(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】外用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/455 20060101AFI20220613BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220613BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20220613BHJP
A61K 31/355 20060101ALI20220613BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220613BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20220613BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220613BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
A61K31/455
A61K9/08
A61K31/192
A61K31/355
A61K47/10
A61P25/04
A61P29/00
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2017253295
(22)【出願日】2017-12-28
【審査請求日】2020-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 浩明
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-200909(JP,A)
【文献】国際公開第2017/111167(WO,A1)
【文献】特開2014-185132(JP,A)
【文献】特開2015-189760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/192
A61K 31/355
A61K 31/455
A61P 43/00
A61P 29/00
A61P 25/04
A61K 9/08
A61K 47/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メントール、
ロキソプロフェン及び/又はその薬学的に許容される塩、
トコフェロール
及び/又はその誘導体、
ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β-ブトキシエチルエステル及びニコチン酸メチルエステルからなる群より選択される少なくとも一種のニコチン酸エステル誘導体、
エタノール、並びに
水
を含有
し、
トコフェロールの前記誘導体が、酢酸トコフェロール、トコフェロールニコチン酸エステル、カルボン酸とトコフェロールとのエステル体、及びリン酸とトコフェロールとのジエステル体からなる群より選択される少なくとも一種のトコフェロール誘導体であり、
エタノールを組成物全体に対して60~90質量%含有する、外用組成物。
【請求項2】
前記ロキソプロフェンの薬学的に許容される塩が、ロキソプロフェンナトリウム水和物である、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項3】
前記トコフェロール類が、酢酸トコフェロールである、請求項1又は2に記載の外用組成物。
【請求項4】
前記ニコチン酸エステル誘導体が、ニコチン酸ベンジルエステルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の外用組成物。
【請求項5】
鎮痛用途で用いられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の外用組成物。
【請求項6】
液剤である、請求項1~5のいずれか一項に記載の外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピオン酸系非ステロイド性解熱鎮痛消炎剤(NSAID)である、ロキソプロフェン及びその薬学的に許容される塩(本明細書において、これらを総称して「ロキソプロフェン類」ということがある。)は、その他のNSAIDと同様、プロスタグランジン生合成の抑制作用に基づく解熱、鎮痛及び消炎作用を有する。
【0003】
ロキソプロフェン類を、解熱、鎮痛及び/又は消炎作用の有効成分として配合した外用剤が種々開発されている。また、トコフェロール類(例えば、トコフェロール酢酸エステル)及びニコチン酸のエステル誘導体(例えば、ニコチン酸ベンジルエステル)等をこれらの外用剤に配合することも提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、外用組成物において、ロキソプロフェン類とトコフェロール類とニコチン酸エステル誘導体とを有効成分として配合したうえで、これらを低級アルコールと水とを含む溶媒と混合すると、白濁が生じるという課題を見出した。本発明は、ロキソプロフェン類、トコフェロール類、ニコチン酸エステル誘導体、炭素数1~4のアルコール及び水を含有する外用組成物であって、白濁が抑制された外用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行ったところ、ロキソプロフェン類、トコフェロール類、ニコチン酸エステル誘導体、炭素数1~4のアルコール及び水を含有する組成物において、メントールを含有させることにより、白濁が抑制されることを見出した。本発明はかかる知見に基づいてさらに検討を加えることにより完成したものであり、以下の態様を含む。
