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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20220613BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20220613BHJP
【FI】
C08J3/12 A CEY
C08J7/04 Z CEY
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021518711
(86)(22)【出願日】2020-08-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 KR2020010612
(87)【国際公開番号】W WO2021054609
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2021-04-05
(31)【優先権主張番号】10-2019-0114791
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0099394
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】キュ・パル・キム
(72)【発明者】
【氏名】ウィ・ソク・チュン
(72)【発明者】
【氏名】ギュンヒョク・アン
(72)【発明者】
【氏名】キチョル・キム
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-203997(JP,A)
【文献】特開2009-051952(JP,A)
【文献】特表2012-527502(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0058267(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106893119(CN,A)
【文献】特開2007-077393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28
B01J 20/00-20/28
A61F 13/15-13/84
A61F 15/16-15/64
C08J 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体の架橋重合体を含むベース樹脂粉末と、前記架橋重合体が追加架橋されて前記ベース樹脂粉末の表面に形成された表面架橋層とを含む高吸水性樹脂粒子を提供する段階;および
前記高吸水性樹脂粒子に、ポリオキシアルキレン脂肪族炭化水素エーテルカルボン酸を含む添加剤および水を混合して加水高吸水性樹脂を形成する段階を含む、高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記添加剤は、ポリオキシエチレン(繰り返し数=1~20)脂肪族アルキルエーテルカルボン酸を含む、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記添加剤に結合した脂肪族アルキルは、10~30の炭素数を有する、請求項1または2に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記添加剤は、前記高吸水性樹脂粒子の重量を基準として、5~20,000ppmwの含有量で混合される、請求項1から3のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記水は、前記高吸水性樹脂粒子の100重量部に対して、1~10重量部の含有量で混合される、請求項1から4のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記添加剤および水の混合段階は、40~80℃の温度で行われる、請求項1から5のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記添加剤および水の混合段階の後に、前記加水高吸水性樹脂を乾燥および分級する段階をさらに含み、
前記乾燥および分級された高吸水性樹脂は、150~850μmの粒径と、1~2.5重量%の含水率を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記分級過程で除去される850μm超過の粒径を有する粒子は、前記乾燥した高吸水性樹脂の全重量を基準として、5重量%未満になる、請求項7に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記乾燥および分級された高吸水性樹脂は、生理食塩水(0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液)に対する30分間の遠心分離保水能(CRC)が30~45g/gである、請求項7または8に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記乾燥および分級された高吸水性樹脂を移送する段階をさらに含む、請求項7から9のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2019年9月18日付の韓国特許出願第10-2019-0114791号および2020年8月7日付の韓国特許出願第10-2020-0099394号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、加水などによって高吸水性樹脂の含水率を適切に制御して移送中の破砕などを抑制できながらも、前記加水過程で巨大粒子が発生したり、含水率が不均一になるなどの物性の低下を抑制できる高吸水性樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)とは、自重の5百から1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であって、開発業者ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などそれぞれ異なる名前で名付けられている。このような高吸水性樹脂は生理用品として実用化され始め、現在は、幼児用紙おむつなど衛生用品のほか、園芸用土壌保水剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野での鮮度保持剤、およびシップ用などの材料に幅広く使用されている。
