(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ、その製造方法およびこれを含む一次電池用の正極
(51)【国際特許分類】
C01B 32/162 20170101AFI20220613BHJP
H01M 4/06 20060101ALI20220613BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220613BHJP
B01J 23/882 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
C01B32/162
H01M4/06 W
H01M4/62 Z
B01J23/882 M
(21)【出願番号】P 2020567872
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(86)【国際出願番号】 KR2019009300
(87)【国際公開番号】W WO2020022822
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2020-12-04
(31)【優先権主張番号】10-2018-0088010
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ヨン・カン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ジュン・カン
(72)【発明者】
【氏名】キ・ス・イ
(72)【発明者】
【氏名】スン・キ・ジョン
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-513083(JP,A)
【文献】特表2016-535716(JP,A)
【文献】特開2013-108201(JP,A)
【文献】特開2009-078235(JP,A)
【文献】特表2014-533200(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0007267(KR,A)
【文献】K. OSLER et. al.,Synthesis and evaluation of carbon nanotubes composite adsorbent for C02 capture: a comparative study of C02 adsorption capacity of single-walled and multi-walled carbon nanotubes,INTERNATIONAL JOURNAL OF COAL SCIENCE & TECHNOLOGY,2017年02月17日,Vol. 4, No. 1,p. 41-49,DOI: 10.1007/s40789-017-0157-2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/162
H01M 4/06
H01M 4/62
B01J 23/882
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気孔容積が
0.95~2.0cm
3
/gであり、
比表面積が200~300m
2
/gであり、25℃の温度および20kNの圧力で体積抵抗率が0.0187Ω・cm以下であり、絡み合い状である、カーボンナノチューブ。
【請求項2】
主触媒前駆体および助触媒前駆体を含む混合物をγ‐Al
2O
3に担持し、活性担持体を製造するステップと、
真空乾燥を含む多段乾燥により、前記活性担持体を乾燥するステップと、
前記乾燥した活性担持体に熱処理を施し、担持触媒を製造するステップと、
前記担持触媒の存在下で、カーボンナノチューブを製造するステップとを含
み、
前記主触媒は、コバルト、鉄、ニッケル、マンガンおよびクロムからなる群から選択される1種以上であり、
前記助触媒は、バナジウムおよびモリブデンからなる群から選択される1種以上であり、
前記真空乾燥は、80~300℃の温度で行われる、カーボンナノチューブの製造方法。
【請求項3】
前記多段乾燥は、常圧乾燥と、真空乾燥とを含む、請求項
2に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項4】
前記常圧乾燥は、80~160℃で行われる、請求項
3に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項5】
前記真空乾燥は
、1~200mbarの圧力で行われる、請求項
3または
4に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項6】
前記多段乾燥は、第1温度で行われる1次真空乾燥と、前記第1温度よりも高い第2温度で行われる2次真空乾燥とを含む、請求項
2に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項7】
前記第1温度は80~160℃であり、前記第2温度は175~300℃である、請求項
6に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項8】
前記混合物は、バナジウムおよびモリブデンの和とバナジウムのモル比が1:0.45~1:0.95になるように助触媒前駆体を含む、請求項
2から
7のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項9】
気孔容積が
0.95~2.0cm
3
/gであり、
比表面積が200~300m
2
/gであり、25℃の温度および20kNの圧力で体積抵抗率が0.0187Ω・cm以下であり、絡み合い状であるカーボンナノチューブを含む正極活物質と、
結着剤とを含む、一次電池用の正極。
【請求項10】
気孔容積が0.25cm
3/g以上であり、平均気孔径が13.5nm以上である、請求項
9に記載の一次電池用の正極。
【請求項11】
比表面積が60~200m
2/gである、請求項
9または
10に記載の一次電池用の正極。
【請求項12】
請求項
9から
11のいずれか一項に記載の一次電池用の正極を含む、一次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年07月27日付けの韓国特許出願第10‐2018‐0088010に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、カーボンナノチューブ、その製造方法およびこれを含む一次電池用の正極に関し、詳細には、気孔容積および形態を調節したカーボンナノチューブ、その製造方法およびこれを含む一次電池用の正極に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に、カーボンナノチューブとは、数ナノメートル~数十ナノメートルの直径を有し、長さが直径の数倍~数十倍である円筒状の炭素チューブを指す。かかるカーボンナノチューブは、整列された炭素原子の層からなる。
【0004】
カーボンナノチューブは、一般的に、アーク放電法、レーザ蒸発法、化学気相合成法などによって製造され得る。このうち、アーク放電法およびレーザ蒸発法は、大量生産が難しく、過剰なアーク生産費用およびレーザ装備購入費用によって経済性が低下するという問題がある。
【0005】
カーボンナノチューブは、特有のキラリティー(chirality)によって不導体、伝導体または半導体の性質を示し、炭素原子が強力な共有結合で連結されており、引張強度が鋼鉄よりも高く、柔軟性と弾性などに優れ、化学的にも安定している。
