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特許7084728非水電解質二次電池、及び非水電解質二次電池の製造方法
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  • 特許-非水電解質二次電池、及び非水電解質二次電池の製造方法 図1
  • 特許-非水電解質二次電池、及び非水電解質二次電池の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池、及び非水電解質二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20220608BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220608BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20220608BHJP
   H01M 4/74 20060101ALI20220608BHJP
   H01M 4/80 20060101ALI20220608BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20220608BHJP
   H01M 50/44 20210101ALI20220608BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20220608BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M4/13
H01M4/139
H01M4/74 C
H01M4/80 C
H01M50/403 D
H01M50/44
H01M50/46
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018005185
(22)【出願日】2018-01-16
(65)【公開番号】P2019125485
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社エンビジョンAESCジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】植松 照博
(72)【発明者】
【氏名】引間 武
(72)【発明者】
【氏名】小瀬村 透
(72)【発明者】
【氏名】垣内 孝宏
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-228399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/058
H01M 4/13
H01M 4/74
H01M 4/80
H01M 4/139
H01M 50/403
H01M 50/44
H01M 50/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極層と、セパレータと、負極層とをこの順で積層させた積層構造を有する非水電解質二次電池であって、
前記正極層が、正極面から前記セパレータ方向に突出する複数の第1突起を有し、
前記負極層が、負極面から前記セパレータ方向に突出する複数の第2突起を有し、
前記正極層と、前記負極層とが、前記第1突起が、隣接する前記第2突起間の空間に位置し、且つ、前記第2突起が、隣接する前記第1突起間の空間に位置するように、積層され、
前記正極層と、前記負極層と、前記セパレータとを含む前記積層構造の断面を観察した際に、前記断面における、前記正極面に対向する前記セパレータの面の輪郭線A1の全長をL1とし、複数の前記第1突起により規定される凹凸構造の輪郭線B1の全長をL2とする場合に、比率L2/L1が、0.95以上1.05以下であり、
前記断面における、前記負極面に対向する前記セパレータの面の輪郭線A2の全長をL3とし、複数の前記第2突起により規定される凹凸構造の輪郭線B2の全長をL4とする場合に、比率L4/L3が、0.95以上1.05以下であり、
前記正極面からの複数の前記第1突起の突出高さの平均と、前記負極面からの複数の前記第2突起の突出高さの平均とが、それぞれ85μm以上105μm以下であり、
前記セパレータの膜厚が9μm以上23μm以下である、非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記セパレータが、繊維が絡み合った多孔質構造を有する、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記正極層、及び前記負極層の表面において活物質が突出しており、前記活物質が前記セパレータが有する前記繊維間に入り込んでいる、請求項2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記セパレータは、セルロースにより構成される、請求項1~3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池を製造する方法であって、
第1の集電体層上に前記正極層又は前記負極層を形成する工程であって、前記正極面に、複数の前記第1突起を設けて正極層を形成するか、前記負極面に、複数の前記第2突起を設けて負極層を形成する工程、
前記正極層上、又は前記負極層上に、分散媒を含むセパレータ形成用の塗布液を塗布して塗布膜を形成した後、前記塗布膜から前記分散媒を除去して、前記セパレータを形成する工程、
前記セパレータ上に、正極形成用、又は負極形成用のペーストを塗布して、前記第1の集電体層上の前記正極層又は前記負極層が前記セパレータを介して対向するように、前記第1の集電体層に形成された層とは対極にある、前記正極層、又は前記負極層を形成する工程、及び、
前記第1の集電体層に形成された層とは対極にある、前記正極層、又は前記負極層上に第2の集電体層を形成する工程、を含む、非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項6】
前記塗布液が繊維材料を含む、請求項5に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項7】