【0007】
(I)外用組成物
(I-1)
メントール、
ロキソプロフェン及び/又はその薬学的に許容される塩、
トコフェロール類、
ニコチン酸エステル誘導体、
炭素数1~4のアルコール、並びに
水
を含有する、外用組成物。
(I-2)
前記ロキソプロフェンの薬学的に許容される塩が、ロキソプロフェンナトリウム水和物である、(I-1)に記載の外用組成物。
(I-3)
前記トコフェロール類が、酢酸トコフェロールである、(I-1)又は(I-2)に記載の外用組成物。
(I-4)
前記ニコチン酸エステル誘導体が、ニコチン酸ベンジルエステルである、(I-1)~(I-3)のいずれか一項に記載の外用組成物。
(I-5)
鎮痛用途で用いられる、(I-1)~(I-4)のいずれか一項に記載の外用組成物。
(I-6)
液剤である、(I-1)~(I-5)のいずれか一項に記載の外用組成物。
【0008】
(II)ロキソプロフェン類、トコフェロール類、ニコチン酸エステル誘導体、炭素数1~4のアルコール及び水を含有する組成物における白濁の抑制方法
(II-1)
ロキソプロフェン類、トコフェロール類、ニコチン酸エステル誘導体、炭素数1~4のアルコール及び水を含有する組成物における白濁を抑制する方法であって、
メントールを該組成物に含ませる工程を含む方法。
(II-2)
前記ロキソプロフェンの薬学的に許容される塩が、ロキソプロフェンナトリウム水和物である、(II-1)に記載の方法。
(II-3)
前記トコフェロール類が、酢酸トコフェロールである、(II-1)又は(II-2)に記載の方法。
(II-4)
前記ニコチン酸エステル誘導体が、ニコチン酸ベンジルエステルである、(II-1)~(II-3)のいずれか一項に記載の方法。
(II-5)
前記組成物が、液剤である、(II-1)~(II-4)のいずれか一項に記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロキソプロフェン類、トコフェロール類、ニコチン酸エステル誘導体、炭素数1~4のアルコール及び水を含有する外用組成物であって、白濁が抑制された外用組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.外用組成物及びその調製方法
本発明の外用組成物は、
メントール、
ロキソプロフェン及び/又はその薬学的に許容される塩(ロキソプロフェン類)、
トコフェロール類、
ニコチン酸エステル誘導体、
炭素数1~4のアルコール、並びに
水
を含有する。
【0011】
1.1.メントール
メントールを含有していることにより、本発明の外用組成物は、白濁が抑制されたものとなる。また、メントールは清涼感を外用組成物に与えることができる。
【0012】
本発明の外用組成物に含まれるメントールとしては、特に限定されず、l-メントール、d-メントール及びdl-メントールのいずれであってもよく、これら一種又は二種以上であってもよい。
【0013】
メントールの含有量は、白濁が抑制されるという本発明の効果と、清涼剤としての効能とを考慮して適宜設定することができ、特に制限されない。メントールの含有量は、本発明の外用組成物全体に対して総量で、例えば、0.1~20質量%とすることができる。白濁の抑制効果の観点では、メントールの含有量は、本発明の外用組成物全体に対して総量で、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上である。また、十分な清涼作用が得られる最小量という観点では、メントールの含有量は、本発明の外用組成物全体に対して総量で、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0014】
なお、メントールの割合は、外用組成物中に含まれるロキソプロフェン類、トコフェロール類及びニコチン酸エステル誘導体の合計に対する割合を考慮して設定することもできる。具体的には、外用組成物中に含まれるロキソプロフェン類、トコフェロール類及びニコチン酸エステル誘導体の合計1質量部に対して、メントールの割合が通常0.1~10質量部の範囲になるように設定され、好ましくは0.5~8質量部、さらに好ましくは0.8~5質量部、さらにより好ましくは1~3質量部である。
【0015】
1.2.ロキソプロフェン及びその薬学的に許容される塩(ロキソプロフェン類)
本発明の外用組成物は、ロキソプロフェン及び/又はその薬学的に許容される塩を含有する。
【0016】
ロキソプロフェン(2-[4-(2-オキソシクロペンチルメチル)フェニル]プロピオン酸)は、解熱、鎮痛及び消炎作用を有するプロピオン酸系非ステロイド性解熱鎮痛消炎剤(NSAID)である。