【0006】
カーボンナノチューブがかかる優れた物性を有することから、一次電池用の正極、電磁波遮蔽剤、電界放出ディスプレイなどにも活用され得る。カーボンナノチューブが一次電池などの正極に適用されるためには、硫黄または触媒を十分に担持することができる気孔容積を確保し、構造変形は生じやすくてはならない。しかし、かかる特性を有するカーボンナノチューブに対する開発は十分でない状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、気孔容積が大きく、絡み合い(entangle)状のカーボンナノチューブを提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、気孔容積および平均気孔径が大きい一次電池用の正極を提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、放電特性が改善された一次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、気孔容積が0.94cm3/g以上であり、絡み合い状であるカーボンナノチューブを提供する。
【0011】
また、本発明は、主触媒前駆体および助触媒前駆体を含む混合物をγ‐Al2O3に担持し、活性担持体を製造するステップと、真空乾燥を含む多段乾燥により、前記活性担持体を乾燥するステップと、前記乾燥した活性担持体に熱処理を施し、担持触媒を製造するステップと、前記担持触媒の存在下で、カーボンナノチューブを製造するステップとを含むカーボンナノチューブの製造方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、気孔容積が0.94cm3/g以上であり、絡み合い状であるカーボンナノチューブを含む正極活物質と、結着剤とを含む一次電池用の正極を提供する。
【0013】
また、本発明は、上述の一次電池用の正極を含む一次電池を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施形態によるカーボンナノチューブは、気孔容積が大きい。これにより、一次電池用の正極として用いると、硫黄または触媒に対する担持能が改善され、一次電池の放電特性を著しく改善することができる。
【0015】
また、本発明の一実施形態によるカーボンナノチューブは、絡み合い状であるため、有機溶媒と接触しても膨潤(swelling)現象が生じにくい。これにより、本発明の一実施形態によるカーボンナノチューブを一次電池用の正極として用いると、電池の駆動時にも構造の変形が最小化し、電池の耐久性が著しく改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に関する理解に資するため、本発明をより詳細に説明する。
【0018】
本明細書および請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0019】
本発明において、「カーボンナノチューブ」は、カーボンナノチューブの単位体が全体または部分的に集合して形成された2次構造物形状であって、カーボンナノチューブの単位体は、黒鉛面(graphite sheet)がナノサイズ直径のシリンダの形態を有し、sp2結合構造を有する。この際、黒鉛面が巻かれる角度および構造に応じて、導体または半導体の特性を示すことができる。カーボンナノチューブの単位体は、層をなしている結合数に応じて、シングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT、single‐walled carbon nanotube)と、ダブルウォールカーボンナノチューブ(DWCNT、double‐walled carbon nanotube)と、マルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT、multi‐walled carbon nanotube)とに分けられ、層の厚さが薄いほど抵抗が低い。本発明において、カーボンナノチューブは、シングルウォール、ダブルウォールおよびマルチウォールのカーボンナノチューブの単位体のいずれか一つまたは二つ以上を含むことができる。
【0020】
本発明において、カーボンナノチューブは「未処理のカーボンナノチューブ(pristine carbon nanotube)」である。
【0021】
本発明において、「束状(bundle type)」とは、他に断らない限り、複数個のカーボンナノチューブの単位体が単位体長さ方向の軸が実質的に同じ配向で並行に配列されているか、配列された後、捻じられているかまたは絡み合っている、束(bundle)あるいはロープ(rope)状の2次構造物形状を指す。
【0022】
本発明において、「絡み合い状(entangled type)」とは、他に断らない限り、複数個のカーボンナノチューブの単位体が束またはロープ状のように所定の形状なしに絡み合っている形態を指し得る。
【0023】
本発明において、カーボンナノチューブおよび一次電池用の正極の気孔容積は、ASTM D4641に準じて測定することができる。
【0024】
また、本発明において、カーボンナノチューブおよび一次電池用の正極の気孔容積は、BELSORP‐mini II(商品名、製造社:BEL Japan社)を用いて、液体窒素温度(-196℃)で相対圧力(P/P0)を0.01から0.99に変化させながらN2吸着および脱着量を測定した後、BJH数式を用いて脱着基準の気孔容積を測定することができる。
【0025】
本発明において、体積抵抗率は、N&H Technology GmbH社のMCP‐PD51で測定することができる。具体的には、25℃でカーボンナノチューブ0.5gを1cm直径の円筒状のサンプルセルに入れた後、N&H Technology GmbH社のMCP‐PD51を用いて、4kN(12.73MPa)、8kN(25.46MPa)、12kN(38.20MPa)、16kN(50.93MPa)、20kN(63.66MPa)と順に圧力を上げた後、圧力が20kN(63.66MPa)のときに体積抵抗率を測定することができる。
【0026】
体積抵抗率(Ω・cm)=R(Ω)・RCF・t(cm)
R(Ω)=U/I
U(V):電位差(potential difference)
I(A):電流
RCF:補正係数
【0027】
本発明において、カーボンナノチューブの比表面積は、BET法によって測定することができる。具体的には、BELSORP‐mini II(商品名、製造社:BEL Japan社)を用いて、液体窒素温度下(77K)での窒素ガス吸着量から算出することができる。
【0028】
本発明において、カーボンナノチューブのかさ密度は、ASTM B329‐06に準じて測定することができる。
【0029】
本発明において、平均気孔径は、BELSORP‐mini II(商品名、製造社:BEL Japan社)を用いて、液体窒素温度(-196℃)で相対圧力(P/P0)を0.01から0.99に変化させながらBJH数式を用いて、脱着基準に「圧力による気孔容積」を「圧力による気孔径(dp)のlog値」で微分した値が最大である時の気孔径を平均気孔径として測定することができる。
【0030】
本発明において、カーボンナノチューブの純度は、ASTM D1506‐15に準じて測定することができる。
【0031】
1.カーボンナノチューブ
本発明の一実施形態によるカーボンナノチューブは、気孔容積が0.94cm3/g以上であり、絡み合い状である。
【0032】
