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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 25/02 20060101AFI20220613BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20220613BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
H04L25/02 V
H01M10/48 P
G01R19/00 B
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021027386
(22)【出願日】2021-02-24
(62)【分割の表示】P 2017079318の分割
【原出願日】2017-04-12
(65)【公開番号】P2021101546
(43)【公開日】2021-07-08
【審査請求日】2021-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】関口 勝
【審査官】吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-166867(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0193413(US,A1)
【文献】特開2010-016928(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101621131(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0001737(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/02
H01M 10/48
G01R 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された複数の電池セルのうち、高電位側の電池セルの電圧を測定するセル電圧測定回路を含む第1の半導体装置に設けられた通信回路と、前記複数の電池セルのうち、低電位側の電池セルの電圧を測定するセル電圧測定回路を含む第2の半導体装置に設けられた通信回路との間の通信方法であって、
前記高電位側の電池セルから電圧の供給を受ける電源回路から出力される第1の電圧を、前記第1の半導体装置に設けられた通信回路の電源電圧として供給し、
前記低電位側の電池セルから電圧の供給を受ける電源回路から出力される第2の電圧を、前記第2の半導体装置に設けられた通信回路の電源電圧として供給し、
前記複数の電池セルの接続ラインに発生したノイズを、前記第1の半導体装置に設けられた通信回路と前記第2の半導体装置に設けられた通信回路との間で送受信される差動信号、前記第1の電圧及び前記第2の電圧のそれぞれに重畳させる
通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通信可能に接続された複数の電池監視用の半導体装置を用いて、組電池を構成する複数の電池セルの各々の状態を監視する電池監視システムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電池セル群の電池電圧を監視する監視手段と、電池セル群の電池電圧から駆動電圧を生成する電圧生成手段と、駆動電圧によって動作する通信手段と、省電力モード設定信号に応じて、電圧生成手段の駆動を制御する制御手段と、を各々が備えた複数の電池監視装置を備えた電池監視システムが記載されている。この電池監視システムにおいて、省電力モード設定信号が出力された場合、これを受信した一方の電池監視装置において、制御手段が電圧生成手段を起動させて駆動状態とし、駆動電圧に応じた供給電圧を他方の電池監視装置に供給する。供給電圧が供給された他方の電池監視装置において、制御手段が、電圧生成手段を起動させて駆動状態とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-134454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の電池監視用の半導体装置(以下、電池監視ICと称する)を、通信可能に多段接続して構成される電池監視システムにおいて、電池監視ICの各々を停止状態(パワーダウン状態)から稼働状態に起動させる場合、複数の電池監視ICを制御するコントローラから初段の電池監視ICに起動信号を送信する。
