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  • 特許-複合材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】複合材
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/18 20060101AFI20220613BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
B32B5/18
B32B15/08 Q
B32B15/08 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020516601
(86)(22)【出願日】2018-09-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 KR2018011299
(87)【国際公開番号】W WO2019059730
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2020-03-19
(31)【優先権主張番号】10-2017-0122574
(32)【優先日】2017-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ソ・ジン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ミン・シン
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-520375(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0311767(US,A1)
【文献】特開2017-107731(JP,A)
【文献】特開2003-080629(JP,A)
【文献】特表2016-503575(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104822476(CN,A)
【文献】特表2014-534645(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0116661(US,A1)
【文献】特開2008-109111(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0028819(KR,A)
【文献】国際公開第2015/060125(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0264832(US,A1)
【文献】特開2009-094110(JP,A)
【文献】特開2013-120814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
H01L 23/34-23/46
H05K 7/20
H01M 10/613
H01M 10/651
H01M 10/653
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシ基、アミノ基、アルコキシ基、カルボキシル基、グリシジル基およびスルホニル基よりなる群から選ばれる一つ以上の官能基が導入されているフィルム形態の金属フォームと、前記金属フォームの表面または金属フォームの内部に存在する高分子成分とを含み、
前記金属フォームは、熱伝導度が8W/mK以上である金属又は金属合金を含み、
前記金属フォームは、厚さMTが、40~500μmの範囲内にあり、
前記金属フォームは、気孔度が30%~99%の範囲内にあり、
前記高分子成分は、アクリル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アミノ樹脂、ポリエステル、オレフィン樹脂およびフェノール樹脂よりなる群から選ばれる一つ以上を含み、
前記官能基は、下記化学式1:
[化学式1]
SiR (4-n)
(化学式1でR は、ヒドロキシ基、アミノ基、アルコキシ基、カルボキシル基、グリシジル基またはスルホニル基であるか、または前記を含む官能基であり、R は、水素原子、アルキル基またはアルコキシ基であり、nは、1~4の範囲内の数である。)
で表されるシラン化合物を使用して導入されたものである、複合材。
【請求項2】
前記金属フォームの厚さMTおよび複合材の厚さTの比率T/MTが、2.5以下である、請求項1に記載の複合材。
【請求項3】
前記金属フォームは、熱伝導度が、15W/mK以上の金属又は金属合金を含む、請求項1または2に記載の複合材。
【請求項4】
前記金属フォームは、厚さMTが40μm~400μmの範囲内にある、請求項1から3のいずれか一項に記載の複合材。
【請求項5】
前記金属フォームは、気孔度が、35%~99%の範囲内にある、請求項1から4のいずれか一項に記載の複合材。