【0004】
最も多い場合に、このような高吸水性樹脂はおむつや生理用ナプキンなどの衛生材分野で幅広く使用されている。このような衛生材への適用のために、高吸水性樹脂は代表的に微細粉末が集まった形態を有し、これらの微細粉末が衛生材内で均一な粒径および広い表面積で有することによって、水分を急速に多量吸収する特性を示す必要がある。
【0005】
一方、前記高吸水性樹脂を製造する過程では、後続工程の進行、包装または衛生材への適用などのために、高吸水性樹脂を移送する場合が多く発生する。しかし、前記高吸水性樹脂が微細粉末の集まった形態を有することによって、樹脂の移送過程で高吸水性樹脂粉末が物理的に衝突して破砕される場合が多く発生し、これによって、高吸水性樹脂の全体的な吸水能など諸物性の低下が発生する問題点があった。
【0006】
このような問題点を解決するために、以前から高吸水性樹脂を最終的に製造した後に、前記高吸水性樹脂を冷却しながら少量の水を添加して含水率を制御する加水工程が行われてきた。このような加水工程によって、前記高吸水性樹脂の含水率を一部増加させる場合、高吸水性樹脂粉末の移送中における全体的な破砕率および物性の低下が大きく減少できる。
【0007】
しかし、前記加水工程を行う過程で、高吸水性樹脂粉末と水の十分かつ均一な混合が行われない場合、樹脂粉末が互いにかたまって、例えば、850μmより大きい粒径を有する巨大粒子(標準篩#20を通過できない粒子)が多量発生する場合が多かった。このような巨大粒子の多量発生は全体的な高吸水性樹脂の物性の低下をもたらし、結局、前記巨大粒子を分級工程などによって追加除去する必要が生じて全体的な高吸水性樹脂の生産性の低下をもたらしていた。
【0008】
上述した問題点により、加水などによって高吸水性樹脂の含水率を適切に制御して移送中の破砕などを抑制できながらも、前記加水過程で巨大粒子が発生するなどの問題点を低減できる高吸水性樹脂の製造技術の開発が要求され続けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、加水などによって高吸水性樹脂の含水率を適切に制御して移送中の破砕などを抑制できながらも、前記加水過程で巨大粒子が発生したり、含水率が不均一になるなどの物性の低下を抑制できる高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのため、本発明は、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体の架橋重合体を含むベース樹脂粉末と、前記架橋重合体が追加架橋されて前記ベース樹脂粉末の表面に形成された表面架橋層とを含む高吸水性樹脂粒子を提供する段階;および
前記高吸水性樹脂粒子に、ポリオキシアルキレン脂肪族炭化水素エーテルカルボン酸を含む添加剤および水を混合して加水高吸水性樹脂を形成する段階を含む、高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の高吸水性樹脂の製造方法によれば、加水工程で特定の添加剤を用いることによって、前記加水工程などで高吸水性樹脂の含水率を適切に制御して移送中の破砕や物性の低下などを抑制することができる。ひいては、前記特定の添加剤の使用によって、前記加水過程で巨大粒子が発生したり、含水率が不均一になるなどの現象により高吸水性樹脂の物性が低下する問題点も解決することができる。
【0012】
結局、本発明によれば、高吸水性樹脂の移送中の破砕を抑制できながらも、加水過程中の物性の低下や巨大粒子の生成による生産性の低下が実質的に現れなくなるので、優れた物性を示す高吸水性樹脂を生産性高く製造および移送して、各種衛生材の製造に好適に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、多様な変更が加えられて様々な形態を有し得るが、特定の実施例を例示して下記に詳しく説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるあらゆる変更、均等物乃至代替物を含むことが理解されなければならない。
【0014】
以下、発明の具体的な実施形態による高吸水性樹脂の製造方法についてより詳しく説明する。
【0015】
それに先立ち、本明細書に使用される専門用語は単に特定の実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。そして、ここで使用される単数形態は、文章がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。
【0016】
本発明の明細書に使用される用語「重合体」、または「高分子」は、水溶性エチレン系不飽和単量体が重合された状態であることを意味し、すべての水分含有量範囲または粒径範囲を包括することができる。前記重合体中、重合後乾燥前の状態のもので、含水率(水分含有量)が約40重量%以上の重合体を含水ゲル重合体と称することができる。
【0017】
また、「高吸水性樹脂」は、文脈により、前記重合体またはベース樹脂自体を意味するか、または前記重合体や前記ベース樹脂に対して追加の工程、例えば、表面架橋、微粉再造粒、乾燥、粉砕、分級、加水などを経て、製品化に適した状態にしたものをすべて包括するものとして使用される。
【0018】
発明の一実施形態によれば、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体の架橋重合体を含むベース樹脂粉末と、前記架橋重合体が追加架橋されて前記ベース樹脂粉末の表面に形成された表面架橋層とを含む高吸水性樹脂粒子を提供する段階;および
前記高吸水性樹脂粒子に、ポリオキシアルキレン脂肪族炭化水素エーテルカルボン酸を含む添加剤および水を混合して加水高吸水性樹脂を形成する段階を含む、高吸水性樹脂の製造方法が提供される。
【0019】
一実施形態の製造方法では、表面架橋までを進行させて高吸水性樹脂を製造した後、前記高吸水性樹脂に加水工程を行いながら、ポリオキシアルキレン脂肪族炭化水素官能基およびカルボン酸の官能基がエーテル結合した添加剤を少量共に添加する。この時、前記ポリオキシアルキレンは、1~20、あるいは2~15、あるいは3~10の繰り返し数を有するポリオキシエチレン由来の単位になり、これに結合した脂肪族炭化水素は、炭素数10~30の炭素数を有する脂肪族線状アルキル由来の構造、例えば、ステアリルまたはラウリルなどの官能基になってもよい。
【0020】
