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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】研磨レシピ決定装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220613BHJP
   B24B 37/005 20120101ALI20220613BHJP
【FI】
H01L21/304 622K
H01L21/304 622R
B24B37/005 A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018246913
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020107784
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【弁護士】
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 良和
(72)【発明者】
【氏名】福島 誠
(72)【発明者】
【氏名】並木 計介
(72)【発明者】
【氏名】富樫 真吾
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-168015(JP,A)
【文献】米国特許第7001243(US,B1)
【文献】特開2014-061587(JP,A)
【文献】特開2018-067610(JP,A)
【文献】特開2003-158108(JP,A)
【文献】特開2006-043873(JP,A)
【文献】特表2005-520317(JP,A)
【文献】特開2013-232660(JP,A)
【文献】特開2018-195734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/005
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップリングのエリア毎に圧力を変化させて取得されるエリア毎の応答データに基づいて研磨レシピを決定する研磨レシピ決定装置であって、
過去のエリア毎の応答データとそれに異常があるか否かとの関係性を機械学習している第1学習済みモデルを有し、新たなエリア毎の応答データを入力として、異常の有無を推定して出力する異常有無推定部と、
過去の異常ありのエリア毎の応答データと異常除去後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第2学習済みモデルを有し、前記異常有無推定部により異常ありと推定された場合には、異常ありと推定されたエリア毎の応答データを入力として、異常除去後のエリア毎の応答データを推定して出力するスクリーニング部と、
前記異常有無推定部により異常なしと推定されたエリア毎の応答データ、または前記スクリーニング部により推定された異常除去後のエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定するシミュレーション部と、
を備えたことを特徴とする研磨レシピ決定装置。
【請求項2】
前記研磨レシピにて実際に研磨することにより得られる実際の研磨結果と、前記研磨レシピにてシミュレーションにより得られるシミュレーションの研磨結果とを比較して、実際の研磨結果の合否を判定する合否判定部と、
過去の実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データと修正後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第3学習済みモデルを有し、前記合否判定部により不合格と判定された場合には、不合格と判定された実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データとを入力として、修正後のエリア毎の応答データを推定して出力する応答データ修正部と、
をさらに備え、
前記シミュレーション部は、前記応答データ修正部により推定された修正後のエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定し直す、
ことを特徴とする請求項1に記載の研磨レシピ決定装置。
【請求項3】
トップリングのエリア毎に圧力を変化させて取得されるエリア毎の応答データに基づいて研磨レシピを決定する研磨レシピ決定装置であって、
新たなエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定するシミュレーション部と、
前記研磨レシピにて実際に研磨することにより得られる実際の研磨結果と、前記研磨レシピにてシミュレーションにより得られるシミュレーションの研磨結果とを比較して、実際の研磨結果の合否を判定する合否判定部と、
過去の実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データと修正後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第3学習済みモデルを有し、前記合否判定部により不合格と判定された場合には、不合格と判定された実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データとを入力として、修正後のエリア毎の応答データを推定して出力する応答データ修正部と、
をさらに備え、
前記シミュレーション部は、前記応答データ修正部により推定された修正後のエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定し直す、
ことを特徴とする研磨レシピ決定装置。
【請求項4】
前記第1学習済みモデルは、過去のエリア毎の応答データとそれに異常があるか否かおよび異常の種類との関係性を機械学習しており、前記異常有無推定部は、新たなエリア毎の応答データを入力として、異常の有無および異常の種類を推定して出力し、
前記第2学習済みモデルは、過去の異常ありのエリア毎の応答データと異常の種類と異常除去後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習しており、前記スクリーニング部は、前記異常有無推定部により異常ありと推定された場合には、異常ありと推定されたエリア毎の応答データおよび推定された異常の種類を入力として、異常除去後のエリア毎の応答データを推定して出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載の研磨レシピ決定装置。
【請求項5】
前記異常の種類は、左右異常点、中央エリア加圧時エッジ異常点、ポーラー異常点のうちの1つまたは2つ以上を含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の研磨レシピ決定装置。
【請求項6】
前記応答データはウエハ各位置について研磨除去量の変化量をエアバッグ圧力変化量で除したデータのことである、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の研磨レシピ決定装置。
【請求項7】
前記応答データはウエハ各位置について研磨除去レートの変化量をエアバッグ圧力変化量で除したデータのことである、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の研磨レシピ決定装置。
【請求項8】
前記応答データはウエハ各位置についてウエハ残膜の変化量をエアバッグ圧力変化量で除したデータのことである、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の研磨レシピ決定装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の研磨レシピ決定装置を備えた研磨装置。
【請求項10】
トップリングのエリア毎に圧力を変化させて取得されるエリア毎の応答データに基づいて研磨レシピを決定する研磨レシピ決定方法であって、
過去のエリア毎の応答データとそれに異常があるか否かとの関係性を機械学習している第1学習済みモデルを有する異常有無推定部が、新たなエリア毎の応答データを入力として、異常の有無を推定して出力するステップと、
前記異常有無推定部により異常ありと推定された場合には、過去の異常ありのエリア毎の応答データと異常除去後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第2学習済みモデルを有するスクリーニング部が、異常ありと推定されたエリア毎の応答データを入力として、異常除去後のエリア毎の応答データを推定して出力するステップと、
シミュレーション部が、前記異常有無推定部により異常なしと推定されたエリア毎の応答データ、または前記スクリーニング部により推定された異常除去後のエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定するステップと、
を備えたことを特徴とする研磨レシピ決定方法。
【請求項11】
合否判定部が、前記研磨レシピにて実際に研磨することにより得られる実際の研磨結果と、前記研磨レシピにてシミュレーションにより得られるシミュレーションの研磨結果とを比較して、実際の研磨結果の合否を判定するステップと、
前記合否判定部により不合格と判定された場合には、過去の実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データと修正後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第3学習済みモデルを有する応答データ修正部が、不合格と判定された実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データとを入力として、修正後のエリア毎の応答データを推定して出力するステップと、
前記シミュレーション部が、前記応答データ修正部により推定された修正後のエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定し直すステップと、
をさらに備えたことを特徴とする請求項10に記載の研磨レシピ決定方法。
【請求項12】
トップリングのエリア毎に圧力を変化させて取得されるエリア毎の応答データに基づいて研磨レシピを決定する研磨レシピ決定方法であって、
シミュレーション部が、新たなエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定するステップと、
合否判定部が、前記研磨レシピにて実際に研磨することにより得られる実際の研磨結果と、前記研磨レシピにてシミュレーションにより得られるシミュレーションの研磨結果とを比較して、実際の研磨結果の合否を判定するステップと、
前記合否判定部により不合格と判定された場合には、過去の実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データと修正後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第3学習済みモデルを有する応答データ修正部が、不合格と判定された実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データとを入力として、修正後のエリア毎の応答データを推定して出力するステップと、
前記シミュレーション部が、前記応答データ修正部により推定された修正後のエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定し直すステップと、
を備えたことを特徴とする研磨レシピ決定方法。
【請求項13】
トップリングのエリア毎に圧力を変化させて取得されるエリア毎の応答データに基づいて研磨レシピを決定する処理をコンピュータに実行させる研磨レシピ決定プログラムであって、
前記コンピュータに、
過去のエリア毎の応答データとそれに異常があるか否かとの関係性を機械学習している第1学習済みモデルを有する異常有無推定部が、新たなエリア毎の応答データを入力として、異常の有無を推定して出力するステップと、
