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  • 特許-架橋性組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】架橋性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/04 20060101AFI20220613BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20220613BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220613BHJP
   C09J 7/22 20180101ALI20220613BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220613BHJP
   C08K 5/07 20060101ALI20220613BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20220613BHJP
   C08K 5/1515 20060101ALI20220613BHJP
   C08K 5/16 20060101ALI20220613BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
C08L33/04
C09J133/04
C09J7/38
C09J7/22
C09J11/06
C08K5/07
C08K3/00
C08K5/1515
C08K5/16
B32B27/30 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020535066
(86)(22)【出願日】2019-04-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 KR2019004942
(87)【国際公開番号】W WO2019209021
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-09-16
(31)【優先権主張番号】10-2018-0047792
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】サン・キ・チュン
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ラ・イ
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-530202(JP,A)
【文献】特表2020-530514(JP,A)
【文献】特表2010-525098(JP,A)
【文献】特開2006-002140(JP,A)
【文献】特開2013-216756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C09J 1/00-201/10
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルポリマーと、アルカリ金属カチオンを有するイオン性化合物と、下記化1の化合物と、エポキシ架橋剤と、を含み、
金属キレート架橋剤及び金属含有架橋触媒を含まない、
下記数式1による硬化率が30%から85%である、架橋性組成物であって、
前記アクリルポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位及びカルボキシル基含有モノマーの重合単位を含み、
前記架橋性組成物は、アクリルポリマー100重量部に対して3重量部以上の前記イオン性化合物を含み、
前記架橋性組成物は、アクリルポリマー100重量部に対して1重量部以下の前記架橋剤を含み、
前記架橋性組成物は、イオン性化合物100重量部に対して0.01から30重量部の下記化1の化合物を含む、架橋性組成物
【化1】
化1において、R 及びR は、それぞれ独立して炭素数1~4のアルキル基であり、R 及びR は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である。
[数式1]
硬化率=B/A×100
数式1において、Aは、前記イオン性化合物が前記アクリルポリマー100重量部に対して3重量部以上の比率で含まれている架橋性組成物に前記アクリルポリマーの架橋剤を前記アクリルポリマー100重量部に対して1重量部以下で配合した架橋性組成物又は前記組成物の架橋物をエチルアセテートに浸漬する前の質量(単位:g)であり、Bは、前記組成物の架橋物をエチルアセテートに常温で24時間の間浸漬した後に回収した不溶解分の乾燥質量(単位:g)であり、前記で不溶解分は、200メッシュのふるいにかけられる成分である。
【請求項2】
アジリジン架橋剤をさらに含む、請求項に記載の架橋性組成物。
【請求項3】
アルカリ金属カチオンは、リチウムカチオンである、請求項1に記載の架橋性組成物。
【請求項4】
イオン性化合物は、下記化2のアニオンを含む、請求項1に記載の架橋性組成物。
[化2]
[X(YO)]
化2において、Xは、窒素又は炭素であり、Yは、炭素又は硫黄であり、Rは、パーフルオロアルキル基であり、mは、1又は2であり、nは、2又は3である。
【請求項5】
イオン性化合物は、下記化3~5のいずれかのアニオンを含む、請求項1に記載の架橋性組成物。
[化3]
OSO2n+1
[化4]
N(SO2n+1)
[化5]
C(SO2n+1)
化3~5において、nは、0~4の範囲内の数である。
【請求項6】
アクリルポリマー100重量部に対して~20重量部のイオン性化合物を含む、請求項1に記載の架橋性組成物。
【請求項7】
及びRのいずれかは、水素原子であり、他の一つは、炭素数1~4のアルキル基である、請求項に記載の架橋性組成物。
【請求項8】
光学フィルムと、前記光学フィルムの一面に形成されており、請求項1の架橋性組成物の架橋物を含む粘着剤層を含む、光学積層体。
【請求項9】
保護用基材フィルムと、前記基材フィルムの一面に形成されており、請求項1の架橋性組成物の架橋物を含む粘着剤層を含む、表面保護フィルム。
【請求項10】
請求項の光学積層体がその粘着剤層を介して取り付けられているディスプレイパネルを含む、ディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年4月25日付で大韓民国特許庁に提出された特許出願第10-2018-0047792号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては、本出願に含まれる。
【0002】
本出願は、架橋性組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
粘着剤や接着剤などのような架橋性組成物の架橋物は、様々な分野において様々な用途に使用される。例えば、LCD(Liquid Crystal Display)やOLED(Organic Light Emitting Diode)などのディスプレイ装置には、偏光板などの各種光学フィルムが適用されるが、光学フィルムは、ほとんど粘着剤や接着剤によって前記ディスプレイ装置に取り付けられる。
