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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】酸性液状調味料
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/60 20160101AFI20220607BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20220607BHJP
   A23L 23/00 20160101ALI20220607BHJP
【FI】
A23L27/60 A
A23L27/00 D
A23L23/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022021624
(22)【出願日】2022-02-15
【審査請求日】2022-02-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】樋上 雅朗
(72)【発明者】
【氏名】奥田 悠介
(72)【発明者】
【氏名】横堀 朋子
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-300865(JP,A)
【文献】特開2007-189956(JP,A)
【文献】特開2018-93837(JP,A)
【文献】Natural Product Communications,2016年,Vol.11,No.6,pp.775-780
【文献】Food Research International,2019年,Vol.121,pp.746-753
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも食用油脂及び酸材を含有する酸性液状調味料であって、
前記食用油脂がオリーブオイルを含み、
前記オリーブオイルの含有量が、前記酸性液状調味料の全量に対して、3質量%以上15質量%以下であり、
前記酸性液状調味料の香気成分を固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法で測定した場合、エストラゴールのピーク面積の2-ヘキセナールのピーク面積に対する比が、0.02以上50以下であることを特徴とする、
酸性液状調味料。
【請求項2】
前記酸材の含有量が、前記酸性液状調味料の全量に対して、0.10質量%以上0.90質量%以下であることを特徴とする、
請求項1に記載の酸性液状調味料。
【請求項3】
前記オリーブオイルの含有量が、前記食用油脂の全量に対して、10質量%以上35質量%以下であることを特徴とする、
請求項1または2に記載の酸性液状調味料。
【請求項4】
分離状であることを特徴とする、
請求項1~3のいずれか一項に記載の酸性液状調味料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性液状調味料に関する。より詳細には、食用油脂を含有する酸性液状調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
オリーブオイルは、独特な風味が好まれており、様々な料理や調味料に用いられている。近年、特にオリーブオイルの人気が高まっており、オリーブオイルの風味が強い液状調味料が要望されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、オリーブオイル、オクテニルコハク酸処理澱粉、白ぶどう酢、及び水を含有する乳化調味料が開示されており、乳化調味料中のオリーブオイルの含有量は最も好ましくは25~50質量%であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-00002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、液状調味料中のオリーブオイルの含有量が多い場合には流通時や冷蔵庫保管時に白濁・固化する恐れがあるため、液状調味料中のオリーブオイルの含有量を増やすことは難しかった。そのため、オリーブオイルの含有量を抑えながら、オリーブオイルの風味に優れる酸性液状調味料が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、オリーブオイルの風味を高めるために、様々な配合の検討を行った。その検討過程で、少量のオリーブオイルを含有する酸性液状調味料において、オリーブオイルの香気成分としては知られていない特定の香気成分(エストラゴール)を特定の割合で酸性液状調味料に配合することで、酸性液状調味料のオリーブオイルの風味を増強できることを知見した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0007】