前記第2の集電体層が通気孔を有している、請求項5又は6に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池、及び非水電解質二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小型軽量しても高い出力性能を発揮できることから、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池が、携帯電話、タブレット型情報端末、ノート型パーソナルコンピュータ等の情報通信機器を中心に広く用いられている。
【0003】
かかる非水電解質二次電池について、電気自動車やハイブリッド自動車等において電源として使用するため、さらなる高出力が期待されている。高出力が図られた非水電解質二次電池として、正極と、負極と、正極及び負極の間に挟み込まれたセパレータとを備え、正極及び負極の少なくとも一方の表面に、高低差5μm以上100μm以下の凹凸構造を有するリチウム二次電池が提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-010253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されるリチウム二次電池は、凹凸構造を有する電極間にセパレータを挟み込んで作製される。この場合、凸部間での摺れによってセパレータに破れが生じたり、電極間にセパレータを挟み込む際に皺が生じたりする場合がある。
このようなセパレータの破れや、セパレータの皺はリチウム二次電池を長期使用する際の寿命を低下させることが懸念される。このことから、特許文献1に記載されるリチウム二次電池について、容量や、繰り返し使用性、高速充電性能について改良の余地があった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、凹凸構造を有する電極間に皺や破れなくセパレータが挟み込まれることによって、高容量化、繰り返し使用性及び高速充電性能が改良された非水電解質二次電池と、当該非水電解質二次電池の製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、凹凸構造を有する正極層と、セパレータと、凹凸構造を有する負極層とをこの順で積層させた積層構造を有する非水電解質2次電池において、前述の積層構造の断面を観察した場合の、正極層又は負極層の凹凸構造の輪郭線の長さと、正極層又は負極層に対向するセパレータの輪郭線の長さとの比率を所定の範囲内に制限することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
本発明の第1の態様は、正極層と、セパレータと、負極層とをこの順で積層させた積層構造を有する非水電解質二次電池であって、
正極層が、正極面からセパレータ方向に突出する複数の第1突起を有し、
負極層が、負極面からセパレータ方向に突出する複数の第2突起を有し、
正極層と、負極層とが、第1突起が、隣接する第2突起間の空間に位置し、且つ、第2突起が、隣接する第1突起間の空間に位置するように、積層され、
正極層と、負極層と、セパレータとを含む積層構造の断面を観察した際に、断面における、正極面に対向するセパレータの面の輪郭線A1の全長をL1とし、複数の第1突起により規定される凹凸構造の輪郭線B1の全長をL2とする場合に、比率L2/L1が、0.95以上1.05以下であり、
断面における、負極面に対向するセパレータの面の輪郭線A2の全長をL3とし、複数の第2突起により規定される凹凸構造の輪郭線B2の全長をL4とする場合に、比率L4/L3が、0.95以上1.05以下である、非水電解質二次電池である。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様にかかる非水電解質二次電池を製造する方法であって、
第1の集電体層上に正極層又は負極層を形成する工程であって、正極面に、複数の第1突起を設けて正極層を形成するか、負極面に、複数の第2突起を設けて負極層を形成する工程、
正極層上、又は負極層上に、分散媒を含むセパレータ形成用の塗布液を塗布して塗布膜を形成した後、塗布膜から分散媒を除去して、セパレータを形成する工程、
セパレータ上に、正極形成用、又は負極形成用のペーストを塗布して、前記第1の集電体層上の正極層又は負極層がセパレータを介して対向するように、前記第1の集電体層に形成された層とは対極にある、正極層、又は負極層を形成する工程、及び、
第1の集電体層に形成された層とは対極にある、正極層、又は負極層上に第2の集電体層を形成する工程、を含む、非水電解質二次電池の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高容量化、繰り返し使用性及び高速充電性能が改良された非水電解質二次電池と、当該非水電解質二次電池の製造方法とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】正極層と、セパレータと、負極層とを含む積層構造の断面を模式的に示す図である。
図2】非水電解質二次電池の製造方法の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
≪非水電解質二次電池≫
以下、非水電解質二次電池の構成について、図1を参照しつつ説明する。図1は、非水電解質二次電池について、積層構造についての面方向に対して垂直な断面の概略構成を示す図である。なお、非水電解質の構造は、上記の所定の要件を満たす限りにおいて、図1に示される構造にはなんら限定されない。
なお、本出願の明細書について、非水電解質二次電池について、単に「電池」と記す場合がある。
【0013】
非水電解質二次電池(電池)は、図1に示される、正極層11と、セパレータ10と、負極層12とをこの順で積層させた積層構造を有する。
なお、正極層11の表面、負極層12の表面、正極層11とセパレータ10との間、及び負極層12とセパレータ10との間には、本発明の目的を阻害しないかぎりにおいて、従来より非水電解質二次電池において電極とセパレータとの間に設けられることがある種々の機能層を有していてもよい。
【0014】
正極層11、及び負極層12は、通常、集電体層13に接して設けられる。
【0015】
正極層11は、正極面11aからセパレータ10の方向(セパレータ方向)に突出する複数の第1突起11bを有する。
