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<図1>
  • 特許-IPビデオ割込装置 図1
  • 特許-IPビデオ割込装置 図2
  • 特許-IPビデオ割込装置 図3
  • 特許-IPビデオ割込装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】IPビデオ割込装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 65/611 20220101AFI20220608BHJP
   H04L 12/18 20060101ALI20220608BHJP
   H04L 49/201 20220101ALI20220608BHJP
   H04N 5/268 20060101ALI20220608BHJP
   H04N 21/2381 20110101ALI20220608BHJP
   H04N 21/6405 20110101ALI20220608BHJP
【FI】
H04L65/611
H04L12/18
H04L49/201
H04N5/268
H04N21/2381
H04N21/6405
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018082207
(22)【出願日】2018-04-23
(65)【公開番号】P2019193032
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100143568
【弁理士】
【氏名又は名称】英 貢
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 幸代
(72)【発明者】
【氏名】橋本 渉
(72)【発明者】
【氏名】川井 博史
(72)【発明者】
【氏名】菰生 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】安藤 誠吾
(72)【発明者】
【氏名】高平 樹
【審査官】鈴木 香苗
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-527519(JP,A)
【文献】特開2007-173898(JP,A)
【文献】特開2005-286988(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02814257(EP,A1)
【文献】今泉 浩幸 ほか,映像切替・合成のためのMPEG-4スタジオプロファイルストリーム中継サーバの試作 MPEG-4 Studio Profile Stream Splicing and Multiplexing a Relay Server for Video Switching and Composition,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.104 No.31 IEICE Technical Report,日本,社団法人電子情報通信学会,2004年04月16日,第104巻,pp.41-46
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 65/611
H04L 12/18
H04L 49/201
H04N 5/268
H04N 21/2381
H04N 21/6405
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送に係るビデオ信号についてIPパケット形式に変換されたマルチキャスト通信のIPビデオ信号の割り込みを電気的な外部制御で選択的に可能とするIPビデオ割込装置であって、
第1のマルチキャストグループアドレスが割り当てられた第1のIPビデオ信号及び第2のマルチキャストグループアドレスが割り当てられた第2のIPビデオ信号を入力するIPビデオ入力手段と、
当該入力された前記第1のIPビデオ信号及び前記第2のIPビデオ信号を一括管理するIPビデオ管理手段と、
前記IPビデオ管理手段からの出力を、前記第2のIPビデオ信号に割り当てられていた第2のマルチキャストグループアドレスを、前記第1のマルチキャストグループアドレスに書き換えるヘッダ変換を行うことにより、前記第2のIPビデオ信号を割り込ませるヘッダ変換手段と、
当該割り込ませた前記第2のIPビデオ信号を前記第1のマルチキャストグループアドレスに係る所定のビデオ信号受信装置に伝送するよう中継出力する出力手段と、を備え
前記ヘッダ変換手段の前段又は後段に、前記IPビデオ入力手段に入力された前記第1のIPビデオ信号及び前記第2のIPビデオ信号を含むIPビデオ信号を、前記電気的な外部制御で選択的に切り替えて多重化する多重化手段を更に備え、
