(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】アルカリ土類金属イオン吸着剤及びその製造方法並びにアルカリ土類金属イオン含有液処理装置
(51)【国際特許分類】
B01J 20/06 20060101AFI20220613BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20220613BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20220613BHJP
C02F 1/28 20060101ALI20220613BHJP
G21F 9/12 20060101ALI20220613BHJP
C01G 23/00 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
B01J20/06 C
B01J20/28 Z
B01J20/30
C02F1/28 E
G21F9/12 501J
G21F9/12 501D
C01G23/00 B
(21)【出願番号】P 2017043598
(22)【出願日】2017-03-08
【審査請求日】2019-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000109255
【氏名又は名称】チタン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【氏名又は名称】松山 美奈子
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 貴志
(72)【発明者】
【氏名】小松 誠
(72)【発明者】
【氏名】出水 丈志
(72)【発明者】
【氏名】田中 貴康
(72)【発明者】
【氏名】田中 尚文
(72)【発明者】
【氏名】石岡 英憲
(72)【発明者】
【氏名】安藤 綾香
(72)【発明者】
【氏名】吉見 智子
(72)【発明者】
【氏名】橋本 展幸
(72)【発明者】
【氏名】内田 浩昭
(72)【発明者】
【氏名】長岡 茂
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-188798(JP,A)
【文献】特開2012-167007(JP,A)
【文献】特開2013-246144(JP,A)
【文献】特開2016-130183(JP,A)
【文献】特開2016-190192(JP,A)
【文献】国際公開第2015/125809(WO,A1)
【文献】特開昭57-117341(JP,A)
【文献】特開昭61-256922(JP,A)
【文献】特開2016-195981(JP,A)
【文献】藤木良規,二チタン酸カリウム繊維の水和と誘導体,窯業協会誌,日本,社団法人窯業協会,1982年,90巻1073号,p27-31
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00 - 20/28
20/30 - 20/34
C02F 1/28
C01G 23/00 - 23/08
G21F 9/00 - 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式K
2-xH
xO・2TiO
2・nH
2O(式中、xは0.5以上1.3以下であり、nは0よりも大きい)で表される二チタン酸水素カリウム水和物を含み、結合剤を含まず、150μm以上1000μm以下の粒径範囲を有し、
Cukα線をX線源とするX線回折において、2θが8.5±2.0°の範囲にX線回折の主ピークを有し、2θが13°~24°の範囲、36°~46°の範囲及び50°~56°の範囲にX線回折ピークを有していないことを特徴とする粒子状ストロンチウムイオン吸着剤。
【請求項2】
内径15.96mmの円筒状カラムに層高10cmで充填し、並塩0.3%、ストロンチウム5ppm、マグネシウム5ppm、セシウム1ppmを含む模擬汚染海水を6.5ml/minの流量(通水線流速2m/h、空間速度20h
-1)で通水した場合に、入口水中ストロンチウム濃度(C
0)と出口水中ストロンチウム濃度(C)の比率が5%を超過する破過B.V.が3000以上のストロンチウム吸着性能を示す請求項1に記載の粒子状ストロンチウムイオン吸着剤。
【請求項3】
化学式K
2O・2TiO
2で表される二チタン酸カリウムを水和させ、カリウムイオン(K
+)とプロトン(H
+)とをカチオン交換させて、化学式K
2-xH
xO・2TiO
2・nH
2O(式中、xは0.5以上1.3以下であり、nは0よりも大きい)で表される二チタン酸水素カリウム水和物を得て、結合剤を用いずに造粒することを含む、請求項1又は2に記載の粒子状ストロンチウムイオン吸着剤の製造方法であって、
(1)Ti1モルに対してK0.95モル以上1.25モル以下の比率で、チタン源及びカリウム源を混合し、
(2)得られる混合物を焼成して化学式K
2O・2TiO
2で表される二チタン酸カリウ
ムを得て、
(3)二チタン酸カリウムを水と接触させて、水和させると共にカリウムイオンとプロトンとのカチオン交換を生じさせ、二チタン酸水素カリウム水和物(K
2-xH
xO・2TiO
2・nH
2O、ただしxは0.5以上1.3以下、nは0よりも大きい)を得て、
(4)得られる二チタン酸水素カリウム水和物(K
2-xH
xO・2TiO
2・nH
2O、ただしxは0.5以上1.3以下)をスラリー中で湿式粉砕して、
(5)スラリーから二チタン酸水素カリウム水和物を含むろ過ケーキを固液分離し、
(6)結合剤を用いることなく、当該ろ過ケーキから二チタン酸水素カリウム水和物の粒子を造粒し、
(7)二チタン酸水素カリウム水和物を
110℃の温度で
15時間の条件で乾燥し、
