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特許7085739人工ヌクレオシド及び人工ヌクレオチド並びに人工オリゴヌクレオチド
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  • 特許-人工ヌクレオシド及び人工ヌクレオチド並びに人工オリゴヌクレオチド 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】人工ヌクレオシド及び人工ヌクレオチド並びに人工オリゴヌクレオチド
(51)【国際特許分類】
   C07H 19/067 20060101AFI20220610BHJP
   C07H 21/02 20060101ALI20220610BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20220610BHJP
   A61K 31/712 20060101ALN20220610BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20220610BHJP
   A61P 3/06 20060101ALN20220610BHJP
   A61P 21/04 20060101ALN20220610BHJP
【FI】
C07H19/067 CSP
C07H21/02 ZNA
C12N15/11 Z
A61K31/712
A61P43/00 105
A61P3/06
A61P21/04
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020202186
(22)【出願日】2020-12-04
(62)【分割の表示】P 2018500218の分割
【原出願日】2017-02-17
(65)【公開番号】P2021046433
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2020-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2016028109
(32)【優先日】2016-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016211476
(32)【優先日】2016-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】清尾 康志
(72)【発明者】
【氏名】正木 慶昭
(72)【発明者】
【氏名】山本 恵士
(72)【発明者】
【氏名】吉田 圭汰
(72)【発明者】
【氏名】入山 友輔
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 宏之
(72)【発明者】
【氏名】金木 達朗
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】特表平05-504552(JP,A)
【文献】国際公開第2014/131892(WO,A1)
【文献】特表2012-506701(JP,A)
【文献】MILTON,S. et al,Synthesis and Stability of a 2'-O-[N-(Aminoethyl)carbamoyl]methyladenosine- Containing Dinucleotide,European Journal of Organic Chemistry,2013年,Vol.2013, No.31,pp.7184-7192
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 19/067
C07H 21/02
C12N 15/11
A61K 31/712
A61P 43/00
A61P 3/06
A61P 21/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】

(式中、Bxは、プリン-9-イル基、2-オキソ-ピリミジン-1-イル基又は2-チオキソ-ピリミジン-1-イル基(該プリン-9-イル基、2-オキソ-ピリミジン-1-イル基及び2-チオキソ-ピリミジン-1-イル基はそれぞれ独立して、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1-6アルキル基、アミノ基、アミノ基保護基により置換されたアミノ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシ基保護基により置換されたヒドロキシ基、スルファニル基及びスルファニル基保護基により置換されたスルファニル基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)であり、
及びZはそれぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基保護基又はリン含有基であり、
、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又はC1-6アルキル基若しくはC2-6アルケニル基(該C1-6アルキル基及びC2-6アルケニル基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1-6アルコキシ基及びシアノ基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)であり、
Yは、NR
(該R 及びR は、それぞれ独立してC1-6アルキル基である)であり、
nは、1から3の整数である。ここで、nが2又は3であるとき、2又は3のR及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)で示される化合物又はその塩。
【請求項2】
Bxが、6-アミノプリン-9-イル基、2-アミノ-6-ヒドロキシプリン-9-イル基、2-オキソ-4-アミノ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-アミノ-5-メチル-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-ヒドロキシ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基又は2-オキソ-4-ヒドロキシ-5-メチル-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基である、請求項1に記載の化合物又はその塩。
【請求項3】
、R、R及びRが、水素原子である、請求項1又は2に記載の化合物又はその塩。
【請求項4】
及びRが、それぞれ独立して、C1-3アルキル基である、請求項1からの何れか一項に記載の化合物又はその塩。
【請求項5】
及びRが、メチル基である、請求項1からの何れか一項に記載の化合物又はその塩。
【請求項6】
nが2である、請求項1からの何れか一項に記載の化合物又はその塩。
【請求項7】
が、水素原子又はヒドロキシ基保護基である、請求項1からの何れか一項に記載の化合物又はその塩。
【請求項8】
が、水素原子又はリン含有基である、請求項1からの何れか一項に記載の化合物又はその塩。
【請求項9】
が、ヒドロキシ基保護基である、請求項1からの何れか一項に記載の化合物、又はその塩。
【請求項10】
下記式(II):
【化2】

(式中、Bxは、プリン-9-イル基、2-オキソ-ピリミジン-1-イル基又は2-チオキソ-ピリミジン-1-イル基(該プリン-9-イル基、2-オキソ-ピリミジン-1-イル基及び2-チオキソ-ピリミジン-1-イル基はそれぞれ独立して、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1-6アルキル基、アミノ基、アミノ基保護基により置換されたアミノ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシ基保護基により置換されたヒドロキシ基、スルファニル基及びスルファニル基保護基により置換されたスルファニル基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)であり、
、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又はC1-6アルキル基若しくはC2-6アルケニル基(該C1-6アルキル基及びC2-6アルケニル基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1-6アルコキシ基及びシアノ基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)であり、
Yは、NR
(該R 及びR は、それぞれ独立してC1-6アルキル基である)であり、
nは、1から3の整数である。ここで、nが2又は3であるとき、2又は3のR及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)で示されるヌクレオシド構造を1以上含む人工オリゴヌクレオチド、又はその製薬上許容される塩。
【請求項11】
Bxが、6-アミノプリン-9-イル基、2-アミノ-6-ヒドロキシプリン-9-イル基、2-オキソ-4-アミノ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-アミノ-5-メチル-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-ヒドロキシ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基又は2-オキソ-4-ヒドロキシ-5-メチル-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基である、請求項10に記載の人工オリゴヌクレオチド、又はその製薬上許容される塩。
【請求項12】
、R、R及びRが、水素原子である、請求項10又は11に記載の人工オリゴヌクレオチド、又はその製薬上許容される塩。
【請求項13】
及びRが、それぞれ独立して、C1-3アルキル基である、請求項10から12の何れか一項に記載の人工オリゴヌクレオチド、又はその製薬上許容される塩。
【請求項14】
及びRが、メチル基である、請求項10から13の何れか一項に記載の人工オリゴヌクレオチド、又はその製薬上許容される塩。
【請求項15】
nが2である、請求項10から14の何れか一項に記載の人工オリゴヌクレオチド、又はその製薬上許容される塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工ヌクレオシド及び人工ヌクレオチド並びに人工オリゴヌクレオチドに関する。
【背景技術】
【0002】
核酸医薬は、標的となるDNA又はRNAと相補的塩基対を形成する核酸(オリゴヌクレオチド)からなる医薬品であり、新規な医薬品として期待されている。そして、核酸医薬に用いられる核酸単位として、天然型の核酸の構造を変化させた種々の人工核酸単位(人工ヌクレオシド又はそのリン酸付加体である人工ヌクレオチド)が開発されている。例えば、リボヌクレオチドの糖部2’位の酸素原子をメトキシエチル(MOE)化することで、標的核酸鎖への親和性とヌクレアーゼへの耐性が向上することが知られている(例えば、特許文献1参照)。このMOE化ヌクレオチドを含有するオリゴヌクレオチドは、ホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)の治療薬としてアメリカ食品医薬品局(FDA)によって承認されている他、高トリグリセリド血症やTTRアミロイドーシスなど各種疾病に対する治療薬として臨床治験が実施されている。さらに、リボヌクレオチドの糖部2’位の酸素原子の修飾体としてメチルカルバモイルエチル(MCE)化ヌクレオチドが報告された(例えば、特許文献2、非特許文献1参照)。MCE化することで、そのオリゴヌクレオチドのヌクレアーゼへの耐性が大幅に向上するとされている。このMCE化ヌクレオチドを含有するオリゴヌクレオチドは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのモデルマウスでのエキソンスキップ効果が非常に高まることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-2889号公報
【文献】特許第5194256号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー、第76巻、3042ページ(2011年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したMOE化ヌクレオチド、MCE化ヌクレオチドを含有するオリゴヌクレオチドは、生体内に存在する分解酵素であるヌクレアーゼへの耐性が十分ではなく、医薬品としての安定性の点で課題があった。そこで、さらに新しい糖部2’位修飾人工核酸が求められていた。
【0006】
本発明の目的は、ヌクレアーゼ耐性に優れる糖部2’位修飾人工オリゴヌクレオチド並びにこれを構成可能な人工ヌクレオシド及び人工ヌクレオチドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、カルバモイルエチル基の窒素原子にアルキル基を介してアミノ基あるいは複素環基を導入することで、非常に高いヌクレアーゼ耐性が得られることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
1.下記式(I):
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、Bxは、プリン-9-イル基、2-オキソ-ピリミジン-1-イル基又は2-チオキソ-ピリミジン-1-イル基(該プリン-9-イル基、2-オキソ-ピリミジン-1-イル基及び2-チオキソ-ピリミジン-1-イル基はそれぞれ独立して、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1-6アルキル基、アミノ基、アミノ基保護基により置換されたアミノ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシ基保護基により置換されたヒドロキシ基、スルファニル基及びスルファニル基保護基により置換されたスルファニル基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)であり、
及びZはそれぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基保護基又はリン含有基であり、
、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又はC1-6アルキル基若しくはC2-6アルケニル基(該C1-6アルキル基及びC2-6アルケニル基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1-6アルコキシ基及びシアノ基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)であり、
Yは、NR
(該R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基若しくはC2-6アルケニル基(該C1-6アルキル基及びC2-6アルケニル基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルバモイル基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルケニルオキシ基、C1-6アルコキシカルボニル基、C2-6アルケニルオキシカルボニル基、C1-6アルキルカルボニル基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6アルキルアミノカルボニル基、C1-6アルキルカルボニルオキシ基、C1-6アルキルカルボニルアミノ基及びC1-6アルコキシカルボニルアミノ基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)又はC7-10アラルキル基(該C7-10アラルキル基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルバモイル基、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルケニルオキシ基、C1-6アルコキシカルボニル基、C2-6アルケニルオキシカルボニル基、C1-6アルキルカルボニル基、C1-6ハロアルキル基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6アルキルアミノカルボニル基、C1-6アルキルカルボニルオキシ基、C1-6アルキルカルボニルアミノ基及びC1-6アルコキシカルボニルアミノ基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)であるか、又は
及びRは、これらが結合している窒素原子と一緒になって、3-11員含窒素非芳香族ヘテロ環基(該3-11員含窒素非芳香族ヘテロ環基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルバモイル基、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルケニルオキシ基、C1-6アルコキシカルボニル基、C2-6アルケニルオキシカルボニル基、C1-6アルキルカルボニル基、C1-6ハロアルキル基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6アルキルアミノカルボニル基、C1-6アルキルカルボニルオキシ基、C1-6アルキルカルボニルアミノ基及びC1-6アルコキシカルボニルアミノ基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)を形成している)、又は
C2-9芳香族複素環式基(該C2-9芳香族複素環式基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルバモイル基、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルケニルオキシ基、C1-6アルコキシカルボニル基、C2-6アルケニルオキシカルボニル基、C1-6アルキルカルボニル基、C1-6ハロアルキル基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6アルキルアミノカルボニル基、C1-6アルキルカルボニルオキシ基、C1-6アルキルカルボニルアミノ基及びC1-6アルコキシカルボニルアミノ基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)であり、
nは、1から3の整数である。ここで、nが2又は3であるとき、2又は3のR及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)で示される化合物、又はその塩。
【0010】
2.Bxが、6-アミノプリン-9-イル基、2-アミノ-6-ヒドロキシプリン-9-イル基、2-オキソ-4-アミノ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-アミノ-5-メチル-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-ヒドロキシ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基又は2-オキソ-4-ヒドロキシ-5-メチル-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基である、1.に記載の化合物、又はその塩。
3.R、R、R及びRが、水素原子である、1.又は2.に記載の化合物又はその塩。
4.Yが、NRであり、該R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はC1-3アルキル基である、1.から3.の何れか一つに記載の化合物又はその塩。
5.Yが、NRであり、該R及びRは、これらが結合している窒素原子と一緒になって、モルホリンを形成している、1.から3.の何れか一つに記載の化合物又はその塩。
6.Yが、ピリジル基、イミダゾリル基又はベンゾイミダゾリル基である、1.から3.の何れか一つに記載の化合物又はその塩。
7.nが2である、1.から6.の何れか一つに記載の化合物又はその塩。
8.Zが、水素原子又はヒドロキシ基保護基である、1.から7.の何れか一つに記載の化合物又はその塩。
9.Zが、水素原子又はリン含有基である、1.から8.の何れか一つに記載の化合物又はその塩。
10.Zが、ヒドロキシ基保護基である、1.から8.の何れか一つに記載の化合物、又はその塩。
【0011】
11.下記式(II):
【化2】
【0012】
(式中、Bxは、プリン-9-イル基、2-オキソ-ピリミジン-1-イル基又は2-チオキソ-ピリミジン-1-イル基(該プリン-9-イル基、2-オキソ-ピリミジン-1-イル基及び2-チオキソ-ピリミジン-1-イル基はそれぞれ独立して、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1-6アルキル基、アミノ基、アミノ基保護基により置換されたアミノ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシ基保護基により置換されたヒドロキシ基、スルファニル基及びスルファニル基保護基により置換されたスルファニル基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)であり、
、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又はC1-6アルキル基若しくはC2-6アルケニル基(該C1-6アルキル基及びC2-6アルケニル基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1-6アルコキシ基及びシアノ基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)であり、
