(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】ジチアゾロナフトジチオフェン化合物、その製造方法及びトランジスタ素子
(51)【国際特許分類】
C07D 513/22 20060101AFI20220610BHJP
H01L 51/30 20060101ALI20220610BHJP
H01L 51/05 20060101ALI20220610BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
C07D513/22 CSP
H01L29/28 250H
H01L29/28 100A
H01L29/78 618B
(21)【出願番号】P 2018017949
(22)【出願日】2018-02-05
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】相原 秀典
(72)【発明者】
【氏名】中野 健央
(72)【発明者】
【氏名】福田 貴
(72)【発明者】
【氏名】上田 さおり
(72)【発明者】
【氏名】宮下 真人
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-066069(JP,A)
【文献】特開2017-139335(JP,A)
【文献】特開2010-254599(JP,A)
【文献】特表2012-510454(JP,A)
【文献】特開2010-161323(JP,A)
【文献】MORI, T. et al.,Consecutive Thiophene-Annulation Approach to π-Extended Thienoacene-Based Organic Semiconductors with [1]Benzothieno[3,2-b][1]benzothiophene (BTBT) Substructure,Journal of the American Chemical Society,2013年,135(37),pp. 13900-13913
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 513/22
H01L 29/28
H01L 29/78
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】
(式中、R
1及びR
2は、各々独立に、水素原子;炭素数1~20のアルキル基;炭素数1~20のハロアルキル基;又は炭素数1~12のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基を表す。R
3、R
4、R
5及びR
6は、各々独立に、水素原子;ハロゲン原子;炭素数1~20のアルキル基;又は炭素数1~20のアルキルオキシ基を表す。)で示されるジチアゾロナフトジチオフェン化合物。
【請求項2】
R
1及びR
2が、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基である請求項1に記載のジチアゾロナフトジチオフェン化合物。
【請求項3】
R
3、R
4、R
5及びR
6が、各々独立に、水素原子又はハロゲン原子である請求項1又は2に記載のジチアゾロナフトジチオフェン化合物。
【請求項4】
一般式(2a)
【化2】
(式中、R
1及びR
2は、各々独立に、水素原子;炭素数1~20のアルキル基;炭素数1~20のハロアルキル基;又は炭素数1~12のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基を表す。R
3、R
4、R
5及びR
6は、各々独立に、水素原子;ハロゲン原子;炭素数1~20のアルキル基;又は炭素数1~20のアルキルオキシ基を表す。X
1aは、ハロゲン原子を表す。2つのX
2は、同一又は相異なって、ハロゲン原子を表す。)で示されるジチアゾリルナフタレン化合物と、硫化剤とを反応させることを特徴とする、一般式(1)
【化3】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、前記と同じ意味を表す。)で示されるジチアゾロナフトジチオフェン化合物の製造方法。
【請求項5】
X
1aが臭素原子、X
2が塩素原子である請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
硫化剤がアルカリ金属硫化物塩である請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
アルカリ金属硫化物塩が硫化リチウム又は硫化ナトリウム若しくはそれらの水和物である請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1から3のいずれかに記載のジチアゾロナフトジチオフェン化合物を含む製膜用組成物。
【請求項9】
ジチアゾロナフトジチオフェン化合物を0.01~10重量%含むことを特徴とする請求項8に記載の製膜用組成物。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の製膜用組成物を用いて製膜することを特徴とする有機薄膜。
【請求項11】
請求項10に記載の有機薄膜を活性層に含むことを特徴とする有機トランジスタ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶媒可溶性を有する新規なジチアゾロナフトジチオフェン化合物及びその製造方法に関するものである。また、溶媒への溶解性に優れる該ジチアゾロナフトジチオフェン化合物を用いた製膜用組成物、有機薄膜及び有機トランジスタ素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機トランジスタ素子は、有機半導体から成る活性層、基板、絶縁層及び電極等から構成される整流素子である。有機トランジスタ素子においては、有機半導体を適当な溶媒に溶解させた溶液を塗布することで活性層を作製することができ、この点で、活性層の作製に高温・高真空条件を必要とする無機トランジスタ素子と比して、デバイス作製の大幅な製造コストの削減を図ることができ、経済的に優位である。
【0003】
このような塗布による有機トランジスタ素子の作製に使用される有機半導体としては、素子作製のプロセス上の観点から、種々の有機溶媒に対する溶解度を持つものであることが好ましい。
【0004】
有機トランジスタ素子に用いることのできる低分子系有機半導体としては、例えば、ジナフト[2,3-b:2’,3’-f]チエノ[3,2-b]チオフェン(非特許文献1)、該化合物と類するジナフト[2,1-b:2’,1’-f]チエノ[3,2-b]チオフェン(特許文献1)が提案されているが、これらは有機溶媒に対して溶解度が低い点に課題を有する。
【0005】
本発明のジチアゾロナフトジチオフェン化合物は新規物質であり、その溶媒溶解性等の諸物性はもちろんのこと、製造方法についても一切報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Journal of the American Chemical Society,2007年,129巻,2224頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、溶媒溶解性を有する新規な有機半導体と、該有機半導体を含む製膜用組成物、該製膜用組成物を用いて製膜した有機薄膜、及び該有機薄膜を活性層とする有機トランジスタ素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、新規な複素縮環化合物であるジチアゾロナフトジチオフェン化合物が、高い溶媒溶解性を示すことを見出した。また、該化合物を含む製膜用組成物を用いて簡便に有機薄膜が製膜でき、かつ該有機薄膜を活性層とする有機トランジスタ素子が良好な整流特性を示すことも合わせて見出し本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち本発明は、
[1]
一般式(1)
【0011】
【0012】
(式中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子;炭素数1~20のアルキル基;炭素数1~20のハロアルキル基;又は炭素数1~12のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基を表す。R3、R4、R5及びR6は、各々独立に、水素原子;ハロゲン原子;炭素数1~20のアルキル基;又は炭素数1~20のアルキルオキシ基を表す。)で示されるジチアゾロナフトジチオフェン化合物;
[2]
R1及びR2が、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基である前記[1]に記載のジチアゾロナフトジチオフェン化合物;
[3]
R3、R4、R5及びR6が、各々独立に、水素原子又はハロゲン原子である前記[1]又は[2]に記載のジチアゾロナフトジチオフェン化合物
に関する。
【0013】
また本発明は、
[4]
一般式(2a)
【0014】
【0015】
(式中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子;炭素数1~20のアルキル基;炭素数1~20のハロアルキル基;又は炭素数1~12のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基を表す。R3、R4、R5及びR6は、各々独立に、水素原子;ハロゲン原子;炭素数1~20のアルキル基;又は炭素数1~20のアルキルオキシ基を表す。X1aは、ハロゲン原子を表す。2つのX2は、同一又は相異なって、ハロゲン原子を表す。)で示されるジチアゾリルナフタレン化合物と、硫化剤とを反応させることを特徴とする、前記一般式(1)で示されるジチアゾロナフトジチオフェン化合物の製造方法;
[5]
X1aが臭素原子、X2が塩素原子である前記[4]に記載の製造方法;
[6]
硫化剤がアルカリ金属硫化物塩である前記[4]又は[5]に記載の製造方法;
[7]
アルカリ金属硫化物塩が硫化リチウム又は硫化ナトリウム若しくはそれらの水和物である前記[6]に記載の製造方法;
に関する。
【0016】
さらに本発明は、
[8]
前記[1]から[3]のいずれかに記載のジチアゾロナフトジチオフェン化合物を含む製膜用組成物;
[9]
ジチアゾロナフトジチオフェン化合物を0.01~10重量%含むことを特徴とする前記[8]に記載の製膜用組成物;
[10]
前記[8]又は[9]に記載の製膜用組成物を用いて製膜することを特徴とする有機薄膜;
[11]
前記[10]に記載の有機薄膜を活性層に含むことを特徴とする有機トランジスタ素子に関するものである。
【0017】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明のジチアゾロナフトジチオフェン化合物、及び本発明のジチアゾロナフトジチオフェン化合物の製造中間体として有用な、上記一般式(2a)で示されるジチアゾリルナフタレン化合物におけるR1、R2、R3、R4、R5、R6、X1a及びX2の定義について説明する。
【0019】
R1及びR2で表される炭素数1~20のアルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状アルキル基のいずれでもよく、具体的には、メチル基、シクロヘキシルメチル基、エチル基、2-シクロペンチルエチル基、プロピル基、2-メチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、3-シクロプロピルプロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、2-ブチル基、3-メチルブタン-2-イル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、2-メチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、2-ペンチル基、2-メチルペンタン-2-イル基、4,4-ジメチルペンタン-2-イル基、3-ペンチル基、3-エチルペンタン-3-イル基、シクロペンチル基、2,5-ジメチルシクロペンチル基、3-エチルシクロペンチル基、ヘキシル基、2-メチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、2-ヘキシル基、2-メチルヘキサン-2-イル基、5,5-ジメチルヘキサン-2-イル基、3-ヘキシル基、2,4-ジメチルヘキサン-3-イル基、シクロヘキシル基、4-エチルシクロヘキシル基、4-プロピルシクロヘキシル基、4,4-ジメチルシクロヘキシル基、ヘプチル基、2-ヘプチル基、3-ヘプチル基、4-ヘプチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、オクチル基、2-オクチル基、3-オクチル基、4-オクチル基、シクロオクチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ノニル基、5-ノニル基、デシル基、2-デシル基、5-デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等を例示することができる。これらのうち、本発明のジチアゾロナフトジチオフェン化合物の結晶性が良い点で、炭素数2~12のアルキル基が好ましい。