【請求項6】
前記金属フォームは、銅、金、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、コバルト、マグネシウム、モリブデン、タングステンおよび亜鉛よりなる群から選ばれるいずれか一つの金属または前記のうち2種以上を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の複合材。
【請求項7】
前記高分子成分の体積PVと金属フォームの体積MVの比率MV/PVが、0.5以下である、請求項1から6のいずれか一項に記載の複合材。
【請求項8】
前記高分子成分内に存在する熱伝導性フィラーをさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の複合材。
【請求項9】
前記高分子成分は、金属フォームの表面で表面層を形成しており、前記表面層に熱伝導性フィラーをさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の複合材。
【請求項10】
前記熱伝導性フィラーは、セラミックフィラーまたはカーボンフィラーである、請求項8または9に記載の複合材。
【請求項11】
前記熱伝導性フィラーは、アルミナ、窒化アルミニウム(AlN;aluminum nitride)、窒化ホウ素(BN;boron nitride)、窒化ケイ素(silicon nitride)、SiC、BeO、カーボンブラック、グラフェン、グラフェン酸化物、カーボンナノチューブまたはグラファイトである、請求項10に記載の複合材。
【請求項12】
前記熱伝導性フィラーには、ヒドロキシ基、アミノ基、アルコキシ基、カルボキシル基、グリシジル基およびスルホニル基よりなる群から選ばれる一つ以上の官能基が導入されている、請求項8または9に記載の複合材。
【請求項13】
前記熱伝導性フィラーは、球形、針状、板状、デンドライト状または星型(star shape)である、請求項8または9に記載の複合材。
【請求項14】
前記熱伝導性フィラーは、平均粒径が0.001μm~80μmの範囲内である、請求項8または9に記載の複合材。
【請求項15】
請求項8または9に記載の複合材であって、前記複合材内の熱伝導性フィラーの体積比が、80vol%以下である、請求項8または9に記載の複合材。
【請求項16】
フィルム形態である金属フォームの表面または内部に硬化性高分子組成物が存在する状態で前記高分子組成物を硬化させる段階を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の複合材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年9月22日付けで提出された韓国特許出願第10-2017-0122574号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本出願は、複合材に関する。
【背景技術】
【0003】
放熱素材は、多様な用途に用いられる。例えば、バッテリーや各種電子機器は、作動過程で熱が発生するため、このような熱を効果的に制御できる素材が要求される。
【0004】
放熱特性が良い素材としては、熱伝導度が良いセラミック素材等が知られているが、このような素材は、加工性が劣るので、高分子マトリックス内に高い熱伝導率を示す前記セラミックフィラー等を配合して製造した複合素材を使用することができる。
【0005】
しかしながら、前記方法による場合、高い熱伝導度を確保するために、多量のフィラー成分が適用されなければならないので、多様な問題が発生する。例えば、多量のフィラー成分を含む素材の場合、素材自体が固くなる傾向にあり、この場合、耐衝撃性等が劣る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は、複合材に関し、一例として、熱伝導特性に優れていながらも、耐衝撃性や加工性等の他の物性も優秀に確保される複合材またはその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願は、複合材に関する。本出願で用語「複合材」は、金属フォームと高分子成分を少なくとも含む材料を意味する。
【0008】
本明細書で用語「金属フォームまたは金属骨格」は、金属を主成分として含む多孔性構造体を意味する。前記で金属を主成分とするというのは、金属フォームまたは金属骨格の全体重量を基準として金属の比率が55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上または95重量%以上である場合を意味する。前記主成分として含まれる金属の比率の上限は、特に制限されず、例えば、100重量%、99重量%または98重量%程度であってもよい。
【0009】
