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特許7087111ポリプロピレン樹脂の物性評価方法、ポリプロピレン不織布の製造方法、およびポリプロピレン不織布
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】ポリプロピレン樹脂の物性評価方法、ポリプロピレン不織布の製造方法、およびポリプロピレン不織布
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/44 20060101AFI20220613BHJP
   D04H 3/007 20120101ALI20220613BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20220613BHJP
   G01N 3/00 20060101ALI20220613BHJP
   G01N 19/00 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
G01N33/44
D04H3/007
D04H3/16
G01N3/00 K
G01N19/00 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020558934
(86)(22)【出願日】2019-06-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 KR2019007542
(87)【国際公開番号】W WO2019245338
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】10-2018-0072318
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒョンスプ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ミン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ソプ・ノ
(72)【発明者】
【氏名】ヒクワン・パク
(72)【発明者】
【氏名】キ・スー・イ
(72)【発明者】
【氏名】サンジン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ミュンハン・イ
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/074732(WO,A1)
【文献】特表2017-505390(JP,A)
【文献】特開2017-002423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/36,33/44,
D04H 1/00,3/00,
G01N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトブロー(Melt blown)工程により製造されるポリプロピレン不織布のロフト物性を評価する、ポリプロピレン樹脂の物性評価方法であって、
ポリプロピレン試料に対して、150乃至250%の変形(ひずみ)を加える段階;
変形を加え、第1時間(S1)が経過した後、第1残留応力を測定する段階;
変形を加え、第2時間(S2)が経過した後、第2残留応力を測定する段階;および
下記式1で表される、残留応力比率を導出する段階を含み、
前記ポリプロピレン試料として、第1ポリプロピレン試料、および第2ポリプロピレン試料を準備する段階;
前記第1および第2ポリプロピレン試料に対して、残留応力比率を導出する段階;および
前記第1および第2ポリプロピレン試料の残留応力比率を比較する段階をさらに含む、
ポリプロピレン樹脂の物性評価方法:
[式1]
残留応力比率=Stress S2/Stress S1
前記式1で、
Stress S1は、前記第1時間(S1)後に測定した第1残留応力であり、
Stress S2は、前記第2時間(S2)後に測定した第2残留応力であり、
S2>S1である。
【請求項2】
前記変形を加える段階、および第1および第2残留応力を測定する段階は、下記式2で表される温度条件で行われる、請求項1に記載のポリプロピレン樹脂の物性評価方法:
[式2]
Tm≦T<Td
前記式2で、
Tは、前記変形を加える温度条件であり、
Tmは、前記ポリプロピレン試料の溶融温度であり、
Tdは、前記ポリプロピレン試料の熱分解開始温度である。
【請求項3】
前記S1は、0.001乃至0.05秒であり、前記S2は、0.1乃至5秒である、