【0004】
また、粘着剤は、ディスプレイ装置に適用される光学フィルムを保護するための表面保護フィルムなどにも適用される。
【0005】
用途に応じて前記粘着剤や接着剤に導電性を与える場合には、当該粘着剤や接着剤にイオン性化合物を配合することが代表的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は、架橋性組成物に関する。本出願では、架橋性組成物にイオン性化合物を配合する場合にも架橋効率を優秀に確保できる架橋性組成物を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願は、架橋性組成物に関する。本出願において、用語の「架橋性組成物」は、化学的又は物理的方式で架橋構造を具現できる成分を含む組成物を指すことができる。本出願の組成物は、前記方式のうち化学的方式により架橋構造を具現できる成分を含んでもよい。
【0008】
本出願の架橋性組成物は、例えば、粘着剤組成物や接着剤組成物であってもよい。用語の粘着剤組成物は、架橋前又は後に粘着剤として作用し得る組成物であり、接着剤組成物は、架橋前又は後に接着剤として作用し得る組成物である。前記において粘着剤と接着剤の定義は、業界で知られている定義に従う。
【0009】
架橋性組成物は、アクリルポリマーを含んでもよい。本出願において、用語の「アクリルポリマー」は、アクリルモノマーの重合単位を主成分として含むポリマーである。本出願において、あるモノマーの重合単位は、当該モノマーが重合反応を経て前記ポリマーで形成する構造を意味する。本出願において、ある成分Bが他の成分Aを主成分として含むということは、前記成分Aの前記成分B内の比率が成分Bの全重量を基準として、約55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、又は90重量%以上である場合を意味しうる。前記比率の上限は、特に制限されず、例えば、約98重量%以下、又は95重量%以下であってもよい。
【0010】
本出願において、用語の「アクリルモノマー」は、アクリル酸又はメタクリル酸や、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルなどの前記アクリル酸やメタクリル酸の誘導体を意味する。また、用語の「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0011】
本出願の架橋性組成物は、前記アクリルポリマーを主成分として含んでもよい。前記組成物が水や有機溶媒などを含む溶液である場合、前記主成分としてのアクリルポリマーの比率は、前記溶媒を除いた組成物の重量を基準としたものであってもよい。
【0012】
前記アクリルポリマーは、粘着ポリマー又は接着ポリマーであってもよい。用語の「粘着ポリマー」又は「接着ポリマー」は、そのガラス転移温度などの物性が架橋前及び/又は後に粘着性能や接着性能が発現するように調節されたポリマーを意味する。前記ポリマーの構成は、当該分野ではよく知られている。
【0013】
一例において、アクリルポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を含んでもよい。前記においてアルキル(メタ)アクリレートは、分子内にアルキル基を含む(メタ)アクリレートであってもよい。アルキル(メタ)アクリレートに含まれるアルキル基は、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8又は炭素数4~8の直鎖及び/又は分岐鎖の分枝状アルキル基又は環状アルキル基であってもよい。また、前記アルキル基は、任意に一つ以上の置換基によって置換されていてもよい。前記において置換基の具体的な例としては、ハロゲン又はアルキルや、ハロゲン又は炭素数1~12のアルキルや、塩素、臭素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ノニル、又はドデシルが挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0014】
このようなアルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、又はイソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート及びテトラデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、前記のうちで1種又は2種以上が適用されてもよい。一般的には、n-ブチルアクリレートや2-エチルヘキシルアクリレートなどを使用する。
【0015】
前記アクリルポリマーは、前記アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を主成分として含んでもよい。
【0016】
アクリルポリマーは、また、架橋性官能基を含む架橋性ポリマーであってもよい。前記架橋性官能基は、架橋性官能基を有するモノマー(以下、架橋性モノマーともいう)の単位をポリマーに含ませて前記ポリマーに導入してもよい。前記で架橋性官能基としては、一般的にヒドロキシ基又はカルボキシル基が適用されてもよい。
【0017】
したがって、前記架橋性モノマーとして、例えば、ヒドロキシ基含有モノマーやカルボキシル基含有モノマーを適用してもよい。前記各架橋性モノマーの具体的な種類は、特に制限されず、業界で公知のモノマーを使用してもよい。
【0018】
例えば、前記ヒドロキシ基含有モノマーとしては、炭素数が1~12の範囲内であるヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとして、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及び/又は6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートなどが使用されてもよい。また、カルボキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、2(メタ)アクリロイルオキシ酢酸、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル酸、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル酸、アクリル酸二重体、イタコン酸、マレイン酸及び/又はマレイン酸無水物などが使用されてもよい。
【0019】
一般的に、高い剥離力の具現のため、前記モノマーのうちカルボキシル基含有モノマーをよく使用するが、本出願では、目的に応じて適切なモノマーを選択及び適用してもよい。
【0020】
