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特許7086432エチレン/α-オレフィン共重合体およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】エチレン/α-オレフィン共重合体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 210/16 20060101AFI20220613BHJP
   C08F 2/38 20060101ALI20220613BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20220613BHJP
   C08F 4/76 20060101ALI20220613BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
C08F210/16
C08F2/38
C08L23/08
C08F4/76
C08F4/6592
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021512350
(86)(22)【出願日】2019-05-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 KR2019005368
(87)【国際公開番号】W WO2019212307
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2020-11-04
(31)【優先権主張番号】10-2018-0052071
(32)【優先日】2018-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0052072
(32)【優先日】2018-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0111510
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0111511
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0050468
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】スル・キ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・ウン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ウ・イ
(72)【発明者】
【氏名】キ・ウン・キム
(72)【発明者】
【氏名】チョン・フン・イ
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-199930(JP,A)
【文献】特開2014-168091(JP,A)
【文献】特開2015-162498(JP,A)
【文献】特開2015-127402(JP,A)
【文献】Macromolecules,2003年,Vol.36,p.3026-3034
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-246/00
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)~(f)の条件を満たす、エチレン/α-オレフィン共重合体であって:
(a)ASTM D-792に準じて測定した密度:0.850~0.910g/cc
(b)メルトインデックス(Melt Index、MI、190℃、2.16kg荷重条件):0.1~100dg/分
(c)分子量分布(MWD):1.5~3.0
(d)下記式1によるR値が0.18~0.59
【数1】
(前記式1中、
vd、Ntv、Nvl、およびNはそれぞれ、核磁気共鳴分光分析により測定された、炭素原子1000個当たりのビニリデン(vinylidene)、トリビニル(trivinyl)、ビニレン(vinylene)、およびビニル(vinyl)官能基の個数を意味する。)
(e)下記式2によるRvd値が0.02~0.10
【数2】
(前記式2中、
vd、Ntv、Nvl、およびNはそれぞれ、核磁気共鳴分光分析により測定された、炭素原子1000個当たりのビニリデン(vinylidene)、トリビニル(trivinyl)、ビニレン(vinylene)、ビニル(vinyl)官能基の個数を意味する。)
(f)下記式3によるRtv値が0.12~0.30
【数3】
(前記式3中、
、Ntv、Nvl、およびNvdはそれぞれ、核磁気共鳴分光分析により測定された、炭素原子1000個当たりのビニル(vinyl)、トリビニル(trivinyl)、ビニレン(vinylene)、およびビニリデン(vinylidene)官能基の個数を意味する。)
前記N は0.01~0.3である、エチレン/α-オレフィン共重合体。
【請求項2】
前記R値が0.19~0.46である、請求項1に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体。
【請求項3】
密度が0.855~0.90g/ccである、請求項1又は2に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体。
【請求項4】
メルトインデックス(190℃、2.16kg荷重条件)が1.5~37dg/分である、請求項1~のいずれか一項に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体。
【請求項5】
核磁気共鳴分光分析により測定された、炭素原子1000個当たりのビニル(vinyl)官能基の個数が0.01~0.3個であり;
メルトインデックス(190℃、2.16kg荷重条件)に対するメルトインデックス(190℃、10kg荷重条件)値であるMI10/MI2.16値が8.5以下である、請求項1~のいずれか一項に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体。
【請求項6】
重量平均分子量(Mw)が40,000~150,000g/molである、請求項1~のいずれか一項に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体。
【請求項7】
分子量分布が1.5~2.2である、請求項1~のいずれか一項に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体。
【請求項8】
前記α-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、および1-エイコセンからなる群から選択される1種以上を含むものである、請求項1~のいずれか一項に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体。
【請求項9】
前記α-オレフィンは、共重合体の総重量に対して0超過99モル%以下の含量で含まれる、請求項1~のいずれか一項に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体。
【請求項10】
下記化学式1で表される遷移金属化合物を含む触媒組成物の存在下で、水素を5~100cc/分で投入してエチレンおよびα-オレフィン系単量体を重合するステップを含む、請求項1~のいずれか一項に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体の製造方法。
【化1】
(前記化学式1中、
は、水素;C1~20のアルキル;C3~20のシクロアルキル;C2~20のアルケニル;C1~20のアルコキシ;C6~20のアリール;C7~20のアリールアルコキシ;C7~20のアルキルアリール;またはC7~20のアリールアルキルであり、
2a~R2eは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;C1~20のアルキル;C3~20のシクロアルキル;C2~20のアルケニル;C1~20のアルコキシ;またはC6~20のアリールであり、
は、水素;ハロゲン;C1~20のアルキル;C3~20のシクロアルキル;C2~20のアルケニル;C6~20のアリール;C7~20のアルキルアリール;C7~20のアリールアルキル;またはハロゲン、C1~20のアルキル、C3~20のシクロアルキル、C2~20のアルケニル、C1~20のアルコキシ、およびC6~20のアリールからなる群から選択される1種以上で置換されたフェニルであり、
~Rは、それぞれ独立して、水素;シリル;C1~20のアルキル;C3~20のシクロアルキル;C2~20のアルケニル;C6~20のアリール;C7~20のアルキルアリール;C7~20のアリールアルキル;またはC1~20のヒドロカルビルで置換された14族金属のメタロイドラジカルであり;前記R~Rのうち互いに隣接する2つ以上は、互いに連結されて環を形成してもよく、
Qは、Si、C、N、P、またはSであり、
Mは、4族遷移金属であり、
およびXは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;C1~20のアルキル;C3~20のシクロアルキル;C2~20のアルケニル;C6~20のアリール;C7~20のアルキルアリール;C7~20のアリールアルキル;C1~20のアルキルアミノ;またはC6~20のアリールアミノである。)
【請求項11】
前記Rは、水素;C1~12のアルキル;C3~12のシクロアルキル;C1~12のアルコキシ;C6~12のアリール;C7~13のアリールアルコキシ;C7~13のアルキルアリール;またはC7~13のアリールアルキルであり、
前記R2a~R2eは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;C1~12のアルキル;C3~12のシクロアルキル;C2~12のアルケニル;C1~12のアルコキシ;またはフェニルであり、
前記Rは、水素;ハロゲン;C1~12のアルキル;C3~12のシクロアルキル;C2~12のアルケニル;C7~13のアルキルアリール;C7~13のアリールアルキル;フェニル;またはハロゲン、C1~12のアルキル、C3~12のシクロアルキル、C2~12のアルケニル、C1~12のアルコキシ、およびフェニルからなる群から選択される1種以上で置換されたフェニルであり、
前記R~Rは、それぞれ独立して、水素;C1~12のアルキル;C3~12のシクロアルキル;C6~12のアリール;C7~13のアルキルアリール;またはC7~13のアリールアルキルであり、
前記R~Rのうち互いに隣接する2つ以上は、互いに連結されてC5~12の脂肪族環またはC6~12の芳香族環を形成してもよく、
前記脂肪族環または芳香族環は、ハロゲン、C1~12のアルキル、C2~12のアルケニル、またはC6~12のアリールで置換されてもよく、
前記QはSiであり、
前記MはTiであり、
前記XおよびXは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;C1~12のアルキル基;またはC2~12のアルケニルである、請求項1に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体の製造方法。
【請求項12】
前記遷移金属化合物は、下記化学式1-1~1-10の化合物からなる群から選択されるものである、請求項1に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体の製造方法。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【請求項13】
前記重合が100~180℃で行われる、請求項1~1のいずれか一項に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体の製造方法。
【請求項14】
請求項1からの何れか一項に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体を含む光学フィルム用樹脂組成物。
【請求項15】
架橋を行った後に測定したイエローインデックス値が1.5以下である、請求項1に記載の光学フィルム用樹脂組成物。
【請求項16】
架橋を行った後に測定した全光線透過率(Tt)が90.0%以上である、請求項1又は1に記載の光学フィルム用樹脂組成物。
【請求項17】
不飽和シラン化合物、アミノシラン化合物、架橋剤、架橋助剤、光安定剤、UV吸収剤、および熱安定剤からなる群から選択される1種以上をさらに含む、請求項1~1のいずれか一項に記載の光学フィルム用樹脂組成物。
【請求項18】