請求項1または2に記載のポリプロピレン樹脂の物性評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン樹脂の物性評価方法、ポリプロピレン不織布の製造方法、およびポリプロピレン不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布、または不織ウェブは、直径が約10μm程度である微細繊維がランダムに絡まってクモの巣のような構造を有する3次元構造の繊維集合体である。
【0003】
不織布、または不織ウェブは、微細繊維が相互結合して形成されるため、感触や触感などに非常に優れ、加工性がよく、強度、延性および耐摩耗性に優れている。
【0004】
このような不織布は、包帯材料、油吸収材、吸音用建築資材、使い捨ておむつ、女性用衛生用品など、多様な技術分野で多様な用途で使用されており、最近は、防塵衣類、防塵マスク、ワイピングクロス、精密濾過フィルター、電池用分離膜など、最新技術分野にも幅広く使用されている。
【0005】
不織布または不織ウェブを製造する工程は、多様な種類が知られているが、そのうちメルトブロー工程が最も多く使用される。メルトブロー(Melt blown)工程は、繊維糸を形成することができる熱可塑性プラスチック樹脂を数百乃至数千個の空洞を有するオリフィス(orifice)が複数個連結されたオリフィスダイから、溶融した樹脂を吐出させ、ダイの両側に配置された高速ガス噴射口から高温ガスを噴射して繊維糸を極細糸に延伸させ、極細化された繊維糸を収集体に積層させる方法により製造される。
【0006】
このようなメルトブロー不織布は、極細化された繊維集合体がバルクな構造で形成される構造的特徴によって、前記のように多様な用途に使用され得る。
【0007】
通常のメルトブロー工程では、プラスチック樹脂がオリフィスダイから吐出され、高温のガスにより延伸されることによって、繊維糸の直径が決定されるが、吐出圧力、ガス温度、ガス噴射速度だけでなく、プラスチック樹脂自体の特性に大きい影響を受けるようになる。
【0008】
特に、メルトブロー工程により生産されるポリプロピレン不織布は、おむつ、女性用衛生材料、細塵用マスクなどに使用されるが、この場合、使用者の皮膚に直接的に接触するようになる特性上、優れた可撓性(Flexibility)および柔らかさ(Softness)を備えた、ハイロフト不織布(High loft non-woven fabric)が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ロフト特性に優れたポリプロピレン不織布を提供する。また本発明は、ロフト特性に優れたポリプロピレン不織布を製造する方法およびこのようなポリプロピレン樹脂の物性を評価する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
ポリプロピレン試料に対して、150乃至250%の変形(Strain)を加える段階;
変形を加え、第1時間(S1)が経過した後、第1残留応力を測定する段階;
変形を加え、第2時間(S2)が経過した後、第2残留応力を測定する段階;および
下記式1で表される、残留応力比率を導出する段階を含む、
ポリプロピレン樹脂の物性評価方法を提供する。
【0011】
[式1]
残留応力比率=Stress S2/Stress S1
【0012】
前記式1で、
Stress S1は、前記第1時間(S1)後に測定した第1残留応力であり、
Stress S2は、前記第2時間(S2)後に測定した第2残留応力であり、
S2>S1である。
【0013】
前記変形を加える段階、および第1および第2残留応力を測定する段階は、下記式2で表される温度条件で行われてもよい。
【0014】
[式2]
Tm≦T<Td
【0015】
前記式2で、
Tは、前記変形を加える温度条件であり、
Tmは、前記ポリプロピレン試料の溶融温度であり、
Tdは、前記ポリプロピレン試料の熱分解開始温度である。
【0016】
そして、前記ポリプロピレン樹脂の物性評価方法において、前記S1は、0.001乃至0.05秒であり、前記S2は、0.1乃至5秒であることが好ましい。
【0017】
そして、前記ポリプロピレン樹脂の物性評価方法は、具体的に、メルトブロー(Melt blown)工程により製造されるポリプロピレン不織布のロフト物性を評価および予測するためのものであってもよい。
【0018】
このために、ポリプロピレン樹脂の物性評価方法は、前記ポリプロピレン試料として、第1ポリプロピレン試料、および第2ポリプロピレン試料を準備する段階;前記第1および第2ポリプロピレン試料に対して、残留応力比率を導出する段階;および前記第1および第2ポリプロピレン試料の残留応力比率を比較する段階をさらに含むことができる。
【0019】
そして、この時、前述したポリプロピレン試料のそれぞれの残留応力比率の差が10倍以上である場合、適したものと評価することができ、この時、ポリプロピレン試料は2種以上であってもよい。
【0020】
一方、本発明は、
第1ポリプロピレン樹脂および第2ポリプロピレン樹脂を選択する段階;および