Yは、NR(該R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基若しくはC2-6アルケニル基(該C1-6アルキル基及びC2-6アルケニル基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルバモイル基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルケニルオキシ基、C1-6アルコキシカルボニル基、C2-6アルケニルオキシカルボニル基、C1-6アルキルカルボニル基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6アルキルアミノカルボニル基、C1-6アルキルカルボニルオキシ基、C1-6アルキルカルボニルアミノ基及びC1-6アルコキシカルボニルアミノ基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)又はC7-10アラルキル基(該C7-10アラルキル基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルバモイル基、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルケニルオキシ基、C1-6アルコキシカルボニル基、C2-6アルケニルオキシカルボニル基、C1-6アルキルカルボニル基、C1-6ハロアルキル基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6アルキルアミノカルボニル基、C1-6アルキルカルボニルオキシ基、C1-6アルキルカルボニルアミノ基及びC1-6アルコキシカルボニルアミノ基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)であるか、又はR及びRは、これらが結合している窒素原子と一緒になって、3-11員含窒素非芳香族ヘテロ環基(該3-11員含窒素非芳香族ヘテロ環基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルバモイル基、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルケニルオキシ基、C1-6アルコキシカルボニル基、C2-6アルケニルオキシカルボニル基、C1-6アルキルカルボニル基、C1-6ハロアルキル基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6アルキルアミノカルボニル基、C1-6アルキルカルボニルオキシ基、C1-6アルキルカルボニルアミノ基及びC1-6アルコキシカルボニルアミノ基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)を形成している)、又は
C2-9芳香族複素環式基(該C2-9芳香族複素環式基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルバモイル基、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルケニルオキシ基、C1-6アルコキシカルボニル基、C2-6アルケニルオキシカルボニル基、C1-6アルキルカルボニル基、C1-6ハロアルキル基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6アルキルアミノカルボニル基、C1-6アルキルカルボニルオキシ基、C1-6アルキルカルボニルアミノ基及びC1-6アルコキシカルボニルアミノ基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)であり、
nは、1から3の整数である。ここで、nが2又は3であるとき、2又は3のR及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)で示されるヌクレオシド構造を1以上含む人工オリゴヌクレオチド又はその製薬上許容される塩。
【0013】
12.Bxが、6-アミノプリン-9-イル基、2-アミノ-6-ヒドロキシプリン-9-イル基、2-オキソ-4-アミノ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-アミノ-5-メチル-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-ヒドロキシ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基又は2-オキソ-4-ヒドロキシ-5-メチル-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基である、11.に記載の人工オリゴヌクレオチド又はその製薬上許容される塩。
13.R、R、R及びRが、水素原子である、11.又は12.に記載の人工オリゴヌクレオチド又はその製薬上許容される塩。
14.Yが、NRであり、該R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はC1-3アルキル基である、11.から13.の何れか一つに記載の人工オリゴヌクレオチド又はその製薬上許容される塩。
15.Yが、NRであり該R及びRは、これらが結合している窒素原子と一緒になって、モルホリンを形成している、11.から13.の何れか一つに記載の人工オリゴヌクレオチド又はその製薬上許容される塩。
16.Yが、ピリジル基、イミダゾリル基又はベンゾイミダゾリル基である、11.から13.の何れか一つに記載の人工オリゴヌクレオチド又はその製薬上許容される塩。
17.nが2である、11.から16.の何れか一つに記載の人工オリゴヌクレオチド又はその製薬上許容される塩。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、ヌクレアーゼ耐性に優れる人工オリゴヌクレオチド及びこれを構成可能な人工ヌクレオシド及び人工ヌクレオチドが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る人工オリゴヌクレオチドのエキソヌクレアーゼ耐性を示す図である。
図2】本実施形態に係る人工オリゴヌクレオチドのエキソヌクレアーゼ耐性を示す図である。
図3】本実施形態に係る人工オリゴヌクレオチドのヒト肝癌由来細胞におけるAldolase Aの発現レベルへの影響を示すグラフである。
図4】本実施形態に係る人工オリゴヌクレオチドのヒト肝癌由来細胞におけるBCKDKの発現レベルへの影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において使用される用語は、特に言及する場合を除いて、当該分野で通常用いられる意味で用いられる。以下に、本明細書中で使用する各用語を説明する。なお、本明細書中、各用語は単独で使用されている場合も、又は他の用語と一緒になって使用されている場合も、特に記載の無い限り、同一の意義を有する。
本明細書中「n-」はノルマル、「i-」はイソ、「sec-」はセカンダリー、「tert-」はターシャリー、「m-」はメタ、「p-」はパラを意味する。「Ph」はフェニル、「Me」はメチル、「Pr」はプロピル、「Bu」はブチル、「DMTr」はジメトキシトリチルを意味する。
また、本明細書において「2-オキソ-ピリミジン-1-イル基」及び「2-チオキソ-ピリミジン-1-イル基」とは、「2-オキソ-1H-ピリミジン-1-イル基」及び「2-チオキソ-1H-ピリミジン-1-イル基」の「1H」を省略して記載したものであり、「2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基」及び「2-チオキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基」、並びに「1H-ピリミジン-2-オン-1-イル」及び「1H-ピリミジン-2-チオン-1-イル」とそれぞれ同義である。さらにこれらの部分構造に互変異性体が存在する場合、そのうちの一つの名称ですべての互変異性体を代表するものとする。
保護基により置換された官能基とは、官能基が有する水素原子が保護基により置換された官能基を意味する。
【0017】
「C2-9芳香族複素環」とは、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から任意に選択される同一又は異なるヘテロ原子を環内に1以上有し、環を構成する炭素原子数が2から9である芳香族の単環又は縮合環を意味する。C2-9芳香族複素環としては、例えば、プリン、ピリミジン、チオフェン、フラン、イソベンゾフラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、イソキサゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピラジン、インドリジン、インドール、イソインドール、イソキノリン、キノリン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、プテリジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾイミダゾール等が挙げられる。
【0018】
「C6-10芳香族炭素環」とは、環を構成する原子が全て炭素原子であり、環を構成する原子数が6から10である芳香族の単環又は縮合環を意味する。C6-10芳香族炭素環としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン等が挙げられる。
【0019】
「C2-9芳香族複素環式基」とは、前記「C2-9芳香族複素環」から、任意の位置の水素原子を1個取り除いた1価の置換基を意味する。C2-9芳香族複素環式基としては、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、オキサジアゾリル基(1,2,4-オキサジアゾリル基、1,3,4-オキサジアゾリル基)、チアジアゾリル基(1,2,4-チアジアゾリル基、1,3,4-チアジアゾリル基)、トリアゾリル基(1,2,4-トリアゾリル基、1,2,3-トリアゾリル基)、テトラゾリル基、トリアジニル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリル基、キノキサリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、ベンズオキサゾリル基、ベンズイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、インドリル基、インダゾリル基、ピロロピリジル基、ピラゾロピリジル基、イミダゾピリジル基、チエノピリジル基、ピロロピラジニル基、ピラゾロピラジニル基、イミダゾピラジニル基、チエノピラジニル基、ピロロピリミジニル基、ピラゾロピリミジニル基、イミダゾピリミジニル基、チエノピリミジニル基、ピラゾロチエニル基等が挙げられ、好ましくはピリジル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基等が挙げられる。
【0020】
「C6-10芳香族炭素環式基」とは、前記「C6-10芳香族炭素環」から、任意の位置の水素原子を1個取り除いた1価の置換基を意味する。C6-10芳香族炭素環式基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0021】
「3-11員含窒素非芳香族ヘテロ環」とは、少なくとも1個以上の窒素原子を含有する、環を構成する原子数が3乃至11個である単環系、縮合環系(該縮合環系では、非芳香族環が非芳香族環又は芳香族環に縮合していてもよい。)、橋架け環系又はスピロ環系の非芳香族性の複素環を意味する。ここで、環中にカルボニル基、チオカルボニル基、二重結合又は三重結合を含んでいてもよく、環を構成する原子中に硫黄原子が含まれる場合、その硫黄原子はスルフィニル基又はスルホニル基であってもよい。3-11員含窒素非芳香族ヘテロ環の具体例としては、アゼチジン、ピロリジン、ピロリジノン、ピペリジン、ピペリジノン、アゼパン、アゾカン、オキサゾリジン、イソキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、ピペラジン、ピペラジノン、モルホリン、チオモルホリン、ホモモルホリン、ホモピペラジン、6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ(3,2-d)ピリミジン、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ(2,3-d)ピリダジン、5,6,7,8-テトラヒドロ-(1,2,4)トリアゾロ(1,5-a)ピラジン、2,7-ジアザスピロ[4.4]ノナン、6-オキサ-2,9-ジアザスピロ[4.5]デカン、1,8-ジアザスピロ[5.5]ウンデカン、3-アザビシクロ[3.3.1]ノナン等が挙げられる。
【0022】
「4-8員含窒素非芳香族ヘテロ環」とは、前記「3-11員含窒素非芳香族ヘテロ環」のうち、環を構成する原子数が4乃至8個であるヘテロ環を意味する。4-8員含窒素非芳香族ヘテロ環の具体例としては、アゼチジン、ピロリジン、ピロリジノン、ピペリジン、ピペリジノン、アゼパン、アゾカン、オキサゾリジン、イソキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、ピペラジン、ピペラジノン、モルホリン、チオモルホリン、ホモモルホリン、ホモピペリジン、ホモピペラジン等が挙げられる。
【0023】
「3-11員含窒素非芳香族ヘテロ環基」とは、前記「3-11員含窒素非芳香族ヘテロ環」から、任意の位置の水素原子を1個取り除いた1価の置換基を意味する。
【0024】
「4-8員含窒素非芳香族ヘテロ環基」とは、前記「4-8員含窒素非芳香族ヘテロ環」から、任意の位置の水素原子を1個取り除いた1価の置換基を意味する。
【0025】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。
【0026】
「C1-18アルキル基」とは、炭素数が1から18の直鎖又は分枝状の飽和の炭化水素基を意味する。C1-18アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デカニル基、n-ウンデカニル基、n-ドデカニル基、n-オクタデカニル基等が挙げられる。
【0027】
「C1-6アルキル基」とは、前記「C1-18アルキル基」のうち、炭素数が1から6の直鎖又は分枝状の飽和の炭化水素基を意味する。C1-6アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられる。同様に「C1-4アルキル基」とは、炭素数が1から4の直鎖又は分枝状の飽和の炭化水素基を意味し、「C1-3アルキル基」とは、炭素数が1から3の直鎖又は分枝状の飽和の炭化水素基を意味する。
【0028】
「C2-18アルケニル基」とは、任意の位置に1以上の二重結合を有する、炭素数が2から18の直鎖又は分枝状の炭化水素基を意味する。C2-18アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、ブタジエニル基、ペンテニル基、イソペンテニル基、ペンタジエニル基、ヘキセニル基、イソヘキセニル基、ヘキサジエニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デカネニル基、ウンデカネニル基、ドデカネニル基、オクタデカネニル基等が挙げられる。
【0029】
「C2-6アルケニル基」とは、前記「C2-18アルケニル基」のうち、任意の位置に1以上の二重結合を有する、炭素数が2から6の直鎖又は分枝状の炭化水素基を意味する。C2-6アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ブタジエニル基、3-メチル-2-ブテニル基、ペンテニル基、イソペンテニル基、ペンタジエニル基、ヘキセニル基、イソヘキセニル基、ヘキサジエニル基等が挙げられる。
【0030】
「C7-10アラルキル基」とは、C6-10芳香族炭素環式基又はC2-9芳香族複素環式基で置換された、C1-4アルキル基を意味する。C7-10アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、4-フェニルブチル基等が挙げられる。「C7-10アラルキル基」は、「C2-10芳香族アラルキル基」等ともいうことができる。
前記「C7-10アラルキル基」に置換基が置換されている場合、特に限定がない限り、該置換基は独立して、C6-10芳香族炭素環又はC2-9芳香族複素環部分に置換されていても、C1-4アルキル部分に置換されていても、両方に置換されていてもよい。
【0031】
「C1-6アルコキシ基」とは、前記「C1-6アルキル基」がオキシ基に結合した基を意味する。C1-6アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、n-へキシルオキシ基等が挙げられる。
【0032】
「C2-6アルケニルオキシ基」とは、前記「C2-6アルケニル基」がオキシ基に結合した基を意味する。C2-6アルケニルオキシ基としては、例えば、ビニルオキシ基、アリルオキシ基、1-プロペニルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、ブテニルオキシ基、イソブテニルオキシ基、3-メチル-2-ブテニルオキシ基、ブタジエニルオキシ基、ペンテニルオキシ基、イソペンテニルオキシ基、ペンタジエニルオキシ基、ヘキセニルオキシ基、イソヘキセニルオキシ基、ヘキサジエニルオキシ基等が挙げられる。
【0033】
「C1-6アルコキシカルボニル基」とは、前記「C1-6アルコキシ基」がカルボニル基に結合した基を意味する。C1-6アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、n-へキシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0034】
「C2-6アルケニルオキシカルボニル基」とは、前記「C2-6アルケニルオキシ基」がカルボニル基に結合した基を意味する。C2-6アルケニルオキシカルボニル基としては、例えば、ビニルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、1-プロペニルオキシカルボニル基、イソプロペニルオキシカルボニル基、ブテニルオキシカルボニル基、イソブテニルオキシカルボニル基、3-メチル-2-ブテニルオキシカルボニル基、ブタジエニルオキシカルボニル基、ペンテニルオキシカルボニル基、イソペンテニルオキシカルボニル基、ペンタジエニルオキシカルボニル基、ヘキセニルオキシカルボニル基、イソヘキセニルオキシカルボニル基、ヘキサジエニルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0035】
「C1-6アルキルカルボニル基」とは、前記「C1-6アルキル基」がカルボニル基に結合した基を意味する。C1-6アルキルカルボニル基としては、例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、n-プロピルカルボニル基、イソプロピルカルボニル基、n-ブチルカルボニル基、tert-ブチルカルボニル基、イソブチルカルボニル基、sec-ブチルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、イソペンチルカルボニル基、n-へキシルカルボニル基等が挙げられる。
【0036】
「C1-6ハロアルキル基」とは、1以上の前記「ハロゲン原子」で前記「C1-6アルキル基」の任意の位置の水素原子が置換されてなる基を意味する。C1-6ハロアルキル基としては、例えば、モノフルオロメチル基、モノフルオロエチル基、モノフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、モノクロロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、1,2-ジブロモエチル基、1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル基等が挙げられる。
【0037】
「C1-6アルキルアミノ基」は、C1-6モノアルキルアミノ基及びC1-6ジアルキルアミノ基を含む。「C1-6モノアルキルアミノ基」とは、1個の前記「C1-6アルキル基」がアミノ基に結合した基を意味する。C1-6モノアルキルアミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、n-ペンチルアミノ基、n-ヘキシルアミノ基等が挙げられる。「C1-6ジアルキルアミノ基」とは、2個の前記「C1-6アルキル基」がアミノ基に結合した基を意味する。2個のアルキル基は、同一でも異なっていてもよい。C1-6ジアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、N,N-ジイソプロピルアミノ基、N-メチル-N-エチルアミノ基、N-イソプロピル-N-メチルアミノ基、N-n-ブチル-N-メチルアミノ基、N-tert-ブチル-N-メチルアミノ基、N-メチル-N-n-ペンチルアミノ基、N-n-ヘキシル-N-メチルアミノ基、N-イソプロピル-N-エチルアミノ基等が挙げられる。
【0038】
「C1-6アルキルアミノカルボニル基」は、前記「C1-6アルキルアミノ基」がカルボニル基に結合した基を意味する。
【0039】
「C1-6アルキルカルボニルオキシ基」は、前記「C1-6アルキルカルボニル基」がオキシ基に結合した基を意味する。
【0040】
「C1-6アルキルカルボニルアミノ基」は、1つの前記「C1-6アルキルカルボニル基」がアミノ基に結合した基を意味する。
【0041】
「C1-6アルコキシカルボニルアミノ基」は、1つの前記「C1-6アルコキシカルボニル基」がアミノ基に結合した基を意味する。
【0042】
