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特許7086416ジエン系ゴムラテックス、この製造方法、及びこれを含むコア-シェル構造のグラフト共重合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】ジエン系ゴムラテックス、この製造方法、及びこれを含むコア-シェル構造のグラフト共重合体
(51)【国際特許分類】
   C08F 279/02 20060101AFI20220613BHJP
【FI】
C08F279/02
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020557929
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-05
(86)【国際出願番号】 KR2019017874
(87)【国際公開番号】W WO2020130569
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2020-10-19
(31)【優先権主張番号】10-2018-0166285
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0099410
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】チャン・ホン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ファン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ミン・キム
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0042941(KR,A)
【文献】特開平11-029618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-283/00
C08C 19/00-19/44
C08F 2/00-2/60
C08F 283/02-289/00
C08F 291/00-297/08
C08F 301/00
C08J 3/00-3/28
C08J 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム粒子全体100重量%を基準として、14重量%から26重量%が100nm以上300nm未満の粒径を示し、62重量%から81重量%が300nm以上800nm未満の粒径を示し、5重量%から14重量%が800nm以上1000nm未満の粒径を示し、
不飽和カルボン酸またはこのエステル単量体由来単位及び官能基を有する共単量体由来単位を含み、平均粒径が230nmから300nmである高分子凝集体により肥大化された、ジエン系ゴムラテックス。
【請求項2】
下記数式1で定義される円形度が1.05から1.10である、請求項1に記載のジエン系ゴムラテックス:
[数式1]
【数1】
前記数式1で、Dはラテックス内のi番目の粒子で短軸の長さに対する長軸の長さの比[長軸の長さ/短軸の長さ]である。
【請求項3】
前記高分子凝集体は、不飽和カルボン酸またはこのエステル単量体由来単位を85重量%から92重量%で含み、官能基を有する共単量体由来単位を8重量%から15重量%で含む、請求項に記載のジエン系ゴムラテックス。
【請求項4】
前記不飽和カルボン酸またはこのエステル単量体は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル及びマレイン酸モノ-2-ヒドロキシプロピルからなる群より選択された1種以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のジエン系ゴムラテックス。
【請求項5】
前記官能基を有する共単量体は、メタクリルアミド、アクリルアミドまたはこれらの組み合せである、請求項のいずれか一項に記載のジエン系ゴムラテックス。
【請求項6】
前記ジエン系ゴムラテックスは、固形凝固分を0.01重量%以下で含む、請求項1~のいずれか一項に記載のジエン系ゴムラテックス。
【請求項7】
a)乳化剤及び脂溶性重合開始剤の存在下に第1共役ジエン系単量体を1次重合し、重合転換率30%から40%の1次重合物を製造する段階;
b)前記1次重合物に水溶性重合開始剤を投入して昇温し、重合転換率60%から70%である2次重合物を製造する段階;
c)前記2次重合物に第2共役ジエン系単量体を投入して3次重合し、重合転換率85%から93%の3次重合物を製造する段階;及び
d)前記3次重合物に平均粒径が230nmから300nmである高分子凝集体及び水溶性重合開始剤を投入して4次重合する段階を含み、
前記第1共役ジエン系単量体と第2共役ジエン系単量体は、80から95:5から20の重量比で用いて、
前記高分子凝集体は、第1共役ジエン系単量体と第2共役ジエン系単量体の合計量100重量部を基準として、0.01重量部から1.50重量部で投入する、請求項1~のいずれか一項に記載のジエン系ゴムラテックスの製造方法。
【請求項8】
前記高分子凝集体は、不飽和カルボン酸またはこのエステル単量体及び官能基を有する共単量体の合計量100重量部を基準として、
i)架橋剤0.1から0.2重量部の存在下に不飽和カルボン酸またはこのエステル単量体20から40重量部を重合する段階;及び
ii)前記段階i)の重合転換率が85から95%である時点に不飽和カルボン酸またはこのエステル単量体50から75重量部と官能基を有する共単量体5重量部から10重量部を投入して重合する段階を含む乳化重合により製造された、請求項に記載のジエン系ゴムラテックスの製造方法。
【請求項9】
前記架橋剤は、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、アリールメタクリレート及び1,3-ブチレングリコールジアクリレートからなる群より選択された1種以上である、請求項に記載のジエン系ゴムラテックスの製造方法。
【請求項10】
前記段階b)での昇温は、1次重合時の温度に対して15℃から25℃上昇された温度に昇温する、請求項のいずれか一項に記載のジエン系ゴムラテックスの製造方法。
【請求項11】
前記第1共役ジエン系単量体及び第2共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン及びピペリレンからなる群より選択される1種以上である、請求項~1のいずれか一項に記載のジエン系ゴムラテックスの製造方法。
【請求項12】
ゴム質重合体コア;及び
前記コアを取り囲んで芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位を含むシェルを含み、
前記ゴム質重合体コアは、コア100重量部に対し、請求項1~のいずれか一項に記載の平均粒径が600nmから800nmであるジエン系ゴムラテックスを3重量部から5重量部及び平均粒径が310nmから330nmであるジエン系ゴムラテックスを95重量部から97重量部で含むコア-シェル構造のグラフト共重合体。
【請求項13】
前記共重合体は、前記コアを40重量%から60重量%;及び、シェルを40重量%から60重量%で含み、
前記シェルは、芳香族ビニル系単量体由来単位とビニルシアン系単量体由来単位を3:1から2:1の重量比で含む、請求項1に記載のコア-シェル構造のグラフト共重合体。
【請求項14】
