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特許7085813試験測定システム及び判定帰還型イコライザを利用する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】試験測定システム及び判定帰還型イコライザを利用する方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 13/20 20060101AFI20220610BHJP
   G01R 29/02 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
G01R13/20 L
G01R29/02 L
【請求項の数】 3
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017156852
(22)【出願日】2017-08-15
(65)【公開番号】P2018077212
(43)【公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-08-03
(31)【優先権主張番号】62/375218
(32)【優先日】2016-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/282593
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カン・タン
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-030528(JP,A)
【文献】特開2004-139631(JP,A)
【文献】特開2003-218963(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0243107(US,A1)
【文献】米国特許第09397868(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 13/20
G01R 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンネルを介して、シンボル間干渉(ISI)を被る入力信号を受けるよう構成される入力ポートと、
上記入力信号中に符号化されたビット・シーケンスを求め、
上記入力信号の複数の部分を、対応する上記ビット・シーケンスに基づいて複数のグループに割り当て、
記グループの夫々と対応するDFEスライサ・パターンを利用することによって判定帰還型イコライザ(DFE)を上記グループ夫々のヒストグラム又は確率密度関数(PDF)に適用して、ジッタの抑制を正確に捉えたDFE調整ヒストグラム又はPDFを取得し
上記DFE調整ヒストグラム又はPDFを正規化して合成する
よう構成されるプロセッサと
を具える試験測定システム。
【請求項2】
試験測定システムにおいて、判定帰還型イコライザ(DFE)を利用する方法であって、
シンボル間干渉(ISI)を被る入力信号に関連する入力信号データを取得する処理と、
上記入力信号データ中に符号化されたビット・シーケンスを求める処理と、
上記入力信号データの複数の部分を、対応する上記ビット・シーケンスに基づいて複数のグループに割り当てる処理と、
記グループの夫々と対応するDFEスライサ・パターンを利用することによってDFEを上記グループ夫々に関するヒストグラム又は確率密度関数(PDF)に適用して、ジッタの抑制を正確に捉えたDFE調整ヒストグラム又はPDFを得る処理と、
上記DFE調整ヒストグラム又はPDFを正規化する処理と、
正規化された上記DFE調整ヒストグラム又はPDFを最終ヒストグラム又はPDFへ合成する処理と
を具える方法。
【請求項3】
DFEの適用の前に、平均ISIに上記グループについて測定された非相関ジッタ及び非相関ノイズを畳込み積分することによって、上記DFEを適用する処理の前に、上記グループ夫々に関する上記ヒストグラム又はPDFを生成する処理を更に具える請求項の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オシロスコープの動作に関するシステム及び方法に関し、特に、オシロスコープにおいて判定帰還型イコライザを利用し、チャンネル・ベースの信号障害を受ける信号を測定するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試験測定システムは、信号を受けて、信号をサンプルし、そして、その結果を表示するよう設計されている。例えば、高速な信号は、チャンネルを介して送信機と受信機との間で伝達されることがある。送信機及び受信機は、、チャンネルで生じる障害を克服するのに、等化技術を利用しても良い。測定システムは、試験目的のために、チャンネルを横断する信号をサンプルし、表示することがある。精度を維持するために、測定システムは、送信機及び受信機における等化技術を反映した等化技術をシミュレートすることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-025662号公報
【文献】特開2016-213834号公報
【文献】特許第5344342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
測定システムにおける等化技術は、多くの点で送信機及び受信機の等化処理を適切に反映しているが、信号ジッタを不適切に求めている。間違ったジッタ値を利用すると、測定システムが出力するアイ・ダイアグラムは間違ってしまう。アイ・ダイアグラムにおけるエラーは、受信機における信号を間違って表すことになる。
【0005】
本発明の実施形態は、これら及び他の課題に取り組むものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示内容の態様としては、オシロスコープのような試験測定システムがあり、ジッタ及びビット・エラー・レート(BER)測定を実行する場合に判定帰還型イコライザ(Decision Feedback Equalizer:DFE)を利用するように構成される。DFEは、シンボル間干渉(ISI)について補正するが、ジッタについては、いくつかのエッジ遷移について、様々な程度で抑制する。DFEは、信号分析に関するしきい値として機能するDFEスライサを利用する。スライサが状態を変化させる速度は、エッジ遷移中にジッタが抑制される程度に影響する。受信機で生じているジッタ抑制を正確に捕捉するため、測定システムは、信号に対応するデータをビット・パターンに基づいて、複数のグループ(sets)に分類する。グループの個数は、DEFに利用するタップの個数に依存する。次いで、各グループ/ビット・パターンについて、ヒストグラム又は確率密度関数(PDF)が生成される。続いて、DFEが、グループ単位でヒストグラム/PDFに適用される。ジッタ抑制は、遷移に依存するので、各ビット・パターンは、DFEによって異なる影響を受ける。ビット・パターンに基づいてグループ単位でDFEを適用することによって、ジッタに対するDFEの影響を正確に考慮できる。更に、DFEが、捕捉したときやシミュレートしたジッタを含める前に信号に適用されるのに代えて、グループのヒストグラム/PDFに適用される(例えば、最後/ジッタを含めた後)。従って、ジッタは、各グループのヒストグラム/PDFに正しく組み込まれる。各グループについてのヒストグラム/PDFは、次いで、正規化されて、複数のジッタ測定のためであり、対応するアイ・ダイアグラムの生成のために、最終的なヒストグラム/PDFを生成するように合成される。
