(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】酸性液状調味料
(51)【国際特許分類】
A23L 27/60 20160101AFI20220610BHJP
【FI】
A23L27/60 A
(21)【出願番号】P 2018105594
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2020-08-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 https://www.kewpie.co.jp/company/corp/newsrelease/2017/73.html(平成29年12月13日掲載) https://www.kewpie.co.jp/prouse/products/detail.php?p_cd=30200(平成29年12月13日掲載) キユーピー フードサービス(業務用)2018 春の新商品説明会、東京都調布市仙川町二丁目5番地7 キユーピー株式会社 仙川キユ―ポート(平成29年12月13日) Amazon.co.jp ウェブページ (https://www.amazon.co.jp/dp/B079T17QBM)(平成30年2月14日掲載)
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長澤 尚子
(72)【発明者】
【氏名】村上 智哉
(72)【発明者】
【氏名】西村 知紗
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-170353(JP,A)
【文献】日本調理科学会誌,Vol.36,No.3,2003年,pp.321-328
【文献】エバラ食品 2018年 春夏新商品・リニューアル品, 2018.01.11 [検索日 2021.10.11], インターネット:<URL: https://www.ebarafoods.com/company/20180111_tamaneginotare.pdf>
【文献】エバラ食品 たまねぎのたれ, [検索日 2021.10.11], インターネット:<URL: https://www.ebarafoods.com/products/detail/TMT270.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タマネギ及び酢酸を含有する酸性液状調味料において、
前記タマネギは、膨潤した乾燥タマネギ具材及びすりおろし状非乾燥タマネギであり、
前記乾燥タマネギ具材は、膨潤後における最長辺が1mm以上のものを前記調味料中に湿
重量で20質量%以上含み、
前記調味料の粘度(25℃)が、100mPa・s以上6000mPa・s以下であり、
前記調味料が、下記の条件をみたすことを特徴とする、
酸性液状調味料。
<条件>
前記調味料の具材を除いた水相部の香気成分が、
固相マイクロ抽出―ガスクロマトグラフ分析法で測定した場合に、
酢酸のピーク面積に対する、
3,4-ジメチルチオフェン(3,4-dimethyl thiophene)のピーク面積の比が、
0.03以下。
【請求項2】
タマネギ及び酢酸を含有する酸性液状調味料において、
前記タマネギは、膨潤した乾燥タマネギ具材及びすりおろし状非乾燥タマネギであり、
前記乾燥タマネギ具材は、膨潤後における最長辺が1mm以上のものを前記調味料中に湿
重量で20質量%以上含み、
前記すりおろし状非乾燥タマネギが、酢漬けすりおろし状非乾燥タマネギであり、
前記調味料が、下記の条件をみたすことを特徴とする、
酸性液状調味料。
<条件>
前記調味料の具材を除いた水相部の香気成分が、
固相マイクロ抽出―ガスクロマトグラフ分析法で測定した場合に、
酢酸のピーク面積に対する、
3,4-ジメチルチオフェン(3,4-dimethyl thiophene)のピーク面積の比が、
0.03以下。
【請求項3】
前記すりおろし状非乾燥タマネギが、酢漬けすりおろし状非乾燥タマネギであることを特
徴とする、
請求項
1記載の酸性液状調味料。
【請求項4】
前記すりおろし状非乾燥タマネギの含有量1質量部に対し
前記最長辺が1mm以上の膨潤した乾燥タマネギ具材の湿重量の質量比が、0.5質量部
以上40質量部以下であることを特徴とする、
請求項
1乃至3のいずれか1項に記載の酸性液状調味料。
【請求項5】
前記調味料が、さらにすりおろし状のニンニクを含むことを特徴とする、
請求項
1乃至4のいずれか1項に記載の酸性液状調味料。
【請求項6】
タマネギ及び酢酸を含有する酸性液状調味料の製造方法において、
前記タマネギは、膨潤した乾燥タマネギ具材及びすりおろし状非乾燥タマネギであり、