本明細書で用語「多孔性」は、気孔度(porosity)が、少なくとも10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、75%以上または80%以上である場合を意味する。前記気孔度の上限は、特に制限されず、例えば、約100%未満、約99%以下または約98%以下程度であってもよい。前記気孔度は、金属フォーム等の密度を計算して公知の方法により算出することができる。
【0010】
前記複合材は、高い熱伝導度を有し、これによって、例えば、放熱素材のような熱の制御のための素材に用いられる。
【0011】
例えば、前記複合材は、熱伝導度が、約1.5W/mK以上、2W/mK以上、2.5W/mK以上または3W/mK以上であってもよい。前記複合材の熱伝導度が高いほど複合材が優れた熱制御機能を有し得るものであって、特に制限されず、一例として、10W/mK以下、9W/mK以下、8W/mK以下、7W/mK以下、6W/mK以下、5W/mK以下または4W/mK以下であってもよい。
【0012】
前記複合材の熱伝導度は、後述する実施例に記載された方法によって評価することができる。
【0013】
本明細書で言及する物性のうち測定温度が当該物性に影響を及ぼす場合には、特に別途規定しない限り、その物性は、常温で測定したものである。用語「常温」は、加温または減温されない自然そのままの温度であり、例えば、約10℃~30℃の範囲内のいずれか一つの温度、約23℃または約25℃程度の温度を意味する。
【0014】
本出願の複合材は、前述のような優れた熱伝導特性を有すると同時に、加工性や耐衝撃性等の他の物性も安定的に確保され得、このような効果は、本明細書で説明する内容により達成され得る。
【0015】
前記複合材に含まれる金属フォームの形態は、特に制限されないが、一例として、フィルム形状であってもよい。本出願の複合材では、前記フィルム形態の金属フォームの少なくとも表面や内部に存在する高分子成分が追加される。
【0016】
このような高分子成分は、前記金属フォームの少なくとも一つの表面上で表面層を形成しているか、または、金属フォーム内部の孔隙に充填されて存在し得、場合によっては、前記表面層を形成すると共に、金属フォームの内部に充填されていてもよい。表面層を形成する場合、金属フォームの表面のうち少なくとも一つの表面、一部の表面またはすべての表面に対して高分子成分が表面層を形成していてもよい。一例として、少なくとも金属フォームの主表面である上部および/または下部の表面に前記高分子成分が表面層を形成していてもよい。前記表面層は、金属フォームの表面全体を覆うように形成されてもよく、一部の表面のみを覆うように形成されてもよい。
【0017】
複合材において金属フォームは、気孔度が約10%~99%の範囲内であってもよい。このような気孔度を有する金属フォームは、適切な熱伝達ネットワークを形成している多孔性の金属骨格を有し、したがって、当該金属フォームを少量適用する場合にも、優れた熱伝導度を確保することができる。他の例として、前記気孔度は、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上または50%以上であるか、または98%以下であってもよい。
【0018】
前述したように、金属フォームは、フィルム形態であってもよい。この場合、フィルムの厚さは、後述する方法により複合材を製造するに際して、目的とする熱伝導度や厚さ比率等を考慮して調節され得る。前記フィルムの厚さは、目的とする熱伝導度を確保するために、例えば、約40μm以上、約45μm以上、約50μm以上、約55μm以上、約60μm以上、約65μm以上または約70μm以上であってもよい。前記フィルムの厚さの上限は、目的に応じて制御されるものであって、特に制限されるものではないが、例えば、約1,000μm以下、約900μm以下、約800μm以下、約700μm以下、約600μm以下、約500μm以下、約400μm以下、約300μm以下、約200μm以下または約150μm以下程度であってもよい。
【0019】
本明細書で厚さは、当該対象の厚さが一定でない場合には、その対象の最小厚さ、最大厚または平均厚さであってもよい。
【0020】
前記金属フォームは、熱伝導度が高い素材であってもよい。一例として、前記金属フォームは、熱伝導度が、約8W/mK以上、約10W/mK以上、約15W/mK以上、約20W/mK以上、約25W/mK以上、約30W/mK以上、約35W/mK以上、約40W/mK以上、約45W/mK以上、約50W/mK以上、約55W/mK以上、約60W/mK以上、約65W/mK以上、約70W/mK以上、約75W/mK以上、約80W/mK以上、約85W/mK以上または約90W/mK以上の金属または金属合金を含むか、そのような金属または金属合金からなり得る。金属フォームの材料の熱伝導度は、その数値が高いほど少ない量の金属フォームを適用しつつ、目的とする熱制御特性を確保することができるので、特に制限されるものではなく、例えば、約1,000W/mK以下程度であってもよい。