すなわち、本発明の一態様によれば、
少なくとも食用油脂及び酸材を含有する酸性液状調味料であって、
前記食用油脂がオリーブオイルを含み、
前記オリーブオイルの含有量が、前記酸性液状調味料の全量に対して、3質量%以上15質量%以下であり、
前記酸性液状調味料の香気成分を固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法で測定した場合、エストラゴールのピーク面積の2-ヘキセナールのピーク面積に対する比が、0.02以上50以下であることを特徴とする、
酸性液状調味料が提供される。
【0008】
本発明の態様においては、前記酸材の含有量が、前記酸性液状調味料の全量に対して、0.10質量%以上0.90質量%以下であることが好ましい。
【0009】
本発明の態様においては、前記オリーブオイルの含有量が、前記食用油脂の全量に対して、10質量%以上35質量%以下であることが好ましい。
【0010】
本発明の態様においては、前記酸性液状調味料が分離状であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、オリーブオイルの含有量を抑えながら、オリーブオイルの風味に優れる酸性液状調味料を提供することができる。このような酸性液状調味料は消費者の食欲を惹起することができ、酸性液状調味料のさらなる市場拡大が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<酸性液状調味料>
本発明の酸性液状調味料は、少なくとも食用油脂及び酸材を含むものであって、下記の特定の香気成分を含むものである。また、酸性液状調味料の種類に応じて、水、砂糖等の調味料、増粘剤、及び他の原料等をさらに含んでもよい。
【0013】
酸性液状調味料は、乳化状であってもよく、分離状であってもよいが、分離状であることが好ましい。分離状とは、二層以上の層を形成している状態であり、例えば、油相と水相を含む酸性分離液状調味料や、油相と乳化相を含む酸性分離液状調味料が挙げられる。オリーブオイルの風味が増強され易いため、油相と乳化相を含む酸性分離液状調味料が好ましい。なお、乳化相は、水中油型(O/W型)エマルションの構成であることが好ましい。
【0014】
酸性液状調味料としては、例えば、ドレッシング、ソース、タレ、及びこれらに類する他の食品が挙げられ、ドレッシングが好ましい。
【0015】
(香気成分)
酸性液状調味料は、香気成分として少なくともエストラゴール及び2-ヘキセナールが含まれる。酸性液状調味料は、エストラゴール及び2-ヘキセナール以外にも、天然のオリーブオイルに含まれる香気成分を含んでよく、本発明の効果を損なわない範囲で更なる他の香気成分を含んでもよい。
【0016】
エストラゴールは、バジル等に含まれる特徴香である。一方、2-ヘキセナールは、オリーブオイルに含まれる青臭い香りの一成分である。本発明は、エストラゴールが、オリーブオイルに含まれる2-ヘキセナールに対して特定の割合で含まれることで、意外にもオリーブオイルの風味を増強できることを見出したものである。
【0017】
酸性液状調味料は、香気成分を下記で詳述する固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法で測定した場合に、エストラゴールのピーク面積の2-ヘキセナールのピーク面積に対する比(エストラゴールのピーク面積/2-ヘキセナールのピーク面積)は、0.02以上50以下であり、下限値は好ましくは0.025以上であり、より好ましくは0.03以上であり、さらに好ましくは0.04以上であり、さらにより好ましくは0.06以上であり、最も好ましくは1以上であり、また、上限値は好ましくは40以下であり、より好ましくは30以下であり、さらに好ましくは25以下であり、さらにより好ましくは10以下であり、最も好ましくは5以下である。エストラゴールのピーク面積の2-ヘキセナールのピーク面積に対する比が上記数値範囲内であれば、オリーブオイルの含有量を抑えながら、オリーブオイルの風味を増強することができる。
【0018】
