(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】トモシンセシス撮影装置とその作動方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/02 20060101AFI20220613BHJP
A61B 6/00 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
A61B6/02 300F
A61B6/00 320M
A61B6/00 300A
A61B6/00 330Z
(21)【出願番号】P 2018182568
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2020-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 優
(72)【発明者】
【氏名】松浦 正佳
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-023329(JP,A)
【文献】特表2016-501080(JP,A)
【文献】特表2016-503721(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0043712(US,A1)
【文献】特開2011-036399(JP,A)
【文献】特開2013-230404(JP,A)
【文献】特開2014-166264(JP,A)
【文献】特開2017-164426(JP,A)
【文献】特開2012-050476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を透過した放射線を検出する放射線検出器であり、前記被写体の投影画像を撮像する撮像面を有する放射線検出器と、
前記撮像面に対する前記放射線の照射角度が異なる複数の位置に配された複数の第1放射線管、および、前記第1放射線管とは異なる第2放射線管で構成される放射線源と、
前記放射線検出器および前記放射線源の動作を制御する制御部であり、前記被写体に対する前記照射角度が異なる複数の投影画像を撮影するトモシンセシス撮影に先立ち、前記第2放射線管を用いて、前記トモシンセシス撮影の前記放射線の照射条件を設定するためのプレ撮影を行わせ、かつ前記複数の第1放射線管を用いて前記トモシンセシス撮影を行わせる制御部と、
を備え、
前記第2放射線管の管径は、前記複数の第1放射線管の各々の管径よりも小さいトモシンセシス撮影装置。
【請求項2】
前記複数の位置は、各位置における前記放射線の焦点が、直線状または円弧状に、等しい間隔で並ぶ設定とされている請求項1に記載のトモシンセシス撮影装置。
【請求項3】
前記複数の第1放射線管のうちの少なくとも1つは、前記焦点を1つ有する請求項2に記載のトモシンセシス撮影装置。
【請求項4】
前記複数の第1放射線管のうちの少なくとも1つは、前記焦点を複数有する請求項2または3に記載のトモシンセシス撮影装置。
【請求項5】
前記第2放射線管は、前記複数の位置に対して、前記放射線を照射する側とは反対側の、後方にオフセットした位置に配されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載のトモシンセシス撮影装置。
【請求項6】
前記複数の位置は、各位置における前記放射線の焦点が、直線状または円弧状に並ぶ設定とされており、
前記第2放射線管は、前記複数の位置のうちの両端の位置で規定される前記トモシンセシス撮影の最大スキャン角度内の位置に配されている請求項1ないし
5のいずれか1項に記載のトモシンセシス撮影装置。
【請求項7】
前記第2放射線管は、前記最大スキャン角度内の位置であって、前記最大スキャン角度の中心に対応する位置に配されている請求項
6に記載のトモシンセシス撮影装置。
【請求項8】
前記複数の位置は、各位置における前記放射線の焦点が、直線状または円弧状に並ぶ設定とされており、
前記第2放射線管は、前記複数の位置のうちの両端の位置で規定される前記トモシンセシス撮影の最大スキャン角度外の位置に配されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載のトモシンセシス撮影装置。
【請求項9】
請求項2ないし4のいずれか1項を引用する請求項
8に記載のトモシンセシス撮影装置において、
前記第2放射線管は、前記最大スキャン角度外の位置であって、前記両端の位置のうちのいずれか一方から前記間隔以下の距離離れた位置に配されているトモシンセシス撮影装置。
【請求項10】
前記放射線源は、前記第1放射線管を収容する第1ハウジングと、
前記第2放射線管を収容する第2ハウジングとを有し、
前記第2ハウジングは交換可能である請求項1ないし
9のいずれか1項に記載のトモシンセシス撮影装置。
【請求項11】
前記放射線源を収容する線源収容部には、前記第2ハウジングを交換可能に収容する収容空間と、
前記収容空間を覆う開閉可能な蓋とが設けられている請求項
10に記載のトモシンセシス撮影装置。
【請求項12】
前記第1放射線管および前記第2放射線管は、電子を放出する陰極と、
前記電子が衝突することで前記放射線を発する陽極とを有する請求項1ないし
11のいずれか1項に記載のトモシンセシス撮影装置。
【請求項13】
前記陽極は固定陽極である請求項
12に記載のトモシンセシス撮影装置。
【請求項14】
前記陰極は、電界放出現象を利用して電子線を放出する電子放出源を有する電界放出型である請求項
12または
13に記載のトモシンセシス撮影装置。
【請求項15】
前記被写体を乳房とする乳房撮影装置である請求項1ないし
14のいずれか1項に記載のトモシンセシス撮影装置。
【請求項16】
被写体を透過した放射線を検出する放射線検出器であり、前記被写体の投影画像を撮像する撮像面を有する放射線検出器を備えるトモシンセシス撮影装置の作動方法であって、
前記撮像面に対する前記放射線の照射角度が異なる複数の位置に配された複数の第1放射線管、および、前記第1放射線管とは異なる第2放射線管で構成される放射線源を用い、