前記乾燥タマネギ具材は、膨潤後における最長辺が1mm以上のものを前記調味料中に湿
重量で20質量%以上含み、
前記調味料の粘度(25℃)が、100mPa・s以上6000mPa・s以下であり、
前記調味料が下記の条件を満たすように、膨潤した乾燥タマネギを加熱することを特徴と
する、
酸性液状調味料の製造方法。
<条件>
前記調味料の具材を除いた水相部の香気成分が、
固相マイクロ抽出―ガスクロマトグラフ分析法で測定した場合に、
酢酸のピーク面積に対する、
3,4-ジメチルチオフェン(3,4-dimethyl thiophene)のピーク面積の比が、
0.03以下。
【請求項7】
タマネギ及び酢酸を含有する酸性液状調味料の製造方法において、
前記タマネギは、膨潤した乾燥タマネギ具材及びすりおろし状非乾燥タマネギであり、
前記乾燥タマネギ具材は、膨潤後における最長辺が1mm以上のものを前記調味料中に湿
重量で20質量%以上含み、
前記すりおろし状非乾燥タマネギが、酢漬けすりおろし状非乾燥タマネギであり、
前記調味料が下記の条件を満たすように、膨潤した乾燥タマネギを加熱することを特徴と
する、
酸性液状調味料の製造方法。
<条件>
前記調味料の具材を除いた水相部の香気成分が、
固相マイクロ抽出―ガスクロマトグラフ分析法で測定した場合に、
酢酸のピーク面積に対する、
3,4-ジメチルチオフェン(3,4-dimethyl thiophene)のピーク面積の比が、
0.03以下。
【請求項8】
前記すりおろし状非乾燥タマネギが、酢漬けすりおろし状非乾燥タマネギであることを特
徴とする、
請求項
6記載の酸性液状調味料の製造方法。
【請求項9】
前記すりおろし状非乾燥タマネギの含有量1質量部に対し
前記最長辺が1mm以上の膨潤した乾燥タマネギ具材の湿重量の質量比が、0.5質量部
以上40質量部以下であることを特徴とする、
請求項
6乃至8のいずれか1項に記載の酸性液状調味料の製造方法。
【請求項10】
前記調味料が、さらにすりおろし状のニンニクを含むことを特徴とする、
請求項
6乃至9のいずれか1項に記載の酸性液状調味料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タマネギのシャキシャキとした食感を有し、かつ酢酸を含有する調味料中でもタマネギのフレッシュな風味を持つ、酸性液状調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
タマネギは、入手が容易であり親しみやすく、和風、洋風及び中華と、様々な料理に合うことから、従来より広く酸性液状調味料の具材として使用されている。タマネギのおいしさは、加熱することによる甘味を含んだコクのある風味と、新鮮なたまねぎをそのまま食べることによるタマネギのフレッシュな風味に大きく分けられる。家庭で調理する手作りの調味料においては、タマネギ具材のシャキシャキとした食感によるおいしさもあわせて、後者の風味が好まれ、カットしたものや、すりおろした形状で一般的に使用されている。
【0003】
家庭で調理したような手作り感のある、タマネギ具材を含んだ酸性液状調味料は、嗜好性が高く、外食産業においてもその需要性は高いが、店舗で生のタマネギをカットすることは非常に手間がかかり、人件費の面で課題があった。一方、長期保管を前提とした、加工食品の調味料においては、生のたまねぎを具材として用いた場合、保管時間につれてたまねぎのシャキシャキとした食感が失われてしまうため、それを改善するために乾燥タマネギを使用することが手段として行われていた(特許文献1)。しかしながら、具材感を求めるために乾燥タマネギの配合量を増やすと、乾燥タマネギ特有の劣化臭が強くなり、調味料全体としてタマネギのフレッシュな風味が損なわれ、酢酸の風味と相まって風味が悪くなるという課題があった。
【0004】
タマネギを多量に含んだ酸性液状調味料は製造・販売されてきたが、乾燥タマネギが多量に配合されたもので、タマネギのフレッシュな風味を両立するものはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、タマネギのシャキシャキとした食感を有し、かつ酢酸を含有する調味料中でもタマネギのフレッシュな風味を持つ、酸性液状調味料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題の解決を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のサイズの乾燥タマネギを、特定量配合した調味料に、すりおろし状の非乾燥タマネギを一部配合し、調味料の具材を除いた水相部における香気成分が、酢酸と3,4-dimethyl thiopheneが特定のバランスの条件を満たすようにすることで、意外にも、タマネギのシャキシャキとした食感とタマネギのフレッシュな風味を両立した酸性液状調味料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)タマネギ及び酢酸を含有する酸性液状調味料において、