【0006】
電池監視ICの各々は、起動信号を検出する起動検出回路を備えており、初段の電池監視ICは、自身の起動検出回路においてコントローラから供給される起動信号を検出すると稼働状態に移行し、次段の電池監視ICに起動信号を送信する。次段の電池監視ICは、自身の起動検出回路において初段の電池監視ICから供給される起動信号を検出すると稼働状態に移行する。初段の電池監視ICから次段の電池監視ICへの起動信号の供給は、これらの電池監視IC間で通信を行うための通信線を介して行われる。この通信線にはノイズが混入する場合があり、通信線に混入したノイズによって、次段の電池監視ICの起動検出回路において起動信号を誤検出する場合があった。
【0007】
また、電池監視ICの各々は、通信線に接続された通信回路を備え、電池監視IC間で、種々のデータの送受信を行う。電池監視IC間での通信は、通信線に混入する同相ノイズの影響を排除するために差動信号を用いて行われる場合がある。例えば、初段の電池監視ICの通信回路と通信を行う次段の電池監視ICの通信回路に、ノイズを含んでいない電源電圧が与えられている場合において、通信線を介して初段の電池監視ICから供給される通信信号にノイズが混入している場合について考える。通信信号に混入したノイズの振幅が、次段の電池監視ICの通信回路に与えられる電源電圧の電圧幅を超えると、次段の電池監視ICによって受信される受信信号が電源電圧の電圧レベルでクランプされ、初段の電池監視ICから供給される通信信号を、次段の電池監視ICにおいて適正に受信できなくなるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、通信線を介して行われる半導体装置間の通信において、通信線に混入するノイズに起因する弊害の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る半導体装置は、差動伝送線路を構成する一対の第1の通信線を介して供給される起動信号を検出した場合に検出信号を出力する起動検出回路と、前記起動検出回路から前記検出信号が出力された場合にそれぞれ起動される第1の電源回路及び第2の電源回路と、前記第1の通信線に接続され、前記第1の電源回路から電源電圧の供給を受ける第1の通信回路と、前記第2の電源回路から電源電圧の供給を受けて起動した場合に前記起動信号を、差動伝送線路を構成する一対の第2の通信線に送出する第2の通信回路と、を含む。前記起動検出回路は、前記第1の通信線に接続される第1の入力端子及び第2の入力端子と、前記第1の端子と前記第2の端子との間に設けられ、前記第1の入力端子の電位が前記第2の入力端子の電位よりも高い場合に電流を発生させる整流部と、前記電流が発生した場合に電圧を発生させる電圧発生部と、前記電圧の発生に応じて前記検出信号を出力する出力部と、を含む。
【0010】
本発明に係る電池監視システムは、直列接続された複数の電池セルの各々の状態を監視する、第1の半導体装置及び第2の半導体装置を含む電池監視システムである。前記第1の半導体装置及び前記第2の半導体装置は、それぞれ、差動伝送線路を構成する一対の第1の通信線を介して供給される起動信号を検出した場合に検出信号を出力する起動検出回路と、前記起動検出回路から前記検出信号が出力された場合にそれぞれ起動される第1の電源回路及び第2の電源回路と、前記第1の通信線に接続され、前記第1の電源回路から電源電圧の供給を受ける第1の通信回路と、前記第2の電源回路から電源電圧の供給を受けて起動した場合に前記起動信号を、差動伝送線路を構成する一対の第2の通信線に送出する第2の通信回路と、前記検出信号が出力された場合に起動される電源回路から電源電圧の供給を受け、前記複数の電池セルのうちの対応する電池セルの電圧を測定するセル電圧測定回路と、を含む。前記第1の半導体装置の前記第2の通信回路と、前記第2の半導体装置の前記第1の通信回路とが通信線を介して接続されている。前記起動検出回路は、前記第1の通信線に接続される第1の入力端子及び第2の入力端子と、前記第1の端子と前記第2の端子との間に設けられ、前記第1の入力端子の電位が前記第2の入力端子の電位よりも高い場合に電流を発生させる整流部と、前記電流が発生した場合に電圧を発生させる電圧発生部と、前記電圧の発生に応じて前記検出信号を出力する出力部と、を含む。