前記共重合体は、固形凝固分が0.03重量%以下である、請求項1又は1に記載のコア-シェル構造のグラフト共重合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年12月20日付韓国特許出願第10-2018-0166285号及び2019年8月14日付韓国特許出願第10-2019-0099410号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、高分子凝集体を含む超大粒径のジエン系ゴムラテックス、この製造方法、及びこれを含む衝撃強度及び表面特性に優れたコア-シェル構造のグラフト共重合体に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系グラフト樹脂(以下、ABSグラフト樹脂)は、耐衝撃性、機械的強度、成形性、光沢度などの物性が比較的良好なので、電気/電子部品、事務用機器、自動車部品などに広範囲に用いられている。
【0004】
ABSグラフト樹脂は、通常、乳化グラフト重合方法を介して製造されており、衝撃強度を付与するために大粒径のジエン系ゴムラテックスまたは小粒径のジエン系ゴムラテックスを乳化重合法で製造した後、ここに芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を添加し、乳化グラフト重合法でグラフト反応させてアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系グラフト共重合体を製造し、このグラフト共重合体にスチレン-アクリロニトリル共重合体(以下、SAN)を混合して最終的に熱可塑性ABS系樹脂が製造される。
【0005】
しかし、大粒径のジエン系ゴムラテックスを用いる場合、表面光沢の改善に限界があって衝撃強度が酷く低下するという問題があり、小粒径のジエン系ゴムラテックスを用いる場合には大粒径と反対の現象があるため、これを改善すべく、大粒径及び小粒径のジエン系ゴムラテックスを混合して使用する方案が提示されたが、衝撃強度及び表面光沢のいずれも充分に改善された効果を奏することができず、射出条件により物性が大きく変わるという問題があった。
【0006】
このような問題を解決するため、平均粒径が異なる2種のジエン系ゴムラテックスでABSグラフト樹脂を重合した後、前記2種のジエン系ゴムラテックスに比べてさらに大きい平均粒径を有するジエン系ゴムラテックスを前記樹脂の圧出時に混合するか、平均粒径が異なる3種のジエン系ゴムラテックスを前記樹脂の圧出時に混合する方案が提示されたが、各ジエン系ゴムラテックスを別途製造しなければならないため、経済的及び時間的損失が大きいという短所がある。
【0007】
また、通常、大粒径のジエン系ゴムラテックスは、1)酸、アルカリなどを用いた重合方法、2)無機電解質の量を増量するか乳化剤の量を大きく減量した重合方法、3)ラテックスを製造し、この温度を低下させて凝集させる方法、4)ラテックスの製造後、機械的、化学的に凝集させて肥大化する方法などを用いて製造されており、このような方法は反応時間が非常に長く、固形凝固分が多く発生し、ラテックスが肥大化するために後工程処理を経なければならないので、生産性が落ちるという問題がある。
【0008】
したがって、ABSグラフト樹脂の他の物性を低下させなくとも、衝撃強度及び表面光沢をバランスよく向上させながら経済的及び生産的利点も得ることができる方法が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来の技術の問題を解決するために案出されたものであって、固形凝固分が少ないラテックス安定性に優れたジエン系ゴムラテックスを提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、イン・サイチュ(in situ)方式を用いた前記ジエン系ゴムラテックスの製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
併せて、本発明は、前記ジエン系ゴムラテックスを含む、衝撃強度及び表面光沢に優れたコア-シェル構造のグラフト共重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明は、ゴム粒子全体100重量%を基準として、14重量%から26重量%が100nm以上300nm未満の粒径を示し、62重量%から81重量%が300nm以上800nm未満の粒径を示し、5重量%から14重量%が800nm以上1000nm未満の粒径を示すジエン系ゴムラテックスを提供する。
【0013】
また、本発明は、乳化剤及び脂溶性重合開始剤の存在下に第1共役ジエン系単量体を1次重合し、重合転換率30%から40%の1次重合物を製造する段階(段階a);前記1次重合物に水溶性重合開始剤を投入して昇温し、重合転換率60%から70%である2次重合物を製造する段階(段階b);前記2次重合物に第2共役ジエン系単量体を投入して3次重合し、重合転換率85%から93%の3次重合物を製造する段階(段階c);及び前記3次重合物に平均粒径が230nmから300nmである高分子凝集体及び水溶性重合開始剤を投入して4次重合する段階(段階d)を含み、前記第1共役ジエン系単量体と第2共役ジエン系単量体は、80から95:5から20の重量比で用いて、前記高分子凝集体は、第1共役ジエン系単量体と第2共役ジエン系単量体の合計量100重量部を基準として、0.01重量部から1.50重量部で投入するものである前記ジエン系ゴムラテックスの製造方法を提供する。
【0014】
併せて、本発明は、ゴム質重合体コア;及び前記コアを取り囲んで芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位を含むシェルを含み、前記ゴム質重合体コアは、前記平均粒径が600nmから800nmであるジエン系ゴムラテックス3重量部から5重量部及び平均粒径が310nmから330nmであるジエン系ゴムラテックスを95重量部から97重量部で含むものであるコア-シェル構造のグラフト共重合体を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるジエン系ゴムラテックスは、固形凝固分が少なく、ラテックス安定性に優れ、よって、前記ジエン系ゴムラテックスを含むコア-シェル構造のグラフト共重合体の衝撃強度及び表面光沢を効果的に改善させることができる。
【0016】
本発明によるジエン系ゴムラテックスの製造方法は、イン・サイチュ方式で製造されることにより経済的であり、架橋剤の存在下に製造された平均粒径が230nmから300nmである高分子凝集体を用いて、重合転換率により単量体を含む反応物を分割投入して多段階重合で行うことにより、固形凝固分が少なく、ラテックス安定性に優れ、球形粒子の形態を有するジエン系ゴムラテックスを製造することができる。
【0017】
また、本発明によるコア-シェル構造のグラフト共重合体は、前記ジエン系ゴムラテックスを含むことにより優れた引張強度及び流動指数を有しながら衝撃強度及び表面光沢が改善され得る。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に対する理解を助けるために本発明をさらに詳細に説明する。
【0019】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられた用語や単語は、通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に適合する意味と概念として解釈されなければならない。
【0020】
また、本発明で用いられる用語及び測定方法は、別途定義しない限り下記のように定義されてよい。
【0021】
[用語]
本発明で用いる用語「ゴムラテックス(rubber latex)」は、単量体を乳化重合して得られる反応生成物であって、ゴム粒子が分散されている水性媒質を示すものであってよく、例えば、ジエン系ゴムラテックスは、共役ジエン系単量体を含む単量体を乳化重合して得られた反応生成物を意味することができる。
【0022】
本発明で用いる用語「ゴム(rubber)」は、ゴム状の弾性を有する、単量体が重合して形成された高分子鎖を意味することができる。
【0023】