前記架橋性モノマーの重合単位の比率は、目的とする凝集力などを考慮して、特別な制限なしに調節されてもよい。しかしながら、一般的に前記架橋性ポリマーは、前記アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位100重量部に対して約0.01~10重量部の範囲内の比率で前記架橋性モノマーの重合単位を含んでもよい。前記架橋性モノマーの重合単位の比率は、他の例としては、約0.05重量部以上、0.1重量部以上、0.5重量部以上、1重量部以上、1.5重量部以上、2重量部以上、2.5重量部以上、3重量部以上、3.5重量部以上、4重量部以上、4.5重量部以上又は5重量部以上であってもよく、9.5重量部以下、9重量部以下、8.5重量部以下、8重量部以下、7.5重量部以下、7重量部以下、6.5重量部以下又は6重量部以下であってもよい。
【0021】
架橋性ポリマーは、前記言及されたモノマーの重合単位の他にも必要な場合に他のモノマーの重合単位をさらに含んでもよく、その種類は特に制限されるものではない。さらに含まれてもよいモノマーの重合単位としては、芳香族基含有モノマーの重合単位、例えば、芳香族(メタ)アクリレートモノマーの重合単位がある。これらの単位を、いわゆる光学補償効果を得るために使用するか、または、その他の理由により適用してもよい。
【0022】
このような重合単位を形成できる芳香族基含有モノマーの種類は、特に制限されず、例えば、下記化6のモノマーを適用してもよい。
【0023】
【化1】
【0024】
化6において、Rは、水素又はアルキル基を表し、Aは、アルキレン基を表し、nは、0~3の範囲内の整数を表し、Qは、単結合、-O-、-S-又はアルキレン基を表し、Pは、アリール基を表す。
【0025】
化6において、単結合は、両側の原子団が別途の原子を介さず、直接結合する場合を意味する。例えば、A-B-Cで表された構造においてBが単結合である場合、Bで表される部位に別途の原子が存在せず、AとCが直接連結されてA-Cで表される構造を形成することを意味しうる。
【0026】
化6において、Rは、例えば、水素又は炭素数1~4のアルキル基であるメチル基又はエチル基であるか、又は水素であってもよい。
【0027】
化6において、Aは、炭素数1~12又は1~8のアルキレン基であってもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、ヘキシレン基又はオクチレン基であってもよい。また、前記アルキレン基は、任意に1つ以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0028】
化6において、nは、例えば、0~2の範囲内の数であるか、0又は1であってもよい。
【0029】
化6において、Qは、単結合、-O-又は-S-であってもよい。
【0030】
化6において、Pは、炭素数6~20のアリール基、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基又はアントラセニル基であってもよい。また、前記アリール基は、任意に1つ以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0031】
化6において、アリール基は、任意に一つ以上の置換基によって置換されていてもよい。前記で置換基の具体的な例としては、ハロゲン又はアルキルや、ハロゲン又は炭素数1~12のアルキルや、塩素、臭素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ノニル、又はドデシルが挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0032】
化6の化合物の具体的な例としては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-フェニルチオ-1-エチル(メタ)アクリレート、6-(4,6-ジブロモ-2-イソプロピルフェノキシ)-1-ヘキシル(メタ)アクリレート、6-(4,6-ジブロモ-2-sec-ブチルフェノキシ)-1-ヘキシル(メタ)アクリレート、2,6-ジブロモ-4-ノニルフェニル(メタ)アクリレート、2,6-ジブロモ-4-ドデシルフェニル(メタ)アクリレート、2-(1-ナフチルオキシ)-1-エチル(メタ)アクリレート、2-(2-ナフチルオキシ)-1-エチル(メタ)アクリレート、6-(1-ナフチルオキシ)-1-ヘキシル(メタ)アクリレート、6-(2-ナフチルオキシ)-1-ヘキシル(メタ)アクリレート、8-(1-ナフチルオキシ)-1-オクチル(メタ)アクリレート及び8-(2-ナフチルオキシ)-1-オクチル(メタ)アクリレートの1種又は2種以上の混合が挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0033】
その適用目的に応じて、前記芳香族基含有モノマーの重合単位の比率を制限なしに制御してもよい。例えば、前記架橋性ポリマーは、前記アルキル(メタ)アクリレート単位100重量部に対して約0.1~45重量部の前記芳香族基含有モノマーの重合単位を含んでもよい。前記比率は、他の例で約40重量部以下、35重量部以下、又は30重量部以下であってもよい。
【0034】
前記架橋性ポリマーは、必要な場合に前記で言及された単位の他に公知の他の単位でさらに含んでもよい。また、前記架橋性ポリマーは、前記で言及されたモノマーを適用した公知の重合方法で重合して製造してもよい。
【0035】
前記アクリルポリマーの重量平均分子量(Weight-average molecular weight、Mw)は、50万以上であってもよい。本出願において、用語の「重量平均分子量」は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)で測定した標準ポリスチレン換算数値であり、単に分子量ということもある。前記分子量(Mw)は、他の例で60万以上程度、70万以上程度、80万以上程度、90万以上程度、100万以上程度、110万以上程度、120万以上程度、130万以上程度、140万以上程度又は150万以上程度であってもよく、約300万以下、約280万以下、約260万以下、約240万以下、約220万以下又は約200万以下であってもよい。
【0036】
架橋性組成物は、前記ポリマーにさらにイオン性化合物を含む。イオン性化合物を適用することにより、前記架橋性組成物に適切な導電性を与えることができる。
【0037】
イオン性化合物としては、公知の化合物を使用してもよい。イオン性化合物としては、例えば、アルカリ金属カチオンを含むイオン性化合物である塩(salt)を使用してもよい。一例において、前記アルカリ金属カチオンとしては、リチウム、ナトリウム又はカリウムカチオンを適用してもよく、最適な例としては、リチウムカチオンを適用してもよい。
【0038】
イオン性化合物が含むアニオンの種類は、特に制限されるものではない。一例において、前記アニオンは、PF 、AsF、NO 、フルオライド(F)、クロライド(Cl)、ブロマイド(Br)、ヨーダイド(I-)、パーコレート(ClO )、ヒドロキシド(OH)、カーボネート(CO 2-)、ニトレイト(NO )、トリフルオロメタンスルホナート(CFSO )、スルホナート(SO )、ヘキサフルオロホスフェイト(PF )、メチルベンゼンスルホナート(CH(C)SO )、p-トルエンスルホナート(CHSO )、テトラボレート(B 2-)、カルボキシベンゼンスルホナート(COOH(C)SO )、トリフルオロメタンスルホナート(CFSO )、ベンゾネイト(CCOO)、アセテート(CHCOO)、トリフルオロアセテート(CFCOO)、テトラフルオロボラート(BF )、テトラベンジルボラート(B(C )及び/又はトリスペンタフルオロエチルトリフルオロホスファート(P(C )などであってもよい。