【0020】
R1及びR2で表される炭素数1~20のハロアルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状ハロアルキル基のいずれでもよく、具体的には、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、1,1-ジフルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、ペルフルオロシクロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロシクロプロピル基、ペルフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、1,2,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-(トリフルオロメチル)プロピル基、1-(トリフルオロメチル)プロピル基、1-メチル-3,3,3-トリフルオロプロピル基、ペルフルオロシクロブチル基、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロシクロブチル基、ペルフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペンチル基、3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロペンチル基、4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル基、5,5,5-トリフルオロペンチル基、1,2,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-(ペルフルオロエチル)プロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-(ペルフルオロエチル)プロピル基、ペルフルオロシクロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6-ウンデカフルオロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基、4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロヘキシル基、5,5,6,6,6-ペンプタフルオロヘキシル基、6,6,6-トリフルオロヘキシル基、ペルフルオロシクロヘキシル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、2-クロロエチル基、3-ブロモプロピル基等を例示することができる。
【0021】
R1及びR2で表される炭素数1~12のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基としては、炭素数1~12のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、炭素数1~12のアルキル基で置換されていてもよいナフチル基、炭素数1~12のアルキル基で置換されていてもよいビフェニリル基、炭素数1~12のアルキル基で置換されていてもよいアントリル基等を例示することができる。
【0022】
炭素数1~12のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基として、具体的にはフェニル基、p-トリル基、m-トリル基、o-トリル基、2,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、メシチル基、2-エチルフェニル基、3-エチルフェニル基、4-エチルフェニル基、2,4-ジエチルフェニル基、3,5-ジエチルフェニル基、2-プロピルフェニル基、3-プロピルフェニル基、4-プロピルフェニル基、2,4-ジプロピルフェニル基、3,5-ジプロピルフェニル基、2-イソプロピルフェニル基、3-イソプロピルフェニル基、4-イソプロピルフェニル基、2,4-ジイソプロピルフェニル基、3,5-ジイソプロピルフェニル基、4-(1-メチルプロピル)フェニル基、4-(2-メチルプロピル)フェニル基、4-(1-エチルプロピル)フェニル基、シクロプロピルフェニル基、2-ブチルフェニル基、3-ブチルフェニル基、4-ブチルフェニル基、2,4-ジブチルフェニル基、3,5-ジブチルフェニル基、2-tert-ブチルフェニル基、3-tert-ブチルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル基、4-(1-メチルブチル)フェニル基、4-(2-メチルブチル)フェニル基、4-(3-メチルブチル)フェニル基、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル基、4-(2-エチルブチル)フェニル基、4-(1-プロピルブチル)フェニル基、2-ペンチルフェニル基、3-ペンチルフェニル基、4-ペンチルフェニル基、3,4-ジペンチルフェニル基、4-(4-メチルペンチル)フェニル基、4-(3-エチルペンチル)フェニル基、4-シクロペンチルフェニル基、4-(3-エチルシクロペンチル)フェニル基、2-ヘキシルフェニル基、3-ヘキシルフェニル基、4-ヘキシルフェニル基、4-シクロヘキシルフェニル基、4-(4-エチルシクロヘキシル)フェニル基、4-(4-プロピルシクロヘキシル)フェニル基、4-(4-ブチルシクロヘキシル)フェニル基、2-ヘプチルフェニル基、3-ヘプチルフェニル基、4-ヘプチルフェニル基、2-オクチルフェニル基、3-オクチルフェニル基、4-オクチルフェニル基、3,5-ジオクチルフェニル基、4-シクロオクチルフェニル基、4-ノニルフェニル基、4-デシルフェニル基、4-ウンデシルフェニル基、4-ドデシルフェニル基等を例示することができる。
【0023】
炭素数1~12のアルキル基で置換されていてもよいナフチル基として、具体的には1-ナフチル基、4-メチルナフタレン-1-イル基、5-メチルナフタレン-1-イル基、4-エチルナフタレン-1-イル基、5-エチルナフタレン-1-イル基、4-プロピルナフタレン-1-イル基、5-プロピルナフタレン-1-イル基、4-ブチルナフタレン-1-イル基、4-tert-ブチルナフタレン-1-イル基、5-ブチルナフタレン-1-イル基、5-tert-ブチルナフタレン-1-イル基、4-ペンチルナフタレン-1-イル基、5-ヘキシルナフタレン-1-イル基、8-ヘプチルナフタレン-1-イル基、5-オクチルナフタレン-1-イル基、7-ノニルナフタレン-1-イル基、4-デシルナフタレン-1-イル基、5-ドデシルナフタレン-1-イル基、2-ナフチル基、4-メチルナフタレン-2-イル基、5-メチルナフタレン-2-イル基、4-エチルナフタレン-2-イル基、5-エチルナフタレン-2-イル基、4-プロピルナフタレン-2-イル基、5-プロピルナフタレン-2-イル基、4-ブチルナフタレン-2-イル基、4-tert-ブチルナフタレン-2-イル基、5-ブチルナフタレン-2-イル基、5-tert-ブチルナフタレン-2-イル基、4-ペンチルナフタレン-2-イル基、5-ヘキシルナフタレン-2-イル基、8-ヘプチルナフタレン-2-イル基、5-オクチルナフタレン-2-イル基、7-ノニルナフタレン-2-イル基、4-デシルナフタレン-2-イル基、5-ドデシルナフタレン-2-イル基等を例示することができる。
【0024】
炭素数1~12のアルキル基で置換されていてもよいビフェニリル基として、具体的には、2-ビフェニリル基、3-ビフェニリル基、4-ビフェニリル基、2-メチルビフェニル-4-イル基、3-メチルビフェニル-4-イル基、2’-メチルビフェニル-4-イル基、4’-メチルビフェニル-4-イル基、2,2’-ジメチルビフェニル-4-イル基、2’,4’,6’-トリメチルビフェニル-4-イル基、6-メチルビフェニル-3-イル基、5-メチルビフェニル-3-イル基、2’-メチルビフェニル-3-イル基、4’-メチルビフェニル-3-イル基、6,2’-ジメチルビフェニル-3-イル基、2’,4’,6’-トリメチルビフェニル-3-イル基、5-メチルビフェニル-2-イル基、6-メチルビフェニル-2-イル基、2’-メチルビフェニル-2-イル基、4’-メチルビフェニル-2-イル基、6,2’-ジメチルビフェニル-2-イル基、2’,4’,6’-トリメチルビフェニル-2-イル基、3-エチルビフェニル-4-イル基、4’-エチルビフェニル-4-イル基、2’,4’,6’-トリエチルビフェニル-4-イル基、6-エチルビフェニル-3-イル基、4’-エチルビフェニル-3-イル基、5-エチルビフェニル-2-イル基、4’-エチルビフェニル-2-イル基、2’,4’,6’-トリエチルビフェニル-2-イル基、3-プロピルビフェニル-4-イル基、4’-プロピルビフェニル-4-イル基、2’,4’,6’-トリプロピルビフェニル-4-イル基、6-プロピルビフェニル-3-イル基、4’-プロピルビフェニル-3-イル基、5-プロピルビフェニル-2-イル基、4’-プロピルビフェニル-2-イル基、2’,4’,6’-トリプロピルビフェニル-2-イル基、3-イソプロピルビフェニル-4-イル基、4’-イソプロピルビフェニル-4-イル基、2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル-4-イル基、6-イソプロピルビフェニル-3-イル基、4’-イソプロピルビフェニル-3-イル基、5-イソプロピルビフェニル-2-イル基、4’-イソプロピルビフェニル-2-イル基、2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル-2-イル基、3-ブチルビフェニル-4-イル基、4’-ブチルビフェニル-4-イル基、2’,4’,6’-トリブチルビフェニル-4-イル基、6-ブチルビフェニル-3-イル基、4’-ブチルビフェニル-3-イル基、5-ブチルビフェニル-2-イル基、4’-ブチルビフェニル-2-イル基、2’,4’,6’-トリブチルビフェニル-2-イル基、3-tert-ブチルビフェニル-4-イル基、4’-tert-ブチルビフェニル-4-イル基、2’,4’,6’-トリ-tert-ブチルビフェニル-4-イル基、6-tert-ブチルビフェニル-3-イル基、4’-tert-ブチルビフェニル-3-イル基、5-tert-ブチルビフェニル-2-イル基、4’-tert-ブチルビフェニル-2-イル基、4’-ペンチルビフェニル-4-イル基、4’-シクロペンチルビフェニル-4-イル基、4’-ヘキシルビフェニル-4-イル基、4’-シクロヘキシルビフェニル-4-イル基、4’-オクチルビフェニル-4-イル基、4’-デシルビフェニル-4-イル基、4’-ドデシルビフェニル-4-イル基等を例示することができる。
【0025】
炭素数1~12のアルキル基で置換されていてもよいアントリル基として、具体的には1-アントリル基、4-ブチルアントリル-1-イル基、5-ヘキシルアントリル-1-イル基、6-オクチルアントリル-1-イル基、2-アントリル基、7-ヘキシルアントリル-2-イル基、8-デシルアントリル-2-イル基、1,3-ジメチルアントリル-2-イル基、5-アントリル基、10-ブチルアントリル-5-イル基、10-ドデシルアントリル-5-イル基等を例示することができる。
【0026】
R3、R4、R5及びR6で表される炭素数1~20のアルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状アルキル基のいずれでもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、1-メチルエチル基、シクロプロピル基、ブチル基、2-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等を例示することができ、炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
【0027】