前記異常有無推定部により異常ありと推定された場合には、過去の異常ありのエリア毎の応答データと異常除去後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第2学習済みモデルを有するスクリーニング部が、異常ありと推定されたエリア毎の応答データを入力として、異常除去後のエリア毎の応答データを推定して出力するステップと、
シミュレーション部が、前記異常有無推定部により異常なしと推定されたエリア毎の応答データ、または前記スクリーニング部により推定された異常除去後のエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定するステップと、
を実行させることを特徴とする研磨レシピ決定プログラム。
【請求項14】
前記コンピュータに、
合否判定部が、前記研磨レシピにて実際に研磨することにより得られる実際の研磨結果と、前記研磨レシピにてシミュレーションにより得られるシミュレーションの研磨結果とを比較して、実際の研磨結果の合否を判定するステップと、
前記合否判定部により不合格と判定された場合には、過去の実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データと修正後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第3学習済みモデルを有する応答データ修正部が、不合格と判定された実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データとを入力として、修正後のエリア毎の応答データを推定して出力するステップと、
前記シミュレーション部が、前記応答データ修正部により推定された修正後のエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定し直すステップと、
をさらに実行させることを特徴とする請求項13に記載の研磨レシピ決定プログラム。
【請求項15】
トップリングのエリア毎に圧力を変化させて取得されるエリア毎の応答データに基づいて研磨レシピを決定する処理をコンピュータに実行させる研磨レシピ決定プログラムであって、
前記コンピュータに、
シミュレーション部が、新たなエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定するステップと、
合否判定部が、前記研磨レシピにて実際に研磨することにより得られる実際の研磨結果と、前記研磨レシピにてシミュレーションにより得られるシミュレーションの研磨結果とを比較して、実際の研磨結果の合否を判定するステップと、
前記合否判定部により不合格と判定された場合には、過去の実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データと修正後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第3学習済みモデルを有する応答データ修正部が、不合格と判定された実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データとを入力として、修正後のエリア毎の応答データを推定して出力するステップと、
前記シミュレーション部が、前記応答データ修正部により推定された修正後のエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定し直すステップと、
を実行させることを特徴とする研磨レシピ決定プログラム。
【請求項16】
トップリングのエリア毎に圧力を変化させて取得されるエリア毎の応答データに基づいて研磨レシピを決定する処理をコンピュータに実行させるプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体であって、
前記コンピュータに、
過去のエリア毎の応答データとそれに異常があるか否かとの関係性を機械学習している第1学習済みモデルを有する異常有無推定部が、新たなエリア毎の応答データを入力として、異常の有無を推定して出力するステップと、
前記異常有無推定部により異常ありと推定された場合には、過去の異常ありのエリア毎の応答データと異常除去後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第2学習済みモデルを有するスクリーニング部が、異常ありと推定されたエリア毎の応答データを入力として、異常除去後のエリア毎の応答データを推定して出力するステップと、
シミュレーション部が、前記異常有無推定部により異常なしと推定されたエリア毎の応答データ、または前記スクリーニング部により推定された異常除去後のエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定するステップと、
を実行させるプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。
【請求項17】
前記コンピュータに、
合否判定部が、前記研磨レシピにて実際に研磨することにより得られる実際の研磨結果と、前記研磨レシピにてシミュレーションにより得られるシミュレーションの研磨結果とを比較して、実際の研磨結果の合否を判定するステップと、
前記合否判定部により不合格と判定された場合には、過去の実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データと修正後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第3学習済みモデルを有する応答データ修正部が、不合格と判定された実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データとを入力として、修正後のエリア毎の応答データを推定して出力するステップと、
前記シミュレーション部が、前記応答データ修正部により推定された修正後のエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定し直すステップと、
をさらに実行させるプログラムを記録した請求項16に記載のコンピュータ読取可能な記録媒体。
【請求項18】
トップリングのエリア毎に圧力を変化させて取得されるエリア毎の応答データに基づいて研磨レシピを決定する処理をコンピュータに実行させるプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体であって、
前記コンピュータに、
シミュレーション部が、新たなエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定するステップと、
合否判定部が、前記研磨レシピにて実際に研磨することにより得られる実際の研磨結果と、前記研磨レシピにてシミュレーションにより得られるシミュレーションの研磨結果とを比較して、実際の研磨結果の合否を判定するステップと、
前記合否判定部により不合格と判定された場合には、過去の実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データと修正後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第3学習済みモデルを有する応答データ修正部が、不合格と判定された実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データとを入力として、修正後のエリア毎の応答データを推定して出力するステップと、
前記シミュレーション部が、前記応答データ修正部により推定された修正後のエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定し直すステップと、
を実行させるプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨レシピ決定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの高集積化が進むにつれて回路の配線が微細化し、配線間距離もより狭くなりつつある。半導体デバイスの製造では、シリコンウエハの上に多くの種類の材料が膜状に繰り返し形成され、積層構造が形成される。この積層構造を形成するためには、ウエハの表面を平坦にする技術が重要となっている。このようなウエハの表面を平坦化する一手段として、化学機械研磨(CMP)を行う研磨装置(化学的機械的研磨装置ともいう)が広く用いられている。
【0003】
この種の研磨装置は、一般に、研磨パッドが取り付けられた研磨テーブルと、ウエハを保持するトップリング(研磨ヘッドともいう)と、研磨液を研磨パッド上に供給するノズルとを備えている。ノズルから研磨液を研磨パッド上に供給しながら、トップリングによりウエハを研磨パッドに押し付け、さらにトップリングと研磨テーブルとを相対移動させることにより、ウエハを研磨してその表面を平坦にする。
【0004】
このような研磨装置において、研磨中のウエハと研磨パッドとの間の相対的な押圧力がウェアの全面に亘って均一でない場合には、ウエハの各部分に与えられる押圧力に応じて研磨不足や過研磨が生じてしまう。ウエハに対する押圧力を均一化するために、トップリングの下部に弾性膜(メンブレン)から形成される複数の圧力室を設け、この複数の圧力室に加圧空気などの流体をそれぞれ供給することで弾性膜を介した流体圧によりウエハを研磨パッドに押圧して研磨することが行われている。
【0005】
また、トップリングの圧力室(エリア)毎に圧力を変化させてテストウエハを研磨する圧力振り実験により、エリア毎の応答データを取得し、取得したエリア毎の応答データに基づいてシミュレーションにより研磨レシピを決定することが行われている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-513434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
研磨レシピの決定は、熟練の技術者が行うことにより、短時間で高精度な(たとえば、面内均一性が良い)研磨レシピを決定することが可能である。それは、熟練の技術者は、圧力振り実験で取得したエリア毎の応答データに対し、過去のエリア毎の応答データや他のプロセスを勘案し、必要に応じてデータ補完、除去などのスクリーニングを行い、スクリーニング後の(ノイズが少ない)エリア毎の応答データに基づいて研磨レシピを決定するからである。
【0008】
したがって、過去に取得された膨大なエリア毎の応答データを学習することができれば、研磨レシピの決定をさらに高精度化できる可能性がある。しかしながら、実際は、一人の技術者が学習できる過去のエリア毎の応答データの数は限られているから、技術者の経験や知識を頼りに研磨レシピを決定する従来の方法では、さらなる高精度化は困難である。
【0009】
また、技術者の判断をコンピュータのプログラムに置き換えることができれば、研磨レシピの決定を高速化(効率化)できる可能性がある。しかしながら、実際は、エリア毎の応答データにおいて、異常値の出る箇所や大きさについては一貫性がないため、技術者がその都度グラフを見て判断する必要があり、予め定められた条件を満たすか否かという条件分岐を利用した従来のプログラムで置き換えることは不可能である。
【0010】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたものでる。本発明の目的は、研磨レシピの決定を高精度化、効率化できる研磨レシピ決定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様に係る研磨レシピ決定装置は、
トップリングのエリア毎に圧力を変化させて取得されるエリア毎の応答データに基づいて研磨レシピを決定する研磨レシピ決定装置であって、
過去のエリア毎の応答データとそれに異常があるか否かとの関係性を機械学習している第1学習済みモデルを有し、新たなエリア毎の応答データを入力として、異常の有無を推定して出力する異常有無推定部と、
過去の異常ありのエリア毎の応答データと異常除去後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第2学習済みモデルを有し、前記異常有無推定部により異常ありと推定された場合には、異常ありと推定されたエリア毎の応答データを入力として、異常除去後のエリア毎の応答データを推定して出力するスクリーニング部と、