本発明で用いる用語「第1共役ジエン系単量体」及び「第2共役ジエン系単量体」は同一の共役ジエン系単量体を示すものであって、前記「第1」及び「第2」は共役ジエン系単量体の投入時点を区分するためのものである。
【0024】
本発明で用いる用語「高分子凝集体」は、重合体鎖が互いに架橋されて凝集されている状態を示すものである。
【0025】
本発明で用いる用語「円形度」は、ラテックス内の粒子の形状がどの程度に球形に近いのかを示す指標であって、球形度(spheroidicity)とも称し、ラテックス内の50個の粒子に対して粒子の中心を通る長軸の長さと粒子の中心を通って前記長軸と垂直をなす短軸の長さを測定し、各粒子における短軸の長さに対する長軸の長さの比(長軸の長さ/短軸の長さ)を得て、これらの各粒子の前記短軸の長さに対する長軸の長さの比の平均値として定義し、数値が1に近いほど各粒子の長軸の長さと短軸の長さが近接していることを示し、結果的にラテックスをなす粒子が球形に近いことを意味することができる。
【0026】
[測定方法]
本発明で、「平均粒径(nm)」及び「粒径による重量%」は、ゴムラテックス1gを蒸留水100gに希釈させた後、CHDF装置(Capillary Hydrodynamic Fractionation、Matec Applied Science、Model 1100)を用いて測定した。ここで、前記CHDF装置は、多孔性または非多孔性の充填剤が充填された毛細管カラム(capillary column)を用いて粒子がカラムから溶出される時間差を介して粒子の大きさと分布を測定することができる装置であって、測定しようとする試料を前記カラムに注入して溶出時間を測定し、これを粒子の大きさが分かっている単分散粒子を大きさ別にカラムに通過させて溶出時間を測定し、ユニバーサルキャリブレーションな基準値との比較を介して試料内の全体粒子に対する平均粒径と重量%による粒径分布度を測定することができる。
【0027】
本発明で、「固形凝固分(重量%)」は、反応に用いられた反応物の総重量100重量%に対する反応生成物内の凝固物の比率を示すものであって、反応生成物の安定性を示す尺度として用いられ、固形凝固分が小さい数値であるほど反応生成物の安定性は高いと評価する。具体的に、前記固形凝固分は、ジエン系ゴムラテックスまたはコア-シェル構造のグラフト共重合体を100メッシュ(mesh)の鉄網に濾した後、鉄網の上に通過できなかった反応生成物を100℃の熱風乾燥器で1時間の間乾燥して凝固物の重量を測定し、下記数式2で計算した。
[数式2]
固形凝固分(重量%)=[凝固物の重量(g)/反応物の総重量(g)]×100
【0028】
本発明で、「重合転換率(%)」は、反応に投入された単量体が重合体に転換された程度を示すものであって、重合物1.5gを採取して150℃の熱風乾燥器内で15分間乾燥した後、その重量を測定して総固形分含量(TSC)を求め、これを用いて下記数式3で計算した。ここで、重合物は、反応生成物が反応器に投入されて反応開始後に生成される全ての物質を示すものであって、採取の時点により重合物をなす成分及び比率が異なり得る。
[数式3]
重合転換率(%)=[総固形分含量(g)/投入された単量体総量(g)]×100
【0029】
本発明で、「アイゾッド衝撃強度(Izod impact strength、kgf・cm/cm)」は、厚さ1/4’’試片を製作し、これを用いてASTM D256により衝撃強度測定器(TINIUS OLSEN)を用いて測定した。
【0030】
本発明で、「表面光沢(Gloss)」は、ASTM D528によりGloss meterで45゜の角度で測定した。
【0031】
本発明は、ビニルシアン系単量体-共役ジエン系単量体-芳香族ビニル系単量体の共重合体に適用され、この機械的強度と成形性のような他の物性を低下させなくとも表面光沢及び衝撃強度を向上させることができる、ジエン系ゴムラテックスを提供する。
【0032】
本発明の一実施形態による前記ジエン系ゴムラテックスは、後述のイン・サイチュ方式の製造方法を介して製造されたものであって、トリモーダルゴムラテックスであってよい。
【0033】
具体的に、前記ジエン系ゴムラテックスは、ゴム粒子全体100重量%を基準として、14重量%から26重量%が100nm以上300nm未満の粒径を示し、62重量%から81重量%が300nm以上800nm未満の粒径を示し、5重量%から14重量%が800nm以上1000nm未満の粒径を示すことを特徴とする。
【0034】
また、本発明の一実施形態による前記ジエン系ゴムラテックスは、下記数式1で定義される円形度が1.05から1.10であってよい。
[数式1]
【数1】
【0035】
前記数式1で、Dは、ラテックス内のi番目の粒子で短軸の長さに対する長軸の長さの比[長軸の長さ/短軸の長さ]である。
【0036】
また、本発明の一実施形態による前記ジエン系ゴムラテックスは、不飽和カルボン酸またはこのエステル単量体由来単位と官能基を有する共単量体由来単位を含み、平均粒径が230nmから300nmである高分子凝集体により肥大化された、平均粒径が600nmから800nmであるものであってよい。
【0037】
一般的に、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系グラフト樹脂(以下、ABSグラフト樹脂)は、衝撃強度の付与のために前記樹脂の製造時または成形時にゴムラテックスを投入している。しかし、大粒径のゴムラテックスを用いる場合には、衝撃強度が多少上昇はするがむしろ表面光沢が大きく低下し、小粒径のゴムラテックスを用いる場合には、表面光沢が改善されはするが衝撃強度が低下するという問題があり、大粒径及び小粒径のゴムラテックスをともに用いる場合には、衝撃強度及び表面光沢の改善効果も些細であり、成形の条件により発現される物性が異なって物性再現性が低いという問題がある。
【0038】
しかし、本発明による前記ジエン系ゴムラテックスは、架橋剤の存在下に製造された高分子凝集体を用いる後述のイン・サイチュの製造方法により製造されることにより、ジエン系ゴムラテックスをなす粒子の一部が前記高分子凝集体と互いに凝集されて肥大化し、よって、平均粒径が600nmから800nmである超大粒径の粒子特性を有しながら球形の粒子形態を有することができ、その上、超大粒径のゴム粒子、大粒径のゴム粒子及び小粒径のゴム粒子のトリモーダル特性を有することができ、よって、前記ラテックスを含む樹脂、例えば、コア-シェル構造のグラフト共重合体の機械的強度と成形性のような他の物性に悪影響を及ぼさずとも、表面光沢及び衝撃強度を効果的に向上させることができる。
【0039】
以下、本発明による前記ジエン系ゴムラテックスに対して具体的に説明する。
【0040】
本発明の一実施形態において、前記ジエン系ゴムラテックスは、共役ジエン系単量体を含む単量体を後述の製造方法で乳化重合して製造された反応生成物であって、共役ジエン系単量体由来単位のみを含む共役ジエンゴムラテックスであるか、共役ジエン系単量体由来単位と共単量体由来単位を含む二成分系以上のゴムラテックスであってよい。
【0041】
具体的に、前記ジエン系ゴムラテックスは、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ピペリレンゴム、ブタジエン-スチレンゴム及びブタジエン-アクリロニトリルゴムからなる群より選択された1種以上を含むものであってよい。
【0042】
また、前記ジエン系ゴムラテックスは、平均粒径が600nmから800nmである超大粒径であってよく、この場合、前記ラテックスを含む樹脂の表面光沢を大きく向上させることができる。
【0043】
