(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】麺類用ミックス
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20220607BHJP
【FI】
A23L7/109 A
A23L7/109 Z
(21)【出願番号】P 2021157871
(22)【出願日】2021-09-28
【審査請求日】2021-11-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】301049777
【氏名又は名称】日清製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 敦行
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-213354(JP,A)
【文献】特開2017-200444(JP,A)
【文献】セミナー・研究成果報告会資料;国産小麦の品質特性と今後の方向性,2019年10月23日,pp.1-33(スライド1-33)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/00-7/25
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉100質量部のうち、デュラム粉を5質量部以上15質量部以下、きたほなみ由来の小麦粉を70質量部以上95質量部以下含有する、電子レンジ加熱麺類用ミックス。
【請求項2】
小麦粉100質量部のうち、デュラム粉ときたほなみ由来の小麦粉の合計量が80質量部以上100質量部以下である、請求項1に記載の電子レンジ加熱麺類用ミックス。
【請求項3】
デュラム粉の平均粒径が20μm以上130μm以下である、請求項1又は2に記載の電子レンジ加熱麺類用ミックス。
【請求項4】
きたほなみ由来の小麦粉の粗蛋白質が9.0質量%以上11.5質量%以下である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の電子レンジ加熱麺類用ミックス。
【請求項5】
圧延切り出し麺類用である、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の電子レンジ加熱麺類用ミックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は麺類用ミックスに関する。また本発明は、該麺類用ミックスを用いた麺生地及び麺類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
普通小麦粉を主体とする原料を用いて麺類を製造する場合、デュラム小麦粉を配合することがしばしばある。デュラム小麦は、通常の普通系小麦と比べて硬質であるとともに、グルテンを豊富に含む。これによって、デュラム小麦を原料の一部として用いることで、デュラム小麦特有の強い食感の麺類を得ることができる。
【0003】
例えば特許文献1には、損傷澱粉量を9.5質量%以下に抑えたデュラム小麦粉を含む中華麺が記載されている。同文献には、デュラム小麦が硬質であるがゆえに生じていた、デュラム小麦粉の過粉砕に起因するデュラム小麦粉の損傷澱粉量及びグルテン活性の低下を、デュラム小麦粉の粉砕条件を調製したことで解決し、これによって、デュラム小麦粉を用いた麺類の食感、味・香りを改善したと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、麺類に要求される別の特性であるコシの良さや角立ちの良さ、及び電子レンジ加熱したときに課題となる麺表面のガミー感の低減については特段の考慮はなされていない。したがって本発明の課題は、コシ及び角立ちが良好であり、また電子レンジ加熱耐性に優れた麺類の製造が可能なミックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、小麦粉100質量部のうち、デュラム粉を5質量部以上15質量部以下、きたほなみ由来の小麦粉を70質量部以上95質量部以下含有する、麺類用ミックスを提供するものである。