【0017】
本発明ではロキソプロフェンそのものの他、その薬学的に許容される塩も使用することができる。かかる塩には、ロキソプロフェン又はその薬学上許容される塩と、水又はアルコール等との溶媒和物も含まれる。これらは公知の化合物であり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることもできる。
【0018】
本発明において、ロキソプロフェン類としては、ロキソプロフェンナトリウム水和物が好ましい。
【0019】
本発明の外用組成物は、ロキソプロフェン類としては、1種を単独で含んでいてもよいし、複数種を組み合わせて含んでいてもよい。
【0020】
ロキソプロフェン類の含有量は、本発明の効果と、解熱、鎮痛及び消炎作用とを考慮して適宜設定することができ、特に制限されない。ロキソプロフェン類の含有量は、本発明の外用組成物全体に対して総量で、ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で、例えば、0.1~20質量%とすることができる。ロキソプロフェン類の含有量が組成物全体に対して総量で、ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で、0.1質量%以上であることにより十分な解熱、鎮痛及び消炎作用が得られる。この観点では、ロキソプロフェン類の含有量が組成物全体に対して総量で、ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で、0.2質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましい。また、十分な解熱、鎮痛及び消炎作用が得られる最小量という観点では、ロキソプロフェン類の含有量は、本発明の外用組成物全体に対して総量で、ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0021】
1.3.トコフェロール類
本発明の外用組成物は、血行促進成分としてトコフェロール類を含有する。
【0022】
トコフェロール類としては、特に限定されず、誘導体を含めて幅広く使用できる。トコフェロール自体の種類としては、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール及びδ-トコフェロールのいずれであってもよいが、α-トコフェロールが好ましい。
【0023】
トコフェロールの誘導体としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、酢酸、ニコチン酸、コハク酸等のカルボン酸とのエステル体、リン酸とのジエステル体等が挙げられる。これらのトコフェロールの誘導体の中でも、好ましくはカルボン酸とのエステル体、更に好ましくは酢酸トコフェロール(トコフェロール酢酸エステル)が挙げられる。
【0024】
本発明の外用組成物は、トコフェロール類を1種単独で含んでいてもよいし、複数種を組み合わせて含んでいてもよい。
【0025】
本発明におけるトコフェロール類の含有量は、本発明の効果と血行促進作用とを考慮して適宜設定することができ、特に制限されない。トコフェロール類の含有量は、本発明の外用組成物全体に対して総量で、例えば0.01~0.5質量%とすることができる。トコフェロール類の含有量が組成物全体に対して総量で0.01質量%以上であることにより十分な血行促進効果が得られる。この観点では、トコフェロール類の含有量が組成物全体に対して総量で0.05質量%以上であることが好ましい。また、トコフェロール類の含有量が組成物全体に対して総量で0.5質量%以下であることにより、白濁が顕著に抑制される。この観点では、トコフェロール類の含有量が組成物全体に対して総量で0.3質量%以下であることが好ましい。
【0026】
1.4.ニコチン酸のエステル誘導体
本発明の外用組成物は、血行促進成分としてニコチン酸のエステル誘導体を含有する。
【0027】
ニコチン酸のエステル誘導体としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されず、幅広く使用できる。例えば、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β-ブトキシエチルエステル及びニコチン酸メチルエステル等が挙げられる。これらのニコチン酸のエステル誘導体は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。ニコチン酸のエステル誘導体の中でも、ニコチン酸ベンジルエステルが好ましい。
【0028】
本発明におけるニコチン酸エステル誘導体の含有量は、本発明の効果と血行促進作用の点で適宜設定することができ、特に制限されない。ニコチン酸エステル誘導体の含有量は、本発明の外用組成物全体に対して総量で、例えば0.005~0.1質量%とすることができる。ニコチン酸エステル誘導体の含有量が組成物全体に対して総量で0.005質量%以上であることにより、十分な血行促進効果が得られる。ニコチン酸エステル誘導体の含有量が組成物全体に対して総量で0.1質量%以下であることにより、白濁が顕著に抑制される。この観点では、ニコチン酸エステル誘導体の含有量が組成物全体に対して総量で0.05質量%以下であれば好ましい。