前記異常有無推定部により異常なしと推定されたエリア毎の応答データ、または前記スクリーニング部により推定された異常除去後のエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定するシミュレーション部と、
を備える。
【0012】
このような態様によれば、異常有無推定部が、過去のエリア毎の応答データと異常の有無との関係性を機械学習している第1学習済みモデルを有するため、新たなエリア毎の応答データに異常があるか否かを、短時間で推定できるとともに、学習量に応じて高精度に推定することが可能である。また、スクリーニング部が、過去の異常ありのエリア毎の応答データと異常除去後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第2学習済みモデルを有するため、異常ありと推定されたエリア毎の応答データから、異常除去後のエリア毎の応答データを、短時間で推定できるとともに、学習量に応じて高精度に推定することが可能である。そして、シミュレーション部が、スクリーニング後の(ノイズが少ない)エリア毎の応答データに基づいてシミュレーションにより研磨レシピを決定することにより、研磨レシピを高精度かつ効率的に決定することができる。
【0013】
本発明の第2の態様に係る研磨レシピ決定装置は、第1の態様に係る研磨レシピ決定装置であって、
前記研磨レシピにて実際に研磨することにより得られる実際の研磨結果と、前記研磨レシピにてシミュレーションにより得られるシミュレーションの研磨結果とを比較して、実際の研磨結果の合否を判定する合否判定部と、
過去の実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データと修正後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第3学習済みモデルを有し、前記合否判定部により不合格と判定された場合には、不合格と判定された実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データとを入力として、修正後のエリア毎の応答データを推定して出力する応答データ修正部と、
をさらに備え、
前記シミュレーション部は、前記応答データ修正部により推定された修正後のエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定し直す。
【0014】
このような態様によれば、応答データ修正部が、過去の実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データと修正後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第3学習済みモデルを有するため、不合格と判定された実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データとから、修正後のエリア毎の応答データを、短時間で推定できるとともに、学習量に応じて高精度に推定することが可能である。そして、シミュレーション部が、応答データ修正部により推定された修正後のエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定し直すことにより、研磨レシピの決定をさらに高精度化できる。
【0015】
本発明の第3の態様に係る研磨レシピ決定装置は、
トップリングのエリア毎に圧力を変化させて取得されるエリア毎の応答データに基づいて研磨レシピを決定する研磨レシピ決定装置であって、
新たなエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定するシミュレーション部と、
前記研磨レシピにて実際に研磨することにより得られる実際の研磨結果と、前記研磨レシピにてシミュレーションにより得られるシミュレーションの研磨結果とを比較して、実際の研磨結果の合否を判定する合否判定部と、
過去の実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データと修正後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第3学習済みモデルを有し、前記合否判定部により不合格と判定された場合には、不合格と判定された実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データとを入力として、修正後のエリア毎の応答データを推定して出力する応答データ修正部と、
をさらに備え、
前記シミュレーション部は、前記応答データ修正部により推定された修正後のエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定し直す。
【0016】
このような態様によれば、応答データ修正部が、過去の実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データと修正後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第3学習済みモデルを有するため、不合格と判定された実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データとから、修正後のエリア毎の応答データを、短時間で推定できるとともに、学習量に応じて高精度に推定することが可能である。そして、シミュレーション部が、応答データ修正部により推定された修正後のエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定し直すことにより、研磨レシピを高精度かつ効率的に決定することができる。
【0017】
本発明の第4の態様に係る研磨レシピ決定装置は、第1の態様に係る研磨レシピ決定装置であって、
前記第1学習済みモデルは、過去のエリア毎の応答データとそれに異常があるか否かおよび異常の種類との関係性を機械学習しており、前記異常有無推定部は、新たなエリア毎の応答データを入力として、異常の有無および異常の種類を推定して出力し、
前記第2学習済みモデルは、過去の異常ありのエリア毎の応答データと異常の種類と異常除去後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習しており、前記スクリーニング部は、前記異常有無推定部により異常ありと推定された場合には、異常ありと推定されたエリア毎の応答データおよび推定された異常の種類を入力として、異常除去後のエリア毎の応答データを推定して出力する。
【0018】
このような態様によれば、スクリーニング部が、異常ありと推定されたエリア毎の応答データについて、その異常の種類の情報も利用して推定を行うことで、異常除去後のエリア毎の応答データをより高精度に推定することができる。これにより、研磨レシピの決定をさらに高精度化できる。
【0019】
本発明の第5の態様に係る研磨レシピ決定装置は、第4の態様に係る研磨レシピ決定装置であって、
前記異常の種類は、左右異常点、中央エリア加圧時エッジ異常点、ポーラー異常点のうちの1つまたは2つ以上を含む。
【0020】
本発明の第6の態様に係る研磨レシピ決定装置は、第1~5のいずれかの態様に係る研磨レシピ決定装置であって、
前記応答データはウエハ各位置について研磨除去量の変化量をエアバッグ圧力変化量で除したデータのことである。
【0021】
本発明の第7の態様に係る研磨レシピ決定装置は、第1~5のいずれかの態様に係る研磨レシピ決定装置であって、
前記応答データはウエハ各位置について研磨除去レートの変化量をエアバッグ圧力変化量で除したデータのことである。
【0022】
本発明の第8の態様に係る研磨レシピ決定装置は、第1~5のいずれかの態様に係る研磨レシピ決定装置であって、
前記応答データはウエハ各位置についてウエハ残膜の変化量をエアバッグ圧力変化量で除したデータのことである。
【0023】
本発明の第9の態様に係る研磨装置は、第1~8のいずれかの態様に係る研磨レシピ決定装置を備える。
【0024】
本発明の第10の態様に係る研磨レシピ決定方法は、
トップリングのエリア毎に圧力を変化させて取得されるエリア毎の応答データに基づいて研磨レシピを決定する研磨レシピ決定方法であって、前記応答データはウエハ各位置について研磨除去レートの変化量をエアバッグ圧力変化量で除したデータのことであり、
過去のエリア毎の応答データとそれに異常があるか否かとの関係性を機械学習している第1学習済みモデルを有する異常有無推定部が、新たなエリア毎の応答データを入力として、異常の有無を推定して出力するステップと、
前記異常有無推定部により異常ありと推定された場合には、過去の異常ありのエリア毎の応答データと異常除去後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第2学習済みモデルを有するスクリーニング部が、異常ありと推定されたエリア毎の応答データを入力として、異常除去後のエリア毎の応答データを推定して出力するステップと、
シミュレーション部が、前記異常有無推定部により異常なしと推定されたエリア毎の応答データ、または前記スクリーニング部により推定された異常除去後のエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定するステップと、
を備える。
【0025】
本発明の第11の態様に係る研磨レシピ決定方法は、第10の態様に係る研磨レシピ決定方法であって、
合否判定部が、前記研磨レシピにて実際に研磨することにより得られる実際の研磨結果と、前記研磨レシピにてシミュレーションにより得られるシミュレーションの研磨結果とを比較して、実際の研磨結果の合否を判定するステップと、
前記合否判定部により不合格と判定された場合には、過去の実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データと修正後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第3学習済みモデルを有する応答データ修正部が、不合格と判定された実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データとを入力として、修正後のエリア毎の応答データを推定して出力するステップと、
前記シミュレーション部が、前記応答データ修正部により推定された修正後のエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定し直すステップと、
をさらに備える。
【0026】
本発明の第12の態様に係る研磨レシピ決定方法は、
トップリングのエリア毎に圧力を変化させて取得されるエリア毎の応答データに基づいて研磨レシピを決定する研磨レシピ決定方法であって、
シミュレーション部が、新たなエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定するステップと、
合否判定部が、前記研磨レシピにて実際に研磨することにより得られる実際の研磨結果と、前記研磨レシピにてシミュレーションにより得られるシミュレーションの研磨結果とを比較して、実際の研磨結果の合否を判定するステップと、
前記合否判定部により不合格と判定された場合には、過去の実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データと修正後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第3学習済みモデルを有する応答データ修正部が、不合格と判定された実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答Eデータとを入力として、修正後のエリア毎の応答データを推定して出力するステップと、
前記シミュレーション部が、前記応答データ修正部により推定された修正後のエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定し直すステップと、
を備える。
【0027】
本発明の第13の態様に係る研磨レシピ決定プログラムは、
