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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/162 20170101AFI20220613BHJP
   B01J 23/847 20060101ALI20220613BHJP
   B01J 23/882 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
C01B32/162
B01J23/847 M
B01J23/882 M
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020567519
(86)(22)【出願日】2019-07-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 KR2019009042
(87)【国際公開番号】W WO2020022725
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】10-2018-0088008
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ヨン・カン
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・ジュン・カン
(72)【発明者】
【氏名】キ・ス・イ
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0007266(KR,A)
【文献】特表2016-502466(JP,A)
【文献】特開2012-188476(JP,A)
【文献】特開2017-196579(JP,A)
【文献】C. ZHU et. al.,Formation of close-packed multi-wall carbon nanotube bundles,Diamond and Related Materials,2004年,Vol. 13,p. 180-183
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/162
B01J 23/847
B01J 23/882
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al(OH)を1次熱処理してAlO(OH)を含む支持体を製造する段階;
主触媒前駆体及び助触媒前駆体を含む混合物を前記支持体に担持して活性担持体を製造する段階;
真空乾燥を含む多段乾燥を介して、前記活性担持体を乾燥する段階;
前記乾燥された活性担持体を2次熱処理して担持触媒を製造する段階;及び
前記担持触媒の存在下に、カーボンナノチューブを製造する段階を含み、
前記主触媒は、コバルト、鉄、ニッケル、マンガン及びクロムからなる群から選択される1種以上であり、
前記助触媒は、バナジウム、又は、バナジウム及びモリブデンであり、
前記多段乾燥は、第1温度で行われる1次真空乾燥と、前記第1温度より高い第2温度で行われる2次真空乾燥を含むものである、カーボンナノチューブの製造方法。
【請求項2】
前記真空乾燥は、1から200mbarで行われるものである、請求項に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項3】
前記真空乾燥は、10分間から3時間行われるものである、請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項4】
前記第1温度は、80から160℃である、請求項1から3のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項5】
前記第2温度は、175から300℃である、請求項1から4のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項6】
前記1次熱処理は、100から500℃で行われるものである、請求項1からのいずれか一項に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項7】
前記2次熱処理は、600から800℃で行われるものである、請求項1からのいずれか一項に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項8】
前記主触媒前駆体は、Co(NO、Co(NO・6HO、Co(CO)、Co(CO)[HC=C(C(CH)]、Co(CHCO、Fe(NO、Fe(NO・nHO、Fe(CHCO、Ni(NO、Ni(NO・6HO、Mn(NO、Mn(NO・6HO、Mn(CHCO・n(HO)及びMn(CO)Brからなる群から選択される1種以上のものである、請求項1からのいずれか一項に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項9】