(8)乾燥した二チタン酸水素カリウム水和物を解砕し、整粒して、150μm以上1000μm以下の粒径範囲を有する粒子状ストロンチウムイオン吸着剤とする
工程を含む、粒子状ストロンチウムイオン吸着剤の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の粒子状ストロンチウムイオン吸着剤を充填したストロンチウムイオン含有液処理装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の粒子状ストロンチウムイオン吸着剤を充填した放射性ストロンチウム除染装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の粒子状ストロンチウムイオン吸着剤を用いる、ストロンチウムイオン含有液処理方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の粒子状ストロンチウムイオン吸着剤を用いる、放射性ストロンチウム除染方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の粒子状ストロンチウムイオン吸着剤を充填したストロンチウムイオン含有液処理装置に、ストロンチウムイオン含有液を通水線流速(LV)1m/h以上40m/h以下、空間速度(SV)5h
-1以上40h
-1以下で通水することを含む、ストロンチウムイオン含有液処理方法。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の粒子状ストロンチウムイオン吸着剤を充填した放射性ストロンチウム除染装置に、放射性ストロンチウム含有液を通水線流速(LV)1m/h以上40m/h以下、空間速度(SV)5h
-1以上40h
-1以下で通水することを含む、放射性ストロンチウム除染方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びラジウム等のアルカリ土類金属イオン吸着剤及びその製造方法並びにアルカリ土類金属イオン含有液処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性アルカリ土類金属同位体であるストロンチウム-90(90Sr)は、放射性アルカリ金属同位体であるセシウム-137(137Cs)と同様に半減期が長く、水に溶解し易いために環境への拡散速度が速い核分裂生成物であり、ストロンチウム-90により汚染された水についても、その浄化処理技術の開発が課題となっている。特に、海水が混入したような塩類を高濃度に含む放射性排水から、ストロンチウム-90を選択的に吸着除去可能な吸着剤と除去技術の開発が望まれている。
【0003】
アルカリ土類金属イオンの除去技術のひとつとして、チタン酸アルカリ金属が用いられている。チタン酸アルカリ金属の一種であるチタン酸カリウム、例えば四チタン酸カリウムは、TiO5三角両錘体が連鎖した層状構造を有しており、TiO5三角両錘体からなる層と層との間にカリウムイオン(K+)が配置される層状構造である。この層間に配置されたカリウムイオン(K+)は容易に水和あるいはカチオン交換され得る。たとえば、化学式K2O・2TiO2で表される二チタン酸カリウムの場合には、水和によって化学式K2O・2TiO2・nH2Oで表される二チタン酸カリウム水和物となり、また、カリウムイオン(K+)とプロトン(H+)とのカチオン交換によって化学式K2-xHxO・2TiO2・nH2Oで表される二チタン酸水素カリウム水和物となる。水和において、水分子(H2O)はカリウムイオン(K+)に誘導され、TiO5三角両錘体からなる層間にゲストとして侵入し得る。またカリウムイオン(K+)とプロトン(H+)とのカチオン交換反応において、水和したプロトン(H+)であるヒドロニウム(H3O+)として、TiO5三角両錘体からなる層間にゲストとして侵入し得る。H2O分子あるいはヒドロニウム(H3O+)が侵入する際には、TiO5三角両錘体からなる層と層との間隔が膨張するが、TiO5三角両錘体からなる結晶構造は概して維持される。また、水系中に他のカチオンが存在する場合、二チタン酸カリウムや四チタン酸カリウムは、カリウムイオン(K+)またはプロトン(H+)とのカチオン交換反応により、カチオン吸着剤として作用する。ただし、TiO5三角両錘体からなる層と層との間隔が膨張した状態が続くと、へき開を起こしやすくなり、大きな剪断応力を加えた場合、結晶構造である層状構造が崩れるので、避ける必要がある。一方、化学式K2O・4TiO2で表される四チタン酸カリウムの場合、焼成反応や水熱反応等における生成反応において結晶成長し易いため、生成物が針状結晶となる。針状結晶の形状のまま吸着剤として用いると、カチオン交換反応に時間を要するため吸着効率が良くない。また吸着性能を上げるために四チタン酸カリウムを粉砕すると、へき開が生じるためカチオン吸着剤としてはあまり好ましくない。
【0004】
ナトリウム/チタンモル比が0.6以下で、NaをSrに置換する選択係数が50,000以上で、イオン交換容量が4.5m当量/g以上で、pH11の2.0M-NaClの水溶液中で測定した放射性ストロンチウムの分配係数が40,000ml/g以上で、粒径が0.1~2mmの顆粒からなるチタン酸ナトリウムイオン交換体、及び、(1)固体含水酸化チタンと、アルカリ剤と、スラリー化するための液体とを含むスラリーを作り、この際に、スラリー1リットル当たり交換可能なカチオンを3.5モル以上の濃度で含み、スラリー1リットル当たりのチタン濃度は1.5モル以上にし、(2)上記スラリー中のアルカリ剤と酸化チタンとを30~150℃の温度で1分~48時間の間、反応させ