トップリングのエリア毎に圧力を変化させて取得されるエリア毎の応答データに基づいて研磨レシピを決定する処理をコンピュータに実行させる研磨レシピ決定プログラムであって、
前記コンピュータに、
過去のエリア毎の応答データとそれに異常があるか否かとの関係性を機械学習している第1学習済みモデルを有する異常有無推定部が、新たなエリア毎の応答データを入力として、異常の有無を推定して出力するステップと、
前記異常有無推定部により異常ありと推定された場合には、過去の異常ありのエリア毎の応答データと異常除去後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第2学習済みモデルを有するスクリーニング部が、異常ありと推定されたエリア毎の応答データを入力として、異常除去後のエリア毎の応答データを推定して出力するステップと、
シミュレーション部が、前記異常有無推定部により異常なしと推定されたエリア毎の応答データ、または前記スクリーニング部により推定された異常除去後のエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定するステップと、
を実行させる。
【0028】
本発明の第14の態様に係る研磨レシピ決定プログラムは、第13の態様に係る研磨レシピ決定プログラムであって、
前記コンピュータに、
合否判定部が、前記研磨レシピにて実際に研磨することにより得られる実際の研磨結果と、前記研磨レシピにてシミュレーションにより得られるシミュレーションの研磨結果とを比較して、実際の研磨結果の合否を判定するステップと、
前記合否判定部により不合格と判定された場合には、過去の実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データと修正後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第3学習済みモデルを有する応答データ修正部が、不合格と判定された実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データとを入力として、修正後のエリア毎の応答データを推定して出力するステップと、
前記シミュレーション部が、前記応答データ修正部により推定された修正後のエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定し直すステップと、
をさらに実行させる。
【0029】
本発明の第15の態様に係る研磨レシピ決定プログラムは、
トップリングのエリア毎に圧力を変化させて取得されるエリア毎の応答データに基づいて研磨レシピを決定する処理をコンピュータに実行させる研磨レシピ決定プログラムであって、前記応答データはウエハ各位置について研磨除去レートの変化量をエアバッグ圧力変化量で除したデータのことであり、
前記コンピュータに、
シミュレーション部が、新たなエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定するステップと、
合否判定部が、前記研磨レシピにて実際に研磨することにより得られる実際の研磨結果と、前記研磨レシピにてシミュレーションにより得られるシミュレーションの研磨結果とを比較して、実際の研磨結果の合否を判定するステップと、
前記合否判定部により不合格と判定された場合には、過去の実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データと修正後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第3学習済みモデルを有する応答データ修正部が、不合格と判定された実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データとを入力として、修正後のエリア毎の応答データを推定して出力するステップと、
前記シミュレーション部が、前記応答データ修正部により推定された修正後のエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定し直すステップと、
を実行させる。
【0030】
本発明の第16の態様に係るコンピュータ読取可能な記録媒体は、
トップリングのエリア毎に圧力を変化させて取得されるエリア毎の応答データに基づいて研磨レシピを決定する処理をコンピュータに実行させるプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体であって、
前記コンピュータに、
過去のエリア毎の応答データとそれに異常があるか否かとの関係性を機械学習している第1学習済みモデルを有する異常有無推定部が、新たなエリア毎の応答データを入力として、異常の有無を推定して出力するステップと、
前記異常有無推定部により異常ありと推定された場合には、過去の異常ありのエリア毎の応答データと異常除去後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第2学習済みモデルを有するスクリーニング部が、異常ありと推定されたエリア毎の応答データを入力として、異常除去後のエリア毎の応答データを推定して出力するステップと、
シミュレーション部が、前記異常有無推定部により異常なしと推定されたエリア毎の応答データ、または前記スクリーニング部により推定された異常除去後のエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定するステップと、
を実行させるプログラムを記録している。
【0031】
本発明の第17の態様に係るコンピュータ読取可能な記録媒体は、第16の態様に係るコンピュータ読取可能な記録媒体であって、
前記コンピュータに、
合否判定部が、前記研磨レシピにて実際に研磨することにより得られる実際の研磨結果と、前記研磨レシピにてシミュレーションにより得られるシミュレーションの研磨結果とを比較して、実際の研磨結果の合否を判定するステップと、
前記合否判定部により不合格と判定された場合には、過去の実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データと修正後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第3学習済みモデルを有する応答データ修正部が、不合格と判定された実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データとを入力として、修正後のエリア毎の応答データを推定して出力するステップと、
前記シミュレーション部が、前記応答データ修正部により推定された修正後のエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定し直すステップと、
をさらに実行させるプログラムを記録している。
【0032】
本発明の第18の態様に係るコンピュータ読取可能な記録媒体は、
トップリングのエリア毎に圧力を変化させて取得されるエリア毎の応答データに基づいて研磨レシピを決定する処理をコンピュータに実行させるプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体であって、
前記コンピュータに、
シミュレーション部が、新たなエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定するステップと、
合否判定部が、前記研磨レシピにて実際に研磨することにより得られる実際の研磨結果と、前記研磨レシピにてシミュレーションにより得られるシミュレーションの研磨結果とを比較して、実際の研磨結果の合否を判定するステップと、
前記合否判定部により不合格と判定された場合には、過去の実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データと修正後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第3学習済みモデルを有する応答データ修正部が、不合格と判定された実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データとを入力として、修正後のエリア毎の応答データを推定して出力するステップと、
前記シミュレーション部が、前記応答データ修正部により推定された修正後のエリア毎の応答データに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定し直すステップと、
を実行させるプログラムを記録している。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、研磨レシピの決定を高精度化、効率化できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、一実施の形態に係る情報処理システムの構成を示す概略図である。
図2図2は、一実施の形態に係る研磨装置の構成を示す概略図である。
図3図3は、一実施の形態に係るトップリングの内部構成を示す模式的断面図である。
図4図4は、一実施の形態に係る研磨テーブルの内部構成を示す模式的断面図である。
図5図5は、一実施の形態に係る研磨レシピ決定装置の構成を示すブロック図である。
図6図6は、一実施の形態に係る研磨レシピ決定方法の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、中央エリアについての正常な応答量プロファイルの一例を示す図である。
図8A図8Aは、左右異常点の異常がある中央エリアについての応答量プロファイルの一例を示す図である。
図8B図8Bは、圧力中央振り時エッジ異常点の異常がある中央エリアについての応答量プロファイルの一例を示す図である。
図8C図8Cは、ポーラー異常点の異常がある中央エリアについての応答量プロファイルの一例を示す図である。
図9図9は、実研磨の残膜プロファイルとシミュレーションの残膜プロファイルとを比較して示す図である。
図10図10は、修正前の応答量プロファイルと修正後の応答量プロファイルとを比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の説明および以下の説明で用いる図面では、同一に構成され得る部分について、同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0036】
<情報処理システム>
図1は、一実施の形態に係る情報処理システム200の構成を示す概略図である。
【0037】
図1に示すように、情報処理システム200は、化学機械研磨(CMP)を行う複数の研磨装置101~10n(以下、CMP装置ということがある)と、各研磨装置101~10nにネットワークを介して通信可能に接続された機械学習装置210とを有している。
【0038】
機械学習装置210は、たとえばクラウド型のコンピュータシステムまたは量子コンピューティングシステムであり、技術者により研磨レシピの決定が行われる1または2以上の研磨装置101~10kから、過去の研磨レシピ決定時に用いられたデータを取得して機械学習を行うとともに、学習成果としての学習済みモデルを1または2以上の研磨装置10k+1~10nに配信する。
【0039】
ここで、研磨装置101~10kから機械学習装置210へと送信される過去の研磨レシピ決定時のデータには、たとえば、トップリングの圧力室毎に圧力を変化させて取得されるエリア毎の応答データや、当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ、当該エリア毎の応答データに対して技術者が異常の有無を判定した判定結果、技術者が異常の種類を判別した判別結果、当該エリア毎の応答データに対して技術者によりデータ補完、除去が行われた異常除去後のエリア毎の応答データ、研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データに対して実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とのずれを考慮して技術者により修正された修正後のエリア毎の応答データなどが含まれる。制御可能なパラメータは、複数のエリアに圧力印加するトップリング内の複数の圧力室に関する圧力を含んでもよい。制御可能なパラメータは、トップリングのリテーナリングに圧力を追印加するトップリング内の圧力室に関する圧力を含んでもよい。複数のエリアを同心円状に配置してもよく、複数の位置は、ウエハの中心からの半径方向距離でもよい。複数の位置(ウエハ各位置)は、複数のエリアの第1のエリアの下にある第1の複数の位置と、複数のエリアの第2のエリアの下にある第2の複数の位置とを含んでもよい。制御可能なパラメータは、研磨テーブル回転速度またはトップリング回転速度を含んでもよい。ウエハ各位置は、ウエハ表面にわたって規則的に間隔が空いていてもよい。パラメータよりも多数の位置が存在してもよい。制御可能なパラメータは、プロセス種(ウエハ表面の膜種)、エアバッグのエリア毎の圧力、研磨時間、研磨パッド使用時間、研磨パッド温度、研磨液(研磨スラリ)の吐出量や温度や吐出・停止タイミング、研磨テーブルの回転数および回転速度の一方または両方、トップリングの回転数および回転速度の一方または両方、リテーナリング使用時間のうちの1つまたは2つ以上を含んでいてもよい。
