(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】多重信号変更装置及び多重信号変更方法
(51)【国際特許分類】
H04J 1/08 20060101AFI20220608BHJP
H04H 20/06 20080101ALI20220608BHJP
H04H 20/10 20080101ALI20220608BHJP
H04J 14/02 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
H04J1/08
H04H20/06
H04H20/10
H04J14/02 198
(21)【出願番号】P 2018187661
(22)【出願日】2018-10-02
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】313005318
【氏名又は名称】パナソニックシステムソリューションズジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉永 尚生
(72)【発明者】
【氏名】久保田 学
(72)【発明者】
【氏名】藤原 稔久
(72)【発明者】
【氏名】金井 俊介
(72)【発明者】
【氏名】田邉 暁弘
(72)【発明者】
【氏名】大川原 龍弘
(72)【発明者】
【氏名】板倉 邦治
(72)【発明者】
【氏名】三浦 大介
【審査官】原田 聖子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/009197(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0212073(US,A1)
【文献】特開平08-307291(JP,A)
【文献】池田 智、川附 隆人、井筒 香、下羽 利明,FM一括変換技術を用いた広域映像配信,NTT技術ジャーナル,2007年05月
【文献】佐藤 誠、田中 正克、 浅見 洋介、鈴木 寿晃,地上デジタル放送用ギャップフィラー(チャンネルイレーサー)の開発,放送技術,兼六館出版株式会社 西村 ▲たま▼江,2007年12月01日,第60巻・第12号(通巻727号)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 1/08
H04H 20/06
H04H 20/10
H04J 14/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各チャンネルの映像信号であるチャンネル信号が周波数多重された信号を一括してFM変調して得られたFM一括変換信号を、互いに位相が90度異なる第一信号及び第二信号に分岐する分岐部と、
前記FM一括変換信号に多重された一部の消去対象の前記チャンネル信号と同じ周波数帯域を使用し、かつ、消去対象の当該チャンネル信号と相関を持たない信号と、前記FM一括変換信号における空き周波数帯域に追加するチャンネル信号とのいずれかである又は両方を含む第三信号と、前記第一信号とを混合した混合信号を出力する周波数混合部と、
前記混合信号と前記第二信号とを合波する合波部と、
を備える多重信号変更装置。
【請求項2】
各チャンネルの映像信号であるチャンネル信号が周波数多重された信号を一括してFM変調して得られたFM一括変換信号を、互いに位相が90度異なる第一信号及び第二信号に分岐する分岐ステップと、
前記FM一括変換信号に多重された一部の消去対象の前記チャンネル信号と同じ周波数帯域を使用し、かつ、消去対象の当該チャンネル信号と相関を持たない信号と、前記FM一括変換信号における空き周波数帯域に追加するチャンネル信号とのいずれかである又は両方を含む第三信号と、前記第一信号とを混合した混合信号を生成する混合ステップと、
前記混合信号と前記第二信号とを合波する合波ステップと、
を有する多重信号変更方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多重信号変更装置及び多重信号変更方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビジョン放送を視聴するには、放送局からの放送波を直接受信する、ケーブルテレビに加入する、等の方法がある。このうち、ケーブルテレビでは、ヘッドエンド局が周波数多重した複数の映像信号を、同軸ケーブルや光ファイバケーブルなどの伝送媒体を介して各家庭で受信する。
【0003】
図3は、放送システムの構成図である。同図は、光ファイバケーブルを用いたケーブルテレビの一般的な配信構成を示す。送信設備1は、放送設備10及び光送信器11を有する。放送設備10は、90MHz~770MHzの帯域にあるVHF/UHF帯の映像信号、及び、1GHz~2.1GHz帯のBS/CS110°衛星右旋円偏波中間周波数帯映像信号(以下、BS/CS右旋IF信号とよぶ)を光送信器11に送出する。なお、放送設備10は、これら以外の信号の映像信号を送出する場合もあるが、本図では割愛する。以下では、各チャンネルの映像信号を、チャンネル信号とも記載する。