前記助触媒前駆体は、NHVO、NaVO、V、V(C、(NHMo24、及び(NHMo24・4HOからなる群から選択される1種以上のものである、請求項1からのいずれか一項に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項10】
前記カーボンナノチューブは、バンドル型であるものである、請求項1からのいずれか一項に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項11】
前記カーボンナノチューブは、平均直径が5から20nmであるカーボンナノチューブ単位体を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブの製造方法
【請求項12】
前記カーボンナノチューブは、比表面積が200から350m/gである、請求項1から11のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年7月27日付韓国特許出願第10-2018-0088008号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、カーボンナノチューブの製造方法に関し、真空乾燥を含む多段乾燥を介して活性担持体を乾燥する段階を含むカーボンナノチューブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、カーボンナノチューブとは、数ナノメートルから数十ナノメートルの直径を有し、長さが直径の数倍から数十倍である円筒状炭素チューブを指す。このようなカーボンナノチューブは、整列された炭素原子の層からなる。
【0004】
カーボンナノチューブは、一般に、アーク放電法、レーザ蒸発法、化学気相合成法などにより製造され得る。このうち、アーク放電法及びレーザ蒸発法は、大量生産が困難であり、過多なアーク生産コスト及びレーザ装備購入コストのため経済性が低下するという問題がある。
【0005】
カーボンナノチューブは、特有の螺旋性(chirality)によって不導体、伝導体または半導体の性質を示し、炭素原子が強力な共有結合で連結されているため、引張強度が鋼鉄よりも大きく、柔軟性と弾性などに優れ、化学的にも安定である。
【0006】
このようなカーボンナノチューブは、分散媒に分散させて導電材分散液として使用できるが、導電材分散液の導電性を向上させるために、カーボンナノチューブを高濃度で分散させる場合、粘度の上昇により取り扱いが困難となるという問題が発生する。
【0007】
したがって、カーボンナノチューブの濃度は増加させずに、導電材分散液の導電性を改善させる研究が続いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国登録特許第10-1431953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、導電性が顕著に改善されたカーボンナノチューブの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、Al(OH)を1次熱処理してAlO(OH)を含む支持体を製造する段階;主触媒前駆体及び助触媒前駆体を含む混合物を前記支持体に担持して活性担持体を製造する段階;真空乾燥を含む多段乾燥を介して、前記活性担持体を乾燥する段階;前記乾燥された活性担持体を2次熱処理して担持触媒を製造する段階;及び前記担持触媒の存在下に、カーボンナノチューブを製造する段階を含むカーボンナノチューブの製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、前述した製造方法により製造され、平均直径が5から20nmであるカーボンナノチューブ単位体を含むカーボンナノチューブを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のカーボンナノチューブの製造方法によれば、平均直径が小さいカーボンナノチューブ単位体を製造することができるので、単位面積当たりのカーボンナノチューブ単位体の数が顕著に増加される。
【0013】
本発明のカーボンナノチューブの製造方法で製造されたカーボンナノチューブは、バンドル型であるため、導電材分散液に適用されることができ、導電材分散液の導電性を顕著に改善させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1及び実施例2及び比較例2で製造した担持触媒のXRDパターンを測定したグラフである。
図2】実施例2で担持触媒の製造時、真空乾燥時間を変化させて真空乾燥時間によるカーボンナノチューブの比表面積の変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施形態に対して詳しく説明する。しかし、本発明は、いくつか異なる形態に具現されてよく、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0016】
実施例1
<担持触媒の製造>
