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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】物質生成方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/28 20170101AFI20220609BHJP
   B23K 26/57 20140101ALI20220609BHJP
   B23K 26/356 20140101ALI20220609BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20220609BHJP
   H01S 3/11 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
C01B32/28
B23K26/57
B23K26/356
H01S3/00 B
H01S3/11
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018095608
(22)【出願日】2018-05-17
(65)【公開番号】P2019199382
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-04-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)「マイクロチップレーザーの開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504261077
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人自然科学研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】平等 拓範
(72)【発明者】
【氏名】カウシャス アルヴィダス
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0210479(US,A1)
【文献】特開昭49-047630(JP,A)
【文献】米国特許第06203865(US,B1)
【文献】特開2018-001068(JP,A)
【文献】特表2015-506887(JP,A)
【文献】特開2011-159696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/28
B23K 26/57
B23K 26/356
H01S 3/00
H01S 3/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材の内部にジャイアントパルスレーザ光を吸収する原料が配置された状態あるいは前記母材と前記原料とが当接され且つ挟持された状態において、前記ジャイアントパルスレーザ光を照射し、前記ジャイアントパルスレーザ光を前記原料に吸収させることにより、衝撃波を発生させて少なくとも前記原料を相転移させて、新たな物質を生成する生成ステップを備え、
前記母材は、前記ジャイアントパルスレーザ光に対して透明な透明材料で形成され、
前記原料は、前記透明材料の内部に配置された欠陥であり、
前記生成ステップでは、前記ジャイアントパルスレーザ光を照射し、前記ジャイアントパルスレーザ光を前記欠陥に吸収させることにより、衝撃波を発生させて前記欠陥を相転移及び再結晶化させて、前記透明材料としての前記物質を生成する、物質生成方法。
【請求項2】
母材の内部にジャイアントパルスレーザ光を吸収する原料が配置された状態あるいは前記母材と前記原料とが当接され且つ挟持された状態において、前記ジャイアントパルスレーザ光を照射し、前記ジャイアントパルスレーザ光を前記原料に吸収させることにより、衝撃波を発生させて少なくとも前記原料を相転移させて、新たな物質を生成する生成ステップを備え、
前記母材及び前記原料は、薄膜状であり、
前記生成ステップでは、
前記母材と前記原料とを交互に積層して積層体を形成し、前記積層体をその積層方向に挟持し、
前記ジャイアントパルスレーザ光を照射し、前記ジャイアントパルスレーザ光を前記原料に吸収させることにより、衝撃波を発生させて前記原料及び前記母材を相転移させて、前記ジャイアントパルスレーザ光に対して透明な前記物質を生成する、物質生成方法。
【請求項3】
前記生成ステップでは、
前記ジャイアントパルスレーザ光をスキャンすることにより、前記積層体の所定領域における前記原料及び前記母材を相転移させて、前記ジャイアントパルスレーザ光に対して透明な前記物質を生成する、請求項に記載の物質生成方法。
【請求項4】