当該IPビデオ割込装置にWeb接続する割込制御端末に対し、前記電気的な外部制御を行う制御UIを提示するWebサーバ機能手段を有し、
前記制御UIは、前記割込制御端末に対し前記多重化手段にて多重化可能なIPビデオ信号のマルチキャストグループアドレス群を監視可能とするよう提示することを特徴とするIPビデオ割込装置。
【請求項2】
前記Webサーバ機能手段は、前記制御UIとして、前記多重化手段にて多重化可能なIPビデオ信号のマルチキャストグループアドレス群と、当該多重化可能なIPビデオ信号のうち多重化させるものを選択可能とし、且つマルチキャストグループアドレスの書き換えを選択可能とする切替指定を提示することを特徴とする、請求項に記載のIPビデオ割込装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IP(Internet protocol)パケットを用いて映像・音声等のIPビデオ信号を伝送し交換する技術に関し、特に、マルチキャスト通信に係るIPビデオ信号の割り込み制御を行うIPビデオ割込装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(マトリックススイッチャー)
テレビ番組の制作や送出においては、VTRやスタジオ、送出装置の間でビデオ信号(映像・音声信号等)を授受する必要がある。そこで、ビデオ信号を伝送する映像出力装置と映像入力装置の組み合わせを簡単に変えられるように、装置と装置を直接接続するのではなく、マトリックススイッチャーを経由して接続することが一般的に行われている。マトリックススイッチャーは、接続したい出力装置と入力装置の信号線を、電気的もしくは機械的スイッチ(クロスポイント)を用いて接続することで、ビデオ信号の流路を制御し、通信相手を切り替えることを可能にしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
(ビデオパッチパネル)
また、ビデオ信号のケーブル群を収納し接続するためのビデオパッチパネルが知られている。ビデオパッチパネルは、マトリックススイッチャーを使わずに簡便に信号の経路を選択できるように、機器からのケーブル(パッチケーブル)をパネル前面のジャックに接続し、その背後に恒久的なケーブルを配設したものとなっている。
【0004】
ただし、一般的に、マトリックススイッチャーを利用したシステムでは、そのマトリックススイッチャーの前後にビデオパッチパネルを設置している。マトリックススイッチャーに入力していない映像出力装置からのビデオ信号をマトリックススイッチャーへ入力するためには、パッチパネルに仮設のケーブルを接続することで、電気的にビデオ信号を割り込むことが可能である。このとき、マトリックススイッチャーシステムにおいては、仮設のケーブル接続により割り込んだビデオ信号は、当該恒久的なケーブルで入力しているビデオ信号のリソースとして運用上扱うことができる。このビデオ信号を割り込ませることを、以下パッチングと呼ぶ。
【0005】
ところで、従来のマトリックススイッチャー及びビデオパッチパネルを利用したシステムでは、このシステムに係る映像出力装置や映像入力装置でのビデオ信号の入出力について、同期デジタル信号やアナログ電気信号など非パケット形式の信号を同軸ケーブルで伝送することで行われている。
【0006】
(IPビデオスイッチャー)
一方、映像出力装置や映像入力装置に、IPビデオスイッチャーにおける非パケット形式のビデオ信号からIPパケット形式のIPビデオ信号への変換、IPパケット形式のIPビデオ信号から非パケット形式のビデオ信号への変換機能を持たせることで、同軸ケーブルの代わりに10GbE(ギガイーサネット(登録商標))、40GbEなどIPネットワークで使われている高速なデバイスやパケット中継装置を用いて、ビデオ信号を伝送することが可能になる。このようにIPネットワークを用いてビデオ信号を伝送するシステムを以後IPビデオシステムと呼ぶ。IPビデオシステムは、1本のケーブルに複数のビデオ信号を多重して伝送することが極めて容易であり、ケーブルの削減が期待できる。
【0007】
(マルチキャスト)
IPビデオシステムなど、複数の装置に信号を分配したい場合には、マルチキャスト通信が用いられる(例えば、特許文献2参照)。マルチキャスト通信では、送信端末はIPアドレスにマルチキャストグループアドレスを記入してパケットを送信する。受信端末は、パケット中継装置に受信を希望するマルチキャストグループアドレスを要求し、パケット中継装置は、要求されたマルチキャストグループのパケットの中継を開始する。そして、パケット中継装置は、該当するパケットを要求元の受信端末に転送するように、中継装置のルーティング動作を変更し、内部のルーティング情報を修正する。このようにして、マルチキャストグループアドレスに基づくパケットが受信端末に送られる。一般的なマルチキャストIPビデオシステムでは、送信端末の通信設定変更は不要であるが、受信端末がマルチキャストグループの受信の要求や停止する制御を行う必要がある。