【0011】
本発明に係る起動信号の検出方法は、差動伝送線路を構成する一対の通信線を介して供給される起動信号を検出した場合に、検出信号を出力する起動検出回路における前記起動信号の検出方法であって、前記通信線に接続される第1の入力端子及び第2の入力端子のうち、前記第1の入力端子の電位が前記第2の入力端子の電位よりも高い場合に電流を発生させ、前記第1の入力端子の電位が前記第2の入力端子の電位以下の場合に前記電流を発生させず、前記電流の発生に伴って発生する電圧に基づいて前記検出信号を出力することを含む。
【0012】
本発明に係る他の半導体装置は、電池セルから電圧の供給を受け、第1の電源電圧を出力する第1の電源回路と、前記第1の電源電圧の供給を受け、差動信号によって外部と通信を行う第1の通信回路と、前記電池セルから電圧の供給を受け、前記第1の電源電圧の電圧レベルとは異なる電圧レベルの第2の電源電圧を出力する第2の電源回路と、前記第2の電源電圧の供給を受け、差動信号によって外部と通信を行う第2の通信回路と、を含む。
【0013】
本発明に係る他の通信システムは、直列接続された複数の電池セルの各々の状態を監視する、第1の半導体装置及び第2の半導体装置を含む電池監視システムである。前記第1の半導体装置及び前記第2の半導体装置は、それぞれ、電池セルから電圧の供給を受け、第1の電源電圧を出力する第1の電源回路と、前記第1の電源電圧の供給を受け、差動信号によって外部と通信を行う第1の通信回路と、前記電池セルから電圧の供給を受け、前記第1の電源電圧の電圧レベルとは異なる電圧レベルの第2の電源電圧を出力する第2の電源回路と、前記第2の電源電圧の供給を受け、差動信号によって外部と通信を行う第2の通信回路と、前記複数の電池セルのうち、対応する電池セルの電圧を測定するセル電圧測定回路と、を含む。前記第1の半導体装置の前記第2の通信回路と、前記第2の半導体装置の前記第1の通信回路とが差動伝送線路を構成する一対の通信線を介して接続されている。
【0014】
本発明に通信方法は、直列接続された複数の電池セルのうち、高電位側の電池セルの電圧を測定するセル電圧測定回路を含む第1の半導体装置に設けられた通信回路と、前記複数の電池セルのうち、低電位側の電池セルの電圧を測定するセル電圧測定回路を含む第2の半導体装置に設けられた通信回路との間の通信方法であって、前記高電位側の電池セルから電圧の供給を受ける電源回路から出力される第1の電圧を、前記第1の半導体装置に設けられた通信回路の電源電圧として供給し、前記低電位側の電池セルから電圧の供給を受ける電源回路から出力される第2の電圧を、前記第2の半導体装置に設けられた通信回路の電源電圧として供給し、前記複数の電池セルの接続ラインに発生したノイズを、前記第1の半導体装置に設けられた通信回路と前記第2の半導体装置に設けられた通信回路との間で送受信される差動信号、前記第1の電圧及び前記第2の電圧のそれぞれに重畳させることを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、通信線を介して行われる半導体装置間の通信において、通信線に混入するノイズに起因する弊害の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る電池監視システムの構成を示す回路ブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係る起動検出回路の構成の一例を示す回路図である。
図3】本発明の実施形態に係る電池監視システムの起動時の動作を示すタイミングチャートである。
図4A】電池セルの接続ラインにノイズが発生していない場合における、本発明の実施形態に係る電池監視システムの起動時の各部の電圧を示すタイミングチャートである。
図4B】電池セルの接続ラインにノイズが発生している場合における、本発明の実施形態に係る電池監視システムの起動時の各部の電圧を示すタイミングチャートである。
図5】比較例に係る起動検出回路の構成を示す回路図である。
図6A】比較例に係る起動検出回路を用いた電池監視システムの起動時の各部の電圧を示すタイミングチャートである。
図6B】比較例に係る起動検出回路を用いた電池監視システムの起動時の各部の電圧を示すタイミングチャートである。
図7A】電池セルの接続ラインにノイズが発生していない場合における、初段の電池監視ICから次段の電池監視ICへの信号伝送時における、電池監視ICの各部の電圧を示すタイミングチャートである。