【0004】
VHF/UHF帯の映像信号としては、具体的には地上波放送の再放送信号の他に、映像コンテンツ制作会社から供給されるチャンネルの映像信号、あるいはケーブルテレビ事業者がサービス提供地域向けに自局で制作するチャンネル(以下、地域制作チャンネルとよぶ)の映像信号がある。
【0005】
光送信器11は、これらの映像信号を光信号に変換し、光ファイバケーブルを用いて構成される光ネットワーク3を経由して、各加入者宅2-1~2-n(nは1以上の整数)に設置されている光受信器20-1~20-nに分配する。同図では、加入者宅2-1~2-nを総称して加入者宅2と記載している。また、同図では省略しているが、光ネットワーク3は、伝送距離を拡大するため、あるいは複数の加入者に分配するための光増幅器、光分岐器、光伝送路などから構成される。
【0006】
光信号の伝送方式として、強度変調方式と、FM一括変換方式(例えば、非特許文献1参照)とがあり、それぞれ実用化されている。強度変調方式では、周波数多重された映像信号を光の強度変調信号に変換して伝送する。FM一括変換方式では、周波数多重された信号を一括して1つのFM信号に変換し(以下、FM一括変換信号とよぶ)、FM一括変換信号を光の強度変調信号に変換する。FM一括変換方式は、強度変調方式に比べて光送信器および光受信器の構成が複雑になるが、雑音の影響を受けにくく、同等の品質の映像信号でより長距離の伝送が可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】"Transmission equipment for transferring multi-channel television signals over optical access networks by frequency modulation conversion,” Recommendation ITU-T J.185, 2012年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、伝送路の光化あるいはデジタル化技術を背景に、従来は複数の送信設備でカバーしていたエリアに対して、1つの送信設備から光信号を送出することが可能となっている。
図4は、ひとつの集約局送信設備4が、複数の地域局設備9-1、9-2、…(総称して、地域局設備9と記載)のエリアをカバーする場合の放送システムの構成例を示す。同図において、
図3に示す放送システムと同一の部分には同一の符号を付している。各地域局設備9-1、9-2、…がそれぞれカバーするエリアは、
図3における1台の送信設備1がカバーするエリアに対応する。集約局送信設備4の光送信器41と、地域局設備9-1、9-2とはそれぞれ、光ネットワーク6-1、6-2を経由して接続される。地域局設備9-1には、集約局送信設備4の光送信器41から送信された光信号を中継伝送する光中継伝送器90が設置される。他の地域局設備9-2、…においても同様であるが、図中では割愛する。また、地域局設備9-1の光中継伝送器90と加入者宅2-1~2-nそれぞれに設置される光受信器20-1~20-nとは、光ネットワーク3により接続される。
【0009】
ここで、集約局送信設備4の放送設備10が出力した映像信号を、地域局設備9を経由して加入者宅2に配信する方式として、例えば、以下の二つがある。一つは、集約局送信設備4から地域局設備9まで映像信号をデジタルベースバンド信号で配信した後に、地域局設備9においてそれらデジタルベースバンド信号を周波数多重された信号に変換して加入者宅2に配信する方式である。もう一つは、集約局送信設備4から加入者宅2まで、各チャンネルの映像信号が周波数多重された信号を配信する方式である。チャンネル毎に使用する周波数が異なる。以降では、これら2つのうちの後者の場合を対象として述べる。
【0010】
図4の構成を適用する場合、従来、地域局設備9において制作していた地域制作チャンネルの映像信号を、集約局送信設備4から送信される信号に追加する必要がある。この追加の方法としては、
図5および
図6に示す構成により行われるものが考えられる。
【0011】
図5は、地域制作チャンネルの映像信号を集約局送信設備において挿入する方式の放送システムの概略構成図である。同図において、
図4に示す放送システムと同一の部分には同一の符号を付している。同図に示す放送システムは、