前記タマネギは、膨潤した乾燥タマネギ具材及びすりおろし状非乾燥タマネギであり、
前記乾燥タマネギ具材は、膨潤後における最長辺が1mm以上のものを前記調味料中に湿重量で20質量%以上含み、
前記調味料が、下記の条件をみたす
酸性液状調味料、
<条件>
前記調味料の具材を除いた水相部の香気成分が、
固相マイクロ抽出―ガスクロマトグラフ分析法で測定した場合に、
酢酸のピーク面積に対する、
3,4-ジメチルチオフェン(3,4-dimethyl thiophene)のピーク面積の比が、
0.03以下。
(2)前記すりおろし状非乾燥タマネギが、酢漬けすりおろし状非乾燥タマネギである、
(1)記載の酸性液状調味料、
(3)前記すりおろし状非乾燥タマネギの含有量1質量部に対し
前記最長辺が1mm以上の膨潤した乾燥タマネギ具材の湿重量の質量比が、0.5質量部以上40質量部以下である、
(1)または(2)記載の酸性液状調味料、
(4)前記調味料が、さらにすりおろし状のニンニクを含む、
(1)乃至(3)のいずれかに記載の酸性液状調味料、
(5)前記酸性液状調味料の粘度(25℃)が、100mPa・s以上6000mPa・s以下である、
(1)乃至(4)のいずれかに記載の酸性液状調味料、
(6)タマネギ及び酢酸を含有する酸性液状調味料の製造方法において、
前記タマネギは、膨潤した乾燥タマネギ具材及びすりおろし状非乾燥タマネギであり、
前記乾燥タマネギ具材は、膨潤後における最長辺が1mm以上のものを前記調味料中に湿重量で20質量%以上含み、
前記調味料が下記の条件を満たすように、膨潤した乾燥タマネギを加熱する、
酸性液状調味料の製造方法、
<条件>
前記調味料の具材を除いた水相部の香気成分が、
固相マイクロ抽出―ガスクロマトグラフ分析法で測定した場合に、
酢酸のピーク面積に対する、
3,4-ジメチルチオフェン(3,4-dimethyl thiophene)のピーク面積の比が、
0.03以下。
(7)前記すりおろし状非乾燥タマネギが、酢漬けすりおろし状非乾燥タマネギである、
(6)記載の酸性液状調味料の製造方法、
(8)前記すりおろし状非乾燥タマネギの含有量1質量部に対し前記最長辺が1mm以上の膨潤した乾燥タマネギ具材の湿重量の質量比が、
0.5質量部以上40質量部以下である、
(6)または(7)記載の酸性液状調味料の製造方法、
(9)前記調味料が、さらにすりおろし状のニンニクを含む、
(6)乃至(8)のいずれかに記載の酸性液状調味料の製造方法、
(10)前記酸性液状調味料の粘度(25℃)が、100mPa・s以上6000mPa・s以下である、
(6)乃至(9)のいずれかに記載の酸性液状調味料の製造方法、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、タマネギのシャキシャキとした食感を有し、かつ酢酸を含有する調味料中でもタマネギのフレッシュな風味を持つ、酸性液状調味料を提供することができる。したがって、タマネギを多量に配合した具沢山な調味料の更なる需要拡大が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を詳細に説明する。
【0011】
<本発明の特徴>
本発明の酸性液状調味料は、膨潤した乾燥タマネギ具材及びすりおろし状非乾燥タマネギを含有しており、前記乾燥タマネギ具材は、膨潤後における最長辺が1mm以上のものを前記調味料中に20質量%以上含み、前記調味料の具材を除いた水相部の香気成分が、固相マイクロ抽出―ガスクロマトグラフ分析法で測定した際、酢酸と3,4-dimethyl thiopheneが特定のバランスの条件を満たすことにより、タマネギのシャキシャキとした食感とタマネギのフレッシュな風味を両立することを特徴とする。
【0012】
<酸性液状調味料>
本発明における酸性液状調味料は、pHが3.0以上4.6以下の液状の調味料をいう。形態としては野菜や肉料理等に和えることができるように液状のものであればいずれのものでもよい。例えば、ノンオイルのもの、分離液状のもの等が挙げられる。特に分離液状である場合、喫食する際に油相として用いる食用油脂により、タマネギのみずみずしいシャキシャキとした食感を際立たせるため、好ましい。
その際、油相として用いる食用油脂の含有量は、前記効果を奏し易いことより、下限値は1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。一方、上限値は25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