つまり、このような添加剤は、分子中に長鎖炭化水素の疎水性官能基を有し、これと共に、前記疎水性官能基にエーテル結合を媒介として末端結合したカルボン酸の親水性官能基を共に有するものである。また、前記添加剤は、前記疎水性および親水性官能基と共に、一定の繰り返し数を有するポリオキシアルキレン由来の単位がさらに結合したものである。
【0021】
このような特定の添加剤を加水工程で共に添加することによって、加水工程の進行過程で樹脂粒子間のかたまり現象を大きく低減できると確認された。これは、前記長鎖炭化水素の疎水性官能基が加水工程で添加された水と、樹脂粒子の接触および水分吸収を遅延させることができるからと見られる。その結果、樹脂粒子間の付着性が低くなって、加水工程および移送過程で高吸水性樹脂粒子間のかたまりや巨大粒子の形成および物性の低下を抑制することができる。
【0022】
また、前記特定の添加剤は、前記疎水性官能基と共に、カルボン酸の親水性官能基を共に含み、ひいては、ポリオキシアルキレン由来の単位がさらに結合するので、高吸水性樹脂粒子の周囲に親水性雰囲気を形成することができ、また、加水工程時に混合された水に高吸水性樹脂粒子を均等に分散および分布させて高吸水性樹脂の移送中の破砕などをさらに効果的に抑制することができる。
【0023】
結果的に、一実施形態の製造方法によれば、前記加水工程などで高吸水性樹脂の含水率を適切に制御して前記高吸水性樹脂の移送中の破砕や物性の低下などを抑制できながらも、前記加水過程で巨大粒子が発生したり、含水率が不均一になるなどの現象により高吸水性樹脂の物性が低下する問題点も解決することができる。
【0024】
一方、前記一実施形態の方法と異なる他の添加剤、例えば、かつて凝集抑制剤として知られたポリカルボン酸共重合体や、代表的な親水性高分子であるポリエチレングリコールなどの他の添加剤を前記加水工程で使用する場合には、前記加水過程での凝集がうまく抑制されず、850μm超過の巨大粒子が多量発生したり、含水率が不均一になって、高吸水性樹脂の全体的な物性の低下または生産性の低下が現れることが確認された。これは、当該高分子内に、多数の親水性官能基が存在するためと予測される。
【0025】
このように、一実施形態の方法によれば、加水工程によって高吸水性樹脂の移送中の破砕を効果的に抑制できながらも、加水過程中の物性の低下や巨大粒子の生成による生産性の低下が実質的に現れなくなるので、優れた物性を示す高吸水性樹脂を生産性高く製造および移送して、各種衛生材の製造に好適に適用することができる。
【0026】
以下、一実施形態の高吸水性樹脂の製造方法について、各段階別により具体的に説明する。
【0027】
一実施形態による高吸水性樹脂の製造方法では、まず、高吸水性樹脂粒子を製造する。このような高吸水性樹脂粒子は、一般的な高吸水性樹脂の製造工程および条件により、架橋重合、乾燥、粉砕、分級および表面架橋などの工程を経て製造することができる。以下、高吸水性樹脂粒子を製造する一例について具体的に説明する。
【0028】
まず、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤および重合開始剤の各成分を混合して単量体組成物を形成する。
【0029】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、高吸水性樹脂の製造に通常使用される任意の単量体であってもよい。非制限的な例として、前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、下記の化学式1で表される化合物であってもよい:
【0030】
[化1]
-COOM
【0031】
前記化学式1において、
は、不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキル基であり、
は、水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0032】
好適には、前記単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれら酸の1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩からなる群より選択された1種以上であってもよい。このように水溶性エチレン系不飽和単量体としてアクリル酸またはその塩を用いる場合、吸水性が向上した高吸水性樹脂を得ることができて有利である。この他にも、前記単量体としては、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、または2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の陰イオン性単量体とその塩;(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートまたはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの非イオン系親水性含有単量体;および(N,N)-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートまたは(N,N)-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体とその4級化物;からなる群より選択された1種以上を使用することができる。
【0033】
ここで、前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和されたものであってもよい。好ましくは、前記単量体を水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化アンモニウムなどのアルカリ物質で部分的に中和させたものが使用できる。
【0034】
この時、前記単量体の中和度は、40~95モル%、または40~80モル%、または45~75モル%であってもよい。前記中和度の範囲は最終物性に応じて異なるが、中和度が高すぎると、中和された単量体が析出して重合が円滑に行われにくいことがあり、逆に、中和度が低すぎると、高分子の吸水性が大きく低下するだけでなく、取り扱いにくい弾性ゴムのような性質を示すことがある。
【0035】
一方、前記内部架橋剤は、後述するベース樹脂の表面を追加架橋させるための表面架橋剤と区分するために使用する用語で、上述した水溶性エチレン系不飽和単量体の不飽和結合を架橋重合させる役割を果たす。前記段階での架橋は表面または内部の区分なしに行われるが、後述するベース樹脂の表面架橋工程によって、最終的に製造された高吸水性樹脂の表面は表面架橋剤によって架橋された構造からなり、内部は前記内部架橋剤によって架橋された構造からなる。
