイバテープ心線3の上下面でも不均一である。
【0031】
なお、連結部19を構成する樹脂は、例えば紫外線硬化樹脂である。また、連結部19を構成する樹脂の連結部の樹脂のヤング率は130MPa以下であることが望ましく、80MPa以下であることがさらに望ましい。樹脂のヤング率が高すぎると、連結部19の剛性が大きくなるため、樹脂が収縮した際の光ファイバ4への応力が大きくなる。
【0032】
一方、連結部19を構成する樹脂のヤング率が低ければ、連結部19自体の変形が容易であるため、光ファイバ4への応力を低く抑制することができる。しかし、連結部19を構成する樹脂のヤング率が低すぎると、連結部19(小接着部17)の割れ等の恐れがある。このため、連結部19を構成する樹脂としては、ヤング率が40MPa以上であることが望ましい。
【0033】
以上説明したように、本実施形態によれば、連結部19を構成する樹脂のヤング率が所定以下であるため、連結部19の長手方向の部位や、表裏によって、樹脂の収縮量にばらつきが生じるような場合でも、光ファイバ4への影響を小さくすることができる。このため、安価な光ファイバ4を用いても、伝送損失の増加を抑制することができる。
【0034】
なお、上述した実施形態では、連結部19の長手方向に対して、小接着部17が断続的に配置される例を示したが、これには限られない。例えば、図4(a)に示す光ファイバテープ心線3aのように、連結部19において、複数の小接着部17がつながって連続していてもよい。このような光ファイバテープ心線3でも連結部19の樹脂量は、光ファイバ4の長手方向で不均一であるが、連結部19を構成する樹脂のヤング率が低ければ、連結部19自体の変形が容易であるため、光ファイバ4への応力を低く抑制することができる。
【0035】
なお、このような光ファイバテープ心線3aは、前述した光ファイバテープ心線3と同様の方法で製造することができる。例えば、塗布ロールに形成される塗布孔の形態を変更してもよいし、複数の小孔を有する塗布ロールを用いて、樹脂の塗布量を多くすることで、隣り合う小接着部17同士がつながるようにしてもよい。
【0036】
また、連結部19において、必ずしも複数の小接着部17が互い分離又は連続するように樹脂が塗布されていなくてもよい。例えば、図5に示す光ファイバテープ心線3bのように、連結部19を複数の小接着部17で構成せずに、略一定の幅で構成してもよい。この場合でも、連結部19の前後端において、連結部19の幅が狭くなり、連結部19の樹脂量は、光ファイバ4の長手方向で不均一であるが、連結部19を構成する樹脂のヤング率が低ければ、連結部19自体の変形が容易であるため、光ファイバ4への応力を低く抑制することができる。
【実施例
【0037】
複数の間欠接着型の光ファイバテープ心線を作成し、最大伝送損失と連結部の割れについて評価した。光ファイバテープ心線を構成する光ファイバとしては、2つのタイプを用いた。
【0038】
応力に対する伝送損失の増加量が少ない光ファイバとしては、ITU-T G.657にカテゴライズ光ファイバを用いた。ITU-T G.657にカテゴライズされる光ファイバは、モードフィールド径が8.6μmであり、245um径の光ファイバ素線を着色した直径255umの着色心線である。
【0039】
これに対し、ITU-T G.654.Eにカテゴライズされる光ファイバ(OFS社製Terawave ULLファイバ)を用いた。ITU-T G.654.Eにカテゴライズされる光ファイバは、モードフィールド径は12.4μmであり、245um径の光ファイバ素線を着色した、直径255umの着色心線である。
【0040】
着色心線8本を間欠的に接着し、8心の間欠接着型の光ファイバテープ心線を作成した。なお、光ファイバテープ心線は、前述した特開2016-80849号公報に記載されたように、塗布ロールを用いて接着樹脂を塗布する方法で作成した。
【0041】
なお、塗布ロール上の吐出穴は、径を0.3mmとし、穴ピッチを0.4mmとした。また、樹脂量を調整することで、連結樹脂が塗布されたテープ上面から見た際に、小接着部が互いに分離したもの(図2参照)と、小接着部同士が連続したもの(図4)とを作成した。