【0008】
ここで、放送に係るビデオ信号についてIPパケットを用いて配信する際に想定されるIPビデオシステムについて、図4を参照して説明する。図4は、従来技法に基づいて放送に係るIPビデオ信号の典型的なマルチキャスト通信を行うIPビデオシステムの概略構成を示すブロック図である。
【0009】
まず、放送センター設備1では、ラック室と称される中央通信制御設備としてラック室設備4が設けられている。ラック室設備4は、送信元となるマルチキャスト通信(本例では10GbE)のIPビデオ信号のリソースとして、屋外設備2やラック室外設備3からそれぞれのマルチキャストグループアドレスが記述された送信元のIPビデオ信号を一括して集約し、当該マルチキャストグループアドレスに従う送信先へと配信することができる。尚、IPビデオ信号のリソースの名称は、標準規格SMPTE2022-5/6に基づいて10GbE等のフレーム内のIPv4ヘッダに記述されたマルチキャストグループアドレスに紐づいている。
【0010】
例えば、屋外設備2では、非パケット形式のビデオ信号の送信元としてビデオ信号送信装置20‐L(Lは1以上の整数)が設けられ、ビデオ信号送信装置20‐Lは、HD-SDI規格に基づく同軸ケーブルを介してIPゲートウェイ(IP-GW)装置21に接続される。IP-GW装置21は、各ビデオ信号送信装置20‐Lから非パケット形式のビデオ信号を入力し、IPビデオスイッチャーによる非パケット形式のビデオ信号からIPパケット形式のIPビデオ信号へと変換する機能と、IPアドレスにマルチキャストグループアドレスを記述してマルチキャスト通信(本例では10GbE)のIPビデオ信号へと変換する機能を有し、ビデオ信号送信装置20‐Lをリソースとするビデオ信号についてマルチキャスト通信(本例では10GbE)のIPビデオ信号に変換してネットワークを経てラック室設備4へと送信する。尚、IP-GW装置21によるマルチキャストグループアドレスの割り当ては、制御サーバ(図示せず)によって予めスケジューリングされたものに従うものとなっている。
【0011】
同様に、放送センター設備1内であっても、ラック室外設備3において、非パケット形式のビデオ信号の送信元としてビデオ信号送信装置30‐M(Mは1以上の整数)が設けられ、ビデオ信号送信装置30‐Mは、HD-SDI規格に基づく同軸ケーブルを介してIPゲートウェイ(IP-GW)装置31に接続される。IP-GW装置31は、各ビデオ信号送信装置30‐Mから非パケット形式のビデオ信号を入力し、IPビデオスイッチャーによる非パケット形式のビデオ信号からIPパケット形式のIPビデオ信号へと変換する機能と、IPアドレスにマルチキャストグループアドレスを記述してマルチキャスト通信(本例では10GbE)のIPビデオ信号へと変換する機能を有し、ビデオ信号送信装置30‐Mをリソースとするビデオ信号についてマルチキャスト通信(本例では10GbE)のIPビデオ信号に変換してラック室設備4へと送信する。尚、IP-GW装置31によるマルチキャストグループアドレスの割り当ては、制御サーバ(図示せず)によって予めスケジューリングされたものに従うものとなっている。
【0012】
ラック室設備4では、IPビデオルーター(IP-VR)装置41、IPゲートウェイ(IP-GW)装置42、及びビデオ信号受信装置43‐N(Nは1以上の整数)が設けられている。ビデオ信号受信装置43‐Nは、HD-SDI規格に基づく同軸ケーブルを介してIP-GW装置42に接続される。ただし、ビデオ信号受信装置43‐N(Nは1以上の整数)は、ラック室設備4内のものに限定する必要はない。
【0013】
IP-VR装置41は、屋外設備2及びラック室外設備3におけるそれぞれのIP-GW装置21,31からマルチキャスト通信(本例では10GbE)のIPビデオ信号を個別に入力し、配信制御してIP-GW装置42に出力する。IP-GW装置42は、IP-VR装置41を経て得られるIPビデオ信号を入力し、IPアドレスに記述されたマルチキャストグループアドレスに従うマルチキャスト通信(本例では10GbE)のIPビデオ信号について、IPビデオスイッチャーによるIPパケット形式のIPビデオ信号から非パケット形式のビデオ信号へと変換する機能を有し、当該マルチキャストグループのビデオ受信装置43‐Nへと送信する。尚、IP-GW装置42によるマルチキャストグループアドレスの割り当ては、制御サーバ(図示せず)によって予めスケジューリングされたものに従うものとなっている。
【0014】