【0021】
前記金属フォームの骨格は、多様な種類の金属や金属合金からなり得、このような金属や金属合金のうち金属フォームに形成されたとき、前記に言及された範囲の熱伝導度を示すことができる素材が選択されればよい。このような素材としては、銅、金、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、コバルト、マグネシウム、モリブデン、タングステンおよび亜鉛よりなる群から選ばれるいずれか一つの金属や前記のうち2種以上の合金等を例示することができるが、これらに制限されるものではない。
【0022】
このような金属フォームは、多様に公知となっており、金属フォームを製造する方法も、多様に公知となっている。本出願では、このような公知の金属フォームや前記公知の方法により製造した金属フォームが適用され得る。
【0023】
金属フォームを製造する方法としては、塩等の気孔形成剤と金属の複合材料を焼結する方法、高分子フォーム等の支持体に金属をコートし、その状態で焼結する方法やスラリー法等が知られている。また、前記金属フォームは、本出願人の先行出願である韓国出願第2017-0086014号、第2017-0040971号、第2017-0040972号、第2016-0162154号、第2016-0162153号または第2016-0162152号公報等に開示された方法により製造されることもできる。
【0024】
また、前記金属フォームは、前記先行出願に開示された方法のうち誘導加熱法で製造されることもでき、この場合、金属フォームは、導電性磁性金属を少なくとも含むことができる。この場合、金属フォームは、前記導電性磁性金属を、重量を基準として30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上または50重量%以上含むことができる。他の例として、前記金属フォーム内の導電性磁性金属の比率は、約55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上または90重量%以上であってもよい。前記導電性磁性金属の比率の上限は、特に制限されず、例えば、約100重量%未満または95重量%以下であってもよい。
【0025】
本出願において用語「導電性磁性金属」は、所定の比透磁率と電気伝導度を有する金属であって、誘導加熱法により金属の焼結が可能となるほどに発熱が可能な金属を意味する。
【0026】
一例として、前記導電性磁性金属としては、比透磁率が90以上の金属を使用することができる。比透磁率μは、当該物質の透磁率μと真空中の透磁率μの比率μ/μである。前記金属は、比透磁率が95以上、100以上、110以上、120以上、130以上、140以上、150以上、160以上、170以上、180以上、190以上、200以上、210以上、220以上、230以上、240以上、250以上、260以上、270以上、280以上、290以上、300以上、310以上、320以上、330以上、340以上、350以上、360以上、370以上、380以上、390以上、400以上、410以上、420以上、430以上、440以上、450以上、460以上、470以上、480以上、490以上、500以上、510以上、520以上、530以上、540以上、550以上、560以上、570以上、580以上または590以上であってもよい。比透磁率が高いほど、後述する誘導加熱のための電磁場の印加時にさらに高い熱を発生するので、その上限は、特に制限されない。一例として、前記比透磁率の上限は、例えば、約300,000以下であってもよい。
【0027】
前記導電性磁性金属は、20℃での電気伝導度が、約8MS/m以上、9MS/m以上、10MS/m以上、11MS/m以上、12MS/m以上、13MS/m以上または14.5MS/m以上であってもよい。前記伝導度の上限は、特に制限されず、例えば、前記伝導度は、約30MS/m以下、25MS/m以下または20MS/m以下であってもよい。
【0028】
このような導電性磁性金属の具体例には、ニッケル、鉄またはコバルト等があるが、これらに制限されるものではない。
【0029】
一例として、前記金属フォームには、多様な官能基が導入されていてもよい。前記官能基は、前記金属フォームが前記高分子成分と適切な相溶性を示すことができるように選択され得る。当業界では、高分子成分の種類によってそれと相溶性が確保され得るようにする官能基が多様に知られており、したがって、本出願では、使用される高分子成分の種類によって好適な官能基を選択すればよい。このような官能基としては、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシル基、グリシジル基および/またはスルホニル基等を例示することができるが、これらに制限されるものではない。前記でアルコキシ基は、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4のアルキル基であってもよい。金属フォームに前記のような官能基を導入する方法は、特に制限されない。例えば、金属素材に前記に言及された官能基を導入する方法は、多様に知られており、本出願では、このような公知の方式がすべて適用され得る。