【0007】
従って、少なくともいくつかの態様では、試験測定システムが、チャンネルを介してISIに苦しむ(suffer from ISI)入力信号を受けるよう構成される入力ポートと、入力信号中に符号化されたビット・シーケンスを求めるよう構成されたプロセッサとを有している。プロセッサは、更に、入力信号の複数の部分を、対応するビット・シーケンスに基づいて複数のグループに割り当て、ISIについて調整されたDFE調整ビット・シーケンスを得るために、各グループに対応するDFEスライサ・パターンを利用してDFEを各グループに適用するよう構成される。次いで、プロセッサは、これらDFE調整ビット・シーケンスを正規化し、合成する(combine)。
【0008】
別の観点では、試験測定システムにおいてDFEを利用する方法が開示され、この方法は、ISIに苦しむ入力信号に関連する入力信号データを取得する処理を含んでいる。入力信号データ中に符号化されているビット・シーケンスが求められる。入力信号データの複数の部分が、対応するビット・シーケンスに基づいて複数のグループに割り当てられる。ISIについて調整された各グループに関するDFE調整ビット・シーケンスを得るために、各グループに対応するDFEスライサ・パターンを利用することによってDFEが各グループに適用される。これらDFE調整波形データベース又はアイ・ダイアグラムは、正規化される。これら正規化されDFE調整アイ・ダイアグラムは、最終的なアイ・ダイアグラム(VEYE、TEYE)へ合成される。
【0009】
これら及び他の態様は、以下で更に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、DFEを利用するよう構成されたオシロスコープを含む試験測定システムの1つの態様のブロック図である。
図2図2は、CTLEおよびDFEを含む受信機イコライザの1つの態様のブロック図である。
図3図3は、理想的な波形及び対応するビット・シーケンスの1つの態様のグラフである。
図4図4は、損失性チャンネルに関連するインパルス応答の1つの態様のグラフである。
図5図5は、インパルス応答を適用した後の損失性チャンネルからの波形の1つの態様のグラフである。
図6図6は、ジッタを適用した後の理想波形の1つの態様のグラフである。
図7図7は、インパルス応答とジッタを適用した後の理想波形の1つの態様のグラフである。
図8図8は、波形中のジッタを抑制するDFEスライサの移動の1つの態様のグラフである。
図9図9は、波形中のジッタを抑制するDFEスライサに基づく波形変形の1つの態様のグラフである。
図10図10は、有限エッジ・スルー・レートにより、波形中のジッタを抑制するDFEスライサの1つの態様のグラフである。
図11a図11aは、ジッタに対するDFEの影響を正確に考慮するために、ビット・シーケンスに基づくグラフ・グループに適用されるDFEスライサ・パターンの複数の態様の中の1つのグラフである。
図11b図11bは、ジッタに対するDFEの影響を正確に考慮するために、ビット・シーケンスに基づくグラフ・グループに適用されるDFEスライサ・パターンの複数の態様の中の1つのグラフである。
図11c図11cは、ジッタに対するDFEの影響を正確に考慮するために、ビット・シーケンスに基づくグラフ・グループに適用されるDFEスライサ・パターンの複数の態様の中の1つのグラフである。
図11d図11dは、ジッタに対するDFEの影響を正確に考慮するために、ビット・シーケンスに基づくグラフ・グループに適用されるDFEスライサ・パターンの複数の態様の中の1つのグラフである。
図11e図11eは、ジッタに対するDFEの影響を正確に考慮するために、ビット・シーケンスに基づくグラフ・グループに適用されるDFEスライサ・パターンの複数の態様の中の1つのグラフである。
図11f図11fは、ジッタに対するDFEの影響を正確に考慮するために、ビット・シーケンスに基づくグラフ・グループに適用されるDFEスライサ・パターンの複数の態様の中の1つのグラフである。
図11g図11gは、ジッタに対するDFEの影響を正確に考慮するために、ビット・シーケンスに基づくグラフ・グループに適用されるDFEスライサ・パターンの複数の態様の中の1つのグラフである。
図11h図11hは、ジッタに対するDFEの影響を正確に考慮するために、ビット・シーケンスに基づくグラフ・グループに適用されるDFEスライサ・パターンの複数の態様の中の1つのグラフである。
図12図12は、ISIを調整し、ジッタに対するDFEの影響を正確に考慮するために、試験測定システムにおいて、DFEを利用する方法の1つの態様のブロック図である。
図13図13は、DFEを適用する試験測定システムとして機能するよう構成されたオシロスコープの1つの態様である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の態様は、様々な修正及び代替形態が可能である。特定の態様は、図面に例として示されており、以下で詳細に説明する。しかしながら、本明細書に開示された実施例は、説明を明瞭にする目的で提示されており、明示的に限定されない限り、開示される全般的な概念の範囲を本願に記載の特定の態様に限定することを意図しない。このように、本開示は、添付の図面及び特許請求の範囲に照らして、記載された態様のあらゆる変更、均等物及び代替物をカバーすることを意図している。
【0012】
態様、実施例などへの明細書中での言及は、記載される項目が特定の機能、構造又は特性を含み得ることを示す。しかしながら、開示される全ての態様は、その特定の機能、構造又は特性を必ずしも含んでいなくてもよい。更に、そのような語句は、特に明記しない限り、必ずしも同じ態様を指すものではない。更に、特定の態様に関連して特定の機能、構造又は特性が記載されている場合、そのような機能、構造又は特性は、そのような機能が他の開示された態様と共に明示的に記載されるか否かにかかわらず、他の開示された態様と関連して利用しても良い。
【0013】
開示される態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はそれらの任意の組み合わせで実現されてもよい。開示された態様は、また、1つ又は複数のプロセッサによって読み取られ実行される、1つ又は複数の一時的又は非一時的な機械可読記憶媒体(たとえば、コンピュータ可読記憶媒体)によって搬送されるか又は記憶される命令として実現されてもよい。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。機械読み取り可能な記憶媒体は、機械によって読み取り可能な形式で情報を記憶又は伝送するための任意の記憶デバイス、メカニズム又は他の物理的構造として具体化されてもよい(例えば、揮発性又は不揮発性メモリ、メディア・ディスク又は他のメディア・デバイス)。
【0014】
図1は、DFE131フィルタを使用するように構成されたオシロスコープ130を含む試験測定システムの1つの態様のブロック図100である。送信機(Tx)110は、受信機(Rx)120にチャンネル140を介して信号140を送信する。オシロスコープ130は、必要に応じて試験のために信号140を捕捉するよう、Tx110、Rx120又はチャンネル113に結合される。入力ポート133を介して、信号140のコピーを受ける。Rx120において取り込まれるか又はシミュレートされるときに信号140に適用されるDFEと対応するように、DFE131が信号140に適用される。
