(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】受信装置、送信装置、無線通信システム及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
H04W 72/04 20090101AFI20220613BHJP
H04W 4/38 20180101ALI20220613BHJP
G08C 15/02 20060101ALI20220613BHJP
G08C 15/00 20060101ALI20220613BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
H04W72/04 132
H04W4/38
G08C15/02
G08C15/00 E
H04Q9/00 311H
(21)【出願番号】P 2017155209
(22)【出願日】2017-08-10
【審査請求日】2020-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】茅原 桂一
【審査官】野村 潔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/045401(WO,A1)
【文献】特開2001-016663(JP,A)
【文献】特開2014-175799(JP,A)
【文献】特開2010-109600(JP,A)
【文献】特開2014-107762(JP,A)
【文献】国際公開第2017/119172(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00-99/00
G08C 15/02
G08C 15/00
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる周波数チャネルを用いた無線通信により、所定期間の経過毎にデータを更新し、且つ同一のデータを前記所定期間内に複数回に亘り連続して送信する複数の送信元から送信されるデータを受信する受信装置であって、
前記所定期間内に、前記周波数チャネルの全てを受信チャネルとして設定するように、前記送信元におけるデータの更新周期に応じたタイミングで受信チャネルを切り換える制御部と、
前記制御部により受信チャネルとして設定された周波数チャネルを用いて、前記複数の送信元の各々から送信されるデータを受信する無線部と、
を含む受信装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記周波数チャネルの各々を、所定の順序に従って前記受信チャネルとして設定する処理を繰り返す
請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記処理の繰り返し周期が一定である
請求項2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記周波数チャネルうちのいずれかの周波数チャネルが前記受信チャネルとして設定されてから、次の周波数チャネルが前記受信チャネルとして設定されるまでの保持期間が一定である
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項5】
前記周波数チャネルうちのいずれかの周波数チャネルが前記受信チャネルとして設定されてから、次の周波数チャネルが前記受信チャネルとして設定されるまでの保持期間が可変である
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記周波数チャネルのうちのいずれかの周波数チャネルが前記受信チャネルとして設定されてから所定期間内に前記無線部においてデータが受信されない場合、当該周波数チャネルの前記保持期間を延長する
請求項5に記載の受信装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記無線部において受信したデータのうち、重複して受信したデータを破棄する
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項8】
複数の送信装置と受信装置とを含む無線通信システムであって、
前記複数の送信装置の各々は、互いに異なる周波数チャネルを用いて無線通信によりデータを送信する無線送信部と、
所定期間の経過毎に前記無線送信部から送信されるデータを更新し、且つ同一のデータが前記所定期間内に複数回に亘り連続して送信されるように前記無線送信部を制御する送信制御部と、
を含み、
前記受信装置は、
前記所定期間内に、前記周波数チャネルの全てを受信チャネルとして設定するように、前記送信装置におけるデータの更新周期に応じたタイミングで受信チャネルを切り換える受信制御部と、
前記受信制御部により受信チャネルとして設定された周波数チャネルを用いて、前記複数の送信装置の各々から送信されるデータを受信する無線受信部と、
を含む無線通信システム。
【請求項9】
前記複数の送信装置の各々は、所定のセンシング処理を行うことによりセンサデータを取得するセンサ部を含み、前記センサデータを無線通信により送信する
請求項
8に記載の無線通信システム。
【請求項10】
前記受信装置は、前記複数の送信装置の各々から送信されたデータを受信したことを示す応答を前記複数の送信装置に送信しない