また、ビデオ受信装置43‐Nは、マルチキャストグループの受信の要求や停止する制御を行って、所望のマルチキャスト通信(本例では10GbE)のIPビデオ信号についての配信を受けることができる。しかし、送信側から、例えば屋外設備2やラック室外設備3側から、特異に割り当てられるマルチキャストグループアドレスで制御されるIPビデオ信号ごとに、電気的な制御でのパッチング(IPビデオ信号の割り込み)を行うことができない。
【0015】
尚、マルチキャスト通信ではないが、複数の映像出力装置と映像入力装置の間で、IPビデオ信号を切り替えるように構成されるクロスバースイッチをルーター装置に設ける技法が知られている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3の技法では、各IPビデオ信号に対する転送アドレスを動的にマップし、システム時間及びマップされた転送アドレスを有する制御命令によるクロスバースイッチを制御する際に、システム時間に従って各IPビデオ信号の伝搬のタイミングを制御するものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特願2005-33511号公報
【文献】国際公開第2007/129397明細書
【文献】国際公開第2016/038217明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
図4を参照して上述したように、放送に係るマルチキャスト通信を行う従来のIPビデオシステムにおいて、10GbE、40GbE等にIPビデオ信号を多重して伝送するため、特異に割り当てられるマルチキャストグループアドレスで制御されるIPビデオ信号ごとに、電気的な制御でのパッチング(IPビデオ信号の割り込み)を行うことができない。
【0018】
図4に示したようなIPビデオシステムでは、IP-VR装置41が、屋外設備2及びラック室外設備3におけるそれぞれのIP-GW装置21,31からマルチキャスト通信(本例では10GbE)のIPビデオ信号を個別に入力する必要があるため、放送に係るビデオ信号についてIPパケットを用いて配信する際の利便性や帯域効率をより高める技法が望まれる。
【0019】
また、仮に、特許文献3の技法を利用して電気的な制御でのパッチングを行うとすると、全てのマルチキャストグループ内に位置するルーター装置に対してクロスバースイッチを設け、その全てのルーター装置に対して同時に電気的な制御でのパッチングを行う必要が生じ効率的に電気的な制御でのパッチングを行うことができない。
【0020】
本発明の目的は、上述の問題に鑑みて、送信元のビデオ信号についてIPパケット形式に変換されて個別のマルチキャストグループアドレスが割り当てられたIPビデオ信号に対し別のIPビデオ信号の割り込み送信先への中継を可能とするIPビデオ割込装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明のIPビデオ割込装置は、放送に係るビデオ信号についてIPパケット形式に変換されたマルチキャスト通信のIPビデオ信号の割り込みを電気的な外部制御で選択的に可能とするIPビデオ割込装置であって、第1のマルチキャストグループアドレスが割り当てられた第1のIPビデオ信号及び第2のマルチキャストグループアドレスが割り当てられた第2のIPビデオ信号を入力するIPビデオ入力手段と、当該入力された前記第1のIPビデオ信号及び前記第2のIPビデオ信号を一括管理するIPビデオ管理手段と、前記IPビデオ管理手段からの出力を、前記第2のIPビデオ信号に割り当てられていた第2のマルチキャストグループアドレスを、前記第1のマルチキャストグループアドレスに書き換えるヘッダ変換を行うことにより、前記第2のIPビデオ信号を割り込ませるヘッダ変換手段と、当該割り込ませた前記第2のIPビデオ信号を前記第1のマルチキャストグループアドレスに係る所定のビデオ信号受信装置に伝送するよう中継出力する出力手段と、を備え、前記ヘッダ変換手段の前段又は後段に、前記IPビデオ入力手段に入力された前記第1のIPビデオ信号及び前記第2のIPビデオ信号を含むIPビデオ信号を、前記電気的な外部制御で選択的に切り替えて多重化する多重化手段を更に備え、当該IPビデオ割込装置にWeb接続する割込制御端末に対し、前記電気的な外部制御を行う制御UIを提示するWebサーバ機能手段を有し、前記制御UIは、前記割込制御端末に対し前記多重化手段にて多重化可能なIPビデオ信号のマルチキャストグループアドレス群を監視可能とするよう提示することを特徴とする。
【0024】
