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特許7084850低脂肪可塑性油中水型乳化油脂組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】低脂肪可塑性油中水型乳化油脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/015 20060101AFI20220608BHJP
   A23D 7/005 20060101ALI20220608BHJP
   A23D 7/02 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
A23D7/015 500
A23D7/005
A23D7/02 500
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018212824
(22)【出願日】2018-11-13
(65)【公開番号】P2020078262
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】711002926
【氏名又は名称】雪印メグミルク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】泉井 亮太
(72)【発明者】
【氏名】門脇 喬之
(72)【発明者】
【氏名】金野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】久保内 宏晶
【審査官】吉海 周
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-270768(JP,A)
【文献】特開平06-237690(JP,A)
【文献】特開平03-206841(JP,A)
【文献】特開平05-049398(JP,A)
【文献】特開平06-030699(JP,A)
【文献】特開平09-234359(JP,A)
【文献】特開昭59-063136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D
C11B
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油相を調製する工程と、
水相を調製する工程と、
前記油相と前記水相から水中油型乳化油脂組成物を調製する工程と、
前記水中油型乳化油脂組成物を殺菌する工程と、を備え、さらに
前記殺菌した水中油型乳化油脂組成物を油中水型乳化油脂組成物に転相する工程と、
前記油中水型乳化油脂組成物を水中油型乳化油脂組成物に再転相する工程と、を備え
前記油相が、HLBが3以下のポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを0.15~0.85質量%含むことを特徴とする低脂肪可塑性油中水型乳化油脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記水中油型乳化油脂組成物中の20℃における固体脂含量が2.5~15%であり、
かつ
前記水相にゼラチン、多糖類、加工澱粉から選択される1つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の低脂肪可塑性油中水型乳化油脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低脂肪可塑性油中水型乳化油脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに極端に油分の低いファットスプレッドをはじめとする低脂肪可塑性油中水型乳化油脂組成物の製造方法について、例えば、特許文献1,2(特開2010-29120号公報や特開2016-178892号公報)などには、水相にイヌリンや酸化澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉を加える処方が開示されている。これまでの低脂肪可塑性油中水型乳化油脂組成物の製造法では、油相中に水相を添加し、油中水型乳化油脂組成物(W/O型)を形成した後に、この油中水型乳化油脂組成物を冷却、混練し、固化して最終製品である低脂肪可塑性油中水型乳化油脂組成物とする工程が取られていた。
【0003】
しかしながら、これらの製造方法においては、極度に油分の少ない油中水型乳化油脂組成物を形成する際に、油相中に水相を、時間をかけて微量ずつ添加するなど、安定な油中水型乳化油脂組成物を得る特殊な手法が必要であるという課題があった。また、同油中水型乳化油脂組成物の粘度が著しく高くなってしまい、従来のマーガリンやファットスプレッドなどの可塑性油中水型乳化油脂組成物を製造する既存の工程において、製造背圧が過剰になり、通液が困難になるなどの課題があった。
【0004】
これらの課題を解決するために、最初に容易に形成しうる水中油型乳化油脂組成物(O/W型)を形成した後に、この水中油型乳化油脂組成物を転相させ、安定した油中水型乳化油脂組成物を作り、これを可塑性油中水型乳化油脂組成物とする手法が知られており、これまでに転相を生じさせるためのいくつかの解決手段が開示されている。