R3、R4、R5及びR6で表される炭素数1~20のアルキルオキシ基は、直鎖状、分岐状又は環状アルキルオキシ基のいずれでもよく、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、1-メチルエチルオキシ基、1,1-ジメチルエチルオキシ基、プロピルオキシ基、1-メチルプロピルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、シクロブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基等を例示することができ、炭素数1~4のアルキルオキシ基が好ましい。
【0028】
R3、R4、R5及びR6で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を例示することができる。これらのうち、合成が容易である点で、臭素原子が好ましい。
【0029】
X1aで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を例示することができる。これらのうち、反応性が良い点で、臭素原子が好ましい。
【0030】
X2で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を例示することができる。これらのうち、合成が容易である点で、塩素原子が好ましい。
【0031】
本発明のジチアゾロナフトジチオフェン化合物(1)としては、特に限定するものではないが、例えば、以下の1-1~1-50に示す構造の化合物を具体的に例示することができる。
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
1-1~1-50で示される化合物のうち、有機半導体としての性能が良い点で、本発明のジチアゾロナフトジチオフェン化合物としては1-1、1-2、1-3で示される化合物が好ましい。
【0050】
次に、本発明のジチアゾロナフトジチオフェン化合物(1)の製造方法について説明する。
【0051】
本発明のジチアゾロナフトジチオフェン化合物(1)は、次の反応式に示される工程1~4により製造することができる。
【0052】
【0053】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、X1a及びX2は、前記と同じ意味を表す。R7及びR8は水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又はフェニル基を表し、B(OR7)2又はB(OR8)2の2つのR7、R8は同一又は異なってもよい。又、2つのR7、R8はそれぞれ一体となって酸素原子及びホウ素原子を含んで環を形成することもできる。X3は、ハロゲン原子又は炭素数1~10のスルホニルオキシ基を表す。)
工程1は、ホウ素化チアゾール(3a)とナフタレン化合物(4)とを、パラジウム触媒及び塩基の存在下に反応させ、工程2に用いる5-ナフチルチアゾール(5)を製造する工程であり、一般的な鈴木-宮浦反応の反応条件を適用することにより、収率よく目的物を得ることができる。
【0054】
工程1に用いるホウ素化チアゾール(3a)は、例えば、後述する参考例-1~6に示した方法を用いて製造することができる。
【0055】
ホウ素化チアゾール(3a)におけるB(OR7)2としては、B(OH)2、B(OMe)2、B(OiPr)2、B(OBu)2、B(OPh)2等を例示することができる。なお、Meはメチル基、iPrはイソプロピル基、Buはブチル基、Phはフェニル基を示す。又、2つのR7が一体となって酸素原子及びホウ素原子を含んで環を形成した場合のB(OR7)2の例としては、次の(I)から(VI)で示される基が例示でき、収率がよい点で(II)で示される基が好ましい。
【0056】
【0057】
工程1に用いるナフタレン化合物(4)は、例えば、WO2014/123215号に開示されている方法を用いて製造することができる。また、市販品を用いてもよい。ナフタレン化合物(4)とホウ素化チアゾール(3a)とのモル比に特に制限はないが、1:10~1:1が好ましく、収率がよい点で1:5~1:2がさらに好ましい。
【0058】
ナフタレン化合物(4)におけるX3で表されるハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を例示することができる。
【0059】
ナフタレン化合物(4)におけるX3で表される炭素数1~10のスルホニルオキシ基としては、ベンゼンスルホニルオキシ基、p-フルオロベンゼンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基等のアリールスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、ノナフルオロブタンスルホニルオキシ基等のアルキルスルホニルオキシ基を例示することができる。反応性が良い点で、アルキルスルホニルオキシ基が好ましく、安価である点で、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基がさらに好ましい。
【0060】
工程1に用いるパラジウム触媒としては、特に限定するものではないが、具体的には、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、硝酸パラジウム等のパラジウム塩を例示することができる。さらに、π-アリルパラジウムクロリドダイマ-、パラジウムアセチルアセトナト、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム等のパラジウム錯化合物、及びジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロ(1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム等の第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体を例示することができる。中でも、5-ナフチルチアゾール(5)の反応収率が良い点で、第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体又はパラジウム塩が好ましく、ジクロロ(1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウムがさらに好ましい。工程1で用いるパラジウム触媒の量に制限はないが、反応収率がよい点で、パラジウム触媒とナフタレン化合物(4)とのモル比は、1:200~1:5の範囲が好ましい。
【0061】
なお、上記第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体は、パラジウム塩又は錯化合物に第三級ホスフィンを添加し、反応系中で調製することもできる。第三級ホスフィンとしては、特に限定するものではないが、具体的には、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(tert-ブチル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、tert-ブチルジフェニルホスフィン、9,9-ジメチル-4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)キサンテン、2-(ジフェニルホスフィノ)-2’-(N,N-ジメチルアミノ)ビフェニル、2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)ビフェニル、2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、トリ(2-フリル)ホスフィン、トリ(o-トリル)ホスフィン、トリス(2,5-キシリル)ホスフィン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル等を例示することができる。これらのうち、入手容易であり、収率がよい点で、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンが好ましい。第三級ホスフィンとパラジウム塩又は錯化合物とのモル比は、第三級ホスフィン:パラジウム塩又は錯化合物が、1:10~20:1の範囲が好ましい。
【0062】
工程1に用いる塩基としては、特に限定するものではないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム等の金属炭酸塩、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム等の金属酢酸塩、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等の金属リン酸塩、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム等の金属フッ化物塩、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムイソプロピルオキシド、カリウムtert-ブトキシド等の金属アルコキシド等を挙げることができる。これらのうち、収率がよい点で金属リン酸塩が好ましく、リン酸カリウムがさらに好ましい。用いる塩基とホウ素化チアゾール(3a)とのモル比は、塩基:ホウ素化チアゾール(3a)が、10:1~1:3の範囲にあることが好ましく、収率がよい点で5:1~1:1の範囲にあることがさらに好ましい。
【0063】
工程1は溶媒中で実施することができる。用いることのできる溶媒に特に制限はなく、反応を阻害しない溶媒であればよい。このような溶媒としては、具体的には、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン等の芳香族炭化水素、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4-フルオロエチレンカーボネート等の炭酸エステル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、γ-ラクトン等のエステル、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)等のアミド、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア(TMU)、N,N’-ジメチルプロピレンウレア(DMPU)等のウレア又はジメチルスルホキシド(DMSO)、水を例示することができ、これらを任意の比で混合して用いてもよい。溶媒の使用量に特に制限はない。これらのうち、反応収率がよい点で芳香族炭化水素、水、又はこれらの混合溶媒が好ましく、トルエン、水、又はこれらの混合溶媒がさらに好ましい。
【0064】
工程1を実施する際の反応温度には特に制限はないが、30~200℃から適宜選択された温度にて実施することが好ましく、収率が良い点で60~150℃から適宜選択された温度にて実施することがさらに好ましい。
【0065】
5-ナフチルチアゾール(5)は、工程1の反応の終了後に通常の処理を行うことで得ることができる。必要に応じて、再結晶、カラムクロマトグラフィー、昇華又は分取HPLC等で精製してもよいが、精製を行わずに工程2に供してもよい。
【0066】
工程2は、ホウ素化チアゾール(3b)と5-ナフチルチアゾール(5)とを、パラジウム触媒及び塩基の存在下に反応させ、工程3に用いるジチアゾリルナフタレン化合物(2b)を製造する工程であり、工程1と同様の反応条件を適用することにより、収率よく目的物を得ることができる。
【0067】
工程2に用いるホウ素化チアゾール(3b)は、ホウ素化チアゾール(3a)と同様に入手することができる。
【0068】
工程2に用いるパラジウム触媒としては、工程1にて例示したパラジウム触媒と同様のものを例示することができる。中でも、ジチアゾリルナフタレン化合物(2b)の反応収率が良い点で、第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体又はパラジウム塩が好ましく、ジクロロ(1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウムがさらに好ましい。工程1で用いるパラジウム触媒の量に制限はないが、反応収率がよい点で、パラジウム触媒と5-ナフチルチアゾール(5)とのモル比は、1:200~1:5の範囲が好ましい。
【0069】