負極層12は、負極面12aからセパレータ方向に突出する複数の第2突起12bを有する。
ここで、正極面11a又は負極面12aは、セパレータ10の表面と対向し、且つ、複数の第1突起11a又は複数の第2突起12bとを支持する面である。
【0016】
複数の第1突起11b、及び複数の第2突起12bの高さは、均一であっても不均一であってもよく、均一であるのが好ましい。
正極面11aからの各第1突起11bの突出高さと、負極面12aからの各第2突起12bの突出高さとは、それぞれ、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、20μm以上が特に好ましい。
正極面11aからの各第1突起11bの突出高さと、負極面12aからの各第2突起12bの突出高さの上限値はとくに限定されるものでもないが、例えば、それぞれ500μm以下である。
なお、突出高さは、正極面11a、又は負極面12aに対して垂直方向の突出高さである。
【0017】
正極面11aからの複数の第1突起11bの突出高さの平均と、負極面12aからの複数の第2突起12bの突出高さの平均とは、それぞれ5μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、50μm以上が特に好ましく、100μm超であってよい。
正極面11aからの複数の第1突起11bの突出高さの平均と、負極面12aからの複数の第2突起12bの突出高さの平均とは、とくに限定されるものでもないが、例えば、それぞれ500μm以下である。
【0018】
正極層11と、負極層12とは、第1突起11bが、隣接する第2突起12b間の空間に位置し、且つ、第2突起12bが、隣接する第1突起11b間の空間に位置するように積層される。つまり、正極層11と、負極層12とは、複数の第1突起11bと、複数の第2突起12bとが、セパレータ10を介して互いに噛み合うように積層される。
【0019】
第1突起11b、及び第2突起12bの形状は、所望する積層構造を形成できる限り特に限定されない。
第1突起11b、及び第2突起12bの形状としては、例えば、四角柱、六角柱、円柱等の柱状;四角錐台、六角錐第、円錐台糖の錐台状;矩形の断面を有する線状;台形の断面を有する線状等の形状が挙げられる。
なお第1突起11b、及び第2突起12bの頂部は、丸みを帯びていてもよい。
【0020】
高速充電性能が優れる電池を得やすいことから、第1突起11b、及び第2突起12bについて、突起の側面と、正極面11a又は負極面12aとがなす角(テーパー角)は、50°以上90°以下が好ましく、60°以上90℃以下がより好ましく、70°以上90°以下が特に好ましい。
【0021】
正極面11a上、又は負極面12a上での、複数の第1突起11b、又は複数の第2突起の配置は、正極層11、負極層12、及びセパレータ10が所定の要件を満たすように積層される限り特に限定されない。
例えば、第1突起11a、及び第2突起12aの形状が柱状、又は錐台状である場合、第1突起11a、又は第2突起12aが、正極面11a、又は負極面12a上に、概ね市松模様状に配置されるのが好ましい。
また、第1突起11a及び第2突起12aの形状が線状である場合、複数の線状の第1突起11bは、正極面11a上に、線状の第2突起12bの幅と同程度の間隔を空けて、平行に配置されるのが好ましい。また、複数の線状の第1突起12bは、負極面12a上に、線状の第1突起11bの幅と同程度の間隔を明けて、平行に配置されるのが好ましい。
【0022】
正極層11と、負極層12と、セパレータと10とを含む積層構造の断面を観察した際に、断面における、正極面11aに対向するセパレータ10の面の輪郭線A1の全長をL1とし、複数の第1突起により規定される凹凸構造の輪郭線B1の全長をL2とする場合に、比率L2/L1は、0.95以上1.05以下であり、0.97以上1.03以下がより好ましく、0.98以上1.00以下が特に好ましい。
また、前述の断面における、負極面12aに対向するセパレータ10の面の輪郭線A2の全長をL3とし、複数の第2突起により規定される凹凸構造の輪郭線B2の全長をL4とする場合に、比率L4/L3は、0.95以上1.05以下であり、0.97以上1.03以下がより好ましく、0.98以上1.00以下が特に好ましい。
【0023】
なお、図1では、セパレータ10が、正極層11と、負極層12とに密着して設けられているため、上記の輪郭線A1と輪郭線B1とが実質的に同一の線であり、上記の輪郭線A2と輪郭線B2とが実質的に同一の線である。
【0024】
比率L2/L1と、比率L4/L3とが上記の所定の範囲内であることは、セパレータ10の輪郭が、正極層11の輪郭、及び負極層12の輪郭の双方とほぼ一致することを意味する。
つまり、正極層11と負極層12とセパレータ10とは、正極層11と負極層12とが、両者の間に実質的にセパレータ分のスペースしかないように噛み合って設けられた状態で積層される。この場合、単位体積当たりの正極層11、負極層12、及びセパレータ10の充填率(体積の占める割合)が高いため、電池の高容量化を図ることができる。
例えば、特許文献1に記載の技術のように、既に作製された凹凸構造を有する正極と、凹凸構造を有する負極とをセパレータを介して積層させる場合、この凹凸構造の溝の部分に、セパレータと電極との隙間ができてしまう。この場合、前述のL2/L1、L4/L3の値について所望の値とすることは困難である。
【0025】
また、比率L2/L1と、比率L4/L3とが上記の所定の範囲内である場合、正極層11表面と、負極層12表面との距離は、どの場所においても、概ねセパレータ10の厚さであって均一である。このため、充放電反応の均一化による、電池の長寿命化や高速充電性能の向上が図られる。
【0026】
正極層11と、負極層12と、セパレータと10とを含む積層構造の断面において、第1突起11aの正極面11bの位置での幅と、第2突起12aの負極面12bの位置での幅とは、それぞれ、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、10μm以下が特に好ましい。このような範囲を設定することにより、より一層、容量の高い電池が実現できる。
また、電極の加工性等の観点から、第1突起11aの正極面11bの位置での幅と、第2突起12aの負極面12bの位置での幅との下限値は、それぞれ、5μm以上である。
