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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】エアロゲルブランケットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/158 20060101AFI20220609BHJP
【FI】
C01B33/158
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020564635
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 KR2019017744
(87)【国際公開番号】W WO2020122683
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2020-11-17
(31)【優先権主張番号】10-2018-0161090
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】オ、ミョン-ウン
(72)【発明者】
【氏名】ペク、セ-ウォン
(72)【発明者】
【氏名】イ、キュ-リョン
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0179073(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0017952(KR,A)
【文献】特表2001-504756(JP,A)
【文献】特開2007-039323(JP,A)
【文献】特開2013-166667(JP,A)
【文献】特開2013-249215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B33
B01J
JSTplus/JST7580(JDream III)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前駆体物質、酸触媒及び含水アルコールを混合してゾルを準備する段階;
前記ゾルに基材を沈積させた後、気体状のシラザン系化合物と反応させ、ゲルを形成するのと同時に熟成及び表面改質反応が進められて湿潤ゲルブランケットが形成される段階;及び
前記湿潤ゲルブランケットを乾燥してエアロゲルブランケットを製造する段階;を含むエアロゲルブランケットの製造方法であって、
前記気体状のシラザン系化合物は、前記ゾル100重量部に対して2.5重量部から4.2重量部で供給され
前記湿潤ゲルブランケットの形成段階は、50℃から75℃の温度条件の下で行われる
エアロゲルブランケットの製造方法
【請求項2】
前記熟成は、前記気体状のシラザン系化合物が前記ゾルに含まれた含水アルコールと反応して発生したアンモニアにより行われる、請求項1に記載のエアロゲルブランケットの製造方法。
【請求項3】
前記シラザン系化合物は、下記化学式1で表される化合物である、請求項1または2に記載のエアロゲルブランケットの製造方法。
【化3】

前記化学式1中、
1及びR3は、それぞれ独立して、炭素数1から8のアルキル基であり、
2及びR4は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1から8のアルキル基であり、
n及びmは、それぞれ独立して、1から3の整数である。
【請求項4】
前記シラザン系化合物は、テトラアルキルジシラザン及びヘキサアルキルジシラザンからなる群から選択されるいずれか1つ又は2つ以上の混合物を含み、前記アルキルは、炭素数1から4のアルキル基である、請求項1~3のいずれか一項に記載のエアロゲルブランケットの製造方法。
【請求項5】
前記シラザン系化合物は、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のエアロゲルブランケットの製造方法。
【請求項6】
前記表面改質は、前記気体状のシラザン系化合物が前記ゾルに含まれた含水アルコールと反応して発生した、アルコキシシラン系化合物及びアルキルシラノール系化合物からなる群から選択された1つ以上の化合物によるものである、請求項1~5のいずれか一項に記載のエアロゲルブランケットの製造方法。
【請求項7】
前記含水アルコールは、含水メタノール、含水エタノール、含水イソプロパノール、含水ブタノール、含水グリセロール、含水エチレングリコール、含水プロピレングリコール、含水ジエチレングリコール、含水ジプロピレングリコール及び含水ソルビトールからなる群から選択される1つ以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載のエアロゲルブランケットの製造方法。
【請求項8】
前記ゾルは、シリカゾルである、請求項1~7のいずれか一項に記載のエアロゲルブランケットの製造方法。
【請求項9】
前記酸触媒は、硝酸、塩酸、酢酸、硫酸及びフッ酸からなる群から選択される1種以上の無機酸である、請求項1~8のいずれか一項に記載のエアロゲルブランケットの製造方法。