工程2に用いる塩基としては、工程1にて例示した塩基と同様のものを挙げることができる。これらのうち、収率がよい点で金属リン酸塩が好ましく、リン酸カリウムがさら好ましい。用いる塩基とホウ素化チアゾール(3b)とのモル比は、塩基:ホウ素化チアゾール(3b)が、10:1~1:3の範囲にあることが好ましく、収率がよい点で5:1~1:1の範囲にあることがさらに好ましい。
【0070】
工程2は溶媒中で実施することができる。用いることのできる溶媒としては、工程1にて例示した溶媒と同様のものを挙げることができる。中でも、反応収率がよい点で芳香族炭化水素、水、又はこれらの混合溶媒が好ましく、トルエン、水、又はこれらの混合溶媒がさらに好ましい。
【0071】
工程2を実施する際の反応温度には特に制限はないが、30~200℃から適宜選択された温度にて実施することが好ましく、収率が良い点で60~150℃から適宜選択された温度にて実施することがさらに好ましい。
【0072】
ジチアゾリルナフタレン化合物(2b)は、工程2の反応の終了後に通常の処理を行うことで得ることができる。必要に応じて、再結晶、カラムクロマトグラフィー、昇華又は分取HPLC等で精製してもよいが、精製を行わずに工程3に供してもよい。
【0073】
工程3は、ジチアゾリルナフタレン化合物(2b)とハロゲン化剤とを反応させ、工程4に用いるジチアゾリルナフタレン化合物(2a)を製造する工程である。
【0074】
工程3に用いるハロゲン化剤としては、ジチアゾリルナフタレン(2a)化合物におけるX1aが塩素原子である場合は、塩素、N-クロロスクシンイミド、N-クロロフタルイミド、ベンジルトリメチルアンモニウム=テトラクロロヨージド、tert-ブチルハイポクロリド、クロラミンB、クロラミンT、塩化シアヌル、ジクロラミン、塩化オキザリル、トリクロロイソシアヌル酸、塩化チオニル、オキシ塩化リン、五塩化リン等を、X1aが臭素原子である場合は、臭素、N-ブロモスクシンイミド、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン、1,3-ジブロモイソシアヌル酸、ベンジルトリメチルアンモニウム=トリブロミド、三臭化ホウ素、N-ブロモアセトアミド、2-ブロモ-2-シアノ-N,N-ジメチルアセトアミド、ブロモジメチルスルホニウム=ブロミド、N-ブロモフタルイミド、N-ブロモサッカリン、臭化三塩化炭素、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム=ブロミド、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン=三臭化水素錯体、5,5-ジブロモメルドラム酸、1,2-ジブロモ-1,1,2,2-テトラクロロエタン、4-ジメチルアミノピリジン=三臭化水素錯体、ピリジン=三臭化水素錯体、三臭化リン、オキシ三臭化リン、2,4,4,6-テトラブロモ-2,5-シクロヘキサジエノン、テトラブチルアンモニウム=トリブロミド、トリメチルフェニルアンモニウム=トリブロミド、トリフェニルホスフィン=ジブロミド等を、X1aがヨウ素原子である場合は、ヨウ素、ヨウ化水素、ベンジルトリメチルアンモニウム=ジクロロヨージド、ビス(ピリジン)ヨードニウム=四フッ化ホウ素錯体、ビス(2,4,6-トリメチルピリジン)ヨードニウム=六フッ化リン錯体、トリメチルヨードシラン、塩化ヨウ素、1,3-ジヨード-5,5-ジメチルヒダントイン、N-ヨードスクシンイミド、N-ヨードサッカリン等を、さらにX1aがフッ素原子である場合は、2,6-ジクロロ-1-フルオロピリジニウム=トリフルオロメタンスルホネート、2,6-ジクロロ-1-フルオロピリジニウム=四フッ化ホウ素錯体、1,1’-ジフルオロ-2,2’-ビピリジニウム=ビス(四フッ化ホウ素)錯体、N-フルオロベンゼンスルホンイミド、N-フルオロ-N’-クロロメチルトリエチレンジアミン=ビス(四フッ化ホウ素)錯体、2-フルオロ-1-メチルピリジニウム=p-トルエンスルホネート、1-フルオロピリジニウム=四フッ化ホウ素錯体、1-フルオロ-2,4,6-トリメチルピリジニウム=四フッ化ホウ素錯体等を例示することができる。ジチアゾリルナフタレン化合物(2a)の反応収率が良い点で、臭素又はN-ブロモスクシンイミドが好ましい。用いるハロゲン化剤とジチアゾリルナフタレン化合物(2b)とのモル比に特に制限は無いが、ハロゲン化剤:ジチアゾリルナフタレン化合物(2b)が1:2~30:1の範囲にあることが好ましく、反応収率が良い点で2:1~20:1の範囲がさらに好ましい。
【0075】
工程3は溶媒中で実施することができる。用いることのできる溶媒に特に制限はなく、反応を阻害しない溶媒であればよい。このような溶媒としては、具体的には、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、CPME、THF、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール、オクタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2,2,2-トリフルオロエタノール等のアルコール、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1-クロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素、アセトニトリル、プロピオニトリル、バレロニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル等のニトリル、DMF、DMAc、NMP等のアミド、TMU、DMPU等のウレア又はDMSOを例示することができ、これらを任意の比で混合して用いてもよい。溶媒の使用量に特に制限はない。これらのうち、反応収率がよい点でアミド又はニトリルが好ましく、DMF又はアセトニトリルがさらに好ましい。
【0076】
工程3を実施する際の反応温度には特に制限はないが、0~150℃から適宜選択された温度にて実施することができ、収率が良い点で10~60℃から適宜選択された温度にて実施することが好ましい。
【0077】
ジチアゾリルナフタレン化合物(2a)は、工程2の反応の終了後に通常の処理を行うことで得ることができる。必要に応じて、再結晶、カラムクロマトグラフィー、昇華又は分取HPLC等で精製してもよいが、精製を行わずに工程4に供してもよい。
【0078】
工程4は、ジチアゾリルナフタレン化合物(2a)と硫化剤とを反応させ、本発明のジチアゾロナフトジチオフェン化合物(1)を得る、本発明の製造方法である。
【0079】
工程4に用いる硫化剤としては、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化水素ナトリウム、硫化水素カリウム等のアルカリ金属硫化物塩又はその水和物、ビス(トリメチルシリル)スルフィド、ビス(トリメチルスタニル)スルフィド、ビス(トリブチルスタニル)スルフィド等の第14族硫化物を例示することができる。本発明のジチアゾロナフトジチオフェン化合物(1)の反応収率が良い点で、アルカリ金属硫化物塩及びその水和物が好ましく、硫化リチウム、硫化ナトリウム又はその水和物がさらに好ましい。用いる硫化剤とジチアゾリルナフタレン化合物(2a)とのモル比に特に制限は無いが、硫化剤:ジチアゾリルナフタレン化合物(2a)が1:2~10:1の範囲にあることが好ましく、反応収率が良い点で1:1~5:1の範囲にあることがさらに好ましい。
【0080】
工程4は溶媒中で実施することができる。用いることのできる溶媒に特に制限はなく、反応を阻害しない溶媒であればよい。このような溶媒としては、具体的には、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、CPME、THF、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ニトロベンゼン、アニソール、テトラリン等の芳香族炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1-クロロナフタレン、ベンゾトリフルオリド等のハロゲン化芳香族炭化水素、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4-フルオロエチレンカーボネート等の炭酸エステル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、γ-ラクトン等のエステル、アセトニトリル、プロピオニトリル、バレロニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル等のニトリル、DMF、DMAc、NMP等のアミド、TMU、DMPU等のウレア、DMSO、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)等を例示することができ、これらを任意の比で混合して用いてもよい。溶媒の使用量に特に制限はない。これらのうち、本発明のジチアゾロナフトジチオフェン化合物(1)の反応収率がよい点でアミド、ウレア、DMSO、HMPA及びこれらの混合溶媒を用いることが好ましく、NMP又はHMPAがさらに好ましい。
【0081】
工程4を実施する際の反応温度には特に制限はないが、40~280℃から適宜選択された温度にて実施することができ、本発明のジチアゾロナフトジチオフェン化合物(1)の反応収率が良い点で120~220℃から適宜選択された温度にて実施することが好ましい。
【0082】
本発明のジチアゾロナフトジチオフェン化合物(1)は、工程4の反応の終了後に通常の処理を行うことで得ることができる。必要に応じて、再結晶、カラムクロマトグラフィー、昇華又は分取HPLC等で精製してもよい。
【0083】
また、工程3に用いることのできるジチアゾリルナフタレン化合物(2c)は、次の反応式に示される工程5により製造することができる。
【0084】
【0085】
(式中、R1、R3、R4、R5、R6、R7、X2及びX3は、前記と同じ意味を表す。)
工程5は、ホウ素化チアゾール(3a)とナフタレン化合物(4)とを、パラジウム触媒及び塩基の存在下に反応させ、工程4に用いるジチアゾリルナフタレン化合物(2c)を製造する工程であり、工程1又は2と同様の反応条件を適用することにより、収率よく目的物を得ることができる。
【0086】
工程5に用いるホウ素化チアゾール(3a)とナフタレン化合物(4)とのモル比に特に制限はないが、10:1~1:1が好ましく、収率がよい点で5:1~2:1がさらに好ましい。
【0087】
工程5に用いるパラジウム触媒としては、工程1又は2にて例示したパラジウム触媒と同様のものを例示することができる。中でも、ジチアゾリルナフタレン化合物(2c)の反応収率が良い点で、第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体又はパラジウム塩が好ましく、ジクロロ[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウムがさらに好ましい。工程5で用いるパラジウム触媒の量に制限はないが、反応収率がよい点で、パラジウム触媒とナフタレン化合物(4)とのモル比は、1:200~1:5の範囲が好ましい。
【0088】
工程5は溶媒中で実施することができる。用いることのできる溶媒としては、工程1にて例示した溶媒と同様のものを挙げることができる。中でも、反応収率がよい点で芳香族炭化水素、水、又はこれらの混合溶媒が好ましく、トルエン、水、又はこれらの混合溶媒がさらに好ましい。
【0089】
工程5を実施する際の反応温度には特に制限はないが、30~200℃から適宜選択された温度にて実施することが好ましく、収率が良い点で60~150℃から適宜選択された温度にて実施することがさらに好ましい。
【0090】
ジチアゾリルナフタレン(2c)は、工程5の反応の終了後に通常の処理を行うことで得ることができる。必要に応じて、再結晶、カラムクロマトグラフィー、昇華又は分取HPLC等で精製してもよいが、精製を行わずに工程3に供してもよい。
【0091】
次に、本発明のジチアゾロナフトジチオフェン化合物(1)を含む製膜用組成物(以下、「本発明の製膜用組成物」と称する)の製造方法について説明する。
【0092】
本発明の製膜用組成物は、本発明のジチアゾロナフトジチオフェン化合物(1)を溶媒に溶解又は分散することにより、調製することができる。
【0093】