酸性液状調味料のエストラゴール及び2-ヘキセナールのピーク面積を調節する方法は特に限定されず、例えば、酸性液状調味料にエストラゴールと2-ヘキセナールをそれぞれ香料として添加する方法や、エストラゴールや2-ヘキセナールが含まれる食材やその抽出物を配合する方法が挙げられる。具体的には、酸性液状調味料のエストラゴールのピーク面積を調節する方法としては、酸性液状調味料中のエストラゴールを含む香辛料や香辛料抽出物の含有量を調節することが挙げられる。なお、エストラゴールはバジルに含まれる香気成分であるため、酸性液状調味料にバジルの抽出物を配合することができるが、酸性液状調味料への味への影響を抑えるためにはバジル粉砕物を含まないことが好ましい。また、酸性液状調味料の2-ヘキセナールのピーク面積を調節する方法としては、酸性液状調味料中の2-ヘキセナールを含むオリーブオイルの含有量を調節したり、原料のオリーブオイルの種類や精製方法を調節したりすることが挙げられる。
【0019】
なお、酸性液状調味料中のエストラゴール及び2-ヘキセナールのそれぞれが同一量であっても、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法の特性上、得られるピーク面積は異なる。その理由の一例として、2成分の揮発性の違いや他の試料中の成分との親和性の差などにより、気相中に揮発してくる成分量は異なることが挙げられる。その他、測定法の特性による種々の要因からピーク面積から算出する比率と定量値から算出する比率とは、数値が異なる。
【0020】
(香気成分の測定方法)
酸性液状調味料の香気成分は、以下の条件に従って、ヘッドスペース固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法(HS-SPME-GC-MS)で測定することができる。
(1)香気成分の分離濃縮方法
SPMEファイバーと揮発性成分抽出装置を用い、以下の条件に従って、固相マイクロ抽出法で香気成分の分離濃縮を行う。
<固相マイクロ抽出条件>
・SPMEファイバー:外側に膜厚50μmのジビニルベンゼン分散ポリジメチルシロキサン層、内側に膜厚30μmのCarboxen分散ポリジメチルシロキサン層を有する、2層積層コーティングされたSPMEファイバー(製品名:StableFlex 50/30μm、DVB/Carboxen/PDMS(Agilent Technologies製)
・揮発性成分抽出装置:PAL SYSTEM RTC 120、CTC Analitics製
・予備加温: 40℃,15min
・攪拌速度: 300rpm
・揮発性成分抽出: 40℃,20min
・脱着時間: 10min
(2)香気成分の測定方法
ガスクロマトグラフ法及び質量分析法を用い、以下の条件に従って、酸性液状調味料中のエストラゴール及び2-ヘキセナールの各ピーク面積を測定する。また、2-ヘキセナールの含有量は、2-ヘキセナールの標準品を添加したサンプルを同様に測定し、得られたガスクロマトグラムにおける2-ヘキセナールのピーク面積から含有量を定量する。
なお、各成分の定量イオン質量は以下の通りである。
・エストラゴール:定量イオン質量 m/z 121
・2-ヘキセナール:定量イオン質量 m/z 69
<ガスクロマトグラフ条件>
・測定機器:Agilent Intuvo 9000 GC SYSTEM(Agilent Technologies製)
・カラム:素材内壁にポリエチレングリコールからなる液相を膜厚0.25μmでコーティングしたキャピラリーカラム 長さ30m、口径0.25mm、膜厚0.25μm(製品名:DB-WAX ウルトライナート(Agilent Technologies製) 長さ30m、口径0.25mm、膜厚0.25μm)
・温度条件:35℃(5min)保持→120℃まで5℃/min昇温
→220℃まで15℃/min昇温→6min保持
・キャリアー:Heガス、 ガス流量1.0mL/min
・インジェクション:スプリットレス 1.6min→パージ50mL/min;
・インレット温度:250℃
・ワークステション:MSD ChemStation (Agilent Technologies製)
<質量分析条件>
・質量分析計: 四重極型質量分析計 (製品名:Agilent 5977B
(Agilent Technologies製))
・スキャン質量 m/z 29.0~350.0
・イオン化方式 EI(イオン化電圧70eV)
なお、信号強度が低い場合等は、スキャン測定ではなく、SIM(選択イオンモニタリング)測定を行っても良い。
また、測定装置は上記に限られず、例えばAgilent 7890B、Agilent 5977Sなど同等の性能をもつものを使用してもよく、使用する測定機器の仕様に合わせて条件を適宜調整し測定することができる。
【0021】
(酸性液状調味料のpH)