【0027】
なお、上記の断面としては、積層構造を、積層構造の面方向に対して垂直な方向から観察した場合に定められる、積層構造の主面の重心を含み、且つ、複数の第1突起により規定される凹凸構造の輪郭線B1の全長L2と、複数の第2突起により規定される凹凸構造の輪郭線B2の全長L4との和が最大である断面が選択される。
【0028】
以下、電池が備える各構成について、順に説明する。
【0029】
<正極層>
電池における正極層11の材質としては、公知の種々の非水電解質二次電池の正極に適用されている種々の材料を用いることができる。
正極層11の材質は、典型的には、正極活物質と導電材と結着材とを含む。
正極層11の形成方法については、電池の製造方法について後述する。
【0030】
正極活物質としては、公知の正極活物質を特に制限なく用いることができる。電池がリチウムイオン二次電池である場合、リチウムイオンを吸蔵又は放出できる無機物が正極活物質として使用される。
より具体的には、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムマンガンニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、リチウム鉄リン複合酸化物等のリチウムと遷移金属との複合酸化物が挙げられる。
【0031】
導電材は、正極の電池の性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されない。例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛等の黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金等)等の1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。
これらの中で、導電材としては、電子伝導性に優れ、ペーストを用いる正極層11の形成が容易であることから、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。
【0032】
結着材は、正極活物質と、導電材と、保持するためのマトリックス材である。結着材としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂:エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等のゴム材料を、単独、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
また、セルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を結着材として用いることもできる。
【0033】
後述するように、正極層11は、正極活物質、導電材、及び結着材を含むペーストを用いるのが好ましい。この場合、正極形成用のペーストとしては、通常、溶媒又は分散媒を含む。
溶媒又は分散媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチレントリアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等の有機溶剤を好ましく用いることができる。
【0034】
また、水に分散剤、増粘剤等を加え、SBR等のラテックスにより、活物質と導電材とをスラリー化してもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等の多糖類を、単独、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0035】
<負極>
電池における正極層12の材質としては、公知の種々の非水電解質二次電池の負極に適用されている種々の材料を用いることができる。
負極層12の材質は、典型的には、負極活物質と導電材と結着材とを含む。
負極層12の形成方法については、電池の製造方法について後述する。
【0036】
負極活物質としては、公知の負極活物質を特に制限なく用いることができる。電池がリチウムイオン二次電池である場合、負極活物質としては、リチウム、リチウム合金、スズ化合物等の無機化合物、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素質材料、導電性ポリマー等が挙げられる。これらのうち、炭素質材料が安全性の面から見て好ましい。
炭素質材料は、特に限定されず、コークス類、ガラス状炭素類、グラファイト類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維等が挙げられる。これらのうち、人造黒鉛、天然黒鉛等のグラファイト類が、金属リチウムに近い作動電位を有し、高い作動電圧での充放電が可能であり電解質塩としてリチウム塩を使用した場合に自己放電を抑え、且つ充電時における不可逆容量を少なくできるため、好ましい。
【0037】
導電材、結着材、ペーストを用いて負極層12を形成する場合の溶剤については、正極層11について説明した材料と同様である。
【0038】
<セパレータ>
セパレータ10としては、非水電解質二次電池用のセパレータとして機能し、且つ前述の所定の積層構造を形成し得る多孔質膜であれば特に限定されない。
セパレータ10が正極層11又は負極層12の表面形状に追随でき、前述の比率L2/L1及び比率L4/L3がそれぞれ所定の範囲内である積層構造の形成が容易であることから、セパレータ10が、繊維材料が絡み合った多孔質構造を有するのが好ましい。
繊維材料が絡み合った多孔質構造としては、典型的には織布構造、又は不織布構造であり、セパレータ10の調製が容易であることから、不織布構造が好ましい。
【0039】
繊維材料が絡み合った多孔質構造のセパレータ10を製造する方法としては、繊維材料を含む分散液を、正極層11又は負極層12上に塗布した後に、分散媒を除去する方法が好ましい。
【0040】
セパレータ10の形成に用いることができる繊維材料は、絶縁性の繊維材料であれば特に限定されず、無機繊維であっても、有機繊維であってもよい。
【0041】