請求項
8または請求項
9に記載の無線通信システム。
【請求項11】
前記受信制御部は、前記周波数チャネルの各々を、所定の順序に従って前記受信チャネルとして設定する処理を繰り返す
請求項
8から請求項
10のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項12】
前記処理の繰り返し周期が一定である
請求項
11に記載の無線通信システム。
【請求項13】
前記周波数チャネルうちのいずれかの周波数チャネルが前記受信チャネルとして設定されてから、次の周波数チャネルが前記受信チャネルとして設定されるまでの保持期間が一定である
請求項
8から請求項
12のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項14】
前記周波数チャネルうちのいずれかの周波数チャネルが前記受信チャネルとして設定されてから、次の周波数チャネルが前記受信チャネルとして設定されるまでの保持期間が可変である
請求項
8から請求項
13のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項15】
前記受信制御部は、前記周波数チャネルうちのいずれかの周波数チャネルが前記受信チャネルとして設定されてから所定期間内に前記無線受信部においてデータが受信されない場合、当該周波数チャネルの前記保持期間を延長する
請求項
14に記載の無線通信システム。
【請求項16】
複数の送信装置の各々が、互いに異なる周波数チャネルを用いた無線通信により、所定期間の経過毎にデータを更新し、且つ同一のデータを前記所定期間内に複数回に亘り連続して送信し、
受信装置が、前記所定期間内に、前記周波数チャネルの全てを受信チャネルとして設定するように、前記送信装置におけるデータの更新周期に応じたタイミングで受信チャネルを切り換え、受信チャネルとして設定された周波数チャネルを用いて、前記複数の送信装置の各々から送信されるデータを受信する
無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置、送信装置、無線通信システム及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多数のセンサ情報を、無線通信を用いて収集する無線センサネットワークシステムに注目が集まっている。無線を使用することにより、ケーブルの敷設費用が節約できる他、従来では設置場所の制限により実現できなかったシステムも構築が可能となるといったメリットがある。こういったメリットを生かし、温度、湿度、照度、雨量等をモニタリングする環境モニタリング、空調制御、照明制御、FA機器制御及び監視、物流情報管理、HEMS(Home Energy Management System)、BEMS(Building Energy Management System)及びIoT(Internet of Things)といった幅広い用途に無線センサネットワークシステムが利用されつつある。
【0003】
例えば、特許文献1には、基地局が、複数の無線センサごとにポーリング信号を割り当て、ポーリング信号と測定時刻データを、複数の無線センサに対して送信し、無線センサが、その測定時刻データに基づいて情報を取得するとともに記録し、基地局が割り当てたポーリング信号を受信した場合に、記録した情報を基地局に送信する無線センサネットワークシステムが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、複数のセンサノードの各々が、所定の周期を時分割して得られる複数のスロットのそれぞれを用いて基地局と通信を行うTDMA方式の通信方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-295907号公報
【文献】特開2006-129102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
サーバに有線で接続された親機と、各々がセンサを備えた複数の子機とで構成され、親機と複数の子機との間で無線通信を行う、スター型の無線通信システムが提案されている。
【0007】
このような無線通信システムを用いて、複数の子機の各々が取得したセンサデータを、親機が収集する場合、一般的には、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)等の衝突回避機能を使用する。また、複数の子機の各々から送信されるデータの衝突を回避するために、親機が、複数の子機の各々と時間をずらしながら通信する場合もある。後者の場合には、親機から子機に向けてデータ送信要求を発し、子機がこのデータ送信要求に応答する、あるいは、親機が同期タイミングを制御して、子機の各々がそれに同期して、時分割方式で応答する等の方法が採られている。
【0008】
しかしながら、親機からのデータ送信要求に子機が応答する通信方式の場合、親機と子機との間で、双方向の通信が必要となるため、データ収集タイミングが極めて短いといった時間的制約の厳しいシステムには不向きであった。
【0009】