請求項1~1のいずれか一項に記載の光学フィルム用樹脂組成物を含む光学フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年5月4日付けの韓国特許出願第2018-0052071号、2018年9月18日付けの韓国特許出願第2018-0111511号、2018年9月18日付けの韓国特許出願第2018-0111510号、2018年5月4日付けの韓国特許出願第2018-0052072号、および2019年4月30日付けの韓国特許出願第2019-0050468号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、分子量分布が狭く、且つ重合体中のビニル基の含量が一定の範囲内に調節されることで、優れた物理的特性を示すエチレン/α-オレフィン共重合体、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
オレフィン重合触媒系は、チーグラー・ナッタおよびメタロセン触媒系に分類可能であり、この二種の高活性触媒系は、それぞれの特徴に応じて発展されて来た。チーグラー・ナッタ触媒は、50年代に発明されて以来、既存の商業プロセスに広く適用されて来たが、多数の活性点が混在する多活性点触媒(multi-site catalyst)であるため、重合体の分子量分布が広いという特徴を有し、共単量体の組成分布が均一ではないため、所望の物性を確保するには限界があるという問題がある。
【0004】
一方、メタロセン触媒は、遷移金属化合物が主成分である主触媒と、アルミニウムが主成分である有機金属化合物である助触媒の組み合わせからなり、このような触媒は、均一系錯体触媒であって、単一活性点触媒(single site catalyst)である。単一活性点の特性により、分子量分布が狭く、共単量体の組成分布の均一な高分子が得られ、触媒のリガンド構造の変形および重合条件の変更により、高分子の立体規則性、共重合特性、分子量、結晶化度などを変化させることができるという特性を有している。
【0005】
米国特許第5,914,289号には、それぞれの担体に担持されたメタロセン触媒を用いて高分子の分子量および分子量分布を制御する方法が記載されているが、担持触媒の製造時に使用される溶媒の量および製造時間が多くかかり、使用されるメタロセン触媒を担体にそれぞれ担持しなければならないという煩わしさがあった。
【0006】
韓国特許出願第10-2003-0012308号には、担体に二核メタロセン触媒と単核メタロセン触媒を活性化剤とともに担持し、反応器内の触媒の組み合わせを変化させながら重合することで、分子量分布を制御する方法が開示されている。しかしながら、このような方法は、それぞれの触媒の特性を同時に実現するには限界があり、また、最終触媒の担体成分からメタロセン触媒部分が遊離されて反応器に汚染(ファウリング:fouling)が誘発されるという欠点がある。
【0007】
一方、直鎖状低密度ポリエチレンは、重合触媒を用いて低圧でエチレンとαオレフィンを共重合して製造されるものであって、分子量分布が狭く、一定な長さの短鎖分岐を有し、長鎖分岐がない樹脂である。直鎖状低密度ポリエチレンフィルムは、一般のポリエチレンの特性に加えて、破断強度と伸びが高く、引裂強度、落錘衝撃強度などに優れるため、従来の低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンの適用が困難であるストレッチフィルム、オーバーラップフィルムなどへの使用が増加している。
【0008】
ところが、1-ブテンまたは1-ヘキセンを共単量体として用いる直鎖状低密度ポリエチレンは、殆どが単一気相反応器または単一ループスラリー反応器で製造されており、1-オクテン共単量体を用いる工程に比べて生産性は高いが、このような製品も、使用触媒技術および工程技術の限界により、物性が1-オクテン共単量体を使用する場合に比べて著しく劣り、分子量分布が狭いため加工性が悪いという問題がある。
【0009】
米国特許第4,935,474号には、2種またはそれ以上のメタロセン化合物が用いられ、広い分子量分布を有するポリエチレンの製造法が報告されている。米国特許第6,828,394号には、共単量体結合性の良いものと、そうではないものを混合して使用し、加工性に優れ、特に、フィルム用に適したポリエチレンの製造方法が報告されている。また、米国特許第6,841,631号、米国特許第6,894,128号には、少なくとも2種のメタルコンパウンドが用いられたメタロセン系触媒を用いて、二峰または多峰の分子量分布を有するポリエチレンを製造し、フィルム、ブローモールディング、パイプなどの用途に適用可能であると報告されている。しかし、かかる製品は、加工性は改善されたものの、粒子単位中の分子量毎の分散状態が均一ではないため、比較的良好な押出条件でも押出外観が粗く、物性が安定ではないという問題がある。
【0010】
このような背景で、物性と加工性のバランスがとられたより優れた製品の製造が求め続けられており、特に、加工性に優れるとともに、光学物性などに優れたポリエチレン共重合体の必要性が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第5,914,289号
【文献】韓国特許出願公開第2004-0076965号
【文献】米国特許第4,935,474号
【文献】米国特許第6,828,394号
【文献】米国特許第6,841,631号
【文献】米国特許第6,894,128号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、上記の従来技術の問題を解決するためのものであって、分子量分布が狭く、且つ重合体中のビニル基の含量が一定の範囲内に調節されることで、優れた物理的特性、特に、優れた架橋挙動特性を有するエチレン/α-オレフィン共重合体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、前記エチレン/α-オレフィン共重合体を含むことで、優れた物理的特性、特に、優れた架橋特性を示す光学フィルム用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、イエローインデックス(YI)、全光線透過率(Tt)などの光学物性が改善された光学フィルム用樹脂組成物、および前記樹脂組成物を用いて製造された光学フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一実現例は、下記(a)~(d)の条件を満たすエチレン/α-オレフィン共重合体を提供する。
(a)密度:0.850~0.910g/cc
(b)メルトインデックス(Melt Index、MI、190℃、2.16kg荷重条件):0.1~100dg/分
(c)分子量分布(MWD):1.5~3.0
(d)下記式1によるR値が0.18~0.59
【0016】
【数1】
【0017】
前記式1中、Nvd、Ntv、Nvl、およびNは、それぞれ核磁気共鳴分光分析により測定された、炭素原子1000個当たりのビニリデン(vinylidene)、トリビニル(trivinyl)、ビニレン(vinylene)、およびビニル(vinyl)官能基の個数を意味する。
【0018】
本発明の他の実現例は、下記化学式1の遷移金属化合物を含む触媒組成物の存在下で、水素を5~100cc/分で投入してエチレンおよびα-オレフィン系単量体を重合するステップを含む、前記エチレン/α-オレフィン共重合体の製造方法を提供する。
【0019】
【化1】
【0020】
前記化学式1中、
は、水素;C1~20のアルキル;C3~20のシクロアルキル;C2~20のアルケニル;C1~20のアルコキシ;C6~20のアリール;C7~20のアリールアルコキシ;C7~20のアルキルアリール;またはC7~20のアリールアルキルであり、
2a~R2eは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;C1~20のアルキル;C3~20のシクロアルキル;C2~20のアルケニル;C1~20のアルコキシ;またはC6~20のアリールであり、
は、水素;ハロゲン;C1~20のアルキル;C3~20のシクロアルキル;C2~20のアルケニル;C6~20のアリール;C7~20のアルキルアリール;C7~20のアリールアルキル;またはハロゲン、C1~20のアルキル、C3~20のシクロアルキル、C2~20のアルケニル、C1~20のアルコキシ、およびC6~20のアリールからなる群から選択される1種以上で置換されたフェニルであり、
~Rは、それぞれ独立して、水素;シリル;C1~20のアルキル;C3~20のシクロアルキル;C2~20のアルケニル;C6~20のアリール;C7~20のアルキルアリール;C7~20のアリールアルキル;またはC1~20のヒドロカルビルで置換された14族金属のメタロイドラジカルであり;前記R~Rのうち互いに隣接する2つ以上は、互いに連結されて環を形成してもよく、
Qは、Si、C、N、P、またはSであり、
Mは、4族遷移金属であり、
およびXは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;C1~20のアルキル;C3~20のシクロアルキル;C2~20のアルケニル;C6~20のアリール;C7~20のアルキルアリール;C7~20のアリールアルキル;C1~20のアルキルアミノ;またはC6~20のアリールアミノである。
【0021】
本発明の他の実現例は、前記エチレン/α-オレフィン共重合体を含む光学フィルム用樹脂組成物を提供する。
【0022】
本発明の他の実現例は、前記樹脂組成物を含む光学フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体は、従来技術に比べて狭い分子量分布を有し、且つ重合体中のビニルの含量が全不飽和官能基に対する特定の割合を満たすことで、優れた架橋特性を示す。
【0024】
また、本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体を光学フィルム用樹脂組成物に適用する場合、イエローインデックス(YI)および全光線透過率(Tt)のような光学物性に優れる。よって、本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体は、優れた光学物性が求められる光学フィルム用樹脂組成物の製造に有用に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実現例として、実施例2と比較例1の分子量分布度を示す。
図2】本発明の一実現例として、架橋処方(a)に従った実施例1と比較例1の架橋挙動特性を示す。
図3】本発明の一実現例として、架橋処方(b)に従った実施例2と比較例1の架橋挙動特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書で用いられる用語は、ただ例示的な実施例を説明するために用いられたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」、または「有する」などの用語は、実施された特徴、ステップ、構成要素、またはこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであり、1つまたはそれ以上の他の特徴やステップ、構成要素、またはこれらの組み合わせなどの存在または付加可能性をあらかじめ排除するものではないと理解されるべきである。
【0027】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができて、特定の実施形態を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に限定しようとするのではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むと理解されるべきである。
【0028】
本明細書で用いられる「組成物」という用語は、該当組成物の材料から形成された反応生成物および分解生成物だけでなく、該当組成物を含む材料の混合物を含む。
【0029】
本明細書で用いられる「重合体」という用語は、同一であるか異種類であるかを問わず、単量体を重合することで製造された重合体化合物を指す。このようにして、一般用語の重合体は、単に1種の単量体から製造された重合体を指すのに通常用いられる単独重合体という用語、および以下で規定されたような混成重合体(interpolymer)という用語を網羅する。
【0030】
本明細書で用いられる「混成重合体」という用語は、少なくとも2種の異なる単量体の重合により製造された重合体を指す。このようにして、一般用語の混成重合体は、2種の異なる単量体から製造された重合体を指すのに通常用いられる共重合体、および2種以上の異なる単量体から製造された重合体を含む。
【0031】
1.エチレン/α-オレフィン共重合体
以下、本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体を詳細に説明する。
【0032】
本発明の一実現例に係るエチレン/α-オレフィン共重合体は、下記(a)~(d)の条件を満たす。
(a)密度:0.850~0.910g/cc
(b)メルトインデックス(Melt Index、MI、190℃、2.16kg荷重条件):0.1~100dg/分
(c)分子量分布(MWD):1.5~3.0
(d)下記式1によるR値が0.18~0.59
【0033】
【数2】
【0034】
前記式1中、Nvd、Ntv、Nvl、およびNは、それぞれ核磁気共鳴分光分析により測定された、炭素原子1000個当たりのビニリデン(vinylidene)、トリビニル(trivinyl)、ビニレン(vinylene)、およびビニル(vinyl)官能基の個数を意味する。