前記被写体に対する前記照射角度が異なる複数の投影画像を撮影するトモシンセシス撮影に先立ち、前記第2放射線管を用いて、前記トモシンセシス撮影の前記放射線の照射条件を設定するためのプレ撮影を行わせるプレ撮影制御ステップと、
前記複数の第1放射線管を用いて前記トモシンセシス撮影を行わせるトモシンセシス撮影制御ステップと、
を備え、
前記第2放射線管の管径は、前記複数の第1放射線管の各々の管径よりも小さいトモシンセシス撮影装置の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、トモシンセシス撮影装置とその作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線検出器に対して放射線源を複数の位置に移動させ、各位置において放射線源から放射線を照射するトモシンセシス撮影を行うトモシンセシス撮影装置が知られている(特許文献1参照)。放射線源が移動される複数の位置は、各位置における放射線の焦点が、例えば円弧状に、等しい間隔で並ぶ設定とされている。こうしたトモシンセシス撮影により、放射線検出器の撮像面に対して異なる複数の照射角度で放射線が照射され、被写体に対する放射線の照射角度が異なる複数の投影画像が撮像される。そして、この複数の投影画像に基づいて、被写体の任意の断層面における断層画像が生成される。
【0003】
特許文献1に記載のトモシンセシス撮影装置は、被写体が乳房である乳房撮影装置である。そして、放射線源は1つの焦点を有する1つの放射線管で構成され、この1つの放射線管で構成された放射線源が各位置に移動される。段落[0021]、[0022]には、トモシンセシス撮影に先立って、トモシンセシス撮影よりも低い線量かつ短い照射時間でプレ撮影を行い、プレ撮影で得られた画像に基づいて、トモシンセシス撮影の放射線の照射条件を設定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のトモシンセシス撮影装置のように、従来のトモシンセシス撮影装置では、1つの放射線管で構成される放射線源が各位置に移動される。このため、撮影時間が比較的長くなり被検者に負担が掛かる、という問題があった。
【0006】
そこで、本発明者らは、複数の放射線管で構成される放射線源を備えるトモシンセシス撮影装置を検討している。しかしながら、このように放射線源を複数の放射線管で構成することで、従来の1つの放射線管で構成された放射線源では生じなかった、プレ撮影に関する以下の問題が見出された。
【0007】
すなわち、複数の放射線管のうちの1つを、プレ撮影とトモシンセシス撮影とで兼用するとした場合、兼用する1つの放射線管に負荷が集中して、性能の劣化が他の放射線管よりも早まってしまう、という問題である。
【0008】
本開示の技術は、放射線源を複数の放射線管で構成して、トモシンセシス撮影の放射線の照射条件を設定するためのプレ撮影を行う場合に、1つの放射線管への負荷の集中を避けることが可能なトモシンセシス撮影装置とその作動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本開示のトモシンセシス撮影装置は、被写体を透過した放射線を検出する放射線検出器であり、被写体の投影画像を撮像する撮像面を有する放射線検出器と、撮像面に対する放射線の照射角度が異なる複数の位置に配された複数の第1放射線管、および、第1放射線管とは異なる第2放射線管で構成される放射線源と、放射線検出器および放射線源の動作を制御する制御部であり、被写体に対する照射角度が異なる複数の投影画像を撮影するトモシンセシス撮影に先立ち、第2放射線管を用いて、トモシンセシス撮影の放射線の照射条件を設定するためのプレ撮影を行わせ、かつ複数の第1放射線管を用いてトモシンセシス撮影を行わせる制御部と、を備える。
【0010】
複数の位置は、各位置における放射線の焦点が、直線状または円弧状に、等しい間隔で並ぶ設定とされていることが好ましい。
【0011】
複数の第1放射線管のうちの少なくとも1つは、焦点を1つ有することが好ましい。または、複数の第1放射線管のうちの少なくとも1つは、焦点を複数有することが好ましい。
【0012】
第2放射線管は、複数の位置に対して、放射線を照射する側とは反対側の、後方にオフセットした位置に配されていることが好ましい。
【0013】
第2放射線管の管径は、複数の第1放射線管の各々の管径よりも小さいことが好ましい。
【0014】
第2放射線管は、複数の位置のうちの両端の位置で規定されるトモシンセシス撮影の最大スキャン角度内の位置に配されていることが好ましい。この場合、第2放射線管は、最大スキャン角度内の位置であって、最大スキャン角度の中心に対応する位置に配されていることが好ましい。
【0015】
第2放射線管は、複数の位置のうちの両端の位置で規定されるトモシンセシス撮影の最大スキャン角度外の位置に配されていることが好ましい。この場合、第2放射線管は、最大スキャン角度外の位置であって、両端の位置のうちのいずれか一方から間隔以下の距離離れた位置に配されていることが好ましい。
【0016】
放射線源は、第1放射線管を収容する第1ハウジングと、第2放射線管を収容する第2ハウジングとを有し、第2ハウジングは交換可能であることが好ましい。
【0017】
放射線源を収容する線源収容部には、第2ハウジングを交換可能に収容する収容空間と、収容空間を覆う開閉可能な蓋とが設けられていることが好ましい。
【0018】
第1放射線管および第2放射線管は、電子を放出する陰極と、電子が衝突することで放射線を発する陽極とを有することが好ましい。陽極は固定陽極であることが好ましい。また、陰極は、電界放出現象を利用して電子線を放出する電子放出源を有する電界放出型であることが好ましい。
【0019】
被写体を乳房とする乳房撮影装置であることが好ましい。
【0020】