また、CSMA/CA機能を用いる通信方式の場合、その時の外部電波環境に依存して再送処理が発生する可能性があるため、子機におけるデータ送信の遅延をコントロールすることは困難である。従って、CSMA/CA機能を用いる通信方式の場合、例えば、規定の期間内に子機から親機へ定期的にデータを送信しなければいけないといった時間的制約の厳しいシステムには不向きであった。
【0010】
また、親機が同期タイミングを司って、時分割処理により通信を行う通信方式の場合、親機と子機とで、常に同期を維持する必要があり、高いクロック精度及び時間補正機能が求められる。従って、このような通信方式を採用するシステムは、複雑で高価なものとなっていた。
【0011】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、送信装置と受信装置との間での無線通信を用いたデータの送受信における時間的制約に対処することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る受信装置は、互いに異なる周波数チャネルを用いた無線通信により、所定期間の経過毎にデータを更新し、且つ同一のデータを前記所定期間内に複数回に亘り連続して送信する複数の送信元から送信されるデータを受信する受信装置であって、前記所定期間内に、前記周波数チャネルの全てを受信チャネルとして設定するように、前記送信元におけるデータの更新周期に応じたタイミングで受信チャネルを切り換える制御部と、前記制御部により受信チャネルとして設定された周波数チャネルを用いて、前記複数の送信元の各々から送信されるデータを受信する無線部と、を含む。
【0013】
本発明に係る送信装置は、予め定められた周波数チャネルを用いて無線通信によりデータを送信する無線部と、所定期間の経過毎に前記無線部から送信されるデータを更新し、且つ同一のデータが前記所定期間内に複数回に亘り連続して送信されるように前記無線部を制御する制御部と、を含む。
【0014】
本発明に係る無線通信システムは、複数の送信装置と受信装置とを含む。前記複数の送信装置の各々は、互いに異なる周波数チャネルを用いて無線通信によりデータを送信する無線送信部と、所定期間の経過毎に前記無線送信部から送信されるデータを更新し、且つ同一のデータが前記所定期間内に複数回に亘り連続して送信されるように前記無線送信部を制御する送信制御部と、を含む。前記受信装置は、前記所定期間内に、前記周波数チャネルの全てを受信チャネルとして設定するように、前記送信装置におけるデータの更新周期に応じたタイミングで受信チャネルを切り換える受信制御部と、前記受信制御部により受信チャネルとして設定された周波数チャネルを用いて、前記複数の送信装置の各々から送信されるデータを受信する無線受信部と、を含む。
【0015】
本発明に係る無線通信方法は、複数の送信装置の各々が、互いに異なる周波数チャネルを用いた無線通信により、所定期間の経過毎に更新されるデータを、前記所定期間内に複数回に亘り連続して送信し、受信装置が、前記所定期間内に、前記周波数チャネルの全てを受信チャネルとして設定するように、前記送信装置におけるデータの更新周期に応じたタイミングで受信チャネルを切り換え、受信チャネルとして設定された周波数チャネルを用いて、前記複数の送信装置の各々から送信されるデータを受信することを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、送信装置と受信装置との間での無線通信を用いたデータの送受信における時間的制約に対処することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る無線通信システムの概略の構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る親機及び子機を構成する無線通信端末装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る複数の子機の各々の動作を示すシーケンスチャートである。
【
図4】本発明の実施形態に係る親機の動作を示すシーケンスチャートである。
【
図5】本発明の実施形態に係る親機と子機との間で行われる無線通信の様子を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る親機におけるデータの取りこぼしの態様の一例を示す図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る無線通信システムに用いられる親機及び子機を構成する無線通信端末装置の構成を示すブロック図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る親機において実施される受信チャネルの切り替え処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。尚、各図面において、実質的に同一又は等価な構成要素又は部分には同一の参照符号を付している。
【0019】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る無線通信システム100の概略の構成図である。