Al(OH)(商品名:BH39-622、製造社:日本軽金属)30gを400℃で4時間1次熱処理して支持体を製造した。主触媒前駆体としてCo(NO・6HO15.7g、助触媒前駆体としてNHVO0.63g、クエン酸0.45g及び蒸留水20mlを投入して触媒前駆体溶液を製造した。前記触媒前駆体の溶液全量を前記支持体20mgに担持して活性担持体を製造した。前記活性担持体を80℃の恒温槽で15分間撹拌しながら熟成させた。
【0017】
次いで、熟成された活性担持体を120℃、100mbarで120分間1次真空乾燥した。1次真空乾燥した活性担持体を200℃、10mbarで30分間回転しながら2次真空乾燥した。2次真空乾燥した活性担持体を700℃で2時間2次熱処理して担持触媒を製造した。
【0018】
<カーボンナノチューブの製造>
収得された担持触媒1gを流動層反応装置内に位置する内径が55mmである石英管の下部に装着した。流動層反応装置の内部を窒素雰囲気で660℃まで一定の速度で昇温させた後、維持し、窒素ガスとエチレンガスを3:1の体積比で2.1l/分で流しながら90時間合成し、カーボンナノチューブ21gを製造した。
【0019】
実施例2
主触媒前駆体としてCo(NO・6HO14.13g、助触媒前駆体としてNHVO0.85g、(NHMo240.255g、クエン酸0.61g及び蒸留水20mlを投入し、触媒前駆体溶液を製造したこと以外の全ての条件は同様に行った。
【0020】
実施例3
1次真空乾燥した活性担持体を175℃、50mbarで1時間回転しながら2次真空乾燥したことを除き、実施例1と同様の方法で担持触媒及びカーボンナノチューブを製造した。
【0021】
実施例4
1次真空乾燥した活性担持体を300℃、10mbarで30分間回転しながら2次真空乾燥したことを除き、実施例1と同様の方法で担持触媒及びカーボンナノチューブを製造した。
【0022】
実施例5
1次真空乾燥した活性担持体を200℃、50mbarで30分間回転しながら2次真空乾燥したことを除き、実施例1と同様の方法で担持触媒及びカーボンナノチューブを製造した。
【0023】
実施例6
1次乾燥した活性担持体を170℃、10mbarで30分間回転しながら2次真空乾燥したことを除き、実施例1と同様の方法で担持触媒及びカーボンナノチューブを製造した。
【0024】
比較例1
1次乾燥した活性担持体に2次真空乾燥を行わず、200℃で2時間常圧乾燥したことを除き、実施例1と同様の方法で担持触媒及びカーボンナノチューブを製造した。
【0025】
比較例2
1次真空乾燥した活性担持体に2次真空乾燥を行わず、200℃で容器蓋を閉じて2時間常圧乾燥したことを除き、実施例1と同様の方法で担持触媒及びカーボンナノチューブを製造した。
【0026】
実験例1
実施例1、2及び比較例2で製造された担持触媒の物性を下記に記載の方法で測定し、その結果を下記図1及び表1に記載した。
【0027】
(1)XRDパターン及び触媒結晶性:下記条件でXRDパターン及び触媒結晶性を測定した。
【0028】
-Bruker AXS D4 Endeavor XRD(電圧:40k
V、電流:40mA)
-Cu Kα radiation(波長:1.54Å)
-LynxEye position sensitive detector(3.7゜slit)
【0029】
図1を検討してみれば、2θ値で実施例1及び実施例2は、最大回折ピーク強度が25から30゜で表れた反面、比較例2は、35から40゜で最大回折ピークが表れたことが確認できた。また、実施例1及び実施例2のピークのパターンと、比較例2のピークのパターンは、全般的に互いに異なるものであることが分かった。
【0030】
このような結果から、実施例1及び2の担持触媒と比較例2の担持触媒は、互いに異なる物性を有するということが確認できた。
【0031】
一方、実施例1の値は、実施例2とほぼ同一に表れるので、線が重複されてグラフ上に明確に表れなかった。
【0032】
実験例2
実施例2で担持触媒の製造時、真空乾燥時間を多様化して真空乾燥時間によるカーボンナノチューブの比表面積の変化を図2に示した。
【0033】
図2を検討してみれば、真空乾燥時間30分以下であるときには、真空乾燥時間が経過するにつれて、担持触媒で製造されたカーボンナノチューブは比表面積が増加することが分かった。そして、真空乾燥時間30分以上からは、主触媒前駆体の分解が開始するので、カーボンナノチューブの比表面積が比較的一定に維持されることが確認できた。
【0034】
実験例3
実施例及び比較例のカーボンナノチューブの物性を下記に記載の方法で測定し、その結果を下記表2に記載した。
【0035】
(2)2次構造物形状:走査電子顕微鏡を用いて観察した。
【0036】
(3)カーボンナノチューブ単位体の平均直径(nm):SEM及びBETを用いて測定した。
【0037】
(4)比表面積(m/g):BELSORP-mini II(商品名、製造社:BEL Japan社)を用いてBET法で測定した。
【0038】
【表1】
【0039】