「ヒドロキシ基保護基」は、核酸合成の際に安定してヒドロキシ基を保護し得る保護基であれば、特に限定されない。具体的には、酸性又は中性条件で安定であり、加水素分解、加水分解、電気分解及び光分解のような化学的方法により開裂し得る保護基である。ヒドロキシ基保護基としては例えば、C1-6アルキル基及びC2-6アルケニル基(C1-6アルキル基及びC2-6アルケニル基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1-6アルコキシ基(C1-6アルコキシ基は、無置換であるか、又は下記置換基群Aから単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)、C6-10芳香族炭素環式基及びC2-9芳香族複素環式基(C6-10芳香族炭素環式基及びC2-9芳香族複素環式基は、無置換であるか、又は下記置換基群Bから単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)、並びにシリル基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1から3の置換基により置換されている。ここで2以上の置換基で置換されている場合、2以上の置換基は互いに単結合、酸素原子を介して結合していてもよい)、ホルミル基、脂肪族アシル基、芳香族アシル基、シリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオフラニル基、C6-10芳香族炭素環式基、C2-9芳香族複素環式基(テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオフラニル基、C6-10芳香族炭素環式基及びC2-9芳香族複素環式基は、無置換であるか、又は下記置換基群Bから単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)、C1-6アルコキシカルボニル基(C1-6アルコキシカルボニル基は、無置換であるか、又はハロゲン原子又はトリアルキルシリル基で置換されている)、C2-6アルケニルオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基(アラルキルオキシカルボニル基は、無置換であるか、又は下記置換基群Bから単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で芳香族炭素環部分が置換されている)、脂肪族スルホニル基、芳香族スルホニル基並びにC6-10アリールオキシ基で置換されたC1-6アルキルカルボニル基が挙げられる。
【0043】
ここで、置換基群Aは、ハロゲン原子、C1-6アルコキシ基、C2-6アルケニルオキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、カルバモイル基、アミノ基、ヒドロキシ基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6アルコキシカルボニル基、C2-6アルケニルオキシカルボニル基、C1-6アルキルカルボニル基、C1-6アルキルアミノカルボニル基、C1-6アルキルカルボニルオキシ基、C1-6アルキルカルボニルアミノ基、C1-6アルコキシカルボニルアミノ基及びC6-10芳香族炭素環式基により構成される置換基群である。
【0044】
ここで置換基群Bは、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルケニル基、C2-6アルケニルオキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、カルバモイル基、アミノ基、ヒドロキシ基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6アルコキシカルボニル基、C2-6アルケニルオキシカルボニル基、C1-6アルキルカルボニル基、C1-6アルキルアミノカルボニル基、C1-6アルキルカルボニルオキシ基、C1-6アルキルカルボニルアミノ基、C1-6アルコキシカルボニルアミノ基及びC6-10芳香族炭素環式基により構成される置換基群である。
またC6-10アリールオキシ基は、「C6-10芳香族炭素環式基」がオキシ基に結合した基を意味する。
【0045】
「脂肪族アシル基」とは、前記C1-18アルキル基又はC2-18アルケニル基(C1-18アルキル基及びC2-18アルケニル基は、無置換であるか、又は前記置換基群Aより単独に若しくは異なって選ばれる1つ以上の置換基で置換されている)がカルボニル基に結合した基を意味する。脂肪族アシル基としては例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、ピバロイル基、バレリル基、イソバレリル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、3-メチルノナノイル基、8-メチルノナノイル基、3-エチルオクタノイル基、3,7-ジメチルオクタノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ペンタデカノイル基、ヘキサデカノイル基、1-メチルペンタデカノイル基、14-メチルペンタデカノイル基、13,13-ジメチルテトラデカノイル基、ヘプタデカノイル基、15-メチルヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、スクシノイル基、グルタロイル基、アジポイル基、クロロアセチル基、ジクロロアセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、メトキシアセチル基、ベンジルカルボニル基、(E)-2-メチル-2-ブテノイル基等が挙げられる。
【0046】
「芳香族アシル基」とは、C6-10芳香族炭素環式基又はC2-9芳香族複素環式基(C6-10芳香族炭素環式基及びC2-9芳香族複素環式基は、無置換であるか、又は前記置換基群Bから単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)がカルボニル基に結合した1価の置換基を意味する。芳香族アシル基としては、例えば、ベンゾイル基、α-ナフトイル基、β-ナフトイル基、2-ブロモベンゾイル基、4-クロロベンゾイル基、2,4,6-トリメチルベンゾイル基、4-トルオイル基、4-アニソイル基、2-カルボキシベンゾイル基、3-カルボキシベンゾイル基、4-カルボキシベンゾイル基、4-ニトロベンゾイル基、2-ニトロベンゾイル基、2-(メトキシカルボニル)ベンゾイル基、4-フェニルベンゾイル基、2-ピリジルカルボニル基、4-メトキシ-2-ピリジルカルボニル基、3-ピリジルカルボニル基、4-ピリジルカルボニル基、2-ピリミジルカルボニル基、4-ピリミジルカルボニル基、5-ピリミジルカルボニル基、3-ピリダジニルカルボニル基、4-ピリダジニルカルボニル基等が挙げられる。
【0047】
「シリル基」とは、ケイ素原子に、水素原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C6-10芳香族炭素環式基及びC2-9芳香族複素環式基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる3個の置換基が結合した一価の置換基を意味する。シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、メチルジイソプロピルシリル基、メチルジ-tert-ブチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、ジフェニル-tert-ブチルシリル基、ジフェニルイソプロピルシリル基、フェニルジイソプロピルシリル基等が挙げられる。ここで、シリル基が2個以上のヒドロキシ基を有する分子の1個のヒドロキシ基の酸素原子に結合するとき、シリル基を構成する3個の置換基のうち1個の置換基は、その分子の別のヒドロキシ基の酸素原子に置き換わっていてもよい。また、シリル基が2個以上のヒドロキシ基を有する分子の1個のヒドロキシ基の酸素原子に結合し、その分子の別のヒドロキシ基の酸素原子にも別のシリル基が結合するとき、該2つのシリル基を構成する3個の置換基のうちそれぞれ1個の置換基が1つの酸素原子に置き換わり、下記式(III)で示される基を形成してもよい。
【0048】
【化3】
【0049】
式中、RSiは、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C6-10芳香族炭素環式基又はC2-9芳香族複素環式基を意味し、Oは、該シリル基が結合するヒドロキシ基の酸素原子を意味する。
【0050】
前記式(III)で示される基としては、例えば、下記式(IV-1)から(IV-4)で示される基等が挙げられる。
【0051】
【化4】
【0052】
式中、Oは、該シリル基が結合するヒドロキシ基の酸素原子を意味する。
【0053】
「トリアルキルシリル基」とは、前記「シリル基」のうち、ケイ素原子に3個のC1-6アルキル基が結合した、一価の置換基を意味し、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、メチルジイソプロピルシリル基、メチルジ-tert-ブチルシリル基及びトリイソプロピルシリル基等が挙げられる。
【0054】
「テトラヒドロピラニル基」としては、テトラヒドロピラン-2-イル基等が挙げられる。前記置換基群Bから単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されているテトラヒドロピラニル基としては、3-ブロモテトラヒドロピラン-2-イル基、4-メトキシテトラヒドロピラン-4-イル基等が挙げられる。
「テトラヒドロチオピラニル基」としては、テトラヒドロチオピラン-2-イル基等が挙げられる。前記置換基群Bから単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されているテトラヒドロチオピラニル基としては、4-メトキシテトラヒドロチオピラン-4-イル基等が挙げられる。
【0055】
「テトラヒドロフラニル基」としては、テトラヒドロフラン-2-イル基等が挙げられる。「テトラヒドロチオフラニル基」としては、テトラヒドロチオフラン-2-イル基等が挙げられる。
【0056】
「脂肪族スルホニル基」とは、C1-18アルキル基又はC2-18アルケニル基(該C1-18アルキル基及びC2-18アルケニル基は、無置換であるか、又は前記置換基群Aより単独に若しくは異なって選ばれる1つ以上の置換基で置換されている)がスルホニル基に結合した基を意味する。脂肪族スルホニル基としては、例えば、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基等が挙げられる。
「芳香族スルホニル基」とは、C6-10芳香族炭素環式基又はC2-9芳香族複素環式基(該C6-10芳香族炭素環式基及びC2-9芳香族複素環式基は、無置換であるか又は、前記置換基群Bより単独に若しくは異なって選ばれる1つ以上の置換基で置換されている)がスルホニル基に結合した1価の置換基を意味する。芳香族スルホニル基としては、例えば、ベンゼンスルホニル基、p-トルエンスルホニル基等が挙げられる。
【0057】
C1-6アルコキシ基で置換されたC1-6アルキル基としては、メトキシメチル基、1,1-ジメチル-1-メトキシメチル基、エトキシメチル基、n-プロポキシメチル基、イソプロポキシメチル基、ブトキシメチル基、tert-ブトキシメチル基、1-エトキシエチル基、1-(イソプロポキシ)エチル基等が挙げられる。
C1-6アルコキシ基で置換されたC1-6アルコキシ基で置換されたC1-6アルキル基としては、2-メトキシエトキシメチル基等が挙げられる。
ハロゲン原子で置換されたC1-6アルコキシ基で置換されたC1-6アルキル基としては、2,2,2-トリクロロエトキシメチル基、ビス(2-クロロエトキシ)メチル基等が挙げられる。
【0058】
前記置換基群Bから単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されているC6-10芳香族炭素環式基としては、4-クロロフェニル基、2-フルオロフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-ニトロフェニル基、2,4-ジニトロフェニル基等が挙げられる。
ハロゲン原子又はトリアルキルシリル基で置換されたC1-6アルコキシカルボニル基としては、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基、2-トリメチルシリルエトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0059】
アラルキルオキシカルボニル基とは、C6-10芳香族炭素環式基又はC2-9芳香族複素環式基がC1-6アルコキシカルボニル基のアルキル基部分に結合した1価の置換基を意味する。アラルキルオキシカルボニル基に置換基が置換されている場合、特に限定がない限り、該置換基は独立して、C6-10芳香族炭素環又はC2-9芳香族複素環部分に置換されていても、C1-6アルコキシカルボニル部分に置換されていても、両方に置換されていてもよい。
無置換であるか、又は前記置換基群Bから単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基でC6-10芳香族炭素環部分が置換されているアラルキルオキシカルボニル基としては、ベンジルオキシカルボニル基、4-メトキシベンジルオキシカルボニル基、3,4-ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、2-ニトロベンジルオキシカルボニル基、4-ニトロベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0060】
Bxにおける好ましいヒドロキシ基保護基としては、C1-6アルキル基及びC2-6アルケニル基(該C1-6アルキル基及びC2-6アルケニル基は、無置換であるか、又は1から3個のC6-10芳香族炭素環式基(該C6-10芳香族炭素環式基は、無置換であるか又は前記置換基群Bから単独に若しくは異なって選ばれる1つ以上の置換基で置換されている)により置換されている)、テトラヒドロピラニル基、脂肪族アシル基、芳香族アシル基、シリル基並びにC6-10芳香族炭素環式基(該C6-10芳香族炭素環式基は、ハロゲン原子、C1-6アルコキシ基及びニトロ基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)が挙げられる。さらに好ましいヒドロキシ基保護基としては、C1-6アルキル基(該C1-6アルキル基は、無置換であるか、又は1から3個のC6-10芳香族炭素環式基(該C6-10芳香族炭素環式基は、無置換であるか又は、メトキシ基及びニトロ基から独立して選ばれる1つ以上の置換基で置換されている)により置換されている)、脂肪族アシル基、芳香族アシル基及びシリル基が挙げられ、さらにより好ましいヒドロキシ基保護基には、ベンゾイル基及びベンジル基が挙げられ、特に好ましいヒドロキシ基保護基には、ベンゾイル基が挙げられる。
【0061】
「スルファニル基保護基」は、核酸合成の際に安定してスルファニル基を保護し得る保護基であれば、特に限定されない。具体的には、酸性又は中性条件で安定であり、加水素分解、加水分解、電気分解及び光分解のような化学的方法により開裂し得る保護基である。
例えば、前記「ヒドロキシ基保護基」として挙げられたものの他、ジスルフィド結合を形成する基も含む。ジスルフィド結合を形成する基としては、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、tert-ブチルチオ基)及びC6-10芳香族炭素環式基で置換されたアルキルチオ基(ベンジルチオ等)等が挙げられる。
好ましいスルファニル基保護基は、脂肪族アシル基又は芳香族アシル基である。さらに好ましくは、ベンゾイル基である。
【0062】
「アミノ基保護基」は、核酸合成の際に安定してアミノ基を保護し得る保護基であれば、特に限定されない。具体的には、酸性又は中性条件で安定であり、加水素分解、加水分解、電気分解及び光分解のような化学的方法により開裂し得る保護基である。
例えば、前記「ヒドロキシ基保護基」の保護基として挙げられたものが挙げられる。
Bxにおける好ましいアミノ基保護基は、脂肪族アシル基、芳香族アシル基又はC6-10アリールオキシ基で置換されたC1-6アルキルカルボニル基である。より好ましくは、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、モノメトキシベンゾイル基、ジメトキシベンゾイル基、トリメトキシベンゾイル基又はフェノキシアセチル基であり、さらに好ましくは、アセチル基、イソブチリル基又はベンゾイル基であり、特に好ましくはベンゾイル基である。
【0063】
本発明における「ヒドロキシ基保護基」、「スルファニル基保護基」及び「アミノ基保護基」の導入及び脱保護については、当業者に良く知られた、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス第4版(Protective Groups in Organic Synthesis, Fourth edition)、グリーン(T.W.Greene)著、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイティッド(John Wiley & Sons Inc.)(2006年)等を参照可能である。
【0064】
[人工ヌクレオシド及び人工ヌクレオチド]
本実施形態の人工ヌクレオシド及び人工ヌクレオチドは、下記式(I)で示される化合物、又はその塩である。2’位酸素原子上のカルバモイルエチル基窒素原子に、アルキル基を介してアミノ基あるいは複素環基が導入されていることで、ヌクレアーゼ耐性に非常に優れるオリゴヌクレオチドを構成することができる。
【0065】
【化5】
【0066】
Bxは、プリン-9-イル基、2-オキソ-ピリミジン-1-イル基又は2-チオキソ-ピリミジン-1-イル基であり、該プリン-9-イル基、2-オキソ-ピリミジン-1-イル基及び2-チオキソ-ピリミジン-1-イル基はそれぞれ独立して、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1-6アルキル基、アミノ基、アミノ基保護基により置換されたアミノ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシ基保護基により置換されたヒドロキシ基、スルファニル基及びスルファニル基保護基により置換されたスルファニル基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている。
【0067】
及びZはそれぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基保護基又はリン含有基である。
、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、C1-6アルキル基又はC2-6アルケニル基であり、該C1-6アルキル基及びC2-6アルケニル基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1-6アルコキシ基及びシアノ基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている。
【0068】
Yは、NR又はC2-9芳香族複素環式基である。NRにおけるR及びRはそれぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基若しくはC2-6アルケニル基(該C1-6アルキル基及びC2-6アルケニル基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルバモイル基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルケニルオキシ基、C1-6アルコキシカルボニル基、C2-6アルケニルオキシカルボニル基、C1-6アルキルカルボニル基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6アルキルアミノカルボニル基、C1-6アルキルカルボニルオキシ基、C1-6アルキルカルボニルアミノ基及びC1-6アルコキシカルボニルアミノ基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)又はC7-10アラルキル基(該C7-10アラルキル基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルバモイル基、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルケニルオキシ基、C1-6アルコキシカルボニル基、C2-6アルケニルオキシカルボニル基、C1-6アルキルカルボニル基、C1-6ハロアルキル基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6アルキルアミノカルボニル基、C1-6アルキルカルボニルオキシ基、C1-6アルキルカルボニルアミノ基及びC1-6アルコキシカルボニルアミノ基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)であるか、又はR及びRは、これらが結合している窒素原子と一緒になって、3-11員含窒素非芳香族ヘテロ環基(該3-11員含窒素非芳香族ヘテロ環基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルバモイル基、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルケニルオキシ基、C1-6アルコキシカルボニル基、C2-6アルケニルオキシカルボニル基、C1-6アルキルカルボニル基、C1-6ハロアルキル基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6アルキルアミノカルボニル基、C1-6アルキルカルボニルオキシ基、C1-6アルキルカルボニルアミノ基及びC1-6アルコキシカルボニルアミノ基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)を形成している。