前記ポリプロピレン樹脂を同時にメルトブロー工程に投入し、各ポリプロピレン延伸糸を製造する段階を含み、
前記第1および第2ポリプロピレン樹脂は、それぞれ下記式1で表される残留応力比率の差が10倍以上である、
ポリプロピレン不織布の製造方法を提供する。
【0021】
[式1]
残留応力比率=Stress S2/Stress S1
【0022】
前記式1で、
Stress S1は、前記第1および第2ポリプロピレン樹脂のそれぞれに対して、150乃至250%の変形(Strain)を加え、第1時間(S1)後に測定した第1残留応力であり、
Stress S2は、前記第1および第2ポリプロピレン樹脂のそれぞれに対して、150乃至250%の変形(Strain)を加え、第2時間(S2)後に測定した第2残留応力であり、
S2>S1である。
【0023】
この時、残留応力比率は、下記式2で表される温度条件で測定されてもよい。
【0024】
[式2]
Tm≦T<Td
【0025】
前記式2で、
Tは、前記変形を加える温度条件であり、
Tmは、前記ポリプロピレン試料の溶融温度であり、
Tdは、前記ポリプロピレン試料の熱分解開始温度である。
【0026】
そして、前記メルトブロー工程は、150乃至250℃の温度条件で行われることが好ましく、100乃至10,000倍の長さ延伸条件で行われることが好ましい。
【0027】
前記第1および第2ポリプロピレン樹脂は、それぞれ、重量平均分子量値が10,000乃至250,000g/molであってもよい。そして、それぞれ、分子量分布値が2乃至5であってもよい。
【0028】
一方、本発明は、
第1ポリプロピレン樹脂の延伸糸および第2ポリプロピレン樹脂の延伸糸を含み、
前記第1および第2ポリプロピレン樹脂は、それぞれ下記式1で表される残留応力比率の差が10倍以上である、
ポリプロピレン不織布を提供する。
【0029】
[式1]
残留応力比率=Stress S2/Stress S1
【0030】
前記式1で、
Stress S1は、前記第1および第2ポリプロピレン樹脂のそれぞれに対して、150乃至250%の変形(Strain)を加え、第1時間(S1)後に測定した第1残留応力であり、
Stress S2は、前記第1および第2ポリプロピレン樹脂のそれぞれに対して、150乃至250%の変形(Strain)を加え、第2時間(S2)後に測定した第2残留応力であり、
S2>S1である。
【0031】
この時、前記第1および第2ポリプロピレン樹脂は、それぞれ、重量平均分子量値が10,000乃至250,000g/molであり、分子量分布値が2乃至5であることが好ましい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、優れた可撓性(Flexibility)および柔らかさ(Softness)を備えた、ハイロフトポリプロピレン不織布を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の一側面によれば、
ポリプロピレン試料に対して、150乃至250%の変形(Strain)を加える段階;
変形を加え、第1時間(S1)が経過した後、第1残留応力を測定する段階;
変形を加え、第2時間(S2)が経過した後、第2残留応力を測定する段階;および
下記式1で表される、残留応力比率を導出する段階を含む、
ポリプロピレン樹脂の物性評価方法が提供される。
【0034】
[式1]
残留応力比率=Stress S2/Stress S1
【0035】
前記式1で、
Stress S1は、前記第1時間(S1)後に測定した第1残留応力であり、
Stress S2は、前記第2時間(S2)後に測定した第2残留応力であり、
S2>S1である。
【0036】
本発明の他の一側面によれば、
第1ポリプロピレン樹脂および第2ポリプロピレン樹脂を選択する段階;および
前記ポリプロピレン樹脂を同時にメルトブロー工程に投入し、各ポリプロピレン延伸糸を製造する段階を含み、
前記第1および第2ポリプロピレン樹脂は、それぞれ下記式1で表される残留応力比率の差が10倍以上である、
ポリプロピレン不織布の製造方法が提供される。
【0037】
[式1]
残留応力比率=Stress S2/Stress S1
【0038】
前記式1で、
Stress S1は、前記第1および第2ポリプロピレン樹脂のそれぞれに対して、150乃至250%の変形(Strain)を加え、第1時間(S1)後に測定した第1残留応力であり、
Stress S2は、前記第1および第2ポリプロピレン樹脂のそれぞれに対して、150乃至250%の変形(Strain)を加え、第2時間(S2)後に測定した第2残留応力であり、
S2>S1である。
【0039】
そして、本発明の他の一側面によれば、
第1ポリプロピレン樹脂の延伸糸および第2ポリプロピレン樹脂の延伸糸を含み、