【0005】
例えば、特許文献3,4(特開昭58-13351号公報、特開昭61-185332号公報)などは、水中油型乳化油脂組成物から油中水型乳化油脂組成物への転相を課題とし、その解決手段として水中油型乳化油脂組成物を調製後、気体を吹き込むか、または油を添加するという工程を組み込むことによる転相方法を開示している。
特許文献5(特公昭62-40975号公報)は、糖類や粉飴などで所定の粘度に増粘させた水相を用いた水中油型乳化油脂組成物を、密閉型冷却攪拌装置中で攪拌することによって安定な油中水型乳化油脂組成物を得る転相方法を開示している。
特許文献6(特開平6-237690号公報)は、製造工程中での水中油型乳化油脂組成物から油中水型乳化油脂組成物への連続的な転相を課題とし、その解決手段としてラインミルやビスコローターなどの高速せん断乳化機を製造ライン中に組み込み、水中油型乳化油脂組成物へのせん断の印加による転相方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-29120号公報
【文献】特開2016-178892号公報
【文献】特開昭58-13351号公報
【文献】特開昭61-185332号公報
【文献】特公昭62-40975号公報
【文献】特開平6-237690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、いずれの文献にも、水中油型乳化油脂組成物から油中水型乳化油脂組成物への転相が生じる油脂の組成については言及されていなかった。また、マーガリンやファットスプレッド類を主とした可塑性油中水型乳化油脂組成物は製品形成後、未充填の製品を再び融解し、初発の水中油型乳化油脂組成物を保持するタンクに戻る連続的な循環製造を基本構成とするなかで、いずれの文献においても、循環製造を想定した工程に関する示唆がされていなかった。
【0008】
本発明の課題は、油分を少量しか含まない低脂肪可塑性油中水型乳化油脂組成物の製造に関し、既存のマーガリンやファットスプレッド類の製造ラインを用いた低脂肪可塑性油中水型乳化油脂組成物を連続的に循環製造する新たな方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明には以下の構成が含まれる。すなわち、油分を15~50質量%とする低脂肪可塑性油中水型乳化油脂組成物の製造方法において、20℃における固体脂含量を2.5~15%とした水中油型乳化油脂組成物を調製し、この低粘度の水中油型乳化油脂組成物をプレート式熱交換器中に通液させた後、冷却して製造ライン中で油中水型乳化油脂組成物に転相させて製品の可塑性油中水型乳化油脂組成物とする。その後、一部の余剰の製品を融解する工程を経て、溶融した油中水型乳化油脂組成物に0.3~2MPa圧力を印加して再び転相させ、水中油型乳化油脂組成物を経ることで循環可能にする方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、油分を15~50質量%とする低脂肪可塑性油中水型乳化油脂組成物を連続的に循環製造する新たな方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明における製造方法について以下に詳細に説明する。
(低脂肪可塑性油中水型乳化油脂組成物の製造方法)
本発明は油脂を15~50質量%含む低脂肪可塑性油中水型乳化油脂組成物の製造方法に関する。
【0012】
(低脂肪可塑性油中水型乳化油脂組成物の原材料)
(油脂)
上述のとおり、本発明は油脂を15~50質量%含む低脂肪可塑性油中水型乳化油脂組成物の製造方法に関する。低脂肪可塑性油中水型乳化油脂組成物の製造の際に調製する水中油型乳化油脂組成物は、20℃における固体脂含量が2.5~15%のものが好ましく、20℃における固体脂含量が3~10%のものがより好ましい。一方、固体脂含量が2.5質量%未満では水中油型乳化油脂組成物から油中水型乳化油脂組成物への転相が生じにくくなる、あるいは過剰なせん断力を要し、15質量%を超えると最終製品の組織が固く、食感が劣ったものになる。
本発明の製造方法に用いる油脂は、水中油型乳化油脂組成物の20℃における固体脂含量が2.5~15%となるよう、1つ、あるいは複数の油脂を組み合わせて用いることができる。油脂としては、菜種油、大豆油、パーム油、パーム核油、コーン油、サフラワー油、ヒマワリ油、ゴマ油、エゴマ油、ヤシ油、乳脂肪、魚油、牛脂、豚脂等の広範な種類の動植物油脂、およびこれらに完全水素添加、部分水素添加、エステル交換、分別等の処理を施した加工油脂等が例示でき、これらを単独、あるいは複数用いて水中油型乳化油脂組成物の20℃における固体脂含量が2.5~15%となるよう調製すればよい。
水中油型乳化油脂組成物の固体脂含量は、核磁気共鳴法によって測定した水中油型乳化油脂組成物から抽出した油脂中の固体脂含量に、配合中の油分を乗じて測定することができる。
【0013】
(安定剤)