【0040】
本実施の形態に係る機械学習装置210は、第1学習済みモデルを生成する第1機械学習部と、第2学習済みモデルを生成する第2機械学習部と、第3学習済みモデルを生成する第3機械学習部とを有している。各学習済みモデルの学習方法は、教師あり学習であってもよいし、教師なし学習であってもよい。
【0041】
第1機械学習部は、たとえば、入力層と、入力層に接続された1または2以上の中間層と、中間層に接続され出力層とを有する階層型のニューラルネットワークまたは量子ニューラルネットワーク(QNN)を含んでおり、研磨装置101~10kから取得されたエリア毎の応答データ(または研磨装置101~10kから取得されたエリア毎の応答データおよび当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)を入力層に入力し、それにより出力層から出力される出力結果と、当該エリア毎の応答データに対して技術者が異常の有無を判定した判定結果とを比較し、その誤差に応じて各ノードのパラメータ(重みや閾値など)を更新する処理を、研磨装置101~10kから取得された複数のエリア毎の応答データの各々について繰り返す。これにより、過去のエリア毎の応答データ(または過去のエリア毎の応答データおよび当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)とそれに異常があるか否かとの関係性を機械学習した第1学習済みモデルが生成される。
【0042】
一変形例として、第1機械学習部は、研磨装置101~10kから取得されたエリア毎の応答データ(または研磨装置101~10kから取得されたエリア毎の応答データおよび当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)を入力層に入力し、それにより出力層から出力される出力結果と、当該エリア毎の応答データに対して技術者が異常の有無および異常の種類を判定した判定結果とを比較し、その誤差に応じて各ノードのパラメータ(重みや閾値など)を更新する処理を、研磨装置101~10kから取得された複数のエリア毎の応答データの各々について繰り返すことにより、過去のエリア毎の応答データ(または過去のエリア毎の応答データおよび当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)とそれに異常があるか否かおよび異常の種類との関係性を機械学習した第1学習済みモデルを生成してもよい。
【0043】
第2機械学習部は、たとえば、入力層と、入力層に接続された1または2以上の中間層と、中間層に接続され出力層とを有する階層型のニューラルネットワークまたは量子ニューラルネットワーク(QNN)を含んでおり、技術者により異常ありと判定された過去のエリア毎の応答データ(または技術者により異常ありと判定された過去のエリア毎の応答データおよび当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)を入力層に入力し、それにより出力層から出力される出力結果と、当該エリア毎の応答データに対して技術者によりデータ補完、除去が行われた異常除去後のエリア毎の応答データとを比較し、その誤差に応じて各ノードのパラメータ(重みや閾値など)を更新する処理を、研磨装置101~10kから取得された複数のエリア毎の応答データの各々について繰り返す。これにより、過去の異常ありのエリア毎の応答データ(または過去の異常ありのエリア毎の応答データおよび当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)と異常除去後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習した第2学習済みモデルが生成される。
【0044】
一変形例として、第2機械学習部は、技術者により異常ありと判定された過去のエリア毎の応答データおよびその異常の種類(または技術者により異常ありと判定された過去のエリア毎の応答エリア毎の応答データおよびその異常の種類および当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)を入力層に入力し、それにより出力層から出力される出力結果と、当該エリア毎の応答データに対して技術者によりデータ補完、除去が行われた異常除去後のエリア毎の応答データとを比較し、その誤差に応じて各ノードのパラメータ(重みや閾値など)を更新する処理を、研磨装置101~10kから取得された複数のエリア毎の応答データの各々について繰り返すことにより、過去の異常ありのエリア毎の応答データと異常の種類(または過去の異常ありのエリア毎の応答データと異常の種類および当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)と異常除去後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習した第2学習済みモデルを生成してもよい。
【0045】
第3機械学習部は、たとえば、入力層と、入力層に接続された1または2以上の中間層と、中間層に接続され出力層とを有する階層型のニューラルネットワークまたは量子ニューラルネットワーク(QNN)を含んでおり、過去の実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データ(または過去の実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データおよび当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)を入力層に入力し、それにより出力層から出力される出力結果と、当該エリア毎の応答データに対して実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とのずれを考慮して技術者により修正された修正後のエリア毎の応答データとを比較し、その誤差に応じて各ノードのパラメータ(重みや閾値など)を更新する処理を、研磨装置101~10kから取得された複数のエリア毎の応答データの各々について繰り返す。これにより、過去の実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データ(または過去の実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データおよび当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)と修正後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習した第3学習済みモデルが生成される。
【0046】
図1に示すように、1または2以上の研磨装置10k+1~10nは、機械学習装置210から学習成果としての第1~第3学習済みモデルを取得する。
【0047】
<研磨装置>
次に、機械学習装置210から取得した学習済みモデルを有する研磨装置10k+1~10nの構成について符号10を付して説明する。
【0048】
図2は、研磨装置10の構成を示す概略図である。図2に示すように、研磨装置10は、研磨テーブル100と、研磨対象物である半導体ウエハ等の基板を保持して研磨テーブル100上の研磨面に押圧する基板保持装置としてのトップリング1と、研磨制御装置500と、研磨レシピ決定装置70とを備えている。
【0049】
研磨テーブル100は、テーブル軸100aを介してその下方に配置されるモータ(図示せず)に連結されている。研磨テーブル100は、モータが回転することにより、テーブル軸100a周りに回転する。研磨テーブル100の上面には、研磨部材としての研磨パッド101が貼付されている。この研磨パッド101の表面101aは、半導体ウエハWを研磨する研磨面を構成している。研磨テーブル100の上方には研磨液供給ノズル60が設置されている。この研磨液供給ノズル60から、研磨テーブル100上の研磨パッド101上に研磨液(研磨スラリ)Qが供給される。
【0050】
トップリング1は、半導体ウエハWを研磨面101aに対して押圧するトップリング本体2と、半導体ウエハWの外周縁を保持して半導体ウエハWがトップリング1から飛び出さないようにするリテーナ部材としてのリテーナリング3とから基本的に構成されている。トップリング1は、トップリングシャフト111に接続されている。このトップリングシャフト111は、上下動機構124によりトップリングヘッド110に対して上下動する。トップリング1の上下方向の位置決めは、トップリングシャフト111の上下動により、トップリングヘッド110に対してトップリング1の全体を昇降させて行われる。トップリングシャフト111の上端にはロータリージョイント25が取り付けられている。
【0051】
トップリングシャフト111及びトップリング1を上下動させる上下動機構124は、軸受126を介してトップリングシャフト111を回転可能に支持するブリッジ128と、ブリッジ128に取り付けられたボールねじ132と、支柱130により支持された支持台129と、支持台129上に設けられたACサーボモータ138とを備えている。サーボモータ138を支持する支持台129は、支柱130を介してトップリングヘッド110に固定されている。
【0052】
ボールねじ132は、サーボモータ138に連結されたねじ軸132aと、このねじ軸132aが螺合するナット132bとを備えている。トップリングシャフト111は、ブリッジ128と一体となって上下動する。従って、サーボモータ138を駆動すると、ボールねじ132を介してブリッジ128が上下動し、これによりトップリングシャフト111及びトップリング1が上下動する。
【0053】
また、トップリングシャフト111はキー(図示せず)を介して回転筒112に連結されている。回転筒112は、その外周部にタイミングプーリ113を備えている。トップリングヘッド110にはトップリング用回転モータ114が固定されており、タイミングプーリ113は、タイミングベルト115を介してトップリング用回転モータ114に設けられたタイミングプーリ116に接続されている。従って、トップリング用回転モータ114を回転駆動することによってタイミングプーリ116、タイミングベルト115、及びタイミングプーリ113を介して回転筒112及びトップリングシャフト111が一体に回転し、トップリング1が回転する。トップリングヘッド110は、フレーム(図示せず)に回転可能に支持されたトップリングヘッドシャフト117によって支持されている。
【0054】
研磨制御装置500は、トップリング用回転モータ114、サーボモータ138、研磨テーブル回転モータをはじめとする装置内の各機器を制御する。
【0055】
図3は、トップリング1の内部構成を示す模式的断面図である。図3においては、トップリング1を構成する主要構成要素だけを図示している。
【0056】
図3に示すように、トップリング1は、半導体ウエハWを研磨面101aに対して押圧するトップリング本体(キャリアとも称する)2と、研磨面101aを直接押圧するリテーナ部材としてのリテーナリング3とを有している。
【0057】
トップリング本体(キャリア)2は概略円盤状の部材からなり、リテーナリング3はトップリング本体2の外周部に取り付けられている。トップリング本体2は、エンジニアリングプラスティック(例えば、PEEK)などの樹脂により形成されている。