てチタネート生成物を生成し、(3)チタネート生成物を含む固体画分を沈殿させ、(4)固体画分を濾過分離してチタネート濾過ケークとし、(5)濾過ケークを洗浄してアルカリを除去し、洗浄した濾過ケークを乾燥させて恒量状態にし、乾燥させたケークを破砕して各種寸法の顆粒を製造し、粒径0.1~2mmの顆粒を選択し、この粒径の顆粒をすすぎ、全ての固体微粉の少なくとも一部を除去して、粒状チタネート生成物を回収して、交換可能なカチオンを含むチタネートイオン交換体を製造する方法が提案されている(特許文献1)。しかし、この方法で製造される顆粒状のチタン酸ナトリウムは、交換カチオンであるナトリウムイオンのチタンに対するモル比が小さいため、カチオン吸着容量が小さいという欠点があった。加えて、この方法で製造される顆粒状のチタン酸ナトリウムは、一次粒子の凝集体であるために、強度が弱く、輸送や充填塔への充填作業等で加えられる振動や衝撃等で粉砕されて微粉化し、さらに水中に投入すると凝集体の崩壊で一次粒子が脱落してしまう。このため、この微粉化した粒子や一次粒子が吸着塔の濾し器を閉塞させて円滑な汚染水の処理を妨げたり、逆に吸着塔の濾し器を通過して放射性アルカリ土類金属同位体であるストロンチウム-90を含む微粉が吸着塔から漏洩して環境に再拡散するという欠点があった。
【0005】
化学式がK2Ti2O5で表され、平均粒子径が1μm~150μmであり、不規則な方向に複数の突起物が延びる形状を有するチタン酸塩の粉末に、バインダーを加えて成形した後、焼成することによって製造される粒径150~3000μmの成形体よりなり、機械的強度が向上し、一次粒子の脱落を抑制できる、水中の放射性ストロンチウム吸着剤が提案されている(特許文献2)。しかしながら、バインダーを使用しているので、吸着剤中にストロンチウム-90の吸着に寄与しない物質が含まれることになり、吸着剤としてのカチオン交換容量はチタン酸塩本来のカチオン交換容量よりも低下する。加えて吸着剤の強度を得るために焼成を行うことから、製造に係わるエネルギーコストが大きくなる。
【0006】
カチオン吸着容量がより大きく、かつ機械的強度に優れ、微粉の発生がなく、放射性ストロンチウム汚染水の処理剤として取扱性に優れたアルカリ土類金属イオン吸着剤をより低コストで供給することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4428541号公報
【文献】特開2013-246145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、アルカリ土類金属イオン、特にはストロンチウムイオンの吸着容量が大きいアルカリ土類金属イオン吸着剤を提供することにある。本発明はまた、アルカリ土類金属イオン吸着剤を用いて、吸着剤本来の吸着特性を損なうことなく、カチオン交換容量が大きく、機械的強度に優れ、微粉の発生がなく、取扱性に優れる、放射性アルカリ土類金属イオン含有液(特に放射性ストロンチウム汚染水)の除染に好適な、アルカリ土類金属イオン吸着剤及びその製造方法を提供することを目的とする。本発明はまた、このアルカリ土類金属イオン吸着剤を充填してなる放射性アルカリ土類金属イオン含有液処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、化学式K2O・2TiO2で表される二チタン酸カリウムの水和及びカリウムイオン(K+)とプロトン(H+)とのカチオン交換反応により、化学式K2-xHxO・2TiO2・nH2Oで表される
二チタン酸水素カリウム水和物へ組成を変換させる際に同時に構造変換が生じ、この構造変換によりアルカリ土類金属イオンとのカチオン交換容量が増大することを見出した。特にxが0.5以上1.3以下の範囲にあるK2-xHxO・2TiO2・nH2Oの化学式で表される二チタン酸水素カリウム水和物が、アルカリ土類金属イオンの吸着性能に優れていることを見出した。さらに、結合剤を用いることなく、当該二チタン酸水素カリウム水和物を造粒することで、当該二チタン酸水素カリウム水和物本来のカチオン吸着容量を維持しながら、微粉の発生が少なく、取扱性に優れる粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明の具体的態様は以下のとおりである。
[1]化学式K2-xHxO・2TiO2・nH2O(式中、xは0.5以上1.3以下であり、nは0よりも大きい)で表される二チタン酸水素カリウム水和物を含み、結合剤を含まず、150μm以上1000μm以下の粒径範囲を有する粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤。
[2]Cukα線をX線源とするX線回折において、2θが8.5±2.0°の範囲にX線回折ピークを有することを特徴とする前記[1]に記載の粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤。
[3]内径15.96mmの円筒状カラムに層高10cmで充填し、並塩0.3%、ストロンチウム5ppm、マグネシウム5ppm、セシウム1ppmを含む模擬汚染海水を6.5ml/minの流量(通水線流速2m/h、空間速度20h-1)で通水した場合に、入口水中ストロンチウム濃度(C0)と出口水中ストロンチウム濃度(C)の比率が5%を超過する破過B.V.が3000以上のストロンチウム吸着性能を示す前記[1]又は[2]に記載の粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤。
[4]化学式K2O・2TiO2で表される二チタン酸カリウムを水和させ、カリウムイオン(K+)とプロトン(H+)とをカチオン交換させて、化学式K2-xHxO・2TiO2・nH2O(式中、xは0.5以上1.3以下であり、nは0よりも大きい)で表される二チタン酸水素カリウム水和物を得て、結合剤を用いずに造粒することを含む、前記[1]~[3]のいずれか1に記載の粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤の製造方法。