表1を参照すれば、実施例1から実施例6は、比較例1及び比較例2に比べ担持触媒の結晶性が低く、バンドル型であり、且つ、単位体の平均直径が小さいカーボンナノチューブが製造されることが確認できた。しかし、担持触媒の製造時に真空乾燥を行わない比較例1及び比較例2は、担持触媒の結晶性が大きいので、バンドル型とエンタングル型が混合された状態であり、単位体の平均直径が大きいカーボンナノチューブが製造されることが確認できた。
【0040】
実験例4
実施例1と比較例1のカーボンナノチューブ2重量%、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)97.6重量%、ポリビニルピロリドン(PVP)0.4重量%を高圧ホモジナイザー(商品名:Panda、製造社:GEA)に投入し、1,500barで30分間処理して導電材分散液を製造した。
【0041】
導電材分散液の粘度を粘度計(モデル:DV2T Viscometer、製造社:Brookfield、Pin No:64)装備で12rpm、25℃で測定し、その結果を下記表2に記載した。
【0042】
そして、導電材分散液0.5重量%、活物質としてLiNi0.6Mn0.2Co0.298重量%及びポリビニリデンフルオライド(PVDF)1.5重量%を含む電極スラリーを製造した後、150℃で6時間乾燥後、粉体を製造した。
【0043】
粉体5gをMCP-PD51(モデル、製造社:Mitsubishi Chemical)を用いて、64MPaで粉体抵抗を測定した。
【0044】
【表2】
【0045】
表2で示すように、実施例1の導電材分散液が、比較例1の導電材分散液より粘度が高かった。これは、実施例1のカーボンナノチューブは、比較例1のカーボンナノチューブに比べ、単位体の直径が小さく、比表面積が大きく、粉体の単位質量当たりに含まれる単位体の数が多くなるため現われた結果と類推される。また、このようなカーボンナノチューブを用いた実施例1の粉体は、電気的なネットワークがよくなされるので、比較例1の粉体に比べ抵抗が顕著に低いことが確認できた。
【0046】
以下、本発明に対する理解を助けるため、本発明をさらに詳しく説明する。
【0047】
本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的かつ辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に即して、本発明の技術的思想に適合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0048】
本発明における「カーボンナノチューブ」は、カーボンナノチューブの単位体が全体または部分的に集合されて形成された2次構造物形状であり、カーボンナノチューブの単位体は、黒鉛面(graphite sheet)がナノサイズ直径のシリンダー状を有し、sp結合構造を有する。このとき、黒鉛面が巻かれる角度及び構造に応じて、導体または半導体の特性を示すことができる。
【0049】
カーボンナノチューブの単位体は、層をなしている結合数に応じて、単層カーボンナノチューブ(SWCNT、single-walled carbon nanotube)、二層カーボンナノチューブ(DWCNT、double-walled carbon nanotube)及び多層カーボンナノチューブ(MWCNT、multi-walled carbon nanotube)に分類されてよく、層の厚さが薄いほど抵抗が低い。
【0050】
本発明のカーボンナノチューブは、単層、二層及び多層のカーボンナノチューブ単位体のうちいずれか一つまたは二つ以上を含んでよい。
【0051】
本発明における「バンドル型(bundle type)」とは、他に言及されない限り、複数個のカーボンナノチューブの単位体が単位体の長手方向の軸が実質的に同一の配向で並んで配列されるか、配列された後に捩れているかまたは絡み合っている、束(bundle)あるいはロープ(rope)状の2次構造物形状を称する。
【0052】
本発明における「エンタングル型(entangled type)」とは、他に言及されない限り、複数個のカーボンナノチューブの単位体が束またはロープ状のように一定の形状なしに絡み合っている形状を称することができる。
【0053】
本発明におけるカーボンナノチューブ単位体の平均粒径は、SEM及びBETを用いて測定することができる。
【0054】
本発明におけるカーボンナノチューブの比表面積は、BET法によって測定することができる。具体的には、BELSORP-mini II(商品名、製造社:BEL Japan社)を用いて液体窒素温度下(77K)での窒素ガス吸着量から算出することができる。
【0055】
1.カーボンナノチューブの製造方法
本発明の一実施形態によるカーボンナノチューブの製造方法は、1)Al(OH)を1次熱処理してAlO(OH)を含む支持体を製造する段階;2)主触媒前駆体及び助触媒前駆体を含む混合物を前記支持体に担持して活性担持体を製造する段階;3)真空乾燥が含まれた多段乾燥を介して、前記活性担持体を乾燥する段階;4)前記乾燥された活性担持体を2次熱処理して担持触媒を製造する段階;及び5)前記担持触媒の存在下に、カーボンナノチューブを製造する段階を含む。
【0056】