また、前記ジエン系ゴムラテックスは、前記平均粒径を有しながら、前述したとおり、ゴム粒子全体100重量%を基準として、14重量%から26重量%が100nm以上300nm未満の粒径を示し、62重量%から81重量%が300nm以上800nm未満の粒径を示し、5重量%から14重量%が800nm以上1000nm未満の粒径を示すトリモーダル粒子特性を示すもの、具体的には、ゴム粒子全体100重量%を基準として、17重量%から21重量%が100nm以上300nm未満の粒径を示し、68重量%から71重量%が300nm以上800nm未満の粒径を示し、8重量%から12重量%が800nm以上1000nm未満の粒径を示すトリモーダル粒子特性を示すものであってよく、この場合、前記ラテックスを含む樹脂の機械的強度及び成形性に影響を与えなくとも表面光沢と衝撃強度を向上させることができる。
【0044】
より具体的に、本発明の一実施形態による前記ジエン系ゴムラテックスは、重合の最後の段階に高分子凝集体を用いる後述のイン・サイチュの製造方法により製造されたものであって、ジエン系ゴムラテックスをなすゴム粒子のうち少なくとも一部が前記高分子凝集体と凝集されて肥大化し、よって、前記トリモーダル粒子特性と前記範囲の平均粒径を有しながら粒子が均一な球形を有することができる。
【0045】
ここで、前記高分子凝集体は、ジエン系ゴムラテックス内のゴム粒子を肥大化させるものであって、230nmから300nmの平均粒径を有することにより前記ジエン系ゴムラテックスの平均粒径を前記超大粒径に容易に誘導することができる。
【0046】
また、前記高分子凝集体は、後述の製造方法、すなわち架橋剤の存在下に製造されることにより、高分子凝集体内の重合体鎖がより堅固に架橋でき、よって、前記高分子凝集体から肥大化されたジエン系ラテックスの粒子が球形の粒子形態を有するようにすることができるので、前記ジエン系ラテックスが固形凝固分を0.01重量%以下で含むようにすることができ、結果的にラテックス安定性を改善させることができる。
【0047】
また、前記高分子凝集体は、不飽和カルボン酸単量体由来単位;または前記不飽和カルボン酸エステル単量体由来単位;を含む重合体であるか、不飽和カルボン酸単量体由来単位と不飽和カルボン酸エステル単量体由来単位を含む共重合体;または不飽和カルボン酸またはこのエステル単量体由来単位及び官能基を有する共単量体由来単位を含む共重合体であってよく、具体的には、前記高分子凝集体は、不飽和カルボン酸またはこのエステル単量体由来単位を82重量%から92重量%で含み、官能基を有する共単量体由来単位を8重量%から18重量%で含む共重合体であってよい。この場合、これを含むジエン系ゴムラテックスをなす粒子の肥大化が容易であり得る。
【0048】
ここで、前記不飽和カルボン酸またはこのエステル単量体は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル及びマレイン酸モノ-2-ヒドロキシプロピルからなる群より選択された1種以上のものであってよい。
【0049】
また、前記官能基を有する共単量体は、前記不飽和カルボン酸またはこのエステル単量体と共重合性物質でありながら前記官能基を含むものであってよく、このとき、前記官能基は、アミド基、アルコール基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基及びホウ酸基からなる群より選択された1種以上であってよく、例示的に、前記共単量体は、メタクリルアミド、アクリルアミドまたはこれらの組み合せであってよい。
【0050】
また、本発明は、前記ジエン系ゴムラテックスの製造方法を提供する。
【0051】
本発明の一実施形態による前記製造方法は、乳化剤及び脂溶性重合開始剤の存在下に第1共役ジエン系単量体を1次重合し、重合転換率30%から40%の1次重合物を製造する段階(段階a);前記1次重合物に水溶性重合開始剤を投入して昇温し、重合転換率60%から70%である2次重合物を製造する段階(段階b);前記2次重合物に第2共役ジエン系単量体を投入して3次重合し、重合転換率85%から93%の3次重合物を製造する段階(段階c);及び前記3次重合物に平均粒径が230nmから300nmである高分子凝集体及び水溶性重合開始剤を投入して4次重合する段階(段階d)を含み、前記第1共役ジエン系単量体と第2共役ジエン系単量体は、80から95:5から20の重量比で用いて、前記高分子凝集体は、第1共役ジエン系単量体と第2共役ジエン系単量体の合計量100重量部を基準として、0.01重量部から1.50重量部で投入することを特徴とする。
【0052】
前記段階aは、第1共役ジエン系単量体を重合して重合転換率30%から40%の1次重合物を製造するための段階であって、乳化剤及び脂溶性重合開始剤の存在下に第1共役ジエン系単量体を1次重合して行うものであってよい。
【0053】
また、前記1次重合で、必要に応じて、第1共役ジエン系単量体の他、これと共重合性である共単量体を前記第1共役ジエン系単量体とともに重合することができ、前記共単量体は、例えば、芳香族ビニル系単量体、ビニルシアン系単量体またはこれらの組み合せであってよい。もし、前記共単量体をともに重合する場合、前記共単量体は製造方法に用いる単量体総100重量部に対して20重量部以下で用いるものであってよい。
【0054】
前記第1共役ジエン系単量体は、後述の第2共役ジエン系単量体と同一のものであってよく、具体的に、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン及びピペリレンからなる群より選択される1種以上のものであってよい。
【0055】
また、前記芳香族ビニル系単量体は、スチレン、α-メチルスチレン、α-エチルスチレン、p-メチルスチレン、o-メチルスチレン、o-t-ブチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン、トリクロロスチレン及びこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上のものであってよく、前記ビニルシアン系単量体は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル及びこれらの誘導体からなる群より選択される1種以上であってよく、ここで誘導体は、元の化合物をなす水素原子のうち一つ以上がハロゲン基、アルキル基またはヒドロキシ基で置換された構造の化合物を示すものであってよい。
【0056】
前記乳化剤は、特に限定するものではないが、製造方法に用いる単量体総100重量部を基準として、1.0重量部から5.0重量部、具体的には、1.0重量部から3.0重量部で用いられてよい。
【0057】
また、前記乳化剤は、特に限定するものではないが、例えば、ロジン酸アルカリ塩、脂肪酸鹸化物、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのような陰イオン系吸着型乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどの非イオン系乳化剤、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ドデシルアリルスルホコハク酸ナトリウム、C16-18アルケニルコハク酸ジカリウム塩、アクリルアミドステアリン酸ナトリウムなどの反応型乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルアンモニウムサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートエステルアンモニウム塩などの高分子型反応型乳化剤などを単独でまたは混合して用いることができる。
【0058】
また、前記脂溶性重合開始剤は、特に限定するものではないが、製造方法に用いる単量体総100重量部を基準として、0.1重量部から0.5重量部、具体的には、0.1重量部から0.3重量部で用いることができ、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、3級ブチルヒドロペルオキシド、パラメタンヒドロペルオキシド及びベンゾイルペルオキシドからなる群より1種以上を用いることができる。
【0059】