図4に示す集約局送信設備4及び放送局設備9-1、9-2、…に代えて、集約局送信設備4a及び放送局設備9a-1、9a-2、…(総称して放送局設備9aと記載)を備える。放送局設備9a-2、…は、放送局設備9a-1と同じ構成である。地域局設備9a-1の送信器92は、放送設備91が出力した地域制作チャンネルの映像信号(地域制作チャンネル信号ソース)を送信する。集約局送信設備4aの受信器42は、この映像信号を、ネットワーク7を経由して受信する。ネットワーク7を流れる伝送信号は、光信号あるいは電気信号である。集約局送信設備4aの放送設備40は、VHF/UHF帯の映像信号及びBS/CS右旋IF信号に、受信器42から入力した映像信号を周波数多重したのち、光送信器41から配信する。
【0012】
図6は、地域制作チャンネルの映像信号を地域局設備において挿入する方式の放送システムの概略構成図である。同図において、
図4に示す放送システムと同一の部分には同一の符号を付している。同図に示す放送システムは、
図4に示す放送局設備9-1、9-2、…に代えて、放送局設備9b-1、9b-2、…(総称して放送局設備9bと記載)を備える。放送局設備9b-2、…は、放送局設備9b-1と同じ構成である。本方式の場合、地域局設備9b-1は、集約局送信設備4から受信した光信号を光受信器93で映像信号(電気信号)に戻す。混合器94は、放送設備91から出力される映像信号(地域制作チャンネル信号ソース)を、光受信器93が戻した電気信号の空いている周波数帯域を用いて混合する。光送信器95は、混合器94により混合された映像信号を、再び光信号として出力する。光送信器95から出力された光信号は、さらに光中継伝送器を経由して中継・伝送される場合がある。
【0013】
図5に示す方式の場合、各地域局設備9aから集約局送信設備4aまでの伝送設備を用意する必要があり、
図6に示す方式と比較し、設備費用や保守の観点で課題がある。別の課題としては、放送設備40からの信号に含まれる地上波放送の再放送信号の中に、地域局設備9a-1の配信エリアについては再送信合意が得られているが、地域局設備9a-2の配信エリアでは再送信同意が得られていないチャンネル信号が含まれている場合、地域局設備9a-2において当該チャンネル信号の削除が必要となり、さらなる設備費用の増大が発生することがあげられる。そのため、
図6の方式の方が設備費用や保守の観点で優れている。
【0014】
ここで、伝送方式が強度変調方式の場合は、光受信器93及び光送信器95には線形性の高い光電気変換機能、電気光変換機能があればよい。
図7は、伝送方式が強度変調方式である場合に
図6の光受信器93及び光送信器95として用いられる光受信器93a及び光送信器95aの構造の概略図である。光信号81は光受信器93aの光電気変換部により電気信号の映像信号82へと変換される。変換された映像信号82は電気信号増幅部で増幅され、混合器94により地域制作チャンネルの映像信号83と混合されて映像信号84となる。映像信号84は、光送信器95aの電気光変換部で光信号85へと変換され、光信号増幅部で増幅されて出力される。
【0015】
一方、
図8は、伝送方式がFM一括変換方式である場合に
図6の光受信器93及び光送信器95として用いられる光受信器93b及び光送信器95bの構造の概略図である。光信号86は、光受信器93bの光電気変換部でFM一括変換信号87に変換された後、FM復調部で映像信号82へと復調される。さらに、映像信号82は電気信号増幅部で増幅される。
図7の場合と同様に混合器94により映像信号82と地域制作チャンネルの映像信号83とが混合された映像信号84は、光送信器95bのFM変調部でFM一括変換信号88へと再変調される。FM一括変換信号88は、電気光変換部で光信号89へと変換された後、光信号増幅部で増幅されて出力される。従って、伝送方式がFM一括変換方式の場合は、強度変調方式の場合と比較し、光受信器93bにFM復調機能が必要となり、光送信器95bにFM変調機能が必要となる。特に、FM変調を行う場合は、非特許文献1に記載のように、中心周波数が3GHzで、変調信号が2.1GHz程度までのFM変調器を用意する必要がある。この方式では、FM一括変換方式の特長である雑音の影響を受けにくいという利点を享受できる反面、設備コストが高くなるという課題がある。なお
図7および
図8は基本構成図であり、実際の装置内には本図に含まれない機能を有する場合もあるが、信号処理の流れは変わらないため割愛している。
【0016】