無機繊維の好適な例としては、マイクロガラス(細径のガラス繊維)やロックウール等が挙げられる。有機繊維の好適な例としては、セルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテート等のセルロースエステル、及びリグノセルロース等のセルロース系繊維材料や、キチン、キトサン等の中性ムコ多糖系の繊維材料や、脂肪族ナイロンや芳香族ナイロン(アラミド)等のポリアミド、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ビニロン、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフッ化ビニリデン等の樹脂からなる合成樹脂系の繊維材料が挙げられる。合成樹脂系の繊維材料について、例えば、電界紡糸(エレクトロスピニング)等の方法により、合成樹脂の微細な繊維を得ることができる。
【0042】
上記の繊維材料の中では、好ましいサイズの繊維材料の調製、入手が容易であり、疎水化等の変性処理により分散媒中に良好に分散する繊維材料を得やすいことから、セルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテート等のセルロースエステル、及びリグノセルロース等のセルロース系繊維材料や、キチン、キトサン等の中性ムコ多糖系の繊維材料が好ましく、上記のセルロース系繊維材料がより好ましく、セルロースが特に好ましい。
少なくとも一部が酸化変性されたセルロースも、繊維材料として好ましく用いることができる。
【0043】
疎水化変性は、繊維材料の表面の疎水性を向上させることができる変性処理であれば特に限定されない。具体的には、疎水化変性は、繊維材料の表面に、炭化水素基、及びハロゲン化炭化水素基等の疎水性の有機基、並びにオルガノシロキサン構造等の疎水性の官能基や化学構造を存在させる処理が好ましい。
【0044】
繊維材料の表面に、疎水性の官能基や化学構造を存在させる処理は、例えば、繊維材料の表面の少なくとも一部を変性剤により被覆する処理であっても、変性処理剤を繊維材料の表面に付着させる処理であっても、変性剤を繊維材料の表面に化学的に結合させる処理であってもよい。
【0045】
繊維材料の体積平均粒子径は特に限定されないが、繊維材料を含む分散液中で繊維材料が良好に分散しやすい点や、所望する空孔率、及び/又は所望する平均孔径を有する多孔質膜を形成しやすい点から、5μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上70μm以下がより好ましく、5μm以上50μm以下がさらにより好ましく、5μm以上30μm以下が特に好ましく、5μm以上20μm以下が最も好ましい。
【0046】
繊維材料の数平均繊維径は、2nm以上500nm以下が好ましく、2nm以上100nm以下がより好ましく、3nm以上80nm以下が特に好ましい。繊維材料の数平均繊維径が、上記範囲内であると、繊維材料が分散液中で安定して良好に分散しやすく、分散液を用いて所望する空孔率、及び/又は所望する平均孔径を有する多孔質膜を形成しやすい。
分散液中の繊維材料の最大繊維径は、1000nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましい。繊維材料の最大繊維径が上記の範囲内である場合、分散液中で繊維材料が沈降しにくく、分散液中で繊維材料が安定して分散される。
【0047】
繊維材料の数平均繊維径及び最大繊維径は、例えば、繊維材料を含む分散液を用いて、以下の方法で測定できる。まず、必要に応じて希釈又は濃縮を行い、分散液の固形分濃度を0.05質量%以上0.1質量%に調整する。固形分濃度を調整された分散液を、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストして、透過型電子顕微鏡(TEM)の観察用試料とする。
なお、分散液が繊維径の大きい繊維を含む場合には、ガラス上へキャストした表面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を観察してもよい。
そして、構成する繊維の大きさに応じて5000倍、10000倍、又は50000倍の倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。電子顕微鏡による観察で得られた画像内に縦横任意の画像幅の軸を想定し、その軸に対し、20本以上の繊維が交差するよう、試料及び観察条件(倍率等)を調節する。そして、この条件を満たす観察画像を得た後、この画像に対し、1枚の画像当たり縦横2本ずつの無作為な軸を引き、軸に交錯する繊維の繊維径を目視で読み取る。このようにして、最低3枚の重複しない表面部分の画像を、電子顕微鏡で撮影し、各々2つの軸に交錯する繊維の繊維径の値を読み取る(したがって、最低20本×2×3=120本の繊維径の情報が得られる)。このようにして得られた繊維径のデータにより、最大繊維径及び数平均繊維径を算出する。
【0048】
繊維材料を含む分散液を用いてセパレータ10を形成する場合、分散液に含まれる分散媒としては有機溶剤が好ましい。有機溶剤の好適な具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール(DPG)、トリエチレングリコール、及びトリプロピレングリコール等のグリコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(MFDG)、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノn-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(MFTG)、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノn-プロピルエーテル等のグリコールモノアルキルエーテル;3-メトキシブチルアセテート(MA)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノn-プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノn-プロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(DPMA)、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノn-プロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノn-プロピルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、及びトリプロピレングリコールモノn-プロピルエーテルアセテート等のグリコールアルキルエーテルアセテート;γ-ブチロラクトン(GBL)、α-メチル-γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、γ-ラウロラクトン、δ-バレロラクトン、及びヘキサノラクトン等のラクトン;メチルエチルケトン、ジエチルケトン、2-ペンタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、及びシクロヘプタノン等の鎖状又は環状ケトン;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、及びn-ヘプチルアルコール等のアルカンモノオール;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア(TMU)、N,N,N’,N’-テトラエチルウレア、N-メチルカプロラクタム、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、及びアセトニトリル等の非プロトン性極性溶剤が挙げられる。
【0049】
分散媒としての有機溶剤は、典型的には、分散液の固形分濃度が0.1質量%以上10質量%以下、好ましくは0.5質量%以上3質量%以下となるように用いられる。
【0050】
セパレータ10の空孔率は、作製された電池が作動できる限りにおいて特に限定されない。セパレータ10内で、例えばリチウムイオン等のイオンを良好に移動させやすく、且つセパレータ10の機械的強度が良好であることとから、セパレータ10の空孔率は、20体積%以上80体積%以下が好ましく、30体積%以上70%体積%以下がより好ましく、35体積%以上60体積%以下が特に好ましい。
空孔率は、繊維材料の分散径、分散液の固形分濃度、セパレータ10を形成する際の塗布膜の乾燥条件等を調整することにより調整出来る。
なお、セパレータ10の空孔率は、水銀ポロシメーターにより測定できる。
【0051】
セパレータ10の平均孔径は、特に限定されない。イオン透過性と短絡リスクのバランスの観点から、セパレータ10の平均孔径は0.02μm以上0.18μm以下が好ましく、0.02μm以上0.15μm以下がより好ましく、0.02μm以上0.10μm以下が特に好ましい。
セパレータ10の平均孔径は、分散液中の繊維材料の分散径、分散液の固形分濃度、セパレータ10を形成する際の塗布膜の乾燥条件等を調整することにより調整出来る。
セパレータ10の平均孔径は、水銀ポロシメーターにより測定できる。
【0052】
セパレータ10の膜厚は、特に限定されない。高速充電可能であり、高容量の電池を製造しやすいことから、セパレータ10は薄いほど好ましい。具体的には、セパレータ10の膜厚は1μm以上100μm以下が好ましく、2μm以上50μm以下がより好ましい。
【0053】
なお、セパレータ10の繊維材料が絡み合った多孔質構造を有する場合、前述の活物質は、正極層11、又は負極層12の表面に置いて突出しており、前述の積層構造において、セパレータ10が有する繊維間に入り込んでいるのが好ましい。
活物質がセパレータ10の有する繊維間に入り込んでいるか否かは、セパレータ10の断面の顕微鏡観察画像により確認することができる。
このように活物質がセパレータ10の有する繊維間に入り込むことにより、セパレータ10と電極との密着性がより強固となる。こうすることで、電池の繰り返し使用性を一段と向上させることができる。
【0054】
<集電体層>
正極層11、及び負極層12のセパレータ10と対向する面とは反対の面には、通常、集電体層13が積層される。
【0055】
正極層11に対して積層される集電体層13の材質としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス等が挙げられる。
これらのほか、カーボン、ニッケル、チタン、及び銀等で表面処理されるか、表面を酸化処理されたアルミニウムや銅等を、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、正極層11に対して積層される集電体層13の材質として用いることができる。
【0056】
負極層12に対して積層される集電体層13の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、及びAl-Cd合金等が挙げられる。
これらのほか、カーボン、ニッケル、チタン、及び銀等で表面処理されるか、表面を酸化処理された銅等を、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、負極層12に対して積層される集電体層13の材質として用いることができる。
【0057】
集電体の形状としては、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされた形状、ラス体、多孔質体、発泡体等が挙げられる。
なお、集電体層13としては、多孔質体、発泡体、ネット、パンチされたシート等の通気孔を有する材料も採用することができる。後述する非水電解質二次電池の製造方法のように、セパレータ10上に、正極形成用又は負極形成用のペーストを塗布した後、このような通気孔を有する集電体層13を設けた場合は、正極形成用又は負極形成用のペーストに含まれる溶媒等が抜けやすくなる。
【0058】
<電解液>
電池においては、通常、正極層11と負極層12との間に電解液が保持される。電解液としては、電解質を有機溶媒に溶解してなる非水電解液を用いることができる。
上記電解質としては、例えばLiPF、LiClO、LiBF、LiAsF、及びLiSbF等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
有機溶媒としては、非プロトン性の有機溶媒を用いることができる。有機溶媒の好適な例としては、例えば環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状エステル、環状エーテル、鎖状エーテル等から選ばれる1以上が挙げられる。