また、前記1次重合は、必要に応じて、電解質、分子量調節剤及び酸化-還元触媒を追加で用いることができる。
【0060】
前記電解質は、特に限定するものではないが、例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、ピロリン酸四ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二カリウム及びリン酸水素二ナトリウムからなる群より選択される1種以上のものであってよく、単量体総100重量部を基準として、0.2重量部から2重量部で用いることができる。
【0061】
前記分子量調節剤は、特に限定するものではないが、メルカプタン類などの通常公知された種類を用いてよく、例示的に3級ドデシルメルカプタンを用いることができ、単量体総100重量部を基準として、0.2重量部から0.6重量部で用いることができる。
【0062】
また、前記酸化-還元触媒は、追加の重合開始剤の役割を担うものであって、特に限定するものではないが、例えば、ホルムアルデヒドナトリウム、スルホキシレート、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、硫酸第一鉄、デキストロース、ピロリン酸ナトリウム及び亜硫酸ナトリウムからなる群より選択された1種以上を用いることができ、単量体総100重量部を基準として、0.001重量部から0.1重量部で用いることができる。
【0063】
前記段階bは、1次重合物を重合し続けて重合転換率60%から70%である2次重合物を製造するための段階であって、前記1次重合物に水溶性重合開始剤を投入し、昇温して2次重合して行うことができる。ここで、前記昇温は、1次重合時の温度に対して15℃から25℃上昇された温度に昇温することであってよく、したがって、2次重合は、1次重合に対して15℃から25℃高い温度で行うことであってよい。
【0064】
前記水溶性重合開始剤は、特に限定するものではないが、製造方法に用いる単量体総100重量部を基準として、0.1重量部から0.5重量部、具体的には、0.1重量部から0.3重量部で用いることができ、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム及び過硫酸アンモニウムからなる群より選択された1種以上を用いることができる。
【0065】
前記段階cは、2次重合物から重合転換率85%から93%である3次重合物を製造するための段階であって、前記2次重合物に第2共役ジエン系単量体を投入し、3次重合して行うことであってよい。
【0066】
一方、本発明の一実施形態による前記製造方法は、前記第1共役ジエン系単量体と第2共役ジエン系単量体を80から95:5から20の重量比、具体的には、85から90:10から15の重量比で用いることであってよい。
【0067】
また、前記段階dは、3次重合物からジエン系ゴムラテックスを製造するための段階であって、前記3次重合物に平均粒径が230nmから300nmである高分子凝集体及び水溶性重合開始剤を投入し、4次重合して行うことであってよい。このとき、前記高分子凝集体は、重合に用いられた単量体総100重量部、すなわち、第1共役ジエン系単量体と第2共役ジエン系単量体の合計量100重量部を基準として、0.01重量部から1.50重量部で用いることができる。この場合、ジエン系ゴムラテックス内のゴム粒子が適切な比率で高分子凝集体と凝集されて肥大化してよく、結果的に前述のとおりの平均粒径及びトリモーダル特性を有するジエン系ゴムラテックスが製造され得る。
【0068】
段階dでの前記水溶性重合開始剤は、特に限定するものではないが、製造方法に用いる単量体総100重量部を基準として、0.05重量部から0.2重量部で用いることができ、具体的な物質は前述したとおりである。
【0069】
また、前記高分子凝集体は、下記段階を含む乳化重合により製造されたものであってよい:
i)架橋剤0.1重量部から0.2重量部の存在下に不飽和カルボン酸またはこのエステル単量体20重量部から40重量部を重合する段階;及び
ii)前記段階i)の重合転換率が85%から95%である時点に不飽和カルボン酸またはこのエステル単量体50重量部から75重量部と官能基を有する共単量体5重量部から10重量部を投入して重合する段階。
【0070】
一方、前記高分子凝集体の製造時に用いられる物質の重量部は、不飽和カルボン酸またはこのエステル単量体及び官能基を有する共単量体の合計量100重量部を基準として示したものである。
【0071】
前記段階i)は、不飽和カルボン酸またはこのエステル単量体を重合してシードの役割ができる予備重合物を製造するための段階であって、架橋剤0.1重量部から0.2重量部の存在下に不飽和カルボン酸またはこのエステル単量体20重量部から40重量部を重合して行うことができる。
【0072】
前記架橋剤は、高分子凝集体の製造時に前記凝集体のコア部分に導入されて高分子凝集体をなす重合体鎖間の架橋をより容易になすように補助する役割を担うものであって、例えば、不飽和カルボン酸またはこのエステル単量体が形成する重合体鎖がより強い結合をなすことができるように誘導し、その後投入される単量体と前記重合体鎖の間の結合がより容易になされ得るようにすることができる。すなわち、前記架橋剤により高分子凝集体内の重合体鎖がより堅固に架橋され得、よって、前記高分子凝集体を含むジエン系ラテックスの粒子が均一な球形を有することができるので、ラテックス安定性に優れ、結果的に前記ジエン系ラテックスを含むコア-セル構造のグラフト共重合体の表面光沢がより向上され得る。また、前記架橋剤は、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、アリールメタクリレート及び1,3-ブチレングリコールジアクリレートからなる群より選択された1種以上を用いることができる。
【0073】
また、前記段階i)は、乳化剤、重合開始剤及び分子量調節剤をさらに用いることができ、前記乳化剤は0.05重量部から0.06重量部、重合開始剤は0.1重量部から0.5重量部、分子量調節剤は0.1から0.3重量部で用いることであってよい。また、前記乳化剤及び分子量調節剤の具体的な物質は前述したとおりであり、前記重合開始剤は、前述の脂溶性重合開始剤及び水溶性重合開始剤を含んでよく、具体的には水溶性重合開始剤と同じであってよい。
【0074】
前記段階ii)は、段階i)で形成された予備重合物から高分子凝集体を製造するための段階であって、前記段階i)の重合転換率が85%から95%である時点に不飽和カルボン酸またはこのエステル単量体50重量部から75重量部と官能基を有する共単量体5重量部から10重量部を投入し重合して行うことであってよく、ここで、前記不飽和カルボン酸またはこのエステル単量体と官能基を有する共単量体は、それぞれ投入するか、この2つの混合物を製造して投入するものであってよく、一括して投入するか一定時間の間連続して投入するものであってよい。
【0075】
また、前記段階i)の重合転換率が85%から95%である時点は、前記予備重合物の重合転換率が85%から95%であることを示すものであってよい。
【0076】
また、前記段階ii)は、乳化剤及び重合開始剤を用いてよく、この場合、乳化剤は0.05重量部から0.06重量部、重合開始剤は0.5重量部から2.0重量部で用いることであってよく、具体的な物質は段階i)で説明したとおりである。
【0077】
また、前記段階i)は、60℃から80℃の温度範囲で行うことであってよく、前記段階ii)は、段階i)と同一の温度で行うことであってよい。
【0078】
本発明の一実施形態による高分子凝集体は、架橋剤の存在下、前記製造方法で製造されることにより、平均粒径が230nmから300nmでありながら、高分子凝集体内の重合体鎖がより堅固に架橋され得、よって、これを含むジエン系ゴムラテックスのゴム粒子が超大粒径の平均粒径を有しながら一定の球形であり得るため、ラテックス安定性に優れる。