以下、本発明の一実施形態によるカーボンナノチューブの製造方法に対して詳しく説明する。
【0057】
1)段階
先ず、Al(OH)を1次熱処理してAlO(OH)を含む支持体を製造する。
【0058】
前記1次熱処理を行うと、触媒が担持されやすいメソ気孔を含む支持体が製造され、後工程で主触媒と助触媒が支持体内によく分散され、高い比表面積を有するカーボンナノチューブを製造することができる。
【0059】
前記1次熱処理は、100から500℃で行われてよく、200から400℃で行われることが好ましい。
【0060】
前述した条件を満たすと、支持体が総重量に対して、Al(OH)から転換されたAlO(OH)を30重量%以上含みながら、Al(OH)がAlに転換されることは防止することができる。よって、エンタングル型のカーボンナノチューブは製造されず、バンドル型のカーボンナノチューブのみを製造することができる支持体が製造され得る。
【0061】
2)段階
次いで、主触媒前駆体及び助触媒前駆体を含む混合物を前記支持体に担持して活性担持体を製造する。
【0062】
前記主触媒前駆体及び助触媒前駆体が支持体に均一に担持された活性担持体を製造するために、前記混合物は溶媒をさらに含んでよく、前記主触媒前駆体及び助触媒前駆体は溶媒に溶解された溶液状態であってよい。前記溶媒は、水、メタノール及びエタノールからなる群から選択される1種以上であってよく、このうち水が好ましい。
【0063】
前記主触媒は、コバルト、鉄、ニッケル、マンガン及びクロムからなる群から選択される1種以上であってよく、このうちコバルトが好ましい。
【0064】
前記主触媒前駆体は、前記主触媒の硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩及び酢酸塩からなる群から選択される1種以上であってよく、このうち主触媒の硝酸塩が好ましい。
【0065】
前記主触媒前駆体は、Co(NO、Co(NO・6HO、Co(CO)、Co(CO)[HC=C(C(CH)]、Co(CHCO、Fe(NO、Fe(NO・nHO、Fe(CHCO、Ni(NO、Ni(NO・6HO、Mn(NO、Mn(NO・6HO、Mn(CHCO・n(HO)及びMn(CO)Brからなる群から選択される1種以上であってよく、このうちCo(NO・6HO、Fe(NO・nHO及びNi(NO・6HOからなる群から選択される1種以上が好ましい。
【0066】
前記助触媒は、主触媒の分散性を改善させるものであって、バナジウムであってよく、バナジウム及びモリブデンであってよい。
【0067】
前記助触媒前駆体は、NHVO、NaVO、V、V(C、(NHMo24、及び(NHMo24・4HOからなる群から選択される1種以上であってよく、このうちNHVO及び(NHMo24からなる群から選択される1種以上が好ましい。
【0068】
前記助触媒は、前記主触媒前駆体と助触媒前駆体を主触媒と助触媒のモル比が40:1から3:1となるように含んでよく、15:1から5:1となるように含むことが好ましい。
【0069】
前述したモル比を満たすと、主触媒の分散性が顕著に改善され得る。また、触媒の担持時、支持体表面の酸点を助触媒を用いて調節することにより、主触媒がよく分散された形態で担持をするのに効果的である。
【0070】
前記助触媒は、主触媒前駆体と助触媒前駆体の沈殿を抑制し、溶液のpH調節を介して支持体の表面電荷を調節する役割をする有機酸をさらに含んでよい。
【0071】
前記有機酸は、クエン酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸(malic acid)、酢酸、酪酸、パルミチン酸及びシュウ酸からなる群から選択される1種以上であってよく、これらのうちクエン酸が好ましい。
【0072】
前記助触媒は、前記有機酸と助触媒前駆体を1:0.2から1:2の重量比で含んでよく、1:0.5から1:1.5で含むことが好ましい。
【0073】
前述した範囲を満たすと、担持後、主触媒と助触媒の沈殿による微粉生成を抑制することができ、その結果、主触媒と助触媒を含む溶液状態の混合物が透明に製造されるという利点がある。もし溶液状態の混合物に沈殿が発生すると、前記主触媒と助触媒が支持体に均一にコーティングされないので、不均一な担持触媒が製造され得る。また、不均一な担持触媒は、カーボンナノチューブの成長時に多くの微粉を発生させるので、カーボンナノチューブの製造工程時にトラブルの原因となり得る。
【0074】
本発明の一実施形態によるカーボンナノチューブの製造方法は、前記2)段階以後に熟成する段階をさらに含んでよい。
【0075】
前記熟成は、1から60分間行われてよく、10から50分間行われることが好ましい。
【0076】
前述した条件を満たすと、前記支持体に主触媒前駆体と助触媒前駆体が十分に担持され得る。また、前記支持体内に存在した気泡が最大限除去され、前記支持体内部の微細気孔まで主触媒前駆体と助触媒前駆体が十分に担持され得る。
【0077】
3)段階
次いで、真空乾燥を含む多段乾燥を介して、前記活性担持体を乾燥する。
【0078】