【0015】
Tx110は、電気又は光信号を用いて通信するように構成された任意の信号源とすることができる。例えば、Tx110は、8ギガ・ビット/秒(Gb/s)、16Gb/s、10Gb/s、10Gb/s、20Gb/sで夫々動作する第3世代PCIE、第4世代PCIE、第2世代USB、MIPIギア4、サンダーボルトなどよう高速シリアル規格の送信機を実現するように構成されても良い。信号140は、チャンネル113を通して、シンボルのシーケンス(例えば、複数のビット)のような符号化データを伝達するように構成された任意の波形であってもよい。信号140は、例えば、上述の高速シリアル規格に従ってデータを符号化する波形であってもよい。チャンネル113は、銅線、同軸ケーブル、ファイバなどの任意の電気的又は光学的に伝導性の媒体であってもよい。Rx120は、チャンネル113を介してTx110からの信号を受信して、その後の使用のために復号するよう構成された任意のデバイスであってもよい。例えば、Rx120は、上述の規格の1つに従って構成された任意の受信機であってもよい。
【0016】
オシロスコープ130は、Tx110、Rx120又はチャンネル113の試験測定システムとして機能するように構成された任意の装置である。例えば、オシロスコープ130は、Tx110、Rx120、チャンネル113、及びこれらの任意の組み合わせに結合されてもよい。オシロスコープ130は、試験プローブ、ケーブル、アクセサリなどを介して他の構成要素に結合されても良い。入力ポート133は、信号140のコピーを受けるように構成された任意のポートである。オシロスコープ130は、信号140がTx110、Rx120又はその間の任意の地点に存在するときに、信号140のコピーを処理して表示するように構成される。従って、ユーザは、必要に応じて、デバッグ、設計変更、構成要素の設定などを目的として、他の構成要素を試験するためにオシロスコープ130を結合しても良い。
【0017】
以下で更に詳細に説明するように、Tx110、Rx120又はチャンネル113は、固有のインパルス応答を有する。言い換えれば、電気信号は、状態を無限に高速には変化しない。このため、高速シリアル通信規格(例えば、6Gb/sより大きい)に従って符号化された信号は、シンボルが電気的媒体の状態が変化する能力が許すよりも速く符号化されるので、ISIに苦しむ(suffer from ISI)ことになる。ISIは、最初のシンボルから残っている電圧が後続のシンボルの電圧振幅に影響を及ぼす場合に生じる。ISIは、また、反射とクロス・カップリングによっても生じる。DFE131は、特定のシンボルの電圧振幅だけでなく、先行するシンボルから残る電気的影響も考慮することによって、ISIを相殺する。DFE131は、ハードウェア又はソフトウェアのフィルタとして実現できる。DFE131は、シンボルが高シンボルであるか又は低シンボルであるかを判断するしきい値として機能するDFEスライサを利用する。DFE131は、ISIを考慮するために、先行ビットに基づいて各ビットについてスライサを上下に動かすことができる。これに代えて、DFE131は、先行するビットに基づいて、ISIを補償するように、信号振幅を計算で増減できる。
【0018】
信号140は、また、ISI以外の更なる障害も受ける。例えば、信号140は、周期ジッタ(PJ)、ランダム・ジッタ(RJ)、周期的ノイズ(PN)、ランダム・ノイズ(RN)などを被ることがある。これらの障害は、データ・パターン/ビット・シーケンスに関係しないため、非相関ジッタ/ノイズと呼ばれる。ISIはデータ・パターンと相関するので、非相関ジッタはISIとは別に扱われる。シーケンス中の各ビットにDFE131を直接適用すると、特にジッタが測定されるビット遷移中に、場合によっては、以下で説明するように、ジッタの部分的又は完全な抑制が生じる。このようなジッタ抑制は、正確に考慮しないと、オシロスコープ130の表示上で、信号140を不正確に表すヒストグラムやアイ・ダイアグラムを生じることがある。
【0019】
そこで、オシロスコープ130は、信号140を捕捉してメモリに記憶するように構成されている。オシロスコープ130は、例えば、クロック・リカバリ回路を使用することによって、信号140に対応するクロック信号をリカバリ(復元)する。次いで、オシロスコープ130は、信号140内のビット・シーケンスを決定する。ビット・シーケンスが決定されると、オシロスコープ130は、信号140の複数の部分を、その対応する部分において符号化されたビット・シーケンスに基づいて、グループに分類しても良い。ビット・シーケンス毎に、非相関のジッタとノイズを含むヒストグラム/PDFを作成できる。そのグループに含まれるビット・シーケンスに基づいて、各グループのヒストグラム/PDFにDFE131を適用する。DFE131は、グループのビット・シーケンスに合わせたスライサの移動パターン、例えば、図11a~hに示すスライサの移動パターンを利用する。次いで、グループ毎のヒストグラム/PDFは正規化され、最終的なヒストグラム/PDFに結合され、これは、信号140の正確なアイ・ダイアグラムを生成するのに利用される。そのビット・シーケンスに固有のスライサ移動パターンを採用することで、Rx120で発生するジッタ抑制を正確に捕捉することにより、適切な機能をサポートするようにスライサ・パターンを選択できる。
【0020】
図2は、CTLE251と、DFE131を実現するのに利用してもよいDFE200を含む受信機イコライザの1つの態様のブロック図である。DFE200は、CTLE251が信号141のような信号を受けるように、受信機において、連続時間線形イコライザ(Continuous Time Linear Equalizer:CTLE)251の後に配置してもよい。CTLE251フィルタは、チャンネル113のようなチャンネルの挿入損失を補償するように設定されたフィルタである。CTLE251は、特定周波数利得又は減衰を信号に適用することができる。例えば、CTLE251は、チャンネル特有の減衰を考慮して低周波数に比較して高周波数に対して利得を加えるとともに、ノイズ制御の目的で、特定の高周波数をフィルタ処理で除去してもよい。CTLE251は、2次CTLEとして構成されても良い。
【0021】