図1に示すように、無線通信システム100は、1つの親機101と、複数の子機102と、センタコンピュータ103と、を含んで構成されている。無線通信システム100は、1台の親機101に対して、複数の子機102が無線通信路によって接続されたスター型の無線ネットワークを構成している。本実施形態において、無線通信路は、例えば、IEEE802.15.4の規格に従うものとするが、これに限定されるものではない。親機101は、センタコンピュータ103に接続され、子機102の各々から無線通信路を介して取得したセンサデータを、センタコンピュータ103に出力する。
【0020】
図2は、親機101及び子機102を構成する無線通信端末装置200の構成を示すブロック図である。なお、本実施形態では、親機101及び子機102は、共通の構成を採るものとする。無線通信端末装置200は、制御部201、無線部202、アンテナ203、センサ部204及びインタフェース部205を含んで構成されている。制御部201は、例えば、マイクロコントローラを含んで構成され、無線通信システム100のシステム制御を行う。制御部201には、無線部202、センサ部204及びインタフェース部205が接続され、無線部202にはアンテナ203が接続されている。
【0021】
センサ部204は、電圧センサ、電流センサ、圧力センサまたは温度センサ等の所定のセンシング処理を行うセンサを含んで構成されている。無線通信端末装置200が、子機102として機能する場合、制御部201は、センサ部204を制御することでセンサデータを取得し、取得したセンサデータを含むデータパケットを、無線部202を介して無線通信路に送出する。一方、無線通信端末装置200が、親機101として機能する場合、制御部201は、無線部202において受信したデータパケットに含まれるセンサデータを、インタフェース部205を介してセンタコンピュータ103に出力する。
【0022】
なお、親機101と子機102の各々とが互いに異なる構成を有していてもよい。例えば、無線通信端末装置200が親機101として機能する場合、
図2に示す構成からセンサ部204を削減してもよい。また、無線通信端末装置200が子機102として機能する場合、
図2に示す構成からインタフェース部205を削減してもよい。
【0023】
以下に、親機101と子機102の各々との間で行われる無線通信の態様について説明する。以下の説明では、子機102からセンサデータを含むデータパケットを、親機101に定期的に送信する場合を例示する。また、1台の親機101に接続する子機102の数を4台とする場合を例示する。また、4台の子機102が、それぞれ、10msec毎にセンサデータを更新して親機101に送信するものとする。
【0024】
はじめに、子機102の動作の概略について説明する。子機102として機能する無線通信端末装置200の制御部201は、センサ部204を制御してセンサデータを取得する。制御部201は、取得したセンサデータから、IEEE802.15.4の規格に準じたデータパケットを構築し、無線部202を制御することにより、このデータパケットを、アンテナ203を通して親機101に送信する。子機102として機能する無線通信端末装置200の無線部202は、制御部201による制御の下で、子機102毎に割り当てられた周波数チャネルを使用して同一のセンサデータを複数回に亘り連続的に送信する。以下の説明では、4台の子機102に対して、それぞれ、IEEE802.15.4の規格に準拠した周波数チャネルである、11CH、15CH、19CH、23CHが割り当てられているものとする。子機102は、センサデータを取得して、センサデータを含むデータパケットを連続的に送信する一連の処理を10msec単位で繰り返し実施する。すなわち、子機102から送信されるセンサデータは、10msec毎に更新される。複数の子機102の各々から送信されるデータパケットには、どのタイミングで取得したセンサデータかを示すシーケンス番号、及び複数の子機102うち、いずれの子機に対応するセンサデータかを示す識別子が付与されている。
【0025】
次に、親機101の動作の概略について説明する。親機101として機能する無線通信端末装置200の制御部201は、子機102の各々に割り当てられている周波数チャネル(11CH、15CH、19CH、23CH)の各々を、所定の順序に従って1つずつ受信チャネルとして設定する処理を繰り返すことにより、受信チャネルを巡回的に遷移させる。親機101として機能する無線通信端末装置200の無線部202は、複数の子機102の各々から送信されるデータパケットを、制御部201により受信チャネルとして設定された周波数チャネルを用いて受信する。本実施形態では、一例として、11CH、15CH、19CH、23CHの順で受信チャネルを順次切り替える処理が、繰り返し行われるものとする。制御部201は、センサデータの更新周期である10msecの期間内に、全ての周波数チャネル(11CH、15CH、19CH、23CH)が、受信チャネルとして設定されるように、例えば2.5msec毎に受信チャネルを切り替える。例えば、11CHが受信チャネルとして設定されている2.5msecの期間において、11CHが割り当てられた子機102から送信されるデータパケットが、親機101において受信される。制御部201は受信したデータパケットに含まれるセンサデータを、インタフェース部205を介して、センタコンピュータ103に出力する。制御部201は、同一の識別子且つ同一のシーケンス番号が付与された複数のデータパケットを受信した場合、すなわち、同一のデータパケットを重複して受信した場合、その重複するデータパケットを破棄する。