【0030】
例えば、前記官能基は、当該官能基を含むシラン(silane)化合物と金属フォームを接触させることによって導入することができる。
【0031】
前記でシラン化合物の例としては、下記化学式1で表される化合物を例示することができるが、これに制限されるものではない。
【0032】
[化学式1]
SiR (4-n)
【0033】
化学式1でRは、ヒドロキシ基、アミノ基、アルコキシ基、カルボキシル基、グリシジル基またはスルホニル基であるか、または前記を含む官能基であり、Rは、水素原子、アルキル基またはアルコキシ基であり、nは、1~4の範囲内の数である。
【0034】
前記でヒドロキシ基、アミノ基、アルコキシ基、カルボキシル基、グリシジル基またはスルホニル基を含む官能基としては、アミノアルキル基、アルコキシアルキル基、カルボキシアルキル基、グリシジルオキシ基、グリシジルアルキルオキシ基またはアルキルスルホニル基等を例示することができるが、これらに制限されるものではない。
【0035】
前記でアルキル基は、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4のアルキル基であってもよく、これは、分岐鎖、直鎖または環形であってもよく、任意に一つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0036】
また、前記でアルコキシ基としては、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4のアルコキシ基が適用され得、これは、分岐鎖、直鎖または環形であってもよく、任意に一つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0037】
一例として、金属フォームと前記シラン化合物を接触させて目的とする官能基を導入するか、あるいは、一旦前記シラン化合物を金属フォームに導入した後、それによって導入された官能基と他の化合物を反応させる方式で目的とする官能基を導入することもできる。
【0038】
また、必要に応じて、前記シラン化合物との接触前に酸処理等により金属フォームに存在する酸化物成分等を除去する前処理工程を行うこともできる。
【0039】
また、前記金属フォームは、金属酸化物を約30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、1重量%以下または0.5重量%以下、好適には実質的に0重量%で含むことができる。すなわち、金属フォームが空気との接触等を通じて酸化して酸化物が形成される場合、金属フォーム自体の熱伝導度が大きく低下するので、金属酸化物が出来るだけ少ないか、または含まれない金属フォームの適用が有利である。金属フォームから金属酸化物を除去する方法は、特に制限されず、例えば、HClまたはHNO等の酸性溶液内に金属フォームを維持する方式を使用することができる。
【0040】
前記複合材は、前述したように、前記金属フォームの表面または金属フォームの内部に存在する高分子成分をさらに含むが、このような複合材の前記金属フォームの厚さMTおよび全体厚さTの比率T/MTは、2.5以下であってもよい。前記厚さの比率は、他の例として、約2以下、1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.15以下または1.1以下であってもよい。前記厚さの比率の下限は、特に制限されるものではないが、一例として、約1以上、約1.01以上、約1.02以上、約1.03以上、約1.04以上または約1.05以上であってもよい。このような厚さ比率の下で目的とする熱伝導度が確保されると共に、加工性や耐衝撃性等に優れた複合材が提供され得る。
【0041】
本出願の複合材に含まれる高分子成分の種類は、特に制限されず、例えば、複合材の加工性や耐衝撃性、絶縁性等を考慮して選択され得る。本出願で適用できる高分子成分の例としては、公知のアクリル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アミノ樹脂およびフェノール樹脂よりなる群から選ばれる一つ以上が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0042】
前記複合材の場合、前述した金属フォームを適用することによって、主に熱伝導度を確保する成分の比率を最小化しながらも、優れた熱伝導度を確保することができ、したがって、加工性や耐衝撃性等の損害なしに目的とする物性の確保が可能である。