前記カーボンナノチューブは、気孔容積が0.95cm3/g以上であることが好ましく、0.95~2.0cm3/gであることがより好ましい。気孔容積が上述の条件を満たすと、カーボンナノチューブが一次電池用の正極として用いられるときに、硫黄または触媒に対する担持能が改善され、電池の容量特性が著しく改善することができる。気孔容積が0.94cm3/g未満の場合、カーボンナノチューブの硫黄または触媒に対する担持能が既存に比べて改善されないため、電池の容量特性が改善されない。
【0033】
前記カーボンナノチューブは、絡み合い状であるため、有機溶媒と接触しても膨潤(swelling)現象が生じにくい。また、粉砕工程を行っても、気孔容積がほとんど変化しない。これにより、前記カーボンナノチューブは、一次電池用の正極として利用可能であり、電池の駆動時にも構造の変形が最小化し、電池の耐久性を著しく改善することができる。
【0034】
しかし、カーボンナノチューブの気孔容積が0.94cm3/g以上であっても、束状である場合、有機溶媒と接触すると膨潤(swelling)現象が生じやすい。そのため、一次電池用の正極として用いるときに電解液による構造の変形が生じやすく、電池の耐久性が著しく低下し得る。また、一次電池用の正極として加工するために粉砕工程を行うと、気孔容積が著しく小さくなるため、硫黄または触媒に対する担持能が著しく低下し、一次電池の放電特性も低下し得る。
【0035】
前記カーボンナノチューブは、気孔容積およびかさ密度が同一である場合、比表面積が大きいほど体積抵抗率が低くなり、導電性が改善されることができる。導電性が改善されるに伴い、一次電池の放電特性も改善されることができる。前記カーボンナノチューブは、比表面積が200~300m2/gであってもよく、210~275m2/gであることが好ましく、220~260m2/gであることがより好ましい。上述の範囲を満たすと、硫黄や触媒活性物質を均一に分散させることができ、カーボンナノチューブとの電気的なネットワーキングをよりスムーズに行うことができる。
【0036】
前記カーボンナノチューブは、かさ密度が60~100kg/m3であってもよく、65~95kg/m3であることが好ましい。上述の範囲を満たすと、カーボンナノチューブの密集度が適切に維持され、カーボンナノチューブの束の内部まで硫黄または触媒を均一に担持することができる。また、前記カーボンナノチューブは、かさ密度が低いほど、カーボンナノチューブ単位体の分布および構造が緩くなり、カーボンナノチューブの電気的なネットワーキングがより改善されることができる。
【0037】
前記カーボンナノチューブは、25℃および20kNの条件で体積抵抗率が0.0187Ω・cm以下であってもよく、好ましくは0.0185Ω・cm以下であってもよい。上述の条件を満たすと、カーボンナノチューブの導電性が改善されることから、一次電池の放電特性が改善されることができる。
【0038】
前記カーボンナノチューブは、純度が80%以上であってもよく、90%以上であることが好ましい。上述の範囲を満たすと、残留触媒成分によるリチウム硫黄電池や燃料電池の作動電圧で酸化や還元反応に参加して副反応を起こす可能性が低くなり得る。
【0039】
2.カーボンナノチューブの製造方法
本発明の他の一実施形態によるカーボンナノチューブの製造方法は、1)主触媒前駆体および助触媒前駆体を含む混合物をγ‐Al2O3に担持し、活性担持体を製造するステップと、2)真空乾燥を含む多段乾燥により、前記活性担持体を乾燥するステップと、3)前記乾燥した活性担持体に熱処理を施し、担持触媒を製造するステップと、4)前記担持触媒の存在下で、カーボンナノチューブを製造するステップとを含む。
【0040】
以下、本発明の他の一実施形態によるカーボンナノチューブの製造方法について詳細に説明する。
【0041】
1)ステップ
まず、主触媒前駆体および助触媒前駆体を含む混合物をγ‐Al2O3に担持し、活性担持体を製造する。
【0042】
前記主触媒前駆体および助触媒前駆体をγ‐Al2O3に均一に担持するために、前記混合物は溶媒をさらに含んでもよく、前記主触媒前駆体および助触媒前駆体は、溶媒に溶解された状態であってもよい。前記溶媒は、水、メタノールおよびエタノールからなる群から選択される1種以上であってもよく、このうち水が好ましい。
【0043】
前記γ‐Al2O3は、多孔度が高く、スピネル構造を有することから、主触媒および助触媒がγ‐Al2O3に不規則に配列され得、不規則に配列された主触媒から成長したカーボンナノチューブは、絡み合い状に製造され得る。
【0044】
前記主触媒は、コバルト、鉄、ニッケル、マンガンおよびクロムからなる群から選択される1種以上であってもよく、このうちコバルトが好ましい。
【0045】
前記主触媒前駆体は、前記主触媒の硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩および酢酸塩からなる群から選択される1種以上であってもよく、このうち主触媒の硝酸塩が好ましい。
【0046】
前記主触媒前駆体は、Co(NO3)2、Co(NO3)2・6H2O、Co2(CO)8、Co2(CO)6[HC=C(C(CH3)3)]、Co(CH3CO2)2、Fe(NO3)3、Fe(NO3)2・nH2O、Fe(CH3CO2)2、Ni(NO3)2、Ni(NO3)2・6H2O、Mn(NO3)2、Mn(NO3)2・6H2O、Mn(CH3CO2)2・n(H2O)およびMn(CO)5Brからなる群から選択される1種以上であってもよく、このうち、Co(NO3)2・6H2O、Fe(NO3)2・nH2O、Ni(NO3)2・6H2Oが好ましい。
【0047】
前記助触媒は、主触媒の分散性を改善するものであり、バナジウムおよびモリブデンからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0048】
前記助触媒前駆体は、NH4VO3、NaVO3、V2O5、V(C5H7O2)3、および(NH4)6Mo7O24・4H2Oからなる群から選択される1種以上であってもよく、このうち、NH4VO3および(NH4)6Mo7O24・4H2Oからなる群から選択される1種以上が好ましい。
【0049】
前記混合物が助触媒前駆体を2種以上含む場合、すなわち、バナジウム前駆体とモリブデン前駆体の両方を含む場合、バナジウムおよびモリブデンの和とバナジウムのモル比が1:0.45~1:0.95または1:0.5~1:0.9になるように含むことができ、このうち、1:0.5~1:0.9になるように含むことが好ましい。上述の条件を満たすと、カーボンナノチューブの構造を安定して維持し、且つ目的とする気孔容積を有するカーボンナノチューブを製造することができる。
【0050】
前記混合物は、前記主触媒前駆体と助触媒前駆体を主触媒と助触媒のモル比が1:0.01~1:0.5、1:0.1~1:0.4、1:0.1~1:0.25になるように含むことができ、このうち、1:0.1~1:0.25になるように含むことが好ましい。上述のモル比を満たすと、主触媒の分散性を向上させることができ、目的とする気孔容積を有するカーボンナノチューブを製造することができる。
【0051】
前記混合物は、主触媒前駆体と助触媒前駆体の沈殿を抑制する役割を果たす有機酸をさらに含んでもよい。
【0052】
前記有機酸は、クエン酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸(malic acid)、酢酸、酪酸、パルミチン酸およびシユウ酸からなる群から選択される1種以上であってもよく、このうちクエン酸が好ましい。
【0053】