C2-9芳香族複素環式基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルバモイル基、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルケニルオキシ基、C1-6アルコキシカルボニル基、C2-6アルケニルオキシカルボニル基、C1-6アルキルカルボニル基、C1-6ハロアルキル基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6アルキルアミノカルボニル基、C1-6アルキルカルボニルオキシ基、C1-6アルキルカルボニルアミノ基及びC1-6アルコキシカルボニルアミノ基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている。
【0069】
nは、1から3の整数である。ここで、nが2又は3であるとき、2又は3のR及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0070】
なお、本実施形態における人工ヌクレオシドとは、式(I)で示される化合物のうち、Z及びZが水素原子の化合物を意味し、人工ヌクレオチドとは、式(I)で示される化合物のうち、Z及びZの少なくとも一方がリン含有基の化合物を意味する。
【0071】
Bxは、プリン-9-イル基、2-オキソ-ピリミジン-1-イル基又は2-チオキソ-ピリミジン-1-イル基を表す。プリン-9-イル基、2-オキソ-ピリミジン-1-イル基及び2-チオキソ-ピリミジン-1-イル基は、無置換でもよく、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、アミノ基、ヒドロキシ基及びスルファニル基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい。ここでアミノ基は、無置換でもよく、アミノ基保護基により置換されていてもよい。またヒドロキシ基は、無置換でもよく、ヒドロキシ基保護基により置換されていてもよい。スルファニル基は、無置換でもよく、スルファニル基保護基により置換されていてもよい。
【0072】
プリン-9-イル基、2-オキソ-ピリミジン-1-イル基及び2-チオキソ-ピリミジン-1-イル基は、人工ヌクレオシド又は人工ヌクレオチドの塩基部分を構成する置換もしくは無置換の複素環式基であり、核酸塩基の残基又はその類縁体を含む置換基を意味する。天然の核酸塩基としては、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)及びウラシル(U)が挙げられる。核酸塩基は、それらに限定されず、他の人工又は天然の核酸塩基も含まれる。例えば、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、2-チオチミン等が挙げられる。
Bxの具体例としては、下記式(V-1)から(V-10)で示される基が挙げられる。
【0073】
【化6】
【0074】
は、水素原子又はアミノ基保護基であり、Rは、水素原子又はアミノ基保護基である。
におけるアミノ基保護基は、好ましくは、C1-6アルキル基、脂肪族アシル基、芳香族アシル基、C6-10アリールオキシ基で置換されたC1-6アルキルカルボニル基である。
におけるアミノ基保護基は、好ましくは、C1-6アルキル基、脂肪族アシル基、芳香族アシル基、C6-10アリールオキシ基で置換されたC1-6アルキルカルボニル基である。
【0075】
は、好ましくは、水素原子、イソブチリル基、アセチル基、ベンゾイル基、フェノキシアセチル基であり、特に好ましくは水素原子である。Rは、好ましくは、水素原子、イソブチリル基、アセチル基、ベンゾイル基、フェノキシアセチル基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0076】
Bxは、好ましくは、プリン-9-イル基又は2-オキソ-ピリミジン-1-イル基である。プリン-9-イル基及び2-オキソ-ピリミジン-1-イル基は、無置換でもよく、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、アミノ基、ヒドロキシ基及びスルファニル基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい。ここでアミノ基は、無置換でもよく、アミノ基保護基により置換されていてもよい。またヒドロキシ基は、無置換でもよく、ヒドロキシ基保護基により置換されていてもよい。スルファニル基は、無置換でもよく、スルファニル基保護基により置換されていてもよい。
【0077】
Bxは、より好ましくは、6-アミノプリン-9-イル基(アデニン残基;V-9においてR=H)、2-アミノ-6-ヒドロキシプリン-9-イル基(グアニン残基;V-10においてR=H)、2-オキソ-4-アミノ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基(シトシン残基;V-4においてR=H)、2-オキソ-4-アミノ-5-メチル-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基(5-メチルシトシン残基;V-3においてR=H)、2-オキソ-4-ヒドロキシ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基(ウラシル残基;V-2においてR=H)及び2-オキソ-4-ヒドロキシ-5-メチル-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基(チミン残基;V-1においてR=H)からなる群から選択される少なくとも1種であり、さらにより好ましくは、2-オキソ-4-ヒドロキシ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基又は2-オキソ-4-ヒドロキシ-5-メチル-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基であり、特に好ましくは、2-オキソ-4-ヒドロキシ-5-メチル-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基である。
【0078】
及びZはそれぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基保護基又はリン含有基を表す。
及びZにおけるヒドロキシ基保護基としては、既述の「核酸合成の際に安定してヒドロキシ基を保護し得る保護基」であるヒドロキシ基保護基が挙げられる。好ましくはC1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、脂肪族アシル基、芳香族アシル基、テトラヒドロピラニル基、シリル基、脂肪族スルホニル基、芳香族スルホニル基等が挙げられる。ここで、C1-6アルキル基及びC2-6アルケニル基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1-6アルコキシ基(C1-6アルコキシ基は、無置換であるか、又は前記置換基群Aから単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)、C6-10芳香族炭素環式基及びC2-9芳香族複素環式基(C6-10芳香族炭素環式基及びC2-9芳香族複素環式基は、無置換であるか、又は前記置換基群Bから単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1から3個の置換基により置換されている。また、Zがシリル基であるとき、シリル基を構成する1個の置換基は、3’位の酸素原子に置き換わっていてもよく、Zがシリル基であるとき、シリル基を構成する1個の置換基は、5’位の酸素原子に置き換わっていてもよい。また、Z及びZがシリル基であるとき、Z及びZは、それらがそれぞれ結合する酸素原子と一緒になって、下記式(III)で示される基を形成してもよい。
【0079】
【化7】
【0080】
式中、RSiは、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C6-10芳香族炭素環式基又はC2-9芳香族複素環式基を意味し、Oは、該シリル基が結合するヒドロキシ基の酸素原子を意味する。
【0081】
及びZにおけるヒドロキシ基保護基は、より好ましくは、C1-6アルキル基、テトラヒドロピラニル基、脂肪族アシル基、芳香族アシル基又はシリル基である。ここで、C1-6アルキル基は、無置換であるか、又はハロゲン、C1-6アルコキシ基及びC6-10芳香族炭素環式基(C6-10芳香族炭素環式基は、無置換であるか、又は前記置換基群Bから単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1から3個の置換基により置換されている。
及びZにおけるヒドロキシ基保護基は、さらに好ましくは、C1-6アルキル基又はシリル基である。
ここで、C1-6アルキル基は、C6-10芳香族炭素環式基(C6-10芳香族炭素環式基は、無置換であるか、又は前記置換基群Bから単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1から3個の置換基により置換されている。またZ及びZは、それらがそれぞれ結合する酸素原子と一緒になって、前記式(III)で示される基を形成してもよい。
【0082】
及びZにおけるリン含有基とは、リン原子を含有する基であり、ホスホジエステル構造又はホスホロチオエート構造が含まれるヌクレオシド間結合を形成するために有用な基を意味する。Z及びZにおけるリン含有基としては、当該分野で公知のリン含有基を用いることができ、例えば、ホスホロアミダイトに由来する基、H-ホスホネートに由来する基、リン酸ジエステルに由来する基、リン酸トリエステルに由来する基等が挙げられる。
【0083】
具体的には、以下に記載の式(Z-1)から式(Z-3)のいずれかで示される基が挙げられる。
式(Z-1):-P(ORX1)(NRX2
式中、RX1及びRX2は、それぞれ独立してC1-6アルキル基であり、該アルキル基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1-6アルコキシ基、シアノ基、C6-10芳香族炭素環式基及びC2-9芳香族複素環式基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている。
【0084】
式(Z-2):-P(=RX3)(ORX4
式中、RX3は酸素原子又は硫黄原子であり、RX4はそれぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基保護基、C1-6アルキル基、又はC6-10芳香族炭素環式基であり、該アルキル基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1-6アルコキシ基、シアノ基、C6-10芳香族炭素環式基及びC2-9芳香族複素環式基からなる置換基群から単独に若しくは異なって選ばれる1つ以上の置換基で置換されており、該芳香族炭素環式基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキル基及びシアノ基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている。
【0085】
式(Z-3):-P(=RX5)H(ORX6
式中、RX5は、酸素原子又は硫黄原子である。RX6は水素原子、ヒドロキシ基保護基、又はC6-10芳香族炭素環式基である。
【0086】
X4及びRX6中の「ヒドロキシ基保護基」は、好ましくは、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、脂肪族アシル基、芳香族アシル基、1から3個のC6-10芳香族炭素環式基で置換されたメチル基又はC6-10芳香族炭素環式基であり、該C6-10芳香族炭素環式基は、ハロゲン原子、アルコキシ基又はニトロ基から単独に若しくは異なって選ばれる置換基で置換されている。より好ましい保護基は、ベンゾイル基、ベンジル基、2-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基又は2-プロペニル基(アリル基)である。
【0087】
リン含有基は、好ましくは、式(Z-4)から式(Z-6)で示される基のいずれかである。
式(Z-4):-P(ORX1)(NRX2
式中、RX1はC1-6アルキル基又は、シアノ基で置換されたC1-6アルキル基であり、RX2はC1-6アルキル基である。
式(Z-5):-P(=O)(OH)
式(Z-6):-P(=O)H(OH)
リン含有基は、より好ましくは、シアノエトキシ(ジイソプロピルアミノ)ホスフィノ基(式:-P(OCCN)(N(i-Pr))で示される基)又はヒドロキシホスフィニル基(式:-P(=O)H(OH)で示される基)である。
【0088】
は、好ましくは水素原子又はヒドロキシ基保護基である。Zがヒドロキシ基保護基である場合、当該ヒドロキシ基保護基は、脱保護され、本実施形態の人工オリゴヌクレオチドの製造に使用されることが想定される。そのため、ヒドロキシ基保護基は、核酸合成の際に安定してヒドロキシ基を保護し得るものであれば限定されず、保護基の種類、構造は、それぞれの人工ヌクレオチド及び人工ヌクレオシドにおいて同一でも異なっていてもよい。Zは、より好ましくは、水素原子、アセチル基、tert-ブチル基、tert-ブトキシメチル基、メトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、1-エトキシエチル基、1-(2-クロロエトキシ)エチル基、2-トリメチルシリルエチル基、p-クロロフェニル基、2,4-ジニトロフェニル基、ベンジル基、ベンゾイル基、p-フェニルベンゾイル基、2,6-ジクロロベンジル基、レブリノイル基、ジフェニルメチル基、p-ニトロベンジル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ギ酸ベンゾイル基、クロロアセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、ピバロイル基、イソブチリル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基、メタンスルホニル基、p-トルエンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、トリフェニルメチル基(トリチル基)、モノメトキシトリチル基、ジメトキシトリチル基(DMTr基)、トリメトキシトリチル基、9-フェニルキサンテン-9-イル基(Pixyl基)又は9-(p-メトキシフェニル)キサンテン-9-イル基(MOX基)である。Zは、さらに好ましくは、水素原子、ベンジル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリチル基、モノメトキシトリチル基、ジメトキシトリチル基又はトリメトキシトリチル基であり、さらにより好ましくは、水素原子、トリチル基、モノメトキシトリチル基、ジメトキシトリチル基又はトリメトキシトリチル基であり、特に好ましくは、水素原子又はトリチル基である。Zとして、ジメトキシトリチル基も特に好ましい。
【0089】
は、好ましくは水素原子又はリン含有基であり、より好ましくは水素原子、式:-P(OCCN)(N(i-Pr))で示される基又は式:-P(=O)H(OH)で示される基である。
その他の様態として、上記式(I)で示される化合物、又はその塩を製造する過程においては、その中間体としてZがヒドロキシ基保護基であることが好ましい。そのため、ヒドロキシ基保護基は、核酸合成の際に安定してヒドロキシ基を保護し得るものであれば限定されず、保護基の種類、構造は、それぞれの人工ヌクレオチド及び人工ヌクレオシドにおいて同一でも異なっていてもよい。Zがヒドロキシ基保護基である場合には、当該ヒドロキシ基保護基は、好ましくは、アセチル基、tert-ブチル基、tert-ブトキシメチル基、メトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、1-エトキシエチル基、1-(2-クロロエトキシ)エチル基、2-トリメチルシリルエチル基、ベンジル基、ベンゾイル基、p-フェニルベンゾイル基、2,6-ジクロロベンジル基、レブリノイル基、ジフェニルメチル基、p-ニトロベンジル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ギ酸ベンゾイル基、クロロアセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、ピバロイル基、イソブチリル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基、メタンスルホニル基、p-トルエンスルホニル基又はトリフルオロメタンスルホニル基である。当該ヒドロキシ基保護基は、より好ましくは、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基又はトリイソプロピルシリル基である。
【0090】
その他の態様として、ZとZは、好ましくはZ及びZがそれぞれ結合する酸素原子と一緒になって、下記式(IV-1)から(IV-4)のいずれかで示される基を形成し、特に好ましくは、下記式(IV-3)で示される基を形成する。
【0091】
【化8】
【0092】
式中、Oは、該シリル基が結合するヒドロキシ基の酸素原子を意味する。
【0093】
及びRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、C1-6アルキル基又はC2-6アルケニル基を表す。ここでC1-6アルキル基及びC2-6アルケニル基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1-6アルコキシ基及びシアノ基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている。
は、好ましくは水素原子又はC1-3アルキル基であり、より好ましくは水素原子である。Rは、好ましくは水素原子又はC1-3アルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0094】
及びRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、C1-6アルキル基又はC2-6アルケニル基を表す。ここでC1-6アルキル基及びC2-6アルケニル基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1-6アルコキシ基及びシアノ基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている。ここで、nが2又は3であるとき、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
は、好ましくは水素原子又はC1-3アルキル基であり、より好ましくは水素原子である。Rは、好ましくは水素原子又はC1-3アルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0095】
Yが、NRのとき、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基又はC7-10アラルキル基を表す。ここでC1-6アルキル基及びC2-6アルケニル基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルバモイル基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルケニルオキシ基、C1-6アルコキシカルボニル基、C2-6アルケニルオキシカルボニル基、C1-6アルキルカルボニル基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6アルキルアミノカルボニル基、C1-6アルキルカルボニルオキシ基、C1-6アルキルカルボニルアミノ基及びC1-6アルコキシカルボニルアミノ基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されており、C7-10アラルキル基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルバモイル基、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルケニルオキシ基、C1-6アルコキシカルボニル基、C2-6アルケニルオキシカルボニル基、C1-6アルキルカルボニル基、C1-6ハロアルキル基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6アルキルアミノカルボニル基、C1-6アルキルカルボニルオキシ基、C1-6アルキルカルボニルアミノ基及びC1-6アルコキシカルボニルアミノ基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている。
は、好ましくは水素原子又はC1-3アルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
は、好ましくは水素原子又はC1-3アルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0096】
その他の様態として、R及びRはこれらが結合している窒素原子と一緒になって、3-11員含窒素非芳香族ヘテロ環を形成していてもよい。ここで該3-11員含窒素非芳香族ヘテロ環は、無置換であるか、又はハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルバモイル基、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルケニルオキシ基、C1-6アルコキシカルボニル基、C2-6アルケニルオキシカルボニル基、C1-6アルキルカルボニル基、C1-6ハロアルキル基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6アルキルアミノカルボニル基、C1-6アルキルカルボニルオキシ基、C1-6アルキルカルボニルアミノ基及びC1-6アルコキシカルボニルアミノ基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている。