なお、食用油脂としては例えば、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、紅花油、大豆油、パーム油、魚油等の動植物油又はこれらの精製油(サラダ油)、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド、硬化油、エステル交換油等のような化学的あるいは酵素的処理等を施して得られる油脂等の食用油脂等を用いることができる。
【0013】
<乾燥タマネギ具材>
本発明の酸性液状調味料は、膨潤した乾燥タマネギ具材を必須原料として含有するものである。乾燥タマネギとは原料段階で乾燥状態のものを言い、一般的に水や調味液に浸透、膨潤させて配合するタマネギのことを指す。
乾燥タマネギの乾燥方法としては、一般的な乾燥方法で乾燥したものであればいずれのものでもよい。例えば、熱風乾燥等の加熱乾燥、天日干し乾燥等の自然乾燥、凍結乾燥等の低温乾燥、マイクロ波乾燥等が挙げられる。なお、本発明に用いる乾燥タマネギ具材としては、市販されている乾燥タマネギを用いればよく、このような乾燥タマネギの乾燥の程度は、一般的に水分値が30%以下である。
【0014】
<膨潤した乾燥タマネギ具材の含有量(湿重量)>
本発明の酸性液状調味料は、特定の大きさに膨潤した乾燥タマネギを特定量配合したものである。具体的には、膨潤後における最長辺が1mm以上の乾燥タマネギ具材を湿重量で20質量%以上、好ましくは25質量%以上、より好ましくは35質量%以上含有するものである。前記最長辺が1mmより小さい場合、あるいは前記含有量が20質量%よりも少ない場合は、調味料全体としてタマネギのシャキシャキとした食感が得られない。
本発明は、前記最長辺の上限の大きさ、及び前記含有量の上限に関し、特に規定していないが、一般的な液状調味料の好ましい物性の観点から定めることができる。具体的には、前記最長辺の上限は、15mm以下が好ましく、前記含有量の上限は、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
【0015】
<膨潤後の乾燥タマネギ具材の湿重量の測定方法>
本発明における膨潤後における最長辺が1mm以上である膨潤後乾燥タマネギ具材の湿重量は、前記乾燥タマネギ具材が調味料中で水分を吸収し膨潤した後の重量を指す。別途水で膨潤させたのち配合してもよい。
湿重量の測定は、調味料中で膨潤した乾燥タマネギを篩で分別し他の適宜原料を除去した後、直接重量を測定することによって測定することができる。具体的には、目開き0.701mm(24メッシュ(タイラー規格))の篩の上に特定量調味料を積載し、調味液を流水で洗い流したのち10分程静置し、他の具材及び最長辺が1mm未満の膨潤した乾燥タマネギ具材を除去したのち、メッシュオンした具材の質量を測定することで、膨潤後における最長辺が1mm以上である膨潤した乾燥タマネギ具材の湿重量を測定することができる。
【0016】
<非乾燥タマネギ>
本発明の酸性液状調味料は、すりおろし状の非乾燥タマネギを必須原料として含有するものである。非乾燥タマネギは、原料の製造工程中に乾燥工程を含まないタマネギである。前記非乾燥タマネギとしては、タマネギのフレッシュな風味を得られやすいという観点から生タマネギをすりおろしたものが好ましく、さらにすりおろした生タマネギを酢漬けした酢漬けタマネギがより好ましい。
【0017】
<酢酸>
本発明の酸性液状調味料は、酢酸を必須原料として含有するものである。
本発明に用いる酢酸としては、食酢を用いるのがよい。食酢としては例えば、米酢、麦芽酢、穀物酢、黒酢、リンゴ酢、ワインビネガー等の果実酢等が挙げられる。
【0018】
<酢酸と3,4-dimethyl thiopheneの香気成分のバランス>
本発明の酸性液状調味料は、具材を除いた水相部の香気成分を固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法で測定した場合、酢酸のピーク面積に対する3,4-dimethyl thiopheneのピーク面積の比が、0.03以下であり、0.02以下が好ましく、0.006以下がより好ましい。
3,4-dimethyl thiopheneは、調理タマネギの香りや辛味に寄与している物質と言われているが、酢酸と3,4-dimethyl thiopheneの香気成分のバランスが前記値以下とすることによって、タマネギのシャキシャキとした食感を有し、かつタマネギのフレッシュな風味を持つという効果を奏する。
前記香気成分のバランスが前記値以下に調整する方法としては、本発明の必須原料の配合量や割合、あるいは製造工程を組み合わせる等、特に限定されないが、膨潤した乾燥タマネギを加熱することにより、得られやすい。