前記第1および第2ポリプロピレン樹脂は、それぞれ下記式1で表される残留応力比率の差が10倍以上である、
ポリプロピレン不織布を提供する。
【0040】
[式1]
残留応力比率=Stress S2/Stress S1
【0041】
前記式1で、
Stress S1は、前記第1および第2ポリプロピレン樹脂のそれぞれに対して、150乃至250%の変形(Strain)を加え、第1時間(S1)後に測定した第1残留応力であり、
Stress S2は、前記第1および第2ポリプロピレン樹脂のそれぞれに対して、150乃至250%の変形(Strain)を加え、第2時間(S2)後に測定した第2残留応力であり、
S2>S1である。
【0042】
本発明において、第1、第2などの用語は、多様な構成要素を説明することに使用され、前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで使用される。
【0043】
また、本明細書で使用される用語は、単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
【0044】
また本発明において、各層または要素が各層または要素の「上に」形成されるものと言及される場合には、各層または要素が直接各層または要素の上に形成されることを意味したり、他の層または要素が各層の間、対象体、基材上に追加的に形成され得ることを意味する。
【0045】
本発明は、多様な変更を加えることができ、多様な形態を有することができるところ、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。
【0046】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0047】
本発明の一側面によれば、
ポリプロピレン試料に対して、150乃至250%の変形(Strain)を加える段階;
変形を加え、第1時間(S1)が経過した後、第1残留応力を測定する段階;
変形を加え、第2時間(S2)が経過した後、第2残留応力を測定する段階;および
下記式1で表される、残留応力比率を導出する段階を含む、
ポリプロピレン樹脂の物性評価方法が提供される。
【0048】
[式1]
残留応力比率=Stress S2/Stress S1
【0049】
前記式1で、
Stress S1は、前記第1時間(S1)後に測定した第1残留応力であり、
Stress S2は、前記第2時間(S2)後に測定した第2残留応力であり、
S2>S1である。
【0050】
本発明の発明者らは、ポリプロピレン樹脂をメルトブロー工程に投入して不織布を製造する工程において、製造されるポリプロピレンの不織布のロフト関連特性がポリプロピレン樹脂自体の物性と関連があり、特に樹脂試片に外力を加えた後、時間に応じた応力の変化から計算できる、残留応力比率と関連が高いという事実を、実験を通じて発見して本発明を完成した。
【0051】
具体的に、前記ポリプロピレン樹脂の物性評価方法は、下記のような段階を含む。
【0052】
ポリプロピレン試料に対して、150乃至250%の変形(Strain)を加える段階;
変形を加え、第1時間(S1)が経過した後、第1残留応力を測定する段階;
変形を加え、第2時間(S2)が経過した後、第2残留応力を測定する段階;および
下記式1で表される、残留応力比率を導出する段階:
[式1]
残留応力比率=Stress S2/Stress S1
前記式1で、
Stress S1は、前記第1時間(S1)後に測定した第1残留応力であり、
Stress S2は、前記第2時間(S2)後に測定した第2残留応力であり、
S2>S1である。
【0053】
ポリプロピレンなどの高分子樹脂は、外力を加えた時、外力による外形の変化、つまり、変形(Strain)が発生するようになるが、このような変形は急激に起こり、この時、樹脂内に残留する残留応力は、時間の経過により、徐々に減少して無くなる応力緩和現像(Stress Relaxation)を示すようになり、これによって、残留応力は時間に対する関数形態で示される。
【0054】
つまり、特定の温度条件で外力を加え、剪断(Shear)方向の変形を起こし、変形を一定に維持させる場合、高分子樹脂自体の移動による応力緩和は発生し難いため、分子レベルで分子の弛緩および粘性流動による応力緩和が発生するようになり、残留応力が時間に対する関数形態で記録される。
【0055】
つまり、本発明の一側面による、ポリプロピレン樹脂の物性評価方法は、樹脂試片に外力を加えて変形させた後、変形が維持される状態で時間に応じた残留応力の比率を定量化したものといえる。
【0056】
この時、前記変形を加える段階、および第1および第2残留応力を測定する段階は、下記式2で表される温度条件で行われてもよい。
【0057】
[式2]
Tm≦T<Td
【0058】
前記式2で、
Tは、前記変形を加える温度条件であり、