前記混合物は、前記有機酸と助触媒前駆体を1:1~1:20、1:2~1:10または1:3~1:6のモル比で含むことができ、このうち、1:3~1:6で含むことが好ましい。上述の範囲を満たすと、触媒の製造時に透明な触媒金属溶液の製造が可能で、含浸時に微粉が抑制された触媒の製造の可能であるという利点がある。
【0054】
本発明の一実施形態によるカーボンナノチューブの製造方法は、前記1)ステップの後、熟成するステップをさらに含んでもよい。
【0055】
前記熟成は、1~60分間または10~50分間行われ得、10~50分間行われることが好ましい。上述の条件を満たすと、前記γ‐Al2O3に主触媒前駆体と助触媒前駆体が十分に担持され得る。また、前記支持体内に存在していた気泡が最大限に除去され、前記支持体の内部の微細気孔まで主触媒前駆体と助触媒前駆体が十分に担持され得る。
【0056】
2)ステップ
次いで、真空乾燥が含まれた多段乾燥により、前記活性担持体を乾燥する。
【0057】
前記多段乾燥は、真空乾燥を含む乾燥工程が2回以上行われることを意味し得る。具体的には、前記多段乾燥は、常圧乾燥と真空乾燥を含むことを意味し得、真空乾燥だけ2回以上含むことを意味し得る。
【0058】
絡み合い状のカーボンナノチューブの気孔容積は、主触媒の均一性および平均粒径に影響を受ける。主触媒が非常に小さく均一であったときに気孔容積を大きくできるが、主触媒を非常に小さく均一に製造することは非常に難しい。しかし、前記多段乾燥を行うと、前記活性担持体内に存在する主触媒前駆体、すなわち、主触媒の配位結合物が容易に分解されるだけでなく、主触媒前駆体を非常に小さく均一な平均粒径を有する主触媒酸化物に転換することができる。また、前記主触媒酸化物から由来した主触媒は、担持触媒内で非常に小さく均一な平均粒径で存在し、かかる主触媒から成長したカーボンナノチューブ単位体は、非常に小さい平均直径を有するため、単位面積当たり存在する量が著しく増加する。かかるカーボンナノチューブは、気孔容積が大きくなるだけでなく、導電性が向上する。また、かかるカーボンナノチューブを一次電池用の正極として用いると、硫黄または触媒に対する担持能および分散性が改善され、電池の駆動時にも構造の変形が最小化し、電池の耐久性を著しく改善することができる。
【0059】
また、前記真空乾燥により主触媒前駆体が容易に分解されるため、担持触媒の生産性が向上することができる。
【0060】
前記真空乾燥は、80~300℃または120~250℃で行われ得、このうち、120~250℃で行われることが好ましい。上述の条件を満たすと、前記主触媒前駆体、すなわち、主触媒の配位結合物が容易に分解されて主触媒酸化物を形成することができ、且つエネルギー消費を最小化することができる。
【0061】
前記真空乾燥は、1~200mbarまたは30~150mbarで行われ得、このうち、30~150mbarで行われることが好ましい。上述の条件を満たすと、前記主触媒前駆体、すなわち、主触媒の配位結合物が急に分解および排出されるため、真空条件でより容易に主触媒酸化物を形成することができ、且つエネルギー消費を最小化することができる。
【0062】
前記真空乾燥は、10分間~3時間または10分間~2時間行われ得、このうち、10分間~2時間行われることが好ましい。上述の条件を満たすと、前記主触媒前駆体を容易に分解して主触媒酸化物に転換することができ、且つエネルギー消費を最小化することができる。
【0063】
一方、前記多段乾燥が常圧乾燥と真空乾燥を含む場合、前記常圧乾燥は、上述の真空乾燥が行われる前に行われ得、前記常圧乾燥によって前記活性担持体内に存在し得る溶媒が除去され得る。
【0064】
前記常圧乾燥は、80~160℃または100~140℃で行われ得、このうち、100~140℃で行われることが好ましい。上述の条件を満たすと、前記活性担持体内に存在する溶媒を十分に除去することができ、且つエネルギー消費は最小化することができる。
【0065】
前記常圧乾燥は、900~1,100mbarで行われ得、950~1,050mbarで行われることが好ましい。上述の条件を満たすと、前記活性担持体内に存在する溶媒を十分に除去することができ、且つエネルギー消費は最小化することができる。
【0066】
前記常圧乾燥は、1~12時間行われ得、3~9時間行われることが好ましい。上述の条件を満たすと、前記活性担持体内に存在する溶媒を十分に除去することができ、且つエネルギー消費は最小化することができる。
【0067】
一方、前記多段乾燥が真空乾燥だけ2回以上含む場合、互いに異なる温度で行われる真空乾燥を2回以上、より具体的には第1温度で行われる1次真空乾燥と、前記第1温度よりも高い第2温度で行われる2次真空乾燥とを含むことができる。
【0068】
前記1次真空乾燥で前記活性担持体内に存在し得る溶媒が除去され得る。
【0069】
前記第1温度は、80~160℃であってもよく、100~140℃であることが好ましい。上述の条件を満たすと、前記活性担持体内に存在する溶媒を十分に除去することができ、且つエネルギー消費は最小化することができる。
【0070】
前記1次真空乾燥は、1~12時間行われ得、3~9時間行われることが好ましい。上述の条件を満たすと、前記活性担持体内に存在する溶媒を十分に除去することができ、且つエネルギー消費は最小化することができる。
【0071】
前記1次真空乾燥は、1~200mbar、1~150mbarまたは80~150mbarで行われ得、このうち、80~150mbarで行われることが好ましい。上述の条件を満たすと、前記活性担持体内に存在する溶媒を十分に除去することができ、且つエネルギー消費は最小化することができる。
【0072】
前記2次真空乾燥に関する説明は、上述の真空乾燥に関する説明にて記載したとおりである。
【0073】
前記第2温度は、175~300℃であってもよく、180~280℃であることが好ましい。上述の条件を満たすと、前記主触媒前駆体、すなわち、主触媒の配位結合物が容易に分解されて主触媒酸化物を形成することができ、且つエネルギー消費を最小化することができる。
【0074】
前記2次真空乾燥は、1~200mbar、1~150mbarまたは1~70mbarで行われ得、このうち、1~70mbarで行われることがより好ましい。上述の条件を満たすと、前記主触媒前駆体、すなわち、主触媒の配位結合物が急に分解および排出されるため、真空条件でより容易に主触媒酸化物を形成することができ、且つエネルギー消費を最小化することができる。
【0075】
前記2次真空乾燥は、10分間~3時間または10分間~2時間行われ得、10分間~2時間行われることが好ましい。上述の条件を満たすと、前記主触媒前駆体を容易に分解して主触媒酸化物に転換することができ、且つエネルギー消費を最小化することができる。
【0076】
3)ステップ
次いで、前記乾燥した活性担持体に熱処理を施し、担持触媒を製造する。
【0077】
前記熱処理を行うと、前記主触媒および助触媒が前記γ‐Al2O3の表面および細孔にコーティングされた状態で存在する担持触媒が製造される。
【0078】
前記熱処理は、600~800℃または620~750℃で行われ得、このうち、620~750℃で行われることが好ましい。上述の条件を満たすと、前記主触媒および助触媒が前記γ‐Al2O3の表面および細孔に均一にコーティングされた状態で担持触媒を製造することができ、且つ前記エネルギー消費は最小化することができる。
【0079】
前記熱処理は、1~12時間または2~8時間行われ得、このうち、2~8時間行われることが好ましい。上述の時間を満たすと、前記触媒前駆体が前記γ‐Al2O3の表面および細孔に均一にコーティングされた状態で存在する担持触媒が製造され得る。