CTLE251によって調整された信号はxとして示され、ここでkはサンプル・インデックスであり、DFE200の差動入力電圧信号として扱われる。信号xは、合算器(Σ)ブロック252に送られる。Σブロック252は、複数の入力に対して加算/減算/比較演算を実行し、その結果を出力するように構成された任意の構成要素である。例えば、Σブロック252は、x及びフィードバックしきい値信号を差動信号として扱い、この入力信号及びしきい値を比較し、結果をyとして出力できる。yはDFE200から出力され、アイ・ダイアグラムの電圧(VEYE)と時間(TEYE)のデータ点として使用される。yは、また、判定機能253に送られ、これは、現在のしきい値を維持するか又は次のクロック・サイクルに関するしきい値を変更するかを判定する。判定機能253の出力電圧は、y として示される。判定機能253の出力は、時間遅延(Z-1)ブロック254に送られる。Z-1ブロック254は、判定機能253の出力を1クロック・サイクル遅延させ、その結果をフィードバック係数(x)ブロック255に送る。xブロック255は、先のインデックスについて必要な係数(-d1)を、遅延されたしきい値に適用し、その結果をΣブロック252に戻す。言い換えると、現在のクロック・サイクルについての入力信号が、前のクロック・サイクルで設定されたしきい値と比較されて出力される。後続のクロック・サイクルのしきい値は、現在のクロック・サイクルの出力に基づいて設定され、遅延され、回路にフィードバックされ、現在の出力に基づく後続のクロック・サイクルの計算に影響を与える。判定機能253とΣブロック252との間のフィードバックは、DFEタップと呼ばれる。タップを追加する度に、DFE200の出力が、更に多くクロック・サイクルに影響できることに注意されたい。従って、DFE200は、1つ又は複数の後続するサイクルに影響を与えるのに、現在のクロック・サイクルについて判定された比較しきい値を利用できる。このように、現在の入力信号についての電圧を、現在のシンボルを求めるためのしきい値と比較でき、このしきい値は、1つ以上前のシンボルに基づいて調整される。DFE200は、入ってくる信号を分析するハードウェア動作の観点から議論されているが、DFE200は、先にサンプリングされて記憶されたアナログ信号を表すデータを処理する/反復適用するソフトウェアで実現することもできる。数学的には、1タップを用いたDFE200の振る舞いは、以下のように記述できる。
【0022】
数式1
=x-dsgn(yk-1
【0023】
数式2
y*=sgn(y),|y*|=1
【0024】
ここでsgn(yk-1)は、先のインデックスに由来する判定機能の出力を示し、sgn(y)は、現在のインデックスに由来する判定機能の出力を示し、その他の変数は、上述の通りである。数学的には、2タップを用いたDFE200の振る舞いは、以下のように記述できる。
【0025】
数式3
=x-dsgn(yk-1)?dsgn(yk-2
数式3
【0026】
数式4
y*=sgn(y),|y*|=1
【0027】
ここでsgn(yk-2)は、2つ前のインデックスを形成する係数で乗算された2つ前のインデックスに由来する判定機能の出力を示し、その他の変数は、上述の通りである。見てわかるように、必要に応じて、追加の項を数式1又は3に加えることで、複数の先行するクロック・サイクルが、現在のクロック・サイクルのしきい値の計算に影響を与えることができる。
【0028】
図3は、理想波形340及び対応するビット・シーケンス331の1つの態様のグラフ300である。波形340は、例えば、Tx110のような送信機に結合された装置によって生成できる。波形340は、時間を通じて伝達される高低値としてビット・シーケンス331を表す。例えば、1の値は、高電圧として表され、0の値は、低電圧として表される。高及び低電圧に関する電圧レベルは、対応する通信システム(例えば、Tx110、チャンネル113及びRx120)の設計上の制約に合致するように、必要に応じて設定できる。波形340は理想波形なので、高及び低電圧遷移は、ほぼ瞬間的にしきい値345と交差する。しきい値345は、高及び低電圧を区別するために選択された値である。不正取引でない振る舞いの場合、しきい値345を上回る電圧は高電圧(例えば、1の値)として扱われ、しきい値345を下回る電圧は低電圧(例えば、0の値)として扱われる。
【0029】
図4は、損失性(lossy:損失の多い)チャンネルに関連するインパルス応答の1つの態様のグラフ400である。グラフ400は、チャンネル113中の材料のような、例示的な材料(material:構成要素)のインパルス応答を描写している。インパルス応答は、理想的なインパルス信号を受けたときの材料の瞬間的な電気的挙動である。グラフ400は、ナノ秒(ns)単位の時間に対するボルト(V)単位のインパルス応答を示している。図示のように、実際のチャンネルにおける状態遷移は瞬間的ではない。グラフ400に示される例では、約0.045Vのハイ(高)信号は、約1.2ns(例えば、約1.8nsから約3nsまで)で約0に調整される。従って、グラフ400の例では、約1.2nsよりも速く生じる信号状態の変化は、時間的に隣接する値がISIの形で互いに干渉する原因となる。ISIは、1つのシンボル(例えば、1又は0)が後続のシンボルと干渉する任意の形式の信号歪みである。例えば、時点1.8nsでの高電圧に2nsでの低電圧が続くと、約0.02V(例えば、約半分)の残存する高電圧は、ISIとして低電圧に起因する。
【0030】
図5は、インパルス応答を適用した後のチャンネル113のような損失性チャンネルからの波形540の1つの態様のグラフ500である。例えば、チャンネルのインパルス応答に基づいてISIを被る(suffer from)ほど十分に速く伝達される理想波形340のような理想波形は、波形540のような波形を生じることがある。対応するビット・シーケンス531が、時間の経過と共に描かれて、ISIが加わる前における、対応する点での波形540に符号化されたデータ(例えば、ビット/シンボル)を示す。グラフ500から分かるように、連続する高振幅値は、波形540を全体的により高く押し上げる一方で、連続する低振幅値は、波形540を全体的により低く押し下げる。これは、受信機において、高低値を区別するのを困難にする結果となり得る。例えば、低値531aは、複数の高値の後に来て、比較的高振幅の低値という結果を生じる。更に、高値531bは、複数の低値の後に来て、比較的低振幅の高値という結果を生じる。結果として、低値531aの振幅は、高値531bの振幅から、大きくは区別できない。このように、ISIを被る高速なアプリケーションについては、受信機は、各シンボルの状況を認識している必要がある。DFE131や200のようなDFEは、こうした状況的な認識を提供する。DFEは、各入力値を前の値と比較して、信号解釈のための状況を提供できる。各DFEタップは、追加の先行値との比較結果を提供する。例えば、2タップのDFEは、シンボルを2つの先行するシンボルと比較でき、3タップのDFEは、シンボルを3つの先行するシンボルと比較できる、などである。従って、DFEタップの数の増加は、複雑さは増加するが、ますます高速化するシグナリングのために増加するISIの量を克服する。
【0031】
図6は、ジッタ641を適用した後の理想波形340のような理想波形640の1つの態様のグラフ600である。ジッタ641は、信号通信における時間的変動であり、チャンネル113のような通信リンクによって生じることがある。信号640は実線で示され、信号ジッタ641は破線で示されている。ここでのジッタは、周期ジッタ(PJ)の一種である正弦波ジッタと呼ばれる。こうしたジッタは、ビット・シーケンス631とは、相関がない。ジッタ641は、時間的に、よってx軸に沿って波形640をシフトさせるが、振幅、よってy軸に沿っては波形640をシフトさせない。複数のクロック基準620が、遷移しきい値345と類似する遷移しきい値に沿って、円として描かれている。クロック基準620は、対応するクロック信号に基づいて、波形640が状態を変更可能な時間的な位置を示し、クロック・サイクルと呼ばれることもある。エッジとは、第1状態から第2状態に遷移する信号の任意の部分である。図示のように、波形640は、エッジ601、602及び603で状態を変えている。低状態から高状態への状態遷移は立ち上がりエッジと呼ばれ、高状態から低状態への遷移は立ち下がりエッジと呼ばれる。エッジ601及び603は立ち上がりエッジであり、602は立ち下がりエッジである。エッジ601、602及び603は、理想的には、基準620の間に遷移しきい値を交差しなければならない。しかし、ジッタ641のために、エッジ601、602及び603は、点線の間に描かれたジッタ641で区切られる任意のポイントの期間中に生じることがある。