Tmは、前記ポリプロピレン試料の溶融温度であり、
Tdは、前記ポリプロピレン試料の熱分解開始温度である。
【0059】
そして、前記ポリプロピレン樹脂の物性評価方法において、前記S1は、約0.001乃至約0.05秒であり、前記S2は、約0.1乃至約5秒であってもよく、好ましくは、前記S1は、約0.01乃至約0.03秒、あるいは約0.02秒であり、前記S2は、約0.5乃至約2秒、あるいは約1秒であってもよい。また、この時、S2/S1の値が約10乃至約100であることが好ましい。
【0060】
つまり、本発明の一実施例によれば、ポリプロピレン樹脂試片に外力を加えて変形を発生させ、その変形が維持される状態で応力が緩和される応力緩和実験(Stress Relaxation Experiment)において、樹脂試片に残留する応力を測定し、初期の残留応力と、ある程度時間が経過した後の残留応力比率を通じて、ポリプロピレン樹脂の物性を評価するものであってもよい。
【0061】
そして、前記のように、ポリプロピレン樹脂の残留応力比率を測定し、物性を評価することは、具体的に、前記ポリプロピレン樹脂をメルトブロー(Melt blown)工程に投入し、ポリプロピレン不織布を製造する時、製造されるポリプロピレン不織布のロフト物性を評価および予測するためのものであってもよい。
【0062】
このために、ポリプロピレン樹脂の物性評価方法は、2種以上のポリプロピレン試料を準備し、これらそれぞれの残留応力比率を測定して、これを比較する方法で行われてもよい。
【0063】
具体的に例を挙げると、まず、前記ポリプロピレン樹脂の物性評価方法は、前記ポリプロピレン試料として、第1ポリプロピレン試料、および第2ポリプロピレン試料を準備する段階を含むことができる。つまり、2種以上のポリプロピレン試料を準備するが、前記第1および第2ポリプロピレン試料は、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0064】
そして、前記第1および第2ポリプロピレン試料に対して、残留応力比率を導出することができる。各ポリプロピレン試料に対して残留応力比率を導出する、具体的な方法は、請求項第1項などに対する説明で代替する。
【0065】
以降、前記第1および第2ポリプロピレン試料の残留応力比率を比較する段階をさらに含むことができる。
【0066】
この時、前述したポリプロピレン試料のそれぞれの残留応力比率の差が10倍以上である場合、あるいは10倍乃至約100倍、あるいは約10倍乃至約20倍である場合、適したものと評価することができる。つまり、前述したポリプロピレン試料のそれぞれの残留応力比率の差が一定以上である場合には、該当する2種のポリプロピレン樹脂をそれぞれメルトブロー工程に投入して製造されたポリプロピレン不織布が、非常に優れたロフト物性を有するようになる。
【0067】
そして、この時、ポリプロピレン試料は必ず2種に限定されるのではなく、3種以上であり、この場合、全体ポリプロピレン試料中でいずれか一対のポリプロピレン試料のそれぞれの残留応力比率の差が10倍以上である場合、本発明の条件を満足するとみることができる。
【0068】
一方、本発明は、
第1ポリプロピレン樹脂および第2ポリプロピレン樹脂を選択する段階;および
前記ポリプロピレン樹脂を同時にメルトブロー工程に投入し、第1および第2ポリプロピレンの延伸糸を製造する段階を含み、
前記第1および第2ポリプロピレン樹脂は、それぞれ下記式1で表される残留応力比率の差が10倍以上である、
ポリプロピレン不織布の製造方法を提供する。
【0069】
[式1]
残留応力比率=Stress S2/Stress S1
【0070】
前記式1で、
Stress S1は、前記第1および第2ポリプロピレン樹脂のそれぞれに対して、150乃至250%の変形(Strain)を加え、第1時間(S1)後に測定した第1残留応力であり、
Stress S2は、前記第1および第2ポリプロピレン樹脂のそれぞれに対して、150乃至250%の変形(Strain)を加え、第2時間(S2)後に測定した第2 残留応力であり、
S2>S1である。
【0071】
つまり、本発明の一側面による、ポリプロピレン不織布の製造方法は、他の工程は、既存のポリプロピレン不織布製造方法と同様であるが、メルトブロー工程に投入するポリプロピレン樹脂原料を特定条件により選択するものとみることができる。
【0072】
前記メルトブロー工程は、約150乃至約250℃の温度条件、好ましくは約170℃または約230℃の温度条件で、行われるものであってもよい。
【0073】
前記メルトブロー工程で長さ延伸比は、約100乃至約10,000倍、好ましくは約100乃至約1,500倍、または約200乃至約1,200倍の延伸比率で行われるものであってもよい。
【0074】