母材の内部にジャイアントパルスレーザ光を吸収する原料が配置された状態あるいは前記母材と前記原料とが当接され且つ挟持された状態において、前記ジャイアントパルスレーザ光を照射し、前記ジャイアントパルスレーザ光を前記原料に吸収させることにより、衝撃波を発生させて少なくとも前記原料を相転移させて、新たな物質を生成する生成ステップを備え、
前記原料は、前記母材の内部に分散するように配置された微粒子であり、
前記生成ステップでは、
前記ジャイアントパルスレーザ光を照射し、前記ジャイアントパルスレーザ光を前記微粒子に吸収させることにより、衝撃波を発生させて前記微粒子及び前記母材を相転移させて、前記ジャイアントパルスレーザ光に対して透明な前記物質を生成する、物質生成方法。
【請求項5】
前記生成ステップでは、
前記ジャイアントパルスレーザ光をスキャンすることにより、前記母材の所定領域において、前記微粒子及び前記母材を相転移させて、前記ジャイアントパルスレーザ光に対して透明な前記物質を生成する、請求項に記載の物質生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物質生成方法に関する技術として、例えば非特許文献1に記載されたダイアモンドの生成方法が知られている。非特許文献1に記載されたダイアモンドの生成方法では、炭酸塩鉱物及びケイ酸鉱物を加圧して高温状態に置くことで、これらが反応を起こし、ダイアモンドが生成される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】H. Ohfuji, et. al.、「Scientific Reportsvolume 5」、Article number:14702(2015)、doi:10.1038/srep14702
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような従来の技術では、新たな物質を生成するに際し、大掛かりな装置が必要になる。近年、新たな物質を簡便に生成できる物質生成方法が求められている。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、新たな物質を簡便に生成できる物質生成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る物質生成方法は、母材の内部にジャイアントパルスレーザ光を吸収する原料が配置された状態あるいは母材と原料とが当接され且つ挟持された状態において、ジャイアントパルスレーザ光を照射し、ジャイアントパルスレーザ光を原料に吸収させることにより、衝撃波を発生させて少なくとも原料を相転移させて、新たな物質を生成する生成ステップを備える。
【0007】
この物質生成方法では、ジャイアントパルスレーザ光を照射し、発生する衝撃波により相転移させ、物質を新たに創出することができる。すなわち、小型で簡便な構成で望めるジャイアントパルスレーザ光を利用して、物質を新たに創出することができる。よって、新たな物質を簡便に生成することが可能となる。
【0008】
本発明に係る物質生成方法では、母材は、ジャイアントパルスレーザ光に対して透明な透明材料で形成され、原料は、透明材料の内部に配置された欠陥であり、生成ステップでは、ジャイアントパルスレーザ光を照射し、ジャイアントパルスレーザ光を欠陥に吸収させることにより、衝撃波を発生させて欠陥を相転移及び再結晶化させて、当該透明材料としての物質を生成してもよい。この場合、欠陥を相転移させて母材を補修することが可能となる。
【0009】
本発明に係る物質生成方法では、母材及び原料は、薄膜状であり、生成ステップでは、母材と原料とを交互に積層して積層体を形成し、積層体をその積層方向に挟持し、ジャイアントパルスレーザ光を照射し、ジャイアントパルスレーザ光を原料に吸収させることにより、衝撃波を発生させて原料及び母材を相転移させて、ジャイアントパルスレーザ光に対して透明な物質を生成してもよい。このように、本発明によれば、多層膜である積層体において原料を母材と共に相転移させ、新たな透明な物質を生成することができる。
【0010】
本発明に係る物質生成方法は、生成ステップでは、ジャイアントパルスレーザ光をスキャンすることにより、積層体の所定領域における原料及び母材を相転移させて、ジャイアントパルスレーザ光に対して透明な物質を生成してもよい。この場合、積層体の所定領域全体を相転移させ、所定領域全体に物質を生成することができる。
【0011】
本発明に係る物質生成方法では、原料は、母材の内部に分散するように配置された微粒子であり、生成ステップでは、ジャイアントパルスレーザ光を照射し、ジャイアントパルスレーザ光を微粒子に吸収させることにより、衝撃波を発生させて微粒子及び母材を相転移させて、ジャイアントパルスレーザ光に対して透明な物質を生成してもよい。このように、本発明によれば、微粒子が内部に複数取り込まれた母材において微粒子を母材と共に相転移させ、新たな透明な物質を生成することができる。