また、本発明のIPビデオ割込装置において、前記Webサーバ機能手段は、前記制御UIとして、前記多重化手段にて多重化可能なIPビデオ信号のマルチキャストグループアドレス群と、当該多重化可能なIPビデオ信号のうち多重化させるものを選択可能とし、且つマルチキャストグループアドレスの書き換えを選択可能とする切替指定を提示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、放送に係るマルチキャスト通信に基づくリソースのIPビデオ信号について一括管理し、電気的な外部制御で別のIPビデオ信号の割り込みを可能とし、所定のビデオ信号受信装置に伝送するよう中継することができるので、放送に係るマルチキャスト通信のIPビデオシステムにおける利便性又は帯域効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明による一実施形態のIPビデオ割込装置を備える、放送に係るIPビデオ信号のマルチキャスト通信を行うIPビデオシステムの概略構成を示すブロック図である。
図2】本発明による一実施形態のIPビデオ割込装置の概略構成を示すブロック図である。
図3】本発明による一実施形態のIPビデオ割込装置の一動作例に基づく動作説明図である。
図4】従来技法に基づいて放送に係るIPビデオ信号の典型的なマルチキャスト通信を行うIPビデオシステムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図1乃至図3を参照して、本発明による一実施形態のIPビデオ割込装置40について説明する。
【0028】
〔放送に係るIPビデオ信号のマルチキャスト通信を行うIPビデオシステム〕
図1は、本発明による一実施形態のIPビデオ割込装置40を備える、放送に係るIPビデオ信号のマルチキャスト通信を行うIPビデオシステムの概略構成を示すブロック図である。図1に示すIPビデオシステムは、図4に示す従来技法に基づくIPビデオシステムと比較して、ラック室設備4内に、本発明による一実施形態のIPビデオ割込装置40が設けられている点、及びIPビデオ割込装置40が割込制御端末10によって電気的な外部制御(遠隔制御)によって制御されるように構成されている点で相違している。
【0029】
まず、放送センター設備1では、ラック室と称される中央通信制御設備としてラック室設備4が設けられている。ラック室設備4は、送信元となるマルチキャスト通信(本例では10GbE)のIPビデオ信号のリソースとして、屋外設備2やラック室外設備3からそれぞれのマルチキャストグループアドレスが記述された送信元のIPビデオ信号を一括して集約し、当該マルチキャストグループアドレスに従う送信先へと配信することができる。尚、IPビデオ信号のリソースの名称は、標準規格SMPTE2022-5/6に基づいて10GbE等のフレーム内のIPv4ヘッダに記述されたマルチキャストグループアドレスに紐づいている。
【0030】
そして、図4に示す従来技法と同様に、図1に示すIPビデオシステムにおいても、屋外設備2では、非パケット形式のビデオ信号の送信元としてビデオ信号送信装置20‐L(Lは1以上の整数)が設けられ、ビデオ信号送信装置20‐Lは、HD-SDI規格に基づく同軸ケーブルを介してIPゲートウェイ(IP-GW)装置21に接続される。IP-GW装置21は、各ビデオ信号送信装置20‐Lから非パケット形式のビデオ信号を入力し、IPビデオスイッチャーによる非パケット形式のビデオ信号からIPパケット形式のIPビデオ信号へと変換する機能と、IPアドレスにマルチキャストグループアドレスを記述してマルチキャスト通信(本例では10GbE)のIPビデオ信号へと変換する機能を有し、ビデオ信号送信装置20‐Lをリソースとするビデオ信号についてマルチキャスト通信(本例では10GbE)のIPビデオ信号に変換してネットワークを経てラック室設備4へと送信する。尚、IP-GW装置21によるマルチキャストグループアドレスの割り当ては、制御サーバ(図示せず)によって予めスケジューリングされたものに従うものとなっている。また、図1では、IP-GW装置21について1台のみ図示しているが複数台であってもよい。
【0031】
同様に、放送センター設備1内であっても、ラック室外設備3において、非パケット形式のビデオ信号の送信元としてビデオ信号送信装置30‐M(Mは1以上の整数)が設けられ、ビデオ信号送信装置30‐Mは、HD-SDI規格に基づく同軸ケーブルを介してIPゲートウェイ(IP-GW)装置31に接続される。IP-GW装置31は、各ビデオ信号送信装置30‐Mから非パケット形式のビデオ信号を入力し、IPビデオスイッチャーによる非パケット形式のビデオ信号からIPパケット形式のIPビデオ信号へと変換する機能と、IPアドレスにマルチキャストグループアドレスを記述してマルチキャスト通信(本例では10GbE)のIPビデオ信号へと変換する機能を有し、ビデオ信号送信装置30‐Mをリソースとするビデオ信号についてマルチキャスト通信(本例では10GbE)のIPビデオ信号に変換してラック室設備4へと送信する。尚、IP-GW装置31によるマルチキャストグループアドレスの割り当ては、制御サーバ(図示せず)によって予めスケジューリングされたものに従うものとなっている。また、図1では、IP-GW装置31について1台のみ図示しているが複数台であってもよい。