【0036】
前記内部架橋剤としては、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の重合時に架橋結合の導入を可能にするものであれば、いかなる化合物も使用可能である。非制限的な例として、前記内部架橋剤は、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリアリールアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテルなどのアルキレングリコールのジグリシジルエーテル系化合物、プロピレングリコール、グリセリン、またはエチレンカーボネートなどの多官能性架橋剤が単独使用または2以上併用されてもよいし、これらに限定されるものではない。
【0037】
このような内部架橋剤は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して、0.01~5重量部で使用できる。例えば、前記内部架橋剤は、水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部対比、0.01重量部以上、0.03重量部以上、または0.05重量部以上でかつ、5重量部以下、3重量部以下で使用できる。前記内部架橋剤の含有量が低すぎる場合、架橋が十分に起こらず適正水準以上の強度の実現が困難になり、内部架橋剤の含有量が高すぎる場合、内部架橋密度が高くなって所望の吸水性能の実現が困難になる。
【0038】
また、前記重合開始剤は、重合方法により適切に選択可能であり、熱重合方法を利用する場合には熱重合開始剤を使用し、光重合方法を利用する場合には光重合開始剤を使用し、混成重合方法(熱および光をすべて用いる方法)を利用する場合には熱重合開始剤と光重合開始剤をすべて使用することができる。ただし、光重合方法によるとしても、紫外線照射などの光照射によって一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によりある程度の熱が発生するので、追加的に熱重合開始剤を使用することもできる。
【0039】
前記光重合開始剤は、紫外線などの光によってラジカルを形成できる化合物であれば、その構成の限定なく使用可能である。
【0040】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびアルファ-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群より選択される1つ以上を使用することができる。一方、アシルホスフィンの具体例としては、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネートなどが挙げられる。より多様な光開始剤については、Reinhold Schwalm著書の「UV Coatings:Basics,Recent Developments and New Application(Elsevier2007年)」p115によく明示されており、上述した例に限定されない。
【0041】
前記光重合開始剤は、前記単量体組成物に対して、0.0001~2.0重量%の濃度で含まれる。このような光重合開始剤の濃度が低すぎる場合、重合速度が遅くなり、光重合開始剤の濃度が高すぎると、高吸水性樹脂の分子量が小さくて物性が不均一になる。
【0042】
また、前記熱重合開始剤としては、過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素およびアスコルビン酸からなる開始剤の群より選択される1つ以上を使用することができる。具体的には、過硫酸塩系開始剤の例としては、過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH)などがあり、アゾ(Azo)系開始剤の例としては、2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane)dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチルアミジンジヒドロクロライド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitril)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノバレリン酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))などがある。より多様な熱重合開始剤については、Odian著書の「Principle of Polymerization(Wiley,1981)」p203によく明示されており、上述した例に限定されない。
【0043】
前記熱重合開始剤は、前記単量体組成物に対して、0.001~2.0重量%の濃度で含まれる。このような熱重合開始剤の濃度が低すぎる場合、追加的な熱重合がほとんど起こらず熱重合開始剤の追加による効果がわずかになり、熱重合開始剤の濃度が高すぎると、高吸水性樹脂の分子量が小さくて物性が不均一になる。
【0044】
前記単量体組成物は、必要に応じて、増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤または界面活性剤などの添加剤をさらに含んでもよい。
【0045】
また、上述した水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤および重合開始剤を溶媒と共に混合することができる。したがって、前記段階で製造された単量体組成物は、前記溶媒に溶解した形態で、前記単量体組成物における固形分の含有量は、20~60重量%であってもよい。
【0046】
この時使用できる溶媒は、上述した成分を溶解できれば、その構成の限定なく使用可能であり、例えば、水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテートおよびN,N-ジメチルアセトアミドなどから選択された1種以上を組み合わせて使用することができる。
【0047】
一方、上述した各成分の混合は、特に限定されず、当分野で通常使用される方法、例えば、撹拌により行われる。
【0048】
次に、前記単量体組成物を架橋重合して含水ゲル重合体を形成する段階を行う。
【0049】
前記段階は、製造された単量体組成物を熱重合、光重合または混成重合の方法で架橋重合して含水ゲル重合体を形成できれば、特に構成の限定なく行われる。