【0039】
前記イオン性化合物は、下記化2のアニオン又はビスフルオロスルホニルイミドなどを含んでもよい。
【0040】
[化2]
[X(YO)]
【0041】
化2において、Xは、窒素原子又は炭素原子であり、Yは、炭素原子又は硫黄原子であり、Rは、パーフルオロアルキル基であり、mは、1又は2であり、nは、2又は3である。
【0042】
化2において、Yが炭素である場合、mは、1であり、Yが硫黄である場合、mは、2であり、Xが窒素である場合、nは2であり、Xが炭素である場合、nは、3であってもよい。
【0043】
化2において、Rは、炭素数1~20、1~12、1~8又は1~4のパーフルオロアルキル基であってもよく、この場合、前記パーフルオロアルキル基は、直鎖状、分枝鎖状又は環状構造を有していてもよい。化2のアニオンは、スルホニルメチド系、スルホニルイミド系、カルボニルメチド系又はカルボニルイミド系アニオンであってもよい。具体的に、化2のアニオンは、トリストリフルオロメタンスルホニルメチド、ビストリフルオロメタンスルホニルイミド、ビスパーフルオロブタンスルホニルイミド、ビスペンタフルオロエタンスルホニルイミド、トリストリフルオロメタンカルボニルメチド、ビスパーフルオロブタンカルボニルイミド又はビスペンタフルオロエタンカルボニルイミドなどの1種又は2種以上の混合であってもよい。
【0044】
アニオンとしては、また、下記化3~5のいずれかのアニオンを適用してもよい。
【0045】
[化3]
OSO2n+1
【0046】
[化4]
N(SO2n+1)
【0047】
[化5]
C(SO2n+1)
【0048】
化3~5において、nは、0~4の範囲内の数である。
【0049】
化2のアニオン又はビス(フルオロスルホニル)イミド、前記化3~5のアニオンは、パーフルオロアルキル基(Rf)又はフルオロ基により高い電気陰性度を表し、また、特有の共鳴構造を含んでカチオンとの弱い結合を形成するとともに疎水性を有する。したがって、前記イオン性化合物は、ポリマーなどの組成物の他の成分と優れた相溶性を示すとともに少量でも高い帯電防止性を付与し得る。
【0050】
イオン性化合物の架橋性組成物内における比率は、特に制限されず、目的とする帯電防止性などを考慮して適正範囲に調節されてもよい。一例において、前記架橋性組成物は、前記アクリルポリマー100重量部に対して、0.001重量部~20重量部のイオン性化合物を含んでもよい。前記比率は、他の例において、0.005重量部以上、0.01重量部以上、0.05重量部以上、0.1重量部以上、0.5重量部以上、1重量部以上、1.5重量部以上、2重量部以上、2.5重量部以上、又は3重量部以上であってもよく、18重量部以下、16重量部以下、14重量部以下、12重量部以下、10重量部以下、8重量部以下、6重量部以下、5重量部以下、4.5重量部以下、又は4重量部以下であってもよい。本出願では、このように過量のイオン性化合物が適用される場合にも、そのイオン性化合物による架橋効率の低下問題を解決し得る。
【0051】
架橋性組成物は、前記成分に加えて、下記化1の化合物を含む。
【0052】
【化2】
【0053】
化1において、R~Rは、それぞれ独立して水素原子又はアルキル基である。
【0054】
化1において、アルキル基としては、例えば、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8又は炭素数1~4の直鎖状、分枝鎖状又は環状のアルキル基が適用されてもよい。例えば、前記化1においてアルキル基としては、メチル基やエチル基などが適用されてもよい。
【0055】
化1の化合物としては、前記規定のカテゴリ内の構造を有するものであれば、多様に適用されてもよい。例えば、化1においてR及びRは、それぞれ独立して炭素数1~4のアルキル基、例えば、メチル基やエチル基であってもよく、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1~4のアルキル基、例えば、水素原子、メチル基又はエチル基である化合物が用いられてもよい。
【0056】
前記R及びRは、すべて水素原子であるか、少なくとも1つが炭素数1~4のアルキル基であってもよい。
【0057】
前記においてアルキル基は、任意に一つ以上の置換基によって置換されていてもよい。前記において置換基の具体的な例としては、ハロゲン又はアルキルや、ハロゲン又は炭素数1~12のアルキルや、塩素、臭素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ノニル、又はドデシルが挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0058】
これらの化合物は、架橋性組成物の架橋効率を改善させることができる成分である。本発明者らは、架橋性組成物がイオン性化合物、特にリチウムカチオンなどの金属カチオンを含む化合物が含む場合、前記カチオンが架橋成分、例えば、前記アクリルポリマーの架橋性官能基又は後述する架橋剤と相互作用して架橋効率を悪化させることを確認した。したがって、イオン性化合物を含む架橋性組成物の架橋効率を改善するためには、前記金属カチオンが架橋作用を阻害しないようにする必要である。本発明者らは、前記化1の化合物は、構造的に前記金属カチオンと複合体を形成することができ、それによって前記カチオンが架橋作用を阻害しないシステムが具現されることを確認した。
【0059】
前記化1の化合物のカテゴリに属する構造を有する化合物のうち一部の化合物を、いわゆる架橋遅延剤として粘着剤組成物などの架橋性組成物に適用する場合がある。しかしながら、本出願では、前記化合物を架橋遅延剤として適用するものではなく、あえて言及すると、本出願では、前記化合物を架橋を促進する成分として用いる。
【0060】
架橋遅延剤として該当成分を用いるシステムは、一般的に金属キレート系架橋剤、又は金属キレート系のような金属含有架橋触媒を含むシステムである。また、前記架橋剤や架橋触媒とともに前記化1の構造を有する化合物を適用する場合がある。このようなシステムでは前記化合物は、前記架橋剤や架橋触媒の少なくとも一部の成分と相互作用を介して架橋を遅延させる作用をする。しかしながら、本出願では、前記化1の化合物を架橋を妨害する成分の機能を抑制するためのシステムで適用する。特に、本出願では、アクリルポリマーの架橋官能基がカルボキシル基であり、架橋剤としてエポキシ化合物や、アジリジン化合物が適用される場合に架橋効率の低下を防止する作用ができるように前記化合物を適用するシステムを調節する。
【0061】
したがって、本出願の架橋性組成物は、金属キレート架橋剤及び/又は金属含有架橋触媒を含んでいない。金属キレート架橋剤及び/又は金属含有架橋触媒を前記化1の化合物とともに適用する場合には、本出願で意図する架橋効率の改善効果が発揮されにくい。前記化1の化合物は、さらにイオン性化合物の解離を促進して架橋性組成物が導電性をより円滑に確保できるように作用し得る。