具体的には例えば、乾燥タマネギを液状または希釈した調味料液で乾燥タマネギを膨潤後、あるいは膨潤させながら前記調味料液と共に例えば、50℃以上100℃以下の所定の温度で、前記香気成分のバランスが前記値以下となる時間を選択し、加熱を施すとよい。また、前記加熱を水相部の調整した後に行うと殺菌も兼ねることができ生産性に優れている。
【0019】
さらに、前記すりおろし状の非乾燥タマネギや食酢を含有させる、あるいは前記すりおろし状の非乾燥タマネギ含有量と前記最長辺が1mm以上の乾燥タマネギ湿重量との割合を調整することで、前記香気成分のバランスが前記値以下に調整しやすく、本発明の効果がより一層得られやすい。
具体的は、前記すりおろし状の非乾燥タマネギは、本発明の酸性液状調味料に対し下限値が好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上、上限値が好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下となるように含有させるとよい。
酢酸は、本発明の酸性液状調味料の水相部に対し下限値が好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、上限値が好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下となるように含有させるとよい。
前記すりおろし状の非乾燥タマネギ含有量と前記最長辺が1mm以上の乾燥タマネギ湿重量との割合は、すりおろし状非乾燥タマネギの含有量1質量部に対し、最長辺が1mm以上の膨潤した乾燥タマネギ具材の湿重量の質量比が、下限値が好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上、上限値が好ましくは40質量部以下、より好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。
なお、本発明において、前記香気成分のバランスの値は、低いほど本発明の効果がより一層得られやすいが、工業的規模での生産を考慮し、0.0001以上が好ましい。
【0020】
<固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法>
本発明の酸性液状調味料の具材を除いた水相部の香気成分は、以下の条件に従って、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法(SPME-GC-MS)で測定することができる。
<分析条件>
(1)香気成分の分離濃縮方法
SPMEファイバーと揮発性成分抽出装置を用い、以下の条件に従って、固相マイクロ抽出法で香気成分の分離濃縮を行う。
<固相マイクロ抽出条件>
・SPMEファイバー:外側に膜厚50μmのジビニルベンゼン分散ポリジメチルシロキサン層、内側に膜厚30μmのCarboxen分散ポリジメチルシロキサン層を有する、2層積層コーティングされたSPMEファイバー(製品名:StableFlex 50/30μm、DVB/Carboxen/PDMS(Sigma-Aldrich社製))
・揮発性成分抽出装置:GC Sampler 120, Agilent technologies製
・予備加温:40℃,15min
・攪拌速度:300rpm
・揮発性成分抽出:40℃,20min
・脱着時間:10min
(2)香気成分の測定方法
ガスクロマトグラフ法及び質量分析法を用い、以下の条件に従って、酸性液状調味料の具材を除いた水相部中の3,4-dimethyl thiophene及びAcetic acidのピーク面積を測定する。
なお、各成分の定量イオン質量は以下の通りである。
・3,4-dimethyl thiophene定量イオン質量m/z111
・Acetic acid定量イオン質量m/z60
<ガスクロマトグラフ条件>
・測定機器:Agilent 7890B(Agilent Technologies社製)
・カラム:素材内壁にポリエチレングリコールからなる液相を膜厚0.25μmでコーティングしたキャピラリーカラム長さ30m、口径0.25mm、膜厚0.25μm(製品名:SOLGEL-WAX(SGE社製) 長さ30m、口径0.25mm、膜厚0.25μm)
・温度条件:35℃(5min)保持→120℃まで5℃/min昇温→2
20℃まで15℃/min昇温: 6min保持
・キャリアー:Heガス、ガス流量:1.0mL/min
・インジェクション方法:パルスド・スプリットレス:
スプリットレス1.5min保持→ パージ50mL/min
パルス圧100kPa 1.6 min保持→ 47kPa
(スタート時)
・インレット温度:250℃
・ワークステション:MSD ChemStation Build 75 (Agilent Technologies, Inc.)