酸性液状調味料のpHは特に限定されず、例えば、2.6以上4.6以下であり、下限値は好ましくは2.7以上であり、より好ましくは2.8以上であり、上限値は好ましくは4.0以下であり、より好ましくは3.8以下であり、さらにより好ましくは3.5以下である。酸性液状調味料のpHが上記数値範囲内であれば、酸性液状調味料の微生物発生を制御して保存性を高めながら、酸性液状調味料の風味を良好にすることができる。なお、酸性液状調味料のpHの値は、1気圧、品温20℃とした時に、pH測定器(株式会社堀場製作所製卓上型pHメータF-72)を用いて測定した値である。
【0022】
(酸性液状調味料の水分含量)
酸性液状調味料の水分含量は、特に限定されずに他の成分の含有量に応じて適宜設定することができる。酸性液状調味料の水分含量は特に限定されず、例えば、好ましくは5質量%以上75質量%以下であり、下限値はより好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは15質量%以上であり、さらにより好ましくは20質量%以上であり、また、上限値はより好ましく70質量%以下であり、さらに好ましくは65質量%以下であり、さらにより好ましくは60質量%以下である。
【0023】
(食用油脂)
酸性液状調味料に用いる食用油脂は、少なくともオリーブオイルを含む。オリーブオイルは、オリーブの果実から得られ、オリーブオイル特有の風味を有する油であれば特に限定されない。オリーブオイルとしては、例えば、オリーブの果実から搾っただけのバージンオリーブオイル、バージンオリーブオイルと精製オリーブオイルをブレンドしたピュアオリーブオイル等が挙げられる。バージンオリーブオイルとしては、エキストラバージンオリーブオイル、バージンオリーブオイル、オーディナリーバージンオリーブオイル等を用いることができる。これらの中でもエキストラバージンオリーブオイルを用いることが好ましい。
【0024】
オリーブオイルの含有量は、酸性液状調味料の全量に対して、3質量%以上15質量%以下であり、下限値は好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは6質量%以上であり、さらに好ましくは7質量%以上であり、また、上限値は好ましくは14質量%以下であり、より好ましくは13質量%以下であり、さらに好ましくは12質量%以下である。オリーブオイルの含有量が上記数値範囲内であれば、オリーブオイルの含有量を抑えながら、オリーブオイルの風味を感じることができる。また、オリーブオイルの含有量が15質量%を超える場合、オリーブオイルが固化し易く、また、元々のオリーブオイルの風味が強過ぎるために本発明の効果が得られにくい。
【0025】
酸性液状調味料には、オリーブオイル以外の他の食用油脂を用いることができる。オリーブオイル以外の他の食用油脂は特に限定されず、従来公知の食用油脂を用いることができる。食用油脂としては、例えば、菜種油、大豆油、パーム油、綿実油、コーン油、ひまわり油、サフラワー油、胡麻油、亜麻仁油、米油、椿油、荏胡麻油、グレープシードオイル、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル等の植物油脂、魚油、牛脂、豚脂、鶏脂、又はMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド、硬化油、エステル交換油等のような化学的あるいは酵素的処理等を施して得られる油脂等を挙げることができる。これらの中でも、菜種油、大豆油、コーン油、パーム油、又はこれらの混合油を用いることが好ましい。
【0026】
食用油脂の総含有量(オリーブオイルと他の食用油脂の合計含有量)は、特に限定されないが、酸性液状調味料の全量に対して、好ましくは5質量%以上70質量%以下であり、下限値はより好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上であり、さらにより好ましくは30質量%以上であり、また、上限値はより好ましくは65質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下であり、さらにより好ましくは55質量%以下である。食用油脂の総含有量が上記数値範囲内であれば、油脂由来のコクを感じ易くなる。
【0027】
(酸材)
酸性液状調味料には、酸材を配合することで、上記の好適な数値範囲のpHに調整することができる。酸材としては、例えば、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ソルビン酸、安息香酸、アジピン酸、フマル酸、コハク酸等の有機酸及びそれらの塩、燐酸、塩酸等の無機酸及びそれらの塩、レモン果汁、リンゴ果汁、オレンジ果汁、乳酸発酵乳等を用いることができる。