本発明の製造方法に用いる安定剤は、ゼラチン、寒天、多糖類、加工澱粉、発酵セルロース、アラビアガムなど、食品、食品添加物として許容されるものを用いることができ、このうちゼラチンが好ましい。安定剤の添加量は、0.5~5質量%である。0.5質量%未満だと乳化が安定せず低脂肪可塑性油中水型乳化油脂組成物に離水が生じる。一方、5質量%を超えると低脂肪可塑性油中水型乳化油脂組成物の組織が固く、食感が劣ったものになる。
【0014】
(乳化剤)
本発明の製造方法に用いる乳化剤は、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)が5以下のポリグリセリン脂肪酸エステルや、HLBが3以下のポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(以下「PGPR」ともいう。)を、油中水型乳化を安定化させる乳化剤として例示することができ、このうちPGPRが好ましい。HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル、HLBが3以下のPGPRは、これらの1種類以上を0.05~1質量%となるように添加することが好ましい。0.05質量%未満では油中水型乳化を安定に維持できず、反対に、1質量%を超えると油中水型乳化油脂組成物から水中油型乳化油脂組成物への転相が生じにくくなるばかりでなく、風味発現性が劣ったものになる。
【0015】
(その他原材料)
循環製造を妨げない範囲で、マーガリンやファットスプレッド類を主とした可塑性油中水型乳化油脂組成物に一般的に使用されている原材料を用いることができる。それらは、風味付与のための食塩、香料、酸味料、甘味料、乳素材等、また、着色のための色素等、さらには、抗酸化剤、保存料等が例示される。
【0016】
(製造工程)
本発明の製造方法は、(イ)油相を調製する工程と、(ロ)水相を調製する工程と、(ハ)油相と水相から水中油型乳化油脂組成物を調製する工程と、(ニ)水中油型乳化油脂組成物を殺菌する工程と、を備え、さらに(ホ)殺菌した水中油型乳化油脂組成物を油中水型乳化油脂組成物に転相する工程と、(ヘ)油中水型乳化油脂組成物を水中油型乳化油脂組成物に再転相する工程と、を備える。なお、(イ)、(ロ)工程には経時的要素が含まれないため、どちらかが先に行われてもよく、また両工程が同時に行なわれてもよい。以下、各工程毎に説明する。
【0017】
(油相の調製工程)
油相に用いる油脂は、水中油型乳化油脂組成物の20℃における固体脂含量が2.5~15%となるよう選択する。これらの原材料油脂をその融点以上に加温し、この加温した油脂中に乳化剤等の油系原料を添加溶解して油相を調製する。油系原料は、本発明の効果を妨げない範囲でグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤や、βカロテン等の色素、油溶性ビタミン等の抗酸化剤を用いることができる。
【0018】
(水相の調製工程)
約40℃~70℃に温度調整した温水に食塩、乳素材、乳化剤、安定剤等として例示できる水系原材料を添加し、攪拌溶解して、水相を調製する。
【0019】
(水中油型乳化油脂組成物から油中水型乳化油脂組成物への転相工程)
水中油型乳化油脂組成物から油中水型乳化油脂組成物への転相は特許文献5,6(特公昭62-40975号公報や特開平6-237690号公報)にしたがって実施する。すなわち、乳化タンク内で所定量の水相中に攪拌しながら油相を入れて調製した低粘度の水中油型乳化油脂組成物を、ロータリーポンプによりパイプラインを経てプレート式熱交換機に送液し、水中油型乳化油脂組成物を加熱殺菌(63~120℃)した後、15~50℃に冷却する。その後、パイプラインを経て密閉式急冷可塑化装置または高速せん断装置に搬送する。ここで水中油型乳化油脂組成物から油中水型乳化油脂組成物に転相される。さらに得られた油中水型乳化油脂組成物を冷却、可塑化し、ついでパイプラインを経て混練装置にて混練・均質化し、出口から製品として充填機に搬送する。
最終製品は通常はカップやカートンなどの包装形態で充填し、充填されない余剰な油中水型乳化油脂組成物をリメルトと呼ばれる融解工程に搬送する。
【0020】
(油中水型乳化油脂組成物から水中油型乳化油脂組成物への転相工程)
低脂肪油中水型乳化油脂組成物のように、乳化安定性を高めるために乳化力を強化した配合で処方した油中水型乳化油脂組成物は、融解工程で溶融した後も安定な油中水型乳化を維持する。そのため、そのままの状態で初発の水中油型乳化油脂組成物タンクに搬送すると、タンク内で二重乳化の形成や水中油型乳化から油中水型乳化への転相が生じる。そこで、溶融した油中水型乳化油脂組成物を直径が、0.2mm~2mmの細孔に0.3MPa~2MPaの圧力で通液したり、ラインミルなどの高速せん断装置を組み込んで油中水型乳化油脂組成物にせん断を印加したりすることで、油中水型乳化油脂組成物から転相した水中油型乳化油脂組成物を得ることができる。
その際の温度は80~90℃が好ましい。得られた水中油型乳化油脂組成物は、タンクに搬送して循環が可能となる。細孔への圧入時の圧力が0.3MPa未満であれば転相は生じず、反対に2MPaより過剰であれば油滴が細かくなりすぎ、水中油型乳化油脂組成物の乳化が過剰に安定化してしまうため、以後の油中水型乳化油脂組成物への転相が困難になる。