【0007】
また本発明は、前記の麺類用ミックスを原料粉とする麺生地を提供するものである。
【0008】
更に本発明は、前記の麺類用ミックスを原料粉として用いて製麺する工程を有する麺類の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コシ及び角立ちが良好であり、また電子レンジ加熱しても良好な食感を維持できる(電子レンジ加熱耐性を有する)麺類の製造が可能なミックスが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づいて説明する。本発明の麺類用ミックスは、特定の種類の小麦粉を含むものである。具体的には、小麦粉として、デュラム粉と、きたほなみ由来の小麦粉とをそれぞれ所定量含む。
【0011】
デュラム粉は、デュラム小麦を原料とする穀粉である。
デュラム小麦とは、普通系小麦と異なる、植物学的分類における二粒系小麦に属する小麦をいう。具体的には、デュラム小麦以外の通常の小麦は6倍体であって「普通系小麦」と呼ばれる。これに対し、デュラム小麦は4倍体であり「二粒系小麦」と呼ばれている。このように、デュラム小麦は、強力粉、中力粉及び薄力粉用の普通系小麦とは植物学的に種類が異なっている。
【0012】
デュラム粉としては、例えば、デュラムセモリナ、デュラム小麦粉、デュラム全粒粉等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。デュラムセモリナは、デュラム小麦からふすま(表皮)及び胚芽を除いて粗挽きしたものであり、デュラム小麦粉は、デュラムセモリナを更に粉砕・粉末化したものである。デュラムセモリナとデュラム小麦粉との主な違いは粒子の大きさであり、一般に、デュラムセモリナの方がデュラム小麦粉に比べて平均粒径が大きい。デュラム全粒粉は、デュラム小麦をそのまま粉砕したもので、ふすまや胚芽を含む点で、これらを実質的に含まないデュラムセモリナ及びデュラム小麦粉と相違する。コシ及び角立ちが良好であり、また適度な黄色味を有する麺類を得るという観点から、特にデュラムセモリナ及びデュラム小麦粉を用いることが好ましく、とりわけデュラム小麦粉が好ましい。デュラム小麦粉としては、デュラム小麦を製粉して得られる小麦粉であって、本技術分野で使用可能なものを特に制限なく用いることができる。
【0013】
好ましいデュラム粉(デュラム小麦粉)の一例として、本出願人の先の出願に係る特開2009-11277号公報に記載のデュラム小麦粉(以下、「特定デュラム小麦粉」ともいう。)が挙げられる。特定デュラム小麦粉は、損傷澱粉量が9.5質量%以下であることを特徴とする。本明細書にいう「損傷澱粉」は、小麦粉に含まれる澱粉の一部が機械的な損傷を受けて澱粉粒が破壊された状態のものを指す。特定デュラム小麦粉は損傷澱粉が比較的少ないことが主たる特徴の1つである。特定デュラム小麦粉の損傷澱粉量は、該特定デュラム小麦粉中6.0質量%以上8.0質量%以下であることが好ましく、7.0質量%以上8.0質量%以下であることが更に好ましい。特定デュラム小麦粉は、例えば、特開2009-11277号公報に記載の方法に従って製造することができる。
【0014】
本発明では、デュラム粉を、小麦粉100質量部中、5質量部以上15質量部以下混合して麺類用ミックスを得ることが好ましい。デュラム粉の量を5質量部以上に設定することで、コシがあり、角立ちの良好な麺類が得られるという利点がある。また、デュラム粉の量を15質量部以下に設定することで、適度な黄色味を有する麺類、特に淡黄色を呈するうどんが得られるという利点がある。
【0015】
デュラム粉の粒度(粒径の頻度)は、コシ及び角立ちのより良好な麺類を得るという観点から、平均粒径が好ましくは200μm以下、より好ましくは20μm以上130μm以下、さらに好ましくは40μm以上100μm以下の範囲であり、且つ粒径200μm以下のデュラム粉が全デュラム粉中、90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは100質量%である。前記特定デュラム小麦粉の粒度も斯かる範囲にあることが好ましい。