図7B】電池セルの接続ラインにノイズが発生していない場合における、初段の電池監視ICから次段の電池監視ICへの信号伝送時における、電池監視ICの各部の電圧を示すタイミングチャートである。
図8A】電池セルの接続ラインにノイズが発生している場合における、初段の電池監視ICから次段の電池監視ICへの信号伝送時における、電池監視ICの各部の電圧を示すタイミングチャートである。
図8B】電池セルの接続ラインにノイズが発生している場合における、初段の電池監視ICから次段の電池監視ICへの信号伝送時における、電池監視ICの各部の電圧を示すタイミングチャートである。
図9】比較例に係る電池監視ICを備えた電池監視システムの構成を示す回路ブロック図である。
図10A】比較例に係る電池監視システムにおいて、電池セルの接続ラインにノイズが発生している場合における、初段の電池監視ICから次段の電池監視ICへの信号伝送時における、電池監視ICの各部の電圧を示すタイミングチャートである。
図10B】比較例に係る電池監視システムにおいて、電池セルの接続ラインにノイズが発生している場合における、初段の電池監視ICから次段の電池監視ICへの信号伝送時における、電池監視ICの各部の電圧を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。尚、各図面において、実質的に同一又は等価な構成要素又は部分には同一の参照符号を付している。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る電池監視システム1の構成を示す回路ブロック図である。電池監視システム1は、直列接続された複数の電池セル50を含む組電池の各電池セル50の状態を監視するシステムである
【0019】
電池監視システム1は、縦列接続された電池監視IC10_1及び10_2と、電池監視IC10_1及び10_2を制御するMCU(Micro Controller Unit)22と、MCU22と電池監視IC10_1とを通信可能に接続するとともにこれらを電気的に絶縁するトランス等を含む絶縁回路24と、複数の電池セル50を含んで構成される組電池と、を有する。なお、本実施形態では、一例として、電池監視ICを2段構成とした電池監視システムを例示しているが、電池監視ICの段数は、監視対象となる電池セルの数に応じて適宜変更することが可能である。
【0020】
複数の電池セル50は、各々が互いに異なる複数の電池セルを含むように群分けされ、電池セル群51A、51Bを形成している。電池監視IC10_1は、高電位側の電池セル群51Aに対応して設けられ、電池セル群51Aに含まれる電池セル50の各々の状態を監視する。電池監視IC10_2は、電池セル群51Bに対応して設けられ、電池セル群51Bに含まれる電池セル50の各々の状態を監視する。なお、電池監視IC10_1、10_2がそれぞれ監視する電池セル50の数は、適宜変更することが可能である。
【0021】
電池監視IC10_1及び10_2は、それぞれ、半導体基板に形成された集積回路(IC:Integrated Circuit)を含む半導体装置である。電池監視IC10_1及び10_2は、互いに同じ構成を有しており、それぞれ、昇圧回路11、降圧回路12、セル電圧測定回路13、起動検出回路14、レギュレータ15、制御回路16、第1の通信回路17、第2の通信回路18及びスイッチ回路19を含んで構成されている。
【0022】
セル電圧測定回路13は、対応する電池セル群を構成する各電池セル50の各電極に接続され、各電池セル50のセル電圧を測定する。
【0023】
電池セル群51A及び51Bにおける、最も高電位側の電池セルの正極の電圧は、それぞれ、ローパスフィルタ20によってノイズ成分が除去される。昇圧回路11は、ローパスフィルタ20から出力されるノイズ成分が除去された電圧VCCを昇圧した電圧VUP(>VCC)を出力する。昇圧回路11から出力される電圧VUPは、セル電圧測定回路13に供給される。
【0024】
降圧回路12は、対応する電池セル群における、最も高電位側の電池セル50の正極に直接接続されており、当該電池セルの正極の電圧VCC1を降圧した電圧VCC2(<VCC1)を出力する。
【0025】
レギュレータ15の低電位側の電源入力端子には、対応する電池セル群における、最も低電位側の電池セル50の負極が接続されており、当該電池セル50の負極の電圧VSSが入力される。レギュレータ15の高電位側の電源入力端子には、ローパスフィルタ20の出力端子が接続されており、ローパスフィルタ20の出力電圧VCCが入力される。レギュレータ15は、所定の電圧レベルを有する電圧VDD(<VCC2)を出力する。