上記事情に鑑み、本発明は、FM一括変換方式を用いた映像信号に対して、多重される映像信号の変更を低コストで行うことができる多重信号変更装置及び多重信号変更方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様は、各チャンネルの映像信号であるチャンネル信号が周波数多重された信号を一括してFM変調して得られたFM一括変換信号を、互いに位相が90度異なる第一信号及び第二信号に分岐する分岐部と、前記FM一括変換信号に多重された一部の消去対象の前記チャンネル信号と同じ周波数帯域を使用し、かつ、消去対象の当該チャンネル信号と相関を持たない信号と、前記FM一括変換信号における空き周波数帯域に追加するチャンネル信号とのいずれかである又は両方を含む第三信号と、前記第一信号とを混合した混合信号を出力する周波数混合部と、前記混合信号と前記第二信号とを合波する合波部と、を備える多重信号変更装置である。
【0018】
本発明の一態様は、各チャンネルの映像信号であるチャンネル信号が周波数多重された信号を一括してFM変調して得られたFM一括変換信号を、互いに位相が90度異なる第一信号及び第二信号に分岐する分岐ステップと、前記FM一括変換信号に多重された一部の消去対象の前記チャンネル信号と同じ周波数帯域を使用し、かつ、消去対象の当該チャンネル信号と相関を持たない信号と、前記FM一括変換信号における空き周波数帯域に追加するチャンネル信号とのいずれかである又は両方を含む第三信号と、前記第一信号とを混合した混合信号を生成する混合ステップと、前記混合信号と前記第二信号とを合波する合波ステップと、を有する多重信号変更方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、FM一括変換方式を用いた映像信号に対して、多重される映像信号の変更を低コストで行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態による放送システムの概略構成図である。
【
図2】同実施形態による多重信号変更装置のブロック図である。
【
図3】従来技術の放送システムの概略構成図である。
【
図4】従来技術の放送システムの概略構成図である。
【
図5】従来技術の地域制作チャンネルを集約局送信設備において挿入する方式の放送システムの概略構成図である。
【
図6】従来技術の地域制作チャンネルを地域局設備において挿入する方式の放送システムの概略構成図である。
【
図7】従来技術の強度変調方式を用いる場合の光受信器及び光送信器の内部構成の概要図である。
【
図8】従来技術のFM一括変換方式を用いる場合の光受信器及び光送信器の内部構成の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態による放送システム100の概略構成図である。同図において、
図6に示す放送システムと同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。同図では、集約局送信設備4から加入者宅2までのシステムについて示している。同図に示す放送システム100が
図6に示す放送システムと異なる点は、地域局設備9b-1、9b-2、…に代えて、地域局設備5-1、5-2、…(総称して、地域局設備5と記載)を備える点である。地域局設備5-2、…は、地域局設備5-1と同様の構成である。
【0023】
地域局設備5-1は、光中継伝送器50、放送設備51及び多重信号変更装置52を備える。光中継伝送器50には、
図4及び
図5に示す光中継伝送器90と同じものを用いることができ、放送設備51には、
図5及び
図6に示す放送設備91と同じものを用いることができる。よって、本実施形態は、
図6に示す放送システムにおける地域局設備9b-1の光受信器93、混合器94及び光送信器95に代えて、多重信号変更装置52及び光中継伝送器50を備えた構成とすることができる。
【0024】
本実施形態において多重信号変更装置52は、チャンネル挿入装置として動作する。すなわち、多重信号変更装置52は、集約局送信設備4の光送信器41から送信された光信号と、放送設備51が出力した地域制作チャンネルの映像信号(地域制作チャンネル信号ソース)83の両方を入力し、これらを合成して光信号として光中継伝送器50に出力する。光中継伝送器50から出力された光信号は、さらに他の光中継伝送器を経由して、加入者宅2へ中継・伝送される場合がある。
【0025】
図2は、多重信号変更装置52の内部構成の概略図である。多重信号変更装置52は、光電気変換部521、90°ハイブリッド部522、レベル調整部523、周波数混合部524、合成部525及び電気光変換部526を備える。光入力信号は、例えば、集約局送信設備4の光送信器41から受信した光信号である。光入力信号は、非特許文献1に記載のように、FM一括変換方式によるFM信号によって強度変調された光信号である。
【0026】
光電気変換部521は、光入力信号を電気信号に変換する。90°ハイブリッド部522は、変換された電気信号を2つの信号に分岐する。90°ハイブリッド部522は、2つの出力の位相が互いに90°異なるように分岐するものであるため、2分岐器と、その2分岐器が2つに分岐した出力の一方に挿入された90°移相器とにより代用することも可能である。