【0035】
本発明は、後述のような触媒を用い、重合時に最適含量の水素を投入して、前記(a)~(d)の条件をともに満たすようにすることで、エチレン/αオレフィン共重合体の物理的特性、特に、架橋特性を著しく改善することができる。
【0036】
具体的に、本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体は、ASTM D-792に準じて測定した密度が0.850~0.910g/ccの範囲である低密度の重合体である。具体的には、前記密度は、0.850g/cc以上、または0.855g/cc以上、または0.86g/cc以上、または0.865g/cc以上であってもよく、0.91g/cc以下、または0.90g/cc以下、または0.89g/cc以下であってもよい。
【0037】
通常、オレフィン系重合体の密度は、重合時に用いられる単量体の種類と含量、重合度などの影響を受ける。共重合体の場合、共単量体の含量による影響が大きく、共単量体の含量が多いほど、低密度のエチレン/α-オレフィン共重合体が製造可能であり、共単量体が共重合体中に導入され得る含量は、触媒の共重合性、すなわち、触媒の特性に依存的である。
【0038】
本発明では、特定構造を有する遷移金属化合物を含む触媒組成物の使用により、多量の共単量体の導入が可能である。その結果、本発明の一実現例に係るエチレン/α-オレフィン共重合体は、上記のような低密度を有することができ、その結果、優れた加工性を示すことができる。より具体的に、前記エチレン/α-オレフィン共重合体は、0.850~0.910g/ccの密度を有することができ、この場合、密度の制御による機械的物性の維持および衝撃強度の改善効果がより顕著である。
【0039】
また、本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体は、1.5~3.0の範囲の狭い分子量分布(MWD)を有する。一例として、前記分子量分布は、1.6以上、または1.7以上、または1.8以上であってもよく、2.7以下、または2.4以下、または2.2以下であってもよい。
【0040】
通常、2種以上の単量体が重合される場合には分子量分布(MWD;Molecular Weight Distribution)が増加し、その結果、衝撃強度および機械的物性などが低下することになり、ブロッキング現象などが起こる。これに対して、本発明では、重合反応時に最適含量の水素が投入されることで、製造されるエチレン/α-オレフィン共重合体の分子量および分子量分布が減少し、その結果、架橋特性、衝撃強度、機械的物性などが改善される。
【0041】
一方、本発明において、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)により分析されるポリスチレン換算分子量であり、前記分子量分布は、Mw/Mnの比から計算されることができる。
【0042】
本発明の一実現例に係る前記エチレン/α-オレフィン共重合体は、重量平均分子量(Mw)が40,000~150,000g/molである重合体であってもよい。より具体的に、前記重量平均分子量は、45,000g/mol以上、または49,000g/mol以上、または52,000g/mol以上であってもよく、130,000g/mol以下、または90,000g/mol以下、または65,000g/mol以下であってもよい。
【0043】
また、本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体は、0.1~100dg/分の範囲のメルトインデックス(Melt Index、MI、190℃、2.16kg荷重条件)を有する。一例として、本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体は、メルトインデックス(MI)が1dg/分以上、または1.5dg/分以上、または3dg/分以上、または5dg/分以上、または12dg/分以上、または16dg/分以上であってもよく、90dg/分以下、または70dg/分以下、または40dg/分以下、または37dg/分以下、または35dg/分以下であってもよい。
【0044】
また、前記エチレン/α-オレフィン共重合体は、5~230dg/分の範囲のメルトインデックス(Melt Index、MI、ASTM D1238に準じて190℃、10kg荷重条件で測定)を有することができる。
【0045】
また、前記エチレン/α-オレフィン共重合体は、メルトインデックス(190℃、2.16kg荷重条件)に対するメルトインデックス(190℃、10kg荷重条件)の値であるMI10/MI2.16値が、8.5以下、または7.9以下、または7.5以下であってもよく、5.0以上、または5.5以上、または6.0以上であってもよい。MI10/MI2.16は、共重合体の長鎖分岐の程度の指標となり、MI10/MI2.16値が8.5以下であると、長鎖分岐が少ないことを意味する。
【0046】
前記重量平均分子量およびメルトインデックスが上記の範囲を満たす場合、光学フィルム用樹脂組成物に好適に適用されることができる。
【0047】
すなわち、エチレン/α-オレフィン共重合体の機械的物性および衝撃強度は、その重合過程で用いられる触媒種類とともに触媒使用量を調節することで制御可能であり、上記の条件を満たすことで、優れた機械的特性を維持し、且つ改善された加工性を示すことができる。
【0048】
また、本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体は、共重合体中における炭素原子1000個当たりのビニル基の含量が一定の範囲内に制御されることを特徴とする。具体的に、本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体は、下記式1によるR値が0.18以上0.59以下である。
【0049】
【数3】
【0050】
前記式1中、Rは、核磁気共鳴分光分析により測定された、炭素原子1000個当たりの各官能基の個数に対するビニル基の個数の割合である。
【0051】
選択的に、本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体は、下記式2によるRvd値が0.25以下であってもよい。
【0052】
【数4】
【0053】
前記式2中、Rvdは、核磁気共鳴分光分析により測定された、炭素原子1000個当たりの各官能基の個数に対するビニリデン基の個数の割合である。
【0054】
前記式1および2中、Nvd、Ntv、Nvl、およびNは、それぞれ核磁気共鳴分光分析により測定された、炭素原子1000個当たりのビニリデン(vinylidene)、トリビニル(trivinyl)、ビニレン(vinylene)、およびビニル(vinyl)官能基の個数を意味する。
【0055】
一例として、前記R値は、0.55以下、または0.50以下、または0.46以下、または0.40以下、または0.39以下、または0.35以下、または0.32以下、または0.30以下、または0.29以下であってもよく、0.19以上、または0.22以上、または0.24以上であってもよい。
【0056】
共重合体中のビニル基の含量は、製造時における重合温度および水素投入量を制御することで制御可能であるが、本発明に係るエチレン/α-オレフィン共重合体が上記のビニル基の含量を満たす場合、それを光学フィルム用樹脂組成物に適用した際に、優れた架橋度および/または光学物性を示すことができる。
【0057】
一例として、前記Rvd値は、0.25以下、または0.22以下、または0.20以下、または0.15以下、または0.10以下、または0.09以下、または0.08以下、または0.07以下、または0.06以下であってもよく、0.02以上、または0.03以上、または0.04以上であってもよい。前記ビニリデン基の含量が上記の数値範囲を満たす場合、狭い分子量分布、優れた架橋物性、およびそれによる光学物性を示すことができる。
【0058】
選択的に、本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体は、共重合体中における炭素原子1000個当たりのトリビニルの含量が一定の割合以上に制御されることを特徴とする。具体的に、本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体は、下記式3によるRtv値が0.12以上であってもよい。
【0059】
【数5】
【0060】
前記式3中、Rtvは、核磁気共鳴分光分析により測定された、炭素原子1000個当たりの各官能基の個数に対するトリビニル基の個数の割合である。
【0061】
共重合体中のトリビニルの含量は、製造時における重合温度および水素投入量を制御することで制御可能である。共重合体中の二重結合は、架橋制により生成されたラジカルと結合して架橋反応を活発とし、炭素原子1000個当たりの各官能基の個数に対するトリビニル基の個数の割合が一定の割合以上になるほど、優れた架橋物性を有することになる。
【0062】
本発明に係るエチレン/α-オレフィン共重合体は、上記のようにトリビニルの含量が一定の割合以上に維持されることで、狭い分子量分布、優れた架橋物性、およびそれによる光学物性を示すことができる。
【0063】
例えば、前記Rtv値は、0.08以上、または0.10以上、または0.12以上、または0.15以上であってもよく、0.30以下、0.29以下、または0.27以下、または0.26以下、または0.25以下であってもよい。前記トリビニルの含量が上記の数値範囲を満たす場合、狭い分子量分布、優れた架橋物性、およびそれによる光学物性を示すことができる。
【0064】
また、本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体は、前記R値、Rvd値、および/またはRtv値を満たし、且つ共重合体中のビニル、トリビニル、ビニレン、およびビニリデンを含む不飽和官能基の個数が、炭素原子1000個当たりに0.65個以下であることが好ましい。具体的に、0.6個以下、または0.5個以下、または0.45個以下、または0.4個以下であってもよく、0.1個以上、または0.15個以上、または0.2個以上、または0.23個以上であってもよい。前記不飽和官能基の個数が上記の数値範囲を満たす場合、狭い分子量分布、優れた架橋物性、およびそれによる光学物性を示すことができる。
【0065】
また、共重合体中のビニル官能基の個数は、炭素原子1000個当たりに0.3個以下であってもよい。具体的に、0.29個以下、または0.25個以下、または0.2個以下、または0.15個以下、または0.1個以下であり、0.01個以上、または0.02個以上、または0.04個以上、または0.06個以上であってもよい。前記不飽和官能基の個数が上記の数値範囲を満たす場合、狭い分子量分布、優れた架橋物性、およびそれによる光学物性を示すことができる。
【0066】
また、共重合体中のビニレン官能基の個数は、炭素原子1000個当たりに0.3個以下、または0.29個以下、または0.25個以下、または0.2個以下、または0.15個以下、または0.1個以下であり、0.01個以上、または0.02個以上、または0.04個以上、または0.06個以上であってもよい。前記不飽和官能基の個数が上記の数値範囲を満たす場合、狭い分子量分布、優れた架橋物性、およびそれによる光学物性を示すことができる。
【0067】
また、共重合体中のビニリデン官能基の個数は、炭素原子1000個当たりに0.07個以下、または0.05個以下であり、0.01個以上、または0.02個以上であってもよい。前記不飽和官能基の個数が上記の数値範囲を満たす場合、狭い分子量分布、優れた架橋物性、およびそれによる光学物性を示すことができる。
【0068】
また、共重合体中のトリビニル官能基の個数は、炭素原子1000個当たりに0.15個以下、または0.1個以下、または0.08個以下であり、0.01個以上、または0.02個以上であってもよい。前記不飽和官能基の個数が上記の数値範囲を満たす場合、狭い分子量分布、優れた架橋物性、およびそれによる光学物性を示すことができる。
【0069】
本発明において、前記ビニル基はR-CH=CHの構造であり、前記トリビニル基はRCH=CR’R’’の構造であり、前記ビニレンはRCH=CHR’(E体)またはRCH=CHR’(Z体)の構造であり、前記ビニリデンはRR’C=CHの構造であるものを意味する。ここで、R、R’、およびR’’は、それぞれ独立して、重合体鎖または共単量体であるα-オレフィンによる分岐鎖であってもよい。
【0070】
本発明において、共重合体中のビニル、ビニリデン、ビニレン、およびトリビニルのそれぞれの含量は、NMR分析結果から計算されることができる。具体的に、共重合体を1,1,2,2-テトラクロロエタンD2(TCE-d2)溶媒に溶解させた後、393KでBruker AVANCE III 500MHz NMR装置を用いて測定することができる。1H NMRスペクトルにおいて、TCE-d2のピークを6.0ppmに補正し、1.4ppmと0.96ppm領域の積分値を用いて共単量体の含量比を計算する。4.7ppm~5.6ppmで観察されるビニル基、ビニリデン基、ビニレン基、およびトリビニル基のそれぞれの含量を計算する(分析法:AMT-3863)。ピーク同定(Peak assignment)は、文献[Macromolecules 2014,47,3282-3790]を参照する。