【0012】
本発明に係る物質生成方法は、生成ステップでは、ジャイアントパルスレーザ光をスキャンすることにより、母材の所定領域において、微粒子及び母材を相転移させて、ジャイアントパルスレーザ光に対して透明な物質を生成してもよい。この場合、母材の所定領域全体を相転移させ、所定領域全体に物質を生成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、新たな物質を簡便に生成できる物質生成方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1(a)は、第1実施形態に係る物質生成方法を説明する概略断面図である。図1(b)は、図1(a)の続きを示す概略断面図である。図1(c)は、図1(b)の続きを示す概略断面図である。
図2図2(a)は、第2実施形態に係る物質生成方法を説明する概略側面図である。図2(b)は、図2(a)の続きを示す概略側面図である。
図3図3(a)は、図2(b)の続きを説明する概略側面図である。図3(b)は、図3(a)の続きを説明する概略側面図である。
図4図4(a)は、第3実施形態に係る物質生成方法を説明する概略側面図である。図4(b)は、図4(a)の続きを示す概略側面図である。
図5図5(a)は、図4(b)の続きを説明する概略側面図である。図5(b)は、図5(a)の続きを説明する概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について詳細に説明する。以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る物質生成方法は、透明材料の内部欠陥の再結晶化(相転移)を介した補修に適用可能な方法(すなわち、内部欠陥補修方法)である。特に、図1に示される物質生成方法は、宝石2の内部における欠陥3の補修に適用される。
【0017】
宝石2は、例えばアクセサリー等に使用される固形物ないし鉱物である。宝石2は、母材を構成する。宝石2は、天然鉱物としての無機物結晶であってもよいし、人工合成物質であってもよい。宝石2は、透明な透明材料で形成されている。透明とは、後述するジャイアントパルスレーザ光GLが透過することを意味し、具体的には、ジャイアントパルスレーザ光GLが強度を維持して通過することを意味する。例えば透明とは、ジャイアントパルスレーザ光GLに対する透過率(Fresnel損失分を差し引いた正味の透過率)が95%以上をいい、具体的には97%以上であることをいう。このことは、以下の透明において同様である。
【0018】
宝石2としては、例えばダイアモンド、ガーネット、サファイア、ルビー、ラピスラズリ、オパール、黒曜石、モルダバイト、真珠、琥珀、キュービックジルコニア等が挙げられる。ここでの宝石2は、ダイアモンドで形成されている。欠陥3は、宝石2の内部の結晶化しきれなかった部分である。欠陥3は、例えば宝石2がダイアモンドの場合、宝石2中の炭素化した黒い部分である。欠陥3は、母材の内部に配置された、後述するジャイアントパルスレーザ光GLを吸収する原料を構成する。
【0019】
図1(a)に示されるように、第1実施形態に係る物質生成方法では、まず、欠陥3が内部に存在する宝石2を用意する。図2(b)に示されるように、宝石2に対してジャイアントパルスレーザ光GLを照射し、ジャイアントパルスレーザ光GLを欠陥3に吸収させることで、衝撃波Pを発生させる。当該衝撃波Pは宝石2内で押し戻され、欠陥3を含む部分が超高温及び高圧縮状態となる。これにより、欠陥3が相転移及び再結晶化され、宝石2を形成するダイアモンドが新物質として、欠陥3を補修するようにして生成される。その結果、欠陥3が存在していた黒い領域も透明となる。
【0020】
ジャイアントパルスレーザ光GLは、衝撃波Pが発生可能なレーザ光である。ジャイアントパルスレーザ光GLは、サブナノ秒のパルス幅を有するレーザ光である。ジャイアントパルスレーザ光GLは、マイクロレーザ及びそのシステムを利用して得られる。ジャイアントパルスレーザ光GLは、例えばピークパワーが数100kW以上のレーザ光である。ジャイアントパルスレーザ光GLは、例えばパルス幅が10ns以下で1ps以上の領域(特に、1ns以下で10ps以上)のレーザ光である。一例として、ジャイアントパルスレーザ光GLは、パルス幅が0.6ns、波長が1064nmであり、焦点距離300mmの集光レンズにより集光される場合がある。一例として、ジャイアントパルスレーザ光GLは、レーザ強度が900MW/cmであり、ビーム径が1.42mmであり、パルスエネルギが5mJであり、パルス幅が700psであり、波長が1064nmである場合がある。