【0016】
本発明において、小麦粉等の平均粒径は、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製、「マイクロトラック粒径分布測定装置9200FRA」)を用いて乾式で測定したときの累積体積50容量%における体積累積粒径D50を指す。なお、粒度(粒径の頻度)とは、粒径分布を解析し、計算した「検出頻度割合」である(日機装株式会社製の前記装置9200FRAに添付された資料「マイクロトラック粒度分析計測定結果の見方」参照)。
【0017】
本発明の麺類用ミックスは、上述したデュラム粉に加えて、きたほなみ由来の小麦粉を含む。「きたほなみ」は日本産小麦品種の一種である。「きたほなみ由来の小麦粉」とは、きたほなみそのもの、及び交配親としてきたほなみを用いた派生品種の双方を包含する。小麦粉がきたほなみ由来のものであるか否かは、例えば遺伝学的特徴によって判断することができる。きたほなみ由来の小麦粉を用いることによって、麺にコシを付与することができ、また電子レンジ加熱した際に課題となる麺表面のガミー感を低減させ、良好な食感を維持させることができる。
【0018】
本発明では、きたほなみ由来の小麦粉を、小麦粉100質量部中、70質量部以上95質量部以下混合して麺類用ミックスを得ることが好ましい。きたほなみ由来の小麦粉の量をこの範囲に設定することで、麺にコシを付与することができ、また電子レンジ加熱した際に課題となる麺表面のガミー感を低減させ、良好な食感を維持させることができる。これらの観点から、きたほなみ由来の小麦粉は、小麦粉100質量部中、75質量部以上95質量部以下含まれることが更に好ましく、80質量部以上95質量部以下含まれることが一層好ましい。
【0019】
麺にコシを付与することができ、また電子レンジ加熱耐性効果をより奏させるという観点から、きたほなみ由来の小麦粉の粗蛋白質量は、該きたほなみ由来の小麦粉中9.0質量%以上11.5%質量%以下であることが好ましく、9.5質量%以上11.0質量%以下であることが一層好ましい。なお、この粗蛋白質量は、きたほなみ由来の小麦粉中の水分量が13.5%時の数値である。粗蛋白質量の測定方法としては、例えば特開2012-254052号公報に記載の方法が挙げられる。
【0020】
本発明においては、ミックスに含まれるすべての小麦粉100質量のうち、デュラム粉ときたほなみ由来の小麦粉の合計量が80質量部以上100質量部以下であることが、コシ及び角立ちが良好であり、また電子レンジ加熱耐性を有する麺類を製造し得る点から好ましい。この利点を一層顕著なものとする観点から、デュラム粉ときたほなみ由来の小麦粉の合計量は、85質量部以上100質量部以下であることが更に好ましく、90質量部以上100質量部以下であることが一層好ましい。
【0021】
本発明の麺類用ミックスは、一般的に麺類製造に用いられる、小麦粉以外の他の成分も用いることができる。具体的には小麦粉以外の穀粉や澱粉類が挙げられる。また本明細書では、小麦粉を含めた穀粉及び澱粉類の総称を穀粉類と記載する。
小麦粉以外の穀粉としては例えば、米粉、大麦粉、モチ大麦粉、そば粉、大豆粉、コーンフラワー、オーツ麦粉、ライ麦粉、ふすま粉などが挙げられる。
澱粉類としては例えば、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉等の澱粉、及びこれらにα化、アセチル化、エーテル化、エステル化、酸化処理、架橋処理等の処理を施した加工澱粉が挙げられる。
【0022】
本発明の麺類用ミックスは、穀粉類100質量部中、小麦粉を55質量部以上100質量部以下含むことが好ましい。小麦粉の含有割合を55質量部以上にすることで、本発明の所期の効果が十分に奏される。この観点から本発明のミックスは、より好ましくは、穀粉類100質量部中、小麦粉を65質量部以上100質量部以下含み、更に好ましくは70質量部以上100質量部以下含み、なお好ましくは80質量部以上100質量部以下含む。