本開示のトモシンセシス撮影装置の作動方法は、被写体を透過した放射線を検出する放射線検出器であり、被写体の投影画像を撮像する撮像面を有する放射線検出器を備えるトモシンセシス撮影装置の作動方法であって、撮像面に対する放射線の照射角度が異なる複数の位置に配された複数の第1放射線管、および、第1放射線管とは異なる第2放射線管で構成される放射線源を用い、被写体に対する照射角度が異なる複数の投影画像を撮影するトモシンセシス撮影に先立ち、第2放射線管を用いて、トモシンセシス撮影の放射線の照射条件を設定するためのプレ撮影を行わせるプレ撮影制御ステップと、複数の第1放射線管を用いてトモシンセシス撮影を行わせるトモシンセシス撮影制御ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0021】
本開示の技術によれば、放射線源を複数の放射線管で構成して、トモシンセシス撮影の放射線の照射条件を設定するためのプレ撮影を行う場合に、1つの放射線管への負荷の集中を避けることが可能なトモシンセシス撮影装置とその作動方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図8】トモシンセシス撮影で得られた複数の投影画像から断層画像を生成する様子を示す図である。
【
図9】第2放射線管の配置位置を説明するための図である。
【
図11】乳房撮影装置によるトモシンセシス撮影の手順を示すフローチャートである。
【
図12】第1放射線管よりも管径が小さい第2放射線管を示す図である。
【
図13】後方にオフセットした位置に配され、かつ第1放射線管よりも管径が小さい第2放射線管を示す図である。
【
図14】トモシンセシス撮影の最大スキャン角度外の位置に配された第2放射線管を示す図である。
【
図15】第2放射線管を交換可能とした第4実施形態を示す図であり、
図15Aは、線源収容部の蓋が閉じ位置にある状態、
図15Bは、蓋が開き位置に開かれて、第2放射線管を収容する第2ハウジングが取り外された状態をそれぞれ示す。
【
図16】第2放射線管を交換可能とした第4実施形態の別の例を示す図であり、
図16Aは、線源収容部の蓋が閉じ位置にある状態、
図16Bは、蓋が開き位置に開かれて、第2放射線管を収容する第2ハウジングが取り外された状態をそれぞれ示す。
【
図17】放射線の焦点が、円弧状に、等しい間隔で並ぶ設定とされた複数の位置に、第1放射線管を配した例を示す図である。
【
図19】焦点を複数有する放射線管の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
図1および
図2において、トモシンセシス撮影装置の一例である乳房撮影装置10は、被検者Hの乳房Mを被写体とする。乳房撮影装置10は、乳房MにX線、γ線といった放射線37(
図3等参照)を照射して、乳房Mの放射線画像を撮影する。
【0024】
乳房撮影装置10は、装置本体11と制御装置12とで構成される。装置本体11は、例えば医療施設の放射線撮影室に設置される。制御装置12は、例えば放射線撮影室の隣室の制御室に設置される。制御装置12は、LAN(Local Area Network)等のネットワーク13を介して、画像データベース(以下、DB;Data Base)サーバ14と通信可能に接続されている。画像DBサーバ14は、例えば、PACS(Picture Archiving and Communication System)サーバであり、乳房撮影装置10から放射線画像を受信し、これを蓄積管理する。
【0025】
ネットワーク13には、端末装置15も接続されている。端末装置15は、例えば、放射線画像に基づく診療を行う医師が使用するパーソナルコンピュータである。端末装置15は、画像DBサーバ14から放射線画像を受信し、これをディスプレイに表示する。
【0026】
装置本体11は、スタンド20とアーム21とを有する。スタンド20は、放射線撮影室の床面に設置される台座20Aと、台座20Aから高さ方向に延びる支柱20Bとで構成される。アーム21は横から見た形状が略C字状であり、接続部21Aを介して、支柱20Bに接続されている。この接続部21Aにより、アーム21は支柱20Bに対して高さ方向に移動可能で、被検者Hの身長に応じた高さ調節が可能となっている。また、アーム21は、接続部21Aを貫く、支柱20Bに垂直な回転軸回りに回転可能である。
【0027】
アーム21は、線源収容部22、検出器収容部23、および本体部24で構成される。線源収容部22は放射線源25を収容する。検出器収容部23は放射線検出器26を収容する。また、検出器収容部23は、乳房Mが載せられる撮影台としても機能する。本体部24は、線源収容部22と検出器収容部23とを一体的に接続する。線源収容部22は高さ方向の上側に配されており、検出器収容部23は、線源収容部22と対向する姿勢で、高さ方向の下側に配されている。
【0028】
放射線源25は、複数、例えば14個の第1放射線管27Aと、1つの第2放射線管27Bと、これらの放射線管27A、27Bを収容するハウジング28とで構成される。第1放射線管27Aは、乳房Mに対する照射角度が異なる複数の投影画像を放射線画像として撮影するトモシンセシス撮影に用いられる。一方、第2放射線管27Bは、トモシンセシス撮影に先立って行われる、トモシンセシス撮影の放射線37の照射条件を設定するためのプレ撮影に用いられる。放射線検出器26は、乳房Mを透過した放射線37を検出して放射線画像を出力する。
【0029】
本体部24の線源収容部22と検出器収容部23との間には、圧迫板29が取り付けられている。圧迫板29は、放射線37を透過する材料で形成されている。圧迫板29は、検出器収容部23と対向配置されている。圧迫板29は、検出器収容部23に向かう方向と検出器収容部23から離間する方向とに移動可能である。圧迫板29は、検出器収容部23に向かって移動して、検出器収容部23との間で乳房Mを挟み込んで圧迫する。
【0030】
線源収容部22の正面下部には、フェイスガード30が取り付けられている。フェイスガード30は、被検者Hの顔を放射線37から防護する。
【0031】
支柱20B内には、各放射線管27A、27Bに印加する管電圧を発生する管電圧発生器(図示せず)が設けられている。また、支柱20B内には、管電圧発生器から延びる電圧ケーブル(図示せず)が配設されている。電圧ケーブルは、さらに接続部21Aからアーム21を通って線源収容部22内に導入され、放射線源25に接続される。