[5](1)チタン源及びカリウム源を混合し、
(2)得られる混合物を焼成して二チタン酸カリウムを得て、
(3)二チタン酸カリウムを水と接触させて、水和させると共にカリウムイオンとプロトンとのカチオン交換を生じさせ、二チタン酸水素カリウム水和物(K2-xHxO・2TiO2・nH2O、ただしxは0.5以上1.3以下、nは0よりも大きい)を得て、
(4)得られる二チタン酸水素カリウム水和物(K2-xHxO・2TiO2・nH2O、ただしxは0.5以上1.3以下)をスラリー中で湿式粉砕して、
(5)スラリーから二チタン酸水素カリウム水和物を含むろ過ケーキを固液分離し、
(6)結合剤を用いることなく、当該ろ過ケーキから二チタン酸水素カリウム水和物の粒子を造粒し、
(7)二チタン酸水素カリウム水和物を60℃以上150℃以下の温度で1時間以上24時間以下の条件で乾燥し、
(8)乾燥した二チタン酸水素カリウム水和物を解砕し、整粒して、150μm以上1000μm以下の粒径範囲を有する粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤とする
工程を含む、請求項4に記載の製造方法。
[6]前記[1]~[3]のいずれか1に記載の粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤を充填したアルカリ土類金属イオン含有液処理装置。
[7]前記[1]~[3]のいずれか1に記載の粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤を充填した放射性ストロンチウム除染装置。
[8]前記[1]~[3]のいずれか1に記載の粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤を用いる、アルカリ土類金属イオン含有液処理方法。
[9]前記[1]~[3]のいずれか1に記載の粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤を用いる、放射性ストロンチウム除染方法。
[10]前記[1]~[3]のいずれか1に記載の粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤を充填したアルカリ土類金属イオン含有液処理装置に、アルカリ土類金属イオン含有液を通水線流速(LV)1m/h以上40m/h以下、空間速度(SV)5h-1以上40h-1以下で通水することを含む、アルカリ土類金属イオン含有液処理方法。
[11]前記[1]~[3]のいずれか1に記載の粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤を充填した放射性ストロンチウム除染装置に、放射性ストロンチウム含有液を通水線流速(LV)1m/h以上40m/h以下、空間速度(SV)5h-1以上40h-1以下で通水することを含む、放射性ストロンチウム除染方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、化学式K2-xHxO・2TiO2・nH2Oで表される二チタン酸水素カリウム水和物を用いることで、他のチタン酸アルカリ金属よりもアルカリ土類金属イオンの吸着容量を向上させることができる。また、結合剤を用いなくとも高い機械的強度を有し、かつ吸着性能に優れる粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1により得た二チタン酸水素カリウム水和物のX線回折スペクトルである。
【
図2】実施例1、2、3及び比較例1、3のカラム試験によるストロンチウム除去性能を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであって、何ら本発明を限定するものではなく、本発明はその要旨を超えない範囲において、以下の実施形態に開示される各要素を種々変更して実施することができる。
【0014】
本発明のアルカリ土類金属イオン吸着剤は、結合剤を含まず、化学式:K2-xHxO・2TiO2・nH2O(ただし、xは0.5以上1.3以下であり、nは0よりも大きい)で表される二チタン酸水素カリウム水和物を含むことを特徴とする。xが1.3よりも大きくなるとTiO5三角両錘体からなる層のへき開が起こりやすくなり、造粒の際に強度が低下し、機械的強度の高い粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤を得ることができない。一方、xが0.5よりも小さいと吸着能が劣化する。xが0.5以上1.3以下で、層間距離が拡がった状態であれば、アルカリ土類金属イオン吸着能が発現されるため、水和の状態すなわちnの値は限定されないが、通常はnは0よりも大きく2以下である。
【0015】
本発明において用いる二チタン酸水素カリウム水和物は、CukαをX線源とするX線回折において、層間距離を示す2θが8.5±2.0°に回折ピークを有する。このピークは、層間の大きさを反映しており、2θがこの範囲にあることにより、高いアルカリ土類金属イオン吸着能を発揮することができる。このX線回折の特徴的なピークは、二チタン酸カリウム:化学式K2O・2TiO2を水と混合して水和物とする工程を経て発生するものである。
【0016】
本発明のアルカリ土類金属イオン吸着剤は、結合剤を含まず、粒径150μm以上1000μm以下、好ましくは150μm以上600μm以下、さらに好ましくは150μm以上300μm以下の粒径範囲を有する粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤である。上記範囲の粒径を有する粒子とすることにより、高い吸着能を発揮することができるばかり