前記多段乾燥は、真空乾燥を含む乾燥工程が2回以上行われることを意味することができる。具体的には、前記多段乾燥は、常圧乾燥と真空乾燥を含むことを意味することができ、真空乾燥のみ2回以上含むことを意味することもできる。
【0079】
前記真空乾燥を行うと、前記活性担持体内に存在する主触媒前駆体、すなわち主触媒の配位結合物が容易に分解されるだけでなく、主触媒前駆体を非常に小さく、且つ、均一な平均粒径を有する主触媒酸化物に転換させることができる。また、前記主触媒酸化物から由来された主触媒は、担持触媒内で非常に小さく、且つ、均一な平均粒径で存在し、このような主触媒から成長したカーボンナノチューブ単位体は非常に小さい平均直径を有するようになるので、単位面積当たりに存在する量が顕著に増加することになる。このようなカーボンナノチューブを導電材分散液に適用すると、導電材分散液の導電性が顕著に改善され得る。
【0080】
そして、前記真空乾燥によって主触媒前駆体が容易に分解されるので、担持触媒の生産性が向上することができる。
【0081】
前記真空乾燥は175から300℃で行われてよく、180から280℃で行われることが好ましい。
【0082】
前述した条件を満たすと、前記主触媒前駆体、すなわち主触媒の配位結合物が容易に分解され、主触媒酸化物を形成することができるとともに、エネルギー消費を最小化することができる。
【0083】
前記真空乾燥は1から200mbarで行われてよく、1から100mbarで行われることが好ましい。
【0084】
前述した条件を満たすと、前記主触媒前駆体、すなわち主触媒の配位結合物が突然分解及び排出されるので、真空条件でより容易に主触媒酸化物を形成することができ、エネルギー消費を最小化することができる。
【0085】
前記真空乾燥は10分間から3時間行われてよく、10分間から2時間行われることが好ましい。
【0086】
前述した条件を満たすと、前記主触媒前駆体を容易に分解させて主触媒酸化物に転換させることができ、エネルギー消費を最小化することができる。
【0087】
一方、前記多段乾燥が常圧乾燥と真空乾燥を含む場合、前記常圧乾燥は、前述した真空乾燥が行われる前に行われてよく、前記常圧乾燥により前記活性担持体内に存在し得る溶媒が除去され得る。
【0088】
前記常圧乾燥は80から160℃で行われてよく、100から140℃で行われることが好ましい。
【0089】
前述した条件を満たすと、前記活性担持体内に存在する溶媒を十分に除去することができるとともに、エネルギー消費は最小化することができる。
【0090】
前記常圧乾燥は900から1,100mbarで行われてよく、950から1,050mbarで行われることが好ましい。
【0091】
前述した条件を満たすと、前記活性担持体内に存在する溶媒を十分に除去することができるとともに、エネルギー消費は最小化することができる。
【0092】
前記常圧乾燥は1から12時間行われてよく、3から9時間行われることが好ましい。
【0093】
前述した条件を満たすと、前記活性担持体内に存在する溶媒を十分に除去することができるとともに、エネルギー消費は最小化することができる。
【0094】
一方、前記多段乾燥が真空乾燥のみ2回以上含む場合、互いに異なる温度で行われる真空乾燥を2回以上、より具体的には、第1温度で行われる1次真空乾燥と、前記第1温度より高い第2温度で行われる2次真空乾燥を含んでよい。
【0095】
前記1次真空乾燥は、前記活性担持体内に存在し得る溶媒を除去するために行われ得る。
【0096】
前記第1温度は80から160℃であってよく、100から140℃であることが好ましい。
【0097】
前述した条件を満たすと、前記活性担持体内に存在する溶媒を十分に除去することができるとともに、エネルギー消費は最小化することができる。
【0098】
前記1次真空乾燥は1から12時間行われてよく、3から9時間行われることが好ましい。
【0099】
前述した条件を満たすと、前記活性担持体内に存在する溶媒を十分に除去することができるとともに、エネルギー消費は最小化することができる。
【0100】
前記1次真空乾燥は1から200mbarで行われてよく、1から150mbarで行われることが好ましい。
【0101】
前述した条件を満たすと、前記活性担持体内に存在する溶媒を十分に除去することができるとともに、エネルギー消費は最小化することができる。
【0102】
前記2次真空乾燥に対する説明は、前述した真空乾燥に対する説明で記載した通りである。
【0103】
前記第2温度は175から300℃であってよく、180から280℃であることが好ましい。
【0104】
前述した条件を満たすと、前記主触媒前駆体、すなわち主触媒の配位結合物が容易に分解されて主触媒酸化物を形成することができるとともに、エネルギー消費を最小化することができる。
【0105】
前記2次真空乾燥は1から200mbarで行われてよく、1から150mbarで行われることが好ましく、1から100mbarで行われることがより好ましい。
【0106】
前述した条件を満たすと、前記主触媒前駆体、すなわち主触媒の配位結合物が突然分解及び排出されるので、真空条件でより容易に主触媒酸化物を形成することができ、エネルギー消費を最小化することができる。