該溶媒としては、本発明のジチアゾロナフトジチオフェン化合物(1)を溶解又は分散するものであれば特に制限はないが、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、オクチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、インダン、テトラリン、アニソール、1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、1,2-ジメチルアニソール、2,3-ジメチルアニソール、3,4-ジメチルアニソール、ニトロベンゼン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、デカリン等の脂肪族炭化水素、ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1-クロロナフタレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、CPME、THF、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノールアセテート、3-メトキシブチルアセテート等のエステル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4-フルオロエチレンカーボネート等の炭酸エステル、アセトニトリル、プロピオニトリル、バレロニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル等のニトリル、DMF、DMAc、NMP等のアミド、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,4-ブタンジオールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコール等を例示することができる。これらのうち、沸点が高く穏やかに揮発する点で、芳香族炭化水素が好ましく、トルエン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン又は3,4-ジメチルアニソールがさらに好ましい。溶媒の使用量に特に制限は無く、本発明のジチアゾロナフトジチオフェン化合物(1)の濃度が、好ましくは0.001~95重量%、さらに好ましくは0.01~10重量%から適宜選ばれた濃度となるように溶媒を加えることができる。
【0094】
なお、本発明で用いる溶媒は、1種類の溶媒を単独で使用、または沸点、極性、溶解度パラメーターなど性質の異なる溶媒を2種類以上混合して使用することが可能である。
【0095】
ジチアゾロナフトジチオフェン化合物(1)を溶媒に混合溶解する際の温度としては、溶解を促進させる目的のため、0~80℃の温度範囲で行うことが好ましく、10~60℃の温度範囲で行うことが更に好ましい。
【0096】
また、ジチアゾロナフトジチオフェン化合物(1)を有機溶媒に溶解混合する時間は、均一溶液を得るため、1分~1時間で溶解することが好ましい。
【0097】
溶解又は分散の方法は、例えば、撹拌、振盪、ボールミル等、当業者の良く知る方法を用いることができる。
【0098】
本発明の製膜用組成物には製膜性を向上させるためのバインダーを加えてもよい。このようなバインダーとしては、例えば、ポリスチレン、ポリ-α-メチルスチレン、ポリビニルナフタレン、ポリ(エチレン-co-ノルボルネン)、ポリメチルメタクリレート、ポリトリアリールアミン、ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン-co-ジメチルトリフェニルアミン)等のポリマーを例示することができる。該バインダーの濃度に特に制限はないが、塗布性が良い点で0.1~10.0重量%であることが好ましい。
【0099】
本発明の製膜用組成物の粘度は、塗布性が良い点で、0.5~50mPa・sの範囲の粘度にあることが好ましい。
【0100】
次に、本発明の製膜用組成物を用いて製膜する有機薄膜(以下、「本発明の有機薄膜」と称する。)の製膜方法について説明する。
【0101】
本発明の製膜用組成物を用いて、本発明の有機薄膜を形成する際の方法に特に制限はなく、例えば、スピンコート、ドロップキャスト、ディップコート、キャストコート等の簡易塗工法;ディスペンサー、インクジェット、スリットコート、ブレードコート、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等の印刷法を挙げることができ、中でも容易に効率よく製膜できる点で、ドロップキャスト又はインクジェットが好ましい。本発明の有機薄膜の膜厚に特に制限は無いが、キャリア移動度が高い点で1nm~1μmが好ましく、10nm~300nmがさらに好ましい。
【0102】
本発明の有機薄膜は製膜後、溶媒を乾燥させることで得ることができる。必要に応じて、40℃~200℃の範囲から適宜選択された温度にてアニールを行ってもよい。
【0103】
さらに、本発明の有機薄膜を活性層に含む有機トランジスタ素子(以下、「本発明の有機トランジスタ素子」と称する)の作製方法について説明する。
【0104】
本発明の有機トランジスタ素子は、基板上に絶縁層、及び活性層として本発明の有機薄膜を製膜し、これにソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を付設することにより得られる。
【0105】
図1に、本発明の有機トランジスタ素子に含まれる素子の構造を示す。ここで、(A)は、ボトムゲート-トップコンタクト型、(B)は、ボトムゲート-ボトムコンタクト型、(C)は、トップゲート-トップコンタクト型、(D)は、トップゲート-ボトムコンタクト型のトランジスタ素子であり、1は活性層、2は基板、3はゲート電極、4はゲート絶縁層、5はソース電極、6はドレイン電極を示す。
【0106】
基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、環状ポリオレフィン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ポリ(ジイソプロピルフマレート)、ポリ(ジエチルフマレート)、ポリ(ジイソプロピルマレエート)、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、セルローストリアセテート等のプラスチック基板、ガラス、石英、酸化アルミニウム、シリコン、ハイドープシリコン、酸化シリコン、二酸化タンタル、五酸化タンタル、インジウムスズ酸化物等の無機基板、金、銅、クロム、チタン、アルミニウム等の金属基板等を挙げることができる。これらのうち、安価なためポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート、ガラスが好ましい。
【0107】
ゲート電極としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、ハイドープシリコン、スズ酸化物、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物、クロム、チタン、タンタル、クロム、グラフェン、カーボンナノチューブ等の無機電極、又はドープされた導電性高分子(例えば、PEDOT-PSS)等の有機電極等を挙げることができる。これらのうち、導電性が良い点で無機電極が好ましく、金、銀がさらに好ましい。
【0108】
絶縁層としては、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、二酸化タンタル、五酸化タンタル、インジウムスズ酸化物、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウム、チタン酸ビスマス等の無機絶縁層、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ポリ(ジイソプロピルフマレート)、ポリ(ジエチルフマレート)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリシクロペンタン、ポリシクロヘキサン、ポリシクロヘキサン-エチレン共重合体、ポリフッ素化シクロペンタン、ポリフッ素化シクロヘキサン、ポリフッ素化シクロヘキサン-エチレン共重合体、BCB樹脂(商品名:サイクロテン、ダウ・ケミカル社製)、Cytop(商標)、Teflon(商標)、パリレンC等のパリレン(商標)類等の有機絶縁層等を挙げることができる。これらのうち、製法が簡便であることから、ポリマー絶縁材料(ポリマーゲート絶縁層)であることが好ましい。また、これらの絶縁層の表面は、例えば、オクタデシルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、デシルトリメトキシシラン、オクチルトリクロロシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、β-フェネチルトリクロロシラン、β-フェネチルトリメトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン等のシラン、オクタデシルホスホン酸、デシルホスホン酸、オクチルホスホン酸等のホスホン酸、ヘキサメチルジシラザン等のアミンで修飾処理してもよい。これらのうち、本発明の有機トランジスタ素子のキャリア移動度及び電流オン・オフ比が向上し、並びに閾値電圧が低下する点で、オクタデシルトリクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、β-フェネチルトリクロロシラン、オクタデシルホスホン酸、オクチルホスホン酸、ヘキサメチルジシラザンが好ましい。
【0109】
ソース電極及びドレイン電極としては、ゲート電極で例示したものと同様の電極を例示することができる。これらのうち、導電性が良い点で無機電極が好ましく、金がさらに好ましい。また、キャリアの注入効率を上げるために、これらの電極に表面処理剤を用いて表面処理を実施することもできる。このような表面処理剤としては、例えば、ベンゼンチオール、ペンタフルオロベンゼンチオール等を挙げることができる。
【0110】
本発明のジチアゾロナフトジチオフェン化合物は、有機ELディスプレイ材料、有機半導体レーザー材料、有機薄膜太陽電池材料、フォトニック結晶材料等の電子材料等に利用することができる。また、本発明の有機トランジスタ素子は、電子ペーパー、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、ICタグ(RFIDタグ)用、圧力センサー等に利用可能である。
【発明の効果】
【0111】
本発明のジチアゾロナフトジチオフェン化合物は高い溶媒溶解性を持つ有機半導体であり、これを活性層とする有機トランジスタ素子を効率よく駆動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【
図1】;有機トランジスタ素子の断面形状による構造を示す図である。
【符号の説明】
【0113】
(A):ボトムゲート-トップコンタクト型有機薄膜トランジスタ
(B):ボトムゲート-ボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタ
(C):トップゲート-トップコンタクト型有機薄膜トランジスタ
(D):トップゲート-ボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタ
1:有機半導体層
2:基板
3:ゲート電極
4:ゲート絶縁層
5:ソース電極
6:ドレイン電極
【実施例】
【0114】
以下、実施例、参考例、及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0115】
本発明のジチアゾロナフトジチオフェン化合物等の同定には、以下の分析方法を用いた。1H-NMRの測定には、Bruker ASCENDTM AVANCE III HD(400MHz)を用いた。1H-NMRは、重クロロホルム(CDCl3)を測定溶媒とし、内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を用いて測定した。また、試薬類は市販品を用いた。
参考例-1
【0116】
【0117】
アルゴン雰囲気下、2-(2-メチルプロピル)チアゾール(1.41g,10mmol)とN-ブロモスクシンイミド(1.95g,11mmol)の混合物を、N,N-ジメチルホルムアミド(5.0mL)に溶解し、室温で撹拌した。18時間後、反応混合物に水及び酢酸エチルを加えた。有機層を分離し、ここに乾燥剤を加えた。乾燥剤をろ別し、ろ液を減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=10/1)で精製し、目的の5-ブロモ-2-(2-メチルプロピル)チアゾールを褐色液体として得た(2.18g,9.9mmol,99%)。
1H-NMR(CDCl3)δ0.99(d,J=6.6Hz,6H),2.02-2.12(m,1H),2.83(d,J=7.2Hz,2H),7.55(s,1H).