【0058】
トップリング本体2の下面には、半導体ウエハの裏面に当接する弾性膜(メンブレン)4が取り付けられている。弾性膜(メンブレン)4は、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム、シリコンゴム等の強度及び耐久性に優れたゴム材によって形成されている。弾性膜(メンブレン)4は、半導体ウエハ等の基板を保持する基板保持面を構成している。
【0059】
弾性膜(メンブレン)4は同心状の複数の隔壁4aを有し、これら隔壁4aによって、メンブレン4の上面とトップリング本体2の下面との間に円形状のセンター室5、環状のリプル室6、環状のアウター室7、環状のエッジ室8が形成されている。すなわち、トップリング本体2の中心部にセンター室5が形成され、中心から外周方向に向かって、順次、同心状に、リプル室6、アウター室7、エッジ室8が形成されている。トップリング本体2内には、センター室5に連通する流路11、リプル室6に連通する流路12、アウター室7に連通する流路13、エッジ室8に連通する流路14がそれぞれ形成されている。
【0060】
センター室5に連通する流路11、アウター室7に連通する流路13、エッジ室8に連通する流路14は、ロータリージョイント25を介して流路21、23、24にそれぞれ接続されている。流路21、23、24は、それぞれバルブV1-1、V3-1、V4-1及び圧力レギュレータR1、R3、R4を介して圧力調整部30に接続されている。また、流路21、23、24は、それぞれバルブV1-2、V3-2、V4-2を介して真空源31に接続されるとともに、バルブV1-3、V3-3、V4-3を介して大気に連通可能になっている。
【0061】
一方、リプル室6に連通する流路12は、ロータリージョイント25を介して流路22に接続されている。そして、流路22は、気水分離槽35、バルブV2-1及び圧力レギュレータR2を介して圧力調整部30に接続されている。また、流路22は、気水分離槽35及びバルブV2-2を介して真空源131に接続されるとともに、バルブV2-3を介して大気に連通可能になっている。
【0062】
また、リテーナリング3の直上にも弾性膜(メンブレン)32によってリテーナリング圧力室9が形成されている。弾性膜(メンブレン)32は、トップリング1のフランジ部に固定されたシリンダ33内に収容されている。リテーナリング圧力室9は、トップリング本体(キャリア)2内に形成された流路15及びロータリージョイント25を介して流路26に接続されている。流路26は、バルブV5-1及び圧力レギュレータR5を介して圧力調整部30に接続されている。また、流路26は、バルブV5-2を介して真空源31に接続されるとともに、バルブV5-3を介して大気に連通可能になっている。
【0063】
圧力レギュレータR1、R2、R3、R4、R5は、それぞれ圧力調整部30からセンター室5、リプル室6、アウター室7、エッジ室8、リテーナリング圧力室9に供給する圧力流体の圧力を調整する圧力調整機能を有している。圧力レギュレータR1、R2、R3、R4、R5及び各バルブV1-1~V1-3、V2-1~V2-3、V3-1~V3-3、V4-1~V4-3、V5-1~V5-3は、制御部500(図1参照)に接続されていて、それらの作動が制御されるようになっている。また、流路21、22、23、24、26にはそれぞれ圧力センサP1、P2、P3、P4、P5及び流量センサF1、F2、F3、F4、F5が設置されている。
【0064】
センター室5、リプル室6、アウター室7、エッジ室8、リテーナリング圧力室9に供給する流体の圧力は、圧力調整部30及び圧力レギュレータR1、R2、R3、R4、R5によってそれぞれ独立に調整される。このような構造により、半導体ウエハWを研磨パッド101に押圧する押圧力を半導体ウエハの領域毎に調整でき、かつリテーナリング3が研磨パッド101を押圧する押圧力を調整できる。
【0065】
図4は、研磨テーブル100の内部構成を示す模式的断面図である。図4においては、研磨テーブル100を構成する主要構成要素だけを図示している。
【0066】
図4に示すように、研磨テーブル100の内部には、その上面で開口する孔102が形成されている。また、研磨パッド101には、この孔102に対応する位置に通孔51が形成されている。孔102と通孔51とは連通している。通孔51は研磨面101aで開口している。孔102は液体供給路53及びロータリージョイント52を介して液体供給源55に連結されている。研磨中は、液体供給源55からは、透明な液体として水(好ましくは純水)が孔102に供給されるようになっている。水は、半導体ウエハWの下面と通孔51とによって形成される空間を満たし、液体排出路54を通じて排出される。研磨液は水と共に排出され、これにより光路が確保される。液体供給路53には、研磨テーブル100の回転に同期して作動するバルブ(図示せず)が設けられている。このバルブは、通孔51の上に半導体ウエハWが位置しないときは水の流れを止め、または水の流量を少なくするように動作する。
【0067】
研磨装置10は、基板の膜厚を測定する膜厚測定部40を備えている。膜厚測定部40は、光を発する光源44と、光源44から発せられた光を半導体ウエハWの表面に照射する投光部41と、半導体ウエハWから戻ってくる反射光を受光する受光部42と、半導体ウエハWからの反射光を波長に従って分解し、所定の波長範囲に亘って反射光の強度を測定する分光器43と、分光器43によって取得された測定データからスペクトルを生成し、このスペクトルに基づいて半導体ウエハWの膜厚を決定する処理部46とを備えた光学式の膜厚センサである。スペクトルは、所定の波長範囲に亘って分布する光の強度を示し、光の強度と波長との関係を示す。
【0068】
投光部41及び受光部42は、光ファイバーから構成されている。投光部41及び受光部42は、光学ヘッド(光学式膜厚測定ヘッド)45を構成している。投光部41は光源44に接続されている。受光部42は分光器43に接続されている。光源44としては、発光ダイオード(LED)、ハロゲンランプ、キセノンフラッシュランプなど、複数の波長を持つ光を発する光源を用いることができる。投光部41、受光部42、光源44、及び分光器43は、研磨テーブル100の内部に配置されており、研磨テーブル100とともに回転する。投光部41及び受光部42は、研磨テーブル100に形成された孔102内に配置されており、それぞれの先端は半導体ウエハWの被研磨面の近傍に位置している。
【0069】
投光部41及び受光部42は、半導体ウエハWの表面に対して垂直に配置されており、投光部41は半導体ウエハWの表面に垂直に光を照射する。投光部41及び受光部42は、トップリング1に保持された半導体ウエハWの中心に対向して配置される。したがって、研磨テーブル100が回転するたびに、投光部41及び受光部42の先端は半導体ウエハWを横切って移動し、半導体ウエハWの中心を含む領域に光が照射される。これは、投光部41及び受光部42が半導体ウエハWの中心を通ることで、半導体ウエハWの中心部の膜厚も含め、半導体ウエハWの全面の膜厚を測定するためである。処理部46は、測定された膜厚データを基に膜厚プロファイル(半径方向の膜厚分布)を生成することができる。処理部46は、研磨制御装置500(図2参照)に接続されており、生成した膜厚プロファイルを研磨制御装置500に出力する。
【0070】
半導体ウエハWの研磨中は、投光部41から光が半導体ウエハWに照射される。投光部41からの光は、半導体ウエハWの表面で反射し、受光部42によって受光される。半導体ウエハWに光が照射される間は、孔102及び通孔51には水が供給され、これにより、投光部41及び受光部42の各先端と、半導体ウエハWの表面との間の空間は水で満たされる。分光器43は、受光部42から送られてくる反射光を波長に従って分解し、波長ごとの反射光の強度を測定する。処理部46は、分光器43及によって測定された反射光の強度から、反射光の強度と波長との関係を示すスペクトルを生成する。さらに、処理部46は、得られたスペクトルから、公知技術を用いて半導体ウエハWの現在の膜厚プロファイル(残膜プロファイル)を推定する。
【0071】
研磨装置10は、上記の光学式の膜厚センサからなる膜厚測定部40に代えて、他の方式の膜厚測定部を備えていてよい。他の方式の膜厚測定部としては、例えば、研磨テーブル100の内部に配置され、半導体ウエハWの膜厚に従って変化する膜厚信号を取得する渦電流式膜厚センサがある。渦電流式膜厚センサは、研磨テーブル100と一体に回転し、トップリング1に保持された半導体ウエハWの膜厚信号を取得する。渦電流式膜厚センサは、図2に示す研磨制御装置500に接続されており、渦電流式膜厚センサによって取得された膜厚信号は研磨制御装置500に送られるようになっている。研磨制御装置500は、膜厚を直接または間接に表す膜厚指標値を膜厚信号から生成する。
【0072】
渦電流式膜厚センサは、コイルに高周波の交流電流を流して導電膜に渦電流を誘起させ、この渦電流の磁界に起因するインピーダンスの変化から導電膜の厚さを検出するように構成される。渦電流センサとしては、特開2014-017418号公報に記載されている公知の渦電流センサを用いることができる。
【0073】
なお、上記の例では、研磨面101aに通孔51を設けるとともに、液体供給路53、液体排出路54、液体供給源55を設け、孔102を水で満たしたが、これに代えて、研磨パッド101に透明窓を形成してもよい。この場合、投光部41は、この透明窓を通じて研磨パッド101上の基板Wの表面に光を照射し、受光部42は、透明窓を通じて半導体ウエハWからの反射光を受光する。
【0074】
以上のように構成された研磨装置10による研磨動作を説明する。トップリング1は基板受渡し装置(プッシャ)から半導体ウエハWを受け取り、その下面に半導体ウエハWを真空吸着により保持する。このとき、トップリング1は、被研磨面(通常はデバイスが構成される面、「表面」とも称する)を下向きにして、被研磨面が研磨パッド101の表面に対向するようにトップリング1を保持する。下面に半導体ウエハWを保持したトップリング1は、トップリングヘッドシャフト117の回転によるトップリングヘッド110の旋回により半導体ウエハWの受取位置から研磨テーブル100の上方に移動される。
【0075】
そして、半導体ウエハWを真空吸着により保持したトップリング1を予め設定したトップリングの研磨時設定位置まで下降させる。この研磨時設定位置では、リテーナリング3は研磨パッド101の表面(研磨面)101aに接地しているが、研磨前は、トップリング1で半導体ウエハWを吸着保持しているので、半導体ウエハWの下面(被研磨面)と研磨パッド101の表面(研磨面)101aとの間には、わずかな間隙(例えば、約1mm)がある。このとき、研磨テーブル100及びトップリング1は、ともに回転駆動されており、研磨テーブル100の上方に設けられた研磨液供給ノズル102から研磨パッド101上に研磨液が供給されている。
【0076】
この状態で、半導体ウエハWの裏面側にある弾性膜(メンブレン)4を膨らませ、半導体ウエハWの被研磨面の裏面を押圧することで、半導体ウエハWの被研磨面を研磨パッド101の表面(研磨面)101aに押圧し、半導体ウエハWの被研磨面と研磨パッド101の研磨面とを相対的に摺動させて、半導体ウエハWの被研磨面を所定の状態(例えば、所定の膜厚)になるまで研磨パッド101の研磨面101aで研磨する。研磨パッド101上でのウエハ処理工程の終了後、半導体ウエハWをトップリング1に吸着し、トップリング1を上昇させ、基板搬送機構を構成する基板受渡し装置へ移動させて、ウエハWの離脱(リリース)を行う。
【0077】
<研磨レシピ決定装置>
次に、研磨レシピ決定装置70の構成について説明する。図5は、研磨レシピ決定装置70の構成を示すブロック図である。図5に示すように、研磨レシピ決定装置70は、通信部71と、制御部72と、記憶部73とを有している。各部は、バスを介して互いに通信可能に接続されている。
【0078】
このうち通信部71は、機械学習装置210(図1参照)および研磨制御装置500と研磨レシピ決定装置70との間の通信インターフェースである。通信部71は、機械学習装置210および研磨制御装置500と研磨レシピ決定装置70との間で情報を送受信する。
【0079】