【0021】
以上、本実施形態の物質生成方法では、小型で簡便な構成で望めるジャイアントパルスレーザ光GLを照射し、発生する衝撃波Pにより相転移させ、物質を新たに創出することができる。新たな物質を簡便に生成することが可能となる。
【0022】
特に本実施形態では、ジャイアントパルスレーザ光GLを照射し、透明材料の宝石2の内部に配置された欠陥3にジャイアントパルスレーザ光GLを吸収させることにより、衝撃波Pを発生させて欠陥3を相転移及び再結晶化させて、当該透明材料としての物質を生成す。この場合、欠陥3を相転移させて宝石2を補修することが可能となる。なお、ジャイアントパルスレーザ光GLを照射して欠陥3に吸収させるステップが、生成ステップを構成する。
【0023】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態の説明では、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0024】
第2実施形態に係る物質生成方法は、化合物の製造に用いられる方法であって、多層膜を相転移させて透明化させる。特に、図2及び図3に示される物質生成方法は、多層膜からなる積層体4の全域(広領域)を相転移させ、透明化する。
【0025】
積層体4は、複数の母材4aと複数の原料4bとを含む。母材4aと原料4bとは、薄膜状を呈する。母材4aと原料4bとは、交互に積層されている。母材4aは、透明な透明材料で形成されている。母材4aとしては、ダイアモンド、シリコンカーバイド、サファイア、YAG等が挙げられる。YAGとは、発光中心を添加したYAG(3Y2O3-5Al2O3)を含む。同様に他の媒質においても発光中心には、希土類(RE)であるNd,Ybが、又は、遷移金属(TM)であるTi,Crが主として用いられるが、発光中心は、目的によって添加したりしなかったりする。原料4bは、相転移前には着色されており、且つ、相転移によって母材4aと共に透明になり得る材料で形成されている。原料4bとしては、例えばシリコン、アルミニウム、スカンジウム、カーボン等が挙げられる。
【0026】
図2(a)に示されるように、第2実施形態に係る物質生成方法では、まず、母材4aと原料4bとを交互に積層して積層体4を形成する。積層体4を物質X,Yでその積層方向に挟み込む。つまり、物質X,Yを用いて、積層体4をその積層方向に強固に挟持して固定する。母材4aと原料4bとは当接され且つ挟持される。物質X,Yは、高硬度で且つ透明な材料で形成されている。物質Xは、例えばNd:YAGである。物質Yは、例えばダイアモンド、シリコンカーバイド又はサファイアである。物質X,Yは、特に限定されず、種々の材料で形成されていてもよい。
【0027】
図2(b)に示されるように、積層体4に対してジャイアントパルスレーザ光GLを照射し、ジャイアントパルスレーザ光GLを原料4bに吸収させることで、衝撃波Pを発生させる。当該衝撃波Pは、積層体4内で押し戻され、原料4b及びその周辺の母材4aが超高温及び高圧縮状態となる。これにより、原料4bが母材4aと共に相転移され、母材4a及び原料4bの各構成元素の少なくとも何れかを含む透明な化合物が、新たな物質5(図3参照)として生成される。
【0028】
照射したジャイアントパルスレーザ光GLを、その入射方向に垂直な面領域にてスキャン(走査)し、母材4a及び原料4bの当該相転移をスキャンの方向に進展させる。図3(a)に示されるように、このようなジャイアントパルスレーザ光GLのスキャンを、例えば積層体4が有する原料4bの層数に対応する複数回繰り返す。これにより、原料4b及び母材4aの相転移が、積層体4においてジャイアントパルスレーザ光GLの入射側から順次に生じる。その結果、図3(b)に示されるように、積層体4の全体に亘る所定領域AR1において原料4b及び母材4aを相転移させて、所定領域AR1を改質化し、所定領域AR1に透明な物質5が生成される。
【0029】
以上、本実施形態の物質生成方法においても、新たな物質5を簡便に生成することが可能となる。特に本実施形態では、積層体4を形成し、積層体4をその積層方向に挟持し、ジャイアントパルスレーザ光GLを照射して原料4bに吸収させる。これにより、衝撃波Pを発生させて母材4a及び原料4bを相転移させ、透明な物質5を生成する。このように、本実施形態によれば、多層膜である積層体4において原料4bを母材4aと共に相転移させ、新たな透明な物質5を生成することができる。
【0030】