【0079】
一方、前記段階dは、必要に応じて、乳化剤をさらに用いることができ、この場合、乳化剤は、単量体総100重量部を基準として、0.1重量部から0.5重量部で用いることができ、具体的な物質は前述したとおりである。
【0080】
また、本発明によるジエン系ゴムラテックスの製造方法で、2次重合を除外した1次重合、3次重合及び4次重合は、目的に応じて適切に調節された温度条件で行ってよく、例えば、1次重合、3次重合及び4次重合は同一であるか異なる温度条件で行ってよく、具体的には、3次重合及び4次重合は1次重合に対して上昇された温度条件で行うことであってよい。より具体的に、前記2次重合は、1次重合に対して15℃から25℃上昇された温度条件で行ってよく、3次重合及び4次重合は、2次重合と同一の温度条件で行うことであってよい。このとき、前記1次重合は、40℃から70℃の温度条件で行うことであってよく、2次重合、3次重合及び4次重合は、70℃から85℃の温度条件で行ってよい。すなわち、前記2次重合は、70℃から85℃の温度範囲であり、ただし、1次重合に対して15℃から25℃上昇された温度で行うことであってよい。
【0081】
本発明による前記製造方法は、架橋剤の存在下に製造された、平均粒径が230nmから300nmである高分子凝集体を用いて、重合転換率に従って単量体を含んで反応物を分割して投入し、多段階重合で行うことにより、固形凝固分が少なく、ラテックス安定性に優れ、粒子の形態が均一なジエン系ゴムラテックスを製造することができる。
【0082】
併せて、本発明は、前記ジエン系ゴムラテックスを含むコア-シェル構造のグラフト共重合体を提供する。
【0083】
本発明の一実施形態による前記共重合体は、ゴム質重合体コア;及び前記コアを取り囲んで芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位を含むシェルを含み、前記ゴム質重合体コアは、前記平均粒径が600nmから800nmであるジエン系ゴムラテックスを3重量部から5重量部及び平均粒径が310nmから330nmであるジエン系ゴムラテックスを95重量部から97重量部で含むことを特徴とする。
【0084】
具体的に、前記共重合体は、前記コアを40重量%から60重量%;及びシェルを40重量%から60重量%で含み、前記シェルは、芳香族ビニル系単量体由来単位とビニルシアン系単量体由来単位を3:1から2:1の重量比で含むものであってよく、この場合、共重合体の耐衝撃性、機械的特性及び成形性により優れる。
【0085】
一方、本発明の一実施形態による前記共重合体は、前記ジエン系ゴムラテックスを含むゴム質重合体コアにビニルシアン系単量体及び芳香族ビニル系単量体を添加し、乳化グラフト重合して製造されたものであってよく、よって、前記ジエン系ゴムラテックスを含むことにより、耐衝撃性、機械的特性及び成形性に優れながら表面光沢及び衝撃強度に優れることができる。
【0086】
具体的に、前記共重合体は、固形凝固分が0.03重量%以下のものであってよい。
【0087】
以下、実施例及び実験例により本発明をよりさらに詳しく説明する。しかし、下記実施例及び実験例は本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらのみに限定されるものではない。
【実施例
【0088】
高分子凝集体の製造
製造例1
窒素置換された重合反応器(オートクレーブ)に、イオン交換水62重量部、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム0.06重量部、エチルアクリレート30重量部、メタクリル酸1重量部、エチレングリコールジメタクリレート0.15重量部、3級ドデシルメルカプタン(TDDM)0.15重量部、過硫酸カリウム0.3重量部を一括して投入し、70℃で乳化重合した。重合中、重合転換率が90%となったとき、ブチルアクリレート62重量部、メタクリルアミド7重量部、3級ドデシルメルカプタン0.3重量部を混合して4時間の間一定速度で投入し、同時にこれと分離して過硫酸カリウム1.3重量部、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム0.06重量部を5時間の間一定速度で投入しながら70℃で乳化重合した。重合転換率が99%以上となったとき重合を終了し、平均粒径251nmである高分子凝集体を製造した。
【0089】
製造例2
窒素置換された重合反応器(オートクレーブ)に、イオン交換水62重量部、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム0.05重量部、エチルアクリレート30重量部、メタクリル酸1重量部、エチレングリコールジメタクリレート0.15重量部、3級ドデシルメルカプタン(TDDM)0.15重量部、過硫酸カリウム0.3重量部を一括して投入し、70℃で乳化重合した。重合中、重合転換率が90%となったとき、ブチルアクリレート62重量部、メタクリルアミド7重量部、3級ドデシルメルカプタン0.3重量部を混合して4時間の間一定速度で投入し、同時にこれと分離して過硫酸カリウム1.3重量部、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム0.06重量部を5時間の間一定速度で投入しながら70℃で乳化重合した。重合転換率が99%以上となったとき重合を終了し、平均粒径280nmである高分子凝集体を製造した。
【0090】
比較製造例1
窒素置換された重合反応器(オートクレーブ)に、イオン交換水62重量部、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム0.08重量部、エチルアクリレート30重量部、メタクリル酸1重量部、エチレングリコールジメタクリレート0.15重量部、3級ドデシルメルカプタン(TDDM)0.15重量部、過硫酸カリウム0.3重量部を一括して投入し、70℃で乳化重合した。重合中、重合転換率が90%となったとき、ブチルアクリレート62重量部、メタクリルアミド7重量部、3級ドデシルメルカプタン0.3重量部を混合して4時間の間一定速度で投入し、同時にこれと分離して過硫酸カリウム1.3重量部、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム0.08重量部を5時間の間一定速度で投入しながら70℃で乳化重合した。重合転換率が99%以上となったとき重合を終了し、平均粒径211nmである高分子凝集体を製造した。
【0091】
比較製造例2
窒素置換された重合反応器(オートクレーブ)に、イオン交換水62重量部、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム0.04重量部、エチルアクリレート30重量部、メタクリル酸1重量部、エチレングリコールジメタクリレート0.15重量部、3級ドデシルメルカプタン(TDDM)0.15重量部、過硫酸カリウム0.3重量部を一括して投入し、70℃で乳化重合した。重合中、重合転換率が90%となったとき、ブチルアクリレート62重量部、メタクリルアミド7重量部、3級ドデシルメルカプタン0.3重量部を混合して4時間の間一定速度で投入し、同時にこれと分離して過硫酸カリウム1.1重量部、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム0.05重量部を5時間の間一定速度で投入しながら70℃で乳化重合した。重合転換率が99%以上となったとき重合を終了し、平均粒径327nmである高分子凝集体を製造した。
【0092】
比較製造例3
製造例1において、エチレングリコールジメタクリレートを用いていないことを除いては、前記製造例1と同様に行って平均粒径267nmである高分子凝集体を製造した。
【0093】
ポリブタジエンゴムラテックスの製造
実施例1