【0032】
ところで、図1に示すIPビデオシステムにおいては、ラック室設備4として、本発明による一実施形態のIPビデオ割込装置40と、IPビデオルーター(IP-VR)装置41、IPゲートウェイ(IP-GW)装置42、及びビデオ信号受信装置43‐N(Nは1以上の整数)が設けられている。ビデオ信号受信装置43‐Nは、HD-SDI規格に基づく同軸ケーブルを介してIP-GW装置42に接続される。ただし、ビデオ信号受信装置43‐N(Nは1以上の整数)は、ラック室設備4内のものに限定する必要はない。
【0033】
IPビデオ割込装置40は、その詳細は後述するが、屋外設備2及びラック室外設備3におけるそれぞれのIP-GW装置21,31からのビデオ信号に基づくマルチキャスト通信(本例では10GbE)のIPビデオ信号を入力して一括管理し、割込制御端末10によって電気的な外部制御によって別のIPビデオ信号の割り込みを可能とし、所定のビデオ信号受信装置43‐Nに伝送するために、IP-VR装置41へと中継する。特に、本実施形態の例では、割込制御端末10はネットワークを通じてIPビデオ割込装置40とWeb接続可能となっており、IPビデオ割込装置40から提示される制御ユーザーインターフェース(UI)により、当該IPビデオ信号の割り込み制御が可能に構成される。例えば、割込制御端末10は、放送センター設備1の内外、特に屋外設備2やラック室外設備3に設置することができる。
【0034】
IP-VR装置41は、IPビデオ割込装置40から出力されるマルチキャスト通信(本例では10GbE)のIPビデオ信号を配信制御してIP-GW装置42に出力する。
【0035】
IP-GW装置42は、IP-VR装置41を経て得られるIPビデオ信号を入力し、IPアドレスに記述されたマルチキャストグループアドレスに従うマルチキャスト通信(本例では10GbE)のIPビデオ信号について、IPビデオスイッチャーによるIPパケット形式のIPビデオ信号から非パケット形式のビデオ信号へと変換する機能を有し、当該マルチキャストグループのビデオ受信装置43‐Nへと送信する。尚、IP-GW装置42によるマルチキャストグループアドレスの割り当ては、制御サーバ(図示せず)によって予めスケジューリングされたものに従うものとなっている。
【0036】
〔IPビデオ割込装置の構成〕
図2は、本発明による一実施形態のIPビデオ割込装置40の概略構成を示すブロック図である。IPビデオ割込装置40は、IPビデオ信号入力部401‐K(Kは1以上の整数)、多重化部402、ヘッダ変換部403、出力部404、ヘッダ監視・変換制御部405、Webサーバ機能部406、及び通信部407を備える。Webサーバ機能部406は、ユーザ認証部406a及び制御UI提示部406bを有する。
【0037】
IPビデオ信号入力部401‐Kは、屋外設備2及びラック室外設備3におけるそれぞれの第1のビデオ信号送信装置(IP-GW装置21,31)からのビデオ信号についてIPパケット形式に変換されて個別にマルチキャストグループアドレスが割り当てられたマルチキャスト通信(本例では10GbE)のIPビデオ信号を入力し、多重化部402に出力する。例えば、IPビデオ信号入力部401‐1は第1のマルチキャストグループアドレスが割り当てられた第1のIPビデオ信号を入力し、IPビデオ信号入力部401‐2は第2のマルチキャストグループアドレスが割り当てられた第2のIPビデオ信号を入力し、それぞれ多重化部402に出力する。
【0038】
多重化部402は、IPビデオ信号入力部401‐Kから複数入力されるIPビデオ信号のうち、Webサーバ機能部406からの指示に従って作動するヘッダ監視・変換制御部405からの多重化制御信号に基づいて、選択されたIPビデオ信号を時分割多重化した多重化信号を生成し、ヘッダ変換部403に出力する。
【0039】
ヘッダ監視・変換制御部405は、多重化部402に入力される全てのIPビデオ信号を一括管理するIPビデオ管理手段として構成され、多重化部402から、当該入力されるIPビデオ信号に割り当てられているマルチキャストグループアドレスを抽出し、抽出したマルチキャストグループアドレスに関する多重化対象情報を取得して監視する機能を有する。多重化対象情報は、抽出したマルチキャストグループアドレスを持つIPビデオ信号について多重化部402にて多重化可能である旨を示す。
【0040】