【0027】
レベル調整部523は、90°ハイブリッド部522により2分岐された電気信号の一方を、必要に応じて適切なレベルに調整する。周波数混合部524は、レベル調整部523によりレベルが調整された電気信号と、外部からの電気信号である外部信号との混合波を生成する。周波数混合部524へ入力される外部信号は、この多重信号変更装置52を備える地域局設備5-i(iは1以上の整数)において追加挿入したいチャンネル信号、すなわち、映像信号(地域制作チャンネル信号ソース)83である。チャンネル信号を挿入するチャンネルは、1チャンネルとは限らない。つまり、光入力信号に空き帯域があり、また加入者宅2において受信する信号品質に影響ない範囲であれば、外部信号は、複数チャンネルのチャンネル信号を周波数多重した信号であってもよい。合成部525は、周波数混合部524からの出力と、90°ハイブリッド部522からの他方の出力とを周波数多重する。電気光変換部526は、合成部525が周波数多重した電気信号を光信号に変換した後、光出力信号として送出する。
【0028】
なお、加入者宅2で受信する信号品質に影響ない範囲であれば、本実施形態の多重信号変更装置52を多段に接続することができる。
【0029】
多重信号変更装置52における90°ハイブリッド部522から合成部525までの構成は、FM変調器の1つであるアームストロングFM変調器と同等の構成である。アームストロングFM変調器については、例えば、文献「伊東 祐弥,藤井 章,“わかりやすいFM技術”,廣済堂産報出版」に記載されている。
【0030】
アームストロング変調器は、入力信号として搬送波、周波数混合部524への入力信号として変調信号の積分器通過後の信号を印加する。具体的には、搬送波の角周波数をωc、変調信号の角周波数をωsとしたときに、搬送波fc(t)は式(1)により、変調信号fs(t)は式(2)により表される。
【0031】
【0032】
【0033】
ただし、Acは搬送波の振幅であり、tは時間である。このとき、出力信号ffm(t)は、以下の式(3)となる。
【0034】
【0035】
ただし、mfはFM変調度を表す。上記の式(3)は、以下のFM変調信号の式(4)に近似できる。
【0036】
【0037】
そのため、アームストロング変調器をFM変調器として使用することができる。
【0038】
本実施形態では、搬送波として式(1)の代わりにFM一括変換された信号を入力信号とし、式(2)の変調信号として挿入するチャンネル信号を用い、積分器を介さずに直接周波数混合部524に入力している。積分器を介さなくてもよいのは、挿入する1つのチャンネル信号の帯域の最低周波数と最高周波数の比が1に近似できる場合は、積分器を介さなくても受信される信号品質への影響がほとんどないことを利用したものである。
【0039】
搬送波に代えてFM一括変換信号を用いることにより、不要なひずみ成分が発生し、品質が劣化する虞がある。しかし、実際のシステムでは、品質劣化により伝送路にて誤りが発生したとしても、チャンネル信号に標準方式として使用されている誤り訂正符号(リードソロモン符号)で訂正可能な範囲であれば問題とはならない。
【0040】
アームストロングFM変調器の技術を光信号の伝送路に対して用いることで、従来は行っていなかった、FM一括変換信号を復調せずに別のFM信号を追加することが可能となる。
【0041】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、地域局設備において、集約局送信設備から受信した映像信号にチャンネル信号を追加していたが、本実施形態では、受信した映像信号に多重されている一部のチャンネル信号を視聴できないようにする。本実施形態では、第1の実施形態との差分を中心に説明する。本実施形態の放送システムの構成及び多重信号変更装置の構成は、第1の実施形態と同じである。本実施形態では、多重信号変更装置52は、FM一括変換信号に多重されている各チャンネルの映像信号のうち、一部のチャンネルの映像信号に雑音を与えて視聴できないようにするチャンネル消去装置として動作する。
【0042】
本実施形態では、