<質量分析条件>
・質量分析計:四重極型質量分析計(製品名:Agilent 5977A(Agilent Technologies社製))
・スキャン質量m/z 29.0~290.0
・イオン化方式EI(イオン化電圧70eV)
なお、信号強度が低い場合等は、スキャン測定ではなく、SIM(選択イオンモニタリング)測定を行っても良い。
また、測定装置は上記に限られず、例えばAgilent 6890N、Agilent 5977Sなどを使用してもよく、使用する測定機器の仕様に合わせて条件を適宜調整し測定することができる。
【0021】
<すりおろし状のニンニク>
本発明の酸性液状調味料は、すりおろし状のニンニクを含有することが好ましい。すりおろし状のニンニクとしては、食品に使用されるものであればいずれのものでもよい。
本発明におけるすりおろし状のニンニクの含有量は、発明の効果がより一層得られやすいことから、下限値は0.05質量%以上が好ましい。0.075以上がより好ましく、上限値は2質量%以下好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。
【0022】
<酸性液状調味料の粘度>
本発明を構成する酸性液状調味料25℃における粘度は、100mPa・s以上6000mPa・s以下であることが好ましい。さらに前記下限値は500mPa・s以上がより好ましく、一方前記上限値は3700mPa・s以下がより好ましく、3000mPa・s以下がさらに好ましい。
本発明における酸性液状調味料の粘度が前記範囲であることにより、具材が沈みづらく、液状調味料として好ましい物性が得られやすい。
本発明の粘度はB型粘度計(例えば東機産業株式会社製のBH型)を用いて測定することができる。具体的には、25℃に調整した本発明の酸性液状調味料を、測定に適した容器に、容器内で具材が均一となるように充填し、測定粘度に適したローター及び回転数で測定することができる。なお、前記範囲の粘度のうち、4000mPa・s未満はBH型粘度計を用いローターNo.2、回転数10rpmの条件で測定した2回転後の粘度(単位:mPa・s)であり、4000mPa・s以上10000mPa・s以下は、BH型粘度計を用いローターNo.3、回転数10rpmの条件で測定した2回転後の粘度(単位:mPa・s)である。
なお、前記酸性液状調味料が分離液状の場合は、油相部を除いた水相部の粘度を測定した。
【0023】
<他の配合原料>
本発明の酸性液状調味料には、上述の原料以外に本発明の効果を損なわない範囲で当該食品に一般的に使用されている各種原料を適宜選択し配合させることができる。例えば、食酢、グルタミン酸ナトリウム、食塩、砂糖、醤油、味噌、乳製品等の各種調味料、各種エキス、全卵、卵黄、ホスフォリパーゼA1、ホスフォリパーゼA2、ホスフォリパーゼC若しくはホスフォリパーゼDで酵素処理した卵黄、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、リゾレシチン、ラクトアルブミン、カゼインナトリウム等の乳化材、アスコルビン酸又はその塩、ビタミンE等の酸化防止剤、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ジェランガム、アラビアガム、グアガム、タラガム等のガム質、色素、香味食材や各種野菜のおろし、ペースト状物、截断物等の具材の粉砕物、胡麻、大豆、ピーナッツ等の種子類の具材が挙げられる。
【0024】
以下、本発明の実施例、比較例を述べ、本発明を更に説明する。なお、本発明はこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0025】
(試験1)
<加熱が酢酸と3,4-dimethyl thiopheneの香気成分のバランスに及ぼす影響>