【0026】
以下に、子機102の動作の詳細について説明する。
図3は、複数の子機102の各々の動作を示すシーケンスチャートである。
図3では、4台の子機102を子機[1]、子機[2]、子機[3]及び子機[4]と表記している。
【0027】
子機[1]~子機[4]のうちのどの子機から送信されたデータなのかを識別するために、識別子Srcが定義されている。以下の説明では、子機[1]には、識別子Srcとして1が設定され、子機[2]には識別子Srcとして2が設定され、子機[3]には識別子Srcとして3が設定され、子機[4]には識別子Srcとして4が設定されるものとする。
【0028】
IEEE802.15.4の2.4GHz帯域では11CH(中心周波数2405MHz)から26CH(中心周波数2480MHz)までの16チャネルの割り当てがある。子機[1]には11CHが割り当てられ、子機[2]には15CHが割り当てられ、子機[3]には19CHが割り当てられ、子機[4]には23CHが割り当てられているものとする。複数の子機102に対して、互いに異なる周波数チャネルの割り当てを行うことで、子機間での無線信号の干渉を防止することができる。
【0029】
以下において、子機[1]に着目してその動作について説明する。時刻t1において制御部201は、子機[1]が使用する周波数チャネルを11CHに設定する。時刻t2において制御部201は、センサデータに付与するシーケンス番号Seqを初期値の1に設定する。制御部201は、時刻t2から10msecが経過する時刻t3までの期間にセンサ部204を制御してセンサデータを取得し、当該センサデータを含むデータパケットを構築する。制御部201は、シーケンス番号Seq及び子機[1]の識別子Srcをセンサデータに付加した、下記の(1)式で示される、データパケットDataを生成する。
Data=d(Src,Seq) ・・・ (1)
【0030】
制御部201は、データパケットを無線通信路に送出するべく、無線部202を制御する。無線部202は、制御部201による制御の下、データパケットを、時刻t2から時刻t3までの10msecの期間内に複数回に亘り連続的に送信する。無線部202は、11CHを使用してデータパケットを送信する。
【0031】
時刻t3において制御部201は、シーケンス番号Seqを初期値である1から1つインクリメントして2に設定する。制御部201は、時刻t3から10msecが経過する時刻t4までの期間に新たなセンサデータを取得し、新たなセンサデータを含むデータパケットを構築する。無線部202は、制御部201による制御の下、データパケットを、時刻t3から時刻t4までの10msecの期間内に複数回に亘り連続的に送信する。時刻t4以降においても、上記と同様の処理が繰り返される。
【0032】
子機[2]~子機[4]も、それぞれ、子機[1]と同様の処理を実行する。子機[2]は15CHを使用してデータ送信を行い、子機[3]は19CHを使用してデータ送信を行い、子機[4]は23CHを使用してデータ送信を行う。本実施形態に係る無線通信システム100においては、子機[1]~子機[4]の相互間で、データ送信タイミングの同期をとることはなく、子機[1]~[4]は、それぞれ、独立にデータパケットの送信処理を行う。
【0033】
次に、親機101の動作の詳細について説明する。
図4は、親機101の動作を示すシーケンスチャートである。制御部201は、
図4に示すように、子機[1]~子機[4]において使用されている周波数チャネル(11CH、15CH、19CH、23CH)の各々を、所定の順序に従って、1つずつ受信チャネルとして設定する処理を繰り返すことにより、受信チャネルを巡回的に遷移させる。制御部201は、子機[1]~[4]から送信されるデータの更新周期である10msecの間に、子機[1]~子機[4]において使用されている全ての周波数チャネルを、少なくとも1回受信チャネルとして設定する。
【0034】
制御部201は、例えば、時刻t11から時刻t12までの2.5msecの期間において受信チャネルをCH11に設定し、時刻t12から時刻t13までの2.5msecの期間において受信チャネルをCH15に設定し、時刻t13から時刻t14までの2.5msecの期間において受信チャネルをCH19に設定し、時刻t14から時刻t15までの2.5msecの期間において受信チャネルをCH23に設定する。制御部201は、時刻t15以降においても同様に、CH11、CH15、CH19、CH23の順で、受信チャネルを巡回的に遷移させる。
【0035】
無線部202は、受信チャネルが11CHに設定されている2.5msecの期間において、子機[1]から11CHを用いて送信されるデータパケットを受信し、受信チャネルが15CHに設定されている2.5msecの期間において、子機[2]から15CHを用いて送信されるデータパケットを受信し、受信チャネルが19CHに設定されている2.5msecの期間において、子機[3]から19CHを用いて送信されるデータパケットを受信し、受信チャネルが23CHに設定されている2.5msecの期間において、子機[4]から23CHを使用して送信されるデータパケットを受信する。
【0036】