【0028】
酸材の含有量は特に限定されず、目的とするpHや酢酸の含有量に応じて適宜調節することができる。例えば、酸材の含有量は、酸性液状調味料の全量に対して、好ましくは0.10質量%以上0.90質量%以下であり、下限値はより好ましくは0.15質量%以上であり、さらに好ましくは0.20質量%以上であり、また、上限値はより好ましくは0.85質量%以下であり、さらに好ましくは0.80質量%以下である。酢酸の含有量が上記数値範囲内であれば、酸味を抑えながら、オリーブオイルの風味を際立たせることができる。
【0029】
(他の原料)
酸性液状調味料は、上述した原料以外に、本発明の効果を損なわない範囲で酸性液状調味料に通常用いられている各種原料を適宜選択し含有させることができる。例えば、醤油、みりん、食塩、グルタミン酸ナトリウム、ブイヨン等の調味料、ぶどう糖、果糖、蔗糖、麦芽糖、オリゴ糖、トレハロース等の糖類、からし粉、胡椒等の香辛料や香辛料抽出物、レシチン、リゾレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、オクテニルコハク酸化澱粉等の乳化剤、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、アラビアガム等の増粘剤、アスコルビン酸、ビタミンE等の酸化防止剤、静菌剤等が挙げられる。
【0030】
<酸性液状調味料の製造方法>
本発明による酸性液状調味料の製造方法の一例について説明する。乳化相と油相を有する酸性分離液状調味料を調製する場合、例えば、まず、オリーブオイル、食酢(酢酸)、増粘剤、調味料、香辛料抽出物、及び清水等の原料を混合する。次に、上記で調製した混合物をミキサー等で撹拌しながら、オリーブオイル以外の他の食用油脂を注加して乳化処理を行って、乳化相を調製する。続いて、乳化相の上に油相原料であるオリーブオイルや他の食用油脂を積層して、乳化相と油相を有する酸性分離液状調味料を調製する。なお、乳化相の調製時または油相の積層前もしくは積層後にエストラゴール及び2-ヘキセナールを含有する香料を適量添加してもよい。
【0031】
本発明による酸性液状調味料の製造方法の別の例について説明する。水相と油相を有する酸性分離液状調味料を調製する場合、例えば、まず、食酢(酢酸)、増粘剤、調味料、香辛料抽出物、及び清水等の原料を混合して、水相を調製する。続いて、水相の上に油相原料であるオリーブオイルや他の食用油脂を積層して、水相と油相を有する酸性分離液状調味料を調製する。なお、水相の調製時または油相の積層前もしくは積層後にエストラゴール及び2-ヘキセナールを含有する香料を適量添加してもよい。
【0032】
(製造装置)
酸性液状調味料の製造には、通常の酸性液状調味料の製造に使われる装置を用いることができる。このような装置としては、例えば、一般的な攪拌機、スティックミキサー、スタンドミキサー、ホモミキサー、ホモディスパー等が挙げられる。攪拌機の攪拌羽形状としては、例えばプロペラ翼、タービン翼、パドル翼、アンカー翼等が挙げられる。
【実施例
【0033】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の内容に限定して解釈されるものではない。
【0034】
<酸性液状調味料の製造例1>
[実施例1~5、比較例1~2]
表1の配合割合に準じ、以下の手順により酸性液状調味料を製造した。具体体には、まず、撹拌羽付きタンクに、オリーブオイル、醸造酢(酸度9%)、すりおろしたまねぎ、砂糖、食塩、キサンタンガム、及び清水を投入し、均一に混合した。次に、撹拌をしながら菜種油を注加して乳化処理を行って、水中油型乳化相を調製した。続いて、瓶容器に水中油型乳化相を充填した後、その上に油相の菜種油を積層充填し、酸性液状調味料を調製した。
【0035】
【表1】
【0036】
次に、上記で調製した酸性液状調味料に、表2に記載の割合となるように、エストラゴールを添加して、酸性液状調味料を得た。
【0037】
<エストラゴ-ルのピーク面積の2-ヘキセナールのピーク面積に対する比の測定方法>
上記で得られた酸性液状調味料を上下に振って油相と乳化相を均一にした後、一部をサンプルとして採取した。得られたサンプルの香気成分を上記で詳述した固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法で測定し、得られたガスクロマトグラムにおいてエストラゴ-ル及び2-ヘキセナールのピーク面積をそれぞれ測定し、エストラゴ-ルのピーク面積の2-ヘキセナールのピーク面積に対する比を算出し、表2に示した。