【0071】
また、本発明の一実現例に係るエチレン/α-オレフィン共重合体は、結晶化温度(Tc)が35℃~80℃であってもよい。より具体的に、前記結晶化温度は、40℃以上、または45℃以上であってもよく、75℃以下、または70℃以下、または65℃以下であってもよい。このような高い結晶化温度は、エチレン/α-オレフィン共重合体中に共単量体が均一に分布することによるものであって、上記の温度範囲を有することで、優れた構造安定性を示すことができる。
【0072】
また、本発明の一実現例に係る前記エチレン/α-オレフィン共重合体は、溶融温度(Tm)が50~110℃であってもよい。より具体的に、前記溶融温度は、55℃以上、または60℃以上、または70℃以上であってもよく、110℃以下、または105℃以下、または95℃以下であってもよい。このような温度範囲の溶融温度を有することで、優れた熱安定性を示すことができる。
【0073】
本発明において、エチレン/α-オレフィン共重合体の結晶化温度および溶融温度は、示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter、DSC)を利用して測定することができる。具体的には、共重合体を150℃まで加熱した後、5分間維持し、さらに20℃まで下げた後、さらに温度を上昇させる。この際、温度の上昇速度と下降速度はそれぞれ10℃/分に調節し、2回目に温度が上昇する区間で測定した結果を溶融温度、温度を減少させながら現れる区間で測定した結果を結晶化温度とする。
【0074】
また、本発明の一実現例に係る前記エチレン/α-オレフィン共重合体において、共単量体である前記α-オレフィン系単量体は、C4~20のオレフィン系単量体であってもよい。具体的な例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、または1-エイコセンなどが挙げられ、これらのうち1種が単独で、または2種以上の混合物が用いられてもよい。
【0075】
中でも、光学フィルム用樹脂組成物に適用した時に、その改善効果が著しい点を考慮すると、前記α-オレフィン単量体は、1-ブテン、1-ヘキセン、または1-オクテンであってもよく、最も好ましくは1-ブテンであってもよい。
【0076】
また、前記エチレン/α-オレフィン共重合体において、前記共単量体であるα-オレフィンの含量は、上記の物性的要件を満たす範囲内で適宜選択されることができ、具体的には、0超過99モル%以下、または10~50モル%であってもよい。
【0077】
2.エチレン/α-オレフィン共重合体の製造方法
本発明の他の実現例は、下記化学式1の遷移金属化合物を含む触媒組成物の存在下で、水素を5~100cc/分で投入してエチレンおよびα-オレフィン系単量体を重合するステップを含む、エチレン/α-オレフィン共重合体の製造方法を提供する。
【0078】
【化2】
【0079】
前記化学式1中、
は、水素;C1~20のアルキル;C3~20のシクロアルキル;C2~20のアルケニル;C1~20のアルコキシ;C6~20のアリール;C7~20のアリールアルコキシ;C7~20のアルキルアリール;またはC7~20のアリールアルキルであり、
2a~R2eは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;C1~20のアルキル;C3~20のシクロアルキル;C2~20のアルケニル;C1~20のアルコキシ;またはC6~20のアリールであり、
は、水素;ハロゲン;C1~20のアルキル;C3~20のシクロアルキル;C2~20のアルケニル;C6~20のアリール;C7~20のアルキルアリール;C7~20のアリールアルキル;またはハロゲン、C1~20のアルキル、C3~20のシクロアルキル、C2~20のアルケニル、C1~20のアルコキシ、およびC6~20のアリールからなる群から選択される1種以上で置換されたフェニルであり、
~Rは、それぞれ独立して、水素;シリル;C1~20のアルキル;C3~20のシクロアルキル;C2~20のアルケニル;C6~20のアリール;C7~20のアルキルアリール;C7~20のアリールアルキル;またはC1~20のヒドロカルビルで置換された14族金属のメタロイドラジカルであり;前記R~Rのうち互いに隣接する2つ以上は、互いに連結されて環を形成してもよく、
Qは、Si、C、N、P、またはSであり、
Mは、4族遷移金属であり、
およびXは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;C1~20のアルキル;C3~20のシクロアルキル;C2~20のアルケニル;C6~20のアリール;C7~20のアルキルアリール;C7~20のアリールアルキル;C1~20のアルキルアミノ;またはC6~20のアリールアミノである。
【0080】
本発明の一例に係る前記化学式1の遷移金属化合物において、
前記Rは、水素;C1~20のアルキル;C3~20のシクロアルキル;C1~20のアルコキシ;C6~20のアリール;C7~20のアリールアルコキシ;C7~20のアルキルアリール;またはC7~20のアリールアルキルであってもよく、
前記R2a~R2eは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;C1~12のアルキル;C3~12のシクロアルキル;C2~12のアルケニル;C1~12のアルコキシ;またはフェニルであってもよく、
前記Rは、水素;ハロゲン;C1~12のアルキル;C3~12のシクロアルキル;C2~12のアルケニル;C6~20のアリール;C7~13のアルキルアリール;C7~13のアリールアルキル;またはハロゲン、C1~12のアルキル、C3~12のシクロアルキル、C2~12のアルケニル、C1~12のアルコキシ、およびフェニルからなる群から選択される1種以上で置換されたフェニルであってもよく、
前記R~Rは、それぞれ独立して、水素;C1~20のアルキル;C3~20のシクロアルキル;C6~20のアリール;C7~20のアルキルアリール;またはC7~20のアリールアルキルであってもよく、
前記R~Rのうち互いに隣接する2つ以上は、互いに連結されてC5~20の脂肪族環またはC6~20の芳香族環を形成してもよく;前記脂肪族環または芳香族環は、ハロゲン、C1~20のアルキル、C2~12のアルケニル、またはC6~12のアリールで置換されてもよく、
前記QはSiであってもよく、
前記MはTiであってもよく、
前記XおよびXは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;C1~12のアルキル;C3~12のシクロアルキル;C2~12のアルケニル;C6~12のアリール;C7~13のアルキルアリール;C7~13のアリールアルキル;C1~13のアルキルアミノ;C6~12のアリールアミノ;またはC1~12のアルキリデンであってもよい。
【0081】
また、本発明の他の一例に係る前記化学式1の遷移金属化合物において、
前記Rは、水素;C1~12のアルキル;C3~12のシクロアルキル;C1~12のアルコキシ;C6~12のアリール;C7~13のアリールアルコキシ;C7~13のアルキルアリール;またはC7~13のアリールアルキルであってもよく、
前記R2a~R2eは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;C1~12のアルキル;C3~12のシクロアルキル;C2~12のアルケニル;C1~12のアルコキシ;またはフェニルであってもよく、
前記Rは、水素;ハロゲン;C1~12のアルキル;C3~12のシクロアルキル;C2~12のアルケニル;C7~13のアルキルアリール;C7~13のアリールアルキル;フェニル;またはハロゲン、C1~12のアルキル、C3~12のシクロアルキル、C2~12のアルケニル、C1~12のアルコキシ、およびフェニルからなる群から選択される1種以上で置換されたフェニルであってもよく、
前記R~Rは、それぞれ独立して、水素;C1~12のアルキル;C3~12のシクロアルキル;C6~12のアリール;C7~13のアルキルアリール;またはC7~13のアリールアルキルであってもよく、
前記R~Rのうち互いに隣接する2つ以上は、互いに連結されてC5~12の脂肪族環またはC6~12の芳香族環を形成してもよく;
前記脂肪族環または芳香族環は、ハロゲン、C1~12のアルキル、C2~12のアルケニル、またはC6~12のアリールで置換されてもよく、
前記QはSiであってもよく、
前記MはTiであってもよく、
前記XおよびXは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;C1~12のアルキル基;またはC2~12のアルケニルであってもよい。
【0082】
また、本発明のさらに他の一例に係る前記化学式1の遷移金属化合物において、
前記Rは、水素またはC1~12のアルキルであってもよく、
前記R2a~R2eは、それぞれ独立して、水素;C1~12のアルキル;またはC1~12のアルコキシであってもよく、
前記Rは、水素;C1~12のアルキル;またはフェニルであってもよく、
前記RおよびRは、それぞれ独立して、水素;またはC1~12のアルキルであってもよく、
前記R~Rは、それぞれ独立して、水素またはメチルであってもよく、
前記QはSiであってもよく、
前記MはTiであってもよく、
前記XおよびXは、それぞれ独立して、水素またはC1~12のアルキルであってもよい。
【0083】
前記化学式1の遷移金属化合物は、環状の結合によりベンゾチオフェンが融合されたシクロペンタジエン、およびアミド基(N-R)がQ(Si、C、N、またはP)により安定して架橋され、4族遷移金属が配位結合された構造を形成する。前記触媒組成物を用いてオレフィン重合に適用する場合、高い重合温度でも高活性、高分子量、および高い共重合性などの特徴を有するポリオレフィンを生成することが可能である。
【0084】
さらに、前記化学式1の遷移金属化合物は、アミド基(N-R)がQ(Si、C、N、P)により架橋されるにあたり、Qで置換されているかまたは置換されていないフェニル基が結合されている構造を有することで、より安定して架橋されることができ、遷移金属との配位時に、電子的に優れた安定性を有することができる。
【0085】
また、中心金属の周辺にかさ高い(バルキーな)置換体であるフェニル基が位置することで、β-水素移動(β-Hydrogen transfer)を抑えるため、より高い分子量のオレフィン高分子を製造することができ、優れた共重合性を有する。
【0086】
すなわち、本発明では、上記の遷移金属化合物を用い、且つ重合反応時に水素を最適化された含量で投入することで、狭い分子量分布および優れた架橋特性を有するエチレン/α-オレフィン共重合体を提供することができ、前記遷移金属化合物が有する電子的/構造的安定性により、水素の混入が有利である。また、水素を投入する前に触媒を投入することにより形成された重合体の初期分子量が高いため、水素の投入後に、分子量分布が狭く、且つ高分子量を有する製品の製造も可能である。
【0087】
前記化学式1で表される化合物は、具体的に、下記化学式で表される化合物のうち何れか1つであってもよい。
【0088】
【化3】
【0089】
【化4】
【0090】
【化5】
【0091】
【化6】
【0092】
【化7】
【0093】
【化8】
【0094】
【化9】
【0095】
【化10】
【0096】
【化11】
【0097】
【化12】
【0098】
一方、本発明の一実現例に係るエチレン/α-オレフィン共重合体の製造において、触媒組成物は、前記化学式1の遷移金属化合物を活性化するために、助触媒をさらに含んでもよい。
【0099】
前記助触媒は、13族金属を含む有機金属化合物であり、具体的には、下記化学式2の化合物、下記化学式3の化合物、および下記化学式4の化合物のうち1つ以上を含んでもよい。
【0100】
[化学式2]
41-[Al(R42)-O]-R43
【0101】
前記化学式2中、
41、R42、およびR43は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1~20のヒドロカルビル基、およびハロゲンで置換された炭素数1~20のヒドロカルビル基のうち何れか1つであり、
nは、2以上の整数である。
【0102】
[化学式3]
D(R44
【0103】
前記化学式3中、Dは、アルミニウムまたはホウ素であり、
44は、それぞれ独立して、ハロゲン、炭素数1~20のヒドロカルビル基、およびハロゲンで置換された炭素数1~20のヒドロカルビル基のうち何れか1つである。
【0104】
[化学式4]
[L-H][Z(A)または[L][Z(A)
【0105】
前記化学式4中、
Lは、中性または陽イオン性ルイス塩基であり、Hは水素原子であり、