【0062】
前記化1の化合物の架橋性組成物内における比率は、特に制限されるものではない。しかし、架橋性組成物の架橋効率の低下を解決できる観点から、架橋効率の低下を誘導する成分であるイオン性化合物の比率に応じて適正な比率で調節してもよい。
【0063】
一例において、前記架橋性組成物は、前記イオン性化合物100重量部に対して約0.01~30重量部の比率で前記化1の化合物を含んでもよい。前記化1の化合物の比率は、他の例において、約0.05重量部以上、0.1重量部以上、0.5重量部以上、0.7重量部以上、0.75重量部以上、0.9重量部以上、約1重量部以上、1.5重量部以上、2重量部以上、2.5重量部以上、3重量部以上、3.5重量部以上、又は4重量部以上であるか、約25重量部以下、20重量部以下、15重量部以下、10重量部以下、又は5重量部以下であってもよい。一例において、前記比率をその目的に応じて適正に変更してもよい。
【0064】
一例において、本出願の架橋性組成物は、多量のイオン性化合物を含む状態でも少量の架橋剤で高い架橋効率を具現することができる。前記のように、本発明者らは、架橋性組成物に含まれるイオン性化合物が架橋を阻害する要素となることを確認した。したがって、高い架橋効率の確保のためには、イオン性化合物の量を最小化するか、架橋剤の量を増やす必要がある。しかしながら、イオン性化合物の量を減らす場合には、目的とする導電性を確保しにくく、また、架橋剤を多く使用すると、望みの物性の確保が容易ではない。しかしながら、本出願の架橋性組成物は、前記特定のシステム、すなわち、化1の化合物を使用し、その化合物が架橋遅延剤として作用できる環境を排除することにより、多量のイオン性化合物が存在する場合でも、少ない架橋剤でも高い硬化率を確保し得る。
【0065】
したがって、一例において、本出願の架橋性組成物は、下記数式1による硬化率が30%以上であってもよい。
【0066】
[数式1]
硬化率=B/A×100
【0067】
数式1において、Aは、前記イオン性化合物が前記アクリルポリマー100重量部に対して3重量部以上の比率で含まれている架橋性組成物に前記アクリルポリマーの架橋剤を前記アクリルポリマー100重量部に対して1重量部以下で配合した架橋性組成物又は前記組成物の架橋物をエチルアセテートに浸漬する前の質量(単位:g)であり、Bは、前記架橋性組成物又は前記組成物の架橋物をエチルアセテートに常温で24時間の間浸漬した後に回収した不溶解分の乾燥質量(単位:g)であり、前記で不溶解分は、200メッシュのふるいにかけられる成分である。
【0068】
用語の不溶解分の乾燥質量は、前記不溶解分が実質的に溶媒(例えば、エチルアセテート)を含んでいない状態の質量であって、例えば、溶媒の含量が約10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、0.1重量%以下、0.05重量%以下、又は0.01重量%以下であるか、実質的に0重量%である状態での質量である。不溶解分から溶媒を除去して前記乾燥質量を測定する条件は、特に制限されず、例えば、除去される溶媒の揮発点などを考慮して、適切な温度での乾燥工程を遂行すればよい。
【0069】
数式1の硬化率を確認するときに、前記架橋性組成物に配合されるイオン性化合物の比率は、他の例で前記アクリルポリマー100重量部に対して約3重量部~4重量部又は約3.5重量部に対して4重量部であってもよい。
【0070】
また、数式1の硬化率を確認するときに前記架橋性組成物に配合される架橋剤の比率は、前記アクリルポリマー100重量部に対して約1重量部以下、0.5重量部以下、0.1重量部以下、0.05重量部以下、又は約0.04重量部以下程度であってもよく、その比率の下限は、約0.01重量部以上、0.02重量部以上、又は0.03重量部以上であってもよい。
【0071】
また、前記数式1の確認のために配合されるイオン性化合物及び架橋剤の種類は、特に制限されず、実際の架橋性組成物を適用するために使用しようとするイオン性化合物及び架橋剤であってもよい。
【0072】
数式1において、前記イオン性化合物の比率と架橋剤の比率は、本出願の架橋性組成物が多量のイオン性化合物が存在する状態でも少量の架橋剤で高い硬化率を具現できるということを示す尺度である。すなわち、数式1において、前記イオン性化合物及び架橋剤の比率は、実際の架橋性組成物を使用する状態で前記比率でイオン性化合物と架橋剤を含むことを意味するものではない。したがって、例えば、ある架橋性組成物又はその架橋物が前記イオン性化合物と架橋剤を前記数式1における比率以外の比率で含んでいても、そのような種類のイオン性化合物と架橋剤を前記数式1の比率で調節したとき、前述の硬化率を示す場合、そのような架橋性組成物は、本出願のカテゴリに属する。
【0073】
一例において、前記数式1の硬化率は、他の例で約35%以上、又は約40%以上であるか、約45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、又は75%以上であってもよく、その比率の上限は、制限されるものではないが、約100%以下、約95%以下、約90%以下、又は約85%以下であってもよい。
【0074】
架橋性組成物は、また、架橋剤をさらに含んでもよい。前記架橋剤は、前記アクリルポリマーを架橋させる成分であってもよい。
【0075】
架橋剤としては、特に制限されず、公知の架橋剤を使用してもよい。前記架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤又はアジリジン系架橋剤などを使用してもよい。特に、本出願の架橋性組成物は、その組成物が含むポリマーの架橋性官能基がカルボキシル基であり、架橋剤が前記種類の中でエポキシ又はアジリジン系である場合に適切な効果を発揮し得る。
【0076】
本出願で適用する架橋剤の種類は、特に制限されるものではない。例えば、イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(isophorone diisocyanate)、テトラメチルキシレンジイソシアネート又はナフタレンジイソシアネートなどのジイソシアネートや前記ジイソシアネートのうち一つ又はそれ以上の種類とポリオール(ex.トリメチルロールプロパン)との反応物などを使用してもよい。また、エポキシ系架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N,N’,N’-テトラグリシジルエチレンジアミン及びグリセリンジグリシジルエーテルからなる群から選ばれた一つ以上を使用してもよい。そして、アジリジン系架橋剤としては、例えば、N,N-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキサミド)、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソプロタロイル-1-(2-メチルアジリジン)及びトリ-1-アジリジニルホスフィンオキシドからなる群から選ばれた一つ以上を使用してもよい。
【0077】