また、本発明の麺類用ミックスは、澱粉類を、穀粉類100質量部中0質量部以上45質量部以下含んでいてもよく、0質量部以上35質量部以下含んでいてもよい。
【0023】
本発明の麺類用ミックスは、前記穀粉類のほかに通常麺類製造に用いられる副原料を含んでいてもよい。副原料としては、例えば、グルテン、グリアジンなどの小麦蛋白質、大豆蛋白質、卵黄粉、卵白粉、全卵粉、脱脂粉乳等の蛋白質素材;動植物油脂、粉末油脂等の油脂類;食物繊維、膨張剤、乳化剤、かん水、食塩、糖類、甘味料、香辛料、調味料、ビタミン類、ミネラル類、色素、香料、デキストリン(難消化性含む)、アルコール、酵素剤、焼成カルシウム、栄養強化剤、増粘剤、保水剤、保存剤、pH調整剤、酸化還元剤等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。副原料の配合量は、本発明の麺類用ミックスに含まれる穀粉類100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることが更に好ましく、10質量部以下であることが一層好ましい。
【0024】
本発明の麺類用ミックスは各種麺類の製造に使用することができる。特に本発明の麺類用ミックスを特にうどんなど圧延切り出し麺類の製造に使用すると、該麺類はそのコシ及び角立ちが良好となり、また電子レンジ加熱した際に課題となる麺表面のガミー感を低減させ、良好な食感を維持できる、電子レンジ加熱耐性を有する麺類となる。
【0025】
本発明の麺類用ミックスを用いた麺類は、従来の麺類の製法と同様の手順で製造することができる。典型的には、該麺類用ミックスを含む原料粉と水分とを混合して麺生地を調製する工程と、該麺生地を圧延して麺帯を得る工程と、該麺帯から複数の麺線を切り出す工程とを有する。本発明において、加水量は、麺類の種類等に応じて適宜調整すればよく、好ましくは穀粉類100質量部に対して25質量部以上60質量部以下である。水分としては、通常使用される水、塩水、かん水などの他、ガス含有水(炭酸水等)を使用することもできる。このように製造された麺類は、生麺、調理済み麺(茹で麺、蒸し麺等)、生麺若しくは調理麺の冷凍麺、冷蔵麺又はチルド麺、ノンフライ即席麺、フライ即席麺、乾麺等に適用可能である。
また、本発明の麺類用ミックスを用いて麺生地を調製する場合、該麺類用ミックスは、前記副原料を含むものであってもよく、あるいは含まないものであってもよい。
【0026】
このようにして得られた麺生地は、常法に従って製麺することで麺線が得られる。製麺方法は特に限定されず、例えば、圧延製麺、押出製麺などの各種製麺法が挙げられ、その中でもロール式製麺機を用いた圧延製麺によることが、コシ及び角立ちが良好であり、また電子レンジ加熱耐性を有する麺類の製造が可能であることから好ましい。圧延製麺においては、麺生地に圧力をかけて延ばして麺帯を得、該麺帯を切り出して、複数条の麺線からなる生麺を得ることができる。
【0027】
このように製麺して得られた生麺を、熱湯中での茹で調理、水蒸気中での蒸し調理などの加熱調理を行うことで、そのまま喫食が可能な調理済み麺類が得られる。
これに代えて、得られた生麺をそのまま熱風乾燥等の公知の乾燥方法によって乾燥することで、乾麺を得ることができる。乾麺は、上述の加熱調理を行うことで、喫食可能な調理済み麺類となる。
いずれの場合であっても、本発明の麺類用ミックスを用いて得られた麺類は、その喫食時においてコシがあり、また麺の角立ちが良好となる。更に、表面のガミー感が低減したものとなる。
【0028】
また得られた生麺は、生麺のままで、又は加熱調理されて調理済み麺類とした後、これを冷蔵又は冷凍処理することで、冷蔵又は冷凍処理された麺類としてもよい。例えば、加熱調理済み麺類を、必要に応じて所定の分量、例えば、一人分として150~300gに分けてトレイ等に盛り付けた後、必要に応じて包装し、これを冷蔵又は冷凍処理に付すことができる。特に、冷蔵又は冷凍された調理済み麺類は、長期保存が可能であり、喫食する際には、電子レンジ等で再加熱するだけでよく、簡便に喫食に供することができる。また本発明の麺類用ミックスを用いて得られた麺類は、冷蔵又は冷凍時間が長期間となった場合でも、その喫食時において、調理直後と同等の良好な黄色味を有し、コシが良好であり、角立ちに優れ、電子レンジ加熱しても麺表面のガミー感が低減したものとなる。