記憶部73は、たとえばハードディスク等の磁気データストレージである。記憶部73には、制御部72が取り扱う各種データが記憶される。また、記憶部73には、エリア毎の応答データ73aと、研磨レシピ73bと、実際の研磨結果73cと、シミュレーションの研磨結果73dとが記憶される。記憶部73には、エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータが記憶されてもよい。
【0080】
エリア毎の応答データ73aは、トップリング1の圧力室5~9(エリア)毎に圧力を変化させてテストウエハを研磨する圧力振り実験により取得される、エリア毎の応答データである。ここで「応答データ」とは、ウエハ各位置での研磨除去レートの変化量をエアバッグ圧力変化量で除したデータ(=研磨除去レートの変化量ΔV/圧力室5~9内の圧力の変化量ΔP)をいう。具体的には、たとえば、圧力室5に対応する中央エリアについての応答量プロファイル(応答データ)は、圧力室5のみ圧力P1、P2、・・・で加圧したときにウエハ各位置での研磨除去レートV1、V2、・・・を測定し、ウエハ各位置について、横軸を圧力、縦軸を研磨除去レートとした座標系で(P1,V1)、(P2,V2)、・・・をプロットしたときの近似直線のグラフの傾き(=応答量)を求めることにより、得ることができる。図7は、中央エリアについての応答量プロファイルの一例を示している。他の圧力室6~9に対応する他のエリアについても同様にして応答量プロファイル(応答データ)を得ることができる。
【0081】
なお、「応答データ」は、削った量や残った量に関係する因子を測定できれば、ウエハ各位置について研磨除去レート(除去の割合)の変化量をエアバッグ圧力変化量で除したデータに限定されるものではなく、たとえば、ウエハ各位置について研磨除去量の変化量をエアバッグ圧力変化量で除したデータであってもよいし、ウエハ各位置についてウエハ残膜の変化量をエアバッグ圧力変化量で除したデータであってもよい。あるいは、応答データは、残膜の性状(表出した金属ほかの材料の分布)をエアバッグ圧力変化量で除したデータであってもよい。
【0082】
研磨レシピ73bは、研磨を行うときの各種の条件を規定するデータであり、後述するシミュレーション部72bが、エリア毎の応答データ73aに基づいて、それ自体は公知のシミュレーションを行うことにより決定される。研磨レシピ73bは、研磨装置10内の各機器の制御可能なパラメータ、たとえばトップリング1の各圧力室5~9内の圧力、トップリング1の回転速度、研磨テーブル100の回転速度、研磨時間のうちの1つ以上を含んでいてもよい。
【0083】
実際の研磨結果73cは、研磨制御装置500が研磨装置10内の各機器を研磨レシピ73bに従って制御してウエハを研磨したときに、膜厚測定部40から取得される実研磨の膜厚プロファイル(残膜プロファイル)である(たとえば図9の実線のグラフ参照)。
【0084】
シミュレーションの研磨結果73dは、後述するシミュレーション部72bが、研磨レシピ73bの条件の下で、それ自体は公知のシミュレーションを行うことにより得られるシミュレーション上での膜厚プロファイル(残膜プロファイル)である(たとえば図9の破線のグラフ参照)。
【0085】
制御部72は、研磨レシピ決定装置70の各種処理を行う制御手段である。図5に示すように、制御部72は、異常有無推定部72aと、スクリーニング部72bと、シミュレーション部72cと、合否判定部72dと、応答データ修正部72eとを有している。これらの各部は、研磨レシピ決定装置70内のプロセッサが所定のプログラムを実行することにより実現されてもよいし、ハードウェアで実装されてもよい。
【0086】
異常有無推定部72aは、過去のエリア毎の応答データ(または過去のエリア毎の応答データおよび当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)とそれに異常があるか否かとの関係性を機械学習している第1学習済みモデル(機械学習装置210から取得した第1学習済みモデル)を有しており、記憶部73に記憶された新たなエリア毎の応答データ73a(または新たなエリア毎の応答データおよび当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)を入力として、異常の有無を推定して出力する。
【0087】
一変形例として、異常有無推定部72aは、過去のエリア毎の応答データ(または過去のエリア毎の応答データおよび当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)とそれに異常があるか否かおよび異常の種類との関係性を機械学習している第1学習済みモデルを有しており、記憶部73に記憶された新たなエリア毎の応答データ73a(または新たなエリア毎の応答データおよび当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)を入力として、異常の有無および異常の種類を推定して出力してもよい。
【0088】
図7は、中央エリアについての正常な応答量プロファイル(応答データ)の一例を示している。異常有無推定部72aは、第1学習済みモデルを用いることにより、このような正常な応答量プロファイル(応答データ)に対し、異常なしとの推定結果を出力することができる。
【0089】
図8Aは、左右異常点の異常がある中央エリアについての応答量プロファイル(応答データ)の一例を示している。図8Aにて矢印で示すように、このプロファイルには、左右で異なる箇所、すなわち左右異常点が存在する。異常有無推定部72aは、第1学習済みモデルを用いることにより、このような異常がある応答量プロファイル(応答データ)に対し、左右異常点の異常ありとの推定結果を出力することができる。
【0090】
図8Bは、中央エリア加圧時エッジ異常点の異常がある中央エリアについての応答量プロファイル(応答データ)の一例を示している。図8Bにて矢印で示すように、このプロファイルには、加圧した領域(この場合、中央エリア)以外で応答する箇所、すなわち中央エリア加圧時エッジ異常点が存在する。異常有無推定部72aは、第1学習済みモデルを用いることにより、このような異常がある応答量プロファイル(応答データ)に対し、中央エリア加圧時エッジ異常点の異常ありとの推定結果を出力することができる。
【0091】
図8Cは、ポーラー異常点の異常がある中央エリアについての応答量プロファイル(応答データ)の一例を示している。図8Cの上図にて矢印で示すように、このプロファイルには、周方向の振る舞いが異常となる半径方向位置のデータ、すなわちポーラー異常点が存在する。図8Cの下図は、ポーラー異常点の半径方向位置について、周方向で計測されたプロファイルを示している。異常有無推定部72aは、第1学習済みモデルを用いることにより、このような異常がある応答量プロファイル(応答データ)に対し、ポーラー異常点の異常ありとの推定結果を出力することができる。
【0092】
スクリーニング部72bは、過去の異常ありのエリア毎の応答データ(または過去の異常ありのエリア毎の応答データおよび当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)と異常除去後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第2学習済みモデル(機械学習装置210から取得した第2学習済みモデル)を有しており、異常有無推定部72aにより異常ありと推定された場合には、異常ありと推定されたエリア毎の応答データ73a(または異常ありと推定されたエリア毎の応答データおよび当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)を入力として、異常除去後のエリア毎の応答データを推定して出力する。記憶部73に記憶されたエリア毎の応答データ73aは、スクリーニング部72bにより推定された異常除去後のエリア毎の応答データにて更新される。
【0093】
一変形例として、スクリーニング部72bは、過去の異常ありのエリア毎の応答データおよびその異常の種類(または過去の異常ありのエリア毎の応答データおよびその異常の種類および当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)と異常除去後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第2学習済みモデルを有しており、異常有無推定部72aにより異常ありと推定された場合には、異常ありと推定されたエリア毎の応答データ73aおよび推定された異常の種類(左右異常点、中央エリア加圧時エッジ異常点、ポーラー異常点など)(または異常ありと推定されたエリア毎の応答データおよび推定された異常の種類および当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)を入力として、異常除去後のエリア毎の応答データを推定して出力してもよい。異常ありと推定されたエリア毎の応答データについて、その異常の種類の情報も利用して推定を行うことで、異常除去後のエリア毎の応答データをより高精度に推定することができる。
【0094】
シミュレーション部72cは、異常有無推定部72aにより異常なしと推定されたエリア毎の応答データ73a、またはスクリーニング部72bにより推定された異常除去後のエリア毎の応答データ73aに基づいて、それ自体は公知のシミュレーションにより研磨レシピ73bを決定する。シミュレーション部72cは、スクリーニング後の(ノイズが少ない)エリア毎の応答データ73aに基づいてシミュレーションにより研磨レシピを決定することにより、研磨レシピを高精度かつ効率的に決定することができる。シミュレーション部72cにより決定された研磨レシピ73bは、記憶部73に記憶される。
【0095】
合否判定部72dは、シミュレーション部72cにより決定された研磨レシピ73bにて研磨装置10が実際にウエハを研磨することにより得られる実際の研磨結果73cと、当該研磨レシピ73bにてシミュレーションを行うことにより得られるシミュレーションの研磨結果73dとを比較して(図9参照)、そのずれの大きさに基づいて実際の研磨結果73cの合否を判定する。たとえば、合否判定部72dは、シミュレーションの研磨結果73dに対する実際の研磨結果73cのずれが予め定められた閾値以下の場合には、合格と判定し、ずれが閾値より大きい場合には、不合格と判定する。
【0096】
応答データ修正部72eは、過去の実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データ(または過去の実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データおよび当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)と修正後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第3学習済みモデル(機械学習装置210から取得した第3学習済みモデル)を有しており、合否判定部72dにより不合格と判定された場合には、不合格と判定された実際の研磨結果73cとシミュレーションの研磨結果73dとその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データ72a(または不合格と判定された実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データおよび当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)とを入力として、修正後のエリア毎の応答データを推定して出力する。記憶部73に記憶されたエリア毎の応答データ73aは、応答データ修正部72eにより推定された修正後のエリア毎の応答データにて更新される。
【0097】
具体的には、たとえば、図10を参照し、実研磨の残膜プロファイル(上図の実線のグラフ)は、シミュレーションの残膜プロファイル(上図の破線のグラフ)と比較すると、中央エリアでの残膜が多い(研磨不足である)。応答データ修正部72eは、第3学習済みモデルを用いることにより、中央エリアについての応答量プロファイル(下図の破線のグラフ)に対し、実研磨の残膜プロファイルとシミュレーションの残膜プロファイルとをずれを考慮して、中央エリアの応答量が小さくなるように修正された修正後の中央エリアについて応答量プロファイル(応答データ)(下図の実線のグラフ)を推定して出力することができる。