そして、この時の延伸速度は、約1,000乃至約100,000倍/s、好ましくは約1000乃至約15,000倍/s、または約200乃至約1、200倍/sの速度で行われるものであってもよい。
【0075】
しかし、本発明が必ず前記工程条件に限定されるのではなく、このような工程条件は、加工対象であるポリプロピレン樹脂の溶融物性により異に決めることができる。
【0076】
しかし、本発明が必ず前記工程条件に限定されるのではなく、これは加工するポリプロピレン樹脂の溶融物性により変わり得る。
【0077】
そして、メルトブロー工程の原料樹脂である、前記第1および第2ポリプロピレン樹脂は、それぞれ、重量平均分子量値が約10,000乃至約250,000g/molであってもよい。そして、それぞれの分子量分布値は約2乃至約5であってもよい。このようなポリプロピレン樹脂の分子量関連特性は、分子量20,000g/molのポリスチレンを標準にしたGPCを通じて測定されたものであってもよい。
【0078】
一方、本発明は、
第1ポリプロピレン樹脂の延伸糸および第2ポリプロピレン樹脂の延伸糸を含み、
前記第1および第2ポリプロピレン樹脂は、それぞれ下記式1で表される残留応力比率の差が10倍以上である、
ポリプロピレン不織布を提供する。
【0079】
[式1]
残留応力比率=Stress S2/Stress S1
【0080】
前記式1で、
Stress S1は、前記第1および第2ポリプロピレン樹脂のそれぞれに対して、150乃至250%の変形(Strain)を加え、第1時間(S1)後に測定した第1残留応力であり、
Stress S2は、前記第1および第2ポリプロピレン樹脂のそれぞれに対して、150乃至250%の変形(Strain)を加え、第2時間(S2)後に測定した第2残留応力であり、
S2>S1である。
【0081】
つまり、本発明の一側面によるポリプロピレン不織布は、前述した残留応力比率値が異なる2種以上のポリプロピレン樹脂を用いて製造されたものとみることができる。
【0082】
ポリプロピレンなどの高分子樹脂を不織布などの製品として加工する過程では、外力によって、意図的に定められた比率の変形を発生させて、延伸糸として加工する工程などが含まれる。
【0083】
このような工程で外力により変形された高分子樹脂の内部では、前述した残留応力が存在し、このような残留応力を解消するための収縮が発生することがあるが、前述した残留応力比率が大きい場合、収縮がより大きく発生するようになる。
【0084】
延伸糸を製造する工程で、残留応力比率値が異なる2種以上のポリプロピレン樹脂を使用する場合、残留応力比率値がより大きい樹脂は相対的により多く収縮するようになり、残留応力比率値がより小さい樹脂は、相対的により少なく収縮するようになって、収縮比率の差により延伸糸が曲がる現像が発生するようになる。
【0085】
したがって、残留応力比率値が異なる2種以上のポリプロピレン樹脂を用いて製造されたポリプロピレン不織布は、曲げの程度が大きく、巻かれている形態の、カール繊維糸を含むようになり、可撓性(Flexibility)、柔らかさ(Softness)、豊富さ(Abundance)など優れたロフト(Loft)関連特性を具備できるようになる。
【0086】
そして、この時、前記第1および第2ポリプロピレン樹脂は、それぞれ、重量平均分子量値が約10,000乃至約250,000g/molであってもよい。そして、それぞれの分子量分布値は約2乃至約5であってもよい。このようなポリプロピレン樹脂の分子量関連特性は、分子量20,000g/molのポリスチレンを標準にしたGPCを通じて測定されたものであってもよい。
【0087】
前記第1および第2ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量値が前記範囲を外れる場合、不織布を製造する工程で加工性が低下して、断糸が発生したり、不織布繊維の表面が荒くなって硬くなる問題点が発生することがあり、特に重量平均分子量値が過度に小さい場合、不織布の強度が低下する問題点が発生することがある。
【0088】
前記のような特性によって、前記ポリプロピレン不織布は、密度が約0.09g/cm以下、好ましい下限としては約0.01g/cm以上、あるいは、約0.03g/cm以上、あるいは約0.05g/cm以上、あるいは約0.07g/cm以上であってもよく、好ましい上限としては、約0.09g/cm以下、あるいは、約0.087g/cm以下、あるいは約0.085g/cm以下、あるいは0.083g/cm以下であってもよい。
【0089】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳細に説明する。ただし、このような実施例は発明の例示として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が決められるのではない。
【0090】
<実施例>
ポリプロピレン樹脂の準備