窒素置換された重合反応器(オートクレーブ)に、1,3-ブタジエン100重量部を基準として、イオン交換水75重量部、1,3-ブタジエン90重量部、脂肪酸鹸化物3重量部、炭酸カリウム0.1重量部、3級ドデシルメルカプタン(TDDM)0.1重量部、3級ブチルヒドロペルオキシド0.15重量部、デキストロース0.06重量部、ピコリン酸ナトリウム0.005重量部及び硫酸第一鉄0.0025重量部を一括して投与し、55℃で重合して重合転換率が35%である1次重合物を製造し、ここに過硫酸カリウム0.3重量部を投入して72℃に昇温させた後、重合を続けて重合転換率が65%である2次重合物を製造した。ここに1,3-ブタジエン10重量部を投入して重合転換率が90%となるまで重合を進め、製造例1で製造された高分子凝集体0.5重量部、過硫酸カリウム0.1重量部及び脂肪酸鹸化物0.3重量部を投入して反応させ、重合転換率が95%に到達したとき反応を終了し、平均粒径763nmであるポリブタジエンゴムラテックスを製造した。このとき、総重合時間は16時間かかった。
【0094】
実施例2
実施例1において、製造例1で製造された高分子凝集体の代りに、製造例2で製造された高分子凝集体を0.5重量部で投入したことを除いては、実施例1と同様に行って平均粒径758nmであるポリブタジエンゴムラテックスを製造した。
【0095】
実施例3
実施例1において、製造例1で製造された高分子凝集体を0.01重量部で投入したことを除いては、実施例1と同様に行って平均粒径751nmであるポリブタジエンゴムラテックスを製造した。
【0096】
実施例4
実施例1において、製造例1で製造された高分子凝集体を1.5重量部で投入したことを除いては、実施例1と同様に行って平均粒径775nmであるポリブタジエンゴムラテックスを製造した。
【0097】
比較例1
実施例1において、製造例1で製造された高分子凝集体の代りに、比較製造例1で製造された高分子凝集体を0.5重量部で投入したことを除いては、実施例1と同様に行って平均粒径480nmであるポリブタジエンゴムラテックスを製造した。
【0098】
比較例2
実施例1において、製造例1で製造された高分子凝集体の代りに、比較製造例2で製造された高分子凝集体を0.5重量部で投入したことを除いては、実施例1と同様に行って平均粒径998nmであるポリブタジエンゴムラテックスを製造した。
【0099】
比較例3
実施例1において、製造例1で製造された高分子凝集体を0.005重量部で投入したことを除いては、実施例1と同様に行って平均粒径270nmであるポリブタジエンゴムラテックスを製造した。
【0100】
比較例4
実施例1において、製造例1で製造された高分子凝集体を2.0重量部で投入したことを除いては、実施例1と同様に行って平均粒径1101nmであるポリブタジエンゴムラテックスを製造した。
【0101】
比較例5
実施例1において、製造例1で製造された高分子凝集体の代りに、比較製造例3で製造された高分子凝集体を0.5重量部で投入したことを除いては、実施例1と同様に行って平均粒径572nmであるポリブタジエンゴムラテックスを製造した。このとき、総重合時間は16.5時間かかった。
【0102】
比較例6
実施例1において、高分子凝集体の投入時、過硫酸カリウム及び脂肪酸鹸化物を投入していないことを除いては、実施例1と同様に行って平均粒径994nmであるポリブタジエンゴムラテックスを製造した。このとき、総重合時間は18時間かかった。
【0103】
実験例1
前記実施例1から4及び比較例1から6で製造された各ラテックスのラテックス安定性、固形凝固分の含量、平均粒径と粒子分布(粒径による重量比率)及び粒子円形度を比較分析し、結果を下記表1に示した。
【0104】
1)ラテックス安定性(重量%)
ラテックス安定性は、100メッシュ網を用いて各ラテックス500gを濾した後、これをホモミキサー(商品名:T.K.ROBOMICS、製造社: T.K.Primix)に投入し、12,000RPMの条件で60分間放置した。その後、100メッシュ網にかかった凝固物を測定し、下記数式4により計算した。
[数式4]
ラテックス安定性(重量%)=[100メッシュ網にかかった凝固物重量(g)/反応に用いられた単量体を含む反応物の理論的総固形分含量(g)]×100
【0105】
2)平均粒径(μm)及び粒径分布
平均粒径及び粒径分布(粒径による重量比率)は、ラテックス1gを蒸留水 100gに希釈させた後、CHDF装置(Capillary Hydrodynamic Fractionation、Matec Applied Science、Model 1100)を用いて測定した。
【0106】
3)固形凝固分(重量%)
ラテックスを100メッシュ(mesh)の鉄網に濾した後、鉄網の上に通過できなかった反応生成物を100℃の熱風乾燥器で1時間の間乾燥して凝固物の重量を測定し、下記数式2で計算した。
[数式2]
固形凝固分(重量%)=[凝固物重量(g)/反応物総重量(g)]×100
【0107】
4)粒子円形度
ラテックス粒子の円形度は、粒子の長軸の長さ(長径)/短軸の長さ(短径)の比率及びこれらの平均値で計算し、各ラテックスをTEM(JEM-1400、Jeol)で分析した後、それぞれ粒子50個で長軸の長さと短軸の長さを測定し、下記数式1を介して粒子円形度を計算した。
[数式1]
【数2】
前記数式1で、Dは、i番目の粒子で短軸の長さに対する長軸の長さの比[長軸の長さ/短軸の長さ]である。
【0108】
【表1】
【0109】
前記表1に示したとおり、本発明で提示する製造方法により平均粒径が230~300nmである高分子凝集体を総単量体100重量部に対して0.01~1.5重量部で用いて製造された実施例1から4のポリブタジエンゴムラテックスは、平均粒径が600~800nmであり、ゴム粒子全体の17重量%から21重量%が100nm以上300nm未満の粒径を示し、70重量%から71重量%が300nm以上800nm未満の粒径を示し、8重量%から12重量%が800nm以上1000nm未満の粒径を示す粒径分布を有し、粒子円形度が1.05~1.06で球形の粒子形態を有した。また、固形凝固分の含量が0.01重量%以下でラテックス安定性に優れた。
【0110】
その反面、平均粒径が230~300nmでない高分子凝集体を用いるか、平均粒径が230~300nmである高分子凝集体を用い、ただし、総単量体100重量部に対して0.01~1.5重量部を外れる含量で用いて製造された比較例1から4のポリブタジエンゴムラテックスは、平均粒径が600~800nmを外れるか、本発明で提示するトリモーダル特性を示すことができず、ラテックス安定性が低下した。
【0111】
一方、比較例5及び6は、平均粒径が230~300nmである高分子凝集体を総単量体100重量部に対して0.05重量部で用いたが、比較例5は平均粒径が600~800nmを外れ、本発明で提示するトリモーダル特性を示すことができず、粒子円形度が1.24で均一な球形を有することができなかった。また、比較例6は、平均粒径600~800nmを外れ、前記トリモーダル特性を示すことができず、固形凝固分が増加してラテックス安定性が大きく低下した。このとき、比較例5は、高分子凝集体が架橋剤なく製造されたものであり、比較例6は、高分子凝集体の投入時に水溶性重合開始剤を用いていないものである。これを介して、平均粒径230~300nmである高分子凝集体により肥大化されても、前記高分子凝集体の製造時に架橋剤が用いられていないか、高分子凝集体の適用時に水溶性開始剤がともに用いられない場合、目的の粒子特性を有する安定性に優れたラテックスを製造できないことを確認した。
【0112】
前記結果は、本発明で提示する粒子特性(平均粒径及び粒径分布)を有するジエン系ゴムラテックスは、特定範囲の平均粒径を有する高分子凝集体を特定の含量で用いて肥大化されることにより達成できることを意味し、その上、前記高分子凝集体が架橋剤の存在下に製造され、ジエン系ラテックスの製造時に水溶性開始剤とともに用いられることにより、前記粒子特性が達成できることを意味するのである。