及びRがこれらが結合している窒素原子と一緒になって形成する3-11員含窒素非芳香族ヘテロ環は、好ましくは4-8員含窒素非芳香族ヘテロ環のうち、メチレン基を4乃至6個含む環であり、ピペリジン、ピロリジン、モルホリン、チオモルホリン、ホモピペリジン、ホモモルホリン等が挙げられる。より好ましくは、さらに、環を構成する原子に酸素原子又は硫黄原子を含む環であり、モルホリン、チオモルホリン、ホモモルホリンが挙げられる。特に好ましくは、モルホリンである。また、該4-8員含窒素非芳香族ヘテロ環は無置換であることが好ましい。
【0097】
その他の様態として、YはC2-9芳香族複素環式基であってもよい。好ましくはピリジル基、イミダゾリル基又はベンゾイミダゾリル基であり、より好ましくは、2-ピリジル、イミダゾール-1-イル又は(ベンゾイミダゾ-ル)-1-イルであり、特に好ましくは、2-ピリジル又は(ベンゾイミダゾ-ル)-1-イルである。
【0098】
nは、繰り返し単位構造の数であって、1から3の整数であり、好ましくは2である。
【0099】
式(I)で示される化合物には異性体が存在する場合がある。その場合、本実施形態の化合物は特定の異性体に限定されるものではなく、全ての可能な異性体(例えば、ケト-エノール異性体、イミン-エナミン異性体、ジアステレオ異性体、光学異性体、回転異性体等)、ラセミ体及びそれらの混合物を含む。
【0100】
式(I)で示される化合物の1以上の水素原子、炭素原子及び/又は他の原子は、それぞれ水素原子、炭素原子及び/又は他の原子の同位体で置換され得る。そのような同位体の例としては、それぞれH、H、11C、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、123I及び36Clが挙げられ、同位体には水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、ヨウ素及び塩素が包含される。式(I)で示される化合物は、そのような同位体で置換された化合物も包含する。該同位体で置換された化合物は、医薬品としても有用であり、式(I)で示される化合物のすべての放射性標識体を包含する。また該「放射性標識体」を製造するための「放射性標識化方法」も本発明に包含され、代謝薬物動態研究、結合アッセイにおける研究及び/又は診断のツールとして有用である。
【0101】
式(I)で示される化合物の放射性標識体は、当該技術分野で周知の方法で調製できる。例えば、式(I)で示される化合物のトリチウム標識化合物は、例えば、トリチウムを用いた触媒的脱ハロゲン化反応によって、式(I)で示される特定の化合物にトリチウムを導入することで調製できる。この方法は、適切な触媒、例えばPd/Cの存在下、塩基の存在下又は非存在下で、式(I)で示される化合物が適切にハロゲン置換された前駆体とトリチウムガスとを反応させることを包含する。他のトリチウム標識化合物を調製するための適切な方法としては、文書Isotopes in the Physical and Biomedical Sciences,Vol.1,Labeled Compounds (Part A),Chapter 6 (1987年)を参照できる。また、14C-標識化合物は、14C炭素を有する原料を用いることによって調製できる。
【0102】
本発明は、式(I)で示される化合物の生成可能な塩を包含する。該塩としては、例えば、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩等)、その他の金属塩(例えば、アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩等)、アンモニウム塩、アミン塩(例えば、tert-オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N-メチルグルカミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、プロカイン塩、ジエタノールアミン塩、N-ベンジル-フェネチルアミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩等)、無機酸塩(例えば、フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩等のハロゲン原子化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等)、アルキルスルホン酸塩(例えば、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩等)、アリールスルホン酸塩(例えば、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等)、有機酸塩(例えば、酢酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩等)、アミノ酸塩(例えば、グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩等)等が挙げられる。これらの塩は、通常行われる方法によって形成させることができる。
【0103】
本発明の式(I)で示される化合物又はその塩は、溶媒和物(例えば、水和物等)及び/又は結晶多形を形成する場合があり、本発明はそのような各種の溶媒和物及び結晶多形も包含する。「溶媒和物」は、式(I)で示される化合物に対し、任意の数の溶媒分子(例えば、水分子等)と配位していてもよい。式(I)で示される化合物又はその塩を、大気中に放置することにより、水分を吸収し、吸着水が付着する場合や、水和物を形成する場合がある。また、式(I)で示される化合物又はその塩を、再結晶することでそれらの結晶多形を形成する場合がある。
【0104】
本実施形態の人工ヌクレオシドは、例えば、式(I)におけるZ及びZが水素原子である化合物を包含する。また、本実施形態の人工ヌクレオチドは、例えば、式(I)におけるZがリン含有基である化合物を包含する。
【0105】
[人工オリゴヌクレオチド]
本実施形態の人工オリゴヌクレオチドは、下記式(II)で示されるヌクレオシド構造を1以上含む人工オリゴヌクレオチド又はその製薬上許容される塩である。
【0106】
【化9】
【0107】
Bxは、プリン-9-イル基、2-オキソ-ピリミジン-1-イル基又は2-チオキソ-ピリミジン-1-イル基である。該プリン-9-イル基、2-オキソ-ピリミジン-1-イル基及び2-チオキソ-ピリミジン-1-イル基はそれぞれ独立して、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1-6アルキル基、アミノ基、アミノ基保護基により置換されたアミノ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシ基保護基により置換されたヒドロキシ基、スルファニル基及びスルファニル基保護基により置換されたスルファニル基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている。
【0108】
、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又はC1-6アルキル基若しくはC2-6アルケニル基である。該C1-6アルキル基及びC2-6アルケニル基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1-6アルコキシ基及びシアノ基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている。
【0109】
Yは、NR又はC2-9芳香族複素環式基である。NRにおけるR及びRはそれぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基(該C1-6アルキル基及びC2-6アルケニル基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルバモイル基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルケニルオキシ基、C1-6アルコキシカルボニル基、C2-6アルケニルオキシカルボニル基、C1-6アルキルカルボニル基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6アルキルアミノカルボニル基、C1-6アルキルカルボニルオキシ基、C1-6アルキルカルボニルアミノ基及びC1-6アルコキシカルボニルアミノ基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)又はC7-10アラルキル基(該C7-10アラルキル基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルバモイル基、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルケニルオキシ基、C1-6アルコキシカルボニル基、C2-6アルケニルオキシカルボニル基、C1-6アルキルカルボニル基、C1-6ハロアルキル基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6アルキルアミノカルボニル基、C1-6アルキルカルボニルオキシ基、C1-6アルキルカルボニルアミノ基及びC1-6アルコキシカルボニルアミノ基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)であるか、又はR及びRは、これらが結合している窒素原子と一緒になって、3-11員含窒素非芳香族ヘテロ環基(該3-11員含窒素非芳香族ヘテロ環基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルバモイル基、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルケニルオキシ基、C1-6アルコキシカルボニル基、C2-6アルケニルオキシカルボニル基、C1-6アルキルカルボニル基、C1-6ハロアルキル基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6アルキルアミノカルボニル基、C1-6アルキルカルボニルオキシ基、C1-6アルキルカルボニルアミノ基及びC1-6アルコキシカルボニルアミノ基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている)を形成している。
YがC2-9芳香族複素環式基である場合、該C2-9芳香族複素環式基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルバモイル基、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルケニルオキシ基、C1-6アルコキシカルボニル基、C2-6アルケニルオキシカルボニル基、C1-6アルキルカルボニル基、C1-6ハロアルキル基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6アルキルアミノカルボニル基、C1-6アルキルカルボニルオキシ基、C1-6アルキルカルボニルアミノ基及びC1-6アルコキシカルボニルアミノ基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されている。
【0110】
nは、1から3の整数である。
【0111】
式(II)におけるR~R、Bx、Y及びnは、式(I)におけるR~R、Bx、Y及びnと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0112】
本実施形態の人工オリゴヌクレオチドは、式(II)で示されるヌクレオシド構造を任意の位置に少なくとも1つ含有する。人工オリゴヌクレオチドを構成する塩基数は特に制限されず、例えば、2から50塩基であり、好ましくは8から30塩基であり、より好ましくは15から25塩基であり、さらにより好ましくは、19から23塩基であり、特に好ましくは19又は20塩基である。
人工オリゴヌクレオチドにおける式(II)で示されるヌクレオシド構造の位置及び数は特に限定されず、目的に応じて適宜設計され得る。例えば式(II)で示されるヌクレオシド構造を、オリゴヌクレオチドの3’末端又は5’末端に含有してもよい。3’末端に含まれる場合、例えば、以下の式(VI)で示される構造となる。
【0113】
【化10】
【0114】
式(VI)におけるR~R、Z、Bx、Y及びnは、式(I)におけるR~R、Z、Bx、Y及びnと同義である。
また、5’末端に含まれる場合、例えば、以下の式(VII)で示される構造となる。
【0115】
【化11】
【0116】
式(VII)におけるR~R、Z、Bx、Y及びnは、式(I)におけるR~R、Z、Bx、Y及びnと同義である。
【0117】
本実施形態の人工オリゴヌクレオチドの3’末端及び/又は5’末端は、修飾されていてもよい。末端修飾されることで、オリゴヌクレオチドの追跡が可能になったり、オリゴヌクレオチドの薬物動態又は薬力学を改善することが可能になったり、オリゴヌクレオチドの安定性又は結合親和性を向上させることが可能になる。末端の修飾基は、当該分野で公知の修飾基から目的等に応じて適宜選択して利用することができる。末端の修飾基としては例えば、ヒドロキシ基の保護基、レポーター分子に由来する基、コレステロールに由来する基、リン脂質に由来する基、色素分子に由来する基、蛍光分子に由来する基等が挙げられる。
ここで「由来する基」とは、対象となる分子から水素原子、ヒドロキシ基等を取り除いて形成される基を意味する。
【0118】
また、本実施形態の人工オリゴヌクレオチドの3’末端のヌクレオチドの3’位は、ヒドロキシ基、ヒドロキシ基保護基で置換されたヒドロキシ基又はリン酸エステル部分を含むヒドロキシ基であり、5’末端のヌクレオチドの5’位は、ヒドロキシ基、ヒドロキシ基保護基で置換されたヒドロキシ基又はリン酸エステル部分を含むヒドロキシ基である。「リン酸エステル部分」は、リン酸エステル構造及び修飾リン酸エステル構造を含む末端リン酸基を意味する。リン酸エステル部分は、いずれの末端に位置してもよいが、5’末端であることが好ましい。
【0119】
リン酸エステル部分は、具体的には、式:-O-P(=O)(OH)で示される基又はその修飾基である。その修飾基においては、リン酸エステル部分の-O-及び=Oの1以上が硫黄原子又は-N(R)-で置換されていてもよく、OHの1以上が、水素原子、-SH、-N(R、又はアルキル基で置換されていてもよい。ここでRは、水素原子又はアミノ基保護基である。5’及び/又は3’末端基は、それぞれ独立して置換又は無置換の1から3のリン酸エステル部分を含んでいてもよい。
【0120】
人工オリゴヌクレオチドの3’末端のヌクレオチドの3’位及び5’末端のヌクレオチドの5’位は、それぞれ独立して好ましくは、ヒドロキシ基又はリン酸エステル部分を含むヒドロキシ基であり、より好ましくは、ヒドロキシ基、式:-O-P(=O)(OH)で示される基、シアノエトキシ(ジイソプロピルアミノ)ホスフィノ基又はヒドロキシホスフィニル基であり、特に好ましくは、ヒドロキシ基である。
【0121】
本実施形態の人工オリゴヌクレオチドは、式(II)で示されるヌクレオシド構造を少なくとも1つ含有していれば、他の部分が天然のヌクレオシド構造であっても、塩基部分、糖部分及びリン酸エステル部分の少なくとも1つが修飾されたヌクレオシド構造であってもよい。
例えば、人工オリゴヌクレオチドのリン酸エステル部分は、天然の核酸が有するホスホジエステル結合が挙げられるが、それに限らず、修飾されたホスホジエステル結合でもよい。ホスホジエステル結合の修飾の例としては、例えば、ホスホロチオエート化、メチルホスホネート化、キラル-メチルホスホネート化、ホスホロジチオエート化、ホスホロアミデート化、ボラノホスフェート化等が挙げられる。
【0122】
人工オリゴヌクレオチド中の式(II)で示されるヌクレオシド構造以外の塩基部分は、前記「Bx」について定義した任意の核酸塩基であってよい。
人工オリゴヌクレオチド中の式(II)で示されるヌクレオシド構造以外の糖部分を有するヌクレオシドとしては、天然のリボース若しくはデオキシリボース、修飾されたリボース若しくはデオキシリボース等が挙げられる。公知の修飾としては、例えば、特開平10-304889号公報国際公開第2005/021570号、特開平10-195098号公報、特表2002-521310号公報、国際公開第2007/143315号、国際公開第2008/043753号、国際公開第2008/029619号、国際公開第2008/049085号、国際公開第2011/052436号において、開示されているヌクレオチド等が挙げられる。前記文献には下記のヌクレオチドが開示されている。:ヘキシトールヌクレオチド(HNA)、シクロヘキセンヌクレオチド(CeNA)、ペプチド核酸(PNA)、グリコール核酸(GNA)、トレオヌクレオチド(TNA)、モルホリノ核酸、トリシクロ-DNA(tcDNA)、2’-O-メチル化ヌクレオシド、2’-MOE(2’-O-メトキシエチル)化ヌクレオチド、2’-AP(2’-O-アミノプロピル)化ヌクレオチド、2’-フルオロ化ヌクレオチド、2’-F-アラビノヌクレオチド(2’-F-ANA)、4’-CH-O-2’ 化ヌクレオチド(LNA、Locked nucleic acid)、架橋化ヌクレオチド(BNA(Bridged Nucleic Acid))、2’-O-メチルカルバモイルエチル化ヌクレオチド(MCE)。
【0123】
人工オリゴヌクレオチド中の式(II)で示されるヌクレオシド構造以外のヌクレオシドの糖部分は、好ましくは、リボース、デオキシリボース、2’-O-メチル化リボース、2’-O-メチルカルバモイルエチル化リボース、2’-O-メトキシエチル化リボース及び4’-CH-O-2’化ヌクレオチドが有する糖部分からなる群から独立して選択され、より好ましくは、デオキシリボース、2’-O-メチル化リボース、2’-O-メチルカルバモイルエチル化リボース及び2’-O-メトキシエチル化リボースから独立して選択され、さらに好ましくは、デオキシリボース及び2’-O-メチル化リボースから独立して選択される。
【0124】
また、人工オリゴヌクレオチドに含有されるヌクレオシド間の結合は、当該分野で公知の結合であれば、リン原子を有していない結合であってもよい。ヌクレオシド間の結合は、例えば、アルカンジイル基、非芳香族炭素環に由来する2価基、ハロアルカンジイル基、ハロゲンで置換された非芳香族炭素環に由来する2価基等を含むが、これらに限定されない。ヌクレオシド間の結合は例えば、シロキサンに由来する2価基、スルフィド基、スルホキシド基、スルホン基、アセチル基に由来する2価基、アルケニル基に由来する2価基、スルファマートに由来する2価基、メチレンイミノ基、メチレンヒドラジノ基、スルホナートに由来する2価基、スルホンアミド基、アミド基を含む。
【0125】
ここで、アルカンジイル基は、炭素数が1から30の直鎖又は分枝状の飽和の炭化水素から、任意の位置の水素原子を2個取り除いた2価の置換基を意味する。アルカンジイル基としては、例えば、メチレン基、エチレン基(エタンジイル基)、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、2,2-ジメチル-プロパン-1,3-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、3-メチルブタン-1,2-ジイル基などが挙げられる。
ハロアルカンジイル基は、前記アルカンジイル基の任意の位置の水素原子が、1以上の前記ハロゲン原子で置換されてなる基を意味する。
非芳香族炭素環とは、環を構成する原子が全て炭素原子であり、環を構成する原子数が3から10である芳香族の単環、縮合環、スピロ環又は橋掛け環であり、環中に二重結合又は3重結合を含んでいてもよい環を意味する。非芳香族炭素環としては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、ビシクロ[4.4.0]デカン、アダマンタン等が挙げられる。
【0126】
人工オリゴヌクレオチドに含有されるヌクレオシド間の結合は、好ましくは、ホスホジエステル結合、ホスホロチオエート結合、メチルホスホネート結合、メチルチオホスホネート結合、ホスホロジチオエート結合、ホスホロアミデート結合、ホスホロジアミデート結合、ホスホロアミドチオエート結合及びボラノホスフェート結合からなる群からそれぞれ独立して選ばれ、特に好ましくは、ホスホジエステル結合及びホスホロチオエート結合からなる群から独立して選ばれる。
【0127】
本実施形態の人工オリゴヌクレオチドには異性体が存在する場合がある。その場合に本実施形態は特定の異性体に限定されるものではなく、全ての可能な異性体(例えば、ケト-エノール異性体、イミン-エナミン異性体、ジアステレオ異性体、光学異性体、回転異性体等)、ラセミ体及びそれらの混合物を含む。
【0128】
人工オリゴヌクレオチドの1以上の水素、炭素及び/又は他の原子は、それぞれ水素、炭素及び/又は他の原子の同位体で置換され得る。同位体の例、調製方法等は既述の人工ヌクレオシド及び人工ヌクレオチドと同様である。
本実施形態の人工オリゴヌクレオチドは、その製薬上許容される塩を含有する。該塩の具体例、調製方法等は既述の人工ヌクレオシド及び人工ヌクレオチドにおける塩と同様である。
人工オリゴヌクレオチド又はその製薬上許容される塩は、溶媒和物(例えば、水和物等)及び/又は結晶多形を形成する場合があり、本発明はそのような各種の溶媒和物及び結晶多形も包含する。溶媒和物の具体例は既述の人工ヌクレオシド及び人工ヌクレオチドと同様である。
【0129】
人工オリゴヌクレオチド又はその製薬上許容される塩は、プロドラッグを形成する場合があり、本発明はそのような各種のプロドラッグも包含する。プロドラッグは、化学的又は代謝的に分解できる基を有する人工オリゴヌクレオチドの誘導体であり、加溶媒分解により又は生理学的条件下でインビボにおいて薬学的に活性な人工オリゴヌクレオチドとなる化合物である。プロドラッグは、生体内における生理条件下で酵素的に酸化、還元、加水分解等を受けて人工オリゴヌクレオチドに変換される化合物、胃酸等により加水分解されて人工オリゴヌクレオチドに変換される化合物等を包含する。適当なプロドラッグ誘導体を選択する方法及び製造する方法は、例えばDesign of Prodrugs, Elsevier, Amsterdam 1985に記載されている。プロドラッグは、それ自身が活性を有する場合がある。
【0130】
人工オリゴヌクレオチド又はその製薬上許容される塩がヒドロキシ基を有する場合、例えば、ヒドロキシ基を有する化合物と適当なアシルハライド、適当な酸無水物、適当なスルホニルクロライド、適当なスルホニルアンハイドライド及びミックスドアンハイドライドとを反応させることにより或いは縮合剤を用いて反応させることにより製造されるアシルオキシ誘導体やスルホニルオキシ誘導体のようなプロドラッグが例示される。そのような誘導体の部分構造としては、例えば、CHCOO-、CCOO-、tert-BuCOO-、C1531COO-、PhCOO-、(m-NaOOCPh)COO-、NaOOCCHCHCOO-、CHCH(NH)COO-、CHN(CH)COO-、CHSO-、CHCHSO-、CFSO-、CHFSO-、CFCHSO-、p-CHO-PhSO-、PhSO-、p-CHPhSO-が挙げられる。
【0131】
人工オリゴヌクレオチドは、式(I)で示される化合物を用いて、常法によって合成することができる。例えば、市販の核酸自動合成装置(例えば、AppliedBiosystems社製、(株)ジーンデザイン社製等)によって容易に合成することができる。合成法はホスホロアミダイトを用いた固相合成法、ハイドロジェンホスホネートを用いた固相合成法等がある。例えば、Tetrahedron Letters 22,1859-1862 (1981)、国際公開第2011/052436号等に開示されている。
【0132】
式(II)で示されるヌクレオシド構造中のBxは、Bxが置換基を有する場合、置換基が保護基で保護されていないことが好ましい。Bxとしては、例えば、以下で示される基が挙げられる。
【0133】
【化12】
【0134】
よって、式(I)で示される化合物中のBxが、保護基で保護された置換基を有する場合、オリゴヌクレオチド合成の際に、脱保護を行うことが好ましい。
【0135】
人工オリゴヌクレオチドは、一本鎖RNAに対する優れた結合親和性とヌクレアーゼ耐性とを示す。従って、人工オリゴヌクレオチドは体内での持続性が非常によいと考えられる。よって、本実施形態の式(I)で示される化合物は、アンチセンスオリゴヌクレオチド等の核酸医薬品を合成するための材料として非常に有用である。本実施形態の人工オリゴヌクレオチドを利用した核酸医薬品は、無修飾、すなわち、天然の核酸由来の核酸医薬品と比較して、標的分子への親和性が高く、生体内で分解されにくくなり、より安定して効果を発揮する。人工オリゴヌクレオチドは標的遺伝子に応じた発現抑制配列を有するように作製されることで、例えば標的遺伝子の発現を抑制することができる。
【0136】
人工オリゴヌクレオチドを利用した核酸医薬品が治療、予防、改善できる疾患は、特に制限されず、例えば、代謝性疾患、循環器疾患、腫瘍、感染症、眼疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、遺伝性希少疾患等、遺伝子の発現が原因となる疾患等が挙げられる。より具体的には、コレステロール血症、高トリグリセリド血症、脊髄性筋委縮症、筋ジストロフィー(デュシェンヌ型筋ジストロフィー、筋強直性ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー(福山型先天性筋ジストロフィー、ウールリッヒ型先天性筋ジストロフィー、メロシン欠損型先天性筋ジストロフィー、インテグリン欠損症、ウォーカーワールブルグ症候群等)、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、三好型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー等)、ハンチントン病、アルツハイマー症、トランスサイレイチン型アミロイドーシス、家族性アミロイド性心筋症、多発性硬化症、クローン病、炎症性大腸疾患、先端巨大症、2型糖尿病、慢性腎症、RSウイルス感染症、エボラ出血熱、マールブルグ熱、HIV、インフルエンザ、B型肝炎、C型肝炎、肝硬変、慢性心不全、心筋線維化、心房細動、前立腺がん、メラノーマ、乳がん、膵臓癌、大腸癌、腎細胞癌、胆管癌、子宮頸癌、肝癌、肺癌、白血病、非ホジキンリンパ腫、アトピー性皮膚炎、緑内障、加齢性黄斑変性症等が挙げられる。前記疾患の種類に応じて、その疾患の原因となる遺伝子を前記標的遺伝子に設定し、さらに、前記標的遺伝子の配列に応じて、前記発現抑制配列を適宜設定することができる。人工オリゴヌクレオチドを利用した核酸医薬品は、前記疾患の中でも特に、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、筋強直性ジストロフィー及び福山型先天性筋ジストロフィーに用いられる。
【0137】
ヒトなどの霊長類に加えて、様々な他の哺乳類の疾患を、人工オリゴヌクレオチドを利用した核酸医薬品により治療、予防、改善することができる。例えば、それだけに限らないが、齧歯類(例えば、マウスなど)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、又はネコなどを含めた哺乳類の種の疾患を治療することができる。また、人工オリゴヌクレオチドを利用した核酸医薬品は、鳥類(例えば、ニワトリ)などの他の種においても適用することができる。
【0138】
人工オリゴヌクレオチドを利用した核酸医薬品は、局所的あるいは全身的な治療、予防、改善のいずれかが望まれるか、又は治療、予防、改善すべき領域に応じて、様々な方法により投与することができる。投与方法としては、例えば、局所的(点眼、膣内、直腸内、鼻腔内、経皮を含む)、経口的、又は、非経口的であってもよい。非経口的投与としては、静脈内注射もしくは点滴、皮下、腹腔内もしくは筋肉内注入、吸引もしくは吸入による肺投与、硬膜下腔内投与、脳室内投与等が挙げられる。
【0139】
人工オリゴヌクレオチドを利用した核酸医薬品を局所投与する場合、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、滴下剤、坐剤、噴霧剤、液剤、散剤等の製剤を用いることができる。
経口投与用組成物としては、散剤、顆粒剤、水もしくは非水性媒体に溶解させた懸濁液又は溶液、カプセル、粉末剤、錠剤等が挙げられる。
非経口、硬膜下腔、又は、脳室内投与用組成物としては、バッファー、希釈剤及びその他の適当な添加剤を含む無菌水溶液等が挙げられる。
【0140】
人工オリゴヌクレオチドを利用した核酸医薬品は、核酸の有効量にその剤型に適した賦形剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤等の各種医薬用添加剤を必要に応じて混合して得ることができる。注射剤の場合には適当な担体と共に滅菌処理を行なって製剤とすればよい。
【0141】
賦形剤としては乳糖、白糖、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、結晶セルロース等が挙げられる。結合剤としてはメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。崩壊剤としてはカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。滑沢剤としてはタルク、ステアリン酸マグネシウム、マクロゴール等が挙げられる。坐剤の基剤としてはカカオ脂、マクロゴール、メチルセルロース等を用いることができる。また、液剤又は、乳濁性若しくは懸濁性の注射剤として調製する場合には通常使用されている溶解補助剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤、保存剤、等張剤等を適宜添加してもよい。経口投与の場合には嬌味剤、芳香剤等を加えてもよい。
【0142】
投与は、治療される病態の重度と反応度に依存し、治療コースは、数日から数ヶ月、あるいは、治癒が実現されるまで、又は、病状の減退が達成されるまで持続する。最適投与スケジュールは、生体における薬剤蓄積の測定から計算が可能である。当該分野の当業者であれば、最適用量、投与法、及び、繰り返し頻度を定めることができる。最適用量は、個々の核酸医薬品の相対的効力に応じて変動するが、一般に、インビトロ及びインビボの動物実験におけるIC50又はEC50に基づいて計算することが可能である。例えば、核酸の分子量(核酸配列及び化学構造から導かれる)と、例えば、IC50のような効果的用量(実験的に導かれる)が与えられたならば、mg/kgで表される用量が通例に従って計算される。
さらに、本発明の人工オリゴヌクレオチドは、前記標的遺伝子の発現が原因となる疾患等を改善又は予防するために、改善又は予防に有効な用量レベルで投与することができる。
【0143】
本実施形態に係る人工オリゴヌクレオチド等は、以下に示す方法によって製造することができるが、下記製造方法は一般的な製造方法の一例を示すものであり、本実施形態に係る人工オリゴヌクレオチド等の製造方法を限定するものではない。
【0144】
【化13】
【0145】
式中、Pはヒドロキシ基保護基を表し、Zはリン含有基を表し、Qは水素原子又はC1-C6アルキル基を表し、その他の記号は前記定義に同じである。
【0146】
工程Iの出発物質である化合物Aは、例えば、特許第5194256号又はジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー、第76巻、3042ページ(2011年)オーガニック・アンド・バイオモレキュラー・ケミストリー、第12巻、6457ページ(2014年)等に記載の方法に準じて合成できる。具体的に、多様なR、R、Bxを有する化合物Aは、以下に記載の化合物A-1から、当業者に公知の保護・脱保護反応(例えば、前記プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス第4版に記載されている反応)、酸化反応、還元反応(酸化反応、還元反応は、例えば、コンプリヘンシブ・オーガニック・トランスフォーメーションズ第2版(Comprehensive Organic Transformations, Second Edition)、ラロック(R.C.Larock)著、ワイリー-ブイシーエイチ(Wiley-VCH)(1999年)等を参照できる)を組み合わせて用い、合成することができる。
【0147】
【化14】
【0148】
式中、P及びBxは前記定義に同じである。
例えば、R及びRの少なくとも一方がアルキル基である化合物Aを合成するためには、まず、ヒドロキシ基の保護・脱保護反応により3’位のヒドロキシ基が保護され5’位のヒドロキシ基が脱保護された化合物(化合物A-2)を得る。次に、化合物A-2の5’位のヒドロキシ基を酸化し、Rに対応するアルキル金属試薬又はグリニャール試薬などを用いて所望のRを導入できる。また必要であれば、もう一度5’位のヒドロキシ基を酸化し、Rに対応するアルキル金属試薬又はグリニャール試薬などを用いて所望のRを導入できる。得られた化合物の3’位の保護されたヒドロキシ基を脱保護することで、R及びRの少なくとも一方がアルキル基である化合物Aを合成できる。
【0149】
所望のBxを有する化合物A-1は、所望のBxに対応するリボヌクレオシドを用いて、特許第5194256号又はジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー、第76巻、3042ページ(2011年)に記載の方法等、当業者に公知な方法に準じて合成できる。化合物A-1から化合物Aを合成するまでの反応部位は、Bxと空間的に離れているため、前記の化合物A-1から化合物Aを合成するまでの反応は、多様なBxの構造に対して適用することができる。
【0150】
また、多様なR、R及びBxを有する化合物Aは、多様なR、R及びBxを有する以下に記載の化合物A-3から、特許第5194256号又はジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー、第76巻、3042ページ(2011年)に記載の方法に準じて合成することもできる。具体的には、化合物A-3とアクリル酸エステル(例えばアクリル酸メチル等)とを、溶媒中、塩基(炭酸セシウム等)の存在下反応させて、化合物Aを得ることができる。
【化15】
【0151】
式中、P及びPはそれぞれ独立してヒドロキシ基保護基を表し、その他の記号は前記定義に同じである。
【0152】
多様なR、R及びBxを有する化合物A-3は、前述の化合物A-1から化合物Aを合成する方法と同様にして、化合物A-4から合成できる。Bxが2-チオキソ-ピリミジン-1-イル基(該2-チオキソ-ピリミジン-1-イル基は無置換であるか、又はハロゲン原子、C1-6アルキル基、アミノ基、アミノ基保護基により置換されたアミノ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシ基保護基により置換されたヒドロキシ基、スルファニル基及びスルファニル基保護基により置換されたスルファニル基からなる群から単独に若しくは異なって選ばれる1以上の置換基で置換されているである)である化合物A-4は、Bxが対応する2-オキソ-ピリミジン-1-イル基である化合物から、ケミカル・コミュニケーションズ、第48巻、 7313ページ(2012年)に記載の方法に準じて合成できる。
【化16】
【0153】
式中、P、P及びBxは前記定義に同じである。
【0154】
(工程I)一級アミンとのアミド化反応
1又は複数のR、1又は複数のR、及びYがアルキル基部分に結合した一級アルキルアミンを用いて、エステル-アミド交換反応により化合物Bを得ることができる。エステル-アミド交換反応としては、例えば、溶媒中、1~100当量の該一級アルキルアミンを反応させる方法が挙げられる。
また、当業者に公知の方法により化合物Aを加水分解してカルボン酸誘導体とした後に、該カルボン酸誘導体と、1又は複数のR、1又は複数のR、及びYがアルキル基部分に結合した一級アルキルアミンとの縮合反応により得ることができる。
例えば、化合物Aをアルコール溶媒中、1~20当量の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基を反応させて、カルボン酸誘導体とした後、該カルボン酸誘導体を、溶媒中、塩酸1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド及び1-ヒドロキシベンゾトリアゾール存在下、1~10当量の該一級アルキルアミンを反応させる方法が挙げられる。
【0155】
(工程II)リン酸化反応
化合物Bのヒドロキシ基を、当業者に公知な反応(例えば、モノ置換-クロロ(アルコキシ)ホスフィン類又はジ置換-アルコキシホスフィン類を用いる反応)によりリン酸化することにより、化合物Cを得ることができる。リン酸化反応の具体的な例としては、溶媒中、2-シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミダイトを反応させる方法、及び、溶媒中、トリス-(1,2,4-トリアゾリル)ホスファイトを反応させる方法等が挙げられる。
リン酸化反応の反応部位は、R、R、R、R、Y及びBxと空間的に離れたヒドロキシ基であるため、多様なR、R、R、R、Y及びBxの構造に対して、上記のリン酸化反応は適用可能である。
【0156】
なお化合物Bは、工程Iとは異なる方法で得られたものであってもよい。化合物Bは、公知のリボヌクレオシド及びその誘導体(例えば、塩基部のアミノ基がアミノ保護基により置換され、及び/又は、糖部のヒドロキシ基の一部がヒドロキシ保護基により置換された誘導体等)を原料とし、当業者に公知な方法に準じて合成できる。そのような工程Iの別法の具体例は、後述の実施例4-2から4-6である。
【0157】
人工オリゴヌクレオチドは、化合物C及び所望のヌクレオチド配列のオリゴヌクレオチド類縁体を製造するのに必要な市販のホスホロアミダイト試薬等を使用して、核酸自動合成装置(例えば、nS-8II(ジーンデザイン社製))により合成することができる。
【実施例
【0158】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中、NMRは核磁気共鳴スペクトルを、MSは質量分析を意味する。
【0159】
H-NMRデータが記載されている場合には、500MHz(Varian AS500;Varian社製)で測定し、テトラメチルシランあるいは測定溶媒に由来するシグナルを内部標準としたシグナルの化学シフトδ(単位:ppm)(分裂パターン、積分値)を表す。「s」はシングレット、「d」はダブレット、「t」はトリプレット、「m」はマルチプレット、「brs」はブロードシングレット、「dd」はダブレットオブダブレット、「dt」はダブレットオブトリプレット、「dq」はダブレットオブカルテット、「ddd」はダブレットオブダブレットオブダブレット、「ddt」はダブレットオブダブレットオブトリプレット、「CDCl」は重クロロホルム、「CDOD」は重メタノールを、「DMSO-d」は重ジメチルスルホキシドを、「Bz」はベンゾイルを意味する。
13C-NMRデータが記載されている場合には、125MHz(Varian AS500;Varian社製)で測定し、測定溶媒に由来するシグナルを内部標準としたシグナルの化学シフトδ(単位:ppm)を表す。
31P-NMRデータが記載されている場合には202MHz(Varian AS500;Varian社製)で測定し、リン酸を内部標準としたシグナルの化学シフトδ(単位:ppm)を表す。
【0160】
MSは、特に記述がない場合は、以下の条件1で、ESI(エレクトロスプレーイオン化)法を用いて測定した。「ESI」はESI正イオンモード、「ESI」はESI負イオンモードを意味する。
条件1:
装置:Bruker microTOF II
測定溶媒:メタノール
測定モード:陽イオン又は陰イオン
【0161】
MALDI-TOF-MASS測定を用いたMSの測定では、以下の条件2で測定した。
条件2:
装置:Bruker ultrafleXtreme
Matrix:10 mg/mLクエン酸水素二アンモニウムを含む飽和3-ヒドロキシピコリン酸アセトニトリル溶液
Target plate:MTP 384 target plate polished steel BC
測定モード:Linear + 陽イオン
シリカゲルカラムクロマトグラフィーでの精製は、特に記述がない場合は、関東化学(株)製シリカゲルN60を用いた。
【0162】
実施例1
ヌクレオシド類縁体:(2R,3R,4R,5R)-2-([ビス(4-メトキシフェニル)(フェニル)メトキシ]メチル)-5-(5-メチル-2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)- イル)-4-(3-オキソ -3-((2-(ピリジン-2-イル)エチル)アミノ)プロポキシ)テトラヒドロフラン-3-イル (2-シアノエチル)ジイソプロピルホスホロアミダイト(化合物3)の合成
【0163】
【化17】
【0164】
実施例1-1 化合物2の合成
化合物1(オーガニック・アンド・バイオモレキュラー・ケミストリー、第12巻、6457ページ(2014年))に記載の方法に準じて合成した)(150mg、0.2mmol)を脱水メタノール(1.6ml)に溶解させた。その溶液に2-(2-アミノエチル)ピリジン(0.4ml)を加え、55℃で42時間反応させた。反応後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて酢酸エチルで抽出した。その有機層を回収し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン-メタノール)により精製し、化合物2を得た(73 mg、収率 50%)。
MS (ESI):[M-H] 735.3022.
H NMR (CDCl, 500 MHz):δ1.34 (1H, s), 2.29-2.56 (2H, m), 2.90-3.03 (2H, m), 3.35-3.51 (2H, m), 3.52-3.62 (2H, m), 3.63-3.85 (8H, m), 3.90-3.96 (1H, m), 4.02 (1H, t, J = 4.7), 4.07-4.15 (1H, m), 4.50 (1H, t, J = 4.8), 5.02-5.19 (1H, brs), 6.01 (1H, d, J = 4.6), 6.81 (1H, d, J = 8.4), 7.11-7.25 (4H, m), 7.27-7.43 (9H, m), 7.55-7.66 (2H, m), 8.54 (1H, d, J = 5.0), 10.48-10.60 (1H, brs).
13C NMR (CDCl, 125 MHz):δ171.5, 164.5, 159.3, 158.8, 158.8, 151.0, 148.8, 144.4, 137.3, 135.6, 135.5, 135.4, 130.2, 128.3, 128.1, 127.2, 123.7, 122.0, 113.4, 111.2, 87.0, 84.0, 82.5, 77.4, 77.2, 76.9, 69.5, 66.0, 63.0, 55.4, 55.3, 39.5, 36.8, 35.7, 11.9.
【0165】
実施例1-2 化合物3の合成
化合物2 (73mg、0.1mmol)の脱水ピリジン、脱水トルエン及び脱水ジクロロメタン溶液を共沸により脱水し、その後脱水ジクロロメタン(1ml)に溶解させた。その溶液にN,N-ジイソプロピルエチルアミン(30μl、0.13mmol)、2-シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミダイト(30μl、0.17mmol)を加え、室温で2時間反応させた。反応後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、ジクロロメタンで抽出した。その有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン-メタノール)により精製し、化合物3を得た(50mg、収率 54%)。
MS (ESI):[M+Na] 959.4079.