Zは13族元素であり、Aは、それぞれ独立して、炭素数1~20のヒドロカルビル基;炭素数1~20のヒドロカルビルオキシ基;およびこれらの置換基の1以上の水素原子が、ハロゲン、炭素数1~20のヒドロカルビルオキシ基、および炭素数1~20のヒドロカルビルシリル基のうち1以上の置換基で置換された置換基のうち何れか1つである。
【0106】
より具体的に、前記化学式2の化合物は、直鎖状、環状、または網状に繰り返し単位が結合されたアルキルアルミノキサン系化合物であってもよく、具体的な例としては、メチルアルミノキサン(MAO)、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、またはtert-ブチルアルミノキサンなどが挙げられる。
【0107】
また、前記化学式3の化合物の具体的な例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-s-ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルホウ素、トリエチルホウ素、トリイソブチルホウ素、トリプロピルホウ素、またはトリブチルホウ素などが挙げられ、特に、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、またはトリイソブチルアルミニウムから選択されるものであってもよい。
【0108】
また、前記化学式4の化合物としては、三置換されたアンモニウム塩、またはジアルキルアンモニウム塩、三置換されたホスホニウム塩の形態のボレート系化合物が挙げられる。より具体的な例としては、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、メチルジオクタデシルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、メチルテトラデシクロオクタデシルアンモニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジメチル(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルジテトラデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフェニル)ボレート、メチルジオクタデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(2級-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチル(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、ジメチル(t-ブチル)アンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、またはN,N-ジメチル-(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレートなどの三置換されたアンモニウム塩形態のボレート系化合物;ジオクタデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジテトラデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、またはジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのジアルキルアンモニウム塩形態のボレート系化合物;またはトリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルジオクタデシルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、またはトリ(2,6-ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどの三置換されたホスホニウム塩形態のボレート系化合物などが挙げられる。
【0109】
このような助触媒の使用により、最終的に製造されたエチレン/α-オレフィン共重合体の分子量分布がより均一になり、重合活性を向上することができる。
【0110】
前記助触媒は、前記化学式1の遷移金属化合物の活性化が十分に進むように、適切な含量で用いられることができる。
【0111】
また、前記触媒組成物は、前記化学式1の遷移金属化合物を担体に担持された形態で含んでもよい。
【0112】
前記化学式1の遷移金属化合物が担体に担持される場合、遷移金属化合物と担体の重量比は、1:10~1:1,000、より具体的には1:10~1:500であってもよい。上記の範囲の重量比で担体と遷移金属化合物を含む場合、最適の形状を示すことができる。また、前記助触媒がともに担体に担持される場合、助触媒と担体の重量比は、1:1~1:100、より具体的には1:1~1:50であってもよい。前記重量比で助触媒と担体を含む場合、触媒活性が向上し、また、製造される重合体の微細構造が最適化されることができる。
【0113】
一方、前記担体としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、またはこれらの混合物などが使用可能であり、または、これらの物質を高温で乾燥し表面の水分を除去することで、表面に反応性の大きいヒドロキシ基またはシロキサン基を含む状態で用いられてもよい。また、前記高温で乾燥された担体は、NaO、KCO、BaSO、およびMg(NOなどの酸化物、炭酸塩、硫酸塩、または硝酸塩成分をさらに含んでもよい。
【0114】
前記担体の乾燥温度は、200~800℃が好ましく、300~600℃がより好ましく、300~400℃が最も好ましい。前記担体の乾燥温度が200℃未満である場合には、水分が多すぎて表面の水分と助触媒が反応することになり、800℃を超える場合には、担体の表面の気孔が合わされて表面積が減少し、また、表面に多くのヒドロキシ基が無くなってシロキサン基のみが残ることになり、助触媒との反応サイトが減少するため好ましくない。
【0115】
また、前記担体の表面のヒドロキシ基の量は、0.1~10mmol/gが好ましく、0.5~5mmol/gである際に、より好ましい。前記担体の表面におけるヒドロキシ基の量は、担体の製造方法および条件または乾燥条件、例えば、温度、時間、真空、またはスプレー乾燥などにより調節することができる。
【0116】
一方、前記エチレン/α-オレフィン共重合体の重合反応は、上記の触媒組成物の存在下で、水素を連続的に投入してエチレンおよびα-オレフィン系単量体を連続重合させることで行われることができる。
【0117】
この際、前記水素ガスは、重合初期の遷移金属化合物の急激な反応を抑え、重合反応を終結する役割をする。したがって、このような水素ガスの使用および使用量の調節により、狭い分子量分布を有し、且つ共重合体中のビニル基の含量が一定の範囲内に調節されたエチレン/α-オレフィン共重合体が効果的に製造されることができる。
【0118】
例えば、前記水素ガスは、5cc/分以上、または7cc/分以上、または10cc/分以上、または15cc/分以上、または19cc/分以上、または22cc/分以上であってもよく、100cc/分以下、または50cc/分以下、または45cc/分以下、または35cc/分以下、または29cc/分以下で投入されてもよい。上記の条件で投入される場合、製造されるエチレン/α-オレフィン重合体が本発明での物性的特徴を実現することができる。水素ガスの含量が5cc/分未満で投入される場合には、重合反応の終結が均一に起こらず、所望の物性を有するエチレン/α-オレフィン共重合体を製造しにくくなり、また、100cc/分を超える場合には、終結反応が過度に速く起こって、分子量が低すぎるエチレン/α-オレフィン共重合体が製造される恐れがある。
【0119】
また、前記重合反応は、80~200℃で行われてもよく、上記の水素投入量とともに重合温度を制御することで、エチレン/α-オレフィン共重合体中のビニル基の含量をより容易に調節することができる。したがって、具体的に、前記重合反応温度は100℃以上、または120℃以上、または140℃以上であってもよく、190℃以下、または180℃以下、または170℃以下、または160℃以下であってもよい。
【0120】
また、前記重合反応時には、反応器内の水分を除去するための有機アルミニウム化合物がさらに投入され、その存在下で重合反応が進行されることができる。このような有機アルミニウム化合物の具体的な例としては、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムジハライド、アルミニウムジアルキルヒドリド、またはアルキルアルミニウムセスキハライドなどが挙げられ、より具体的な例としては、Al(C、Al(CH、Al(C、Al(CH、Al(i-CH、Al(C17、Al(C1225、Al(C)(C1225、Al(i-C)(C1225、Al(i-CH、Al(i-C、(CAlCl、(i-CAlCl、または(CAlClなどが挙げられる。かかる有機アルミニウム化合物は、反応器に連続的に投入されてもよく、適切な水分の除去のために、反応器に投入される反応媒質1kg当たりに約0.1~10モルの割合で投入されてもよい。
【0121】
また、重合圧力は、約1~約100Kgf/cm、好ましくは約70~約96Kgf/cm、より好ましくは約80~約93Kgf/cmであってもよい。
【0122】
また、担体に担持された形態で遷移金属化合物が用いられる場合、前記遷移金属化合物は、炭素数5~12の脂肪族炭化水素溶媒、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカン、およびこれらの異性体とトルエン、ベンゼンのような芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、クロロベンゼンのような塩素原子で置換された炭化水素溶媒などに溶解または希釈してから投入されてもよい。これに用いられる溶媒は、少量のアルキルアルミニウムで処理することで、触媒毒として作用する少量の水または空気などを除去して用いることが好ましく、助触媒をさらに用いて行うことも可能である。
【0123】
3.光学フィルム用樹脂組成物
本発明の他の実現例は、本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体を含む光学フィルム用樹脂組成物を提供する。本発明の光学フィルム用樹脂組成物は、シートまたはフィルムなどの形状で押出されてもよく、特にこれに制限されない。
【0124】
本発明の光学フィルム用樹脂組成物は、優れた架橋度を示すことができる。例として、前記光学フィルム用樹脂組成物の架橋度は、55%以上、または58%以上、または63%以上、または67%以上、または69%以上であってもよい。
【0125】
本発明の光学フィルム用樹脂組成物は、ガラス転移温度が-55℃~-45℃、または-53℃~-42℃、または-50℃~-40℃であってもよい。
【0126】
また、本発明の光学フィルム用樹脂組成物は、エチレン/αオレフィン共重合体の架橋前、後にイエローインデックス(YI)および全光線透過率(Tt)をそれぞれ測定した結果、架橋後の前記イエローインデックス(YI)および全光線透過率(Tt)の数値が、光学フィルムに用いられるのに好適な範囲を満たすことができる。
【0127】
具体的に、本発明の光学フィルム用樹脂組成物のイエローインデックス(Yellowness Index、以下、YI)値は、0.5以上、または1.0以上、または1.25以上、または1.30以上であってもよく、5.5以下、または4.9以下、または4.5以下、または3.9以下、または2.9以下、または1.5以下、または1.2以下であってもよい。前記YI値が小さいほど、光学フィルムの品質安定性が保障される。
【0128】
特に、本発明の光学フィルム用樹脂組成物に対して架橋を行った後にイエローインデックスを測定した場合、より優れた数値を示すことができる。例として、前記架橋を行った後のイエローインデックスは、0.5以上、または0.7以上、または0.9以上、または1.0以上であってもよく、1.5以下、または1.48以下、または1.3以下、または1.2以下であってもよい。
【0129】
前記イエローインデックスとは、紫外線に曝された際における前記樹脂組成物の黄変現象を定量化した値であり、ASTM D1925に準じて、UV/Visスペクトロメータを用いて測定可能である。例えば、前記UV/Visスペクトロメータを用いて、前記樹脂組成物の400nm~700nmの波長領域の反射率を測定し、それを用いて、下記式4によりイエローインデックス値を計算することができる。
【0130】
[式4]
YI=[100(1.28XCIE-1.06ZCIE)]/YCIE
【0131】
前記式4中、YIは、UV/VIS/NIRスペクトロメータにて、色差分析プログラムを利用して計算された値であり、XCIE、YCIE、ZCIEは、それぞれ赤色、緑色、青色座標が示す相対的な値である。
【0132】
また、本発明の光学フィルム用樹脂組成物は、優れた光線透過率を有することができる。一例として、150℃の温度でシート状の前記樹脂組成物を架橋した後、ヘイズメータで測定した全光線透過率(Tt)が下記式5を満たすことができる。
【0133】
[式5]
Tt≧90.0%
【0134】