【0042】
なお、小接着部同士が分離する場合には、塗布された樹脂の最大幅(図3(a)のW)は約0.15mmであった。一方、長手方向に隣り合う小接着部同士が連続する場合には、塗布された樹脂の最大幅(図4(b)のW1)が約0.2mmであり、隣り合って塗布された樹脂がつながっている部位の幅(図3(b)のW2)が約0.12mmであった。
【0043】
光ファイバ同士を接着するための接着樹脂として、ヤング率の水準を振ったものを用いて、それぞれ8心の光ファイバテープ心線を作成した。接着樹脂のヤング率は以下のように測定した。
【0044】
まず、10cm角のガラス基板をスピンコータに設置しその上に原材料を広げ、5~10um程度になるように回転スピードをコントロールして塗布した。そのガラス基板をパージボックスに入れ、窒素雰囲気を作り、紫外線ランプを用いて紫外線光を照度1000mW/cmで、照射量1000mJ/cmで照射し、シートを作成した。シートは、25℃50%RH雰囲気下で12時間状態調整した中で保持した後、長さ75mm、幅10mmのストレートダンベル状にサンプルを打ち抜いた。得られたサンプルを、標線25mmで引張り速度1mm/minで引張り、2.5%歪みにおける引っ張り力からヤング率を計算した。
【0045】
得られた光ファイバテープ心線を10本撚り合わせ、2mm幅のプラスチックテープを巻付けた80心の光ファイバユニットを構成した。また、80心の光ファイバユニットを25本サプライし、撚り合わせた上で、吸水性不織布を縦添えし、フォーミング治具で丸めた上に、ナイロン製の押え糸を巻付け、2000心のケーブルコアを作成した。
【0046】
こうして作成したケーブルコアと、φ1.8mmの鋼線を使用したテンションメンバと、外被を切裂く切裂き紐とを、外被材にて円筒状にシースし、光ファイバケーブルを作成した。外被材は低密度ポリエチレン(LLDPE)とした。なお、外被厚は3.0mmとした。
【0047】
上述した光ファイバユニットの製造時における光ファイバテープ心線の通過するパスライン中のターンシーブと、ケーブルコア製造時に光ファイバユニットが通過するパスライン中のターンシーブの最小径はφ100mmとした。なお、このターンシーブの最小径が小さくなるほど、製造工程における光ファイバテープ心線に大きな曲げ力が生じ、連結部の割れが生じやすくなる。
【0048】
得られたそれぞれの光ファイバケーブルについて、波長1550nmにおける伝送損失を測定した。また、光ファイバケーブル内から光ファイバテープ心線を取り出して、光ファイバテープ心線10mのなかの、連結部の割れの有無を確認した。長手方向で同じ列の連結部が2連続以上で割れているものを不合格とした。結果を表1、表2に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
実施例1~実施例6は、いずれも、接着樹脂の2連続割れが生じず、曲げに対する伝送損失の増加の大きいITU-T G.654.Eにカテゴライズされる光ファイバを用いても、0.27dB/km以上の最大伝送損失の発生も見られなかった。特に、接着樹脂のヤング率が80MPa以下である実施例1、2、4、5は、0.23dB/km以上の最大伝送損失の発生も見られなかった。
【0052】
一方、接着樹脂のヤング率が40MPa未満の比較例1、2は、接着樹脂の2連続割れが生じた。また、比較例3、4は、接着樹脂の2連続割れは生じないが、接着樹脂のヤング率が130MPaを超えているため、最大伝送損失が0.27dB/km以上となった。なお、ITU-T G.657にカテゴライズ光ファイバであれば、接着樹脂のヤング率が130MPaを超えていても、最大伝送損失は0.23dB/km未満となった。
【0053】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0054】
1………光ファイバケーブル
3、3a、3b………光ファイバテープ心線
4………光ファイバ
5………光ファイバユニット
7………押さえ巻き
9………テンションメンバ
11………引き裂き紐
13………外被
15………ケーブルコア
17………小接着部
19………連結部
図1
図2
図3
図4
図5