H NMR (CDCl, 500 MHz) :δ0.87-0.97 (3H, m), 0.99-1.13 (9H, m), 1.27-1.42 (3H, m), 2.21-2.32 (1H, m), 2.33-2.47 (2H, m), 2.50-2.63 (1H, m),2.80-2.94 (1H, m), 3.00-3.14 (1H, m), 3.17-3.29 (1H, m), 3.32-4.05 (17H, m), 4.07-4.26 (1H, m), 4.29-4.43 (1H, m), 5.81-6.03 (1H, m), 6.63-6.89 (5H, m), 7.00-7.24 (8H, m), 7.29-7.41 (2H, m), 7.46-7.56 (1H, m), 7.56-7.68 (1H, m), 8.41-8.59 (1H, m), 9.86-10.78 (1H, m).
13C NMR (CDCl, 125 MHz):δ171.2, 171.1, 164.1, 164.1, 159.3, 159.3, 158.8, 151.0, 149.2, 144.3, 144.2, 136.8, 136.8, 135.4, 135.4, 135.3, 135.0, 134.9, 130.2, 128.4, 128.3, 128.1, 127.3, 123.5, 121.7, 117.9, 117.5, 113.4, 111.5, 87.7, 87.6, 87.1, 87.0, 83.7, 83.2, 82.6, 82.1, 77.4, 77.2, 76.9, 70.8, 70.7, 70.6, 70.5, 67.8, 67.3, 62.4, 62.2, 58.7, 58.5, 57.9, 57.7, 55.4, 55.4, 55.3, 43.4, 43.3, 43.3, 43.2, 39.6, 39.5, 37.4, 37.3, 24.8, 24.8, 24.7, 24.7, 24.6, 20.6, 20.5, 20.3, 20.2, 12.0, 11.9.
31P NMR (CDCl, 202 MHz):δ151.0, 150.7.
【0166】
実施例2
ヌクレオシド類縁体:(2R,3R,4R,5R)-2-([ビス(4-メトキシフェニル)(フェニル)メトキシ]メチル)-4-(3-((2-(ジメチルアミノ)エチル)アミノ)-3-オキソプロポキシ)-5-(5-メチル-2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)テトラヒドロフラン-3-イル(2-シアノエチル)ジイソプロピルホスホロアミダイト(化合物5)の合成
【0167】
【化18】
【0168】
実施例2-1 化合物4の合成
化合物1(オーガニック・アンド・バイオモレキュラー・ケミストリー、第12巻、6457ページ(2014年))に記載の方法に準じて合成した) (660mg、0.85mmol)のメタノール(6.8ml)溶液にN,N-ジメチルエチレンジアミン(1.7ml、15.6mmol)を加え、55℃で24時間撹拌した。反応後、水を加えジクロロメタンで抽出した。その有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン-メタノール)により精製し、化合物4を得た(286mg、収率 48%)。
MS (ESI):[M+H] 703.3331.
H NMR (CDCl, 500 MHz) :δ1.38 (3H, s), 2.23 (6H, s), 2.33 (1H, d, J = 16.3), 2.38-2.68 (3H, m),3.21-3.32 (1H, m),3.36-3.59 (3H, m),3.71-3.89 (7H, m),3.96-4.10 (2H, m),4.13-4.18 (1H, m),4.55 (1H, t, J = 4.6),6.04 (1H, d, J = 4.6),6.84 (4H, d, J = 8.5), 7.26-7.33 (7H, m), 7.38-7.44 (2H, m), 7.65 (1H, s).
13C NMR (CDCl, 125 MHz) :δ171.6, 164.5, 158.8, 158.8, 152.1, 144.5, 135.5, 135.4, 135.3, 130.2, 130.2, 128.2, 128.1, 127.3, 113.4, 111.8, 87.1, 86.7, 84.5, 83.1, 69.6, 65.7, 63.3, 57.6, 55.4, 44.3, 36.7, 34.8, 11.9.
【0169】
実施例2-2 化合物5の合成
化合物4 (960mg、1.37mmol)の脱水ピリジン、脱水トルエン及び脱水ジクロロメタン溶液を共沸により脱水し、その後脱水ジクロロメタン(13.4ml)に溶解させた。その溶液にN,N-ジイソプロピルエチルアミン(690μl、4.0mmol)、2-シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミダイト(730μl、3.3mmol)を加え、室温で2時間反応させた。反応後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えジクロロメタンで抽出した。その有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン-メタノール)により精製し、化合物5を得た(408mg、収率 33%)。
MS (ESI):[M+H] 903.4401.
H NMR (CDCl, 500 MHz):δ0.95-1.03 (3H, m), 1.11-1.20 (9H, m), 1.33-1.40 (3H, m), 2.18-2.26 (6H, m), 2.33-2.57 (5H, m), 2.62-2.70 (1H, m), 3.24-3.39 (3H, m), 3.46-3.69 (4H, m), 3.73-3.83 (7H, m), 3.85-4.15 (3H, m), 4.17-4.31 (1H, m), 4.43-4.55 (1H, m), 5.99-6.07 (1H, m), 6.60-6.74 (1H, m), 6.76-6.91 (4H, m), 7.27-7.35 (7H, m), 7.37-7.46 (2H, m), 7.64-7.73 (1H, m).
13C NMR (CDCl, 125MHz):δ171.0, 170.9, 164.1, 164.1, 158.9, 151.0, 150.9, 144.4, 144.3, 135.4, 135.4, 135.4, 135.3, 135.3, 130.4, 130.3, 128.5, 128.4, 128.1, 128.1, 127.3, 118.0, 117.6, 113.4, 111.5, 111.3, 88.1, 88.1, 87.1, 87.0, 83.0, 82.9, 82.3, 81.6, 70.8, 70.7, 70.6, 67.8, 67.4, 62.3, 61.9, 58.7, 58.6, 58.1, 58.0, 57.8, 55.4, 55.4, 55.4, 45.1, 45.1, 43.5, 43.4, 43.3, 43.2, 37.2, 37.1, 24.8, 24.8, 24.7, 24.7, 20.6, 20.6, 20.4, 20.3, 11.9, 11.9.
31P NMR (CDCl, 202 MHz):δ150.8, 150.5.
【0170】
実施例3
ヌクレオシド類縁体:(2R,3R,4R,5R)-2-((ビス (4-メトキシフェニル)(フェニル) メトキシ]メチル)-5-(5-メチル-2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)- イル)-4-(3-((2-モルホリノエチル)アミノ)-3-オキソプロポキシ)テトラヒドロフラン-3-イル (2-シアノエチル) ジイソプロピルホスホロアミダイト(化合物7)の合成
【0171】
【化19】
【0172】
実施例3-1 化合物6の合成
化合物1((オーガニック・アンド・バイオモレキュラー・ケミストリー、第12巻、6457ページ(2014年))に記載の方法に準じて合成した;200mg、0.27mmol)のメタノール(2.2ml)溶液に、4-(2-アミノエチル)モルホリン(1.7ml、15.6mmol)を加え、55℃で23時間撹拌した。反応後、水を加え、ジクロロメタンで抽出した。その有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(富士シシリア社製アミンシリカNH、展開溶媒:ジクロロメタン-メタノール)により精製し、化合物6を得た(140mg、収率 70%)。
MS (ESI):[M+H] 745.3431.
H NMR (CDCl, 500 MHz):δ1.36 (3H, s), 2.25-2.70 (8H, m), 3.26-3.56 (4H, m), 3.61-3.75 (4H, m), 3.75-3.89 (7H, m), 4.01-4.12 (2H, m), 4.12-4.23 (1H, m), 4,58 (1H, t, J = 4.4), 4.65-5.15 (1H, brs), 6.07 (1H, d, J = 5.1), 6.71 (1H, t, J =5.3), 6.84 (5H, d, J =8.9), 7.26-7.33 (6H, m), 7.35-7.44(2H, m), 7.66 (1H, s), 9.05-9.57 (1H, brs).
13C NMR (CDCl, 125 MHz):δ171.4, 163.9, 158.9, 158.8, 151.4, 144.4, 135.5, 135.4, 135.3, 130.2, 130.2, 128.2, 128.1, 127.3, 113.4, 111.7, 87.2, 86.5, 86.5, 84.4, 82.7, 77.4, 77.2, 76.9, 69.5, 66.5, 65.7, 63.3, 57.6, 55.4, 55.4, 53.4, 35.4, 35.2, 11.8.
【0173】
実施例3-2 化合物7の合成
化合物6 (270mg、0.36mmol)の脱水ピリジン、脱水トルエン及び脱水ジクロロメタンの溶液を共沸により脱水し、その後脱水ジクロロメタン(3.6ml)に溶解させた。その溶液にN,N-ジイソプロピルエチルアミン(190μl、1.1mmol)、2-シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミダイト(190μl、0.85mmol)を加え、室温で3時間反応させた。反応後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えジクロロメタンで抽出した。その有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン-メタノール)により精製し、化合物7を得た(200mg、収率 58%)。
MS (ESI):[M+H] 945.4496.
H NMR (CDCl, 500 MHz):δ0.90-1.05 (2H, m),1.06-1.24 (10H, m),1.27-1.42 (3H, m), 2.17-2.77 (11H, m), 3.25-3.60 (6H, m), 3.60-4.00 (12H, m), 4.00-4.16 (2H, m), 4.16-4.33 (1H, m), 4.42-4.59 (1H, m), 5.95-6.12 (1H, m), 6.62-6.92 (5H, m), 7.27-7.36 (6H, m), 7.37-7.49 (2H, m), 7.65-7.86 (1H, m), 9.41-9.91 (1H, brs).
13C NMR (CDCl, 125 MHz):δ171.0, 163.9, 158.9, 150.7, 150.6, 144.3, 144.3, 135.4, 135.3, 135.2, 130.4, 130.3, 128.4, 128.4, 128.1, 128.1, 127.4, 127.3, 117.9, 117.6, 113.5, 113.2, 111.3, 111.3, 88.7, 88.6, 88.5, 88.4, 87.1, 87.0, 82.9, 82.7, 82.4, 82.2, 81.7, 81.5, 77.4, 77.2, 76.9, 70.6, 70.4, 68.0, 67.7, 67.0, 61.8, 57.5, 57.5, 55.5, 55.5, 55.3, 55.3, 53.5, 43.4, 43.3, 37.2, 36.0, 24.8, 24.7, 20.6, 20.6, 20.4, 20.3, 11.9, 11.9.
31P NMR (CDCl, 202 MHz):δ150.9, 150.2.
【0174】
実施例4
ヌクレオシド類縁体:(2R,3R,4R,5R)-4-(3-((2-(1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)エチル)アミノ)-3-オキソプロポキシ)-2-((ビス(4-メトキシフェニル)(フェニル)メトキシ]メチル)-5-(5-メチル-2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)-テトラヒドロフラン-3-イル(2-シアノエチル)ジイソプロピルホスホロアミダイト(化合物9)の合成
【0175】
【化20】
【0176】
実施例4-1 化合物9の合成
化合物1(オーガニック・アンド・バイオモレキュラー・ケミストリー、第12巻、6457ページ(2014年)に記載の方法に準じて合成した) (1.1g、1.4 mmol)のメタノール(14ml)溶液に、N-(2-アミノエチル)ベンゾイミゾール(8.3g、50.4mmol)を加え、55℃で22時間撹拌した。反応後、水を加え、ジクロロメタンで抽出した。その有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン-メタノール)により精製し、化合物8を得た(170mg,収率 16%)。
得られた化合物8 (170mg、0.22mmol)を脱水ピリジン、脱水トルエン及び脱水ジクロロメタン溶液を共沸により脱水し、その後脱水ジクロロメタン(2.2ml)に溶解させた。その溶液にN,N-ジイソプロピルエチルアミン(113μl、0.66 mmol)、2-シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミダイト(118μl、0.53mmol)を加え、室温で0.5時間反応させた。反応後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えジクロロメタンで抽出した。その有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(富士シリシア社製アミンシリカNH、展開溶媒:ジクロロメタン-メタノール)により精製し、化合物9を得た(143mg、収率 67%)。
MS (ESI):[M+H] 976.4372.
H NMR (CDCl, 500 MHz):δ0.94-1.16 (3H, m),1.08-1.16 (9H, m),1.29-1.35 (3H, m), 2.27-2.61 (4H, m), 3.24-3.29 (1H, m), 3.38-3.85 (16H, m), 3.92-4.48 (7H, m), 5.66-5.70 (1H, m), 6.80-6.96 (4H, m), 6.96-7.06 (1H, m), 7.23-7.48 (22H, m), 7.64-7.70 (1H, m), 7.75-7.81 (1H, m), 7.91-7.95 (1H, m), 8.34-8.43 (1H, m).
13C NMR (CDCl, 125 MHz):δ172.0,171.8,164.0,163.9,158.9,158.8,150.9,150.7,144.4,144.2,143.8,143.5,135.4,135.3,135.0,134.9,130.5,130.3,128.5,128.3,128.2,128.0,123.1,123.0,122.3,122.2,120.4,120.2,118.0,117.9,117.7,117.6,113.4,113.2,111.4,111.3,109.9,109.8,89.1,89.0,88.9,88.8,87.0,86.9,82.4,82.2,77.1,70.7,70.5,70.3,70.0,67.8,67.5,67.2,61.6,61.5,61.3,61.2,58.1,58.0,57.9,57.8,55.5,55.3,44.3,44.1,43.4,43.3,43.2,43.1,39.4,39.3,39.3,39.2,37.1,36.9,25.0,24.5,20.6,20.5,20.4,20.2,12.0,11.8.
31P NMR (CDCl, 202 MHz):δ150.2, 150.8.
【0177】
【化21】
【0178】
実施例4-2 化合物18の合成
化合物17(ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー、第54巻、2321ページ(1989年)に記載の方法に準じて合成した)(1.21g、2.0mmol)をピリジンに溶解し減圧下濃縮、トルエンに溶解し減圧下濃縮及びジクロロメタンに溶解し減圧下濃縮する操作を3回ずつ実施した後、tert-ブチルアルコールとジクロロメタンの混合溶媒(20 ml、tert-ブチルアルコール/ジクロロメタン=3/1(体積比))に溶解した。その溶液に炭酸セシウム(650mg、2.0mmol)、アクリル酸アリル(4.8ml、40mmol)を加え、室温で5時間撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣に酢酸エチルを加え、水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン-酢酸エチル)により精製し、化合物18を得た(1.1g、収率 75%)。
H NMR(CDCl, 500 MHz): δ7.93(dd,2H),7.71(d,1H),7.68-7.62(m,1H),7.50(dd,2H),5.86(ddt,1H),5.72(s,1H),5.26(dq,1H),5.17(dq,1H),4.59-4.49(m,2H),4.26(d,1H),4.22(dd,1H),4.11(dd,1H),4.05(t,2H),3.98(dd,1H),3.90(d,1H),2.67-2.54(m,2H),1.95(d,3H),1.14-0.96(m,28H).
【0179】
実施例4-3 化合物19の合成
化合物18(684mg、1.1mmol)を脱水テトラヒドロフラン(11ml)に溶解した。その溶液にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0価)(141mg、0.12mmol)及びモルホリン(0.96ml、11 mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン-酢酸エチル)により精製した後、ダウエックス HCR-S 強酸性イオン交換樹脂(Na形)に通してナトリウム塩とすることで、化合物19を得た(450 mg、収率 69%)。
1H NMR (CDCl, 500 MHz): δ10.74(s,1H),7.64(s,1H),5.71(s,1H),4.30-4.18(m,3H),4.12(dd,1H),4.02(dt,1H),3.97(dd,1H),3.94(d,1H),2.74-2.64(m,1H),2.60-2.50(m,1H),1.91(s,3H),1.18-0.92(m,28H).
【0180】
実施例4-4 化合物20の合成
化合物19(190mg、0.26mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(2.6ml)に溶解した。その溶液にO-ベンゾトリアゾリル-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート[HBTU](187mg、0.52mmol)、1-(2-アミノエチル)ベンゾイミダゾール(83mg、0.52mmol)を加え、室温で2.5時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチルとヘキサンの混合溶媒(酢酸エチル/ヘキサン=1/1(体積比))を加え、水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン-酢酸エチル)により精製し、化合物20を得た(150mg、収率 81%)。
MS (ESI):[M-H] 714.3453.
H NMR(CDCl, 500 MHz):δ9.62(s,1H),7.94(s,1H),7.79-7.70(m,1H),7.48(d,1H),7.45-7.41(m,1H),7.29-7.20(m,2H),5.34(s,1H),4.40(ddd,1H),4.33(dt,1H),4.23-4.14(m,2H),4.09(dd,1H),3.91-3.73(m,4H),3.65(d,1H),3.57(ddt,1H),2.55(ddd,1H),2.48(ddd,1H),1.86(d,3H),1.11-0.86(m,28H).