【0059】
環状カーボネートとしては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等が挙げられる。鎖状カーボネートとしては、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等が挙げられる。環状エステルとしては、例えばガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン等が挙げられる。環状エーテルとしては、例えばテトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等が挙げられる。鎖状エーテルとしては、例えば1,2-ジメトキシエタン等が挙げられる。
【0060】
好ましくは、電解液は、リチウム塩を有機溶媒に溶解してなる非水電解液である。この場合には、高出力の電池を得やすい。
【0061】
以上説明した各層を、例えば、集電体層13/正極層11/セパレータ10/負極層12/集電体層13の順で積層した積層体をケースに収容し、正極層11と負極層12との間に電解液を保持させることにより、電池が構成される。積層体をケースに収容する際、積層体は捲回されてもよい。
ケースの形状は特に限定されず、ペーパー型、コイン型、円筒型等であってよい。
【0062】
≪非水電解質二次電池の製造方法≫
前述の非水電解質二次電池を製造する方法は、前述の所定の積層構造を形成可能であれば特に限定されない。
好ましい方法としては、
第1の集電体層13上に正極層11又は負極層12を形成する工程であって、正極面11bに、複数の第1突起11aを設けて正極層11を形成するか、負極面12bに、複数の第2突起12aを設けて負極層12を形成する工程、
正極層11上、又は負極層12上に、分散媒を含むセパレータ10形成用の塗布液を塗布して塗布膜を形成した後、塗布膜から分散媒を除去して、セパレータ10を形成する工程、
セパレータ10上に、正極形成用、又は負極形成用のペーストを塗布して、前記第1の集電体層上13の正極層11又は負極層12がセパレータ10を介して対向するように、第1の集電体層13に形成された層とは対極にある、正極層11、又は負極層12を形成する工程、及び、
第1の集電体層13に形成された層とは対極にある、正極層11、又は負極層12上に第2の集電体層13を形成する工程、を含む方法が挙げられる。
【0063】
以下、上記の好ましい方法について、便宜上、正極層11の形成後に、負極層12を形成する方法について、図2(a)~(e)を参照しつつ説明する。
なお、以下説明する方法において、正極層11の形成と、負極層12の形成とについて、順序とを入れ替えることができる。
【0064】
まず、図2(a)に示されるように、第1の集電体層13上に、正極層11の材料かなる正極前駆層15を形成する。正極前駆層15の形成方法は特に限定されない。例えば、正極層11の材質からなるシートを、第1の集電体層13とラミネートして、正極前駆層15を形成してもよい。また、前述のように、正極層11の材料を含むペーストを第1の集電体層13上に塗布した後に、ペースト中の溶媒又は分散媒を除去して正極前駆層15を形成してもよい。溶媒又は分散媒の除去は、典型的には加熱により行われる。
【0065】
正極前駆層15の形成方法としては、正極前駆層15の膜厚の調整が容易であること等から、正極層11の材料を含むペーストを第1の集電体層13上に塗布した後に、ペースト中の溶媒又は分散媒を除去する方法が好ましい。
【0066】
ペーストの塗布方法としては、例えば、アプリケータロール等を用いるローラコート法、スクリーンコート法、ドクターブレイド法、スピンコート法、バーコート法等が挙げられる。このような方法により、ペーストの塗布を行い、任意の厚さの正極前駆層15が形成される。
【0067】
次いで、正極前駆層15に対して、正極面11b上に複数の第1突起11aを形成する加工を施し、図2(b)に示されるように正極層11を形成する。
かかる加工方法としては特に限定されないが、プレス法や、レーザーアブレーション法等が挙げられ、形状、寸法、位置等について精度よく第1突起11aを形成可能であることからレーザーアブレーション法が好ましい。
【0068】
正極層11の形成後、図2(c)に示されるように、正極層11上に、分散媒を含むセパレータ10形成用の塗布液を塗布して塗布膜を形成した後、塗布膜から分散媒を除去して、セパレータ10を形成する。
前述の通り、塗布液としては、繊維材料を含む塗布液が好ましく、分散媒としては有機溶剤が好ましい。
【0069】
分散液の塗布に用いられる装置は特に限定されない。塗布装置としては、例えば、ロールコータ、リバースコータ、バーコータ等の接触転写型塗布装置や、カーテンフローコータ、ダイコーター、スリットコーター、スプレー等の非接触型塗布装置を用いてもよい。
凹凸が存在している面上でも、膜厚の均一な塗布膜を形成しやすいことから、塗布方法としてはスプレー、例えば回転霧化方式の塗布装置を用いる方法が好ましい。回転霧化方式の塗布装置としては、例えば、特開2013-115181号公報に記載される装置を使用することができる。
【0070】
形成されたセパレータ10上に、図2(d)に示されるように、負極形成用のペーストを塗布して、正極層11と負極層12とがセパレータ10を介して対向するように、負極層12を形成する。この時、負極形成用のペーストは、第1突起11a間の空間に充填されるように塗布される。通常、塗布後に、ペースト中の溶媒又は分散媒を除去して、負極層12が形成される。
【0071】
その後、図2(e)に示されるように、第1の集電体層13に形成された正極層11とは対極にある負極層12上に第2の集電体層13を形成する。
第2の集電体層13を形成する方法は特に限定されない。例えば、シート状の第2の集電体層13を、負極層12上にラミネートすることにより、負極層12上に第2の集電体層13が設けられる。
なお、負極層12を乾固させる前に、通気孔を有する材料で構成される第2の集電体層13を、この負極層12に積層させることも好ましい。この場合、負極層12に含まれる溶媒又は分散媒を除去させつつ、第2の集電体層13を密着できるため、一層繰り返し使用性に優れる電池を作製することができる。
【0072】
以上説明した方法により、非水電解質2次電池が好適に製造される。