下記表1の物性値を有するポリプロピレン樹脂を40℃真空オーブンで一晩中乾燥し、ツインスクリュー押出機(twin screw extruder、BA-19、製造会社BAUTECH)を用いてペレット形態で製造した。
【0091】
圧縮して得られたペレット形態の樹脂を再び40℃真空オーブンで一晩中乾燥した後に試片製造機(Xplore 5.cc micro injection molding machine)を利用して、各物性測定条件に合う形態で試片を作製した。
【0092】
1)分子量特性の測定
調製されたポリプロピレン樹脂の分子量特性は、ポリスチレン(Mw:20,000)を標準にしたGPC/SECを通じて測定した。
【0093】
2)粘度の測定
測定は、TA Instrument社のDiscovery Hybrid Rheometer機器を利用して行われた。
【0094】
まず、前記機器の円形下部プレートに、ポリプロピレンペレットをローディングし、約235℃で溶かした後、上部プレートで押して、上-下部プレートのギャップを1mmに維持した状態で、粘度を測定した。測定は、変形(Strain)の変化による粘度およびモジュラス変化がない、線形領域で行った。
【0095】
3)残留応力比率の測定
測定は、TA Instrument社のDiscovery Hybrid Rheometer機器を利用して行われた。
【0096】
まず、前記機器の円形下部プレートに、ポリプロピレンペレットをローディングし、約235℃で溶かした後、上部プレートで押して、上-下部プレートのギャップを1mmに維持した。
【0097】
以降、ここに200%の変形を加え、変形を維持しながら、時間に応じた残留応力を測定した。
【0098】
温度:235℃
変形(Strain):200%
残留応力測定(Stress S1):外力を加えて200%の変形(Strain)を発生させた後、変形を維持させた状態で、0.02秒(S1)後の残留応力測定
残留応力測定(Stress S2):外力を加えて200%の変形(Strain)を発生させた後、変形を維持させた状態で、1秒(S2)後の残留応力測定
S2/S1=50
残留応力比率=Stress S2/Stress S1により%単位で計算
【0099】
測定結果を下記表1にまとめた。
【0100】
【表1】
【0101】
*調製例4は、調製例2および調製例5のポリプロピレン樹脂を、7:3の重量比に混合して、調製した。
【0102】
ポリプロピレン不織布の製造
ポリプロピレン不織布の製造は、ライフェンフォイザー社の設備を利用して行った。
【0103】
下記表2にまとめられたとおり、2種のポリプロピレン樹脂を調製し、これをエクストルーダー(Extruder)にそれぞれ投入した。投入されたポリプロピレン樹脂は、吐出部で合わされるようになって、紡糸された。
【0104】
紡糸したポリプロピレンフィラメントは、チャンバーを通じて噴射される冷却空気により固化し、上部で吹く空気とコンベヤーベルト下部で吸入する空気の圧力により延伸し、コンベヤーベルト上に積層してウェブを形成した後、熱的ボンディングをして不織布を製造した。
【0105】
不織布の密度測定
前記と同様な方法により製造された不織布に対して、密度を測定した。
【0106】
前記評価結果を下記表2にまとめた。
【0107】
【表2】
【0108】
前記表2を参照すると、本発明の一実施例により、特定の残留応力比率差を示す2種のポリプロピレン樹脂を用いて不織布を製造する場合、同一の工程により製造したにも拘らず、相対的に低い密度値を有することが分かる。
【0109】
つまり、本願実施例により、残留応力比率差が10倍以上であるポリプロピレン樹脂を使用する場合、不織布の密度値が約0.07乃至約0.085g/cmの範囲内に入るのに対し、残留応力比率差が少ないポリプロピレン樹脂を使用する場合、密度値が約0.091g/cm以上であることを明確に確認できる。
【0110】
このような密度値の差は、延伸糸を製造する工程で、残留応力比率値が異なる2種以上のポリプロピレン樹脂を用い、ポリプロピレン延伸糸の曲げの程度が大きく、巻かれている形態の、カール繊維糸含有量が高くなったことに起因すると解釈することができるが、これによって、本発明の一実施例によるポリプロピレン不織布は、可撓性(Flexibility)、柔らかさ(Softness)、豊富さ(Abundance)など優れたロフト(Loft)関連特性を備えると予測することができる。
【0111】
また、前記表2を参照すると、本願の実施例により、残留応力比率の差を通じて適合性を評価したことが、実際製造された不織布の密度の傾向性と一致することを明確に理解することができる。
【0112】
したがって、本発明によれば、ポリプロピレン樹脂の試片に対する実験室水準での(Lap scale)物性測定を通じて、不織布製造に適したポリプロピレン樹脂試料を容易に選択できるとみられる。