【0029】
このようして得られた麺類は、例えば中華麺、スパゲッティ及びマカロニなどのパスタ類に用いられる麺線や麺帯はもちろん、餃子やしゅうまいなどに用いられる麺皮が包含される広い概念のものである。本発明の麺類としては、例えば、中華麺、焼きそば、うどん、そば、冷麺、及びパスタ類などの麺線や麺帯はもちろん、餃子やしゅうまい、ワンタン、ラビオリなどに用いられる麺皮が挙げられる。特に、本発明のミックスは、例えば、パスタ、うどん類(そうめん、ひやむぎ、きしめんなど)、中華麺、そば、冷麺などの製造に有効であり、とりわけ本発明のミックスをうどん類の製造に用いると、うどんに好適なコシを付与でき、また角立ちを向上させることができ、更に表面のガミー感を低減させることができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。しかし本発明の範囲は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0031】
〔実施例1ないし5、比較例1ないし6、並びに対照例1〕
以下に示す粉末原料を表1に示す割合で混合して、粉末状のうどん用ミックスを得た。
ミックスは、以下の方法で調製した。具体的には、原料小麦の頴果を粉砕機(ビューラー株式会社製、テストミル)にて粉砕し、その粉砕物を上級粉、下級粉、ふすまの3つの画分に分け、該粉砕物の総量の60質量%が該上級粉となるように原料粉を調製した。前記上級粉が不足した場合は、その不足分を前記下級粉で補填した。これによって、目的とするミックスを得た。
これらを以下の表1に示す割合で混合し、目的とするうどん用ミックスを得た。
〔うどん用ミックスの原料〕
<小麦粉>
・デュラム小麦粉(特定デュラム小麦粉、損傷澱粉量9.0質量%、平均粒径
80μm、粒径200μm以下のデュラム粉が100質量%)
・デュラムセモリナ(レオーネG;日清製粉株式会社
)
・きたほなみ(頴果粉砕物、粗蛋白質量10.0質量%):中力粉
【0032】
<デュラム粉・きたほなみ以外の他の小麦粉>
・ASW(オーストラリア・スタンダード・ホワイト、頴果粉砕物):中力粉
<小麦粉以外の他の原料粉末>
・加工タピオカ澱粉:アセチル化タピオカ澱粉、あじさい、松谷化学工業(株)製
・食塩:並塩
【0033】
〔冷蔵麺(調理済み麺類)の調製〕
実施例1ないし5、比較例1ないし6、並びに対照例1について、うどん用ミックス100質量部に対して水及び食塩を表1に示す質量割合で混合し、ミキシングして生地を調製した。該生地を製麺ロールで圧延及び複合して麺帯を作製し、切り刃(#10角)で切り出して麺線を製造した(麺厚3mm)。得られた麺線を、歩留りが170%程度となるように熱湯で茹で、水洗冷却し、調理済み麺類(茹でうどん)を得た。その後、調理済み麺類を小分けして個食に包装し、冷蔵庫(4℃)で24時間保管し、冷蔵された調理済み麺類をそれぞれ得た。
【0034】
〔冷凍麺(調理済み麺類)の調製〕
実施例2、比較例1及び3、並びに対照例1について、うどん用ミックス100質量部に対して水及び食塩を表2に示す質量割合で混合し、ミキシングして生地を調製した。該生地を製麺ロールで圧延及び複合して麺帯を作製し、切り刃(#10角)で切り出して麺線を製造した(麺厚3mm)。得られた麺線を、歩留りが170%程度となるように熱湯で茹で、水洗冷却した。その後、調理済み麺類を小分けして個食に包装し、急速冷凍庫(-40℃)で急速凍結させて、冷凍された調理済み麺類をそれぞれ得た。
【0035】
〔評価〕
得られた冷蔵麺及び冷凍麺について官能評価を行った。訓練されたパネラー10人が、麺のコシ、麺の角立ち、ガミー感及び色調を下記評価基準で官能評価し、その算術平均点を求めた。点数が高いほど、麺のコシ、角立ち及びガミー感に優れるものであることを意味する。なお評価は、ASWの小麦粉を含むミックスを用いて製造された麺類を対照例(対照例1ないし3、各評価3点とする。)として評価した。