【0181】
実施例4-5 化合物21の合成
化合物20(555mg、0.78mmol)を脱水テトラヒドロフラン(7.8ml)に溶解した。その溶液にトリエチルアミン(161μl、1.2mmol)及びトリエチルアミン三フッ化物水素酸塩(370μl、2.3mmol)を加え、室温で2.5時間撹拌した。反応後、反応混合物にトリメチルエトキシシラン(723μl、4.7mmol)を加えて30分間撹拌し、濾過後、得られた固体を減圧下乾燥し、化合物21を得た(330mg, 収率 90%)。
MS (ESI):[M-H] 472.1831.
H NMR(DMSO-d, 500 MHz)δ11.34(s,1H),8.16-8.09(m,2H),7.78(d,1H),7.64(d,1H),7.58(d,1H),7.26(t,1H),7.19(t,1H),5.83(d,1H),5.21-5.16(m,2H),4.29(t,2H),4.17(q,1H),3.93(t,1H),3.84(q,1H),3.74-3.52(m,4H),3.48-3.38(m,2H),2.35-2.24(m,2H),1.76(d,3H).
【0182】
実施例4-6 化合物8の合成
化合物20(310mg, 0.65mmol)をピリジンに溶解後減圧下濃縮する操作を3回実施した後、ピリジン(6.5ml)に溶解した。その溶液に4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(266mg、0.79mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣にジクロロメタンを加え、炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン-メタノール)により精製し、化合物8を得た(320mg、収率 63%)。
MS (ESI):[M-H] 774.3140.
H NMR(CDCl, 500 MHz):δ9.56(s,1H),7.80(s,1H),7.61-7.58(m,1H),7.51(d,1H),7.43-7.12(m,11H),6.89-6.77(m,4H),5.99(d,1H),4.46(t,1H),4.37-4.29(m,2H),4.15-4.10(m,1H),4.07-3.96(m,2H),3.86(dt,1H),3.83-3.73(m,7H),3.59-3.46(m,2H),3.39(dd,1H),2.62-2.53(m,1H),2.50-2.42(m,1H),1.35(s,3H).
【0183】
実施例4-7 化合物9の合成
化合物1の代わりに化合物8(320mg、0.41mmol)を用い、実施例4-1に記載の方法と同様に反応を行い、化合物9を得た(325mg、収率 80%)。
【0184】
実施例5 人工オリゴヌクレオチドの合成及び精製
実施例1から4で得た化合物3、5、7及び9に由来するヌクレオシド構造を含有する人工オリゴヌクレオチド(化合物10-16;配列番号1から7:以下の表1に示す)を、核酸自動合成装置nS-8II(ジーンデザイン社製)を用いて、1.0μmolスケールで合成した。
アミダイトユニット(化合物3、5、7及び9)は、アセトニトリルに溶解して用いた。なお、表1において、化合物3、5、7及び9に由来するヌクレオチド構造は順にX1、X、X及びXと表記した。また、表1において、「(M)」は2’-O-メチル化リボヌクレオシドを意味し、大文字のアルファベットはデオキシリボヌクレオチドを意味し、「^」はホスホロチオエート結合を意味し、「5」は、ヌクレオチドの塩基が5-メチルシトシンであることを意味する。
【0185】
アミダイトユニット(化合物3、5、7及び9)と5’-末端のヒドロキシ基とのカップリング時間は、5分とした。5’-末端がDMTr基により保護されかつ固相支持されたオリゴヌクレオチド類縁体を、飽和アンモニア水で処理した後、Sep-Pak(Waters社製)により粗精製した。これを、逆相HPLC(SHIMADZU LC-6AD,SHIMADZU SPD-M20A、分取カラムとしてWatersXBridgeTM Prep C18 5μm(10mm×250mm))により精製した。
合成した人工オリゴヌクレオチド(化合物10-12)の純度は、イオン交換クロマトグラフィーにより確認したところ、97%(化合物10)、96%(化合物11)、96%(化合物12)、94%(化合物14)、97%(化合物15)、96%(化合物16)であった。化合物13の純度は、HPLCにより確認したところ、99%であった。
【0186】
(イオン交換クロマトグラフィー分析条件)
カラム:DNAPac PA-100 (DIONEX,4x250mm)
カラム温度: 50℃
溶離液 25mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)/1M塩化ナトリウム-25mMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH6.0)=100/0→(45分)→40/60
流速:1.0mL/min
【0187】
(HPLC分析条件)
溶離液:0.1Mのヘキサフルオロイソプロピルアルコールと8mMのトリエチルアミンとを含む水溶液/メタノール=95/5(1分)→(14分)→75/25(3.5分)
流速:1.0mL/min
カラム:WatersXBridgeTM C18 2.5μm,4.6mm×75mm
カラム温度:60℃
検出:UV(260nm)
【0188】
合成した人工オリゴヌクレオチド(化合物10から16)の分子量は、MALDI-TOF-MASSにより測定した。結果を表1に示す。
【0189】
【表1】
【0190】
参考例1 MOEオリゴヌクレオチド、MCEオリゴヌクレオチド及び2’-О-メチル化オリゴヌクレオチドの合成
実施例5と同様にして、下記の式(Q)で表されるMOE化ヌクレオシド構造を含む人工オリゴヌクレオチド(化合物C1)、式(Q)で表されるMCE化ヌクレオシド構造を含む人工オリゴヌクレオチド(化合物C2及びC3)、2’-О-メチル化リボヌクレオシド構造を含む人工オリゴヌクレオチド(化合物C4)を合成した。分子量はMALDI-TOF-MASSにより測定した。結果を表2に示す。なお、表2において、式(Q)で表されるヌクレオチド構造をQ、(Q)で表されるヌクレオチド構造をQと表記した。また、表2において、「(M)」は2’-O-メチル化リボヌクレオシドを意味し、大文字のアルファベットはデオキシリボヌクレオチドを意味し、「^」はホスホロチオエート結合を意味し、「5」は、ヌクレオチドの塩基が5-メチルシトシンであることを意味する。
【0191】
【化22】
【0192】
【化23】
【0193】
【表2】
【0194】
実施例6 人工オリゴヌクレオチドのヌクレアーゼ耐性の評価
実施例5で合成した人工オリゴヌクレオチド化合物10(PyECE)、化合物11(DMAECE)及び化合物12(MorECE)、参考例1で合成した人工オリゴヌクレオチド化合物C1(MOE)及び化合物C2(MCE)について、オリゴヌクレオチドを3’側から分解するエキソヌクレアーゼに対する耐性を検討した。
【0195】
750pmolの人工オリゴヌクレオチドを含むバッファー溶液(80μL)を37℃で5分間保持した後、0.2μgのホスホジエステラーゼI(Worthington Biochemical Corporation社)を含むバッファー溶液(20μL)を混合した。人工オリゴヌクレオチドの残存量を逆相HPLCによって経時的に測定した。尚、各時間においては、サンプルを直ちに90℃のオイルバスに移し、5分間保持することで酵素を不活性化した後、人工オリゴヌクレオチドの残存量を測定した。
用いたバッファーの組成(終濃度)は、Tris・HCl(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、pH8.0)50mM、MgCl 10mMであり、測定前に十分に脱気した。HPLCによる定量条件は以下に示すとおりである。
【0196】
(HPLC分析条件)
溶離液:0.1Mのヘキサフルオロイソプロピルアルコールと8mMのトリエチルアミンとを含む水溶液/メタノール=95/5(1分)→(14分)→75/25(3.5分)
流速:1.0mL/min
カラム:WatersXBridgeTM C18 2.5μm,4.6mm×75mm
カラム温度:60℃
検出:UV(260nm)
【0197】
結果を図1に示す。図1中、「Full Length Oligo(%)」は、0時点における未分解オリゴヌクレオチド(19mer)に対する、測定時点における未分解オリゴヌクレオチド(19mer)の残存率を示す。また、「Time[min]」は、測定時点の時間(単位は分である)を示す。
この結果、MOEオリゴヌクレオチド(MOE)は60分後にはすべて分解している。MCEオリゴヌクレオチド(MCE)においても120分後の残存率は10%であり、180分後の残存率は2%である。一方で、化合物10(PyECE)、化合物11(DMAECE)及び化合物12(MorECE)における120分後の残存率は、それぞれ38%、29%、50%であり、180分後の残存率は、それぞれ24%、14%、36%である。従って、化合物10(PyECE)、化合物11(DMAECE)及び化合物12(MorECE)は、公知の人工ヌクレオチドから調製される人工オリゴヌクレオチド(MOE及びMCE)を大きく上回る酵素耐性を有することが分かった。
【0198】
実施例7 人工オリゴヌクレオチドのヌクレアーゼ耐性の評価
実施例5で合成した人工オリゴヌクレオチド化合物13(BimECE)及び参考例1で合成した人工オリゴヌクレオチド化合物C2(MCE)について、オリゴヌクレオチドを3’側から分解するエキソヌクレアーゼに対する耐性を検討した。処理条件、分析条件は実施例6と同じである。
【0199】
結果を図2に示す。図2中、「Full Length Oligo(%)」とは、0時点における未分解オリゴヌクレオチド(19mer)に対する、測定時点における未分解オリゴヌクレオチド(19mer)の残存率を示す。また、「Time[min]」は、測定時点の時間(単位は分である)を示す。
この結果、MCEオリゴヌクレオチド(MCE)は120分後にはほぼすべて分解している。一方で、化合物13(BimECE)における120分後の残存率は、50%であり、180分後の残存率は、24%であった。従って、BimECEオリゴヌクレオチド(BimMCE)は公知の人工ヌクレオチドから調製される人工オリゴヌクレオチド(MCE)を大きく上回る酵素耐性を有することが分かった。
【0200】
実施例8 融解温度(Tm)の測定
実施例5で合成した人工オリゴヌクレオチドである化合物14-16(アンチセンス鎖)とRNAセンス鎖(3’-UCAAAUCCAGAGGCUAGCAG-5’)とをアニーリング処理した後、Tm値を測定することにより、アンチセンスのハイブリッド形成能を調べた。
コントロールとしては、MCE化ヌクレオシド構造を含む人工オリゴヌクレオチド(化合物C3)及び2’-О-メチル化リボヌクレオシド構造を含む人工オリゴヌクレオチド(化合物C4)
を利用した。
【0201】
合成したオリゴヌクレオチドの一本鎖(センス鎖及びアンチセンス鎖)それぞれをMilliQ水(超純水製造装置Milli-Q(登録商標)で製造された超純水)で溶解し2μMの濃度に調製した。濃度調製したセンス鎖及びアンチセンス鎖それぞれ190μLを採取し混合することにより、終濃度1μMの溶液を380μL調製した。次に、MilliQ水を減圧留去した。このサンプルを、100mMの塩化ナトリウムと、0.1mMのエチレンジアミンテトラ酢酸とを含む10mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.0)190μlに溶解させ、終濃度を2μMとした。次にサーマルサイクラーを用いて加熱及び冷却を行った。まず95℃まで上昇させそのまま5分間置いた後に、毎分1℃ずつ30℃まで下げることによりアニーリングを行った。
次に、アニーリングしたサンプルを260nmの吸光度が2になるように注射用水で希釈した。この吸光度が2のサンプルを150uL、10xPBS(-)を30μL、注射用水を120μL混合し、300μLの測定溶液を作製した。
分光光度計(Shimadzu,Pharma Spec UV-1700)内にサンプルを入れたセルを固定した後、サンプル溶液を90℃まで加熱し、さらに10分間90℃に保った後測定を開始した。温度は5℃まで毎分0.5℃ずつ下降させ、1℃間隔で260nmにおける紫外部吸収を測定した。その後、次は逆に5℃から毎分0.5℃ずつ上昇させて、90℃まで0.5℃間隔で260nmにおける紫外部吸収を測定した。測定は3回行った。表3には昇温測定時のTm値の平均値と標準偏差を記した。なお、温度上昇による濃度変化を防止するため、セルは蓋付きのものを用い、セル室内には結露防止のために脱水した空気を通した。
【0202】
【表3】
【0203】
表3から明らかなように、本実施形態の人工オリゴヌクレオチドの一本鎖RNAに対する親和性は、公知の人工ヌクレオチド(MCEヌクレオチド及び2’-О-メチル化リボヌクレオシド)から調製される人工オリゴヌクレオチドと同程度であることが分かった。
【0204】
実施例9 人工オリゴヌクレオチドの合成及び精製
実施例4で得た化合物9に由来するヌクレオシド構造を含有する人工オリゴヌクレオチド(化合物17;配列番号12:以下の表4に示す)を、核酸自動合成装置nS-8II(ジーンデザイン社製)を用いて、1.0μmolスケールで合成した。
アミダイトユニット(化合物9)は、アセトニトリルに溶解して用いた。なお、表4に
おける配列表記は、表1と同じである。
【0205】
アミダイトユニット(化合物9)と5’-末端のヒドロキシ基とのカップリング時間は、15分とした。5’-末端がDMTr基により保護されかつ固相支持されたオリゴヌクレオチド類縁体を、飽和アンモニア水で処理した後、Glen-Pak(Glen Resarch社製)により粗精製した。これを、逆相HPLC(SHIMADZU LC-6AD,SHIMADZU SPD-M20A、分取カラムとしてWatersXBridgeTM Prep C18 5μm(10mm×250mm))により精製した。
合成した人工オリゴヌクレオチド(化合物17)の純度は、HPLCによりにより確認したところ、99%であった。
【0206】
(HPLC分析条件)
溶離液:0.1Mのヘキサフルオロイソプロピルアルコールと8mMのトリエチルアミンとを含む水溶液/メタノール=95/5(1分)→(14分)→75/25(3.5分)
流速:1.0mL/min
カラム:WatersXBridgeTM C18 2.5μm,4.6mm×75mm
カラム温度:60℃
検出:UV(260nm)
【0207】
合成した人工オリゴヌクレオチド(化合物17)の分子量は、MALDI-TOF-MASSにより測定した。結果を表4に示す。
【0208】
【表4】
【0209】
参考例2 MCEオリゴヌクレオチドの合成
実施例9と同様にして、式(Q)で表されるMCE化ヌクレオシド構造を含む人工オリゴヌクレオチド(化合物C5)を合成した。分子量はMALDI-TOF-MASSにより測定した。結果を表5に示す。なお、表5において、(Q)で表されるヌクレオチド構造をQと表記した。また、表5における配列表記は、表2と同じである。
【0210】
【化23】
【0211】
【表5】
【0212】
実施例10 アンチセンス活性の評価
ヒト肝癌由来細胞株HuH-7の細胞を3000細胞/ウェルとなるように96ウェルプレートに播き、5%CO下37℃にて24時間培養した。化合物17及び化合物C5を、その最終濃度が0.1nMとなるようにLipofectamine(登録商標) RNAiMax(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて各ウェルに添加した(トランスフェクション)。4時間後に培地を交換し、さらに7日後に細胞を回収し、細胞からRNeasy mini kit(QIAGEN社製)を用いてTotal RNAを抽出した。
Total RNAからPrimeScript RT Master Mix(タカラバイオ株式会社製)を用いてcDNAを得た。得られたcDNA及びTaqMan(登録商標)Gene Expression ID(Applied Biosystems社製)を用いて7500 Real-Time PCR System(Applied Biosystems社製)によりリアルタイムPCRを行い、miRNA-122の標的遺伝子であるAldolase AおよびBranched chain ketoacid dehydrogenase kinase(BCKDK)のmRNA量を定量した。リアルタイムPCRでは、ハウスキーピング遺伝子のGAPDH(Glyceraldehyde-3-Phosphate Dehydrogenase)のmRNA量も同時に定量した。GAPDHのmRNA量に対するAldolase AのmRNA量を、Aldolase Aの発現レベルとして評価し、GAPDHのmRNA量に対するBCKDKのmRNA量を、BCKDKの発現レベルとして評価した。トランスフェクション操作を行わなかった細胞をコントロールとして用いた。結果を図3及び図4に示す。この際、Aldolase A及びBCKDKの発現量が高いほど、アンチセンス効果が高いことを示す。
なお、用いたプライマーは、TaqMan Gene Expression Assay(Applied Biosystems社製)であり、Assay IDは、以下のとおりであった:
ヒトAldolase A定量用: Hs00605108_g1
ヒトBCKDK定量用: Hs00195380_m1
ヒトGAPDH定量用: Hs99999905_m1
【0213】
図3及び図4から明らかなように、化合物17は化合物C5より高いアンチセンス効果を示すことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0214】
本発明のヌクレオシド類縁体又はヌクレオチド類縁体から調製されるオリゴヌクレオチドは、非常に優れたヌクレアーゼ耐性を示す。従って、該オリゴヌクレオチドは体内での持続性が非常によいと考えられることから、本発明のヌクレオシド類縁体又はヌクレオチド類縁体は、アンチセンスオリゴヌクレオチド等の核酸医薬品を合成するための材料として非常に有用である。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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