【0080】
4)ステップ
次いで、前記担持触媒の存在下で、カーボンナノチューブを製造する。
【0081】
詳細には、前記担持触媒と炭素系化合物を接触させてカーボンナノチューブが製造され得、具体的には、化学気相合成法を行ったものであってもよい。
【0082】
前記カーボンナノチューブを製造するステップについて詳細に説明すると、先ず、前記担持触媒を水平固定層反応器または流動層反応器内に投入することができる。次いで、前記気体状態である炭素系化合物の熱分解温度以上または前記担持触媒に担持された触媒の融点以下の温度で前記気体状態である炭素系化合物、または前記気体状態である炭素系化合物と還元ガス(例えば、水素など)およびキャリアガス(例えば、窒素など)の混合ガスを注入し、気体状態である炭素系化合物の分解により、化学的気相合成法でカーボンナノチューブを成長させることができる。
【0083】
前記のような化学気相合成法によって製造されるカーボンナノチューブは、結晶の成長方向がチューブ軸とほぼ平行であり、チューブ長さ方向に黒鉛構造の結晶性が高いことがある。結果、単位体の直径が小さく、導電性および強度が高いカーボンナノチューブが製造され得る。
【0084】
前記化学気相合成法は、600~800℃または650~750℃で行われ得、このうち、650~750℃で行われることが好ましい。上述の温度を満たすと、非晶性炭素の発生を最小化しながらカーボンナノチューブを製造することができる。
【0085】
前記反応のための熱源としては誘導加熱(induction heating)、輻射熱、レーザ、IR、マイクロ波、プラズマ、表面プラズモン加熱などが用いられ得る。
【0086】
また、前記炭素系化合物は炭素を供給することができ、300℃以上の温度で気体状態で存在できるものであれば、特に制限なく使用可能である。
【0087】
前記炭素系化合物は、炭素数6以下の炭素系化合物であってもよく、一酸化炭素、メタン、エタン、エチレン、エタノール、アセチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、ブタジエン、ペンタン、ペンテン、シクロペンタジエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼンおよびトルエンからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0088】
上述の反応によってカーボンナノチューブを成長させた後、カーボンナノチューブの配列をより規則的に整列するための冷却工程が選択的にさらに行われてもよい。前記冷却工程は、具体的には、熱源の除去による自然冷却または冷却器などを用いて行われ得る。
【0089】
3.一次電池用の正極
本発明のさらに他の一実施形態による一次電池用の正極は、気孔容積が0.94cm3/g以上であり、絡み合い状のカーボンナノチューブを含む正極活物質および結着剤を含む。
【0090】
前記一次電池用の正極は、上述のカーボンナノチューブを含むことから、導電性に優れ、正極の気孔容積および平均気孔径が、従来の一次電池用の正極に比べて大きくなることができる。これにより、前記一次電池用の正極は、硫黄または触媒に対する担持能が著しく向上するため、これを含む一次電池の放電容量が著しく改善されることができる。また、上述のカーボンナノチューブは、絡み合い状を有することから、電解液による構造変形が最小化され得る。これにより、これを含む一次電池は、耐久性が向上することができ、寿命特性が著しく改善されることができる。また、一次電池がリチウム‐塩化チオニル電池である場合、電池の駆動時に生成されたLiClを一次電池用の正極に最大に蓄積することができ、一次電池の電気容量を最大に放電させることができる。
【0091】
前記一次電池用の正極は、気孔容積が0.25cm3/g以上であり、平均気孔径が13.5nm以上であってもよく、好ましくは、気孔容積が0.25cm3/g~1.5cm3/g、平均気孔径が13.5nm~50nmであってもよく、より好ましくは、気孔容積が0.25cm3/g~1.1cm3/g、平均気孔径が13.5nm~30nmであってもよい。上述の範囲を満たすと、硫黄または触媒に対する担持能がより向上することができ、これにより、一次電池の放電容量が著しく改善されることができる。
【0092】
前記一次電池用の正極は、気孔容積が大きいほど比表面積が大きくなることができ、これにより、硫黄と接触できる正極の比表面積が増加するため、一次電池の放電容量が改善されることができる。前記一次電池用の正極は、比表面積が60~200m2/gまたは70~180m2/gであってもよく、このうち、70~180m2/gであることが好ましい。上述の条件を満たすと、放電容量が増大され得る。
【0093】
一方、前記カーボンナノチューブは、気孔容積が0.95cm3/g以上であることが好ましく、0.95~2.0cm3/gであることがより好ましい。気孔容積が上述の条件を満たすと、カーボンナノチューブが一次電池用の正極として用いられるときに、硫黄または触媒に対する担持能が改善され、電池の容量特性が著しく改善されることができる。気孔容積が0.94cm3/g未満の場合、カーボンナノチューブの硫黄または触媒に対する担持能が既存に比べて改善されないため、電池の容量特性が改善されない。
【0094】
前記カーボンナノチューブは、絡み合い状であるため、有機溶媒と接触しても膨潤現象が生じにくい。また、粉砕工程を行っても気孔容積がほとんど変化しない。これにより、前記カーボンナノチューブは、一次電池用の正極として用いられるときに、電池の駆動時にも構造の変形が最小化し、電池の耐久性を著しく改善することができる。
【0095】
しかし、カーボンナノチューブの気孔容積が0.94cm3/g以上であっても、束状である場合、有機溶媒と接触すると膨潤現象が生じやすい。そのため、一次電池用の正極として用いるときに、電解液による構造の変形が生じやすく、電池の耐久性が著しく低下し得る。また、一次電池用の正極として加工するために粉砕工程を行うと、気孔容積が著しく小さくなるため、硫黄または触媒に対する担持能が著しく低下し、一次電池の放電特性も低下し得る。
【0096】
前記カーボンナノチューブは、気孔容積およびかさ密度が同一である場合、比表面積が大きいほど体積抵抗率が低くなり、導電性が改善されることができる。導電性が改善されるに伴い、一次電池の放電特性も改善されることができる。前記カーボンナノチューブは、比表面積が200~300m2/gであってもよく、210~275m2/gであることが好ましく、220~260m2/gであることがより好ましい。上述の範囲を満たすと、硫黄や触媒活性物質を均一に分散させることができ、カーボンナノチューブとの電気的なネットワーキングをよりスムーズに行うことができる。
【0097】
前記カーボンナノチューブは、かさ密度が60~100kg/m3であってもよく、65~95kg/m3であることが好ましい。上述の範囲を満たすと、カーボンナノチューブの密集度が適切に維持され、カーボンナノチューブの束の内部まで硫黄または触媒を均一に担持することができる。また、前記カーボンナノチューブは、かさ密度が低いほど、カーボンナノチューブ単位体の分布および構造が緩くなり、カーボンナノチューブの電気的なネットワーキングがより改善されることができる。
【0098】
前記カーボンナノチューブは、25℃および20kNの条件で、体積抵抗率が0.0187Ω・cm以下であってもよく、好ましくは0.0185Ω・cm以下であってもよい。上述の条件を満たすと、カーボンナノチューブの導電性が改善されるため、一次電池の放電特性が改善されることができる。