親機101は、同一のシーケンス番号Seq且つ同一の識別子Srcが付与された複数のデータパケット受信した場合には、すなわち、同一のデータパケットを重複して受信した場合には、その重複するデータパケットを破棄する。
【0037】
また、親機101は、子機[1]~子機[4]からデータパケットを受信しても、データパケットを受信したことを示すACKパケットを、子機[1]~子機[4]に送信することはしない。従って、子機[1]~子機[4]は、ACKパケットを受信することはない。すなわち、本実施形態に係る無線通信システム100において、親機101は、受信専用で動作し、子機[1]~子機[4]は、送信専用で動作する。
【0038】
図5は、親機101と子機[1]~子機[4]との間で行われる無線通信の様子を示す図であり、横軸を時間軸としている。子機[1]~子機[4]は、送信専用で動作し、それぞれ、自身に割り当てられた周波数チャネルを用いてデータパケットの送信を行う。子機[1]~子機[4]は、それぞれ、データ更新周期である10msecの期間内において、同一のデータパケットを複数回に亘り連続的に送信する。子機[1]~子機[4]の間で、データパケットの送信タイミングの同期をとることはなく、子機[1]~子機[4]は、それぞれ、独立にデータパケットの送信処理を行う。
【0039】
親機101は、受信専用で動作し、受信チャネルの設定を2.5msec毎に11CH、15CH、19CH、23CHの順で切り替える。これにより、データ更新周期である10msecの期間内に全ての周波数チャネル(11CH、15CH、19CH、23CH)が、受信チャネルとして設定される。
【0040】
子機[1]~子機[4]が連続的にデータ送信を行う送信間隔を2.5msec未満とすることで、親機101は、子機[1]~子機[4]から送信されるデータパケットを、10msecの期間内に、各子機について少なくとも1回ずつ受信することができる。しかしながら、親機101におけるデータの取りこぼしの可能性を考慮して、10msecの期間内に、データパケットが親機101に2回到達可能となるように、子機[1]~子機[4]におけるデータの送信間隔を1.25msec未満とすることが好ましい。
【0041】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る無線通信システム100によれば、複数の子機102(子機[1]~子機[4])が、それぞれ、互いに異なる周波数チャネルを用いて、同一のデータパケットを複数回に亘り連続的に送信し、各子機102(子機[1]~子機[4])から送信されたデータパケットを、親機101が、受信チャネルを順次切り替えて受信する。これにより、子機間での無線信号の干渉を防止することができ、また、データの衝突を回避することができる。また、本実施形態に係る無線通信システム100によれば、受信確認用のACKパケットのやり取りや、CSMA/CA等の従来の衝突回避のための処理が不要となる。従って、センサデータの収集を、単一方向通信で実現することができ、データ収集タイミングが極めて短く且つ定期的にデータを送信しなければいけないといった厳しい時間的制約が課される場合にも対処することができる。また、本実施形態に係る無線通信システム100によれば、親機101と複数の子機102との間、及び複数の子機102相互間で、同期をとる必要がないので、簡便な構成でシステムを構築することができる。
【0042】
[第2の実施形態]
上記した第1の実施形態に係る無線通信システム100における通信方式によれば、親機101と子機102との間で、動作クロック精度の差異及び処理動作遅延の差異等に起因して処理周期にずれが生じ、この処理周期のずれによって、親機101において、子機102から送信されたデータパケットの取りこぼしが発生するおそれがある。
【0043】
図6は、親機101におけるデータの取りこぼしの態様の一例を示す図である。なお、
図6には、親機101と子機[1]との間におけるデータの送受信が示されており、親機101と他の子機[2]~[4]との間のデータの送受信については、図示が省略されている。
【0044】
子機[1]は、時刻t
21から時刻t
22までのデータ更新期間を経て、時刻t
22から時刻t
23までの期間にデータパケットd(Src=1,Seq=1)を送信する。時刻t
21から時刻t
23までの期間(データ更新が開始されてから、データ送信が完了するまでの期間)の期待値は10msecである。しかしながら、クロック精度の影響や、処理時間の揺らぎ等でこの期間が変動する場合ある。
図6には、時刻t
21から時刻t
23までの期間が10msecよりも短くなっている状況が示されている。
【0045】
また、
図6には、親機101において、11CHが受信チャネルとして設定されている2.5msecの期間において、子機[1]では、センサデータの取得及びデータパケットの構築を含むデータ更新処理が行われ、データパケットd(Src=1,Seq=1)の送信が開始される時点において、親機101の受信チャネルが15CHに移行している状況が示されている。この場合、親機101において、データパケットd(Src=1,Seq=1)を受信することができない。
【0046】
本発明の第2の実施形態に係る無線通信システムでは、親機101において、上記したようなデータの取りこぼしの発生を抑制する。