【0032】
図3において、第1放射線管27Aは、陰極35と陽極36とを有している。陰極35は、電子を放出する。陽極36は、電子が衝突することで放射線37を発する。陰極35と陽極36とは、略円筒形状の真空のガラス管38に収容されている。陰極35は、電界放出現象を利用して、陽極36に向けて電子線EBを放出する電子放出源を有する電界放出型である。陽極36は、回転機構により回転する回転陽極とは異なり、回転せずに位置が固定された固定陽極である。
【0033】
陰極35と陽極36との間には、管電圧発生器からの管電圧が印加される。管電圧の印加により、陰極35から陽極36に向けて電子線EBが放出される。そして、電子線EBが衝突した陽極36の点(以下、焦点)Fから、放射線37が発せられる。
【0034】
ハウジング28には、放射線37を透過する放射線透過窓39が設けられている。陽極36から発せられた放射線37は、この放射線透過窓39を通じて、ハウジング28外に出射される。なお、ハウジング28内は、絶縁油で満たされている。なお、第2放射線管27Bは、第1放射線管27Aと同じ構成であるため、図示および説明は省略する。
【0035】
放射線透過窓39の高さ方向の下側には、照射野限定器40(
図1および
図2では不図示)が設けられている。照射野限定器40はコリメータとも呼ばれ、放射線検出器26の撮像面45(
図4参照)における放射線37の照射野を設定する。より詳しくは、照射野限定器40は、放射線透過窓39を透過した放射線37を遮蔽する鉛等の複数枚の遮蔽板41を有している。そして、この遮蔽板41で画定される、例えば矩形状の照射開口の大きさを、遮蔽板41を移動させて変更することで、放射線37の照射野を設定する。
【0036】
照射野限定器40は、各放射線管27A、27Bのそれぞれに設けられている。このため、各放射線管27A、27Bから照射される放射線37の照射野は、個別に設定可能である。なお、各放射線管27A、27Bに対して、それよりも少ない個数、例えば1つだけ照射野限定器40を設けて、この1つの照射野限定器40を各放射線管27A、27Bの移動させてもよい。
【0037】
検出器収容部23の部分を示す
図4において、放射線検出器26は撮像面45を有する。撮像面45は、乳房Mを透過した放射線37を検出して乳房Mの投影画像を撮像する面である。より詳しくは、撮像面45は、放射線37を電気信号に変換する画素が二次元配列された二次元平面である。このような放射線検出器26は、FPD(Flat Panel Detector)と呼ばれる。放射線検出器26は、放射線37を可視光に変換するシンチレータを有し、シンチレータが発する可視光を電気信号に変換する間接変換型でもよいし、放射線37を直接電気信号に変換する直接変換型でもよい。
【0038】
図5および
図6は、乳房撮影装置10における乳房Mの撮影方式を示す。
図5は頭尾方向(CC;Craniocaudal view)撮影、
図6は内外斜位方向(MLO;Mediolateral Oblique view)撮影である。CC撮影は、検出器収容部23と圧迫板29とで、乳房Mを上下に挟み込んで圧迫して撮影する撮影方式である。この場合、放射線検出器26は、投影画像としてCC画像を出力する。対してMLO撮影は、検出器収容部23と圧迫板29とで、乳房Mを60°程度の角度で斜めに挟み込んで圧迫して撮影する撮影方式である。この場合、放射線検出器26は、投影画像としてMLO画像を出力する。なお、
図5および
図6では、簡単化のために1つの第1放射線管27Aだけを図示している。また、
図5および
図6では、右の乳房Mを示しているが、もちろん左の乳房Mの撮影も可能である。
【0039】
支柱20B側から放射線源25および放射線検出器26を平面視した
図7において、撮像面45の法線方向をZ方向、撮像面45の辺に沿う方向をX方向、Z方向およびX方向と直交する撮像面45の奥行方向をY方向とする。第1放射線管27Aは、撮像面45に対する放射線37の照射角度が異なる、計14の位置SP1、SP2、・・・、SP13、SP14に配されている。位置SP1~SP14は、各位置SP1~SP14における第1放射線管27Aの放射線37の焦点F1~F14が、直線状に、等しい間隔Dで並ぶ設定とされている。また、位置SP1~SP14は、X方向の撮像面45の辺の中心点CPから延びる撮像面45の法線NRの左側に位置SP1~SP7、法線NRの右側に位置SP8~SP14というように、法線NRに関して左右対称に設定されている。
【0040】
ここで、位置SP1~SP14が設定される直線GLは、放射線源25および放射線検出器26をZ方向から平面視した場合に、X方向の撮像面45の辺と平行な線である。そして、直線GLは、Y方向に関して、手前側(支柱20Bとは反対側)にオフセットされている。また、焦点F1~F14の間隔Dは、完全に一致する場合に限らず、例えば±5%の誤差を許容する。
【0041】
放射線37の照射角度は、法線NRと、各位置SP1~SP14における第1放射線管27Aの放射線37の焦点F1~F14と中心点CPとを結んだ線とのなす角度である。
図7では、位置SP1における焦点F1と中心点CPとを結んだ線L1、および法線NRと線L1とのなす角度である照射角度θ1を、一例として図示している。
【0042】
符号Ψで示す角度は、トモシンセシス撮影の最大スキャン角度である。最大スキャン角度Ψは、位置SP1~SP14のうちの両端の位置SP1、SP14で規定される。具体的には、最大スキャン角度Ψは、位置SP1における焦点F1と中心点CPとを結んだ線L1と、位置SP14における焦点F14と中心点CPとを結んだ線L14とのなす角度である。
【0043】
1回のトモシンセシス撮影においては、第1放射線管27Aは、位置SP1の第1放射線管27A、位置SP2の第1放射線管27A、・・・、位置SP13の第1放射線管27A、位置SP14の第1放射線管27Aというように、順に1つずつ駆動されて、乳房Mに向けて放射線37を照射する。放射線検出器26は、各位置SP1~SP14において照射された放射線37をその都度検出し、各位置SP1~SP14における投影画像を出力する。トモシンセシス撮影は、