参考例-2
【0118】
【0119】
アルゴン雰囲気下、2-ヘキシルチアゾール(1.35g,8.0mmol)とN-ブロモスクシンイミド(1.56g,8.8mmol)の混合物を、N,N-ジメチルホルムアミド(5.0mL)に溶解し、室温で撹拌した。18時間後、反応混合物に水及び酢酸エチルを加えた。有機層を分離し、ここに乾燥剤を加えた。乾燥剤をろ別し、ろ液を減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=10/1)で精製し、目的の5-ブロモ-2-ヘキシルチアゾールを褐色液体として得た(1.68g,6.8mmol,85%)。
1H-NMR(CDCl3)δ0.88(t,J=7.2Hz,3H),1.27-1.34(m,4H),1.35-1.42(m,2H),1.72-1.79(m,2H),2.95(t,J=7.8Hz,2H),7.53(s,1H).
参考例-3
【0120】
【0121】
アルゴン雰囲気下、2-ウンデシルチアゾール(4.88g,20mmol)とN-ブロモスクシンイミド(3.99g,22mmol)の混合物を、N,N-ジメチルホルムアミド(15mL)に溶解し、室温で撹拌した。18時間後、反応混合物に水及び酢酸エチルを加えた。有機層を分離し、ここに乾燥剤を加えた。乾燥剤をろ別し、ろ液を減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=10/1)で精製し、目的の5-ブロモ-2-ウンデシルチアゾールを褐色液体として得た(6.23g,19mmol,96%)。
1H-NMR(CDCl3)δ0.88(t,J=6.6Hz,3H),1.25-1.31(m,14H),1.34-1.40(m,2H),1.72-1.79(m,2H),2.94(t,J=7.8Hz,2H),7.53(s,1H).
参考例-4
【0122】
【0123】
アルゴン雰囲気下、5-ブロモ-2-(2-メチルプロピル)チアゾール(2.18g,9.9mmol)にTHF(20mL)を加え、この溶液を-78℃に冷却した。そこにブチルリチウム(1.6M-ヘキサン溶液,7.2mL,11.5mmol)を30分かけて滴下した。反応混合物を-78℃で30分撹拌した後、2-イソプロピルオキシ4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(3.0mL,14mmol)を加えた。この反応混合物を、反応温度を徐々に室温まで昇温させながら20時間撹拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液及び酢酸エチルを加えた。有機層を分離し、ここに乾燥剤を加えた。乾燥剤をろ別した後、ろ液を減圧濃縮し、2-(2-メチルプロピル)-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)チアゾールの粗生成物(1.95g)を得た。このものは精製せずにそのまま次の反応に用いた。
【0124】
アルゴン雰囲気下、2-(2-メチルプロピル)-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)チアゾールの粗生成物(800mg)、2,6-ジクロロ-3,7-ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ナフタレン(490mg,1.0mmol)、ジクロロ[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム・ジクロロメタン付加体(81mg,0.10mmol)の混合物をトルエン(6.0mL)に溶解した。反応混合物に2.0M-リン酸カリウム水溶液(4.5mL)を加え、90℃で15時間撹拌した。室温まで放冷後、この反応混合物に水及びクロロホルムを加えた。有機層を分離し、ここに乾燥剤を加えた。乾燥剤をろ別し、ろ液を減圧乾固した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル=15/1)で精製し、目的の2,6-ジクロロ-3,7-ビス[2-(2-メチルプロピル)チアゾール-5-イル]ナフタレンを淡黄色固体として得た(260mg,0.56mmol,56%)。
1H-NMR(CDCl3)δ1.06(d,J=6.6Hz,12H),2.14-2.24(m,2H),2.94(d,J=7.2Hz,4H),7.90(s,2H),7.93(s,2H),7.96(s,2H).
参考例-5
【0125】
【0126】
アルゴン雰囲気下、5-ブロモ-2-ヘキシルチアゾール(1.68g,6.8mmol)にTHF(15mL)を加え、この溶液を-78℃に冷却した。そこにブチルリチウム(1.6M-ヘキサン溶液,5.0mL,8.0mmol)を30分かけて滴下した。反応混合物を-78℃で30分撹拌した後、2-(2-メチルプロピル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(2.0mL,10mmol)を加えた。この反応混合物を、反応温度を徐々に室温まで昇温させながら18時間撹拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液及び酢酸エチルを加えた。有機層を分離し、ここに乾燥剤を加えた。乾燥剤をろ別し、ろ液を減圧濃縮し、2-ヘキシル-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)チアゾールの粗生成物(2.08g)を得た。このものは精製せずにそのまま次の反応に用いた。
【0127】
アルゴン雰囲気下、2-ヘキシル-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)チアゾールの粗生成物(1.77g)、2,6-ジクロロ-3,7-ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ナフタレン(840mg,1.7mmol)、ジクロロ[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム・ジクロロメタン付加体(130mg,0.17mmol)の混合物をトルエン(15mL)に溶解した。反応混合物に2.0M-リン酸カリウム水溶液(10mL)を加え、90℃で16時間撹拌した。室温まで放冷後、この反応混合物に水及びクロロホルムを加えた。有機層を分離し、ここに乾燥剤を加えた。乾燥剤をろ別し、ろ液を減圧乾固した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル=15/1)で精製し、目的の2,6-ジクロロ-3,7-ビス(2-ヘキシルチアゾール-5-イル)ナフタレンを淡黄色固体として得た(440mg,0.83mmol,48%)。
1H-NMR(CDCl3)δ0.91(t,J=7.2Hz,6H),1.32-1.38(m,8H),1.43-1.50(m,4H),1.83-1.91(m,4H),3.07(t,J=7.8Hz,4H),7.89(s,2H),7.91(s,2H),7.96(s,2H).
参考例-6
【0128】
【0129】
アルゴン雰囲気下、5-ブロモ-2-ウンデシルチアゾール(6.23g,19mmol)にTHF(45mL)を加え、この溶液を-78℃に冷却した。そこにブチルリチウム(1.6M-ヘキサン溶液,14mL,22mmol)を30分かけて滴下した。反応混合物を-78℃で30分撹拌した後、2-(2-メチルプロピル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(6.0mL,29mmol)を加えた。この反応混合物を、反応温度を徐々に室温まで昇温させながら18時間撹拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液及び酢酸エチルを加えた。有機層を分離し、ここに乾燥剤を加えた。乾燥剤をろ別し、ろ液を減圧濃縮し、2-ウンデシル-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)チアゾールの粗生成物(7.11g)を得た。このものは精製せずにそのまま次の反応に用いた。
【0130】
アルゴン雰囲気下、2-ウンデシル-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)チアゾールの粗生成物(2.68g)、2,6-ジクロロ-3,7-ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ナフタレン(1.03g,2.1mmol)、ジクロロ[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム・ジクロロメタン付加体(170mg,0.21mmol)の混合物をトルエン(20mL)に溶解した。反応混合物に2.0M-リン酸カリウム水溶液(11mL)を加え、90℃で16時間撹拌した。室温まで放冷後、この反応混合物に水及びクロロホルムを加えた。有機層を分離し、ここに乾燥剤を加えた。乾燥剤をろ別し、ろ液を減圧乾固した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル=15/1)で精製し、目的の2,6-ジクロロ-3,7-ビス(2-ウンデシルチアゾール-5-イル)ナフタレンを淡黄色固体として得た(730mg,1.0mmol,52%)。
1H-NMR(CDCl3)δ0.88(t,J=6.6Hz,6H),1.27-1.36(m,28H),1.42-1.54(m,4H),1.83-1.90(m,4H),3.06(t,J=7.8Hz,4H),7.89(s,2H),7.91(s,2H),7.96(s,2H).
参考例-7
【0131】
【0132】
アルゴン雰囲気下、2,6-ジクロロ-3,7-ビス[2-(2-メチルプロピル)チアゾール-5-イル]ナフタレン(47mg,0.10mmol)とN-ブロモスクシンイミド(71mg,0.40mmol)の混合物を、アセトニトリル(1mL)に懸濁し、80℃で12時間加熱した。室温まで放冷後、この反応混合物に水及びクロロホルムを加えた。有機層を分離し、ここに乾燥剤を加えた。乾燥剤をろ別し、ろ液を減圧乾固した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=15/1)で精製し、目的の3,7-ビス[4-ブロモ-2-(2-メチルプロピル)チアゾール-5-イル]-2,6-ジクロロナフタレンを白色固体として得た(39mg,0.063mmol,63%)。
1H-NMR(CDCl3)δ1.06(d,J=6.6Hz,12H),2.13-2.23(m,2H),2.92(d,J=7.2Hz,4H),7.93(s,2H),8.00(s,2H).