【0029】
1.5.炭素数1~4のアルコール(低級アルコール)
低級アルコールは、特に限定されず、上記の成分に対して有効な基剤として機能するものであれば幅広く使用できる。
【0030】
低級アルコールとしては、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール及びイソプロピルアルコール等を挙げることができ、エタノールが好ましい。
【0031】
本発明の外用組成物は、低級アルコールを、組成物全体に対して、好ましくは40~90質量%含有する。具体的には、本発明の外用組成物は、低級アルコールとしてエタノールを含む場合、エタノールを、好ましくは50質量%以上、より好ましくは50~90質量%、さらに好ましくは60~90質量%、さらにより好ましくは65~80質量%含む。また、本発明の外用組成物は、低級アルコールとしてイソプロパノールを含む場合、イソプロパノールを、好ましくは40質量%以上、より好ましくは40~90質量%、さらに好ましくは50~90質量%、さらにより好ましくは50~80質量%含む。
【0032】
1.6.その他の成分
本発明の外用組成物には、本発明の効果を妨げない限り、上記成分の他に、別の血行促進成分を配合することもできる。
別の血行促進成分としては、例えば、カプサイシノイド等が挙げられる。
【0033】
カプサイシノイドとしては、N-アシルワニリルアミドを使用できる。
【0034】
N-アシルワニリルアミドにおけるアシル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。また、N-アシルワニリルアミドにおけるアシル基の炭素数については、特に制限されず、例えば5~15、好ましくは6~11等とすることができる。
【0035】
N-アシルワニリルアミドとして、具体的には、ノナン酸バニリルアミド並びに;カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン及びホモジヒドロカプサイシン等のカプサイシン類等が挙げられる。
【0036】
本発明において、カプサイシノイドは、精製品を使用してもよいが、カプサイシノイド以外に他の成分が含まれている混合物を使用してもよい。このようなカプサイシノイドを含む混合物としては、具体的には、トウガラシ抽出物(トウガラシエキス)、トウガラシチンキ及びトウガラシ末等のトウガラシ類が挙げられる。
【0037】
トウガラシ抽出物としては、特に限定されず、幅広く使用できる。トウガラシ抽出物として、単独種のトウガラシ抽出物を使用してもよいし、複数種のトウガラシ抽出物を組み合わせて使用してもよい。例えば、トウガラシ抽出物として、トウガラシのアルコール抽出物を使用できる。トウガラシのアルコール抽出物としては、例えば、トウガラシのエタノール抽出物を使用できる。
【0038】
本発明において、カプサイシノイドとしては、1種のカプサイシノイドを単独で使用してもよく、また、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
カプサイシノイドの中でも、組成物における白濁の抑制効果がより得られやすいという観点から、トウガラシ抽出物及び/又はノナン酸バニリルアミドが好ましい。
【0040】
本発明の外用組成物には、本発明の効果を妨げない限り、上記成分の他に、さらなる清涼化剤を配合することもできる。
【0041】
かかる清涼化剤としては、d-カンフル、dl-カンフル、d-ボルネオール、dl-ボルネオール、メンタン、乳酸メンチル、ゲラニオール、ユーカリ油、テルペン油、ベルガモット油、ウイキョウ油、ハッカ油(ペパーミント)、ローズ油及びクールミント等が挙げられる。これらの清涼化剤は、1種単独で使用しても、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0042】
本発明の外用組成物に含まれる清涼化剤は、好ましくは、d-ボルネオール、dl-ボルネオール、メンタン、ハッカ油(ペパーミント)及びクールミントである。
【0043】
本発明の外用組成物には、本発明の効果を妨げない限り、上記成分の他に、薬効補助剤を配合することもできる。
【0044】
かかる薬効補助剤としては、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸アンモニウム、グリチルリチン酸ステアリル等の抗炎症剤や皮膚保護剤;ジフェニルイミダゾール、ジフェンヒドラミン及びその薬学的に許容される塩、マレイン酸クロルフェニラミン等の抗ヒスタミン剤;アルニカチンキ、オウバクエキス、サンシシエキス、セイヨウトチノキエキス、ロートエキス、ベラドンナエキス、トウキエキス、シコンエキス、サンショウエキス等の生薬等が挙げられる。
【0045】
本発明の外用組成物には、上記の成分の他、併用可能な活性成分、pH調節剤、防腐剤、保存剤、酸化防止剤、安定化剤等の通常の外用組成物に使用される添加剤を適宜配合することができる。