【0047】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る無線通信システムに用いられる親機101及び子機102を構成する無線通信端末装置200Aの構成を示すブロック図である。なお、本実施形態では、親機101及び子機102は、共通の構成を採るものとする。無線通信端末装置200Aは、主制御部201A、無線部202、アンテナ203、センサ部204、インタフェース部205及び受信チャネル制御部206を含んで構成されている。主制御部201Aは、例えば、マイクロコントローラを含んで構成され、無線通信システムのシステム制御を行う。主制御部201Aには、無線部202、センサ部204、インタフェース部205及び受信チャネル制御部206が接続され、無線部202にはアンテナ203が接続されている。
【0048】
センサ部204は、電圧センサ、電流センサ、圧力センサまたは温度センサ等の所定のセンシング処理を行うセンサを含んで構成されている。無線通信端末装置200Aが、子機102として機能する場合、主制御部201Aは、センサ部204を制御することでセンサデータを取得し、取得したセンサデータを格納したデータパケットを、無線部202を介して無線通信路に送出する。無線通信端末装置200Aが、親機101として機能する場合、主制御部201Aは、受信チャネル制御部206から通知されるタイミングに従って、無線部202における受信処理を制御し、受信したデータパケットに含まれるセンサデータを、インタフェース部205を介してセンタコンピュータ103に出力する。受信チャネル制御部206は、無線部202での受信状況に応じて、主制御部201Aに対して通信チャネルの切り替えタイミングを指示する。
【0049】
なお、親機101と子機102の各々とが互いに異なる構成を有していてもよい。例えば、無線通信端末装置200Aが親機101として機能する場合、
図6に示す構成からセンサ部204を削減してもよい。また、無線通信端末装置200Aが子機102として機能する場合、
図6に示す構成からインタフェース部205及び受信チャネル制御部206を削減してもよい。
【0050】
本実施形態に係る無線通信システムにおいて子機102の動作は、第1の実施形態に係る無線通信システム100における子機102の動作と同様であるので、説明は省略する。以下に、親機101の動作について詳細に説明する。
【0051】
第1の実施形態の場合と同様、主制御部201Aは、子機102の各々に割り当てられている周波数チャネル(11CH、15CH、19CH、23CH)の各々を、所定の順序に従って1つずつ受信チャネルとして設定する処理を繰り返すことにより、受信チャネルを巡回的に遷移させる。
【0052】
受信チャネルの切り替えのタイミングは、無線部202におけるパケットデータの受信の有無に応じて、受信チャネル制御部206から通知される。ここで、ある周波数チャネルが受信チャネルとして設定されてから次の周波数チャネルが受信チャネルとして設定されるまでの期間(以下、保持期間という)の標準値は、例えば2msecとされている。
【0053】
受信チャネル制御部206は、各周波数チャネルの標準の保持期間(2msec)内に、少なくとも1つのデータパケットを正常に受信した場合には、受信チャネルを当該周波数チャネルに切り替えた時点から2msecが経過した時点で、受信チャネルの切り替え指示を主制御部201Aに送信する。主制御部201Aは、受信チャネル制御部206から通知される受信チャネルの切り替え指示に応じて、受信チャネルの設定を切り替える。この場合、当該周波数チャネルの保持期間は、標準値である2msecとなる。
【0054】
例えば、受信チャネル制御部206は、11CHの標準の保持期間内に、少なくとも1つのデータパケットを正常に受信した場合には、受信チャネルを11CHに切り替えた時点から2msecが経過した時点で、受信チャネルの切り替え指示を主制御部201Aに送信する。主制御部201Aは、これに応じて、受信チャネルの設定を11CHから15CHに切り替える。
【0055】
一方、受信チャネル制御部206は、各周波数チャネルの標準の保持期間(2msec)内に、データパケットを1つも受信しない場合には、当該周波数チャネルの保持期間を延長する。延長期間は、一例として、2msecとされている。すなわち、受信チャネル制御部206は、標準の保持期間(2msec)内に、データパケットを1つも受信しない場合には、直近の受信チャネルの切り替え後4msecが経過した時点で、受信チャネルの切り替え指示を主制御部201Aに送信する。主制御部201Aは、受信チャネル制御部206から通知される受信チャネルの切り替え指示に応じて受信チャネルの設定を切り替える。この場合、当該周波数チャネルの保持期間は4msecとなる。
【0056】
図8は、親機101において実施される受信チャネルの切り替え処理の一例を示す図であり、横軸を時間軸としている。
【0057】
図8には、時刻t
31から時刻t
36までの10msecの期間において、11CHから23CHまでの各周波数チャネルについて、標準の保持期間(2.0msec)内に、1つ以上のデータパケットが、親機101において正常に受信された場合が示されている。
【0058】
受信チャネル制御部206は、受信チャネルとして11CHが設定される時刻t31から時刻t32までの2msecの標準の保持期間内に、データパケットを受信すると、11CHへの切り替え後2msecが経過した時刻t32に、受信チャネルの切り替え指示を主制御部201Aに送信する。主制御部201Aは、これに応じて受信チャネルを、15CHに切り替える。