【0050】
具体的には、熱重合を進行させる場合、ニーダー(kneader)などの撹拌軸を有する反応器で行われる。また、熱重合を進行させる場合、約80℃以上、そして約110℃未満の温度で行われる。上述した範囲の重合温度を達成するための手段は特に限定されず、前記反応器に熱媒体を供給するか、熱源を直接供給して加熱することができる。使用可能な熱媒体の種類としては、スチーム、熱風、熱い油などの昇温した流体などを使用することができるが、これらに限定されるものではなく、さらに、供給される熱媒体の温度は、熱媒体の手段、昇温速度および昇温目標温度を考慮して適切に選択することができる。一方、直接供給される熱源には、電気による加熱、ガスによる加熱方法が挙げられるが、上述した例に限定されるものではない。
【0051】
これに対し、光重合を進行させる場合、移動可能なコンベヤベルトを備えた反応器で行われるが、上述した重合方法は一例であり、本発明は、上述した重合方法に限定されない。
【0052】
一例として、上述のように、撹拌軸を備えたニーダー(kneader)などの反応器に、熱媒体を供給するか、反応器を加熱して熱重合を進行させる場合、反応器の排出口に排出される含水ゲル重合体を得ることができる。このように得られた含水ゲル重合体は、反応器に備えられた撹拌軸の形態に応じて、数センチメートルから数ミリメートルの大きさで得られる。具体的には、得られる含水ゲル重合体の大きさは、注入される単量体組成物の濃度および注入速度などに応じて多様化することができる。
【0053】
また、上述のように、移動可能なコンベヤベルトを備えた反応器で光重合を進行させる場合、通常得られる含水ゲル重合体の形態は、ベルトの幅を有するシート状の含水ゲル重合体であってもよい。この時、重合体シートの厚さは、注入される単量体組成物の濃度および注入速度に応じて異なるが、通常約0.5~約10cmの厚さを有するシート状の重合体が得られるように単量体組成物を供給することが好ましい。シート状の重合体の厚さが過度に薄い程度に単量体組成物を供給する場合、生産効率が低くて好ましくなく、シート状の重合体の厚さが10cmを超える場合には、過度に厚い厚さによって、重合反応が全厚にわたって均等に起こらないことがある。
【0054】
前記単量体組成物の重合時間は特に限定されず、約30秒~60分に調節できる。
【0055】
このような方法で得られた含水ゲル重合体の通常の含水率は、約30~約80重量%であってもよい。一方、本明細書全体において、「含水率」は、全体含水ゲル重合体の重量に対して占める水分の含有量で、含水ゲル重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。具体的には、赤外線加熱により重合体の温度を上げて乾燥する過程で重合体中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算された値と定義する。この時、乾燥条件は、常温から約180℃まで温度を上昇させた後、180℃で維持する方式で、総乾燥時間は温度上昇段階5分を含む40分に設定して、含水率を測定する。
【0056】
次に、前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級して粉末形態のベース樹脂を形成する段階を行う。
【0057】
一方、前記ベース樹脂を形成する段階では、乾燥効率を上げるために、含水ゲル重合体を乾燥する前に粗粉砕する工程を含んでもよい。
【0058】
この時、使用される粉砕機は構成の限定がなく、具体的には、垂直型切断機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダー(Turbo grinder)、回転切断式粉砕機(Rotary cutter mill)、切断式粉砕機(Cutter mill)、円板粉砕機(Disc mill)、シュレッド破砕機(Shred crusher)、破砕機(Crusher)、チョッパ(chopper)および円板式切断機(Disc cutter)からなる粉砕機器の群より選択されるいずれか1つを含むことができるが、上述した例に限定されない。
【0059】
このような粗粉砕工程により、含水ゲル重合体の粒径は、約0.1~約10mmに調節できる。粒径が0.1mm未満となるように粉砕するのは、含水ゲル重合体の高い含水率によって技術的に容易でなく、また、粉砕された粒子間で互いに凝集する現象が現れることもある。一方、粒径が10mmを超えるように粉砕する場合、後に行われる乾燥段階の効率増大効果がわずかになる。
【0060】
前記のように粗粉砕工程を経るか、あるいは粗粉砕工程を経ていない重合直後の含水ゲル重合体に対して乾燥を行う。この時、前記乾燥温度は、約60℃~約250℃であってもよい。この時、乾燥温度が約70℃未満の場合、乾燥時間が過度に長くなり、前記乾燥温度が約250℃を超える場合、過度に重合体の表面のみ乾燥して、後に行われる粉砕工程で微粉が発生することがあり、最終的に形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがある。したがって、好ましくは、前記乾燥は、約100℃~約240℃の温度で、さらに好ましくは、約110℃~約220℃の温度で行われる。
【0061】
また、乾燥時間の場合には、工程効率などを考慮して、約20分~約12時間行われる。一例として、約10分~約100分、または約20分~約60分間乾燥できる。
【0062】
前記乾燥段階の乾燥方法も、含水ゲル重合体の乾燥工程で通常使用されるものであれば、その構成の限定なく選択されて使用できる。具体的には、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法で乾燥段階を進行させることができる。このような乾燥段階進行後の重合体の含水率は、約0.1~約10重量%であってもよい。
【0063】
以後、前記乾燥段階を経て得られた乾燥した重合体は、粉砕機を用いて粉砕される。
【0064】
具体的には、前記粉末形態のベース樹脂が粒径約150μm~約850μmの粒子からなるように粉砕するために用いられる粉砕機は、具体的には、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョグミル(jog mill)などであってもよいが、上述した例に限定されるものではない。
【0065】