【実施例
【0021】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
[実施例1]
(水相の調製)
ゼラチン3kg、食塩1kgを約65℃の温水65kgに溶解し、水相69kgを得た。
(油相の調製)
菜種極度硬化油、食用精製加工油脂(融点42℃)および菜種白絞油(1:4:20(質量比))からなる混合油脂30kgを65℃に加温し、この油脂にPGPR0.1kg、グリセリン脂肪酸エステル0.5kgを添加し、溶解させて油相31kgを得た。
(水中油型乳化油脂組成物の調製)
調製した水相をタンク中にてアジテータで攪拌しながら、調製した油相を添加し、水中油型乳化油脂組成物を得た。この水中油型乳化油脂組成物の20℃における固体脂含量は3.9%であった。
(油中水型乳化油脂組成物の製造)
上記水中油型乳化油脂組成物をロータリーポンプによりパイプラインを経てプレート式熱交換機に送液し、90℃15秒間で加熱殺菌した後、45℃になるよう冷却した。その後、高圧ポンプで水中油型乳化油脂組成物をシリンダー回転数が600rpmの密閉式急冷可塑化装置に搬送して攪拌冷却して転相させて10℃まで冷却し、これを直ちに混練装置で混練・均質化し、低脂肪可塑性油中水型乳化油脂組成物を得た。
(水中油型乳化油脂組成物への転相)
低脂肪可塑性油中水型乳化油脂組成物を融解工程に搬送し、90℃で低脂肪可塑性油中水型乳化油脂組成物を融解した。融解して得られた油中水型乳化油脂組成物を、ロータリーポンプを用いて直径2mmの細孔に0.5MPaで通液して転相させ、得られた水中油型乳化油脂組成物を水中油型乳化油脂組成物タンクに搬送し、循環させることができた。
【0023】
[実施例2]
(水相の調製)
実施例1と同様に調製した。
(油相の調製)
菜種極度硬化油、食用精製加工油脂(融点42℃)および菜種白絞油(1:4:20(質量比))からなる混合油脂22kgを65℃に加温し、この油脂にPGPR0.2kg、グリセリン脂肪酸エステル0.5kgを添加し、溶解させて油相23kgを得た。
(水中油型乳化油脂組成物の調製)
実施例1と同様に調製した。この水中油型乳化油脂組成物の20℃における固体脂含量は3.3質量%であった。
(油中水型乳化油脂組成物の製造)
上記水中油型乳化油脂組成物をロータリーポンプによりパイプラインを経てプレート式熱交換機に送液し、90℃20秒間で加熱殺菌した後、40℃になるよう冷却した。その後、高圧ポンプで水中油型乳化油脂組成物をシリンダー回転数が800rpmの密閉式急冷可塑化装置に搬送して攪拌冷却して転相させて10℃まで冷却し、これを直ちに混練装置で混練・均質化し、低脂肪可塑性油中水型乳化油脂組成物を得た。
(水中油型乳化油脂組成物への転相)
低脂肪可塑性油中水型乳化油脂組成物を融解工程に搬送し、90℃で低脂肪可塑性油中水型乳化油脂組成物を融解した。融解して得られた油中水型乳化油脂組成物を、ロータリーポンプを用いて直径2mmの細孔に0.5MPaで通液して転相させ、得られた水中油型乳化油脂組成物を水中油型乳化油脂組成物タンクに搬送し、循環させることができた。
【0024】
[比較例1]
(水相の調製)
実施例1と同様に調製した。
(油相の調製)
食用精製加工油脂(融点42℃)および菜種白絞油(4:20(質量比))からなる混合油脂22kgを65℃に加温し、この油脂にPGPR0.2kg、グリセリン脂肪酸エステル0.5kgを添加し、溶解させて油相23kgを得た。
(水中油型乳化油脂組成物の調製)
実施例1と同様に調製した。この水中油型乳化油脂組成物の20℃における固体脂含量は2.2%であった。
(油中水型乳化油脂組成物の製造)
上記水中油型乳化油脂組成物をロータリーポンプによりパイプラインを経てプレート式熱交換機に送液し、90℃20秒間で加熱殺菌した後、40℃になるよう冷却した。その後、高圧ポンプで水中油型乳化油脂組成物をシリンダー回転数が800rpmの密閉式急冷可塑化装置に搬送して攪拌冷却したが、転相が生じなかった。
この結果から、20℃における水中油型乳化油脂組成物の固体脂含量が2.2質量%である比較例1では転相が生じないことがわかった。
【0025】
[実施例3、4および比較例2、3]
表1に示す配合に従い、油相が30質量%、菜種極度硬化油:食用精製加工油脂:大豆白絞油=1:3:18(質量比)の割合の水中油型乳化油脂組成物の、水中油型乳化から油中水型乳化への転相ならびに、油中水型乳化から水中油型乳化への転相を試みた。
【0026】
【表1】
【0027】
安定して転相した場合を○、転相が生じなかった場合もしくは転相後に元の乳化相に再転相した場合を×として評価した結果を表1に示した。
表1から明らかなように、PGPRの添加量が0.05~1%の範囲内にある実施例3、4では水中油型乳化から油中水型乳化、油中水型乳化から水中油型乳化への双方の転相が生じた。一方、PGPRの添加量が多い比較例3では、油中水型乳化の安定性が高く、水中油型乳化への転相が生じなかった。また、PGPRの添加量が少ない比較例4では、PGPRによる油中水型乳化への安定化作用が小さく、水中油型乳化から油中水型乳化への転相が生じなかった。