【0032】
ジッタ641を更に明確にするために、ヒストグラム610を示す。ヒストグラム610は、数値データの分布をグラフで表したものであり、連続的な変数の確率を推定している。具体的には、ヒストグラム610は、同じ波形640が連続的に繰り返される場合に、エッジ601、602及び603のような波形640のエッジが、クロック基準620と比較した特定のどの時間的位置に現れるかの回数を示す。ヒストグラム610は、Y軸に沿ったエッジ発生頻度と、クロック基準620と比較した時間的位置を示す。図示のように、ジッタ641は、波形640のエッジをジッタ641の期間の境界の両端で最も頻繁に発生させ、正確にクロック基準620上で発生する可能性を減少させる。
【0033】
図7は、図4~6に関して上述したようなインパルス応答/ISIとジッタを適用した後の理想波形340のような波形740の1つの態様のグラフである。波形740は、チャンネル113のようなチャンネルを横断した後に、Rx120のような受信機で受信されるような波形の例である。波形740のエッジ701、702及び703は、ISIを適用した後のエッジ601、602及び603と夫々ほぼ同様である。エッジ701、702及び703は、xで描かれる時間的位置でしきい値745と交差する。ISIにより、しきい値745に対する波形の振幅が変わるため、場合によっては、エッジ701、702及び703がクロック基準720でしきい値745と交差しないことがある。ヒストグラム710は、ヒストグラム610とほぼ同様である。図示のように、ISI/インパルス応答が波形740に適用されても、ヒストグラム710には影響せず、これは、信号の分布が非相関ジッタによって生じることを示す。従って、ISI及び非相関ジッタは、信号に対して無関係な影響を持つはずである。更に、波形740が受信機で受信したような波形であるので、オシロスコープ130のような試験測定システムが、試験のための精度を確実にするため、ほぼ同様な形状で、ほぼ同様なヒストグラム710とともに、波形740のような波形を表示するよう構成するのには都合が良いであろう。
【0034】
図8は、波形840中のジッタを抑制するDFEスライサ830の移動の1つの態様のグラフ800である。DFEスライサ830は、DFE131や200のようなDFEによって実現される移動するしきい値である。DFEスライサ830は、グラフ800中に点鎖線で描かれている。DFEスライサ830は、しきい値345と同様のやり方で、高低値を区別するために使用される信号しきい値である。しかし、DFEスライサ830は、ISIのために生じる信号変化に対処するために、時間の経過と共に調整される。具体的には、連続する低値は、スライサ830をより低く移動させ、一方、連続する高値は、スライサ830をより高く移動させる。従って、スライサ830は、シンボルが高値であるか低値であるかを判定する際に、振幅だけでなく、信号の状況(例えば、ISIを考慮するために)を考慮する。DFEスライサ830は、クロック基準620及び720とほぼ同様のクロック基準820において調整する。
【0035】
波形840は、波形740とほぼ同様であり、エッジ701、702及び703と夫々ほぼ同様のエッジ801、802及び803を含む。オシロスコープ130のような試験測定システムで測定されて表示される場合、波形840は受信機で受信される波形(例えば、波形740)と合致しなければならない。エッジ801及び802は、x軸に沿ってDFEスライサ830と交差し、そのような交差は、xでマークされた時間的位置に描かれる。よって、このような交差は、時間の経過と共に発生する。このように、エッジ801及び802は、ヒストグラム710とほぼ同様な分布を示すヒストグラム810を生じる。
【0036】
しかし、DFEスライサ830の移動により、エッジ803はスライサ830をy軸に沿って交差する。言い換えれば、スライサ830は、時間的に同時に、波形840と、波形840のジッタ期間に関する範囲とに交差して遷移する。その結果、エッジ803のヒストグラム813は、直線であり、エッジ803が、ジッタにかかわらず、全ての場合において同じ時間的位置でスライサ830と交差することを描写している。従って、DFEスライサ830は、ビット遷移/クロック基準820においてエッジ803に関連するジッタを効果的に抑制する。上述のように、ISIはジッタに影響しない。しかし、エッジ803によって示されるように、ISIに対処するためのDFEの適用はジッタに影響を及ぼし得る。更に、ジッタは主にビット遷移で測定されることがあり、DFEスライサ830は、ジッタ測定に対する影響を増大させる。
【0037】
図9は、波形940中のジッタを抑制するDFEスライサ930に基づく波形940の変形の1つの態様のグラフである。波形940は、波形840とほぼ同様である。波形940は、エッジ901、902及び903を含み、これらは、エッジ801、802及び803と夫々ほぼ同様である。波形940は、DFEの代替形式を示す。波形940において、DFEスライサ930は、一定に維持される。その代わり、波形940は、DFEスライサ830とは逆のやり方で、演算で増加又は減少される。言い換えると、DFEスライサ830のように、DFEスライサ930がエッジ902及び903の間で上方へ移動する代わりに、DFEスライサ930は一定に維持されて、波形940が下へ調整される。
【0038】
図示のように、エッジ901及び902は、ヒストグラム910を維持する。しかし、DFEスライサ930の実施は、エッジ903及び波形部分904の両方でジッタを抑制し、ヒストグラム813と同様のヒストグラム913を生じる結果となる。従って、DFEスライサ90を利用したDFEの演算も、ジッタを抑制する。
【0039】
図10は、有限エッジ・スルー・レートで、波形1040中のジッタを抑制するDFEスライサ1030の1つの態様のグラフである。DFEスライサ930と比較したDFEスライサ830及び振幅の調整は、瞬間的に描写されている。言い換えると、こうしたDFEスライサは、対応するクロック基準において、すぐに状態を遷移する。こうしたDFEスライサは、スライサが無限大に速く状態を変化させるので、無限大のスルー・レートを有すると言うことができる。無限大スルー・レートは、離散的にDFEスライサを変化させることによるソフトウェア・ベースのDFEの実施によって実現できる。スライサ1030のようなハードウェア・ベースのDFEは、リアルタイムで状態を変化できる。このように、スライサ1030は、有限のスルー・レートがあり、スライサ1030は、有限の時間長をかけて状態をスイッチすることを意味する。波形1040は、波形840とほぼ同様であるが、明確にするため、大幅に詳細に示している。波形1040には、また、周期ジッタの境界線1041がある。
【0040】