【請求項10】
前記湿潤ゲルブランケットの形成段階で有機溶媒をさらに追加して用いない、請求項1~9のいずれか一項に記載のエアロゲルブランケットの製造方法。
【請求項11】
前記湿潤ゲルブランケットの形成段階は、2時間から5時間の間行われる、請求項1~10のいずれか一項に記載のエアロゲルブランケットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年12月13日付韓国特許出願10-2018-0161090号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、エアロゲルブランケットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
エアロゲル(aerogel)は、90%~99.9%程度の気孔率と、1nm~100nmの範囲の気孔サイズを有する超多孔性の高比表面積(>500m2/g)物質であって、優れた超軽量/超断熱/超低誘電などの特性を有する新素材である。これにより、エアロゲル素材の開発研究はもちろん、透明断熱材及び環境にやさしい高温型断熱材、高集積素子用超低誘電薄膜、触媒及び触媒担体、スーパーキャパシタ用電極、海水淡水化用電極材料としての応用研究も活発に進められている。
【0004】
エアロゲルの最も大きい長所は、従来のスタイロフォーム(登録商標)などの有機断熱材よりも低い0.300W/m・K以下の熱伝導率を示す超断熱性(super-insulation)である点と、有機断熱材の致命的な弱点である火事脆弱性と火事時における有害ガスの発生を解決することができるという点である。
【0005】
一般的に、エアロゲルは、エアロゲルブランケットに適用されて用いられる場合が多く、エアロゲルブランケットは、ゾル形成、湿潤ゲル形成、熟成(aging)、溶媒置換、表面改質、乾燥という工程を経るゾル-ゲル法を介して製造されている。
【0006】
しかし、前記ゾル-ゲル法は、前記のように多段工程を経なければならないため、多くの費用及び時間が要求される。より具体的には、熟成段階及び表面改質段階では多量の溶媒が必要なので、製造コストが高くなるという問題点が存在する。
【0007】
したがって、より簡単で、製造コストを節減して工程性を向上させることができる新たなエアロゲルブランケットの製造方法の開発が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0100082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記のような問題点を解決するためのものであって、既存の製造方法より製造工程を単純化することができるエアロゲルブランケットの製造方法を提供し、製造コスト及び製造時間を減縮して工程性が改善されたエアロゲルブランケットの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一具現例として、本発明は、前駆体物質、酸触媒及び含水アルコールを混合してゾルを準備する段階;前記ゾルに基材を沈積させた後、気体状のシラザン系化合物と反応し、ゲルを形成するのと同時に熟成及び表面改質反応が進められて湿潤ゲルブランケットが形成される段階;及び前記湿潤ゲルブランケットを乾燥してエアロゲルブランケットを製造する段階;を含むエアロゲルブランケットの製造方法を提供する。
【0011】
一方、熟成は、前記気体状のシラザン系化合物が前記ゾルに含まれた含水アルコールと反応して発生したアンモニアによるものであってよい。
【0012】
また、表面改質は、前記気体状のシラザン系化合物が前記ゾルに含まれた含水アルコールと反応して発生したアルコキシシラン系化合物及びアルキルシラノール系化合物よりなる群から1つ以上の化合物によるものであってよい。
【0013】
また、シラザン系化合物は、下記化学式1で表される化合物であるものであってよい。
【0014】
【化1】
【0015】
前記化学式1中、R1及びR3はそれぞれ独立して炭素数1から8のアルキル基であってよく、R2及びR4はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1から8のアルキル基であってよく、n及びmはそれぞれ独立して1から3の整数であってよい。
【0016】
また、気体状のシラザン系化合物は、ヘキサアルキルジシラザン及びテトラアルキルジシラザンよりなる群から選択された1つ以上の化合物であってよく、この中でもヘキサメチルジシラザン(HMDS)を含むものであってよい。
【0017】
このとき、気体状のシラザン系化合物は、前記ゾル100重量部に対して2.5重量部から4.2重量部で供給されてよい。
【0018】
例えば、含水アルコールは、含水メタノール、含水エタノール、含水イソプロパノール、含水ブタノール、含水グリセロール、含水エチレングリコール、含水プロピレングリコール、含水ジエチレングリコール、含水ジプロピレングリコール及び含水ソルビトールよりなる群から選択される1種以上であってよい。
【0019】