【0098】
シミュレーション部72cは、応答データ修正部72eにより推定された修正後のエリア毎の応答データ73aに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピ73bを決定し直す。記憶部73に記憶された研磨レシピ73bは、シミュレーション部72cにより再決定された研磨レシピにて更新される。
【0099】
なお、本実施の形態に係る研磨レシピ決定装置70は、1または複数のコンピュータによって構成され得るが、1または複数のコンピュータに研磨レシピ決定装置70を実現させるためのプログラム及び当該プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体も、本件の保護対象である。
【0100】
<研磨レシピ決定方法>
次に、このような構成からなる研磨レシピ決定装置70による研磨レシピ決定方法の一例について説明する。図6は、研磨レシピ決定方法の一例を示すフローチャートである。
【0101】
図6に示すように、まず、研磨装置10が、トップリング1の圧力室(エリア)毎に供給される流体の圧力を変化させてテストウエハを研磨する圧力振り実験を行って、エリア毎の応答データを取得する(ステップS11)。取得されたエリア毎の応答データは、研磨レシピ決定装置70の記憶部73に記憶される。エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータが記憶部73に記憶されてもよい。
【0102】
次に、過去のエリア毎の応答データ(または過去のエリア毎の応答データおよび当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)とそれに異常があるか否かとの関係性を機械学習している第1学習済みモデルを有する異常有無推定部72aが、記憶部73に記憶された新たなエリア毎の応答データ73a(または新たなエリア毎の応答データおよび当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)を入力として、異常の有無を推定して出力する(ステップS12)。
【0103】
一変形例として、異常有無推定部72aは、過去のエリア毎の応答データ(または過去のエリア毎の応答データおよび当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)とそれに異常があるか否かおよび異常の種類との関係性を機械学習している第1学習済みモデルに基づいて、記憶部73に記憶された新たなエリア毎の応答データ73a(または新たなエリア毎の応答データおよび当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)を入力として、異常の有無に加えて、異常の種類を推定して出力してもよい。
【0104】
異常有無推定部72aにより異常なしと推定された場合には(ステップS13:NO)、後述するステップS15へと移行する。
【0105】
他方、異常有無推定部72aにより異常ありと推定された場合には、過去の異常ありのエリア毎の応答データ(または過去の異常ありのエリア毎の応答データおよび当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)と異常除去後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第2学習済みモデルを有するスクリーニング部72bが、異常ありと推定されたエリア毎の応答データ73a(または異常ありと推定された過去の異常ありのエリア毎の応答データおよび当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)を入力として、異常除去後のDOEデータを推定して出力する(ステップS14)。
【0106】
一変形例として、スクリーニング部72bは、過去の異常ありのエリア毎の応答データと異常の種類(または過去の異常ありのエリア毎の応答データおよびその異常の種類および当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)と異常除去後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第2学習済みモデルに基づいて、異常ありと推定されたエリア毎の応答データ73aおよび推定された異常の種類(または異常ありと推定されたエリア毎の応答データおよび推定された異常の種類および当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)とを入力として、異常除去後のエリア毎の応答データを推定して出力してもよい。
【0107】
記憶部73に記憶されたエリア毎の応答データ73aは、スクリーニング部72bにより推定された異常除去後のエリア毎の応答データにて更新される。
【0108】
次に、シミュレーション部72cが、異常有無推定部72aにより異常なしと推定されたエリア毎の応答データ73a、またはスクリーニング部72bにより推定された異常除去後のエリア毎の応答データ73aに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピ73bを決定する(ステップS15)。シミュレーション部72cにより決定された研磨レシピ73bは、記憶部73に記憶される。
【0109】
次に、研磨装置10が、シミュレーション部72cにより決定された研磨レシピ73bにて実際にウエハを研磨して、実際の研磨結果を取得する(ステップS16)。取得された実際の研磨結果は、研磨レシピ決定装置70の記憶部73に記憶される。
【0110】
次いで、合否判定部72dが、実際の研磨結果73cと、シミュレーション部72cにより決定された研磨レシピ73bにてシミュレーションを行うことにより得られるシミュレーションの研磨結果73dとを比較して、そのずれの大きさに基づいて実際の研磨結果73cの合否を判定する(ステップS17)。
【0111】
合否判定部72dにより合格と判定された場合には(ステップS18:YES)、研磨レシピ決定装置10の処理を終了する。
【0112】
他方、合否判定部72dにより不合格と判定された場合には(ステップS18:NO)、過去の実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データ(または過去の実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データおよび当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)と修正後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第3学習済みモデルを有する応答データ修正部72eが、不合格と判定された実際の研磨結果73cとシミュレーションの研磨結果73dとその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データ73a(または不合格と判定された実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データおよび当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)とを入力として、修正後のエリア毎の応答データを推定して出力する(ステップS19)。記憶部73に記憶されたエリア毎の応答データ73aは、応答データ修正部72eにより推定された修正後のエリア毎の応答データにて更新される。そして、ステップS15に戻って処理をやり直す。
【0113】
すなわち、シミュレーション部72cは、応答データ修正部72eにより推定された修正後のエリア毎の応答データ73aに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピ73bを決定し直す(ステップS15)。記憶部73に記憶された研磨レシピ73bは、シミュレーション部72cにより再決定された研磨レシピにて更新される。
【0114】
以上のような本実施の形態によれば、異常有無推定部72aが、過去のエリア毎の応答データ(または過去のエリア毎の応答データおよび当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)と異常の有無との関係性を機械学習している第1学習済みモデルを有するため、新たなエリア毎の応答データ73a(または新たなエリア毎の応答データおよび当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)に異常があるか否かを、短時間で推定できるとともに、学習量に応じて高精度に推定することが可能である。また、スクリーニング部72bが、過去の異常ありのエリア毎の応答データ(または過去の異常ありのエリア毎の応答データおよび当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)と異常除去後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第2学習済みモデルを有するため、異常ありと推定されたエリア毎の応答データ73a(または異常ありと推定されたエリア毎の応答データおよび当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)から、異常除去後のエリア毎の応答データを、短時間で推定できるとともに、学習量に応じて高精度に推定することが可能である。そして、シミュレーション部72cが、スクリーニング後の(ノイズが少ない)エリア毎の応答データ73aに基づいてシミュレーションにより研磨レシピを決定することにより、研磨レシピを高精度かつ効率的に決定することができる。
【0115】
また、本実施の形態によれば、応答データ修正部72eが、過去の実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データ(または過去の実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データおよび当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)と修正後のエリア毎の応答データとの関係性を機械学習している第3学習済みモデルを有するため、不合格と判定された実際の研磨結果73cとシミュレーションの研磨結果73dとその時の研磨レシピ73cの決定に利用されたエリア毎の応答データ73a(または不合格と判定された実際の研磨結果とシミュレーションの研磨結果とその時の研磨レシピの決定に利用されたエリア毎の応答データおよび当該エリア毎の応答データ取得時における制御可能なパラメータ)とから、修正後のエリア毎の応答データを、短時間で推定できるとともに、学習量に応じて高精度に推定することが可能である。そして、シミュレーション部72cが、応答データ修正部73eにより推定された修正後のエリア毎の応答データ73aに基づいて、シミュレーションにより研磨レシピを決定し直すことにより、研磨レシピの決定をさらに高精度化できる。
【0116】
以上、本発明の実施の形態および変形例を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。また、各実施の形態および変形例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0117】
1 トップリング
10 研磨装置
70 研磨レシピ決定装置
71 通信部
72 制御部
72a 異常有無推定部
72b スクリーニング部
72c シミュレーション部
72d 合否判定部
72e 応答データ修正部
73 記憶部
73a エリア毎の応答データ
73b 研磨レシピ
73c 実際の研磨結果
73d シミュレーションの研磨結果
200 情報処理システム
210 機械学習装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10