【0038】
<pH測定>
上記で得られた酸性液状調味料について、1気圧、品温20℃とした時に、pH測定器(株式会社堀場製作所製卓上型pHメータF-72)を用いてpHを測定した。実施例1~5、比較例1~2の酸性液状調味料のpHは全て2.8以上3.5以下の範囲内であった。
【0039】
<官能評価(風味)>
上記で得られた酸性液状調味料の風味について、下記の基準に従って官能評価(風味)を行った。なお、比較例1の酸性液状調味料を対照品とした。官能評価の結果は表2に示す通りであった。下記の評価基準において「2」以上であれば、良好な結果である。
[評価基準]
3:対照品と比較して、オリーブオイルの香りが増強されていた。
2:対照品と比較して、オリーブオイルの香りがやや増強されていた。
1:対照品と比較して、オリーブオイルの香りが増強されず、不自然な香りであった。
【0040】
【表2】
【0041】
<酸性液状調味料の製造例2>
[実施例6~7、比較例3]
表3の配合割合に準じ、上記の<酸性液状調味料の製造例1>と同様の手順により酸性液状調味料を製造した。
【0042】
【表3】
【0043】
次に、上記で調製した酸性液状調味料に、表4に記載の割合となるように、エストラゴールを添加して、酸性液状調味料を得た。
【0044】
<エストラゴ-ルのピーク面積の2-ヘキセナールのピーク面積に対する比の測定方法>
上記で得られた酸性液状調味料について、上記の<酸性液状調味料の製造例1>と同様にして、エストラゴ-ルのピーク面積の2-ヘキセナールのピーク面積に対する比を測定した。測定結果を表4に示した。
【0045】
<pH測定>
上記で得られた酸性液状調味料について、上記の<酸性液状調味料の製造例1>と同様にして、pHを測定した。実施例6~7、比較例3の酸性液状調味料のpHは全て2.8以上3.5以下の範囲内であった。
【0046】
<官能評価(風味)>
上記で得られた酸性液状調味料について、上記の<酸性液状調味料の製造例1>と同様にして、官能評価を行った。なお、実施例6~7、比較例3の各酸性液状調味料のエストラゴ-ル添加前のものを対照品とした。各対照品の香気成分を測定した結果、エストラゴールのピーク面積の2-ヘキセナールのピーク面積に対する比は、比較例1と同様に0.004であった。官能評価の結果は表4に示す通りであった。
【0047】
【表4】
【0048】
<酸性液状調味料の製造例3>
[実施例8]
表5の配合割合に準じ、上記の<酸性液状調味料の製造例1>と同様の手順により酸性液状調味料を製造した。
【0049】
【表5】
【0050】
次に、上記で調製した酸性液状調味料に、表6に記載の割合となるように、エストラゴールを添加して、酸性液状調味料を得た。
【0051】
<エストラゴ-ルのピーク面積の2-ヘキセナールのピーク面積に対する比の測定方法>
上記で得られた酸性液状調味料について、上記の<酸性液状調味料の製造例1>と同様にして、エストラゴ-ルのピーク面積の2-ヘキセナールのピーク面積に対する比を測定した。測定結果を表6に示した。
【0052】
<pH測定>
上記で得られた酸性液状調味料について、上記の<酸性液状調味料の製造例1>と同様にして、pHを測定した。実施例8の酸性液状調味料のpHは2.8以上3.5以下の範囲内であった。
【0053】
<官能評価(風味)>
上記で得られた酸性液状調味料について、上記の<酸性液状調味料の製造例1>と同様にして、官能評価を行った。なお、実施例8の酸性液状調味料のエストラゴ-ル添加前のものを対照品とした。対照品の香気成分を測定した結果、エストラゴールのピーク面積の2-ヘキセナールのピーク面積に対する比は、0.014であった。官能評価の結果は表6に示す通りであった。
【0054】
【表6】
【要約】
【課題】オリーブオイルの含有量を抑えながら、オリーブオイルの風味に優れる酸性液状調味料の提供。
【解決手段】本発明は、少なくとも食用油脂及び酸材を含有する酸性液状調味料であって、前記食用油脂がオリーブオイルを含み、前記オリーブオイルの含有量が、前記酸性液状調味料の全量に対して、3質量%以上15質量%以下であり、前記酸性液状調味料の香気成分を固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法で測定した場合、エストラゴールのピーク面積の2-ヘキセナールのピーク面積に対する比が、0.02以上50以下であることを特徴とする。このような酸性液状調味料は、オリーブオイルの含有量を抑えながら、オリーブオイルの風味に優れるものである。
【選択図】なし