DFEスライサ1030は、有限のスルー・レートを有するので、波形1040及び周期ジッタの境界線は、どれも全く同じ瞬間にはスライサ1030と交差しない。よって、ジッタは、ゼロには抑制されない。しかし、それでもジッタは、ゼロではない値で抑制される(例えば、圧縮される)。例えば、波形1040は、ピークからピークまでの期間1042に渡ってジッタを経験する。しかし、波形1040及びジッタ期間境界線1041は、夫々、ピークからピークまでの期間1043の間にDFEスライサと交差する。従って、ジッタは、ピーク・トゥ・ピーク1042からピーク・トゥ・ピーク1043まで、部分的に抑制/圧縮される。数学的には、ジッタ抑制に関するジッタ変換比率(jitter conversion ratio:JC)が、次のように描写でき、このとき、a~hは、図10中に描かれたグラフ点であり、SRslcは、スライサ130のスルー・レートであり、SRwfmは、波形1040のスルー・レートである。
【0041】
数式5
ab=DFE前のジッタ
【0042】
数式6
cd=DFE後のジッタ
【0043】
数式7
gf=cd≦ab=ef
【0044】
数式8
cd≦ab
【0045】
数式9
SRwfm=hg/eg
【0046】
数式10
SRslc=hg/gf
【0047】
数式11
JC=cd/ab=gf/ef=gf/(eg+gf)=SRwfm/(SRwfm+SRslc)≦1
【0048】
数式12
JC=0 SRslc=∞の場合
【0049】
数式13
JC=1 SRslc=0の場合
【0050】
図11a~hは、ジッタに対するDFEの影響を正確に考慮するために、ビット・シーケンス1131に基づくグラフ・グループ(例えば、ヒストグラム又はPDF)に適用されるDFEスライサ・パターン1130の複数の態様の中のグラフである。DFEスライサ・パターン1130は、DFE131のようなDFEによって利用されても良い。DFEスライサ・パターン1130は、図示するような、あり得る3つのビット・シーケンスのために選択され、図示のようにクロック基準1120で遷移する。更に、各DFEスライサ・パターン1130は、対応するグループ中の第3ビットに対して、スライサがY軸に沿ってそのビットの波形を横切ることなく、適用できる。よって、各グループの第3ビットの波形は、ISIに関して調整され、そのビットのジッタを正しく捕捉する。各グループの第3ビットに関するヒストグラム/PDFは、DFEスライサによって、同様に調整される。次いで、完全なヒストグラム/PDFを生成するためや、所望のBERで信号のジッタを正しく表示するアイ・ダイアグラムを生成するために、ヒストグラム/PDFが正規化される。
【0051】
DFEスライサ・パターン1130が、3つのビット・シーケンスの全てについて選択されることに注意されたい。使用されるグループの数は2(N+2)であり、ここでNは、DFEタップの数である。従って、Nが1の場合、8つのグループと8つのDFEスライサ・パターン1130に対応する単一のDFEタップが使用される。より高速なシグナリングが使用されると、順次、より多くのDFEタップ、より長いビット・シーケンス、より多くのグループが使用される。具体的には、DFEタップ数が増加すると、N+2のビット・シーケンス長が増加する結果となり、結果としてあり得るビット・シーケンス毎にグループを生成するのに2(N+2)個のグループが必要となる。DFEスライサ・パターン1130は、ビット・シーケンスのあり得る全てのグループについて最後のビットを正確に処理するために、必要に応じて、拡張しても良い。
【0052】
図12は、ISIを調整し、ジッタに対するDFEの影響を正確に考慮するために、オシロスコープ130や1300のような試験測定システムにおいて、DFE131や200のようなDFEを利用する方法1200の1つの態様のブロック図である。ブロック1201では、入力信号や入力信号に関連する入力信号データを取得することによって、波形が取り込まれる。上述のように、入力信号は高速シリアル信号であり、よってISIに悩まされている。必要に応じて、CTLE251のようなCTLEを実装するために、CTLEエミュレーションが使用される。
【0053】
ブロック1203では、例えば、クロック・リカバリ回路を利用することによって、入力信号について、クロック・リカバリが実行される。クロック・リカバリにより、入力信号に対応するクロック信号が生じる。リカバリされたクロック信号は、入力信号/データ中に符号化されたビット・シーケンスを求めるのに利用される。更に、必要に応じて、DFEタップの数が、選択/適切に変更される。例えば、測定システムは、ユーザからの入力を受けても良い。この入力は、波形が特定の規格を満たすために試験されることを指示しても良い。次いで、測定システムは、メモリに記憶されたデータに基づいて、選択された規格に対応するDFEタップの数を選択しても良い。
【0054】
ブロック1205では、入力信号データの複数の部分が、対応するビット・シーケンスと、ブロック1203で求められたようなDFEタップの数とに基づいて、複数のグループに割り当てられる。具体的には、グループの数は、DFEで使用するDFEタップの数に基づいて選択される。グループの数は、2(N+2)と選択され、ここで、Nは、DFEタップの数である。これらグループは、あり得る各ビット・シーケンスN+2が、一意の(unique)グループに割り当てられるように選択される。次いで、入力信号データの各部分を、その入力信号/データの部分中に符号化されているビット・シーケンスに基づいて、対応するグループに割り当てることができる。
【0055】
ブロック1207では、各グループについてヒストグラム又はPDFが生成され、これは、非相関ジッタ及びノイズを含んでいる。ヒストグラムは、対応するグループ中の全てのサンプルに渡る信号振幅/データ値の分布のような数値データの分布をグラフ表現したものである。PDFは、以前のデータ・グループ値の分布に基づいて、指定された値が出現する確率を表す代替の数学的表現である。ヒストグラム又はPDFのいずれかを、波形データベースのグラフで表すことができるため、各グループについて、波形グラフ/ヒストグラム/PDFが生成される。各グループのPDF/ヒストグラムは、既知のISIを、そのグループについて測定された非相関ジッタ(例えば、PJとRJ)及び非相関ノイズ(PNとRN)と畳込み積分することによって生成しても良い。各グループのヒストグラム/PDFの作成は、DFEを適用する前に完了していることに注意されたい。
【0056】
ブロック1209では、DFEが、各グループのヒストグラム/PDF/グラフに適用される。DFEは、各グループに対応するDFEスライサ・パターン、例えば、DFEスライサ・パターン1130を利用する。DFEスライサ・パターンは、ISIについて調整し、対応するグループや、対応するグループ中の特定のビットに関するジッタ抑制を正確に捕捉するために選択される。DFEスライサ・パターンの適用によって、各グループについて、調整された波形グラフ/DFE調整ビット・シーケンス(例えば、グループのヒストグラム又はグループのPDFの形で)が生じる。
【0057】
ブロック1211では、各グループについての複数のDFE調整グラフ/ビット・シーケンス(例えば、グループのヒストグラム又はグループのPDF)が、発生密度に基づいて正規化され、最終的なヒストグラム/PDFへと合成される。ブロック1213では、所望BERでの対応するアイ・ダイアグラムに関するジッタ及びアイ輪郭が、最終ヒストグラム/PDFに基づいて求められる。入力信号データを複数のグループに分離し、DFEによるジッタ抑制を正確に捕捉しながらこれらグループに関するヒストグラム/PDFを生成し、そして、これらヒストグラム/PDFを合成することによって、結果として生じるアイ・ダイアグラムは、例えば、受信機120及びチャンネル113夫々のようなチャンネルを横断した後に受信機によって受信されたように、オシロスコープの表示上で入力信号を正確に描写する。