【0099】
前記カーボンナノチューブは、「2.カーボンナノチューブの製造方法」に記載の方法で製造され得る。
【0100】
一方、前記一次電池がリチウム‐硫黄電池である場合、前記正極活物質は、硫黄をさらに含んでもよい。
【0101】
前記正極活物質は、正極のクラック生成を抑制するために、アセチレンブラックをさらに含んでもよい。
【0102】
一方、前記結着剤は、一次電池用の正極が安定した構造を維持するように、カーボンナノチューブ同士を固定する役割を果たす。したがって、一次電池の駆動時に一次電池用の正極の構造の変形を最小化することができ、一次電池用の正極の耐久性がより改善することができる。また、前記結着剤によってカーボンナノチューブの電気的接点が増加することができ、これにより、一次電池用の正極の導電性が著しく改善されることができる。
【0103】
前記結着剤は、ポリビニルアルコール、ポリイミド、エチレン‐プロピレン‐ジエン三元共重合体、スチレン‐ブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidnefluoride、PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン‐ヘキサフルオロプロピレン共重合体、およびカルボキシメチルセルロース(CMC)から選択される1種以上であってもよく、このうち、スチレン‐ブタジエンゴムおよびポリテトラフルオロエチレンが好ましい。
【0104】
前記正極活物質と結着剤の重量比は、1:0.3~1:1または1:0.4~1:0.9であってもよく、このうち、1:0.4~1:0.9が好ましい。上述の範囲を満たすと、一次電池用の正極の表面にクラックが生成されることを生じ得、正極活物質の含量の減少によって一次電池の放電特性が低下することを防止することができる。
【0105】
一方、前記一次電池用の正極は、集電体をさらに含んでもよい。前記集電体は、特に限定されないが、アルミニウム薄膜、ステンレス鋼薄膜、銅薄膜、およびニッケル薄膜からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0106】
4.一次電池
本発明の一次電池は、上述の一次電池用の正極を含み、負極、電解液をさらに含む。
【0107】
前記負極は、特に限定されず、リチウム薄膜であってもよく、電解液は、リチウム塩および有機溶媒を含むことができる。前記リチウム塩は、LiAlCl4、LiTFSl、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlO4、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(C2F5SO3)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiCl、LiI、およびLiB(C2O4)2からなる群から選択される1種以上であってもよい。前記有機溶媒は、塩化チオニル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、メチルアセテート、エチルアセテート、γ‐ブチロラクトン、ε‐カプロラクトン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ベンゼン、フルオロベンゼン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートエチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミドおよび1,3‐ジオキソランからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0108】
前記一次電池は、リチウム‐硫黄電池、リチウム‐塩化チオニル電池または燃料電池であってもよい。
【0109】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施するように本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、各種の相違する形態に実現されてもよく、ここで説明する実施例に限定されない。
【0110】
5.カーボンナノチューブの製造および評価
1)カーボンナノチューブの製造
実施例1‐1
<担持触媒の製造>
主触媒前駆体としてCo(NO3)2・6H2O25.68g(Co:約88.2mmol)、助触媒前駆体としてNH4VO31.23g(V:約10.5mmol)、(NH4)6Mo7O24・4H2O0.76g(Mo:約4.3mmol)、クエン酸0.61gおよび蒸留水60mlを投入し、触媒前駆体溶液を製造した。前記触媒前駆体溶液の全量をγ‐Al2O3(商品名:SCCa5/200、製造社:Sasol)20g(約196.15mmol)に担持し、活性担持体を製造した。前記活性担持体を80℃の恒温槽で30分間撹拌し、熟成された活性担持体を製造した。
【0111】
次いで、熟成された活性担持体を120℃、130mbarで60分間1次真空乾燥した。1次真空乾燥した活性担持体を200℃、50mbarで60分間2次真空乾燥した。2次真空乾燥した活性担持体を690℃で120分間熱処理し、担持触媒を製造した。
【0112】
<カーボンナノチューブの製造>
取得した担持触媒1gを流動層反応装置内に位置する内径が55mmである石英管の下部に装着した。流動層反応装置の内部を窒素雰囲気で690℃に一定な速度で昇温させた後、維持し、窒素ガスと水素、エチレンガスを2:0.5:1の体積比で2l/分で流しながら60分間合成し、カーボンナノチューブ(23.3g)を製造した。
【0113】
実施例1‐2
主触媒前駆体としてCo(NO3)2・6H2O25.68g(Co:約88.2mmol)、助触媒前駆体としてNH4VO30.79g(V:約6.8mmol)および(NH4)6Mo7O24・4H2O1.14g(Mo:約6.5mmol)、クエン酸0.58gおよび蒸留水60mlを投入して触媒前駆体溶液を製造した以外は、実施例1と同じ方法で担持触媒、カーボンナノチューブ(19.1g)を製造した。
【0114】
実施例1‐3
主触媒前駆体としてCo(NO3)2・6H2O25.68g(Co:約88mmol)、助触媒前駆体としてNH4VO30.89g(V:約7.6mmol)および(NH4)6Mo7O24・4H2O0.38g(Mo:2.2mmol)、クエン酸0.38gおよび蒸留水60mlを投入して触媒前駆体溶液を製造した以外は、実施例1と同じ方法で担持触媒、カーボンナノチューブ(20.4g)を製造した。
【0115】
実施例1‐4
主触媒前駆体としてCo(NO3)2・6H2O25.68g(Co:約88.2mmol)、助触媒前駆体としてNH4VO31.75g(V:約15mmol)および(NH4)6Mo7O24・4H2O0.76g(Mo:約4.3mmol)、クエン酸0.76gおよび蒸留水60mlを投入して触媒前駆体溶液を製造した以外は、実施例1と同じ方法で担持触媒、カーボンナノチューブ(28g)を製造した。
【0116】
実施例1‐5
主触媒前駆体としてCo(NO3)2・6H2O29.30g(Co:約100.7mmol)、助触媒前駆体としてNH4VO30.6g(V:約5.1mmol)および(NH4)6Mo7O24・4H2O0.95g(Mo:約5.4mmol)、クエン酸0.45gおよび蒸留水60mlを投入して触媒前駆体溶液を製造した以外は、実施例1と同じ方法で担持触媒、カーボンナノチューブ(18g)を製造した。
【0117】