【0113】
コア-シェル構造のアクリロニトリル-ブタジエン-スチレングラフト共重合体の製造
実施例5
窒素置換された重合反応器(オートクレーブ)に、前記実施例1で製造されたポリブタジエンゴムラテックス3重量部、平均粒径が0.3243μmであるポリブタジエンゴムラテックス57重量部及びイオン交換水100重量部を投入して70℃を維持し、ここに別途の混合装置で混合したアクリロニトリル 10重量部、スチレン25重量部、イオン交換水20重量部、3級ヒドロペルオキシド0.1重量部、ロジン酸カリウム1.0重量部及び3級ドデシルメルカプタン0.3重量部からなる混合溶液とデキストロース0.054重量部、ピコリン酸ナトリウム0.004重量部及び硫酸第一鉄0.0002重量部を3時間の間連続的に投入した。投入が完了した後、デキストロース0.05重量部、ピコリン酸ナトリウム0.03重量部、硫酸第一鉄0.001重量部、3級ブチルヒドロペルオキシド0.005重量部を一括して投入し、80℃まで1時間にわたって昇温させながら反応させた後、反応を終結して重合転換率98%のコア-シェル構造のアクリロニトリル-ブタジエン-スチレングラフト共重合体を製造した。その後、硫酸を投入し、凝集、洗浄及び乾燥の過程を介して粉末のコア-シェル構造のアクリロニトリル-ブタジエン-スチレングラフト共重合体を製造した。
【0114】
実施例6
実施例5において、実施例1で製造されたポリブタジエンゴムラテックスの代わりに、実施例2で製造されたポリブタジエンゴムラテックスを用いたことを除いては、実施例5と同様に行って粉末のコア-シェル構造のアクリロニトリル-ブタジエン-スチレングラフト共重合体を製造した。
【0115】
実施例7
実施例5において、実施例1で製造されたポリブタジエンゴムラテックスの代わりに、実施例3で製造されたポリブタジエンゴムラテックスを用いたことを除いては、実施例5と同様に行って粉末のコア-シェル構造のアクリロニトリル-ブタジエン-スチレングラフト共重合体を製造した。
【0116】
実施例8
実施例5において、実施例1で製造されたポリブタジエンゴムラテックスの代わりに、実施例4で製造されたポリブタジエンゴムラテックスを用いたことを除いては、実施例5と同様に行って粉末のコア-シェル構造のアクリロニトリル-ブタジエン-スチレングラフト共重合体を製造した。
【0117】
実施例9
実施例5において、実施例1で製造されたポリブタジエンゴムラテックスを5重量部で、平均粒径が0.3243μmであるポリブタジエンゴムラテックスを55重量部で用いたことを除いては、実施例5と同様に行って粉末のコア-シェル構造のアクリロニトリル-ブタジエン-スチレングラフト共重合体を製造した。
【0118】
比較例7
実施例5において、実施例1で製造されたポリブタジエンゴムラテックスを用いず、平均粒径が0.3243μmであるポリブタジエンゴムラテックスを60重量部で用いたことを除いては、実施例5と同様に行って粉末のコア-シェル構造のアクリロニトリル-ブタジエン-スチレングラフト共重合体を製造した。
【0119】
比較例8
実施例5において、実施例1で製造されたポリブタジエンゴムラテックスの代わりに、比較例1で製造されたポリブタジエンゴムラテックスを用いたことを除いては、実施例5と同様に行って粉末のコア-シェル構造のアクリロニトリル-ブタジエン-スチレングラフト共重合体を製造した。
【0120】
比較例9
実施例5において、実施例1で製造されたポリブタジエンゴムラテックスの代わりに、比較例2で製造されたポリブタジエンゴムラテックスを用いたことを除いては、実施例5と同様に行って粉末のコア-シェル構造のアクリロニトリル-ブタジエン-スチレングラフト共重合体を製造した。
【0121】
比較例10
実施例5において、実施例1で製造されたポリブタジエンゴムラテックスの代わりに、比較例3で製造されたポリブタジエンゴムラテックスを用いたことを除いては、実施例5と同様に行って粉末のコア-シェル構造のアクリロニトリル-ブタジエン-スチレングラフト共重合体を製造した。
【0122】
比較例11
実施例5において、実施例1で製造されたポリブタジエンゴムラテックスの代わりに、比較例4で製造されたポリブタジエンゴムラテックスを用いたことを除いては、実施例5と同様に行って粉末のコア-シェル構造のアクリロニトリル-ブタジエン-スチレングラフト共重合体を製造した。
【0123】
比較例12
実施例5において、実施例1で製造されたポリブタジエンゴムラテックスの代わりに、比較例5で製造されたポリブタジエンゴムラテックスを用いたことを除いては、実施例5と同様に行って粉末のコア-シェル構造のアクリロニトリル-ブタジエン-スチレングラフト共重合体を製造した。
【0124】
比較例13
実施例5において、実施例1で製造されたポリブタジエンゴムラテックスの代わりに、比較例6で製造されたポリブタジエンゴムラテックスを用いたことを除いては、実施例5と同様に行って粉末のコア-シェル構造のアクリロニトリル-ブタジエン-スチレングラフト共重合体を製造した。
【0125】
比較例14
実施例5において、実施例1で製造されたポリブタジエンゴムラテックスを1重量部で、平均粒径が0.3243μmであるポリブタジエンゴムラテックスを59重量部で用いたことを除いては、実施例5と同様に行って粉末のコア-シェル構造のアクリロニトリル-ブタジエン-スチレングラフト共重合体を製造した。
【0126】
比較例15
実施例5において、実施例1で製造されたポリブタジエンゴムラテックスを7重量部で、平均粒径が0.3243μmであるポリブタジエンゴムラテックスを53重量部で用いたことを除いては、実施例5と同様に行って粉末のコア-シェル構造のアクリロニトリル-ブタジエン-スチレングラフト共重合体を製造した。
【0127】
実験例2
前記実施例5から9及び比較例7から15で製造された各共重合体のラテックス安定性、固形凝固分、衝撃強度、流動指数、引張強度及び表面光沢を比較分析し、結果を下記表2に示した。
【0128】
このとき、各共重合体粉末27重量部とSAN(92HR、LG CHEM)83重量部を混合した後、圧出及び射出して1/4’’厚さの試片に製作し、これを衝撃強度、流動指数、引張強度及び表面光沢測定の試片として用いた。
【0129】
1)ラテックス安定性(分)
各共重合体ラテックスをホモミキサー(T.K.ROBOMICS、T.K. Primix社)を用いて15、000rpmで撹拌しながら、共重合体ラテックスが凝固される時間を測定した。ここで凝固される時間が40分以上の場合、ラテックス安定性に優れたものと分類した。
【0130】
2)固形凝固分
共重合体ラテックスを100メッシュ(mesh)の鉄網に濾した後、鉄網の上に通過できなかった反応生成物を100℃の熱風乾燥器で1時間の間乾燥して凝固物の重量を測定し、下記数式2で計算した。
[数式2]
固形凝固分(重量%)=[凝固物重量(g)/反応物総重量(g)]×100
【0131】
3)衝撃強度の測定
前記試片を用いて、ASTM D256により衝撃強度測定器(TINIUS OLSEN)を用いて測定した。
【0132】
4)流動指数(MI、g/10分)
前記試片を用いて、ASTM D1238により220℃、10kgの条件下で測定した。
【0133】
5)引張強度(kgf/cm
前記試片を用いて、ASTM D638により測定した。
【0134】
6)表面光沢(GLOSS)
前記試片を用いて、ASTM D528に基づいてGloss meterで45゜の角度で測定し、値が大きいほど表面の光沢に優れることを意味する。
【0135】
【表2】
【0136】
前記表2に示したとおり、本発明による実施例5から実施例9は、固形凝固分が0.03%以下であり、ラテックス安定性に優れ、よって、比較例に比べて同等以上の優れた流動指数及び引張強度を示しながら表面特性が改善され、特に衝撃強度が大きく改善された。