膨潤した乾燥タマネギを加熱することによる酢酸と3,4-dimethyl thiopheneの香気成分のバランスに及ぼす影響を調べるため、以下のように試験を行った。
表1の配合割合に準じ、酸性液状調味料を調整した。
すなわち、まず、乾燥タマネギ(膨潤後の最長辺はすべて1mm以上)及び酢漬けにした非乾燥すりおろし状タマネギ、並びにすりおろし状ニンニク、食酢、キサンタンガム、食塩、グラニュー糖、及び清水を調整後、ミキサー等で攪拌し、市販のパウチ(13.5cm×17cm)に80g程充填した。
その後パウチを特定の温度条件で加熱を行った。
具体的には、非加熱、60℃の湯煎で30分(以後60℃×30分と記載。他の加熱条件も同様。)、90℃×60分、90℃×90分の条件で加熱を行い、酸性液状調味料を調整した。
それぞれの酸性液状調味料について、布を用いて具材を取り除き、得られた具材を除いた水相部について、固相マイクロ抽出―ガスクロマトグラフ分析法にて、酢酸と3,4-dimethyl thiopheneのピーク面積比を求めた。
さらに、得られた前記酸性液状調味料について、訓練されたパネラーによる官能試験を行った。得られた官能試験の結果について、表2に記載した。
【0026】
<官能評価基準>
◎:タマネギのシャキシャキとした食感と、フレッシュな風味を十分に感じられる
〇:タマネギのシャキシャキとした食感と、フレッシュな風味を感じられる
△:タマネギのシャキシャキとした食感と、フレッシュな風味をやや感じられる
×:タマネギのシャキシャキとした食感、若しくはフレッシュな風味が感じられない
【0027】
【0028】
【0029】
具材を除いた水相部について、非加熱のものは酢酸のピーク面積に対する、3,4-ジメチルチオフェン(3,4-dimethyl thiophene)のピーク面積の比が0.03を超えるものとなった。また、風味についてもフレッシュな風味が感じられなかった。
加熱品については、すべての加熱条件で前記比率は0.03以下となり、風味についても、本発明の効果である、タマネギのシャキシャキとした食感と、フレッシュな風味をやや~十分に感じることができた。一方加熱温度が高くなるほど、及び加熱時間が長いほど、前記比率は高くなり、風味についても、本発明の効果を奏しづらいものとなった。
【0030】
(試験2)
<実施例1~17、及び比較例1~4について>
表3の配合割合に準じ、試験1と同様の方法により水相部を調整し、市販のパウチ(13.5cm×17cm)に充填した。
その後パウチを特定の温度条件(60℃×30分、90℃×60分、90℃×90分)で加熱を行い、酸性液状調味料を調整した。
それぞれの酸性液状調味料について、布を用いて具材を取り除き、得られた具材を除いた水相部について、固相マイクロ抽出―ガスクロマトグラフ分析法にて、酢酸と3,4-dimethyl thiopheneのピーク面積比を求めた。
さらに、上記加熱後のものに必要に応じ食用油脂を添加し、実施例1~17及び比較例1~4を調整した。それぞれの酸性液状調味料について訓練されたパネラーによる官能試験を行った。
なお、分離液状のものについては、容器をよく振り、十分に混合されたものを用いた。得られた官能試験の結果について、表3に記載した。
また、具材を含んだ水相部の粘度についても、併せて表3に記載した。
さらに、実施例1~17、比較例1~4のpHはすべて3.0以上3.8以下であった。
【0031】
【0032】
比較例1~4は、本発明の効果である、フレッシュな風味を得ることができなかった。
また、実施例3及び10は、本発明の効果である、タマネギのシャキシャキとした食感と、フレッシュな風味をやや感じることができた。
さらに、実施例2、7~9、及び11~17は、本発明の効果である、タマネギのシャキシャキとした食感と、フレッシュな風味を感じることができた。
加えて、実施例1及び4~6は、本発明の効果である、タマネギのシャキシャキとした食感と、フレッシュな風味を十分に感じることができた。