図5で示したCC撮影、および
図6で示したMLO撮影の両撮影方式でそれぞれ行うことが可能である。なお、
図5で示したCC撮影、および
図6で示したMLO撮影を単独で行う単純撮影の場合は、照射角度θが略0°の位置SP7または位置SP8の第1放射線管27Aが用いられる。
【0044】
図8に示すように、乳房撮影装置10は、
図7で示したトモシンセシス撮影で得られた、複数の位置SP1~SP14における複数の投影画像から、フィルタ補正逆投影法等の周知の方法を用いて、乳房Mの任意の断層面TF1~TFNに対応する断層画像T1~TNを生成する。断層画像T1~TNは、各断層面TF1~TFNのそれぞれに存在する構造物を強調した画像である。
【0045】
図9において、第2放射線管27Bは、最大スキャン角度Ψ内の位置であって、最大スキャン角度Ψの中心に対応する位置に配されている。本例では、最大スキャン角度Ψの中心に対応する位置は、すなわち法線NR上の位置である。また、直線GLと、直線GLに平行な、第2放射線管27Bを通る補助線SLとで示すように、第2放射線管27Bは、複数の位置SP1~SP14に対して、放射線37を照射する側とは反対側の、後方にオフセットした位置に配されている。
【0046】
図10において、制御装置12は、制御部50、照射条件設定部51、断層画像生成部52を備えている。
【0047】
制御部50は、放射線源25および放射線検出器26の動作を制御する。制御部50には、プレ撮影制御部50Aとトモシンセシス撮影制御部50Bとが設けられている。プレ撮影制御部50Aは、第2放射線管27Bを用いてプレ撮影を行わせる。具体的には、プレ撮影制御部50Aは、予め設定されたプレ撮影用の照射条件にて第2放射線管27Bを駆動させ、第2放射線管27Bから放射線37を照射させる。そして、これにより放射線検出器26で検出された投影画像を、放射線検出器26から照射条件設定部51に出力させる。
【0048】
照射条件設定部51は、プレ撮影における放射線検出器26からの投影画像を画像解析して、トモシンセシス撮影の放射線37の照射条件を設定する。照射条件設定部51は、設定した照射条件をトモシンセシス撮影制御部50Bに出力する。
【0049】
照射条件は、第1放射線管27Aに印加する管電圧、管電流、および放射線37の照射時間である。照射条件の設定は、例えば、乳房Mの厚みが比較的厚く、放射線検出器26からの投影画像の濃度が所望のレベルよりも低かった場合に、管電圧を定格値から上げる、等である。こうしたプレ撮影に基づく照射条件の設定を行うことで、トモシンセシス撮影で撮影される投影画像、さらには投影画像から生成される断層画像Tの濃度が、乳房Mの個体差によらず略一定レベルとなる。なお、管電流と照射時間の代わりに、管電流照射時間積(いわゆるmAs値)を照射条件としてもよい。
【0050】
トモシンセシス撮影制御部50Bは、複数の第1放射線管27Aを用いて、
図7で示したトモシンセシス撮影を行わせる。具体的には、トモシンセシス撮影制御部50Bは、照射条件設定部51において設定された照射条件にて複数の第1放射線管27Aを駆動させ、複数の第1放射線管27Aから乳房Mに順次放射線37を照射させる。そして、これにより放射線検出器26で検出された複数の投影画像を、放射線検出器26から断層画像生成部52に出力させる。
【0051】
断層画像生成部52は、
図8で示したように、放射線検出器26からの複数の投影画像に基づいて断層画像Tを生成する。断層画像生成部52は、生成した断層画像Tを、ネットワーク13を介して画像DBサーバ14に送信する。
【0052】
なお、
図10では煩雑を避けるため照射野限定器40は示していないが、プレ撮影制御部50Aおよびトモシンセシス撮影制御部50Bは、照射野限定器40の動作も制御する。より詳しくは、プレ撮影制御部50Aおよびトモシンセシス撮影制御部50Bは、各放射線管27A、27Bのうちの、放射線37を照射する放射線管に対応する照射野限定器40の遮蔽板41を移動させて、照射野を設定する。
【0053】
次に、上記構成による作用について、
図11に示すフローチャートを参照して説明する。乳房撮影装置10によるトモシンセシス撮影の手順は、ステップST10の撮影準備作業から開始される。撮影準備作業は、乳房撮影装置10を操作する放射線技師が行う、主に乳房Mのポジショニングに関わる作業である。例えば、撮影準備作業は、被検者Hを装置本体11の前に誘導し、乳房Mを検出器収容部23に載せ、圧迫板29を検出器収容部23に向かって移動させ、検出器収容部23との間で乳房Mを挟み込んで圧迫する、といった作業を含む。撮影準備作業終了後、放射線技師によってトモシンセシス撮影の開始が指示される。
【0054】
トモシンセシス撮影に先立ち、ステップST11に示すように、プレ撮影制御部50Aにより、第2放射線管27Bを用いてプレ撮影が行われる(プレ撮影制御ステップ)。
【0055】
トモシンセシス撮影用の第1放射線管27Aとは異なる第2放射線管27Bをプレ撮影に用いる。したがって、複数の放射線管のうちの1つを、プレ撮影とトモシンセシス撮影とで兼用するとした場合のように、兼用する1つの放射線管に負荷が集中して、性能の劣化が他の放射線管よりも早まってしまうということがない。
【0056】
また、複数の放射線管のうちのいくつか(例えば全て)を、プレ撮影とトモシンセシス撮影とで兼用するとした場合は、兼用するいくつかの放射線管の個体差を吸収するために、プレ撮影で得られた投影画像に対して、放射線管毎に異なる内容の補正を施す必要があり、処理が煩雑である。しかしながら、本実施形態では専用の第2放射線管27Bでプレ撮影を行うので、プレ撮影で得られた投影画像への補正処理が煩雑になることを避けることができる。
【0057】
第2放射線管27Bを、隣り合う2つの第1放射線管27Aの間の位置に配した場合、第2放射線管27Bの存在によって、焦点F1~F14の間隔Dの規則性が乱される可能性がある。焦点F1~F14の間隔Dの規則性が乱されると、断層画像Tの生成に係る処理が複雑になる。しかしながら、本実施形態では、