でなく、機械的強度に優れ、取り扱いが容易で、アルカリ土類金属イオンを除去するための吸着塔などに充填しやすくなる。
チタン酸アルカリ金属は、一般的に化学式M2O・mTiO2(M:H+を除く一価カチオン、m=1,2,3,4,6,8等)で表される。カチオン交換体としてのチタン酸アルカリ金属は、mが大きい程チタン酸アルカリ金属一分子当たりのカチオン交換サイトが少なくなるため、カチオン交換容量は小さくなる。従って、カチオン交換容量に関してはmが1である化学式M2O・TiO2(M:H+を除く一価カチオン)で表される一チタン酸アルカリ金属が理想である。しかし、一チタン酸アルカリ金属は非常に不安定である。例えば、加熱により直ちに二チタン酸アルカリ金属:化学式M2O・2TiO2(M:H+を除く一価カチオン)と酸化アルカリ:化学式M2Oとに不均化してしまう。一方、mが2である二チタン酸アルカリ金属:化学式M2O・2TiO2(M:H+を除く一価カチオン)は、熱的にも安定であり、酸及びアルカリ等の耐薬品性にも優れており、水処理用の吸着剤として好適である。本発明の粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤は、化学式M2O・2TiO2(M:H+を除く一価カチオン)で表される二チタン酸アルカリ金属を水和させ、M+イオンとプロトン(H+)とのカチオン交換を経て得られる二チタン酸水素アルカリ金属水和物:化学式M2-xHxO・2TiO2・nH2O(M:H+を除く一価カチオン)を主成分とし、結合剤を含まない。
【0017】
本発明によれば、上記粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤を、水処理用吸着容器または吸着塔等に充填してなるアルカリ土類金属イオン含有液処理装置、好ましくは放射性ストロンチウム除染装置も提供される。
また本発明によれば、アルカリ土類金属イオン含有液処理装置、好ましくは放射性ストロンチウム除染装置に、アルカリ土類金属イオン含有液好ましくは放射性ストロンチウム含有液を通水してアルカリ土類金属イオン好ましくは放射性ストロンチウムを吸着除去するアルカリ土類金属イオン含有液処理方法、好ましくは放射性ストロンチウム除染方法も提供される。
【0018】
本発明の粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤は、(1)チタン源及びカリウム源を混合し、(2)得られる混合物を焼成して二チタン酸カリウムを得て、(3)二チタン酸カリウムを水と接触させて(泥奬化)、水和と共にカリウムイオンとプロトンとのカチオン交換を生じさせ、二チタン酸水素カリウム水和物(K2-xHxO・2TiO2・nH2O、ただしxは0.5以上1.3以下)を得て、(4)得られる二チタン酸水素カリウム水和物(K2-xHxO・2TiO2・nH2O、ただしxは0.5以上1.3以下)をスラリー中で湿式粉砕して、(5)スラリーから二チタン酸水素カリウム水和物を含むろ過ケーキを固液分離し、(6)結合剤を用いることなく、当該ろ過ケーキから二チタン酸水素カリウム水和物の粒子を造粒し、(7)所定の層間距離となるように二チタン酸水素カリウム水和物を乾燥し、(8)乾燥した二チタン酸水素カリウム水和物を解砕し、整粒して、所望の粒径範囲を有する粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤とすることにより製造することができる。
【0019】
化学式K2-xHxO・2TiO2・nH2O(ただし、xは0.5以上1.3以下)で表される二チタン酸水素カリウム水和物は、イルメナイト鉱石を硫酸法にて溶解し、得られたメタチタン酸スラリーに炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カリウム、酸化カリウム等のカリウム源を混合して、乾燥、焼成して得られた二チタン酸カリウム(K2O・2TiO2)を水と混合して水和及びカリウムイオン(K+)とプロトン(H+)とのカチオン交換反応により得られる。
【0020】
二チタン酸水素カリウム水和物は、結合剤を使用することなく機械的強度が大きい粒子に造粒することができる。
以下、本発明の粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤の製造方法を工程別に説明する。
【0021】
[原料]
本発明で用いるチタン源としては、二酸化チタン、亜酸化チタン、オルトチタン酸又はその塩、メタチタン酸又はその塩、水酸化チタンなどを、単独あるいは2種類以上を組合せて用いることができる。特にメタチタン酸を好適に用いることができる。メタチタン酸は、イルメナイト等のチタン鉱石を硫酸にて溶解し、加水分解後にスラリーとして得られるため、焼成物よりも安価である。さらに、メタチタン酸は焼成物より微細であるため、カリウム源との混合性及び反応性にも優れている。
【0022】
カリウム源としては、炭酸カリウム、水酸化カリウム、シュウ酸カリウムなどを単独あるいは2種類以上を組合せて用いることができる。カリウム源としては、焼成反応において溶融するものが好ましく、特に炭酸塩が好ましい。炭酸カリウムは、チタン源との焼成反応において、溶融あるいは分解し、反応が起き易く、また分解した後も化学的に不活性な二酸化炭素が発生する以外は副生成物が発生しないので好ましい。
【0023】
[混合]
チタン源とカリウム源の混合割合としては、1モルのTiに対してKは0.95モル以上1.25モル以下の割合が好ましい。1モルのTiに対するKの割合が0.95モルよりも小さい場合は四チタン酸カリウム等の不純物の量が多くなり、1モルのTiに対するKの割合が1.25モルよりも大きい場合は余剰のカリウムがチタン酸カリウムを生成することなく残存する。いずれの場合もカチオン交換容量が小さくなり、アルカリ土類金属イオンの吸着容量が低下する。組成分析は、誘導結合プラズマ質量分析計ICP-Mass(アジレント・テクノロジー株式会社製Agilent 7700x ICP-MS)にて測定した値である。チタン源とカリウム源の混合は、両原料共に固体を用いる乾式混合、または一方の原料或いは両原料共に泥漿(スラリー)或いは水溶液を用いる湿式混合で行うことができる。