前記全光線透過率は、200nm以上の波長の光、例えば、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、または600nmの光の波長に対して、ヘイズメータで測定された値であり、好ましくは550nm波長の光に対して、ヘイズメータで測定された値であってもよい。上記で測定された前記樹脂組成物の全光線透過率は、シート状の樹脂組成物が架橋された後の全光線透過率を表し、前記シート状の樹脂組成物は、真空ラミネータによりラミネートされてもよい。
【0135】
本発明の光学フィルム用樹脂組成物の全光線透過率は、150℃の温度で前記シート状の樹脂組成物を架橋した後に測定された値が、90%以上、または90.2%以上、または90.5%以上、または90.9%以上、または91%以上、または92%以上であってもよい。また、光学装置の光電効率を考慮し、上述の範囲の全光線透過率を有するように調節されることができる。
【0136】
また、本発明の光学フィルム用樹脂組成物を用いて変性樹脂組成物、例えば、シラン変性樹脂組成物またはアミノシラン変性樹脂組成物を製造することができる。
【0137】
例として、本発明の光学フィルム用樹脂組成物は、本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体の他にも、公知の不飽和シラン化合物、アミノシラン化合物、架橋剤、および架橋助剤をさらに含んでもよい。
【0138】
前記不飽和シラン化合物は、ラジカル開始剤などの存在下で、本発明の共重合体の単量体の重合単位を含む主鎖にグラフト(grafting)され、シラン変性樹脂組成物またはアミノシラン変性樹脂組成物に重合された形態で含まれてもよい。
【0139】
一例として、前記不飽和シラン化合物は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリペントキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、またはビニルトリアセトキシシランなどであってもよく、一例として、中でもビニルトリメトキシシランまたはビニルトリエトキシシランが使用できるが、これらに制限されるものではない。
【0140】
また、前記アミノシラン化合物は、エチレン/α-オレフィン共重合体のグラフト変性ステップで本発明の共重合体の主鎖にグラフトされた不飽和シラン化合物、例えば、ビニルトリエトキシシランのアルコキシ基のような反応性官能基をヒドロキシ基に転換する加水分解反応を促進させる触媒として作用することで、上下部のガラス基板またはフッ素樹脂などで構成される裏面シートと接着強度をより向上させることができる。また、これとともに、前記アミノシラン化合物は、共重合反応に反応物としても直接関与することで、アミノシラン変性樹脂組成物にアミン官能基を有するモイアティを提供することができる。
【0141】
前記アミノシラン化合物としては、アミン基を含むシラン化合物として、一次アミン、二次アミンであれば特に制限されない。例えば、アミノシラン化合物としては、アミノトリアルコキシシラン、アミノジアルコキシシランなどが使用可能であり、その例としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(3-aminopropyltrimethoxysilane;APTMS)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(3-aminopropyltriethoxysilane;APTES)、ビス[(3-トリエトキシシリル)プロピル]アミン、ビス[(3-トリメトキシシリル)プロピル]アミン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン(N-[3-(Trimethoxysilyl)propyl]ethylenediamine;DAS)、アミノエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、アミノエチルアミノメチルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノメチルメチルジエトキシシラン、ジエチレントリアミノプロピルトリメトキシシラン、ジエチレントリアミノプロピルトリエトキシシラン、ジエチレントリアミノプロピルメチルジメトキシシラン、ジエチレンアミノメチルメチルジエトキシシラン、(N-フェニルアミノ)メチルトリメトキシシラン、(N-フェニルアミノ)メチルトリエトキシシラン、(N-フェニルアミノ)メチルメチルジメトキシシラン、(N-フェニルアミノ)メチルメチルジエトキシシラン、3-(N-フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(N-フェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(N-フェニルアミノ)プロピルメチルジメトキシシラン、3-(N-フェニルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、およびN-(N-ブチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される1種以上が挙げられる。前記アミノシラン化合物は、単独で、または混合して用いてもよい。
【0142】
前記樹脂組成物において、前記不飽和シラン化合物および/またはアミノシラン化合物の含量は、特に限定されない。
【0143】
前記架橋剤は、シラン変性樹脂組成物の製造ステップでは、ラジカル開始剤として、樹脂組成物に不飽和シラン化合物がグラフトされる反応を開始する役割を果たすことができる。また、光電子装置の製造時におけるラミネートステップで、前記シラン変性樹脂組成物の間、またはシラン変性樹脂組成物と非変性樹脂組成物との間の架橋結合を形成することで、最終製品、例えば、封止材シートの耐熱耐久性を向上させることができる。
【0144】
前記架橋剤は、ビニル基のラジカル重合を開始することができるか、架橋結合を形成することができる架橋性化合物であれば、本技術分野において公知の種々の架橋剤が多様に使用可能であり、例えば、有機過酸化物、ヒドロ過酸化物、およびアゾ化合物からなる群から選択される1種または2種以上を用いてもよい。
【0145】
具体的には、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-クミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3-ヘキシンなどのジアルキルパーオキサイド類;クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ヒドロパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルヒドロパーオキサイドなどのヒドロパーオキサイド類;ビス-3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、o-メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシオクトエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)-3-ヘキシンなどのパーオキシエステル類;およびメチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類、ラウリルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、およびアゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物からなる群から選択される1種以上が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0146】
前記有機過酸化物は、120℃~135℃、例えば、120℃~130℃、120℃~125℃、好ましくは121℃の1時間半減期温度を有する有機過酸化物であってもよい。上記において、「1時間半減期温度」とは、前記架橋剤の半減期が1時間になる温度を意味する。前記1時間半減期温度によって、ラジカル開始反応が効率的に起こる温度が変わる。したがって、上述の範囲の1時間半減期温度を有する有機過酸化物を架橋剤として用いる場合、光電子装置を製造するためのラミネート工程の温度でラジカル開始反応、すなわち、架橋反応が効果的に進行されることができる。
【0147】
前記架橋剤は、前記樹脂組成物100重量部に対して、0.01~1重量部、例えば、0.05~0.55、0.1~0.5、または0.15~0.45重量部の含量で含まれる。前記架橋剤が0.01重量部未満で含まれる場合、耐熱特性の向上効果が微小であり、1重量部を超えて含まれる場合には、封止材シートの成形性が減少し、工程上の制約が生じるという問題が発生する恐れがあり、封止材の物性に影響を与え得る。
【0148】
また、本発明の樹脂組成物は、前記架橋剤の他にも、架橋助剤を含んでもよい。前記架橋助剤が樹脂組成物に含まれることで、上述の架橋剤による樹脂組成物間の架橋度を高めることができ、これにより、最終製品、例えば、封止材シートの耐熱耐久性がより向上することができる。
【0149】
前記架橋助剤は、樹脂組成物100重量部に対して、0.01~0.5重量部、例えば、0.01~0.3、0.015~0.2、または0.016~0.16重量部の含量で含まれる。前記架橋助剤が0.01重量部未満で含まれる場合、耐熱特性の向上効果が微小であり、0.5重量部を超えて含まれる場合には、最終製品、例えば、封止材シートの物性に影響を与える問題が発生し、生産コストが増加する恐れがある。
【0150】
前記架橋助剤としては、本技術分野において公知の種々の架橋助剤が使用可能であり、例えば、前記架橋助剤として、アリル基または(メタ)アクリルオキシ基などの不飽和基を少なくとも1つ以上含有する化合物を用いてもよい。
【0151】
前記アリル基を含有する化合物としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルフマレート、またはジアリルマレエートのようなポリアリル化合物が挙げられ、前記(メタ)アクリルオキシ基を含有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、t-ブチル1-(2-エチルヘキシル)モノパーオキシカーボネート(TBEC)、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MEMO)などが挙げられるが、特にこれらに制限されるものではない。
【0152】
また、本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、光安定剤、UV吸収剤、および熱安定剤などから選択される1種以上の添加剤をさらに含んでもよい。
【0153】
前記光安定剤は、前記組成物が適用される用途に応じて、樹脂の光劣化開始の活性種を捕捉し、光酸化を防止する役割を果たすことができる。使用可能な光安定剤の種類は特に制限されず、例えば、ヒンダードアミン系化合物またはヒンダードピペリジン系化合物などのような公知の化合物が使用できる。
【0154】
前記UV吸収剤は、組成物の用途に応じて、太陽光などからの紫外線を吸収し、分子内で無害な熱エネルギーに変換させ、樹脂組成物中の光劣化開始の活性種が励起されることを防止する役割を果たすことができる。使用可能なUV吸収剤の具体的な種類は特に制限されず、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、アクリルニトリル系、金属錯塩系、ヒンダードアミン系、超微粒子酸化チタン、または超微粒子酸化亜鉛などの無機系UV吸収剤などの1種または2種以上の混合物が使用できる。
【0155】
また、前記熱安定剤の例としては、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス[2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジイルビスホスホネート、およびビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系熱安定剤;8-ヒドロキシ-5,7-ジ-tert-ブチル-フラン-2-オンとo-キシレンとの反応生成物などのラクトン系熱安定剤が挙げられ、上記のうち1種または2種以上を用いてもよい。
【0156】
前記樹脂組成物において、前記光安定剤、UV吸収剤、および/または熱安定剤の含量は、特に限定されない。すなわち、前記添加剤の含量は、樹脂組成物の用途、添加剤の形状や密度などを考慮して適宜選択することができ、通常、樹脂組成物の全固形分100重量部に対して、0.01重量部~5重量部の範囲内で適切に調節可能である。
【0157】
また、前記樹脂組成物は、上記の成分の他にも、樹脂成分が適用される用途に応じて、該当分野において公知の種々の添加剤を適切にさらに含んでもよい。
【0158】