図9で示したように、第2放射線管27Bを、複数の位置SP1~SP14に対して、放射線37を照射する側とは反対側の、後方にオフセットした位置に配している。したがって、第2放射線管27Bの存在によって、焦点F1~F14の間隔Dの規則性が乱される可能性が減り、断層画像Tの生成に係る処理が複雑化するおそれが低減する。
【0058】
また、これも
図9で示したように、第2放射線管27Bは、複数の位置SP1~SP14のうちの両端の位置SP1、SP14で規定されるトモシンセシス撮影の最大スキャン角度Ψ内の位置であって、最大スキャン角度Ψの中心に対応する位置に配されている。このため、プレ撮影で放射線検出器26から出力される投影画像は、トモシンセシス撮影の場合と同じ位置から放射線37を照射して得たものとなる。かつ、プレ撮影で放射線検出器26から出力される投影画像は、放射線37の照射条件を設定するために必要な乳房Mの画像情報を、最大スキャン角度Ψの中心を基準として左右方向において偏りなく含むものとなる。
【0059】
プレ撮影における放射線検出器26からの投影画像は、照射条件設定部51に出力される。照射条件設定部51では、放射線検出器26からの投影画像に基づいて、トモシンセシス撮影の放射線37の照射条件が設定される(ステップST12)。設定された照射条件は、照射条件設定部51からトモシンセシス撮影制御部50Bに出力される。
【0060】
続いてステップST13に示すように、トモシンセシス撮影制御部50Bにより、第1放射線管27Aを用いて、
図7で示したトモシンセシス撮影が行われる(トモシンセシス撮影制御ステップ)。
【0061】
第1放射線管27Aは、放射線37の焦点F1~F14が、直線状に、等しい間隔Dで並ぶ設定とされた複数の位置SP1~SP14に配されている。こうして第1放射線管27Aの配置位置SP1~SP14に規則性が確保されているため、断層画像Tの生成に係る処理を簡便に済ませることができる。
【0062】
図3で示したように、第1放射線管27Aは、電界放出型の陰極35と、固定陽極である陽極36とを有している。電界放出型の陰極35は、熱電子を放出するフィラメント構造の陰極よりも遥かに発熱量が小さい。このため放熱構造が不要で、小型化が可能である。また、固定陽極は、回転陽極のような回転機構が不要で、これも小型化が可能である。このため、限られたハウジング28内のスペースに、より多くの第1放射線管27Aを配することができる。より多くの第1放射線管27Aを配することができれば、トモシンセシス撮影においてより多くの投影画像を得ることができる。これにより、断層画像Tの生成に用いる画像情報量が多くなるので、断層画像Tの高画質化に貢献することができる。
【0063】
第2放射線管27Bも、第1放射線管27Aと同様に、電界放出型の陰極35と、固定陽極である陽極36とを有している。したがって、プレ撮影専用の第2放射線管27Bを設けたことによる放射線源25の大型化を最小限に止めることができる。
【0064】
トモシンセシス撮影における放射線検出器26からの投影画像は、断層画像生成部52に出力される。断層画像生成部52では、
図8で示したように、放射線検出器26からの投影画像に基づいて、断層画像Tが生成される(ステップST14)。生成された断層画像Tは、断層画像生成部52から画像DBサーバ14に送信される。
【0065】
なお、第2放射線管27Bを、後方にオフセットした位置ではなく、隣り合う2つの第1放射線管27Aの間の位置に配してもよい。
【0066】
[第2実施形態]
図12に示す第2実施形態では、複数の第1放射線管27Aの各々の径(以下、管径)よりも管径が小さい第2放射線管27B_Sを用いる。
【0067】
図12において、第2放射線管27B_Sは、最大スキャン角度Ψの中心に対応する位置で、かつ隣り合う2つの第1放射線管27Aの間の位置に配されている。そして、第2放射線管27Bは、その管径φBが、複数の第1放射線管27Aの各々の管径φAよりも小さい(φB<φA)。例えばφBはφAの1/2である。
【0068】
このように、第2実施形態では、第2放射線管27B_Sの管径φBは、複数の第1放射線管27Aの各々の管径φAよりも小さい。したがって、第1放射線管27Aと第2放射線管27Bが同じ管径である場合と比べて、焦点F1~F14の間隔Dの規則性が乱される可能性が減り、断層画像Tの生成に係る処理が複雑化するおそれが低減する。
【0069】
管径φBを小さくすると、放射線37の最大照射線量は低くなる。しかし、プレ撮影においてはそれほど高い線量を必要としないため、管径φBを小さくしても特に問題はない。
【0070】
なお、
図13に示すように、後方にオフセットした位置に第2放射線管27Bを配する第1実施形態と、第1放射線管27Aの管径φAよりも小さい管径φBの第2放射線管27B_Sを配する第2実施形態とを複合して実施してもよい。こうすれば、焦点F1~F14の間隔Dの規則性が乱される可能性がさらに減り、断層画像Tの生成に係る処理が複雑化するおそれがさらに低減する。
【0071】
[第3実施形態]
図14に示す第3実施形態では、最大スキャン角度Ψ外の位置に第2放射線管27B_ORを配する。
【0072】
図14において、第2放射線管27B_ORは、複数の位置SP1~SP14のうちの両端の位置SP1、S14で規定されるトモシンセシス撮影の最大スキャン角度Ψ外の位置に配されている。また、第2放射線管27B_ORは、最大スキャン角度Ψ外の位置であって、両端の位置SP1、SP14のうちのいずれか一方(
図14では位置SP14)から、焦点F1~F14の間隔D以下の距離(
図14では間隔D)離れた位置に配されている。
【0073】
このように、第3実施形態では、最大スキャン角度Ψ外の位置に第2放射線管27B_ORを配している。したがって、第2放射線管27B_ORの存在によって、焦点F1~F14の間隔Dの規則性が乱される可能性がなくなり、断層画像Tの生成に係る処理が複雑化するおそれもなくなる。また、第3実施形態では、両端の位置SP1、SP14のうちのいずれか一方から、間隔D以下の距離離れた位置に第2放射線管27B_ORを配している。このため、プレ撮影で放射線検出器26から出力される投影画像は、トモシンセシス撮影の場合と大体同じ位置から放射線37を照射して得たものとなる。したがって、間隔Dよりも離れた位置に第2放射線管27B_ORを配する場合よりも、トモシンセシス撮影に適した照射条件を設定することができる。