【0024】
乾式混合する場合は、得られた混合物をそのまま焼成することができる。湿式混合する場合は、チタン源とカリウム源の混合スラリーを適切な方法で乾燥した後、焼成する。混合スラリーの乾燥を容易にかつ効率よく行うために、乾燥の前に造粒してもよい。スラリーからの造粒方法は、通常の造粒方法、例えば粘度の高いスラリーを有孔板から押し出す方法などを制限なく用いることができる。乾燥装置の形式や乾燥の熱源は特に限定されないが、乾燥する時間が長くなると水溶性のカリウムが水の移動に伴ってバルクの内部からバルクの表面に移動することにより、Ti/Kモル比に偏りを生じるため、乾燥する時間が短い噴霧乾燥法が好ましい。
【0025】
[焼成]
チタン源とカリウム源の原料混合物を焼成することによって二チタン酸カリウムを得る。焼成温度及び焼成時間に特に制約はないが、700℃以上850℃以下の範囲の温度で1時間以上24時間以下保持することが好ましい。昇温速度及び降温速度は特に制約は無いが、通常、3℃/分以上8℃/分以下とすることが好ましい。
【0026】
[解砕及び泥奬化]
得られた焼成物の泥漿(スラリー)化及び次工程の湿式粉砕を容易にするために、焼成物を解砕することが好ましい。解砕は、通常の解砕手段、例えば、らいかい機、エッジランナー式粉砕機、ハンマー式粉砕機、気流式粉砕機、高速撹拌型解砕機、双ロール式ミル等を用いて行うことができる。焼成物を解砕した後、解砕物に水を加えて泥漿(スラリー)化する。泥漿(スラリー)化により、二チタン酸カリウムは、水和及びカリウムイオンとプロトンとのカチオン交換が生じてK2-xHxO・2TiO2・nH2O(ただし、xは0.5以上1.3以下)で表される二チタン酸水素カリウム水和物となる。
【0027】
[湿式粉砕]
上記の解砕及び泥漿化で得られた泥漿(スラリー)を湿式粉砕する。ただし、過剰の湿式粉砕を行うと、微粉化が進行し過ぎて、最終物である吸着剤の機械的強度が低下するため、適度の湿式粉砕を行う。湿式粉砕は、ビーズミルや高圧ホモジナイザーなどの通常の湿式粉砕方法を制限なく用いることができる。湿式粉砕の条件は、スラリー中の二チタン酸水素カリウム水和物の性状や湿式粉砕後の処理条件に応じて適宜選択することができる。たとえば、湿式粉砕後に乾燥させた二チタン酸水素カリウム水和物の比表面積が1.5m2/g以上15m2/g以下になるように粉砕条件を設定することができる。
【0028】
[ろ過]
湿式粉砕した泥漿(スラリー)を適切なろ過装置を用いて固液分離する。ろ過装置に特に制限はなく、通常のろ過装置、例えば減圧ろ過装置、プレス式ろ過装置などを用いることができる。造粒の容易さを勘案すると、ろ過ケーキの含水率は35wt%以上50wt%以下とすることが好適である。
【0029】
[造粒]
得られたろ過ケーキを造粒する。造粒方法としては、ろ過ケーキを直接押出造粒してもよいし(湿式造粒)、ろ過ケーキを乾燥した後、塊状乾燥物を粉砕して整粒してもよい(乾式造粒)。押出造粒装置としては、スクリュー型押出造粒機、ロール型押出造粒機、ブレード型押出造粒機、自己成形型押出造粒機等を用いることができる。
【0030】
[乾燥]
湿式造粒した造粒体を乾燥する。乾燥装置及びその熱源には特に制約はないが、60℃以上150℃以下の温度で1時間以上24時間以下の時間をかけて行うことが好ましい。加熱によって生成物の層間距離が減少する。層間距離はイオン交換能に影響する。従って、温度管理は厳密に行う必要がある。
【0031】
[解砕及び整粒]
乾式造粒した造粒体または湿式造粒後に乾燥した造粒体を解砕し、必要に応じて分級装置を用いて、粒径150μm以上1000μm以下、より好ましくは150μm以上600μm以下となるように整粒して、粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤を得る。整粒後の粒径が上記範囲内であれば、吸着塔などへの充填体積を好適範囲に維持することができ、吸着塔を閉塞するおそれも少ない。充填体積が小さくなると、単位体積当たりのアルカリ土類金属イオン吸着能が低下するため好ましくなく、吸着塔が閉塞すると通水できなくなるため好ましくない。
【0032】
[アルカリ土類金属イオン含有液処理装置又は放射性ストロンチウム除染装置]
本発明の粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤は、下部又は上部にストレーナー構造を有する吸着容器又は吸着塔に充填して使用することができる。アルカリ土類金属イオン、特に放射性ストロンチウムを含有する汚染水を当該吸着容器又は吸着塔に通水して処理するアルカリ土類金属イオン含有液処理装置又は放射性ストロンチウム除染装置に有効に適用することができる。
本発明のアルカリ土類金属イオン含有液処理装置又は放射性ストロンチウム除染装置において、本発明の粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤を10cm以上300cm以下の層高、好ましくは20cm以上250cm以下、より好ましくは50cm以上200cm以下の層高となるように吸着塔に充填することが好ましい。上記範囲とすることで、吸着剤を吸着塔に充填する際に吸着剤層を均一に充填することができ、通水時のショートパスを引き起こさず、結果として処理水質が悪化することを防止することができる。層高が高い程、適切な通水差圧が実現でき、処理水質が安定化し、処理水の総量も多くなるため好