【0036】
冷蔵麺については、冷蔵茹でうどんにつゆをかけたもののコシ及び角立ちをパネラー10名で下記基準にて評価した。
また、冷蔵茹でうどんにゲル状スープを添加し、電子レンジで品温が75℃になるように加熱して、麺表面のガミー感をパネラー10名で下記基準にて評価した
【0037】
冷凍麺については、冷凍麺を1分間熱湯で茹でたものについて、水洗冷却した麺のコシ及び角立ちを、パネラー10名で下記基準にて評価した。
また、冷凍麺を電子レンジで品温75℃になるまで加熱して、麺表面のガミー感をパネラー10名で下記基準にて評価した
【0038】
更に色調については、冷蔵麺及び冷凍麺の双方について下記基準で評価し、最も評価した人数の多い項目を記載した。
【0039】
<麺のコシ>
5点:対照例よりもコシが良好。
4点:対照例よりもコシがやや良好。
3点:対照例と同等のコシがある。
2点:対照例よりもコシがやや劣る。
1点:対照例よりもコシが劣る。
【0040】
<麺の角立ち>
5点:対照例よりも優れる。
4点:対照例よりもやや優れる。
3点:対照例と同等である。
2点:対照例よりもやや劣る。
1点:対照例よりも劣る。
【0041】
<麺表面のガミー感>
5点:対照例よりもガミー感が弱い。
4点:対照例よりもガミー感がやや弱い。
3点:対照例と同等のガミー感である。
2点:対照例よりもガミー感がやや強い。
1点:対照例よりもガミー感が強い。
【0042】
<色調>
うどんとして非常に良好な黄色味である:◎
うどんとして良好な黄色味である:〇
うどんとして普通の黄色味である:△
うどんとして過度に黄色味がある:※
【0043】
【0044】
【表2】
表1及び表2に示す結果から明らかなとおり、各実施例で得られたうどんは、比較例のうどんに比べて、麺のコシ及び角立ちが良好であり、また電子レンジ加熱後の麺表面のガミー感が低減されたものであることが分かる。更に、各実施例で得られたうどんは、うどんに適した色調を呈したことが分かる。
【0045】
〔実施例6、比較例7及び比較例8、並びに対照例2〕
以下の表3に示す組成のミックスを調製した。このミックス100質量部に対して水及び食塩を表3に示す質量割合で混合し、ミキシングして生地を調製した。その後は実施例1と同様にして冷蔵麺を得た。この冷蔵麺について実施例1と同様の評価を行った。その結果を表3に示す。
【0046】
【0047】
表3に示す結果から明らかなとおり、実施例で得られたうどんは、比較例のうどんに比べて、麺のコシ及び角立ちが良好であり、また電子レンジ加熱後の麺表面のガミー感が低減されたものであることが分かる。更に、実施例で得られたうどんは、うどんに適した色調を呈したことが分かる。
【0048】
〔実施例7、比較例9及び比較例10、並びに対照例3〕
以下の表4に示す組成のミックスを調製した。このミックス100質量部に対して水及び食塩を表4に示す質量割合で混合し、ミキシングして生地を調製した。その後は実施例1と同様にして冷蔵麺を得た。この冷蔵麺について実施例1と同様の評価を行った。その結果を表3に示す。
【0049】
【0050】
表4に示す結果から明らかなとおり、実施例で得られたうどんは、比較例のうどんに比べて、麺のコシ及び角立ちが良好であり、また電子レンジ加熱後の麺表面のガミー感が低減されたものであることが分かる。更に、実施例で得られたうどんは、うどんに適した色調を呈したことが分かる。
【要約】
【課題】コシ及び角立ちが良好であり、また電子レンジ加熱耐性に優れた麺類の製造が可能なミックスを提供すること。
【解決手段】本発明の麺類用ミックスは、小麦粉100質量部のうち、デュラム粉を5質量部以上15質量部以下、きたほなみ由来の小麦粉を70質量部以上95質量部以下含有する。小麦粉100質量部のうち、デュラム粉ときたほなみ由来の小麦粉の合計量が80質量部以上100質量部以下であることが好適である。デュラム粉の平均粒径が20μm以上130μm以下であることも好適である。
【選択図】なし