また、ヘッダ監視・変換制御部405は、取得した多重化対象情報に従い多重化可能であるIPビデオ信号のうち、第1のマルチキャストグループアドレスを持つ第1のIPビデオ信号と第2のマルチキャストグループアドレスを持つ第2のIPビデオ信号を選択し、多重化するよう制御する多重化制御信号を多重化部402に出力する機能を有する。これにより、多重化部402は、ヘッダ監視・変換制御部405からの多重化制御信号に基づいて、第1のマルチキャストグループアドレスを持つ第1のIPビデオ信号、並びに第2のマルチキャストグループアドレスを持つ第2のIPビデオ信号を選択し、多重化した多重化信号を生成する。
【0041】
また、ヘッダ監視・変換制御部405は、当該多重化制御信号により多重化部402にて第1のIPビデオ信号と第2のIPビデオ信号を選択し、当該第2のIPビデオ信号に割り当てられていた第2のマルチキャストグループアドレスを、当該第1のマルチキャストグループアドレスに書き換えるヘッダ変換を行うよう制御するヘッダ書換信号をヘッダ変換部403に出力する機能を有する。
【0042】
ヘッダ変換部403は、当該ヘッダ書換信号に従って、即ちヘッダ監視・変換制御部405の制御によって当該第2のIPビデオ信号のヘッダ変換を行い、当該第2のIPビデオ信号を割り込ませた多重化信号を出力部404に出力する。
【0043】
このようなヘッダ監視・変換制御部405の機能は、Webサーバ機能部406からの指示に従って作動する。
【0044】
Webサーバ機能部406は、通信部407を介して割込制御端末10とWebサーバ機能部406とのWeb接続を可能とし、固有のWebアドレスを有する。そして、Webサーバ機能部406は、割込制御端末10のWeb接続時に、割込制御端末10のユーザに対しIDやパスワードなどのユーザ認証を行わせるユーザ認証部406a、及び割込制御端末10に対しヘッダ監視・変換制御部405を作動させるための制御UIを提示する制御UI提示部406bを有する。
【0045】
割込制御端末10に提示される制御UIは、少なくとも、上述した多重化対象情報に基づく多重化部402にて多重化可能なIPビデオ信号のマルチキャストグループアドレス群と、これらの多重化可能なIPビデオ信号のうち多重化させるものを選択可能とし、且つマルチキャストグループアドレスの書き換えを選択可能とする切替指定(例えば、後述する図3に示す切替指示線)が提示される。これにより、割込制御端末10を操作するユーザは、多重化部402にて多重化可能なIPビデオ信号を監視することができ、尚且つ多重化部402にて多重化可能なIPビデオ信号のうち、所望のIPビデオ信号の多重化を選択指定でき、加えて、所望のIPビデオ信号のマルチキャストグループアドレスの書き換えを選択指定できる。そして、割込制御端末10は、IPビデオ割込装置40に対しWeb接続で遠隔制御できるようになる。
【0046】
出力部404は、ヘッダ変換部403を経て当該割り込ませた第2のIPビデオ信号を第1のマルチキャストグループアドレスに係る所定のビデオ信号受信装置に伝送するよう中継出力する。
【0047】
〔IPビデオ割込装置の動作〕
図3は、本発明による一実施形態のIPビデオ割込装置40の一動作例に基づく動作説明図である。図3においては、IPビデオ割込装置40の主要な構成要素のみ簡易的に図示している。
【0048】
図3に示す例では、複数のラック室外設備3に設けられている2台のIP-GW装置31の各々から、特異の第1のマルチキャストグループアドレスA1,A2,A3、及びB1,B2,B3をそれぞれ持つIPビデオ信号(本例では10GbE)が時分割多重されてそれぞれIPビデオ割込装置40に入力されているとする。
【0049】
また、屋外設備2に設けられている1台のIP-GW装置21から、特異の第2のマルチキャストグループアドレスC1,C2を持つIPビデオ信号(本例では10GbE)が時分割多重されてそれぞれIPビデオ割込装置40に入力されているとする。
【0050】
そして、屋外設備2にて割込制御端末10がIPビデオ割込装置40のWebサーバ機能部406とのWeb接続が確立され、図示するような制御UIが提示されている。尚、制御UIが提示される時点で、Webサーバ機能部406はヘッダ監視・変換制御部405を機能させる。このため、割込制御端末10に提示される制御UIは、上述した多重化対象情報に基づく多重化部402にて多重化可能なIPビデオ信号のマルチキャストグループアドレス群A1,A2,A3,B1,B2,B3が表示される。また、これらの多重化可能なIPビデオ信号のうち多重化させるものを選択可能とし、且つマルチキャストグループアドレスの書き換えを選択可能とする切替指定(図3に示す切替指示線)が提示される。
【0051】
図3に例示する制御UI上では、
“A1”のIPビデオ信号は、そのマルチキャストグループアドレスを維持して多重化対象“I1”とし、
“A2”のIPビデオ信号は、そのマルチキャストグループアドレスを維持して多重化対象“I2”とし、
“A3”のIPビデオ信号は、そのマルチキャストグループアドレスを維持して多重化対象“I3”とし、