また、本発明の光学フィルム用樹脂組成物は、様々な光電子装置(optoelectronic device)において素子をカプセル化する封止材(Encapsulant)として使用可能であるが、これに制限されるものではなく、例えば、昇温ラミネート工程などに適用される産業用素材としても使用可能である。
【0159】
4.光学フィルム
本発明の他の実現例は、前記樹脂組成物を含む光学フィルムを提供する。
【0160】
本発明の光学フィルムは、前記樹脂組成物をフィルム状またはシート状に成形することで製造することができる。このような成形方法は特に制限されず、例えば、Tダイ工程または押出などのような通常の工程によりシート化またはフィルム化して製造することができる。例えば、前記光学フィルムの製造は、前記樹脂組成物を用いた変性樹脂組成物の製造、およびフィルム化またはシート化工程が互いに連結されている装置を用いて、インサイチュー(in situ)工程により行うことができる。
【0161】
前記光学フィルムの厚さは、光電子装置における素子の支持効率および破損可能性、装置の軽量化や作業性などを考慮して、約10μm~2,000μm、または約100μm~1250μmに調節してもよく、具体的な用途に応じて変わり得る。
【0162】
実施例
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものにすぎず、これらにより本発明の内容が限定されるわけではない。
【0163】
[合成例1:遷移金属化合物の製造]
ステップ1:リガンド化合物(1a-1)の製造
250mLのシュレンクフラスコに、1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン10g(1.0eq、49.925mmol)とTHF100mLを入れ、n-BuLi22mL(1.1eq、54.918mmol、2.5M inヘキサン)を-30℃で滴下した後、常温で3時間撹拌した。撹拌したLi-complex THF溶液を、ジクロロ(メチル)(フェニル)シラン8.1mL(1.0eq、49.925mmol)とTHF70mLが入ったシュレンクフラスコに-78℃でカニューレーションした後、常温で一晩撹拌した。撹拌後、真空乾燥した後、ヘキサン100mLで抽出した。
【0164】
抽出したクロロ-1-(1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン-3-イル)-1,1-(メチル)(フェニル)シランヘキサン溶液100mLに、42mLのt-BuNH(8eq、399.4mmol)を常温で投入した後、常温で一晩撹拌した。撹拌後、真空乾燥した後、ヘキサン150mLで抽出した。溶媒乾燥の後、黄色固体13.36g(68%、dr=1:1)を得た。
【0165】
【化13】
1H NMR(CDCl3, 500 MHz): δ 7.93(t, 2H), 7.79(d,1H), 7.71(d,1H), 7.60(d, 2H), 7.48(d, 2H), 7.40~7.10(m, 10H, aromatic), 3.62(s, 1H), 3.60(s, 1H), 2.28(s, 6H), 2.09(s, 3H), 1.76(s, 3H), 1.12(s, 18H), 0.23(s, 3H), 0.13(s, 3H)
【0166】
ステップ2:遷移金属化合物(1a)の製造
100mLのシュレンクフラスコに、前記化学式1a-1のリガンド化合物4.93g(12.575mmol、1.0eq)とトルエン50mL(0.2M)を入れ、n-BuLi10.3mL(25.779mmol、2.05eq、2.5M inヘキサン)を-30℃で滴下した後、常温で一晩撹拌した。撹拌後、MeMgBr12.6mL(37.725mmol、3.0eq、3.0M inジエチルエーテル)を滴下した後、13.2mLのTiCl(13.204mmol、1.05eq、1.0M inトルエン)を順に入れて常温で一晩撹拌した。撹拌後、真空乾燥した後、ヘキサン150mLで抽出し、50mLまで溶媒を除去し、DME4mL(37.725mmol、3.0eq)を滴下した後、常温で一晩撹拌した。さらに真空乾燥した後、ヘキサン150mLで抽出した。溶媒乾燥後、褐色固体2.23g(38%、dr=1:0.5)を得た。
【0167】
【化14】
1H NMR(CDCl3, 500 MHz): δ 7.98(d, 1H), 7.94(d, 1H), 7.71(t, 6H), 7.50~7.30(10H), 2.66(s, 3H), 2.61(s, 3H), 2.15(s, 3H), 1.62(s, 9H), 1.56(s, 9H), 1.53(s, 3H), 0.93(s, 3H), 0.31(s, 3H), 0.58(s, 3H), 0.51(s, 3H), -0.26(s, 3H), -0.39(s, 3H)
【0168】
[合成例2:遷移金属化合物の製造]
ステップ1:リガンド化合物(2a-1)の製造
(i)リチウムカルバメートの製造
1,2,3,4-テトラヒドロキノリン(13.08g、98.24mmol)とジエチルエーテル(150mL)をシュレンク(shlenk)フラスコに入れた。ドライアイスとアセトンで製作した-78℃の低温槽に前記シュレンクフラスコを浸して30分間撹拌した。次いで、n-BuLi(39.3mL、2.5M、98.24mmol)を窒素雰囲気下で注射器で投入し、淡い黄色のスラリーが形成された。次いで、フラスコを2時間撹拌した後、生成されたブタンガスを除去しながら常温にフラスコの温度を上げた。フラスコを再度-78℃の低温槽に浸して温度を下げた後、COガスを投入した。二酸化炭素ガスを投入するにつれて、スラリーが無くなりながら透明な溶液になった。フラスコをバブラー(bubbler)に連結し、二酸化炭素ガスを除去しながら温度を常温に上げた。その後、真空下で余分のCOガスと溶媒を除去した。ドライボックスにフラスコを移した後、ペンタンを加えて激しく撹拌してから濾過することで、白色固体化合物であるリチウムカルバメートを得た。前記白色固体化合物は、ジエチルエーテルが配位結合されている。この際、収率は100%である。
【0169】
1H NMR(C6D6, C5D5N) : δ 1.90 (t, J = 7.2 Hz, 6H, ether), 1.50 (br s, 2H, quin-CH2), 2.34 (br s, 2H, quin-CH2), 3.25 (q, J = 7.2 Hz, 4H, ether), 3.87 (br, s, 2H, quin-CH2), 6.76 (br d, J = 5.6 Hz, 1H, quin-CH) ppm
13C NMR(C6D6) : δ 24.24, 28.54, 45.37, 65.95, 121.17, 125.34, 125.57, 142.04, 163.09(C=O) ppm
【0170】
(ii)8-(2,3,4,5-テトラメチル-1,3-シクロペンタジエニル)-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン(8-(2,3,4,5-Tetramethyl-1,3-cyclopentadienyl)-1,2,3,4-tetrahydroquinoline)の製造
前記ステップ(i)で製造されたリチウムカルバメート化合物(8.47g、42.60mmol)をシュレンクフラスコに入れた。次いで、テトラヒドロフラン(4.6g、63.9mmol)とジエチルエーテル45mLを順に入れた。アセトンと少量のドライアイスで製作した-20℃の低温槽に前記シュレンクフラスコを浸して30分間撹拌した後、t-BuLi(25.1mL、1.7M、42.60mmol)を入れた。この時に、反応混合物の色が赤色に変わった。-20℃を維持しつつ6時間撹拌した。テトラヒドロフランに溶けているCeCl・2LiCl溶液(129mL、0.33M、42.60mmol)とテトラメチルシクロペンタノン(5.89g、42.60mmol)を注射器内で交ぜた後、窒素雰囲気下でフラスコに投入した。フラスコの温度を常温にゆっくりと上げる途中に、1時間後に恒温槽を除去して温度を常温に維持した。次いで、前記フラスコに水(15mL)を添加した後、酢酸エチルを入れて濾過して濾液を得た。その濾液を分液漏斗に移した後、塩酸(2N、80mL)を入れて12分間振った。そして、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(160mL)を入れて中和した後、有機層を抽出した。この有機層に無水硫酸マグネシウムを入れて水分を除去し濾過した後、その濾液を取って溶媒を除去した。得られた濾液をヘキサンと酢酸エチル(v/v、10:1)溶媒を用いてカラムクロマトグラフィー法により精製して黄色オイルを得た。収率は40%であった。
【0171】
【化15】
1H NMR(C6D6) : δ 1.00 (br d, 3H, Cp-CH3), 1.63 - 1.73 (m, 2H, quin-CH2), 1.80 (s, 3H, Cp-CH3), 1.81 (s, 3H, Cp-CH3), 1.85 (s, 3H, Cp-CH3), 2.64 (t, J = 6.0 Hz, 2H, quin-CH2), 2.84 - 2.90 (br, 2H, quin-CH2), 3.06 (br s, 1H, Cp-H), 3.76 (br s, 1H, N-H), 6.77 (t, J = 7.2 Hz, 1H, quin-CH), 6.92 (d, J = 2.4 Hz, 1H, quin-CH), 6.94 (d, J = 2.4 Hz, 1H, quin-CH) ppm
【0172】
ステップ2:遷移金属化合物(2a)の製造
(i)[(1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-8-イル)テトラメチルシクロペンタジエニル-η、κ-N]ジリチウム化合物の製造
ドライボックス内で、前記ステップ(1)により製造された8-(2,3,4,5-テトラメチル-1,3-シクロペンタジエニル)-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン(8.07g、32.0mmol)とジエチルエーテル140mLを丸底フラスコに入れた後、-30℃に温度を低め、n-BuLi(17.7g、2.5M、64.0mmol)を撹拌しながらゆっくりと入れた。温度を常温に上げながら6時間反応させた。その後、ジエチルエーテルで多数回洗浄しながら濾過して固体を得た。真空をかけて残っている溶媒を除去し、黄色固体のジリチウム化合物(9.83g)を得た。収率は95%であった。
【0173】
1H NMR(C6D6, C5D5N) : δ 2.38 (br s, 2H, quin-CH2), 2.53 (br s, 12H, Cp-CH3), 3.48 (br s, 2H, quin-CH2), 4.19 (br s, 2H, quin-CH2), 6.77 (t, J = 6.8 Hz, 2H, quin-CH), 7.28 (br s, 1H, quin-CH), 7.75 (brs, 1H, quin-CH) ppm
【0174】
(ii)(1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-8-イル)テトラメチルシクロペンタジエニル-η、κ-N]チタンジメチル([(1,2,3,4-Tetrahydroquinolin-8-yl)tetramethylcyclopentadienyl-eta5、kapa-N]titanium dimethyl)の製造
ドライボックス内で、TiCl・DME(4.41g、15.76mmol)とジエチルエーテル(150mL)を丸底フラスコに入れ、-30℃で撹拌しながらMeLi(21.7mL、31.52mmol、1.4M)をゆっくりと入れた。15分間撹拌した後、前記ステップ(i)で製造された[(1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-8-イル)テトラメチルシクロペンタジエニル-η、κ-N]ジリチウム化合物(5.30g、15.76mmol)をフラスコに入れた。温度を常温に上げながら3時間撹拌した。反応が終わった後、真空をかけて溶媒を除去し、ペンタンに溶かしてから濾過して濾液を取った。真空をかけてペンタンを除去することで、濃い褐色の化合物(3.70g)が得られた。収率は71.3%であった。
【0175】
【化16】
1H NMR(C6D6) : δ 0.59 (s, 6H, Ti-CH3), 1.66 (s, 6H, Cp-CH3), 1.69 (br t, J = 6.4 Hz, 2H, quin-CH2), 2.05 (s, 6H, Cp-CH3), 2.47 (t, J = 6.0 Hz, 2H, quin-CH2), 4.53 (m, 2H, quin-CH2), 6.84 (t, J = 7.2 Hz, 1H, quin-CH), 6.93 (d, J =7.6 Hz, quin-CH), 7.01 (d, J =6.8 Hz, quin-CH) ppm
13C NMR(C6D6) : δ 12.12, 23.08, 27.30, 48.84, 51.01, 119.70, 119.96, 120.95, 126.99, 128.73, 131.67, 136.21 ppm.