他の例を挙げると、酸触媒は、硝酸、塩酸、酢酸、硫酸及びフッ酸よりなる群から選択される1種以上の無機酸であってよい。
【0020】
一方、前記湿潤ゲルブランケットの形成段階は、有機溶媒をさらに追加して用いなくてもよい。
【0021】
例えば、前記含水アルコール溶媒は、前記シリカゾル100重量部に対して60重量部から99重量部で含まれてよい。
【0022】
一方、ゲル化反応段階は、50℃から75℃の温度条件の下で行われてよい。
【0023】
このとき、ゲル化反応段階は、2時間から5時間の間行われてよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によるエアロゲルブランケットの製造方法は、気体状のシラザン系化合物を用いて、反応時に発生するアンモニア、アルコキシシラン系化合物及びアルキルシラノール系化合物、例えば、トリメチルエトキシシラン(TMES)及びトリメチルシラノール(TMS)などにより別途の熟成(aging)段階や表面改質段階をさらに経なくてもよいため、工程を単純化することができる。一方、一般的に、熟成段階や表面改質段階を経る場合、有機溶媒を追加で用いるが、前記段階を別途経ないので、溶媒及び表面改質剤を追加的に用いる必要がなく、製造コストも下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】従来の発明によるエアロゲルブランケットの製造方法のフローチャートを示した図である。
図2】本発明によるエアロゲルブランケットの製造方法のフローチャートを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に対する理解を助けるために本発明をさらに詳細に説明する。
【0027】
本発明の説明及び特許請求の範囲で用いられる用語や単語は、通常的かつ辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に即し、本発明の技術的思想に適合する意味と概念として解釈されなければならない。
【0028】
本発明によるエアロゲルブランケットの製造方法は、(1)ゾルを準備する段階;(2)前記ゾルに基材を沈積させた後、気体状のシラザン系化合物と反応し、ゲルを形成するのと同時に熟成及び表面改質反応が進められて湿潤ゲルブランケットが形成される段階;及び(3)前記湿潤ゲルブランケットを乾燥してエアロゲルブランケットを製造する段階;を含む。以下、各段階を順に説明する。
【0029】
(1)ゾル準備段階
本発明の一実施形態によるゾルは、ゾル-ゲル反応で多孔性のゲルを形成できる物質であれば制限せず、具体的に、無機ゾル、有機ゾルまたはこれらの組み合わせを含んでよい。無機ゾルは、ジルコニア、酸化イットリウム、ハフニア、アルミナ、チタニア、セリア、シリカ、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム及びこれらを組み合わせたものを含んでよく、有機ゾルは、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリイミド、ポリフルフラールアルコール、フェノールフルフリルアルコール、メラミンホルムアルデヒド、レゾルシノールホルムアルデヒド、クレゾールホルムアルデヒド、フェノールホルムアルデヒド、ポリビニルアルコールジアルデヒド、ポリシアヌレート、ポリアクリルアミド、種々のエポキシ、寒天、アガロース及びこれらを組み合わせたものを含んでよい。また、ブランケット用基材との優れた混和性を確保し、ゲルに形成する際に多孔性をより改善することができ、低い熱伝導度を有するエアロゲルブランケットを製造する側面から、好ましくは前記ゾルがシリカゾルであってよい。
【0030】
本発明の一実施形態による触媒化されたゾルが触媒化されたシリカゾルの場合、前記シリカゾルは、シリカ前駆体、酸触媒及び含水アルコールを混合して準備する。
【0031】
具体的に、前記シリカ前駆体は、シリコン含有アルコキシド系化合物であってよく、例えば、テトラメチルオルトシリケート(tetramethyl orthosilicate;TMOS)、テトラエチルオルトシリケート(tetraethyl orthosilicate;TEOS)、メチルトリエチルオルトシリケート(methyltriethyl orthosilicate)、ジメチルジエチルオルトシリケート(dimethyl diethyl orthosilicate)、テトラプロピルオルトシリケート(tetrapropyl orthosilicate)、テトライソプロピルオルトシリケート(tetraisopropyl orthosilicate)、テトラブチルオルトシリケート(tetrabutyl orthosilicate)、テトラセカンダリーブチルオルトシリケート(tetra secondary butyl orthosilicate)、テトラターシャリーブチルオルトシリケート(tetra tertiary butyl orthosilicate)、テトラヘキシルオルトシリケート(tetrahexyl orthosilicate)、テトラシクロヘキシルオルトシリケート(tetracyclohexyl orthosilicate)、テトラドデシルオルトシリケート(tetradodecyl orthosilicate)などのようなテトラアルキルオルトシリケートであってよい。