“B1”のIPビデオ信号は、そのマルチキャストグループアドレスを維持して多重化対象“I4”とし、
“C1”のIPビデオ信号は、そのマルチキャストグループアドレスを“B2”に書き換えて多重化対象“I5”とし、
“C2”のIPビデオ信号は、そのマルチキャストグループアドレスを“B3”に書き換えて多重化対象“I6”とし、
“B2”,“B3”のIPビデオ信号は、多重化部402にて廃棄し多重化しないものとするよう、(切替指示線)で選択指定した例を示している。
【0052】
この制御UI上で選択指定された内容に基づいて、Webサーバ機能部406はヘッダ監視・変換制御部405を機能させ、ヘッダ監視・変換制御部405は、対応する多重化制御信号を多重化部402に出力する。
【0053】
これにより、多重化部402は、ラック室外設備3からの第1のマルチキャストグループアドレス“A1”,“A2”,“A3”,“B1”をそれぞれ持つ各第1のIPビデオ信号と、屋外設備2からの第2のマルチキャストグループアドレス“C1”,“C2” をそれぞれ持つ各第2のIPビデオ信号を時分割多重した多重化信号をヘッダ変換部403に出力する。
【0054】
また、ヘッダ監視・変換制御部405は、当該多重化制御信号により多重化部402にて第1のマルチキャストグループアドレス“B2”,“B3”をそれぞれ持つ各第1のIPビデオ信号を多重化する代わりに、第2のマルチキャストグループアドレス“C1”,“C2”をそれぞれ持つ各第2のIPビデオ信号を選択した際に、当該第2のIPビデオ信号に割り当てられていた第2のマルチキャストグループアドレス“C1”,“C2”を、それぞれ当該第1のマルチキャストグループアドレス“B2”,“B3”に書き換えるヘッダ変換を行うよう制御するヘッダ書換信号をヘッダ変換部403に出力する。
【0055】
これにより、ヘッダ変換部403は、当該ヘッダ書換信号に従って、ヘッダ監視・変換制御部405の制御によって当該第1のマルチキャストグループアドレス“B2”,“B3”に書き換えた当該第2のIPビデオ信号を割り込ませた多重化信号を出力する。
【0056】
このように、本実施形態のIPビデオ割込装置40は、割込制御端末10に提示される制御UIに基づいて、多重化部402にて多重化可能なIPビデオ信号のマルチキャストグループアドレス群を一括管理し、これらの多重化可能なIPビデオ信号のうち多重化させるものを選択的に制御し、且つマルチキャストグループアドレスの書き換えを可能とする制御を行う。これにより、本実施形態のIPビデオ割込装置40は、放送に係るマルチキャスト通信に基づくリソースのIPビデオ信号について一括管理し、電気的な外部制御で別のIPビデオ信号の割り込みを可能とし、所定のビデオ信号受信装置に伝送するよう中継することができるので、放送に係るマルチキャスト通信のIPビデオシステムにおける利便性又は帯域効率を高めることができる。
【0057】
以上、特定の実施形態の例を挙げて本発明を説明したが、本発明は前述の実施形態の例に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、上述した実施形態の例では、多重化部402を例に説明したが、2入力1出力マルチプレクサとして信号切り替えのみを行う構成とすることもできる。ただし、このような2入力1出力マルチプレクサの機能は上述した多重化部402のような多入力1多重出力マルチプレクサの一機能に含まれるため、帯域効率を高める観点からは上述した多重化部402のように多重化可能に構成することが好ましい。また、多重化部402は、ヘッダ変換部403の前段でなく後段に配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、放送に係るマルチキャスト通信に基づくリソースのIPビデオ信号について一括管理し、電気的な外部制御で別のIPビデオ信号の割り込みを可能とし、所定のビデオ信号受信装置に伝送するよう中継することができるので、放送に係るマルチキャスト通信のIPビデオシステムの用途に有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 放送センター設備
2 屋外設備
3 ラック室外設備
4 ラック室設備(中央通信制御設備)
10 割込制御端末
20‐1,20‐2,20‐L ビデオ信号送信装置
21 IP-GW装置
30‐1,30‐2,30‐M ビデオ信号送信装置
31 IP-GW装置
40 IPビデオ割込装置
41 IP-VR装置
42 IP-GW装置
43‐1,43‐2,43‐N ビデオ信号受信装置
401‐1,401‐2,401‐K IPビデオ信号入力部
402 多重化部
403 ヘッダ変換部
404 出力部
405 ヘッダ監視・ヘッダ変換制御部
406 Webサーバ機能部
406a ユーザ認証部
406b 制御UI提示部
407 通信部
図1
図2
図3
図4