【0176】
[エチレン/α-オレフィン共重合体の製造]
実施例1
1.5Lのオートクレーブ連続工程反応器にヘキサン溶媒(5.5kg/h)と1-ブテン(0.8kg/h)を満たした後、反応器の上端の温度を155℃に予熱した。トリイソブチルアルミニウム化合物(0.05mmol/分)、触媒として、前記合成例1で製造した遷移金属化合物(1a)(0.15μmol/分)、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート助触媒(0.15μmol/分)を同時に反応器に投入した。次いで、前記オートクレーブ反応器内にエチレン(0.87kg/h)および水素ガス(25cc/分)を投入し、89barの圧力および重合温度140℃で60分以上維持しながら共重合反応を連続的に進行することで、共重合体を製造した。
【0177】
次に、残ったエチレンガスを抜き、結果物として得られた共重合体含有溶液を真空オーブンにて12時間以上乾燥した後、得られたベール(bale)状の共重合体の物性を測定した。
【0178】
実施例2~14および比較例1~6
下記表1に記載の含量で反応物質を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行い、実施例2~14の重合体を製造した。
【0179】
また、合成例2で製造した遷移金属化合物(2a)を使用し、下記表1に記載の含量で反応物質を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により比較例4~6の重合体を製造した。
【0180】
一方、比較例1としては、LG化学のLC885X製品を購入し、比較例2としては三井社のDF8200製品を購入し、比較例3としては三井社のDF610製品を購入して使用した。
【0181】
【表1】
【0182】
また、実施例1~14および比較例1~7の共重合体中の、炭素原子1000個当たりのビニレン、トリビニル、ビニル、およびビニリデンの各官能基の個数を、下記方法に従って核磁気共鳴分光分析により測定し、表2に示した。
【0183】
(1)共重合体を1,1,2,2-テトラクロロエタンD2(TCE-d2)溶媒に溶解させた後、393KでBruker AVANCE III 500MHz NMR装備を用いて測定した。
(2)1H NMRスペクトルにおいて、TCE-d2のピークを6.0ppmに補正し、1.4ppmと0.96ppmの領域の積分値を用いて共単量体の含量比を計算した。4.7ppm~5.6ppmで観察されるビニル基、ビニリデン基、ビニレン基、およびトリビニル基のそれぞれの含量を計算した(分析法:AMT-3863)。ピーク同定(Peak assignment)は、文献[Macromolecules 2014,47,3282-3790]を参照した。
【0184】
【表2】
【0185】
また、実施例1~14および比較例1~6のメルトインデックス、密度、重量平均分子量(Mw)、および分子量分布(MWD)を測定し、下記表3に示した。
【0186】
(1)密度(Density、g/cm):ASTM D-792に準じて測定した。
(2)メルトインデックス(Melt Index、MI):ASTM D-1238(条件E、190℃、2.16Kg荷重)で測定した。
(3)メルトインデックス(Melt Index、MI10):ASTM D-1238(条件E、190℃、10Kg荷重)で測定した。
(4)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)は、生成された共重合体を下記のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)分析条件下で測定した:
-カラム:Agilent Olexis
-溶媒:卜リクロロベンゼン(TCB)
-流速:1.0ml/分
-試料濃度:1.0mg/ml
-注入量:200μl
-カラム温度:160℃
-検出器(Detector):Agilent High Temperature RI detector
-標準(Standard):ポリスチレン(Polystyrene)(三次関数で補正)
-データ加工(Data processing):Cirrus
(5)分子量分布は、Mw/Mnの比から計算した。
【0187】
【表3】
【0188】
前記表3の結果から、本発明の実施例1~14のエチレン/α-オレフィン共重合体が、比較例1、6に比べて狭い分子量分布を有することを確認することができる。
【0189】
また、実施例2と比較例1の分子量分布度を図1に示した。これから、実施例2が、比較例1に比べて狭い分子量分布を有することをさらに確認することができる。
【0190】
実験例1-架橋挙動特性および架橋度
[フィルムの製造]
(1)実施例1のサンプル500gに、下記処方(recipe)(a)に従って架橋助剤組成物を投入した後、40℃で1時間ソーキング(Soaking)してから15時間エージングした。
【0191】
また、実施例2、8、14、比較例1、2、4、5の各サンプルに、下記表4に示したようにそれぞれ異なる処方(recipe)(a)~(f)を適用したことを除き、上記と同様の方式により樹脂組成物を製造および適用した。
【0192】
(a)t-ブチル1-(2-エチルヘキシル)モノパーオキシカーボネート(TBEC)1phr(parts per hundred rubber)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)0.5phr、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MEMO)0.2phr
(b)TBEC0.6phr、TAIC0.8phr、MEMO0.2phr/トルエン
(c)TBEC0.6phr、TAIC0.93phr、MEMO0.21phr/トルエン
(d)ソーキング時間を、1時間の代わりに1.5時間行ったことを除き、前記(c)と同様に適用
(e)TBEC0.6phr、TAIC0.93phr、MEMO0.21phr/キシレン
(f)TBEC0.6phr、TAIC0.8phr、MEMO0.3phr/キシレン
【0193】
(2)ソーキングされたサンプルで、マイクロ押出機を用いて、高温架橋にならない程度の低温(押出機のバレル温度90℃以下条件)で平均厚さ450μmのフィルムを製造した。
【0194】
架橋挙動特性を把握するために、前記(2)における架橋助剤組成物が含有されたフィルムを、5g、直径4cmのディスクの形態に製作し、150℃で1時間スコーチ(scorch)されるまでの最大トルクMH値を始めとする結果値を表4に示した。
【0195】
このような架橋挙動特性は、アルファテクノロジス(Alpha Technologies社)のPremier MDRという移動式ダイレオメータ(Moving Die Rheometer)を用いて測定した。
【0196】
[架橋シートの製造]
前記[フィルムの製造]過程(2)で製造されたフィルムサンプルの上/下をテフロン(登録商標)シートで覆った後、真空ラミネータに入れ、150℃で15分間ラミネートすることで、架橋されたシートを製作した。前記架橋シートは、架橋度および架橋後の光学物性を測定するためのものであり、ガラス基板などの如何なる基材にも付着されていない形態である。
【0197】
前記架橋シートを0.5gずつトルエン(非架橋高分子抽出溶媒)に入れ、60℃で15時間エージングした。トルエンを洗浄した後、80℃で6時間乾燥した。乾燥後、サンプルの重量を測定し、下記式により架橋度を測定して表4に示した。
【0198】
*架橋度=(乾燥後の重量/トルエン処理前の重量)*100
【0199】
【表4】
(a)TBEC1phr、TAIC0.5phr、MEMO0.2phr/トルエン(非架橋高分子抽出溶媒)
(b)TBEC0.6phr、TAIC0.8phr、MEMO0.2phr/トルエン(非架橋高分子抽出溶媒)
(c)TBEC0.6phr、TAIC0.93phr、MEMO0.21phr/トルエン(非架橋高分子抽出溶媒)
(d)ソーキング時間を、1時間の代わりに1.5時間行ったことを除き、前記(c)と同様に適用
(e)TBEC0.6phr、TAIC0.93phr、MEMO0.21phr/キシレン(非架橋高分子抽出溶媒)
(f)TBEC0.6phr、TAIC0.8phr、MEMO0.3phr/キシレン(非架橋高分子抽出溶媒)
【0200】
前記表4の架橋挙動特性の結果において、MH値と最終トルク(Final Torque)値は、その値が大きいほど、架橋度が高いことを意味する。また、T値は、架橋速度に関連する要因であり、例えば、T90は、トルク(Torque)値が90%飽和(Saturation)になるまでかかる時間を表し、その数値が小さいほど、架橋速度が速いと言える。
【0201】
図2は、架橋処方(a)に従った実施例1と比較例1の前記架橋挙動特性を、図3は、架橋処方(b)に従った実施例2と比較例1の前記架橋挙動特性をそれぞれ示す。
【0202】
また、表4の結果から、同一の架橋処方を適用した実施例と比較例をそれぞれ比較すると、実施例の重合体を使用した樹脂組成物が、比較例に比べて架橋度が高いことを確認することができる。特に、実施例1、2の樹脂組成物の架橋度は、それぞれ同一の架橋処方を適用した比較例1に比べて、数値が10%以上高い。また、実施例14は、同一の架橋処方(f)を適用した比較例4、5に比べて遥かに高い架橋度を示した。
【0203】
また、実施例8に対してソーキング時間を増加させた場合(すなわち、処方(d))、架橋度がより向上することを確認した。
【0204】
実験例2-光学物性
前記架橋シートに対して、下記の方法に従ってイエローインデックス(YI)および全光線透過率(Tt)を測定し、下記表5に記載した。
【0205】
また、前記[フィルムの製造]過程の後、架橋シートを製造する前に、イエローインデックス(YI)および全光線透過率(Tt)を測定したものを、「架橋前」データとして下記表5に記載した。
【0206】
(1)イエローインデックス(YI):ASTM 1925に準じて、Colorflex(Hunter lab)を利用して400nm~700nm領域の反射率を測定し、それを用いて、下記式4によりYI値を得た。
【0207】
[式4]
YI=[100(1.28XCIE-1.06ZCIE)]/YCIE
【0208】
前記YIは、UV/VIS/NIRスペクトロメータにて、色差分析プログラムを利用して計算された値であり(ASTM、D1925)、XCIE、YCIE、ZCIEは、それぞれ赤色、緑色、青色座標が示す相対的な値である。
【0209】
(2)全光線透過率(Tt):ヘイズメータ(Hazemeter)を用いて、550nmの波長の光に対する全光線透過率を測定した。透過率は、試験片を試験片ホルダーに入れて3回測定した後、それらの平均値を求め、JIS K 7105の規格条件で測定した。
【0210】
【表5】
【0211】
前記表5において、本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体を含んで形成されたフィルムは、全光線透過率およびイエローインデックスが比較例に比べて非常に優れていることを確認することができる。
【0212】
具体的に、本発明の実施例は、架橋後のイエローインデックス数値が0.82~1.34の範囲であって、比較例の1.63~3.7に比べて非常に優れている。また、本発明の実施例は、架橋後の全光線透過率が90.9以上であって、最大89.4の数値を示す比較例に比べて著しく向上していることを確認することができる。したがって、優れた光学物性を有する光学フィルムの製造に、本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体を適用可能であると予想される。
図1
図2
図3