そして、このような粉砕段階の後、最終的に製品化される高吸水性樹脂粉末の物性を管理するために、粉砕後に得られる重合体粉末を粒径に応じて分級する別途の過程を経ることができる。好ましくは、粒径が150~850μmの重合体を分級して、このような粒径を有する重合体粉末に対してのみ表面架橋反応段階を経て製品化することができる。より具体的には、前記分級が行われたベース樹脂粉末は、150~850μmの粒径を有し、300~600μmの粒径を有する粒子を50重量%以上含むことができる。
【0066】
一方、上述した分級工程までを経てベース樹脂を形成した後には、表面架橋剤の存在下、前記ベース樹脂の表面を追加架橋して表面架橋層を形成する段階を行う。
【0067】
前記段階は、ベース樹脂の表面架橋密度を高めるために表面架橋剤を用いて表面架橋層を形成させる段階で、架橋されずに表面に残っていた水溶性エチレン系不飽和単量体の不飽和結合が前記表面架橋剤によって架橋されて、表面架橋密度が高くなった高吸水性樹脂が形成される。このような熱処理工程で表面架橋密度、つまり、外部架橋密度は増加するのに対し、内部架橋密度は変化がなくて、製造された表面架橋層が形成された高吸水性樹脂は、内部より外部の架橋密度が高い構造を有するようになる。
【0068】
一実施形態の方法では、前記表面架橋層の形成段階で、表面架橋剤、アルコール系溶媒および水を含む表面架橋剤組成物を使用することができる。
【0069】
一方、前記表面架橋剤組成物に含まれる表面架橋剤としては、かつてから高吸水性樹脂の製造に用いられていた表面架橋剤を特別な制限なくすべて使用可能である。例えば、前記表面架橋剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、トリプロピレングリコールおよびグリセロールからなる群より選択された1種以上のポリオール;エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートからなる群より選択された1種以上のカーボネート系化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物;オキサゾリジノンなどのオキサゾリン化合物;ポリアミン化合物;オキサゾリン化合物;モノ-、ジ-またはポリオキサゾリジノン化合物;または環状ウレア化合物;などを含むことができる。好ましくは、上述した内部架橋剤と同一のものが使用可能であり、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテルなどのアルキレングリコールのジグリシジルエーテル系化合物が使用可能である。
【0070】
このような表面架橋剤は、ベース樹脂100重量部に対して、0.001~2重量部で使用できる。例えば、前記表面架橋剤は、ベース樹脂100重量部に対して、0.005重量部以上、0.01重量部以上、または0.02重量部以上でかつ、0.5重量部以下、0.3重量部以下の含有量で使用できる。表面架橋剤の含有量範囲を上述した範囲に調節して、優れた吸水性能および通液性などの諸物性を示す高吸水性樹脂を製造することができる。
【0071】
また、前記表面架橋剤組成物をベース樹脂と混合する方法については、その構成の限定はない。例えば、表面架橋剤組成物と、ベース樹脂を反応槽に入れて混合するか、ベース樹脂に表面架橋剤組成物を噴射する方法、連続的に運転されるミキサーにベース樹脂と表面架橋剤組成物を連続的に供給して混合する方法などを使用することができる。
【0072】
前記表面架橋工程は、約80℃~約250℃の温度で行われる。より具体的には、前記表面架橋工程は、約100℃~約220℃、または約120℃~約200℃の温度で、約20分~約2時間、または約40分~約80分間行われる。上述した表面架橋工程条件を満たす時、ベース樹脂の表面が十分に架橋されて加圧吸水能や通液性が増加できる。
【0073】
前記表面架橋反応のための昇温手段は特に限定されない。熱媒体を供給するか、熱源を直接供給して加熱することができる。この時、使用可能な熱媒体の種類としては、スチーム、熱風、熱い油などの昇温した流体などを使用することができるが、これらに限定されるものではなく、さらに、供給される熱媒体の温度は、熱媒体の手段、昇温速度および昇温目標温度を考慮して適切に選択することができる。一方、直接供給される熱源には、電気による加熱、ガスによる加熱方法が挙げられるが、上述した例に限定されるものではない。
【0074】
一方、以上に例として説明した工程により、表面架橋工程までを進行させると、高吸水性樹脂粒子が製造および提供できる。このような高吸水性樹脂粒子は、例えば、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体が内部架橋剤を媒介として重合された架橋重合体を含むベース樹脂粉末と、前記架橋重合体が表面架橋剤を媒介として追加架橋されて前記ベース樹脂粉末の表面に形成された表面架橋層とを含む形態を有することができる。
【0075】
また、前記高吸水性樹脂粒子は、例えば、衛生材内で広い表面積にわたって速い速度で多量の水分を吸収できるように、150~850μmの粒径を有する微細粉末が集まった形態になってもよい。
【0076】
しかし、このような高吸水性樹脂粒子は、後続の包装工程または後続の衛生材の製造工程などに移送される過程で、物理的衝突などによって破砕されうるが、これを抑制するために、前記高吸水性樹脂粒子に所定の添加剤および水を混合して加水高吸水性樹脂を形成する加水工程を行う。
【0077】
このような加水工程においては、すでに上述したように、ポリオキシアルキレン脂肪族炭化水素エーテルカルボン酸が添加剤として使用される。このような添加剤は、ポリオキシアルキレン脂肪族炭化水素官能基およびカルボン酸の官能基がエーテル結合した構造を有するものであって、分子中に長鎖炭化水素の疎水性官能基と、カルボン酸の親水性官能基およびポリオキシアルキレン由来の単位を共に有することによって、加水工程および移送中の高吸水性樹脂の破砕およびかたまり現象を共に効果的に抑制することができる。また、前記添加剤は、ポリオキシアルキレン由来の単位を含むことでより高い親水性を有し、常温で液体状態を示すことができる。したがって、前記加水工程の過程で、このような添加剤の水溶液の形成および添加のための、別途の溶解または撹拌装置を必要としなくなるので、相対的に加水工程の進行が容易になる。
【0078】
より具体的な例において、前記添加剤構造中に含まれている前記ポリオキシアルキレンは、1~20、あるいは2~15、あるいは3~10の繰り返し数を有するポリオキシエチレン由来の単位になってもよいし、これに結合した脂肪族炭化水素は、炭素数10~30、あるいは12~20の炭素数を有する脂肪族線状アルキル由来の構造、例えば、ステアリルまたはラウリルなどの官能基になってもよい。