本実施形態では、ジャイアントパルスレーザ光GLをスキャンすることにより、積層体4の所定領域AR1における原料4bを母材4aと共に相転移させて、透明な物質5を生成する。この場合、積層体4の所定領域AR1全体を相転移させ、所定領域AR1全体に物質5を生成することができる。
【0031】
なお、ジャイアントパルスレーザ光GLを照射して原料4bに吸収させるステップが、生成ステップを構成する。積層体4の一部領域において、薄膜状の母材4a及び原料4bの材料の組合せを、目的に合わせ適宜に変更してもよい。
【0032】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態の説明では、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0033】
第3実施形態に係る物質生成方法は、化合物の製造に用いられる方法であって、微粒子が分散配置された母材を相転移させて透明化する。特に、図4及び図5に示される物質生成方法は、微粒子6を多数含む母材7の全域(広領域)を相転移させ、透明化する。
【0034】
微粒子6は、母材7の内部に分散するように配置されている。微粒子6は、ジャイアントパルスレーザ光GLを吸収する原料を構成する。微粒子6は、相転移前には着色されており、且つ、相転移によって母材7と共に透明になり得る材料で形成されている。微粒子6としては、例えばシリコン、アルミニウム、スカンジウム、カーボン等が挙げられる。母材7としては、透明な透明材料で形成されている。母材7としては、ダイアモンド、シリコンカーバイド、サファイア、YAG等が挙げられる。
【0035】
図4(a)に示されるように、第3実施形態に係る物質生成方法では、まず、微粒子6が分散するように配置された母材7を用意する。図4(b)に示されるように、母材7に対してジャイアントパルスレーザ光GLを照射し、ジャイアントパルスレーザ光GLを微粒子6に吸収させることで、衝撃波Pを発生させる。当該衝撃波Pは、母材7内で押し戻され、微粒子6及びその周辺の母材7が超高温及び高圧縮状態となる。これにより、微粒子6が母材7と共に相転移され、母材7及び微粒子6の各構成元素の少なくとも何れかを含む透明な化合物が、新たな合成物質8(図5参照)として生成される。
【0036】
照射したジャイアントパルスレーザ光GLを、その入射方向に垂直な面領域にてスキャンし、微粒子6及び母材7の当該相転移をスキャンの方向に進展させる。図5(a)に示されるように、このようなジャイアントパルスレーザ光GLのスキャンを、複数回繰り返す。これにより、微粒子6及び母材7の相転移が、ジャイアントパルスレーザ光GLの入射側から順次に生じる。その結果、図5(b)に示されるように、母材7の全体に亘る所定領域AR2において微粒子6及び母材7を相転移させて、所定領域AR2を改質化し、所定領域AR2に透明な合成物質8が生成される。
【0037】
以上、本実施形態の物質生成方法においても、新たな合成物質8を簡便に生成することが可能となる。特に本実施形態では、ジャイアントパルスレーザ光GLを照射し、ジャイアントパルスレーザ光GLを微粒子6に吸収させることにより、衝撃波Pを発生させて微粒子6及び母材7を相転移させて、透明な合成物質8を生成する。このように、本実施形態によれば、微粒子6が内部に複数取り込まれた母材7において微粒子6を母材7と共に相転移させ、新たな透明な合成物質8を生成することができる。
【0038】
本実施形態では、ジャイアントパルスレーザ光GLをスキャンすることにより、母材7の所定領域AR2において、微粒子6を母材7と共に相転移させ、透明な合成物質8を生成する。この場合、母材7の所定領域AR2全体を相転移させ、所定領域AR2全体に合成物質8を生成することができる。
【0039】
なお、ジャイアントパルスレーザ光GLを照射して微粒子6に吸収させるステップが、生成ステップを構成する。母材7の一部領域において、母材7及び微粒子6の材料の組合せを、目的に合わせ適宜に変更してもよい。
【0040】
[変形例]
以上、本発明の一形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られない。本発明において、母材及び原料の材料の組合せは、上記実施形態に特に限定されず、種々の組合せを採用できる。スキャンは、ジャイアントパルスレーザ光GL自体を移動させるものに限定されず、母材及び原料を移動することでジャイアントパルスレーザ光GLを相対的に移動させるものも含む。当接には、欠陥又は微粒子と母材とが接触する状態も含む。
【符号の説明】
【0041】
2…宝石(母材)、4a,7…母材、3…欠陥(原料)、4…積層体、4b…原料、5…物質(新たな物質)、6…微粒子、8…合成物質(新たな物質)、AR1,AR2…所定領域、GL…ジャイアントパルスレーザ光、P…衝撃波。
図1
図2
図3
図4
図5