ましいが、通水差圧を小さくするため層高300cm以下とすることが好ましい。
【0033】
[アルカリ土類金属イオン含有液処理方法又は放射性ストロンチウム除染方法]
本発明は、アルカリ土類金属イオン含有液処理装置又は放射性ストロンチウム除染装置に、アルカリ土類金属イオン含有液又は放射性ストロンチウム含有液を所定の通水線流速(LV)、空間速度(SV)で通水することを含む、アルカリ土類金属イオン含有液処理方法も提供する。
放射性ストロンチウム除染に用いる場合には、本発明の吸着剤を充填した吸着塔に対して、放射性ストロンチウムを含有する放射性廃液を通水線流速(LV)1m/h以上40m/h以下、好ましくは2m/h以上30m/h以下、より好ましくは10m/h以上20m/h以下、空間速度(SV)40h-1以下、好ましくは30h-1以下、より好ましくは20h-1以下、好ましくは5h-1以上、より好ましくは10h-1以上で通水する。通水線流速が40m/hを越えると通水差圧が大きくなり、1m/h未満では処理水量が少ない。空間速度(SV)は一般的な廃液処理で用いられる20h-1以下、特に10h-1程度でも本発明の吸着剤の効果を得ることができるが、通常の吸着剤を用いる廃液処理では20h-1を越える大きな空間速度(SV)では安定した処理水質を実現できず、除去効果を得る事ができない。本発明においては、吸着塔を大型化せずに通水線流速及び空間速度を大きくすることができる。
なお、通水線流速とは、吸着塔に通水する水量(m3/h)を吸着塔の断面積(m2)で除した値である。空間速度とは、吸着塔に通水する水量(m3/h)を吸着塔に充填した吸着剤の体積(m3)で除した値である。
【0034】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。以下に挙げる例は単に例示のために記すものであり、発明の範囲がこれによって制限されるものではない。
【実施例】
【0035】
[合成例:二チタン酸カリウムの合成]
酸化チタン換算で14.75kgのTiを含むメタチタン酸スラリーに、炭酸カリウム(旭硝子製)15.75kgを溶解して、原料混合物スラリーを調製した。原料混合物スラリーを噴霧乾燥し、チタン源とカリウム源を含む混合乾燥物を得た。
【0036】
得られた混合乾燥物2kgをこう鉢2個に各1kgずつ充填し、電気炉にて設定温度770℃で6時間焼成した。得られた焼成物を、ハンマー式ミルを用いて解砕した。得られた粉末をX線回折装置(株式会社リガク製RINT-TTRIII)で同定したところ、化学式K2O・2TiO2で表される二チタン酸カリウムのピークと一致した。また、走査型電子顕微鏡を用いて測定した粉末の平均粒子径は15μmであった。
【0037】
[実施例1:粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤の製造]
合成例で得られた、平均粒子径15μmの二チタン酸カリウム粉末400gを水2Lに添加して(水戻し)、スラリーを調製した(泥奬化)。このスラリーを2回湿式粉砕した。湿式粉砕後に固液分離し、乾燥させた二チタン酸水素カリウム水和物粉末の比表面積は6.5m2/gであった。
次に、減圧ろ過によりスラリーをろ過して、ろ過ケーキを得た。得られたろ過ケーキを設定温度110℃で15時間乾燥した後、解砕し、篩により300μm以上600μm以下の粒径範囲に整粒して、粒径300μm以上600μm以下の範囲の粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤を得た。
【0038】
[実施例2:粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤の製造]
合成例で得られた、平均粒子径15μmの二チタン酸カリウム粉末400gを水2Lに添加して(水戻し)、スラリーを調製した(泥奬化)。このスラリーを2回湿式粉砕した
。湿式粉砕後に固液分離し、乾燥させた二チタン酸水素カリウム水和物粉末の比表面積は4.7m2/gであった。
次に、プレス式ろ過機を用いてスラリーをろ過し、ろ過ケーキを得た。得られたろ過ケーキを押出成型機を用いて造粒し、設定温度110℃で15時間乾燥した後、解砕し、篩により300μm以上600μm以下の粒径範囲に整粒して、粒径300μm以上600μm以下の範囲の粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤を得た。
【0039】
[実施例3:粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤の製造]
合成例で得られた、平均粒子径15μmの二チタン酸カリウム粉末400gを水2Lに添加して(水戻し)、スラリーを調製した(泥奬化)。このスラリーを2回湿式粉砕した。湿式粉砕後に固液分離し、乾燥させた二チタン酸水素カリウム水和物粉末の比表面積は4.7m2/gであった。
次に、プレス式ろ過機を用いてスラリーをろ過し、ろ過ケーキを得た。得られたろ過ケーキを押出成型機を用いて造粒した。得られた造粒物の3重量%分の水を噴霧した後、設定温度110℃で15時間乾燥した後、解砕し、篩により150μm以上300μm以下の粒径範囲に整粒して、粒径150μm以上300μm以下の範囲の粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤を得た。
【0040】
[実施例4:粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤の製造]
合成例で得られた、平均粒子径15μmの二チタン酸カリウム粉末1200gを水2Lに添加して(水戻し)、スラリーを調製した(泥奬化)。このスラリーを2回湿式粉砕した。湿式粉砕後に固液分離し、乾燥させた二チタン酸水素カリウム水和物粉末の比表面積は9.9m2/gであった。