【0058】
図13は、DFE131のようなDFEを適用するために、図1オシロスコープ130のような試験測定システムとして機能するよう構成されたオシロスコープ1300の1つの態様である。オシロスコープ100は、図1のように、オシロスコープ130、チャンネル113Tx110やRx120と連結して実現や動作するよう利用されても良い。オシロスコープ100は、また、DFEスライサ・パターン1130を利用することによる方法1200や、本願で開示される他の方法を実現するように構成されても良い。オシロスコープ100には、信号入力ポート1311があり、これは、電気的又は光学的ポート、受信機などでも良く、試験の目的で、ISIに苦しむ信号のような入力信号を受けるよう構成される。入力ポート1311は、信号分析回路1314に結合され、これは、増幅器、サンプラ、位相基準回路、クロック・リカバリ回路や、信号サンプリングや信号調整のための他のコンポーネントを含んでいても良い。信号分析回路1314は、入力ポート1311から入力信号を受けて、入力信号についてサンプリング及び他の信号分析を実行し、また、クロック信号リカバリを実行する。信号分析回路1314は、1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)又は他の処理回路として実現されても良い。信号分析回路1314は、また、更なる処理のために、入力信号データをメモリに記憶するよう構成されても良い。信号分析回路1314は、プロセッサ1315に結合されており、これは汎用プロセッサとして実現されても良い。プロセッサ1315は、メモリ131からの命令を実行し、命令によって指示された任意の方法や関連するステップを実行するように構成される。メモリ1317は、プロセッサ・キャッシュ、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、リード・オンリ・メモリ(ROM)、ソリッド・ステート・メモリ、ハードディスク・ドライブ又は他の任意のメモリ形式として実現されてもよい。メモリ1317は、データ、コンピュータ・プログラム・プロダクト及び他の命令を記憶し、必要に応じて計算のためにプロッサ1315に、こうしたデータ/プロダクト/命令を提供するための非一時的媒体として機能する。
【0059】
プロセッサ1315は、DFEモジュール1316を有していても良い。DFEモジュール1316は、入力信号データで表されるビット・シーケンスを求め、これらビット・シーケンスに基づいて入力信号データを複数のグループに分類し、各グループについてヒストグラム/PDFを生成し、各グラフにDFEスライサを適用し、得られたデータを正規化して、最終的なヒストグラム/PDFへと合成するよう構成された処理回路や命令セットである。DFEモジュール1316は、更に、方法1200や、本願に開示された他の方法を実行するよう構成される。いくつかの実施形態では、DFEモジュール1316が、メモリ1317、プロセッサ1315、信号分析回路1314、ユーザ操作部1313や表示部1319において、全体又は一部が、実現されても良い。
【0060】
ユーザ操作部1313は、プロセッサ1315及び信号分析回路1314に結合される。ユーザ操作部1313は、ストローブ入力部、利得制御部、トリガ部、表示調整部、電源操作部、又は、表示部1319上で、入力信号を表示したり、表示を変更したりするのにユーザが利用できるその他の操作装置を含んでいても良い。表示部1319は、デジタル・スクリーン又は陰極線管ベースの表示装置であってもよい。表示部1319は、対応する複数の入力信号、例えば、複数のアイ・ダイアグラムを表示するために、複数の表示領域を含んでいる。従って、オシロスコープ1300は、ユーザ操作部1313を介して受けたユーザ入力に基づいて、信号入力ポート1311を介してISIに苦しむ複数の入力信号を受けて、これら入力信号をサンプリング/解析し、そのデータをビット・シーケンスに基づいて複数のグループに分類し、正確にジッタ抑圧を捕捉するためにグループ毎にDFEスライサ・パターンを適用し、対応する入力信号を正確に表すアイ・ダイアグラムを生成し、表示部1319上に表示する。
【0061】
本発明の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータで動作できる。本願で使用されるコントローラ又はプロセッサという用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラを含むことを意図している。本発明の1つ又は複数の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)又は他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールのようなコンピュータ利用可能データ及びコンピュータ実行可能命令で実現できる。一般に、プログラム・モジュールには、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などが含まれ、コンピュータ又は他のデバイス内のプロセッサによって実行されたときに、特定のタスクを実行したり、特定の抽象データ型を実装したりする。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどの非一時的なコンピュータ可読媒体に記憶されてもよい。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な態様において、所望されるように組み合わせられ又は分散されてもよい。更に、機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア等価物において、全体が又は部分的に実現されても良い。本発明の1つ以上の態様をより効果的に実現するのに、特定のデータ構造を使用してもよく、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0062】
開示された主題の上述のバージョンは、上述されたか又は当業者には明らかであろう多くの利点を有する。それでも、開示された装置、システム又は方法のすべてのバージョンにおいて、これらの利点又は機能のすべてが要求されるわけではない。
【0063】
加えて、この記載の説明は特定の特徴に言及している。本明細書における開示は、それらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせを含むことが理解されるべきである。特定の態様が特定の態様の状況において開示されている場合、その特徴は、可能な限り、他の態様の状況においても利用できる。
【0064】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行できる。
【0065】
説明の都合上、本発明の特定の態様が図示され、説明されてきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な変更がなされ得ることが理解されよう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲を除いて限定されるべきではない。参考までだが、本発明の例示的な概念は以下のようなものであってもよい。
【0066】