【0074】
[第4実施形態]
図15および
図16に示す第4実施形態では、第2放射線管27Bを交換可能とする。
【0075】
図15において、放射線源60は、複数の第1放射線管27Aと、1つの第2放射線管27Bと、第1放射線管27Aを収容する第1ハウジング61Aと、第2放射線管27Bを収容する第2ハウジング61Bとで構成される。第2放射線管27Bは、例えば上記第3実施形態で示した、最大スキャン角度Ψ外の位置に配された第2放射線管27B_ORである。
【0076】
放射線源60の線源収容部62には、第2ハウジング61B(第2放射線管27B)を交換可能に収容する収容空間63と、収容空間63を覆う開閉可能な蓋64とが設けられている。
【0077】
図15Aは、蓋64が閉じ位置にある状態を示す。蓋64は、
図15Aに示す閉じ位置から、
図15Bに示すように、収容空間63を露呈する上方の開き位置に開かれる。そして、第2放射線管27Bを、第2ハウジング61Bごと取り外して交換することが可能である。
【0078】
図16に示す放射線源70は、複数の第1放射線管27Aと、1つの第2放射線管27Bと、第1放射線管27Aを収容する第1ハウジング71Aと、第2放射線管27Bを収容する第2ハウジング71Bとで構成される。第2放射線管27Bは、例えば上記第1実施形態で示した、後方にオフセットした位置に配された第2放射線管27Bである。
【0079】
放射線源70の線源収容部72には、第2ハウジング71B(第2放射線管27B)を交換可能に収容する収容空間73と、収容空間73を覆う開閉可能な蓋74とが設けられている。
【0080】
図16Aは、蓋74が閉じ位置にある状態を示す。蓋74は、
図16Aに示す閉じ位置から、
図16Bに示すように、収容空間73を露呈する上方の開き位置に開かれる。そして、第2放射線管27Bを、第2ハウジング71Bごと取り外して交換することが可能である。
【0081】
このように、第4実施形態では、放射線源を、第1放射線管27Aを収容する第1ハウジングと、第2放射線管27Bを収容する第2ハウジングとしている。そして、線源収容部に、第2ハウジングの収容空間および収容空間を覆う開閉可能な蓋を設けて、第2ハウジング、すなわち第2放射線管27Bを交換可能としている。したがって、第2放射線管27Bを容易に交換することができ、メインテナンス性が向上する。
【0082】
第2放射線管27Bはプレ撮影専用であるので、プレ撮影と比べて高線量の放射線37を照射するトモシンセシス撮影用の第1放射線管27Aよりも性能の劣化の進行は遅い。このため、第1放射線管27Aが劣化により使用限界を迎えた場合においても、第2放射線管27Bは使用限界に達しておらず、まだ使用可能であるという場合が多いと考えられる。そこで、第2放射線管27Bを交換可能とすれば、まだ使用可能な第2放射線管27Bを有効活用することができる。
【0083】
上記各実施形態では、第1放射線管27Aが配される位置を直線状としているが、これに限定されない。
図17に示すように、第1放射線管27Aが配される複数の位置SP1~SP14を、円弧状に、等しい間隔Dで並ぶ設定としてもよい。こうした円弧状の配置によっても、直線状の場合と同じく、第1放射線管27Aの配置位置SP1~SP14に規則性が確保されるため、断層画像Tの生成に係る処理を簡便に済ませることができる。
【0084】
図5で示したCC撮影、および
図6で示したMLO撮影を単独で行う単純撮影の代わりに、単純撮影で得られる放射線画像と等価な合成放射線画像を生成してもよい。合成放射線画像は、トモシンセシス撮影で得られた複数の投影画像、および断層画像生成部52で生成した複数の断層画像Tのうちの少なくともいずれかに、最小値投影法等の周知の合成画像生成処理を施すことで生成される。
【0085】
上記各実施形態では、トモシンセシス撮影装置として乳房撮影装置10を例示した。従来、乳房撮影装置10においてトモシンセシス撮影を行うことは、乳房Mの微小石灰化等の病変の発見を容易にするための手法として有用性が認められている。したがって、本開示のトモシンセシス撮影装置を、乳房撮影装置10に適用することは好ましい。
【0086】
もちろん、乳房撮影装置10に限らず、本開示のトモシンセシス撮影装置を、他の撮影装置に適用してもよい。例えば、手術時に被検者Hを撮影する、
図18に示す撮影装置100に、本開示のトモシンセシス撮影装置を適用してもよい。
【0087】
撮影装置100は、制御装置(図示せず)を内蔵する装置本体101と、横から見た形状が略C字状のアーム102とを備えている。装置本体101には台車103が取り付けられ、装置本体101は移動可能となっている。アーム102は、線源収容部104、検出器収容部105、および本体部106で構成される。
図1で示した乳房撮影装置10と同じく、線源収容部104は放射線源107を収容する。また、検出器収容部105は放射線検出器108を収容する。線源収容部104と検出器収容部105とは、本体部106により対向した姿勢で保持される。
【0088】
放射線源107および放射線検出器108は、
図1で示した放射線源25および放射線検出器26と基本的な構成は同じである。ただし、撮影装置100では、被検者Hの胸部全体等、乳房Mよりも大きな被写体を撮影する。このため、放射線源107を構成する第1放射線管109Aおよび第2放射線管109Bは、乳房撮影装置10の各放射線管27A、27Bよりも管径が大きい。また、放射線検出器108も、その撮像面110は、放射線検出器26の撮像面45よりも面積が大きい。なお、大きな被写体の撮影に対応するため、第1放射線管109Aの配列個数を増やしてもよい。
【0089】
検出器収容部105は、被検者Hが仰臥する寝台111の下方に挿入される。寝台111は放射線37を透過する材料で形成されている。線源収容部104は、被検者Hの上方であって、被検者Hを挟んで検出器収容部105と対向する位置に配置される。