次に、減圧ろ過によりスラリーをろ過して、ろ過ケーキを得た。得られたろ過ケーキを設定温度110℃で15時間乾燥した後、解砕し、篩により300μm以上600μm以下の粒径範囲に整粒して、粒径300μm以上600μm以下の範囲の粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤を得た。
【0041】
[実施例5:粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤の製造]
合成例で得られた、平均粒子径15μmの二チタン酸カリウム粉末400gを水2Lに添加して(水戻し)、スラリーを調製した(泥奬化)。このスラリーを1回湿式粉砕した。湿式粉砕後に固液分離し、乾燥させた二チタン酸水素カリウム水和物粉末の比表面積は3.6m2/gであった。
次に、プレス式ろ過機を用いてスラリーをろ過及び洗浄し、ろ過ケーキを得た。得られたろ過ケーキを押出成型機を用いて造粒し、設定温度110℃で15時間乾燥した後、解砕し、篩により150μm以上600μm以下の粒径範囲に整粒して、粒径150μm以上600μm以下の範囲の粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤を得た。
【0042】
[比較例1:結合剤を含む粒子の製造]
合成例で得られた、比表面積1.0m2/g、平均粒子径15μmの二チタン酸カリウム粉末200g、結合剤として日東粉化工業製天然ゼオライトSP-2300を60g、造粒助剤としてPVA(ポリビニルアルコール)6gを混合した後、水60gを徐々に添加しながら転動造粒を行った。造粒物を設定温度110℃で12時間乾燥した後、篩にて300μm以上1000μm以下の粒径範囲に整粒した。整粒した粉末を電気炉にて設定温度630℃で5時間焼成を行った。焼成後に再度篩にて300μm以上1000μm以下の粒径範囲に整粒し、粒径300μm以上1000μm以下の範囲の粒子を得た。
【0043】
[比較例2:二チタン酸カリウム粒子の製造]
合成例で得られた、比表面積1.0m2/g、平均粒子径15μmの二チタン酸カリウム粉末をそのまま解砕した。解砕後の比表面積は1.3m2/gであった。さらに、篩に
て150μm以上600μm以下の粒径範囲に整粒して、粒径150μm以上600μm以下の範囲の粒子を得た。
【0044】
[比較例3:市販の顆粒状吸着剤]
特許文献2に記載されている顆粒状のチタン酸ナトリウムの市販品であるFortum製の商品名「SrTreat」を用いた。
【0045】
[組成分析]
被検試料のチタン及びカリウムの含有量を誘導結合プラズマ質量分析計ICP-Mass(アジレント・テクノロジー株式会社製Agilent 7700x ICP-MS)で測定した。当該含有量より化学式K2-xHxO・2TiO2・nH2Oのxを算出した。
【0046】
[X線回折]
株式会社リガク製のX線回折装置RINT-TTRIIIを使用して、Cukα線をX線源として、走査速度5deg/minで被検試料のX線回折プロファイルを得た。X線回折強度が小さい場合には、複数回の走査を行ってそれらを積算することによりX線回折プロファイルを得た。X線回折装置に付属の解析プログラムを使用して、主たるX線回折ピークの回折角度2θを算出した。
【0047】
[ストロンチウム吸着性能の評価]
実施例1乃至5及び比較例1乃至2で製造した粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤及び比較例3の市販の顆粒状チタン酸ナトリウムをそれぞれ内径15.96mmの円筒状カラムに容積で20mL、層高で100mmになるように充填した。並塩0.3%、ストロンチウム、マグネシウムがそれぞれ5ppm、セシウムが1ppmになるように調製した模擬汚染海水をそれぞれのカラムに6.5mL/minの流量(通水線流速2m/h、空間速度20h
-1)で通水し、出口水を定期的に採取して、アジレント・テクノロジー株式会社製Agilent 7700x ICP-MSを用いて、模擬汚染海水中のストロンチウム濃度を測定した。
図2は実施例1乃至3、比較例1及び比較例3のストロンチウムの除去性能を示す。
図2において、横軸は吸着剤の体積に対して何倍量の模擬汚染海水を通水したのかを示すB.V.(Bed Volume)であり、縦軸はカラム出口のストロンチウムの濃度をカラム入口のストロンチウムの濃度で除した値である。破過B.V.の定義は通水の開始からC/C
0が5%を超越したB.V.である。
【0048】
[粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤の崩壊状態]
アルカリ土類金属イオン吸着剤の崩壊状態の評価を行った。カラム試験における水溶液の流下状況及びカラム試験後の粒子状アルカリ土類金属イオン吸着剤の状態及びカラムからの取り出しやすさにより、以下の優、良、可及び不可を判定した。
優:カラム試験における水溶液の流下に支障が無く、カラム試験後も粒子が崩壊しておらず、粒子をカラムから容易に取り出せる。
良:カラム試験における水溶液の流下及びカラムからの粒子の取り出しに支障はないが、カラム試験後に粒子の崩壊が多少認められる。
可:カラム試験における水溶液の流下に支障はないが、カラム試験後には粒子が崩壊して、カラムからの粒子の取り出しに支障がある。
不可:カラム試験における水溶液の流下に支障があり、カラムから粒子を容易に取り出せないほど粒子が崩壊している。
【0049】
【0050】
表1及び
図2より、実施例1乃至5は、比較例1及び3よりストロンチウムが検出されるまでのB.V.が長くなっており、ストロンチウム吸着性能が高いことが分かる。比較例2はカラム内で粒子が崩壊したため、水溶液の流下が困難となり、破過B.V.は計測不能であった。