【0079】
このような化合物を加水工程中の添加剤として用いて、加水工程および高吸水性樹脂の移送中の破砕およびかたまりによる巨大粒子の形成や、これによる高吸水性樹脂の物性の低下をさらに効果的に抑制することができる。
【0080】
また、上述した添加剤は、加水過程で高吸水性樹脂粒子がかたまって巨大粒子が形成されるのを効果的に抑制しながらも、前記加水工程による含水率の均一な上昇を阻害しないように、前記高吸水性樹脂粒子の重量を基準として、5~20,000ppmwの含有量で混合できる。より具体的な一例において、前記添加剤は、高吸水性樹脂粒子の重量を基準として、5~100ppmwの含有量で混合できる。
【0081】
このような含有量範囲で前記添加剤が使用されることによって、加水過程での高吸水性樹脂粒子間の凝集および巨大粒子の生成がさらに効果的に抑制されながらも、加水工程および後続の乾燥などによって、高吸水性樹脂の含水率は、所望の範囲で全体的に均一に制御可能である。
【0082】
一方、前記加水工程で前記高吸水性樹脂粒子に水が均一に混合されて最終高吸水性樹脂の含水率が全体的に均一に制御できるように、前記水は、前記高吸水性樹脂粒子の100重量部に対して、1~10重量部、あるいは3~8重量部、あるいは4~6重量部の含有量で混合されることが適切である。
【0083】
上述した添加剤および水を混合する加水工程は、例えば、40~80℃、あるいは45~75℃の温度で、表面架橋された高吸水性樹脂粒子を冷却しながら進行させることができる。これによって、全体的な工程を単純化しながらも、高吸水性樹脂の物性の劣化を抑制することができる。
【0084】
上述した方法で加水工程を進行させて、加水高吸水性樹脂を形成した後には、このような加水高吸水性樹脂を乾燥および分級する段階をさらに進行させることができる。前記加水工程で水および添加剤が均一に混合された加水高吸水性樹脂を乾燥しながら、最終的に所望の含水率、例えば、1~2.5重量%の含水率を達成することができる。このような含水率範囲は、表面架橋直後の高吸水性樹脂粒子のような約0.5重量%以下、あるいは0.3重量%以下の含水率に比べて増加したものであって、このような含水率の一定の増加によって高吸水性樹脂の移送中に物理的破砕を効果的に抑制することができる。
【0085】
このような乾燥工程は、高吸水性樹脂粒子の製造工程で進行させるものと同等の乾燥装置および条件下で行うことができ、前記目標含水率を考慮して当業者が適切な乾燥時間で行うことができる。
【0086】
一方、前記乾燥により目標含水率を達成した後には、前記高吸水性樹脂を追加分級することができる。このような追加分級過程では、前記加水工程などで発生した巨大粒子、例えば、850μm超過の粒径を有する粒子と、150μm未満の粒径を有する粒子を除去し、高吸水性樹脂が150~850μmの粒径を有するように製造することができる。
【0087】
ただし、一実施形態の方法では、前記加水過程で特定の添加剤が使用されることによって、加水による巨大粒子の生成が大きく低減することができる。したがって、前記分級過程で除去される850μm超過の粒径を有する粒子は、前記乾燥した高吸水性樹脂の全重量を基準として、5重量%未満、あるいは3重量%未満、あるいは0.1~3重量%になる。
【0088】
これに対し、加水過程で添加剤を用いなかったり、一実施形態の方法と他の添加剤を用いた場合には、加水過程で依然として巨大粒子が多量発生して、前記分級過程で除去される850μm超過の粒径を有する粒子は、前記乾燥した高吸水性樹脂の全重量を基準として、約20重量%以上になる。
【0089】
一方、上述した乾燥および分級工程までを経て、一実施形態の方法で最終的に製造された高吸水性樹脂は、前記150~850μmの粒径を有する樹脂に対して測定した時、生理食塩水(0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液)に対する30分間の遠心分離保水能(CRC)が30~45g/gになって優れた吸水性能を維持することができる。前記保水能は欧州不織布産業協会(European Disposables and Nonwovens Association、EDANA)規格EDANA WSP241.3により測定され、後述する試験例に記載の計算式Aにより算出される。
【0090】
上述した乾燥および分級された高吸水性樹脂は、後続の包装または衛生材の製造工程などへの適用のために、追加的に移送できる。このような高吸水性樹脂は、移送過程でも含水率の適切な制御によって破砕や物性の低下を実質的に引き起こさない。ひいては、加水工程で巨大粒子の生成も最小化されるので、全体的に優れた物性および生産性を有するように製造できる。
【0091】
以下、発明の理解のために好ましい実施例が提示される。しかし、下記の実施例は発明を例示するためのものに過ぎず、発明をこれらに限定しない。
【0092】
<実施例>
実施例1:高吸水性樹脂の製造
アクリル酸100g、32%苛性ソーダ123.5g、熱重合開始剤の過硫酸ナトリウム0.2g、光重合開始剤のジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド0.008g、内部架橋剤のポリエチレングリコールジアクリレート2.25gおよび水59.0gを混合して、全固形分濃度が45重量%の単量体組成物を製造した。前記単量体組成物を10cmの幅および2mの長さを有し、50cm/minの速度で回転する回転式ベルト上に、500mL/min~2000mL/minの速度で供給した。前記供給された単量体組成物に10mW/cmの強度で紫外線を照射して60秒間架橋重合を進行させた。
【0093】
前記架橋重合反応後、ミートチョッパー(meat chopper)で含水ゲル重合体を粗粉砕し、エアーフロー(Air-flow)オーブンを用いて190℃で40分間乾燥した。
【0094】
このように製造されたベース樹脂100gに、超純水3g、メタノール3.5g、1,3-プロパンジオール0.25gおよびシュウ酸0.16gの混合溶液である表面架橋剤組成物を投与し、2分間混合した。これを185℃で50分間熱処理して表面架橋を進行させた後、分級して150~850μmの粒径を有する粒子を取ることによって、高吸水性樹脂粒子を製造した。
【0095】
次に、前記高吸水性樹脂粒子200gを60℃のるつぼで回転させながら、超純水10g、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテルカルボン酸0.0075gの混合溶液を2分間投与および混合した。その結果物を25分間追加乾燥した後、分級して最終製品を得た。