実施例1‐6
熟成された活性担持体を120℃、60分間1次常圧乾燥し、1次常圧乾燥した活性担持体を200℃、50mbarで60分間2次真空乾燥した以外は、実施例1と同じ方法で担持触媒、カーボンナノチューブ(14g)を製造した。
【0118】
実施例1‐7
<担持触媒の製造>
主触媒前駆体としてCo(NO3)2・6H2O29.63g(Co:約101.9mmol)、助触媒前駆体としてNH4VO32.38g(V:約20.3mmol)、クエン酸1.19gおよび蒸留水80mlを投入し、触媒前駆体溶液を製造した。前記触媒前駆体溶液の全量をγ‐Al2O3(商品名:SCCa5/200、製造社:Sasol)20g(約196.15mmol)に担持し、活性担持体を製造した。前記活性担持体を80℃の恒温槽で30分間撹拌しながら熟成させた。
【0119】
次いで、熟成された活性担持体を120℃、130mbarで60分間1次真空乾燥した。1次真空乾燥した活性担持体を200℃、50mbarで60分間2次真空乾燥した。2次真空乾燥した活性担持体を690℃で120分間熱処理し、担持触媒を製造した。
【0120】
<カーボンナノチューブの製造>
取得した担持触媒1gを流動層反応装置内に位置する内径が55mmである石英管の下部に装着した。流動層反応装置の内部を窒素雰囲気で690℃に一定な速度で昇温させた後、維持し、窒素ガスと水素、エチレンガスを2:0.5:1の体積比で2l/分で流しながら60分間合成し、カーボンナノチューブ(27.0g)を製造した。
【0121】
比較例1‐1
熟成された活性担持体を120℃で240分間1次常圧乾燥し、前記1次常圧乾燥した活性担持体を200℃で360分間2次常圧乾燥した以外は、実施例1と同じ方法で担持触媒およびカーボンナノチューブ(21.6g)を製造した。
【0122】
比較例1‐2
熟成された活性担持体を175℃、10mbarで1時間1次真空乾燥し、2次真空乾燥をしなかった以外は、実施例1と同じ方法で担持触媒およびカーボンナノチューブ(20g)を製造した。
【0123】
比較例1‐3
熟成された活性担持体を120℃、150mbarで120分間1次真空乾燥し、2次真空乾燥をしなかった以外は、実施例1と同じ方法で担持触媒およびカーボンナノチューブ(21.3g)を製造した。
【0124】
比較例1‐4
束型カーボンナノチューブ(商品名:BT1001M、製造社:LG Chem)を用いた。
【0125】
以下、実施例1‐1~1‐7と比較例1‐1~1‐3の製造条件を下記表1および2にまとめた。
【0126】
【0127】
2)物性評価実験例1‐1:カーボンナノチューブの物性評価
前記製造されたカーボンナノチューブを下記項目に対して評価を行い、その結果を下記表2に示した。
【0128】
(1)2次構造形状:走査電子顕微鏡を用いて10,000倍率で観察した。
【0129】
(2)気孔容積(cm3/g):ASTM D4641に準じて測定した。
【0130】
(3)比表面積(m2/g):BELSORP‐mini II(商品名、製造社:BEL Japan社)を用いてBET法で測定した。
【0131】
(4)かさ密度(kg/m3):ASTM B329‐06に準じて測定した。
【0132】
(5)製造収率:[(製造されたカーボンナノチューブの全重量)-(使用した担持触媒の全重量)]/(使用した担持触媒の全重量)
【0133】
(6)体積抵抗率(volume resistivity、Ω・cm):N&H Technology GmbH社のMCP‐PD51で測定した。具体的には、25℃でCNT0.5gを1cm直径の円筒状のサンプルセルに入れた後、4kN(12.73MPa)、8kN(25.46MPa)、12kN(38.20MPa)、16kN(50.93MPa)、20kN(63.66MPa)と順に圧力を上げ、20kN(63.66MPa)のときにCNTの厚さが1.4mmであり、そのときの体積抵抗率を測定した。
【0134】
体積抵抗率(Ω・cm)=R(Ω)・RCF・t(cm)
R(Ω)=U/I
U(V):電位差(potential difference)
I(A):電流
RCF:補正係数
【0135】
一方、
図1は体積抵抗率の測定方法を模写した図である。
【0136】
図1は体積抵抗率数式に適用される、電位差Uと電流Iを測定位置を示した図である。電位差Uは、針1と4との間で測定した電位差を意味し、電流Iは、針2と針3との間で測定した電流を意味する。また、tは、20kN(63.66MPa)下での円筒状のサンプルセルに入れたCNTの厚さを意味する。
【0137】
(7)平均気孔径(nm):BELSORP‐mini II(商品名、製造社:BEL Japan社)およびAFSMTMを用いて、液体窒素温度(-196℃)で相対圧力(P/P0)を0.01から0.99に変化させながらN2吸着および脱着量を測定した後、BJH数式を用いて、脱着基準に「圧力による気孔容積」を「圧力による気孔径(dp)のlog値」で微分した値が最大であるときの気孔径を平均気孔径として測定した。
【0138】
(8)体積平均粒度(μm):Microtrac社のBlue wave装備を用いて、サンプルを注入した後、40Wの超音波強度で2分間処理した後、体積平均粒度を測定した。
【0139】
【0140】
前記表2を参照すると、実施例1‐1~1‐7、比較例1‐1~1‐3のカーボンナノチューブは、2次構造物形状が絡み合い状であるため、ボールミル処理の前後に気孔容積の変化が微小であった。しかし、比較例1‐4のカーボンナノチューブは、2次構造物形状が束状であるため、ボールミル処理の前後に気孔容積が著しく小さくなった。
【0141】
6.前記カーボンナノチューブを活用した一次電池の製造および評価
1)粉砕されたカーボンナノチューブおよび一次電池(リチウム‐硫黄電池)の製造
実施例2‐1~2‐6
下記条件で実施例1‐1~1‐6のカーボンナノチューブに対してボールミル工程を行って粉砕した。
【0142】
ボール種類:ジルコニアボール(Zirconia ball)、
ボール直径、3mm、
ボール重量:1kg、
ボール回転速度:230rpm、
ボールミル時間:15分
カーボンナノチューブ投入量:60g
容器:2L PE bottle
【0143】
前記のように粉砕されたカーボンナノチューブと硫黄を1:2の重量比でボールミル混合した後、80℃の温度で熱処理を施し、カーボンナノチューブ‐硫黄複合体を製造した。バインダーとしてスチレン‐ブタジエンゴム(SBR)と、導電材としてカーボンブラック、カーボンナノチューブ‐硫黄複合体とを5:20:75の重量比で混合し、正極を製造した。負極は、リチウム金属薄膜を用いており、ポリエチレンセパレータに電解液を注入し、コインセル状の一次電池を製造した。この際、電解液は、TEGDME(テトラエチレングリコールジメチルエーテル)/DOL(ジオキソラン)/DME(ジメチルエーテル)(体積比=1:1:1)からなる有機溶媒に、LiTFSl(リチウム ビス-トリフルオロメタンスルホニミド、lithium bis‐trifluoromethanesulfonimide)が0.1Mになるように溶解して製造し、実施例1‐1~1‐6のカーボンナノチューブが適用されて製造された一次電池それぞれを実施例2‐1~2‐6の電池として評価した。
【0144】
実施例2‐7
下記条件で、実施例1‐7のカーボンナノチューブに対してボールミル工程を行って粉砕した。
【0145】
ボール種類:ジルコニアボール(Zirconia ball)
ボール直径:3mm
ボール重量:1kg
ボール回転速度:230rpm
ボールミル時間:5分
カーボンナノチューブ投入量:60g
容器:2L PE bottle