本発明の概念1は、試験測定システムであって、
チャンネルを介して、シンボル間干渉(ISI)を被る入力信号を受けるよう構成される入力ポートと、
上記入力信号中に符号化されたビット・シーケンスを求め、
上記入力信号の複数の部分を、対応する上記ビット・シーケンスに基づいて複数のグループに割り当て、
ジッタ抑制を正確に捕捉するDFE調整グラフを得るために、上記グループの夫々と対応するDFEスライサ・パターンを利用することによって判定帰還型イコライザ(DFE)を上記グループ夫々のグラフに適用し、
上記DFE調整グラフを正規化して合成する
よう構成されるプロセッサと
を具えている。
【0067】
本発明の概念2は、上記概念1の試験測定システムであって、このとき、上記プロセッサが、更に、上記DFEで利用されるDFEタップの数に基づいて、上記グループの数を選択するよう構成される。
【0068】
本発明の概念3は、上記概念2の試験測定システムであって、このとき、上記グループの数が、2(N+2)として選択され、ここで、Nは、上記DFEで利用されるDFEタップの数である。
【0069】
本発明の概念4は、上記概念1の試験測定システムであって、このとき、上記プロセッサが、更に、上記DFE調整グラフが上記グループ夫々に関するグループ・ヒストグラムを含むように、上記DFEを適用する前に、上記グループ夫々に関するヒストグラムを生成するよう構成される。
【0070】
本発明の概念5は、上記概念4の試験測定システムであって、このとき、上記グループ・ヒストグラムは、DFEを適用する前に、平均ISIパターンに、そのグループについて測定された非相関ジッタ及び非相関ノイズを畳込み積分(convolve)することによって生成される。
【0071】
本発明の概念6は、上記概念5の試験測定システムであって、このとき、上記DFE調整ビット・シーケンスを正規化する処理及び合成する処理が、
発生密度に基づいて上記グループ・ヒストグラムを正規化する処理と、
正規化された複数の上記グループ・ヒストグラムを1つの最終ヒストグラムに合成する処理と
を含んでいる。
【0072】
本発明の概念7は、上記概念6の試験測定システムであって、このとき、上記プロセッサが、更に、上記最終ヒストグラムに基づいて、アイ・ダイアグラムのアイ輪郭を求めるよう構成されている。
【0073】
本発明の概念8は、上記概念1の試験測定システムであって、このとき、上記プロセッサが、更に、上記DFEを適用する前に、上記グループの夫々に関する確率分布関数(PDF)を生成し、上記DFE調整グラフが上記グループ夫々に関するグループPDFを含むように構成されている。
【0074】
本発明の概念9は、上記概念8の試験測定システムであって、このとき、上記グループPDFの夫々は、DFEを適用する前に、平均ISIパターンに、そのグループについて測定された非相関ジッタ及び非相関ノイズを畳込み積分(convolve)することによって生成される。
【0075】
本発明の概念10は、上記概念9の試験測定システムであって、このとき、上記DFE調整ビット・シーケンスを正規化する処理及び合成する処理が、
発生密度に基づいて上記グループPDFを正規化する処理と、
正規化された複数の上記グループPDFを1つの最終PDFに合成する処理と
を含んでいる。
【0076】
本発明の概念11は、上記概念10の試験測定システムであって、このとき、上記プロセッサが、更に、上記最終PDFに基づいて、アイ・ダイアグラムのアイ輪郭を求めるよう構成されている。
【0077】
本発明の概念12は、試験測定システムにおいて、判定帰還型イコライザ(DFE)を利用する方法であって、この方法は、
シンボル間干渉(ISI)を被る入力信号に関連する入力信号データを取得する処理と、
上記入力信号データ中に符号化されたビット・シーケンスを求める処理と、
上記入力信号データの複数の部分を、対応する上記ビット・シーケンスに基づいて複数のグループに割り当てる処理と、
ジッタ抑制を正確に捕捉するDFE調整波形データベース・グラフを得るために、上記グループの夫々と対応するDFEスライサ・パターンを利用することによってDFEを上記グループ夫々に関するグラフに適用する処理と、
上記DFE調整波形データベース・グラフを正規化する処理と、
正規化された上記DFE調整波形データベース・グラフを最終波形グラフへ合成する処理と
を具えている。
【0078】
本発明の概念13は、上記概念12の方法であって、このとき、上記DFEで利用されるDFEタップの数に基づいて、上記グループの数を選択する処理を更に具えている。
【0079】
本発明の概念14は、上記概念12の方法であって、このとき、DFEの適用の前に、平均ISIに上記グループについて測定された非相関ジッタ及び非相関ノイズを畳込み積分することによって、上記DFEを適用する処理の前に、上記グループ夫々に関する波形データベース・グラフを生成する処理を更に具えている。
【0080】
本発明の概念15は、上記概念14の方法であって、このとき、上記最終波形データベース・グラフに基づいて、アイ・ダイアグラム のアイ輪郭を求める処理を更に具えている。
【符号の説明】
【0081】
100 試験測定システム
110 送信機
113 チャンネル
120 受信機
140 信号
130 オシロスコープ
133 入力ポート
131 判定帰還型イコライザ(DFE)
200 判定帰還型イコライザ(DFE)
251 連続時間線形イコライザ(CTLE)
252 合算ブロック
253 判定機能
254 時間遅延ブロック
255 フィードバック係数ブロック
331 ビット・シーケンス
340 理想波形
345 しきい値
531 ビット・シーケンス
601 エッジ
602 エッジ
603 エッジ
610 エッジのヒストグラム
620 クロック基準
631 ビット・シーケンス
640 ジッタのある理想波形
641 ジッタ
701 エッジ
702 エッジ
703 エッジ
710 エッジのヒストグラム
720 クロック基準s
731 ビット・シーケンス
740 波形
745 しきい値
801 エッジ
802 エッジ
803 エッジ
810 エッジ801及び802のヒストグラム
813 エッジ803のヒストグラム
820 クロック基準
830 DFEスライサ
831 ビット・シーケンス
840 波形
901 エッジ
902 エッジ
903 エッジ
904 波形の部分
910 エッジ901及び902のヒストグラム
913 エッジ903のヒストグラム
920 クロック基準
930 DFEスライサ
931 ビット・シーケンス
940 波形
1030 DFEスライサ
1040 波形
1041 ジッタ期間範囲
1042 ピーク・トゥ・ピーク
1043 ピーク・トゥ・ピーク
1120 クロック基準
1130 DFEスライサ・パターン
1131 ビット・シーケンス
1300 オシロスコープ
1311 信号入力ポート
1313 ユーザ操作部
1314 信号分析回路
1315 プロセッサ
1316 DFEモジュール
1317 メモリ
1319 表示部
図1
図2
図3
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図5
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図10
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図11b
図11c
図11d
図11e
図11f
図11g
図11h
図12
図13