【0096】
実施例2:高吸水性樹脂の製造
前記ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテルカルボン酸の代わりに、ポリオキシエチレン(5)ラウリルエーテルカルボン酸を同量用いたことを除けば、実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂の最終製品を得た。
【0097】
実施例3:高吸水性樹脂の製造
前記ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテルカルボン酸の代わりに、ポリオキシエチレン(7)ラウリルエーテルカルボン酸を同量用いたことを除けば、実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂の最終製品を得た。
【0098】
実施例4:高吸水性樹脂の製造
前記ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテルカルボン酸の代わりに、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテルカルボン酸を同量用いたことを除けば、実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂の最終製品を得た。
【0099】
比較例1:高吸水性樹脂の製造
高吸水性樹脂粒子は実施例1と同様の方法で製造した。ただし、実施例1で追加的に行われた超純水およびポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテルカルボン酸の混合溶液を投与および混合する段階、後の追加乾燥および分級段階を進行させず、前記高吸水性樹脂粒子自体を比較例1の高吸水性樹脂の最終製品とした。
【0100】
比較例2:高吸水性樹脂の製造
まず、高吸水性樹脂粒子は実施例1と同様の方法で製造した。
【0101】
次に、前記高吸水性樹脂粒子200gを60℃のルツボで回転させながら、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテルカルボン酸を混合しなかった超純水10gを2分間投与および混合した。その結果物を25分間追加乾燥した後、分級して最終製品を得た。
【0102】
比較例3:高吸水性樹脂の製造
前記ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテルカルボン酸の代わりに、大韓民国公開特許第2015-0143167号の製造例1に開示されたポリカルボン酸共重合体0.0250gを用いたことを除けば、実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂の最終製品を得た。
【0103】
比較例4:高吸水性樹脂の製造
前記ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテルカルボン酸の代わりに、Mw600のポリエチレングリコール0.25gを用いたことを除けば、実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂の最終製品を得た。
【0104】
試験例
前記実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂に対して、下記の方法で諸物性を測定し、その結果を下記表1に示した。
【0105】
(1)遠心分離保水能(CRC、centrifuge retention capacity)
まず、高吸水性樹脂中に150~850μmの粒径を有するもの(#20~100の標準篩の間)を取って、欧州不織布産業協会(European Disposables and Nonwovens Association、EDANA)規格EDANA WSP241.3により、無荷重下吸水倍率による遠心分離保水能(CRC)を測定した。
【0106】
具体的には、高吸水性樹脂(またはベース樹脂粉末;以下、同一)W(g、約0.2g)を不織布製の封筒に均一に入れて密封(seal)した後に、常温で0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液の生理食塩水に浸水させた。30分後に、封筒を遠心分離機を用いて250Gで3分間水気を切った後に、封筒の質量W(g)を測定した。また、高吸水性樹脂を用いずに同じ操作をした後に、その時の質量W(g)を測定した。このように得られた各質量を用いて、次の計算式AによりCRC(g/g)を算出して保水能を確認した。
【0107】
[計算式A]
CRC(g/g)={[W(g)-W(g)-W(g)]/W(g)}
【0108】
(2)粒度分布
粒度分布の測定のために、ASTM規格の標準網篩を用いて、高吸水性樹脂を分級した。より具体的には、目のサイズがそれぞれ850μm、600μm、300μm、150μmの標準網篩を順次に積層した後、最も上に高吸水性樹脂100gを入れて、sieve shaker(AS200)にセッティングした。Amplitude1.0mm/gで10分間分級を進行させた。それぞれの標準網篩の間に残っている高吸水性樹脂を取り出して重量を測り、百分率で計算して、高吸水性樹脂の粒度分布を算出した。
【0109】
(3)含水率
高吸水性樹脂を赤外線加熱しながら乾燥する過程で、高吸水性樹脂中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算された値で測定した。この時、乾燥条件は、常温から約140℃まで温度を上昇させた後、140℃で維持する方式で、総乾燥時間は10分に設定した。前記重量減少分の測定結果から含水率を算出した。
【0110】
【表1】
【0111】
前記表1を参照すれば、加水工程が行われていない比較例1は、含水率が低くて後続の移送過程中に物理的破砕が起こると予測される。また、比較例2~4は、加水工程によって適切な含水率に制御されて移送中の破砕は抑制されると予測されるが、加水工程中に添加剤の未使用またはポリカルボン酸やポリエチレングリコールなどの他の添加剤の使用によって、巨大粒子が多数発生して高吸水性樹脂の物性の低下および生産性の低下が現れたことが確認された。
【0112】
これに対し、実施例1~4は、含水率の適切な制御によって移送中の破砕の抑制が可能でありながらも、加水工程で巨大粒子の発生量も大きく減少したことが確認された。