【0043】
一例として、前記複合材に含まれる高分子成分の体積PVと金属フォームの体積MVの比率MV/PVは、0.5以下であってもよい。前記比率MV/PVは、他の例として、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下、1以下または0.5以下程度であってもよい。前記体積比率の下限は、特に制限されず、例えば、約0.1程度であってもよい。前記体積比率は、複合材に含まれる高分子成分と金属フォームの重量と当該成分の密度を用いて算出することができる。
【0044】
本出願の複合材では、前記のような高分子成分が金属フォームの少なくとも一つの表面で表面層を形成しているが、この際、前記表面層内には、熱伝導性フィラーが含まれている。これによって、さらに熱伝導特性に優れた複合材の提供が可能である。
【0045】
本出願で用語「熱伝導性フィラー」は、熱伝導度が約1W/mK以上、約5W/mK以上、約10W/mK以上または約15W/mK以上のフィラーを意味する。前記熱伝導性フィラーの熱伝導度は、約400W/mK以下、約350W/mK以下または約300W/mK以下であってもよい。熱伝導性フィラーの種類は、特に制限されず、例えば、セラミックフィラーまたは炭素系フィラー等を適用することができる。このようなフィラーとしては、アルミナ、窒化アルミニウム(AlN;aluminum nitride)、窒化ホウ素(BN;boron nitride)、窒化ケイ素(silicon nitride)、SiCまたはBeO等や、炭素ナノチューブ、カーボンブラック、グラフェン(graphene)、グラフェン酸化物(graphene oxide)やグラファイト等のようなフィラーを例示することができるが、これに制限されるものではない。
【0046】
表面層に含まれる前記フィラーの形態や比率は、特に制限されない。一例として、前記フィラーの形態は、略球形、針状、板状、デンドライト状または星型(star shape)等の多様な形態を有し得る。
【0047】
一例において、前記熱伝導性フィラーは、平均粒径が0.001μm~80μmの範囲内にありえる。前記フィラーの平均粒径は、他の例として、0.01μm以上、0.1以上、0.5μm以上、1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上または約6μm以上であってもよい。前記フィラーの平均粒径は、他の例として、約75μm以下、約70μm以下、約65μm以下、約60μm以下、約55μm以下、約50μm以下、約45μm以下、約40μm以下、約35μm以下、約30μm以下、約25μm以下、約20μm以下、約15μm以下、約10μm以下または約5μm以下であってもよい。
【0048】
前記フィラーにも、前述した金属フォームに導入され得る多様な官能基、すなわち高分子成分との相溶性を改善できる官能基が導入されていてもよい。このような官能基としては、前述したもののようなアミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシル基、グリシジル基および/またはスルホニル基等を例示することができるが、これらに制限されるものではない。前記でアルコキシ基は、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4のアルコキシ基であってもよい。フィラーに前記のような官能基を導入する方法は、特に制限されない。例えば、フィラーに前記に言及された官能基を導入する方法は、Polym.Adv.Technol.2014.25 791-798等を含む文献に多様に知られており、本出願では、このような公知の方式がすべて適用され得る。
【0049】
例えば、窒化ホウ素(BN;boron nitride)フィラーの場合、その表面に存在するアミン(amine)グループをNaOH溶液処理等を通じてヒドロキシ基で置換し、さらに、アミノ-シラン反応等を通じて前記官能基を導入することができる。
【0050】
フィラーの比率は、目的とする特性が確保されるか、あるいは損傷されない範囲内で調節され得る。一例として、前記フィラーは、複合材内で体積比で約80vol%以下程度で含まれ得る。前記で体積比は、複合材を構成する成分、例えば、前記金属フォーム、高分子成分およびフィラーそれぞれの重量と密度を基準として計算した数値である。
【0051】
前記体積比は、他の例として、約75vol%以下、70vol%以下、65vol%以下、60vol%以下、55vol%以下、50vol%以下、45vol%以下、40vol%以下、35vol%以下または30vol%以下程度であるか、約1vol%以上、2vol%以上、3vol%以上、4vol%以上または5vol%以上程度であってもよい。
【0052】