【0032】
前記シリカ前駆体は、準備される前記シリカゾル100重量部に対してシリカ(SiO2)の含量が0.1重量部から30.0重量部となるように用いられてよい。前記シリカの含量が前記範囲内である場合、断熱性能に優れながらも、機械的物性もある程度の水準以上を維持するエアロゲルブランケットを製造することができる。
【0033】
一方、前記酸触媒は、シリカ前駆体の水化反応を促進させるために酸化反応を起こすことができるものであれば、如何なる酸も用いられてよく、具体的に、硝酸、塩酸、酢酸、硫酸及びフッ酸などのような1種以上の無機酸を用いることができる。但し、前記羅列されたものに限定されるものではない。
【0034】
また、前記含水アルコールは、表面改質反応を促進させるのと同時に最終製造されるシリカエアロゲルブランケットの疎水化度を調節するために用いられる。
【0035】
また、前記含水アルコールは、シリカゾル内のシリカ密度を調節し、気体状のシラザン系化合物をアンモニア、アルコキシシラン系化合物及びアルキルシラノール系化合物に分解させる役割を担う。一例として、前記気体状のシラザン系化合物が気体状ヘキサメチルジシラザンである場合、前記含水アルコールは、前記ヘキサメチルジシラザンをアンモニア、トリメチルエトキシシラン(TEMS)、トリメチルシラノール(TMS)に分解させる役割を担うものであってよい。
【0036】
前記含水アルコールは、具体的に、含水メタノール、含水エタノール、含水イソプロパノール、含水ブタノールなどのような1価含水アルコール;または含水グリセロール、含水エチレングリコール、含水プロピレングリコール、含水ジエチレングリコール、含水ジプロピレングリコール、及び含水ソルビトールなどのような多価含水アルコールであってよく、これらのうちいずれか1つ又は2つ以上の混合物が用いられてよい。この中でも水及びエアロゲルとの混和性を考慮するとき、含水メタノール、含水エタノール、含水イソプロパノール、含水ブタノールなどのような炭素数1から6の1価含水アルコールであってよい。
【0038】
(2)湿潤ゲルブランケットの形成段階
湿潤ゲルブランケットの形成段階は、前記(1)段階で準備されたゾルに基材を沈積させた後、気体状のシラザン系化合物と反応し、ゲルを形成するのと同時に熟成及び表面改質反応が進められて行われる。本発明の一実施形態による湿潤ゲルブランケットは、基材内に含浸されたゾルがゲル化し、ゲルが形成された基材を示すものであってよく、具体的に、湿潤ゲルとブランケット基材の複合体を示すものであってよい。
【0039】
従来のエアロゲルブランケットを製造する方法による場合、図1に記載されたとおり、ゾルのゲル化以後、別途の熟成段階、表面改質段階を追加的にさらに経た後、最後に超臨界乾燥段階を経なければならない。よって、多段階を経なければならないため、製造工程が長く、工程経済性が下がるという問題点があった。一方、熟成及び表面改質を行うためには、ゾル内の含水アルコール以外に追加的にアルコールのような有機溶媒を必ず用いなければならず、表面改質段階では追加的に表面改質剤をさらに用いなければならないので、製造コストもまた高くて商用化に限界があった。
【0040】
本発明の湿潤ゲルブランケットの形成段階の場合、気体状のシラザン系化合物と含水アルコールとの反応を介してアンモニア(NH3)及びアルコキシシラン系化合物及びアルキルシラノール系化合物、例えば、アンモニア、トリメチルエトキシシラン(TMES)及びトリメチルシラノール(TMS)などが発生する。よって、前記ゾルと気体状のシラザン系化合物が反応するとき、ゲルを形成するのと同時に熟成及び表面改質反応が全て進められ、湿潤ゲルブランケットが一段階により形成され得る。また、本発明による場合、前記湿潤ゲルブランケットの形成段階で有機溶媒をさらに追加して用いなくてもよいため、製造コストを節減して工程性を改善させ得る。
【0041】
したがって、本発明のエアロゲルブランケットの製造方法は、図2に示されているとおり、従来の製造方法とは異なり、熟成段階及び表面改質段階を別途経なくても前記段階を経たことと同一の効果を奏することができるので、製造工程を単純化し、製造コストも節減することができるようになった。
【0042】
先ず、前記(1)段階により製造されたゾルに基材を沈積させる。具体的に、前記沈積は基材を収容することができる反応容器内でなされてよく、前記反応容器にゾルを注いだり、ゾル入りの反応容器内に基材を入れて浸したり含浸する方法で沈積させてよい。
【0043】
一方、前記基材の形態は、フィルム、シート、網、繊維、多孔質体、発泡体、不織布体またはこれらの2層以上の積層体であってよい。また、用途に応じてその表面に表面粗度が形成されるかパターン化されたものであってよい。より具体的に、前記基材は、シリカエアロゲルの挿入が容易な空間又は空隙を含んで断熱性能がさらに向上され得る繊維であってよい。