参考例-8
【0133】
【0134】
アルゴン雰囲気下、2,6-ジクロロ-3,7-ビス(2-ヘキシルチアゾール-5-イル)ナフタレン(1.00g,1.8mmol)にN,N-ジメチルホルムアミド(20mL)を加え、そこに臭素(1.41mL,28mmol)を室温で滴下し、12時間撹拌した。この反応混合物に水、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液及び酢酸エチルを加えた。有機層を分離し、ここに乾燥剤を加えた。乾燥剤をろ別し、ろ液を減圧乾固した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル=15/1)で精製し、目的の3,7-ビス(4-ブロモ-2-ヘキシルチアゾール-5-イル)-2,6-ジクロロナフタレンを白色固体として得た(1.10g,1.6mmol,89%)。
1H-NMR(CDCl3)δ0.91(t,J=7.2Hz,6H),1.33-1.37(m,8H),1.42-1.50(m,4H),1.81-1.89(m,4H),3.05(t,J=7.9Hz,4H),7.92(s,2H),7.99(s,2H).
参考例-9
【0135】
【0136】
アルゴン雰囲気下、2,6-ジクロロ-3,7-ビス(2-ウンデシルチアゾール-5-イル)ナフタレン(300mg,0.45mmol)にN,N-ジメチルホルムアミド(10mL)を加え、そこに臭素(330μL,6.7mmol)を室温で滴下し、12時間撹拌した。この反応混合物に水、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液及び酢酸エチルを加えた。有機層を分離し、ここに乾燥剤を加えた。乾燥剤をろ別し、ろ液を減圧乾固した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/クロロホルム=1/1)で精製し、目的の3,7-ビス(4-ブロモ-2-ウンデシルチアゾール-5-イル)-2,6-ジクロロナフタレンを白色固体として得た(150mg,0.18mmol,41%)。
1H-NMR(CDCl3)δ0.88(t,J=6.8Hz,6H),1.27-1.37(m,28H),1.41-1.49(m,4H),1.81-1.87(m,4H),3.05(t,J=7.7Hz,4H),7.92(s,2H),7.99(s,2H).
参考例-10
【0137】
【0138】
アルゴン雰囲気下、2,6-ジクロロ-3,7-ビス(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフタレン(4.04g,8.2mmol)、2-ウンデシル-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)チアゾールの粗生成物(7.49g)及びジクロロ[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム・ジクロロメタン付加体(660mg,0.82mmol)の混合物をトルエン(60mL)に溶解した。反応混合物に2.0M-リン酸カリウム水溶液(30mL)を加え、90℃で16時間撹拌した。室温まで放冷後、この反応混合物に水及びクロロホルムを加えた。有機層を分離し、ここに乾燥剤を加えた。乾燥剤をろ別し、濾液を減圧乾固した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/クロロホルム=1/1)で精製し、目的の2,6-ジクロロ-3-トリフルオロメチルスルホニルオキシ-7-(2-ウンデシルチアゾール-5-イル)ナフタレンを淡黄色固体として得た(2.51g,4.3mmol,53%)。
1HNMR(CDCl3)δ0.88(t,J=7.0Hz,3H),1.27-1.38(m,14H),1.42-1.49(m,2H),1.82-1.90(m,2H),3.06(t,J=7.8Hz,2H),7.74(s,1H),7.89(s,1H),7.90(s,1H),7.97(s,2H).
19FNMR(CDCl3)δ-73.1.
参考例-11
【0139】
【0140】
アルゴン雰囲気下、2,6-ジクロロ-3-トリフルオロメチルスルホニルオキシ-7-(2-ウンデシルチアゾール-5-イル)ナフタレン(180mg,0.31mmol)、2-(2-メチルプロピル)-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)チアゾールの粗生成物(160mg)及びジクロロ[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム・ジクロロメタン付加体(26mg,0.31mmol)の混合物をトルエン(2.0mL)に溶解した。反応混合物に2.0M-リン酸カリウム水溶液(0.95mL)を加え、90℃で16時間撹拌した。室温まで放冷後、この反応混合物に水及びクロロホルムを加えた。有機層を分離し、ここに乾燥剤を加えた。乾燥剤をろ別し、濾液を減圧乾固した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/クロロホルム=1/2)で精製し、目的の2,6-ジクロロ-3-[2-(2-メチルプロピル)チアゾール-5-イル]-7-(2-ウンデシルチアゾール-5-イル)ナフタレンを淡黄色固体として得た(110mg,0.20mmol,64%)。
1HNMR(CDCl3)δ0.88(t,J=7.0Hz,3H),1.06(d,J=6.6Hz,6H),1.27-1.38(m,14H),1.42-1.49(m,2H),1.83-1.90(m,2H),2.14-2.24(m,1H),2.94(d,J=7.2Hz,2H),3.06(t,J=7.8Hz,2H),7.87(s,1H),7.88(s,1H),7.91(s,1H),7.93(s,1H),7.94(s,2H).
参考例-12
【0141】
【0142】
アルゴン雰囲気下、2,6-ジクロロ-3-[2-(2-メチルプロピル)チアゾール-5-イル]-7-(2-ウンデシルチアゾール-5-イル)ナフタレン(170mg,0.30mmol)とN-ブロモスクシンイミド(420mg,2.3mmol)の混合物を、アセトニトリル(3.0mL)に懸濁し、80℃で15時間加熱した。室温まで放冷後、この反応混合物に水及びクロロホルムを加えた。有機層を分離し、ここに乾燥剤を加えた。乾燥剤をろ別し、濾液を減圧乾固した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル=20/1)で精製し、目的の3-[4-ブロモ-2-(2-メチルプロピル)チアゾール-5-イル]-7-(4-ブロモ-2-ウンデシルチアゾール-5-イル)-2,6-ジクロロナフタレンを白色固体として得た(110mg,0.15mmol,52%)。
1HNMR(CDCl3)δ0.88(t,J=7.0Hz,3H),1.06(d,J=6.6Hz,6H),1.27-1.37(m,14H),1.41-1.49(m,2H),1.81-1.88(m,2H),2.13-2.23(m,1H),2.92(d,J=7.2Hz,2H),3.05(t,J=8.0Hz,2H),7.92(s,1H),7.93(s,1H),7.99(s,2H).
実施例-1
【0143】
【0144】
アルゴン雰囲気下、3,7-ビス[4-ブロモ-2-(2-メチルプロピル)チアゾール-5-イル]-2,6-ジクロロナフタレン(95mg,0.15mmol)、硫化ナトリウム(58mg,0.75mmol)及び水(40μL,2.2mmol)の混合物を、N-メチルピロリドン(4.5mL)に懸濁し、200℃で3時間加熱した。室温まで放冷後、この反応混合物に1.0M-塩酸及び酢酸エチルを加えた。有機層を分離し、ここに乾燥剤を加えた。乾燥剤をろ別し、ろ液を減圧乾固した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=10/1)で精製し、目的の2,8-ビス(2-メチルプロピル)ジチアゾロ[4,5-d;4’,5’-d’]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ジチオフェンを淡黄色固体として得た(6mg,0.013mmol,9%)。
1H-NMR(CDCl3)δ1.08(d,J=6.6Hz,12H),2.21-2.31(m,2H),3.05(d,J=7.2Hz,4H),8.26(s,2H),8.43(s,2H).
実施例-2
【0145】
【0146】
アルゴン雰囲気下、3,7-ビス(4-ブロモ-2-ヘキシルチアゾール-5-イル)-2,6-ジクロロナフタレン(100mg,0.15mmol)及び硫化ナトリウム(23mg,0.30mmol)の混合物を、ヘキサメチルリン酸トリアミド(4.5mL)に懸濁し、150℃で3時間加熱した。室温まで放冷後、この反応混合物に1.0M-塩酸及び酢酸エチルを加えた。有機層を分離し、ここに乾燥剤を加えた。乾燥剤をろ別し、ろ液を減圧乾固した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=10/1)で精製し、目的の2,8-ジヘキシルジチアゾロ[4,5-d;4’,5’-d’]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ジチオフェンを淡黄色固体として得た(12mg,0.022mmol,15%)。
1H-NMR(CDCl3)δ0.91(t,J=7.1Hz,6H),1.35-1.39(m,8H),1.45-1.52(m,4H),1.88-1.96(m,4H),3.18(t,J=7.8Hz,4H),8.26(s,2H),8.43(s,2H).
実施例-3
硫化ナトリウムに代え、硫化リチウム(14mg,0.30mmоl)を用いた以外は実施例-2と同様の操作を行い、目的の2,8-ジヘキシルジチアゾロ[4,5-d;4’,5’-d’]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ジチオフェンを得た(8mg,0.016mmol,11%)。
実施例-4
【0147】
【0148】
アルゴン雰囲気下、3,7-ビス(4-ブロモ-2-ウンデシルチアゾール-5-イル)-2,6-ジクロロナフタレン(120mg,0.15mmol)及び硫化ナトリウム(23mg,0.30mmol)の混合物を、ヘキサメチルリン酸トリアミド(4.5mL)に懸濁し、150℃で3時間加熱した。室温まで放冷後、この反応混合物に1.0M-塩酸及び酢酸エチルを加えた。有機層を分離し、ここに乾燥剤を加えた。乾燥剤をろ別し、ろ液を減圧乾固した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=12/1)で精製し、目的の2,8-ジウンデシルジチアゾロ[4,5-d;4’,5’-d’]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ジチオフェンを淡黄色固体として得た(10mg,0.015mmol,10%)。
1H-NMR(CDCl3)δ0.88(t,J=6.8Hz,6H),1.25-1.37(m,28H),1.45-1.52(m,4H),1.85-1.95(m,4H),3.18(t,J=7.7Hz,4H),8.27(s,2H),8.43(s,2H).