また、本出願は、前記のような形態の複合材の製造方法に関する。前記製造方法は、熱伝導度が8W/mK以上であり、フィルム形態である金属フォームの表面に熱伝導性フィラーを含む硬化性高分子組成物が存在する状態で前記高分子組成物を硬化させる段階を含むことができる。
【0053】
前記方法で適用される金属フォームやフィラーに関する具体的な内容は、既に記述した通りであり、製造される複合材に関する具体的な事項も、前記記述した内容に従うことができる。
【0054】
一方、前記で適用される高分子組成物も、硬化等を通じて前記に言及した高分子成分を形成できるものであれば、特別な制限はなく、このような高分子成分は、当業界に多様に公知となっている。
【0055】
すなわち、例えば、公知の成分のうち適切な粘度を有する材料を使用して、公知の方法を用いて硬化を行うことによって、前記複合材を製造することができる。
【発明の効果】
【0056】
本出願では、金属フォーム、高分子成分および熱伝導性フィラーを含み、優れた熱伝導度を有すると共に、耐衝撃性、加工性および絶縁性等の他の物性にも優れた複合材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】表面処理前後の銅金属フォームの接触角を確認する写真である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、実施例および比較例により本出願を具体的に説明するが、本出願の範囲が下記実施例に制限されるものではない。
【0059】
実施例1
金属フォーム表面処理
金属フォームとしては、銅金属フォームであって、厚さが約70μm程度であり、気孔度が約70%であり、熱伝導度が約6.616W/mK程度であるフィルム形状の銅金属フォームを使用した。前記銅金属フォームを10%HNO溶液に10分程度浸漬させて、表面に存在する酸化膜を除去した。次に、前記銅金属フォームを3-アミノプロピルトリエトキシシラン溶液(3重量%)に常温で1時間程度浸漬させて、表面にアミノ基を導入した。図1は、銅金属フォームの表面にアミノ基が導入されたか否かを確認するために、当該接触角を確認する図であり、左側が導入処理前の写真であり、右側が導入処理後の写真である。図面から、表面処理後に親水性が増加することを確認することができる。前記金属フォームに対して熱伝導度を測定した結果、約10.649W/mK程度と確認されて、表面処理を通じて熱伝導度が改善されたことを確認することができる。
【0060】
前記で熱伝導度は、複合材の熱拡散度A、比熱Bおよび密度Cを求めて、熱伝導度=ABCの数式により求め、前記熱拡散度Aは、レーザーフラッシュ法(LFA装置、モデル名:LFA467)を用いて測定し、比熱は、示差走査熱量測定(DSC;Differential Scanning Calorimeter)装置を用いて測定し、密度は、アルキメデス法を用いて測定した。また、前記熱伝導度は、複合材の厚さ方向(Z軸)に対する値である。
【0061】
熱伝導性フィラーの表面処理
熱伝導性フィラーとして、板状の窒化ホウ素パウダー(Flake type、平均直径:約10μm、厚さ約1μm)を表面処理に適用した。まず、前記パウダーを約90℃の温度でNaOH溶液に約12時間の間浸漬させて、表面にヒドロキシ基を導入した。その後、さらに、3-アミノプロピルトリエトキシシラン溶液(3重量%)に約90℃の温度で約12時間程度浸漬させて、表面にアミノ基を導入した。
【0062】
下記表1は、前記表面処理前後の窒化ホウ素パウダーに対してSEM装置(オックスフォード社のESD装置が追加されたHitachi社S-4800モデル)を使用して行った元素分析結果である。下記表1から、表面処理後にケイ素原子が確認され、これによって、アミノ基が導入されたことを確認することができる。
【0063】
【表1】
【0064】
複合材の製造
前記銅金属フォームを、前記表面処理された窒化ホウ素パウダーが約10重量%程度の比率で含まれた熱硬化性シリコン組成物(PDMS,Sylgard 183 kit)に含浸させ、アプリケーターを用いて最終複合材の厚さが約120μm程度になるように過量の組成物を除去した。次に、前記材料を約120℃のオーブンに約10分程度維持して硬化させることによって、複合材を製造した。製造された複合材に対して熱伝導度を測定した結果、約3.008W/mK程度であることが確認された。
【0065】
前記で熱伝導度は、熱拡散度A、比熱Bおよび密度Cを求めて、熱伝導度=ABCの数式で求め、前記熱拡散度Aは、レーザーフラッシュ法(LFA装置、モデル名:LFA467)を用いて測定し、比熱は、示差走査熱量測定(DSC)装置を用いて測定し、密度は、アルキメデス法を用いて測定した。また、前記熱伝導度は、複合材の厚さ方向(Z軸)に対する値である。
【0066】
比較例1
表面処理前の銅金属フォームと窒化ホウ素を使用したことを除いて、実施例1と同一に複合材を製造し、その複合材の熱伝導度は、同一に測定した結果、約2.550W/mK程度であった。
図1