【0044】
具体的に、前記基材の素材は、ポリアミド、ポリべンゾイミダゾール、ポリアラミド、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはこれらの共重合体など)、セルロース、カーボン、綿、ウール、麻、不織布、ガラス繊維又はセラミックウールなどを含んでよい。
【0045】
ゾルに基材を沈積させた後、気体状のシラザン系化合物と反応させる。具体的に、前記ゾルに沈積された基材が入っている反応容器と別途の容器に液体状のシラザン系化合物を入れておいた後、それぞれの容器をともに密閉させた後、温度を高めて液体状のシラザン系化合物を気化させ、気体状のシラザン系化合物と反応させる方法を用いることができる。または、ゾルに基材を沈積させ、密閉させた後、気体状のシラザン系化合物を供給することもでき、前記気体状のシラザン系化合物だけが含まれた反応容器内にシリカゾルに沈積された基材を投入して反応させてよい。但し、反応させる方式が特定の方法により限定されるものではない。
【0046】
本発明の一実施形態によれば、前記シラザン系化合物は、具体的に、1分子内にアルキル基を2個以上含むシラザン系化合物であってよく、より具体的には、下記化学式1の化合物であってよい:
【0047】
【化2】
【0048】
前記化学式1中、R1及びR3はそれぞれ独立して炭素数1から8のアルキル基であってよく、R2及びR4はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1から8のアルキル基であってよく、n及びmはそれぞれ独立して1から3の整数であってよい。
【0049】
前記シラザン系化合物の具体的な例としては、1,3-ジエチルジシラザン(1,3-diethyldisilazane)、1,1,3,3-テトラメチルジシラザン(1,1,3,3-tetramethyldisilazane)、1,1,3,3-テトラエチルジシラザン(1,1,3,3-tetraethyldisilazane)、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン(1,1,1,3,3,3-hexamethyldisilazane;HMDS)、1,1,1,3,3,3-ヘキサエチルジシラザン(1,1,1,3,3,3-hexaethyldisilazane)、1,1,3,3-テトラエチルジシラザン(1,1,3,3-tetraethyldisilazane)又は1,3-ジイソプロピルジシラザン(1,3-diisopropyldisilazane)などを挙げることができ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が用いられてよい。
【0050】
この中でも、前記シラザン系表面改質剤は、エアロゲルの疎水性をさらに増加させることができるように、前記化学式1のシラザン系化合物において2つの水素原子とともに炭素数1から4のアルキル基を4個含むテトラアルキルジシラザン;または炭素数1から4のアルキル基を6個含むヘキサアルキルジシラザンであってよく、より具体的には、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)又はテトラメチルジシラザンであってよい。
【0051】
一方、前記気体状のシラザン系化合物とゾルが沈積された基材が反応する場合、ゾル、具体的にシリカゾルに含まれている含水アルコールと前記気体状のシラザン系化合物が反応するようになり、アンモニア(NH3)が発生し得る。このとき、前記気体状のシラザン系化合物が前記ゾルに含まれた含水アルコールと反応して発生したアンモニアにより熟成がゲル化反応と同時になされるようになる。
【0052】
また、前記反応により、アルコキシシラン系化合物及びアルキルシラノール系化合物よりなる群から1つ以上の化合物も発生でき、具体的に、前記シラザン系化合物がヘキサメチルジシラザンである場合、トリメチルエトキシシラン(TMES)及びトリメチルシラノール(TMS)よりなる群から1つ以上の化合物が発生することができる。
【0053】
したがって、前記気体状のシラザン系化合物が前記ゾルに含まれた含水アルコールと反応して発生した前記アルコキシシラン系化合物及びアルキルシラノール系化合物、具体的に、トリメチルエトキシシラン(TMES)及びトリメチルシラノール(TMS)などの化合物によりゲル化反応、熟成反応と同時に表面改質もまたなされるようになる。
【0054】
一方、前記アルコキシシラン系化合物及びアルキルシラノール系化合物は、従来のエアロゲルブランケットを製造する際、表面改質剤として用いられる物質である。すなわち、本発明のシラザン系化合物を表面改質剤として用いる物質の前駆体物質であるものであってよい。本発明によるゲル化反応の際には、別途の表面改質剤を追加して表面改質段階を経なくとも、シラザン系化合物から分解されたアルコキシシラン系化合物などのような化合物によりエアロゲル、具体的に、シリカエアロゲルの表面が疎水性に改質され得る。前記のように表面が改質される場合、シリカ表面のシラノール基(Si-OH)が空気中の水分を吸収してエアロゲルブランケットの熱伝導性が高くなるという問題点を予め防止することができる。