【0107】
前記2次真空乾燥は10分から3時間行われてよく、10分から2時間行われることが好ましい。
【0108】
前述した条件を満たすと、前記主触媒前駆体を容易に分解させて主触媒酸化物に転換させることができ、エネルギー消費を最小化することができる。
【0109】
4)段階
次いで、前記乾燥された活性担持体を2次熱処理して担持触媒を製造する。
【0110】
前記2次熱処理を行うと、前記主触媒及び助触媒が前記支持体の表面及び細孔にコーティングされた状態で存在する担持触媒が製造される。
【0111】
前記2次熱処理は600から800℃で行われてよく、620から750℃で行われることが好ましい。
【0112】
前述した条件を満たすと、前記主触媒及び助触媒が前記支持体の表面及び細孔に均一にコーティングされた状態で担持触媒を製造することができるとともに、エネルギー消費を最小化することができる。
【0113】
前記2次熱処理は1から12時間行われてよく、2から8時間行われることが好ましい。
【0114】
前述した時間を満たすと、前記触媒前駆体が前記支持体の表面及び細孔に均一にコーティングされた状態で存在する担持触媒が製造され得る。
【0115】
5)段階
次いで、前記担持触媒の存在下に、カーボンナノチューブを製造する段階を含む。
【0116】
詳しくは、前記担持触媒と炭素系化合物を接触させながらカーボンナノチューブが製造されてよく、具体的には、化学気相合成法を行ったものであってよい。
【0117】
前記カーボンナノチューブを製造する段階を詳しく説明する。先ず、前記担持触媒を水平固定層反応器または流動層反応器内に投入することができる。次いで、前記気体状態である炭素系化合物の熱分解温度以上または前記担持触媒に担持された触媒の融点以下の温度で、前記気体状態である炭素系化合物、または前記気体状態である炭素系化合物と還元ガス(例えば、水素など)及び運搬ガス(例えば、窒素など)の混合ガスを注入し、気体状態である炭素系化合物の分解を介して化学的気相合成法でカーボンナノチューブを成長させることができる。
【0118】
前記のような化学気相合成法により製造されるカーボンナノチューブは、結晶の成長方向がチューブ軸とほぼ平行であり、チューブの長手方向に黒鉛構造の結晶性が高い。その結果、単位体の直径が小さく、導電性及び強度が高いカーボンナノチューブが製造され得る。
【0119】
前記化学気相合成法は、600から800℃で行われてよく、650から750℃で行われることが好ましい。
【0120】
前述した温度を満たすと、非結晶性炭素の発生を最小化しながらカーボンナノチューブを製造することができる。
【0121】
前記反応のための熱源としては、誘導加熱(induction heating)、輻射熱、レーザ、IR、マイクロ波、プラズマ、表面プラズモン加熱などが用いられてよい。
【0122】
また、前記炭素系化合物は、炭素を供給することができ、300℃以上の温度で気体状態で存在し得るものであれば、特別な制限なく使用可能である。
【0123】
前記炭素系化合物は、炭素数6以下の炭素系化合物であってよく、一酸化炭素、メタン、エタン、エチレン、エタノール、アセチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、ブタジエン、ペンタン、ペンテン、シクロペンタジエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン及びトルエンからなる群から選択される1種以上であってよい。
【0124】
前述した反応によりカーボンナノチューブを成長させた後、カーボンナノチューブの配列をより規則的に整列するための冷却工程が選択的にさらに行われてよい。前記冷却工程は、具体的に熱源の除去による自然冷却または冷却器などを用いて行われてよい。
【0125】
前記カーボンナノチューブは、バンドル型であってよい。
【0126】
2.カーボンナノチューブ
本発明の一実施形態による製造方法で製造されたカーボンナノチューブは、平均直径が5から20nmであるカーボンナノチューブ単位体を含む。
【0127】
前記カーボンナノチューブは、平均直径が8から15nmであるカーボンナノチューブ単位体を含むことが好ましい。
【0128】
前述した条件を満たすと、単位面積当たりに存在するカーボンナノチューブ単位体の数が顕著に増加されるので、導電材分散液への適用時に導電性が顕著に改善され得る。
【0129】
前記カーボンナノチューブは、比表面積が200から350m/gであってよく、200から300m/gであることが好ましく、240から280m/gであることが特に好ましい。
【0130】
カーボンナノチューブの比表面積は、平均直径と強い負の相関関係であって、カーボンナノチューブの平均直径が小さいほど、比表面積が増加することになる。よって、カーボンナノチューブの比表面積が前述した条件を満たすと、単位面積当たりに存在するカーボンナノチューブ単位体の数が顕著に増加されるので、導電材分散液へ適用時に導電性が顕著に改善され得る。
図1
図2