本出願の架橋性組成物は、アクリルポリマー100重量部に対して10重量部以下、又は0.001重量部~10重量部で前記架橋剤を含んでもよい。この比率で架橋物の凝集力を適切に維持しつつ、層間剥離や励起現象が発生するなどの耐久信頼性の低下を防止し得る。前記架橋剤の比率は、他の例において、約0.005重量部以上、0.01重量部以上、又は0.02重量部以上であってもよく、約9重量部以下、8重量部以下、7重量部以下、6重量部以下、5重量部以下、4重量部以下、3重量部以下、2重量部以下、1.5重量部以下、1重量部以下、0.5重量部以下、0.4重量部以下、0.3重量部以下、0.2重量部以下、0.1重量部以下又は0.05重量部以下であってもよい。
【0078】
架橋性組成物は、前述した成分に加えて、必要な公知の他の添加剤もさらに含んでもよい。これらの添加剤としては、シランカップリング剤などのカップリング剤、帯電防止剤、粘着付与剤(tackifier)、紫外線安定剤、酸化防止剤、調色剤、補強剤、充填剤、消泡剤、界面活性剤、多官能性アクリレートのような光重合性化合物、及び可塑剤からなる群から選ばれた一つ以上を例示してもよいが、これに制限されるものではない。
【0079】
前記のような架橋性組成物は、様々な用途に適用してもよい。一例において、前記架橋性組成物は、粘着型光学積層体や表面保護フィルムなどで粘着剤層を形成することに適用してもよい。
【0080】
したがって、本出願は、例えば、光学積層体又は表面保護フィルムに関する。
【0081】
前記で光学積層体は、光学フィルム、及び前記光学フィルムの一面に形成されており、前記架橋性組成物の架橋物である粘着剤層を含んでもよい。表面保護フィルムの場合、保護用基材フィルム、及び前記基材フィルムの一面に形成されており、前記架橋性組成物の架橋物である粘着剤層を含んでもよい。
【0082】
前記で光学積層体や表面保護フィルムが含む構成、例えば、光学フィルムや保護用基材フィルムの種類は、特に制限されず、公知の構成を使用してもよい。
【0083】
例えば、前記光学積層体が含む光学フィルムとしては、各種ディスプレイ装置で使用される様々な種類を適用してもよい。例えば、前記光学フィルムは、偏光板、偏光子、偏光子保護フィルム、位相差フィルム、視野角補償フィルム又は輝度向上フィルムなどであってもよい。本明細書において、用語の偏光子と偏光板は、互いに区別される対象を指す。偏光子は、偏光機能を示すフィルム、シート又は素子そのものを指し、偏光板は、前記偏光子とともに他の要素を含む光学素子を意味する。偏光子とともに光学素子に含まれてもよい他の要素としては、偏光子保護フィルム又は位相差層などが例示されてもよいが、これに制限されるものではない。
【0084】
本出願の光学フィルムに含まれてもよい偏光子は、基本的には、特に制限されるものではない。例えば、偏光子としては、ポリビニルアルコール偏光子を使用してもよい。用語のポリビニルアルコール偏光子は、例えば、ヨウ素又は二色性色素のような異方吸収性物質を含むポリビニルアルコール(Polyvinylalcohol、PVA)系の樹脂フィルムを意味しうる。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに異方吸収性物質を含めて、延伸などにより前記異方吸収性物質を配向させる方法で偏光子を製造してもよい。前記でポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール又はエチレン-酢酸ビニル共重合体の鹸化物などが挙げられる。前記ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、100~5,000又は1,400~4,000程度であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0085】
前記ポリビニルアルコール偏光子は、例えば、PVA系フィルムに染色工程、架橋工程、及び延伸工程を少なくとも行って製造してもよい。染色工程、架橋工程、及び延伸工程には、それぞれ染色浴、架橋浴、及び延伸浴のそれぞれの処理浴が使用され、これらの各処理浴には、各工程に従った処理液が用いられてもよい。
【0086】
染色工程では、前記PVA系フィルムに異方吸収性物質を吸着及び/又は配向させることができる。これらの染色工程は、延伸工程とともに行われてもよい。染色は、前記フィルムを異方吸収性物質を含む溶液、例えば、ヨウ素溶液に浸漬させて行われてもよい。ヨウ素溶液としては、例えば、ヨウ素及び溶解補助剤であるヨウ化物によってヨウ素イオンを含有させた水溶液などが用いられてもよい。ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化スズ、又はヨウ化チタンなどが用いられてもよい。ヨウ素溶液の中でヨウ素及び/又はヨウ化イオンの濃度は、目的とする偏光子の光学特性を考慮して調節されてもよく、このような調節方式は、公知である。染色工程においてヨウ素溶液などの異方吸収性物質を含む溶液の温度は、通常、20℃~50℃、25℃~40℃程度であり、浸漬時間は、通常、10秒~300秒又は20秒~240秒程度であるが、これに制限されるものではない。
【0087】
前記架橋工程は、例えば、ホウ素化合物のような架橋剤を用いて行われてもよい。架橋工程の順序は、特に制限されるものではない。例えば、架橋工程は、染色工程及び/又は延伸工程とともに行われてもよく、前記工程と別途に行われてもよい。架橋工程は、数回行ってもよい。前記ホウ素化合物としては、ホウ酸又はホウ砂などを使用してもよい。ホウ素化合物は、一般的に水溶液又は水と有機溶媒を混合した混合溶液の形態で使用されてもよい。通常、前記ホウ素化合物としてホウ酸水溶液を使用する。ホウ酸水溶液におけるホウ酸濃度は、PVA系フィルムの架橋度とそれに伴う耐熱性などを考慮して適正範囲に調節してもよい。前記架橋剤は、ヨウ化カリウムなどのヨウ化物をさらに含んでもよい。
【0088】
架橋工程は、前記PVA系フィルムをホウ酸水溶液などに浸漬することにより行われてもよい。このとき、ホウ酸水溶液の温度及び/又は浸漬温度は、通常、25℃以上、30℃~85℃又は30℃~60℃程度の範囲であり、浸漬時間は、通常、5秒~800秒又は8秒~500秒程度であるが、これに制限されるものではない。
【0089】
延伸工程は、一般的に一軸延伸で行う。延伸工程は、前記染色及び/又は架橋工程とともに行われてもよい。延伸方法は、特に制限されず、例えば、延伸方法として湿潤式延伸方式を適用してもよい。このような湿潤式延伸方法では、例えば、PVA系フィルムを染色した後、延伸工程を行うことが一般的であるが、延伸工程は、架橋とともに行われてもよく、複数回又は多段で行われてもよい。
【0090】
湿潤式延伸方法に適用される処理液は、例えば、ヨウ化カリウムなどのヨウ化物を含んでもよい。この過程で、前記ヨウ化物の比率などを調節することにより、偏光子の光遮断率を調節してもよい。このとき、処理液及び/又は処理槽の温度は、通常、25℃以上、30℃~85℃又は50℃~70℃の範囲内の程度であり、処理時間は、通常、10秒~800秒又は30秒~500秒であるが、これに制限されるものではない。
【0091】