【0146】
実施例2‐1と同じ方法で一次電池を製造した。
【0147】
実施例2‐8
下記条件で、実施例1‐7のカーボンナノチューブに対してボールミル工程を行って粉砕した。
【0148】
ボール種類:ジルコニアボール(Zirconia ball)
ボール直径:3mm
ボール重量:1kg
ボール回転速度:230rpm、
ボールミル時間:15分
カーボンナノチューブ投入量:60g
容器:2L PE bottle
【0149】
実施例2‐1と同じ方法で一次電池を製造した。
【0150】
比較例2‐1~2‐4
比較例1‐1~1‐4のカーボンナノチューブを用いて、前記実施例2‐1と同じ方法で粉砕されたカーボンナノチューブおよび一次電池を製造した。
【0151】
2)物性評価
実験例2‐1:粉砕されたカーボンナノチューブおよび一次電池(リチウム‐硫黄電池)の物性評価
実施例2‐1~2‐8および比較例2‐1~2‐4で粉砕されたカーボンナノチューブの物性を、前記実験例1‐1に記載の評価方法に基づいて評価し、一次電池としてリチウム‐硫黄電池に対しては、下記条件で初期放電容量を測定し、その結果を下記表3に示した。
【0152】
(1)初期放電容量(mAh/g):1.5~2.8Vの電圧範囲で0.1Cの条件で放電実験を行い、1.5Vで放電容量を測定した。
【0153】
【0154】
前記表3を参照すると、実施例2‐1~2‐8、比較例2‐1~2‐3に適用されたカーボンナノチューブは、2次構造物形状が絡み合い状であるため、ボールミル処理の前後に気孔容積の変化が微小であった。しかし、比較例2‐4に適用されたカーボンナノチューブは、2次構造物形状が束状であるため、ボールミル処理の前後に気孔容積が著しく小さくなった。実施例2‐1~実施例2‐6の一次電池は、気孔容積が0.94cm3/g以上であるカーボンナノチューブを正極として用いるため、担持能に優れる。これにより、正極が硫黄を十分に担持することができ、一次電池の初期放電容量が大きくなった。
【0155】
また、実施例2‐1~実施例2‐6の一次電池を比較すると、ボールミル処理後のカーボンナノチューブの気孔容積が大きくなるほど、一次電池の初期放電容量が大きくなったことを確認することができた。
【0156】
カーボンナノチューブの気孔容積とかさ密度が同一である実施例2‐4および2‐5を比較すると、比表面積が大きくなるほど、体積抵抗率が低くなり、ボールミル処理後に気孔容積がさらに大きくなり、一次電池の初期放電容量が大きくなった。かかる結果から、カーボンナノチューブの比表面積も一次電池の初期放電容量に影響を及ぼすことを確認することができた。
【0157】
一方、比較例2‐1~2‐3の一次電池は、気孔容積が0.94cm3/g未満であるカーボンナノチューブを正極として用いるため、担持能に優れない。そのため、正極が硫黄を十分に担持することができないため、一次電池の初期放電容量が低かった。また、比較例2‐1~2‐3の一次電池では、実施例の一次電池とは異なり、ボールミル処理後のカーボンナノチューブの気孔容積が一次電池の初期放電容量に大きい影響を及ぼさないことを確認することができた。
【0158】
比較例2‐4の一次電池は、実施例と同等水準の気孔容積を有するカーボンナノチューブを正極として用いたが、カーボンナノチューブの2次構造物形状が束状であるため、ボールミル処理によって気孔容積が著しく小さくなった。そのため、リチウム‐硫黄電池に適用するときに硫黄を十分に担持することができないため、リチウム‐硫黄電池の初期放電容量が著しく低下した。
【0159】
7.一次電池用の正極の製造および評価
1)正極および一次電池(リチウム‐塩化チオニル電池)の製造
実施例3‐1~実施例3‐7、比較例3‐1および比較例3‐2
<正極の製造>
正極活物質、結着剤および溶媒などの正極組成物の成分および含量を、下記表4に示したように適用し、混合および撹拌により正極組成物を製造した。製造された正極組成物をエキスパンドニッケル(expanded nickel)基板上に有するようにコーティングした後、120℃および100mbarで240分間真空乾燥し、0.8mmの厚さを有する正極を製造した。
【0160】
<一次電池の製造>
正極として実施例および比較例の正極、負極としてリチウム金属薄膜、電解液としてLiAlCl4塩をSOCl2溶媒に溶解した溶液(1.25M)を用いて、巻回型の電池を製造した。
【0161】
【0162】
(A‐1)実施例2‐7の粉砕されたカーボンナノチューブ
(A‐2)実施例2‐8の粉砕されたカーボンナノチューブ
(A‐3)アセチレンブラック(AB):Denka社のSB50L
(A‐4)ケッチェンブラック(KB):LION社のEC3001J
(B)DAIKIN社のPTFE‐D(ポリテトラフルオロエチレン、PTFE)
(C‐1)イソプロピルアルコール(IPA)
(C‐2)水
【0163】
2)正極組成物、正極および一次電池(リチウム/塩化チオニル電池)の評価
実験例3‐1
実施例および比較例の正極組成物、正極および一次電池の物性を下記の方法で測定し、その結果を下記の[表5]に記載した。
【0164】
(1)体積抵抗率(volume resistivity、Ω・cm):N&H Technology GmbH社のMCP‐PD51で測定した。具体的には、25℃で正極組成物0.4gを1cm直径の円筒状のサンプルセルに入れた後、4kN(12.73MPa)、8kN(25.46MPa)、12kN(38.20MPa)、16kN(50.93MPa)、20kN(63.66MPa)と順に圧力を上げ、20kN(63.66MPa)のときに正極組成物の厚さが0.1cmであり、そのときの電位差、電流および抵抗を測定し、これを下記式に適用して体積抵抗率を算出した。また、傾向線を活用して、密度が1g/ccであるときの体積抵抗率を算出した。
【0165】
(2)比表面積(m2/g):実験例1‐1と同じ方法で測定した。
【0166】
(3)気孔容積(cm3/g):実験例1‐1と同じ方法で測定した。
【0167】
(4)平均気孔径(nm):実験例1‐1と同じ方法で測定した。
【0168】
(5)厚さ(mm):ノギス(Vernier calipers)で厚さを測定した。
【0169】
(6)クラックの発生可否:正極の表面を光学顕微鏡で撮影した。
×:クラック未発生、○:クラック発生
【0170】
(7)放電時間(秒):電流密度の条件は、初期休止時間30秒後(1Aで30秒→休止時間30秒→0.25Aで600秒→休止時間30秒→0.6Aで300秒)とし、この過程を繰り返して、終止電圧(2.0V)まで放電実験を行い、放電時間を測定した。
【0171】
(8)放電容量(mAh/g):一次電池の電流密度を0.6Aとし、所定の電流で終止電圧(2.0V)まで放電実験を行い、放電容量を測定した。
【0172】
【0173】
[表5]を参照すると、実施例3‐1~実施例3‐7の一次電池用の正極は、比較例3‐1および3‐2の一次電池用の正極に比べて気孔容積および平均気孔径が大きいため、硫黄に対する担持能に優れる。これにより、一次電池の放電時間および放電容量が著しく改善したことを確認することができた。
【0174】
一方、比較例3‐1の一次電池用の正極は、気孔容積が小さいため、硫黄に対する担持能に優れていない。よって、正極が硫黄を十分に担持することができないため、一次電池の放電容量が低く、放電時間が短かった。
【0175】
また、比較例3‐2の一次電池用の正極は、気孔容積は適切であるものの平均気孔径が小さいため、硫黄に対する担持能にも優れていない。よって、正極が硫黄を十分に担持することができないため、一次電池の放電容量が低く、放電時間が短かった。