図2に示す多重信号変更装置52の周波数混合部524への外部信号としてチャンネル消去用信号を入力する。チャンネル消去用信号は、FM一括変換信号として集約局送信設備4から送信された複数のチャンネル信号のうち一部の消去対象のチャンネル信号(以下、消去対象チャンネル信号)と同じ6MHz帯域幅に収まり、かつ、消去対象チャンネル信号とは相関を持たない信号である。相関を持たない信号とは、例えば、ランダムパターンで変調されたOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)信号又は多値QAM(Quadrature Amplitude Modulation)信号、あるいは、雑音信号である。つまり、本実施形態の外部信号は、消去対象チャンネル信号への雑音として作用する。この外部信号の信号レベルを、消去対象チャンネル信号の所要S/N(Signal to Noise)比を満足しないレベルに設定することで、消去対象チャンネル信号の復調が不可能な状態とし、消去を実現する。多重信号変更装置52は、こうような外部信号を、90°ハイブリッド部522により2分岐された信号の一方に混合することにより、例えば、
図1に示す集約局送信設備4から配信され、地域局設備5-2には配信するが、地域局設備5-1には配信できない映像信号のみを消去することができる。
【0043】
なお、消去対象チャンネル信号は1つとは限らず、地域局設備5から配信する信号に影響がない範囲であれば、複数のチャンネル信号を消去することができる。また、加入者宅2で受信する信号品質に影響ない範囲であれば、本実施形態の多重信号変更装置52を多段に接続することができる。
【0044】
(第3の実施形態)
第1の実施形態では、地域局設備が受信した映像信号にチャンネル信号を追加し、第2の実施形態では、地域局設備が受信した映像信号に多重されている一部のチャンネル信号を消去していたが、本実施形態では、その両方を行う。本実施形態では、第1の実施形態との差分を中心に説明する。本実施形態の放送システムの構成及び多重信号変更装置の構成は、第1の実施形態と同じである。
【0045】
図2に示す多重信号変更装置52の周波数混合部524へ挿入する外部信号を複数のチャンネルの信号とする場合、その信号の一部を、新たに挿入する1以上のチャンネル信号とし、他の一部の信号を、消去するチャンネル信号とは相関を持たない信号である1以上のチャンネル消去用信号とし、組み合わせて用いることもできる。こうすることで、一台の多重信号変更装置52により、映像信号へのチャンネル信号の挿入とチャンネル信号の消去とを同時に行うことができる。
【0046】
また、加入者宅2で受信する信号品質に影響ない範囲であれば、本実施形態の多重信号変更装置52を多段に接続することができる。
【0047】
以上説明した実施形態によれば、多重信号変更装置は、分岐部と、周波数混合部と、合波部と、を備える。分岐部は、例えば、90°ハイブリッド部522である。分岐部は、各チャンネルの映像信号であるチャンネル信号が周波数多重された信号を一括してFM変調して得られたFM一括変換信号を、互いに位相が90度異なる第一信号及び第二信号に分岐する。第一信号は、周波数混合部に出力され、第二信号は、合成部に出力される。周波数混合部は、第一信号と第三信号とを混合した混合信号を出力する。第三信号は、例えば、周波数混合部524に入力される外部信号である。第三信号は、チャンネル追加を行う場合は、FM一括変換信号における空き周波数帯域に追加する一以上のチャンネル信号であり、FM一括変換信号に多重された一部のチャンネル信号を消去する場合は、消去対象のチャンネル信号と同じ周波数帯域を使用し、かつ、当該消去対象のチャンネル信号と相関を持たない信号である。第三信号は、それら両方の信号を含んでもよい。合波部は、混合信号と、第二信号とを合波する。
【0048】
以上説明した実施形態によれば、集約局送信設備からFM一括変換方式で映像を配信し、途中にある地域局設備においてFM復調及びFM再変調を行うことなく、地域制作チャンネルの映像信号の挿入、あるいは地域局の配信エリアに対して再送信同意されていないチャンネルの映像信号の視聴制限を可能とする。よって、各地域局設備から集約局送信設備に地域制作チャンネルの映像信号を送信するための伝送設備を用意する必要がなく、各地域局設備にFM復調器及びFM変調器を用意する必要もない。よって、FM一括変換方式を用いた放送システムの設備コストを軽減するができる。
【0049】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1…送信設備, 2、2-1~2-n…加入者宅, 3、6-1、6-2…光ネットワーク, 4、4a…集約局送信設備, 5、5-1、5-2、9、9-1、9-2、9a、9a-1、9a-2、9b、9b-1、9b-2…地域局設備, 7…ネットワーク, 10、51、91…放送設備, 11、41…光送信器, 20-1~20-n…光受信器, 42…受信器, 50、90…光中継伝送器, 52…多重信号変更装置, 92…送信器, 93、93a、93b…光受信器, 94…混合器, 95、95a、95b…光送信器, 100…放送システム, 521…光電気変換部, 522…90°ハイブリッド部, 523…レベル調整部, 524…周波数混合部, 525…合成部, 526…電気光変換部