実施例-5
【0149】
【0150】
アルゴン雰囲気下、3-[4-ブロモ-2-(2-メチルプロピル)チアゾール-5-イル]-7-(4-ブロモ-2-ウンデシルチアゾール-5-イル)-2,6-ジクロロナフタレン(110mg,0.15mmol)及び硫化ナトリウム(24mg,0.30mmol)の混合物を、ヘキサメチルリン酸トリアミド(4.5mL)に懸濁し、150℃で3時間加熱した。室温まで放冷後、この反応混合物に1.0M-塩酸及び酢酸エチルを加えた。有機層を分離し、ここに乾燥剤を加えた。乾燥剤をろ別し、濾液を減圧乾固した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=12/1)で精製し、目的の2-(2-メチルプロピル)-8-ウンデシルジチアゾロ[4,5-d;4’,5’-d’]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ジチオフェンを淡黄色固体として得た(5mg,0.0095mmol,6%)。
1HNMR(CDCl3)δ0.88(t,J=7.0Hz,3H),1.08(d,J=6.6Hz,6H),1.27-1.38(m,14H),1.42-1.49(m,2H),1.88-1.95(m,2H),2.22-2.32(m,1H),3.06(d,J=7.2Hz,2H),3.19(t,J=7.7Hz,2H),8.28(s,2H),8.45(s,2H).
実施例-6
【0151】
【0152】
アルゴン雰囲気下、2,8-ジヘキシルジチアゾロ[4,5-d;4’,5’-d’]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ジチオフェン(30mg,0.05mmol)及び臭素(0.14mL,2.7mmol)の混合物を、室温で24時間撹拌した。この反応混合物に水、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液及びクロロホルムを加えた。有機層を分離し、ここに乾燥剤を加えた。乾燥剤をろ別し、ろ液を減圧乾固した。得られた粗生成物をリサイクル分取HPLC(クロロホルム)で精製し、目的の6-ブロモ-2,8-ジヘキシルジチアゾロ[4,5-d;4’,5’-d’]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ジチオフェン(1.9mg,0.003mmol,6%)、5,6-ジブロモ-2,8-ジヘキシルジチアゾロ[4,5-d;4’,5’-d’]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ジチオフェン(1.2mg,0.002mmol,4%)、5,12-ジブロモ-2,8-ジヘキシルジチアゾロ[4,5-d;4’,5’-d’]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ジチオフェン(0.5mg,0.0007mmol,1%)、6,12-ジブロモ-2,8-ジヘキシルジチアゾロ[4,5-d;4’,5’-d’]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ジチオフェン(2.2mg,0.003mmol,6%)、5,6,12-トリブロモ-2,8-ジヘキシルジチアゾロ[4,5-d;4’,5’-d’]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ジチオフェン(7.0mg,0.009mmol,18%)、及び5,6,11,12-テトラブロモ-2,8-ジヘキシルジチアゾロ[4,5-d;4’,5’-d’]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ジチオフェン(6.3mg,0.007mmol,15%)を得た。
6-ブロモ-2,8-ジヘキシルジチアゾロ[4,5-d;4’,5’-d’]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ジチオフェン
1H-NMR(CDCl3)δ0.91(t,J=7.0Hz,3H),0.92(t,J=7.2Hz,3H),1.35-1.39(m,8H),1.45-1.52(m,4H),1.83-1.96(m,4H),3.07(t,J=8.0Hz,2H),3.14(t,J=7.4Hz,2H),8.45(s,1H),8.52(s,1H),8.92(s,1H).
5,6-ジブロモ-2,8-ジヘキシルジチアゾロ[4,5-d;4’,5’-d’]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ジチオフェン
1H-NMR(CDCl3)δ0.91(t,J=7.2Hz,3H),0.92(t,J=7.0Hz,3H),1.34-1.38(m,8H),1.45-1.50(m,4H),1.84-1.96(m,4H),3.06(t,J=8.0Hz,2H),3.18(t,J=7.8Hz,2H),8.50(s,1H),8.61(s,1H).
5,12-ジブロモ-2,8-ジヘキシルジチアゾロ[4,5-d;4’,5’-d’]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ジチオフェン
1H-NMR(CDCl3)δ0.91(t,J=7.0Hz,3H),0.92(t,J=7.2Hz,3H),1.35-1.39(m,8H),1.45-1.52(m,4H),1.83-1.96(m,4H),3.07(t,J=8.0Hz,2H),3.14(t,J=7.4Hz,2H),8.65(s,1H),8.92(s,1H).
6,12-ジブロモ-2,8-ジヘキシルジチアゾロ[4,5-d;4’,5’-d’]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ジチオフェン
1H-NMR(CDCl3)δ0.91(t,J=7.1Hz,6H),1.34-1.37(m,8H),1.45-1.52(m,4H),1.82-1.90(m,4H),3.06(t,J=7.8Hz,4H),8.83(s,2H).
5,6,12-トリブロモ-2,8-ジヘキシルジチアゾロ[4,5-d;4’,5’-d’]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ジチオフェン
1H-NMR(CDCl3)δ0.88(t,J=7.0Hz,3H),0.92(t,J=6.9Hz,3H),1.35-1.39(m,8H),1.44-1.52(m,4H),1.87-1.95(m,4H),3.09(t,J=9.0Hz,2H),3.11(t,J=9.2Hz,2H),8.82(s,1H).
5,6,11,12-テトラブロモ-2,8-ジヘキシルジチアゾロ[4,5-d;4’,5’-d’]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ジチオフェン
1H-NMR(CDCl3)δ0.92(t,J=7.2Hz,6H),1.35-1.39(m,8H),1.45-1.52(m,4H),1.83-1.96(m,4H),3.15(t,J=7.9Hz,4H).
実施例-7
(有機薄膜形成用溶液(製膜用組成物)の調製)
空気下、サンプル管に、実施例-2で得られた2,8-ジヘキシルジチアゾロ[4,5-d;4’,5’-d’]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ジチオフェン(0.87mg)及びトルエン(430mg)を取り、50℃に加熱溶解後、12時間放置した。結晶の析出は見られず0.20重量%の溶液状態を保持していたことから、塗布プロセスに適した材料であることを確認した。
実施例-8
(有機薄膜の作製)
空気下、直径2インチのn型にハイドープしたシリコン基板(ミヨシ、抵抗値;0.004Ω、表面に200nmのシリコン酸化膜付き)上に、実施例-7で得られた溶液0.5mLをドロップキャストした。室温下で自然乾燥し、2,8-ジヘキシルジチアゾロ[4,5-d;4’,5’-d’]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ジチオフェンの薄膜の形成を確認した。
実施例-9
(有機トランジスタ素子の作製)
ガラス基板としてイーグルXG(コーニング社製)を真空蒸着装置内に設置し、装置内の真空度が3.0×10-4Pa以下になるまで排気し、抵抗加熱蒸着法によって、アルミニウムの電極、すなわちゲート電極を50nmの厚さに蒸着した。この上にジクロロ-ジ-p-キシリレン(商品名:DPX-C,スペシャリティーコーティングシステムズ社,900mg)をラボコーター(日本パリレン合同会社製,PDS2010)を用いて、膜厚500nmになるよう真空蒸着し、ポリ(クロロ-p-パラキシリレン)(パリレンC)のゲート絶縁膜を形成した。この上に実施例-7で作製した2,8-ジヘキシルジチアゾロ[4,5-d;4’,5’-d’]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ジチオフェン溶液(0.3mL)をドロップキャストした後、自然乾燥し、2,8-ジヘキシルジチアゾロ[4,5-d;4’,5’-d’]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ジチオフェンの薄膜を形成した。次いでこの上に電極作製用シャドウマスクを取り付け、真空蒸着装置内に設置し、装置内の真空度が3.0×10-4Pa以下になるまで排気し、抵抗加熱蒸着法によって、金の電極、すなわちソース電極及びドレイン電極を蒸着し(膜厚=50nm,チャネル長=100nm)、ボトムゲート-トップコンタクト型のp型有機薄膜トランジスタを作製した。
【0153】
作製した有機薄膜トランジスタの電気物性を半導体パラメーターアナライザー(ケースレー4200SCS)を用いて、ドレイン電圧(Vd=-70V)で、ゲート電圧(Vg)を+10~-70Vまで1V刻みで走査し、伝達特性の評価を行った。正孔のキャリア移動度は0.10cm2/V・sであった。
比較例-1
(有機薄膜形成用溶液(製膜用組成物)の調製)
9mLサンプル管に、2,9-ジナフト[2,3-b:2’,3’-f]チエノ[3,2-b]チオフェン(DNTT,シグマアルドリッチ社製,0.87mg)及びトルエン(430mg)を取り、50℃に加熱したところ、固体の溶け残りが観測され、溶解性に劣ることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明のジチアゾロナフトジチオフェン化合物は、溶媒への溶解性に優れることから有機トランジスタ素子に代表される半導体デバイス材料としての適用が期待できる。