【0059】
受信チャネル制御部206は、受信チャネルとして15CHが設定される時刻t32から時刻t33までの2msecの標準の保持期間内に、データパケットを受信すると、15CHへの切り替え後2msecが経過した時刻t33に、受信チャネルの切り替え指示を主制御部201Aに送信する。主制御部201Aは、これに応じて受信チャネルを、19CHに切り替える。
【0060】
受信チャネル制御部206は、受信チャネルとして19CHが設定される時刻t33から時刻t34までの2msecの標準の保持期間内に、データパケットを受信すると、19CHへの切り替え後2msecが経過した時刻t34に、受信チャネルの切り替え指示を主制御部201Aに送信する。主制御部201Aは、これに応じて受信チャネルを、23CHに切り替える。
【0061】
受信チャネル制御部206は、受信チャネルとして23CHが設定される時刻t34から時刻t35までの2msecの標準の保持期間内に、データパケットを受信すると、時刻t35の時点で、全ての周波数チャネルについてデータ受信が完了することになる。本実施形態では、時刻t35から時刻t36までの残りの2msecの期間においては、直前で設定された23CHを便宜上継続して設定している。
【0062】
このように、各周波数チャネルについて、標準の保持期間内に、1つ以上のデータパケットが、親機101において正常に受信された場合には、各周波数チャネルの保持期間は延長されず、受信チャネルが2.0msec毎に切り替わる。
【0063】
また、
図8には、時刻t
36から時刻t
41までの10msecの期間において、15CHについて標準の保持期間内に、データが受信されない場合が示されている。
【0064】
受信チャネル制御部206は、受信チャネルとして15CHが設定される時刻t37から時刻t38までの標準の保持期間(2msec)内に、データパケットを受信しない場合には、15CHの保持期間を2msec延長する。すなわち、受信チャネル制御部206は、15CHへの切り替え後4msecが経過した時刻t39に、データパケットを受信したか否かにかかわらず、受信チャネルの切り替え指示を主制御部201Aに送信する。主制御部201Aは、これに応じて受信チャネルを、19CHに切り替える。
【0065】
このように、本実施形態に係る無線通信システムによれば、各周波数チャネルについて割り当てられた2msecの標準の保持期間内にデータパケットを受信しない場合には、当該受信チャネルの保持期間を延長する。これにより、当該周波数チャネルにおいてデータパケットを受信できる確率が上がるので、データの取りこぼしの発生を抑制することができる。これにより、親機101と子機102との間で、動作クロック精度の差異及び処理動作遅延の差異等に起因して処理周期にずれが生じている場合でも、データ収集をより確実に行うことが可能となる。
【0066】
なお、本実施形態では、4つの周波数チャネルの標準の保持期間として2msecを割り当てるため、10msecのうち、2msecが余剰となり、この余剰となる2msecを、1つの周波数チャネルについての保持期間の延長期間に割り当てる場合を例示したが、この態様に限定されるものではない。例えば、1つの周波数チャネルについての延長期間を1msecとし、他の1つの周波数チャネルについても1msecの延長期間の割り当てが可能となるようにしてもよい。また、延長期間を固定期間とするのではなく、延長期間内にデータパケットを受信した場合には、受信チャネルを、即時に次の周波数チャネルに切り替えるようにしてもよい。この場合においても、余剰期間を他の周波数チャネルの延長期間として確保することが可能となる。
【0067】
上記の各実施形態においては、4台の子機102を含む無線通信システムを例示したが、使用可能な周波数チャネルの数に応じて、子機102の台数を増減することが可能である。また、上記の各実施形態では、4台の子機102が、それぞれ、11CH、15CH、19CH、23CHを使用する場合を例示したが、互いに干渉しない周波数チャネルの組み合わせであれば、使用する周波数チャネルを適宜変更することが可能である。上記の各実施形態では、隣接チャネルからの影響を考慮し、子機102間で、1チャネル以上の間隔をあけて周波数チャネルを割り当てることとしたが、この場合、例えば、13CH、17CH、21CH、25CHを用いる、もう1つの無線通信システムを構築することが可能である。また、上記の各実施形態では、子機102が取得するセンサデータの更新間隔を10msecとし、親機101における受信チャネルの切り替え間隔を、2.5msecまたは2.0msecとする場合を例示したが、この態様に限定されるものではない。センサデータの更新間隔は、所望の期間に設定することが可能であり、受信チャネルの切り替え間隔は、センサデータの更新間隔及び子機の台数等に応じて適宜設定することが可能である。
【符号の説明】
【0068】
100 無線通信システム
101 親機
102 子機
200 無線通信端末装置
201 制御部
201A 主制御部
202 無線部
203 アンテナ
204 センサ部
205 インタフェース部
206 受信チャネル制御部