【0055】
このとき、前記気体状のシラザン系化合物は、前記シリカゾル100重量部に対して2.5重量部から4.2重量部、好ましくは2.9重量部から4.2重量部、より好ましくは3.4重量部から4.2重量部で供給されてよい。前記シラザン系化合物が前記範囲内で用いられる場合、製造コストを節減しながらもある程度の水準以上の断熱性を有するエアロゲルブランケットの製造方法を提供することができる。
【0056】
本発明の一実施形態により気体状のシラザン系化合物を用いる場合、溶媒が不要なため原材料の費用を節減することができ、また一般的に表面改質時に用いられる有機溶媒が用いられないので、環境にやさしい側面から効果的である。また、液体状のシラザン系化合物を用いたときに比べ、表面改質の効率がさらに改善され得る。
【0057】
具体的に、エアロゲルブランケットの優れた疎水性のためには、表面改質が湿潤ゲルブランケット全体的に均一になされるようにすることが重要であり、これは湿潤ゲルブランケットの表面及び内部に表面改質の有効成分(以下、表面改質剤と記す)が均一に分散されることで実現することができる。本発明の一実施形態のように気体状のシラザン系化合物を用いる場合には、拡散性(diffusivity)に優れた気体固有の性質によりゲル化に形成される湿潤ゲルブランケットの表面及び内部に表面改質剤の分散がよくなされ、これにより製造されたエアロゲルブランケットは全体的に均一な疎水性を有し得る。しかし、液体状のシラザン系化合物を用いる場合、湿潤ゲルブランケットに全体的に表面改質剤が均一に分散できるようにするためには、表面改質剤溶液が、ゲル化に形成される湿潤ゲルブランケット全体を入れることができる程度の体積で必要であり、これは、通常、溶媒に希釈させて用いることにより必要な体積を満たす。このように、液体状のシラザン系化合物を用いる場合、追加的な溶媒の使用が必須であるため原材料の費用が高くなり、一般的に溶媒として用いられる種類は有機溶媒なので、環境的な側面でも好ましくないことがある。また、シラザン系化合物を溶媒に希釈させて用いるようになると、溶媒の存在により相対的に表面改質の効率が気体状のシラザン系化合物に比べて下がるしかなく、同一の量のシラザン系化合物で表面改質を進める際、液体状のシラザン系化合物溶液(希釈液)を用いたときに表面改質の時間がさらに長くかかるようになるので、効率性が大きく下がる。このとき、表面改質の時間を短縮させるためには、シラザン系化合物を過量用いて表面改質剤溶液の濃度を高めなければならないが、これは相対的に高費用であるシラザン系化合物を浪費するという結果をもたらすことになる。すなわち、シラザン系化合物の使用量に比べ最大化された表面改質の反応効率を得るためには、気体状のシラザン系化合物の適用が好ましい。
【0058】
ここで、前記表面改質剤は、本発明でシラザン系化合物の分解反応の結果で生成されるアルコキシシラン系化合物及び/またはアルキルシラノール系化合物を示すものであってよく、これは、表面改質反応での有効成分として作用する物質であってよい。
【0059】
また、液体状のシラザン系化合物以外に追加的な希釈溶媒を添加せず液体状のシラザン系化合物をそのまま用いる場合には、前述のとおり、ゲル化に形成される湿潤ゲルブランケットが浸る程度の過量の化合物が必要となり、これにより相対的に高価であるシラザン系化合物を過量用いるようになるので経済的でない。さらに、過量の使用により反応混合物でシラザン系化合物の濃度が高くなり、高い濃度のシラザン系化合物は前駆体物質の間の縮合反応が容易になされないように妨害する要因となり得るので、ゲル化の時間が長くかかるか、さらに悪くなる場合、ゲル化自体が進まないという問題が発生し得る。
【0060】
さらに、基材に沈積されたゾルを溶媒に希釈した液体状のシラザン系化合物と反応させてゲル化、熟成及び表面改質を同時に進める場合には、基材表面及び内部だけでなく、基材以外の反応混合物溶液の全体でゲル化がなされて湿潤ゲルのモノリス形態に形成される。すなわち、このモノリスの湿潤ゲル内部に単に基材が含まれているだけであり、基材内部または表面にだけ湿潤ゲルが形成されるものではないため、全体の湿潤ゲルのモノリスで湿潤ゲルブランケットを回収したとき、ブランケット内の湿潤ゲルのシリカ濃度が顕著に少なく、熱伝導度、疎水性などの物性が低下するという問題が発生することがあり、またブランケットと接触しない大部分の湿潤ゲルは廃棄されるので、前駆体物質、シラザン系化合物などの原材料の浪費が発生するという問題がある。
【0061】
また、基材だけでなく、ゾル及びシラザン系化合物の希釈液を含んだ反応混合物溶液全体の体積面積に対してゲルが形成されるので、最終的に目的とする規格のエアロゲルブランケットを安定的に製造することができず、基材規格だけで最終生成物であるエアロゲルブランケットの規格の制御が容易でないという問題があり、目的とする規格のエアロゲルブランケットを確保するためには、別途の裁断工程などの追加工程が伴なわなければならないので、工程効率が下がることがある。