【0026】
第1の通信回路17には、対応する電池セル群における、最も高電位側の電池セル50の正極の電圧VCC1及び降圧回路12から出力される電圧VCC2が電源電圧として供給される。電池監視IC10_1の第1の通信回路17は、一対の通信線L1及びL2を介して絶縁回路24に接続されている。通信線L1及びL2は、差動伝送線路を構成し、信号レベルが相補関係にある差動信号を伝送する。すなわち、第1の通信回路17は、通信線L1及びL2を介して、差動信号を用いてMCU22との間で通信を行う。
【0027】
第2の通信回路18には、対応する電池セル群における、最も低電位側の電池セル50の負極の電圧VSS及びレギュレータ15から出力される電圧VDDが電源電圧として供給される。電池監視IC10_1の第2の通信回路18は、一対の通信線L3及びL4を介して電池監視IC10_2の第1の通信回路17に接続されている。通信線L3及びL4は、差動伝送線路を構成し、信号レベルが相補関係にある差動信号を伝送する。すなわち、電池監視IC10_1の第2の通信回路18と、電池監視IC10_2の第1の通信回路17は、通信線L3及びL4を介して、差動信号を用いて相互に通信を行う。通信線L3の途中及び通信線L4の途中には、それぞれ、直流成分を遮断するキャパシタC1及びC2が設けられている。
【0028】
制御回路16は、第1の通信回路17、第2の通信回路18及びセル電圧測定回路13を制御する。
【0029】
電池監視IC10_1の起動検出回路14は、スイッチ回路19を介して通信線L1及びL2に接続されている。電池監視IC10_1の起動検出回路14は、電池監視IC10_1が停止状態(パワーダウン状態)にある場合に、MCU22から通信線L1及びL2を介して供給される起動信号を検出すると検出信号Sdを出力する。電池監視IC10_1の起動検出回路14から出力される検出信号Sdは、電池監視IC10_1の昇圧回路11、降圧回路12、レギュレータ15に供給される。停止状態にある電池監視IC10_1の昇圧回路11、降圧回路12、レギュレータ15は、検出信号Sdが供給されると起動し、それぞれ電圧VUP、VCC2、VDDを出力する。
【0030】
電池監視IC10_2の起動検出回路14は、スイッチ回路19回路を介して通信線L3及びL4に接続されている。電池監視IC10_2の起動検出回路14は、電池監視IC10_2が停止状態(パワーダウン状態)にある場合に、先に稼働状態となった電池監視IC10_1の第2の通信回路18から通信線L3及びL4を介して供給される起動信号を検出すると、検出信号Sdを出力する。電池監視IC10_2の起動検出回路14から出力される検出信号Sdは、電池監視IC10_2の昇圧回路11、降圧回路12、レギュレータ15に供給される。停止状態にある電池監視IC10_2の昇圧回路11、降圧回路12、レギュレータ15は、検出信号Sdが供給されると起動し、それぞれ電圧VUP、VCC2、VDDを出力する。
【0031】
図2は、本発明の実施形態に係る起動検出回路14の構成の一例を示す回路図である。起動検出回路14は、スイッチ回路19を介して通信線L1(またはL4)に接続される入力端子T1及びスイッチ回路19を介して通信線L2(またはL3)に接続される入力端子T2を有する。入力端子T1及びT2は、それぞれ、抵抗素子R1及びR2を介して電圧VCCが供給されるVCCラインに接続されており、電圧VCCにプルアップされている。
【0032】
起動検出回路14は、入力端子T1とT2との間に設けられた抵抗素子R3及びダイオードD1を含んで構成される整流部31を有する。抵抗素子R3は、一端が入力端子T1に接続され、他端がダイオードD1のアノードに接続されている。ダイオードD1のカソードは入力端子T2に接続されている。
【0033】
起動検出回路14は、整流部31に電流が発生した場合に電圧を発生させる電圧発生部32を有する。電圧発生部32は、pチャネル型のトランジスタM1、抵抗素子R4、インバータA1及びA2を含んで構成されている。トランジスタM1は、ゲートが抵抗素子R3とダイオードD1との接続点に接続され、ソースが入力端子T1に接続され、ドレインが抵抗素子R4の一端に接続されている。抵抗素子R4の他端は、電圧VSSが供給されるVSSラインに接続されている。インバータA1は、入力端がトランジスタM1と抵抗素子R4との接続点に接続され、出力端がインバータA2の入力端に接続されている。