【0090】
撮影装置100は、乳房撮影装置10と同じく、第2放射線管109Bを用いてプレ撮影を行い、第1放射線管109Aを用いてトモシンセシス撮影を行う。なお、撮影装置100においても、トモシンセシス撮影の他に、1つの第1放射線管109Aを用いて単純撮影を行うことが可能である。また、単純撮影を行う代わりに合成放射線画像を生成することも可能である。さらに、撮影装置100は、静止画の放射線画像を撮影する他、動画の放射線画像を撮影することも可能である。なお、符号112は、放射線源107のハウジングである。
【0091】
本開示のトモシンセシス撮影装置は、こうした手術用の撮影装置100以外にも、天井吊り下げ型の放射線源と、放射線検出器がセットされる立位撮影台または臥位撮影台とを組み合わせた一般的な放射線撮影装置に適用することも可能である。また、病棟を巡回して被検者Hを撮影するために用いられる、カート型の移動式放射線撮影装置に、本開示のトモシンセシス撮影装置を適用することも可能である。
【0092】
上記各実施形態では、第2放射線管を1つとしているが、第2放射線管は複数あってもよい。
【0093】
上記各実施形態では、各第1放射線管27Aが1つの焦点Fを有するとして説明したが、本開示の技術はこれに限らない。複数の第1放射線管27Aのうちの少なくとも1つが、焦点Fを複数有していてもよい。
【0094】
1つの放射線管が複数の焦点を有するような構成としては、以下の第1~第3の構成が挙げられる。第1の構成は、1つの放射線管に複数の陰極を設け、陽極の異なる複数の位置に電子を衝突させる構成である。第2の構成は、陰極35のような1つの電界放出型の冷陰極に電子線EBの放出エリアを複数設け、陽極の異なる位置に電子を衝突させる構成である。第3の構成は、1つの陰極から発せられる電子の軌道を変化させて、陽極の異なる複数の位置に電子を衝突させる構成である。第1の構成および第3の構成の場合の陰極は、陰極35のような電界放出型の冷陰極でもよいし、フィラメントの加熱により熱電子を放出する熱陰極でもよい。
【0095】
図19は、それぞれ2つの焦点Fを有する第1放射線管200Aを用いた場合を例示している。すなわち、焦点F1、F2を有する放射線管200A、焦点F3、F4を有する放射線管200A、・・・、焦点F11、F12を有する放射線管200A、焦点F13、F14を有する放射線管200Aである。
【0096】
このように、第1放射線管は、焦点FPを複数有していても構わない。また、放射線源を、焦点FPを1つ有する第1放射線管と、焦点FPを複数有する第1放射線管との混合編成としてもよい。
【0097】
上記各実施形態において、例えば、制御部50(プレ撮影制御部50Aおよびトモシンセシス撮影制御部50B)、照射条件設定部51、断層画像生成部52といった各種の処理を実行する処理部(Processing Unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(Processor)を用いることができる。各種のプロセッサには、ソフトウェアを実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)に加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device :PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0098】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせ、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0099】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントおよびサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0100】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【0101】
本開示の技術は、上述の種々の実施形態および種々の変形例を適宜組み合わせることも可能である。また、上記各実施形態に限らず、要旨を逸脱しない限り種々の構成を採用し得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0102】
10 乳房撮影装置
11、101 装置本体
12 制御装置
13 ネットワーク
14 画像データベースサーバ(画像DBサーバ)
15 端末装置
20 スタンド
20A 台座
20B 支柱
21、102 アーム
21A 接続部
22、62、72、104 線源収容部
23、105 検出器収容部
24、106 本体部
25、60、70、107 放射線源
26、108 放射線検出器
27A、109A、200A 第1放射線管
27B、27B_S、27B_OR、109B 第2放射線管
28、61、112 ハウジング
29 圧迫板
30 フェイスガード
35 陰極
36 陽極
37 放射線
38 ガラス管
39 放射線透過窓
40 照射野限定器
41 遮蔽板
45、110 撮像面
50 制御部
50A プレ撮影制御部
50B トモシンセシス撮影制御部
51 照射条件設定部
52 断層画像生成部
61A、71A 第1ハウジング
61B、71B 第2ハウジング
63、73 収容空間
64、74 蓋
100 撮影装置
103 台車
111 寝台
H 被検者
M 乳房(被写体)
EB 電子線
F、F1~F14 放射線の焦点
CP 撮像面の辺の中心点
NR 撮像面の辺の中心点から延びる撮像面の法線
SP、SP1~SP14 第1放射線管の位置
D 焦点の間隔
L、L1、L14 焦点と中心点とを結んだ線
θ、θ1 放射線の照射角度
Ψ トモシンセシス撮影の最大スキャン角度
T、T1~TN 断層画像
TF、TF1~TFN 断層面
GL 焦点の位置が設定される直線
SL 補助線
ST10~ST14 ステップ
φA 第1放射線管の管径
φB 第2放射線管の管径