【0062】
一方、前記湿潤ゲルブランケットの形成段階は、50℃から75℃、好ましくは55℃から75℃、より好ましくは60℃から75℃の温度条件の下で行われてよい。前記湿潤ゲルブランケットの形成段階が前記温度範囲内で行われる場合、含水アルコールの気化速度及び液体状のシラザン系化合物が気化される速度を調節してゲルが形成される時間を遅滞しないように気体状のシラザン系化合物を供給することができる。また、前記温度範囲内で前記湿潤ゲルブランケットの形成段階が進められる場合、熟成、表面改質反応が同時に進められてよい。
【0063】
このとき、前記湿潤ゲルブランケットの形成段階は、2時間から5時間の間行われてよい。本発明の場合、既存のエアロゲルブランケットの製造方法とは異なり、別途の熟成、表面改質段階をさらに経ない。よって、既存に3段階を経るときに必要な各段階別の時間の総合と比べるとき、全体の工程時間もまた短縮させることができる。
【0064】
また、本発明の一実施形態による湿潤ゲルブランケットは、形成以後、乾燥する段階をさらに行ってよい。
【0065】
本発明の一実施形態による前記乾燥段階は、熟成されたゲルの気孔構造をそのまま維持しながら溶媒を除去する工程を介して行われてよく、前記乾燥段階は、超臨界乾燥又は常圧乾燥工程によってよい。または、前記乾燥段階は、超臨界乾燥及び常圧乾燥を順次に全て行うものであってよい。
【0066】
前記超臨界乾燥工程は、超臨界二酸化炭素を用いて行われてよい。二酸化炭素(CO2)は、常温及び常圧では気体状態であるが、臨界点(supercritical point)と呼ばれる一定の温度及び高圧の限界を超えると蒸発過程が起こらないため、気体と液体の区別ができない臨界状態となり、この臨界状態にある二酸化炭素を超臨界二酸化炭素と称する。
【0067】
超臨界二酸化炭素は、分子の密度は液体に近いが、粘度は低いため気体に近い性質を有し、拡散が速くて熱伝導性が高いため、乾燥効率が高く、乾燥工程の時間を短縮させることができる。
【0068】
具体的に、前記超臨界乾燥工程は、超臨界乾燥反応器内に熟成された湿潤ゲルブランケットを入れた後、液体状態のCO2を満たして湿潤ゲル内部のアルコール溶媒をCO2で置換する溶媒置換工程を行う。その後、一定の昇温速度、具体的には、0.1℃/minから1℃/minの速度で、40から70℃に昇温させた後、二酸化炭素が超臨界状態になる圧力以上の圧力、具体的には、100barから150barの圧力を維持して二酸化炭素の超臨界状態で一定の時間、具体的には、20分から1時間の間維持する。一般的に、二酸化炭素は31℃の温度、73.8barの圧力で超臨界状態になる。二酸化炭素が超臨界状態になる一定の温度及び一定の圧力で2時間から12時間、より具体的には、2時間から6時間の間維持した後、徐々に圧力を除去して超臨界乾燥工程を完了し、エアロゲルブランケットを製造することができる。
【0069】
また、常圧乾燥工程の場合、70から200℃の温度及び常圧(1±0.3 atm)下で、熱風乾燥、IR dryingなどの通常の方法により行われてよい。
【0070】
前記のような乾燥工程の結果として、ナノサイズの気孔を有する多孔性エアロゲルを含むブランケットが製造され得る。特に、本発明の一実施形態によるシリカエアロゲルは、高い疎水化度とともに優れた物性的特性、特に、低いタップ密度と高い気孔率を有し、これを含むシリカエアロゲル含有ブランケットは低い熱伝導度とともに優れた機械的柔軟性を有する。
【0071】
また、前記乾燥工程の前又は後に、厚さ調節及びブランケットの内部組織と表面形状を均一にするための圧着工程、用途に応じて適切な形態又はモフォロジーを有するようにするための成形工程、または別途の機能層を積層する積層工程などがさらに行われてもよい。
【0072】
以下、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施形態について詳細に説明する。しかし、本発明は幾多の異なる形態に具現されてよく、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0073】
[実施例]
1.実施例1
テトラエチルオルトシリケート(TEOS)と含水エタノールを重量比3:1で混合して製造した混合溶液(シリカ含量=4wt%)に、水に希釈した塩酸溶液(濃度=0.15%)を前記混合溶液のpHが1となるように添加した後混合し、シリカゾルを製造した。製造したシリカゾルにガラス繊維を沈積させた後、気体状のヘキサメチルジシラザンがシリカゾル100重量部に対して4.2重量部で入っている密閉容器内に投入し、70℃で5時間の間湿潤ゲルブランケットを形成した。前記湿潤ゲルブランケットを7.2Lの超臨界抽出器(extractor)に入れてCO2を注入した。その後、抽出器内の温度を1時間かけて60℃に昇温し、50℃、100barで超臨界乾燥した。その後、2時間かけてCO2を排出(venting)し、150℃のオーブンで追加で常圧乾燥してエアロゲルブランケットを製造した。
【0074】
2.実施例2