【実施例
【0073】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲は以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0074】
〔実施例1〕
膜厚20μmの銅箔を、負極層側の集電体層として用いた。銅箔上に、グラファイト(固形分濃度85質量%)、スチレンブタジエンゴム(SBR;固形分濃度5質量%)、カルボキシメチルセルロース(固形分濃度5質量%)を水で分散させた負極形成用のペーストを、スクリーン印刷法により塗布した後に、塗布膜を乾燥させ、膜厚140μmの負極前駆層を形成した。
【0075】
負極前駆層に対してレーザーアブレーションによる加工を施し、負極面から複数の第2突起が突出するように凹凸構造を有する負極層を形成した。負極層について、銅箔の表面から負極面までの距離の平均は35μmであり、負極面からの第2突起の突出高さの平均は105μmであった。
また、負極面と第2突起の側面とのなす角は60°であった。
【0076】
次いで、有する水酸基(メチロール基)の一部がカルボキシ基に酸化変性されたセルロースを、分散媒N-メチルピロリドンに対して0.5質量%の割合で含むセパレータ形成用の塗布液を、スプレー法により負極層上に塗布した後、塗布膜を乾燥させ、12μm以上23μm以下の範囲の厚さを有するセパレータを形成した。
【0077】
セパレータの形成後、セパレータ上に、リチウムコバルト複合酸化物(固形分濃度80質量%)、アセチレンブラック(固形分濃度12質量%)、ポリフッ化ビニリデン(固形分濃度8質量%)をN-メチルピロリドンで分散させた正極形成用のペーストを、第2突起間の空間にペーストが充填されるように、スクリーン印刷法により塗布し、次いで塗布膜を乾燥させて、セパレータ側の面に凹凸構造を有し、セパレータ側の面と反対の面が平坦な面である正極層を形成した。
正極層について、平坦な面から正極面までの距離の平均は45μmであり、正極面からの第1突起の突出高さの平均は85μmであった。
【0078】
正極層の形成後、正極層の平坦な面に、パンチングにより形成された開口を有する、膜厚20μmのアルミ箔をラミネートして、正極層と、負極層と、セパレータとを含む積層体を得た。
得られた積層体について、前述のL2/L1の値と、L4/L3の値とは、いずれも1.00であった。
【0079】
電解質として1mol/LのLiPFを含む、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの1:1(体積比)の混合溶液を電解液として用い、この電解液と上述との積層体とをアルミラミネートフィルムに封入することでして非水電解質二次電池を得た。非水電解質二次電池の設計上の電池容量は7.8mAhであった。
【0080】
〔実施例2〕
負極層についての、銅箔の表面から負極面までの距離の平均を25μmとし、負極面からの第2突起の突出高さの平均を100μmとすることと、
負極面と第2突起の側面とのなす角を75°とすることと、
正極層についての、平坦な面から正極面までの距離の平均を60μmとし、正極面からの第1突起の突出高さの平均を100μmとすることと、
セパレータの膜厚を9μm以上15μm以下の範囲とすることと、の他は、実施例1と同様にして積層体を得、次いで非水電解質2次電池を得た。
得られた積層体について、前述のL2/L1の値と、L4/L3の値とは、いずれも1.00であった。
また、非水電解質二次電池の設計上の電池容量は7.8mAhであった。
【0081】
〔比較例1〕
実施例1における負極前駆層の形成方法と同様の方法により、膜厚20μmの銅箔上に、膜厚130μmの平坦な負極層を形成した。
形成された負極層上に、実施例1と同様の方法により、6μm以上7μm以下の範囲内の膜厚を有するセパレータを形成した。
形成されたセパレータ上に、実施例1と同様の方法により、正極形成用のペーストを塗布した後に塗布膜を乾燥させて、膜厚100μmの平坦な正極層を形成した。
形成された正極層上に、パンチングにより形成された開口を有する、膜厚20μmのアルミ箔をラミネートして、正極層と、負極層と、セパレータとを含む積層体を得た。
得られた積層体を用いて、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を得た。非水電解質二次電池の設計上の電池容量は6.0mAhであった。
【0082】
実施例1、実施例2、及び比較例1で得た非水電解質2次電池について、電池容量を活物質重量(g)で除した値を求めたところ、実施例1では59.86mAh/gであり、実施例2では66.34mAh/gであり、比較例1では45.50mAh/gであった。
このことから、所定の要件を満たす、実施例1、及び実施例2の非水電解質二次電池は高容量であることが分かる。
【0083】
また、実施例1、実施例2、及び比較例1で得た非水電解質2次電池について、Cレート、0.1、1、2、及び3にて充放電容量の値を比較したところ、実施例1、及び実施例2の充放電容量の値が、比較例1の充放電容量の値よりも高いことが確認された。
このことから、所定の要件を満たす、実施例1、及び実施例2の非水電解質二次電池は、高速充電性能が優れることが分かる。
また、実施例2の充放電容量の値が、実施例1の充放電容量の値よりも高いことから、第1突起、及び第2突起の断面形状が台形である場合に、第1突起と正極面とがなす角と、第2突起と負極面とがなす角とが大きいほど、高速充電性能が高いこと分かる。
また、本実施例項における積層体は、いずれもL2/L1の値と、L4/L3の値とが、1.00であった。凹凸構造を有する電極について、セパレータを介して積層させる場合、通常の手法では、このL2/L1の値と、L4/L3の値とが低い値となる。本実施例の積層体は、このL2/L1の値と、L4/L3の値とが高い値を達成できているため、電極とセパレータとの剥離も起きづらく、繰り返し使用性等に優れる電池が達成できる。また、L2/L1の値と、L4/L3の値とが高い値を達成できていることから、電池全体としての容積を小さくできるという効果も期待できる。
【符号の説明】
【0084】
10 セパレータ
11 正極層
11a 第1突起
11b 正極面
12 負極層
12a 第2突起
12b 負極面
13 集電体層
14 正極前駆層
図1
図2