【0046】
1.6.形態および製造方法
本発明の外用組成物は、その形態を特に制限するものではないが、好ましくは液剤(ローション剤、スプレー剤、エアゾール剤、及び乳液剤を含む)である。
【0047】
本発明の外用組成物は、かかる製剤形態に応じて、定法に従って調製することができる。例えば、ロキソプロフェン類、トコフェロール類、ニコチン酸エステル誘導体、並びに必要に応じてその他の成分を、低級アルコール及び水を含む、下記に説明するような外用製剤に用いられる汎用の基剤と混合して溶解又は分散させ、所望のpHに調整する方法を挙げることができる。
【0048】
なお、pHとしては皮膚に悪影響のない範囲であれば制限されず、通常pH3.5~8.5、好ましくはpH4~8、より好ましくは4~7.5になるように調整される。
【0049】
例えば、本発明の外用組成物を液剤として調製する場合は、ロキソプロフェン類と、トコフェロール類と、ニコチン酸エステル誘導体と、さらに必要に応じてその他の成分とを、低級アルコール及び水を主成分とする基剤と混合することにより調製できる。基剤には、グリコール類、水及び乳化剤から選択される少なくとも一種を配合することができる。
【0050】
グリコール類としては、特に限定されず、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、オクタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、D-ソルビトール等が挙げられる。グリセリン、プロピレングリコール及び1,3-ブチレングリコールが好ましい。グリコール類は、一種を単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
乳化剤としては、特に限定されず、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシル、ラウロマクロゴール等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。乳化剤は、一種を単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
本発明の外用組成物は、好ましくは塗布形態の外用剤として調製され、局所的に外用投与することができる。
【0053】
本発明の外用組成物の投与量は、治療すべき症状の程度により左右されるが、中に含まれている有効成分であるロキソプロフェン類、トコフェロール類及びニコチン酸エステル誘導体の1日あたりの合計塗布投与量が100mg以下となる量であることが望ましい。
【0054】
本発明の外用組成物は、好ましくは医薬組成物である。本発明の医薬組成物である外用組成物は、外用消炎鎮痛剤として、肩こりに伴う肩の痛み、関節痛、腰痛、筋肉痛、腱鞘炎(手・手首の痛み)、肘の痛み(テニス肘等)、打撲痛、ねんざ痛、骨折痛、神経痛等の痛みに対して、鎮痛を目的とする好適に使用することができる。
【0055】
2.ロキソプロフェン類、トコフェロール類、ニコチン酸エステル誘導体、炭素数1~4のアルコール及び水を含有する組成物における白濁の抑制方法
本発明の方法は、ロキソプロフェン類、トコフェロール類、ニコチン酸エステル誘導体、炭素数1~4のアルコール及び水を含有する組成物における白濁を抑制する方法であって、
メントールを該組成物に含ませる工程
を含む方法である。
【0056】
メントール、ロキソプロフェン類、トコフェロール類及びニコチン酸エステル誘導体をはじめ、かかる組成物に配合される各成分については、前記1.の本発明の外用組成物についての説明の通りである。
【0057】
メントールを組成物に含ませる工程は、特に限定されず、前記1.の本発明の外用組成物についての説明の通り、各成分を混合することによって行うことができる。成分の混合の順番は特に限定されない。
【0058】
メントールを組成物に含ませる工程において、出発原料となる組成物は、好ましくは、メントールを、0.5質量%未満、好ましくは0.3質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満、さらに好ましくは0.05質量%未満、さらにより好ましくは0.01質量%未満、最も好ましくは0.001質量%未満含む。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。なお、表中において単位は組成物100g当たりの質量(g)(すなわち質量%)を表わす。
【0060】
表1(単位は質量%)に記載する通り、各成分を各分量、量り取り、攪拌して溶解させることにより液状組成物を調製した(比較例1及び実施例1)。
【0061】
【0062】
得られた各組成物を、ガラス瓶(M-225、柏洋硝子株式会社製)に入れて、白濁の有無を観察した。白濁について、「あり」及び「なし」の2段階でそれぞれ評価を行った。
【0063】
表1に示す通り、ロキソプロフェンナトリウム水和物、酢酸トコフェロール及びニコチン酸ベンジルエステルを、エタノールと水とを混合した溶媒に溶解すると、わずかに白濁するが(比較例1)、そこにl-メントールを溶解させると白濁が消失した(実施例1)。