湿潤ゲルブランケットの形成段階を70℃で3時間の間行ったことを除いては、実施例1と同一の方法でエアロゲルブランケットを製造した。
【0075】
3.実施例3
湿潤ゲルブランケットの形成段階を50℃で行ったことを除いては、実施例1と同一の方法でエアロゲルブランケットを製造した。
【0076】
4.実施例4
気体状のヘキサメチルジシラザンを実施例1に対して60重量部に減縮して密閉容器内に供給したことを除いては、実施例1と同一の方法でエアロゲルブランケットを製造した。
【0077】
5.実施例5
気体状のヘキサメチルジシラザンを実施例1に対して50重量部に減縮して密閉容器内に供給したことを除いては、実施例1と同一の方法でエアロゲルブランケットを製造した。
【0078】
[比較例]
1.比較例1
テトラエチルオルトシリケート(TEOS)と含水エタノールを重量比3:1で混合して製造した混合溶液(シリカ含量=4wt%)に、水に希釈した塩酸溶液(濃度=0.15%)を前記混合溶液のpHが1となるように添加した後混合し、シリカゾルを製造した。その後、シリカゾルにアンモニア触媒を0.5体積%の含量で添加してゲル化反応を開始し、ガラス繊維を沈積させて、シリカ湿潤ゲル複合体を製造した。製造されたシリカ湿潤ゲル複合体を、エタノール溶液の中に70℃の温度で1時間の間放置して熟成させた。その後、ヘキサメチルジシラザンとエタノールを1:19の体積比で混合して製造した表面改質剤溶液を湿潤ゲルに対して90体積%で添加し、70℃で4時間の間表面改質させて疎水性シリカ湿潤ゲル複合体を製造した。前記疎水性シリカ湿潤ゲル複合体を7.2Lの超臨界抽出器(extractor)に入れ、CO2を注入した。その後、抽出器内の温度を1時間かけて60℃に昇温し、50℃、100barで超臨界乾燥した。その後、2時間かけてCO2を排出(venting)し、150℃のオーブンで追加で常圧乾燥してエアロゲルブランケットを製造した。
【0079】
2.比較例2
表面改質を70℃で2時間の間行ったことを除いては、比較例1と同一の方法でエアロゲルブランケットを製造した。
【0080】
3.比較例3
比較例1に対し60重量部に減縮されたヘキサメチルジシラザンを用いて表面改質剤溶液を製造したことを除いては、比較例1と同一の方法でエアロゲルブランケットを製造した。
【0081】
4.比較例4
比較例1に対し50重量部に減縮されたヘキサメチルジシラザンを用いて表面改質剤溶液を製造したことを除いては、比較例1と同一の方法でエアロゲルブランケットを製造した。
【0082】
5.比較例5
気体状のヘキサメチルジシラザンの代わりに、液体状のヘキサメチルジシラザンとエタノールを1:19の体積比で混合して製造した溶液にシリカゾルが沈積されたガラス繊維を投入することを除いては、実施例1と同一の方法でエアロゲルブランケットを製造した。このとき、ヘキサメチルジシラザンはシリカゾル100重量部に対して4.2重量部が含まれたものである。
【0083】
実験例
前記実施例1から6及び比較例1から5の各物性を測定し、その結果を下記表1に示した。一方、比較例5の場合、ゾル及び表面改質溶液を含んだ反応物全体の体積に対してゲル化が進められてエアロゲルモノリスが製造され、このうちエアロゲルブランケットだけを別に回収して物性を測定した。
【0084】
1)常温熱伝導度(mW/mK、25℃)
実施例及び比較例で製造したエアロゲルブランケットを、NETZSCH社製のHFM 436装備を用いて常温熱伝導度を測定した。
【0085】
2)水分含浸率(疎水化度)の測定(wt%)
実施例及び比較例で製造されたシリカエアロゲルブランケットで100mm×100mmサイズの試片を準備し、21±2℃である蒸溜水の上に試片を浮かべた後、メッシュスクリーン(mesh screen)を水面の下に127mmまで沈める(含浸)。15分後、前記メッシュスクリーンを除去し、試片が浮び上がればクランプ(clamp)で試片を取り、垂直で60±5秒間吊り下げておく。その後、含浸前/後の試片の重量をそれぞれ測定して重量増加率を下記式1で計算し、これを水分含浸率として定義する。
【0086】
[式1]
重量増加率(=水分含浸率、wt%)={(含浸後の試片の重量-含浸前の試片の重量)/(含浸前の試片の重量)} × 100wt%
【0087】
【表1】
【0088】
前記表1に記載されたとおり、実施例は別途の表面改質段階や熟成段階をさらに経ていないにもかかわらず、比較例と比べるとき、熱伝導度が低くて断熱性能に優れていることを確認することができる。また、実施例の場合、比較例と比べるとき、水分含浸率もまたさらに低くて撥水性が高いことを確認することができる。
【0089】
この中でも、比較例5は、エアロゲルブランケットでない基材が内部に含まれたエアロゲルのモノリスで製造され、物性測定のためにエアロゲルモノリスからエアロゲルブランケットを別途回収する工程が必要であり、また、ブランケットの表面及び内部に含まれていないエアロゲルは全て廃棄されたので、エアロゲルブランケット内のシリカエアロゲルの比率が他の実施例及び比較例に比べて顕著に低く、熱伝導度及び水分含浸率が大きく低下することを確認できる。
図1
図2