延伸過程において、PVA系フィルムの総延伸倍率は、偏光子の配向特性などを考慮して調節してもよい。例えば、前記総延伸倍率は、PVA系フィルムの元の長さを基準に3倍~10倍、4倍~8倍又は5倍~7倍程度であってもよいが、これらに制限されるものではない。前記で総延伸倍率は、延伸工程以外の膨潤工程などにおいても延伸を行う場合には、各工程における延伸を含む累積延伸倍率を意味しうる。このような総延伸倍率は、偏光子の配向性、加工性ないしは延伸切断可能性などを考慮して適正範囲に調節されてもよい。
【0092】
偏光子の製造工程では、前記染色、架橋及び延伸に加えて、前記工程を行う前に、膨潤工程を行ってもよい。膨潤工程によってPVA系フィルム表面の汚染又はブロッキング防止剤などのその他の成分を洗浄し得、また、膨潤工程により偏光子の染色偏差などを減少させて均一に染色された偏光子を製造できる効果もある。
【0093】
膨潤工程では、通常、水、蒸留水又は純水などが用いられてもよい。膨潤工程で使用する処理液の主成分は、水であり、必要であれば、ヨウ化カリウムなどのヨウ化物又は界面活性剤などのような添加物や、アルコールなどが少量含まれていてもよい。この過程でも工程変数を調節することにより、前述の偏光子の光遮断率を調節してもよい。
【0094】
膨潤工程で使用する処理液の温度及び/又は膨潤工程の処理温度は、通常、20℃~45℃又は20℃~40℃程度であるが、これらに制限されるものではない。膨潤偏差は、染色偏差を引き起こすことがあるので、このような膨潤偏差の発生が出来るだけ抑制されるように工程変数を調節してもよい。
【0095】
必要であれば、膨潤工程においても適切な延伸が行われてもよい。延伸倍率は、PVA系フィルムの元の長さを基準に6.5倍以下、1.2~6.5倍、2倍~4倍又は2倍~3倍程度であってもよい。膨潤過程における延伸は、膨潤工程後に行われる延伸工程における延伸率が小さくなるように制御してもよく、フィルムの延伸破断が発生しないように制御してもよい。
【0096】
偏光子の製造過程では、金属イオン処理が行われてもよい。前記金属イオン処理は、例えば、金属塩を含有する水溶液にPVA系フィルムを浸漬することにより行う。これにより偏光子内に金属イオンを含有させることができるが、この過程で金属イオンの種類又は比率を調節することによりPVA系偏光子の色調調節が可能である。適用されてもよい金属イオンとしては、コバルト、ニッケル、亜鉛、クロム、アルミニウム、銅、マンガン又は鉄などの遷移金属の金属イオンが例示されてもよく、このうち、適切な種類の選択によってPVA系偏光子の色調を調節してもよい。
【0097】
偏光子の製造過程では、染色、架橋、及び延伸後に洗浄工程が行われてもよい。前記洗浄工程は、ヨウ化カリウムなどのヨウ素化合物溶液により行われてもよい。この過程で、前記溶液内のヨウ化物の濃度又は前記洗浄工程の処理時間の調節などを通じて前述の光遮断率を調節してもよい。したがって、前記ヨウ化物の濃度とその溶液への処理時間は、前記光遮断率を考慮して調節されてもよい。他の例において、前記洗浄工程は、水を使用して行われてもよい。
【0098】
このような水による洗浄とヨウ素化合物溶液による洗浄は、組み合わせてもよい。また、前記洗浄でメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、又はプロパノールなどの液体アルコールを配合した溶液も使用されてもよい。
【0099】
前述の工程を経た後、乾燥工程を行って偏光子を製造してもよい。乾燥工程は、例えば、偏光子に要求される水分率などを考慮して、適切な温度で適切な時間の間行われてもよく、その条件は、特に制限されるものではない。
【0100】
一例において、光学積層体の耐久性、特に高温信頼性の確保のために前記偏光子としては、カリウムイオンのようなカリウム成分と亜鉛イオンのような亜鉛成分を含むポリビニルアルコール偏光子を使用してもよい。このような成分が含まれた偏光子を用いた光学積層体は、高温条件、特に100℃以上の超高温条件下でも耐久性を安定的に維持し得る。
【0101】
前記カリウム及び亜鉛成分の比率は、さらに調節されてもよい。例えば、ポリビニルアルコール偏光子に含まれているカリウム成分(K)と亜鉛成分(Zn)の比率(K/Zn)は、一例において、0.2~6の範囲内であってもよい。前記比率(K/Zn)は、他の例において、約0.4以上、約0.6以上、約0.8以上、約1以上、約1.5以上、約2以上、約2.5以上、約3以上、約3.5以上、又は約4.5以上であってもよく、約5.5以下、又は約5以下であってもよい。
【0102】
また、前記ポリビニルアルコール偏光子は、カリウムを前記ポリビニルアルコール偏光子の総重量を基準として約0.1~2重量%の比率で含んでもよい。前記カリウム成分の比率は、他の例において、約0.15重量%以上、約0.2重量%以上、約0.25重量%以上、約0.3重量%以上、約0.35重量%以上、0.4重量%以上又は約0.45重量%以上、約0.5重量%以上、約0.55重量%以上、約0.6重量%以上、約0.65重量%以上、約0.7重量%以上、約0.75重量%以上、又は約0.8重量%以上であってもよく、約1.95重量%以下、約1.9重量%以下、約1.85重量%以下、約1.8重量%以下、約1.75重量%以下、約1.7重量%以下、約1.65重量%以下、約1.6重量%以下、約1.55重量%以下、約1.5重量%以下、約1.45重量%以下、約1.4重量%以下、約1.35重量%以下、約1.3重量%以下、約1.25重量%以下、約1.2重量%以下、約1.15重量%以下、約1.1重量%以下、約1.05重量%以下、約1重量%以下、約0.95重量%以下、約0.9重量%以下、約0.85重量%以下又は約0.8重量%以下であってもよい。
【0103】
そして、前記ポリビニルアルコール偏光子は、亜鉛をポリビニルアルコール偏光子の総重量を基準として0.1~0.5重量%の比率で含んでもよい。前記亜鉛成分の比率は、他の例において、0.11重量%以上、0.12重量%以上、0.13重量%以上、0.14重量%以上、0.15重量%以上、0.16重量%以上、又は0.17重量%以上であってもよく、0.45重量%以下、0.4重量%以下、0.35重量%以下、0.3重量%以下、0.25重量%以下、又は0.2重量%以下であってもよい。
【0104】
一例において、前記ポリビニルアルコール偏光子は、カリウム成分と亜鉛成分を下記数式Aを満たす比率で含んでもよい。
【0105】
[数式A]
0.70≦1/(1+Q×d/R)≦0.95
【0106】
数式Aにおいて、Qは、ポリビニルアルコール偏光子に含まれているカリウム成分のモル質量(K、39.098g/mol)と亜鉛成分のモル質量(Zn、65.39g/mol)の比率(K/Zn)であり、dは、ポリビニルアルコール偏光子の延伸前の厚み(μm)/60μmであり、Rは、ポリビニルアルコール偏光子に含まれているカリウム成分の含量(K、単位:weight%)と亜鉛成分の含量(Zn、単位:weight%)の比率(K/Zn)である。
【0107】
前記のような形態で偏光子にカリウム及び亜鉛成分を含む偏光子は、高温での信頼性に優れていると言える。
【0108】
前記のような偏光子の厚さは、特に制限されず、前記偏光子を適用する目的に応じて適正な厚さで形成されてもよい。通常、偏光子の厚さは、5μm~80μmの範囲内であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0109】
本出願は、また、前記のような光学積層体を含むディスプレイ装置に関する。前記装置は、例えば、前記光学積層体が前記で言及した粘着剤層を介して取り付けられているディスプレイパネルを含んでもよい。前記でディスプレイパネルの種類は、特に制限されず、例えば、公知のLCDパネル又はOLEDパネルなどであってもよい。また、光学積層体が前記パネルに取り付けられる位置なども公知の方式に従うことができる。
【発明の効果】
【0110】
本出願は、架橋性組成物に関する。本出願では、イオン性化合物を含んで導電性を示すとともに架橋効率の低下のない架橋性組成物とその用途を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0111】
図1は、本出願の効果を確認するためのNMR測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0112】
以下、実施例を通じて本出願を具体的に説明するが、本出願の範囲が下記実施例によって制限されるものではない。
【0113】
1.硬化率の測定方法
硬化率は、ゲル分率で評価した。実施例又は比較例で製造された架橋性組成物を適正の厚さでコーティングした後、約120℃の温度で3分程度維持した。次に、再び50℃の温度で3日程度維持して架橋層を形成した後、当該架橋層を7日間恒温恒湿室(23℃の温度、50%相対湿度)に維持した。その後、架橋層の中から約0.2g(=ゲル分率測定数式においてA)を採取した。採取された架橋物を50mLのエチルアセテートに完全に浸かるように入れた後、常温の暗室で1日間保管した。次に、エチルアセテートに溶解されない部分(不溶解分)を#200ステンレス金網で採取し、これを150℃で30分間乾燥して質量(不溶解分の乾燥質量=ゲル分率測定数式においてB)を測定した。次に、前記測定結果を下記式に代入してゲル分率(単位:%)を測定した。
【0114】
<ゲル分率測定数式>
ゲル分率=B/A×100
A:粘着剤の質量(0.2g)
B:不溶解分の乾燥質量(単位:g)
【0115】
2.面抵抗測定方法
面抵抗は、三菱社の面抵抗測定器を使用してプローブ(probe)方式で確認した。また、高温面抵抗は、架橋層を80℃の温度で約120時間保持した後に前記方式で評価した。そして、耐湿熱面抵抗は、架橋層を60℃の温度及び90%の相対湿度で約240時間の間維持した後に前記方式で評価した。
【0116】
3.NMR測定方法
NMRは、Bruker 500MHz NMR機器を使用してLi NMRで確認した。
【0117】
製造例1.粘着ポリマー(A)の製造
窒素ガスが還流され、温度調節が容易になるように冷却装置を設けた1Lの反応器にn-ブチルアクリレート(n-BA)及びアクリル酸(AA)を95:5の重量比率(n-BA:AA)で投入し、溶剤としてエチルアセテート(EAc)100重量部を投入した。次に、酸素除去のために窒素ガスを1時間の間パージした後、反応開始剤としてエチルアセテートに50重量%の濃度で希釈させたアゾビスイソブチロニトリル(Azobisisobutyronitrile、AIBN)0.03重量部を投入し、8時間の間反応させて分子量(Mw)が約180万程度である共重合体(A)を製造した。
【0118】
実施例1
製造例1の共重合体(A)にエポキシ架橋剤(T-743L、日本のSOKEN社)を前記共重合体(A)の固形分100重量部に対して約0.037重量部の比率で配合し、イオン性化合物として、LiTFSI(Lithium bis(trifluoromethanesulfonyl imide))を前記共重合体(A)の固形分100重量部に対して約0.74重量部の比率で配合した後に再びアセチルアセトンを前記共重合体(A)の固形分100重量部に対して約0.03重量部の比率で配合して架橋性組成物を製造した。
【0119】
実施例2
イオン性化合物及びアセチルアセトンの含量を前記共重合体(A)の固形分100重量部に対してそれぞれ約3.7重量部及び0.03重量部に変更したことを除いては、実施例1と同じ方式で架橋性組成物を製造した。
【0120】
実施例3
イオン性化合物及びアセチルアセトンの含量を前記共重合体(A)の固形分100重量部に対してそれぞれ約3.7重量部及び0.15重量部に変更したことを除いては、実施例1と同じ方式で架橋性組成物を製造した。
【0121】
比較例1
イオン性化合物とアセチルアセトンを適用していないことを除いては、実施例1と同様に架橋性組成物を製造した。
【0122】
比較例2
アセチルアセトンを配合しないことを除いては、実施例1と同様に架橋性組成物を製造した。
【0123】
比較例3
アセチルアセトンを配合しないことを除いては、実施例2と同様に架橋性組成物を製造した。
【0124】
前記各架橋性組成物の組成をまとめると、下記表1の通りである。
【0125】
【表1】
【0126】
前記各架橋性組成物に対して測定した硬化率と表面抵抗数値をまとめると、下記表2の通りである。
【0127】
【表2】
【0128】
結果の検討
前記実施例1~3及び比較例1~3の各架橋性組成物に対して硬化率を前記言及された方式で測定した結果、実施例1~3の場合、それぞれ85.3%、45.5%、及び80%であり、比較例1~3の場合、それぞれ81.5%、78.9%、及び0%であった。
【0129】
前記結果から、比較例1の場合、イオン性化合物が含まれていない状態で高い硬化率を示したのに対し、これを比較例2及び3の結果と比較すると、イオン性化合物の添加量が増加するほど硬化率が低下することが分かる。これによって、イオン性化合物が架橋効率を低下させる原因であり、特に比較例3のように、相当な量のイオン性化合物を配合する場合には、架橋がほとんど行われていないことを確認し得る。
【0130】
しかしながら、前記比較例2及び3と同じ組成において化1の化合物に該当するアセチルアセトンを配合すると(実施例1~3)、硬化率が大幅に増加することを確認し得る。
【0131】
これらの結果は、NMR測定によっても検証されてもよいが、図1を参照してこれを説明すると、次の通りである。
【0132】
図1において最下段のNMRの結果は、実施例及び比較例で使用したイオン性化合物であるLiTFSIをエチルアセテート溶媒内に単独で溶解させた後に測定した結果であり、最上段のNMRは、前記実施例及び比較例で適用したものと同一のエポキシ架橋剤を配合して測定した結果である。
【0133】
前記2つの結果を比較すると、LiTFSIにエポキシ架橋剤が添加されると、ピークがdown fieldにシフトすることが分かる。図1において上段から2番目のNMRは、LiTFSI及びエポキシ架橋剤を含む溶液にアセチルアセトンを前記エポキシ架橋剤との体積比率が1:0.25(エポキシ架橋剤:アセチルアセトン)になるように添加した場合であり、3番目のNMRは、前記体積比率が約1:0.5(エポキシ架橋剤:アセチルアセトン)になるように添加した後に測定した結果である。図面によってアセチルアセトンが添加されることにより、ピークが再びupfieldにシフトすることを確認し得る。これにより、LiTFSIがアセチルアセトンとの相互作用を介して架橋反応を妨害する現象が解消されていることを確認し得る。
図1