【0034】
起動検出回路14は、電圧発生部32における電圧の発生に応じて検出信号Sdを出力する出力部33として機能するラッチ回路Laを有する。ラッチ回路Laの入力端は、インバータA2の出力端に接続されている。
【0035】
以下に、電池監視システム1の起動時の動作について説明する。図3は、電池監視システム1の起動時の動作を示すタイミングチャートである。
【0036】
電池監視IC10_1及び10_2が停止状態(パワーダウン状態)にある場合、電池監視IC10_1及び10_2において、昇圧回路11、降圧回路12、レギュレータ15はオフ状態であり、電圧VCC1、VCC2及びVDDは発生していない。すなわち、電池監視IC10_1及び10_2において、第1の通信回路17、第2の通信回路18及び制御回路16には、電源電圧が供給されていないので、これらの回路は停止状態である。電池監視IC10_1及び10_2が停止状態にある場合、スイッチ回路19のスイッチはオン状態とされ、起動検出回路14が、起動信号を受信できる状態になっている。
【0037】
MCU22から起動信号が出力されると、絶縁回路24において、起動信号が差動信号形式の信号に変換される。差動信号形式に変換された起動信号は、通信線L1及びL2を介して初段の電池監視IC10_1に入力され、スイッチ回路19を介して電池監視IC10_1の起動検出回路14に入力される。初段の電池監視IC10_1の起動検出回路14は、起動信号を検出すると、検出信号Sdを出力し、これを電池監視IC10_1の昇圧回路11、降圧回路12及びレギュレータ15に供給する。電池監視IC10_1の昇圧回路11、降圧回路12及びレギュレータ15は検出信号Sdが供給されると起動し、それぞれ、電圧VUP、VCC1及びVCC2、VDDを出力する。これにより、電池監視IC10_1のセル電圧測定回路13、制御回路16、第1の通信回路17及び第2の通信回路18が電源電圧の供給を受けることになり、これらの回路が起動し、電池監視IC10_1が稼働状態となる。
【0038】
稼働状態となった初段の電池監視IC10_1の第2の通信回路18は差動信号形式の起動信号を出力し、通信線L3及びL4を介して次段の電池監視IC10_2に供給する。ここで、初段の電池監視IC10_1から送信される差動信号形式の起動信号をTX、TXNとし、次段の電池監視IC10_2において受信される差動信号形式の起動信号をRX、RXNとする。次段の電池監視IC10_2の起動検出回路14は、起動信号を検出すると検出信号Sdを出力する。これにより、次段の電池監視IC10_2のセル電圧測定回路13、制御回路16、第1の通信回路17及び第2の通信回路18が起動し、電池監視IC10_2が稼働状態となる。
【0039】
組電池を構成する複数の電池セル50が直列接続された接続ラインには、ノイズが発生する場合がある。従って、電池セル群51A及び電池セル群51Bの接続点の電圧VSSにもノイズが重畳する。電池監視IC10_1においては、電圧VSSが供給されるレギュレータ15から出力される電圧VDDにもノイズが重畳する。更に、電圧VSS及び電圧VDDが電源電圧として供給される第2の通信回路18に接続された通信線L3(TX、RX)、L4(TXN、RXN)にもノイズが重畳する。なお、通信線L3(TX、RX)、L4(TXN、RXN)に重畳するノイズは同相ノイズである。
【0040】
図4Aは、電池セル50の接続ラインにノイズが発生していない場合における、電池監視システム1の起動時における各部の電圧を示すタイミングチャートである。図4Bは、電池セル50の接続ラインにノイズが発生している場合における、電池監視システム1の起動時における各部の電圧を示すタイミングチャートである。
【0041】
本発明の実施形態に係る起動検出回路14によれば、電池セル50の接続ライン発生するノイズに起因して、通信線L3、L4を介して初段の電池監視IC10_1から次段の電池監視IC10_2に供給される起動信号(TX、TXN、RX、RXN)にノイズが重畳した場合でも、次段の電池監視IC10_2の起動検出回路14は、ノイズが発生していない場合(図4A参照)と同様適切なタイミングで検出信号Sdを出力することができる。すなわち、本発明の実施形態にかかる起動検出回路14によれば、起動信号が伝送される通信線にノイズが発生している場合でも、起動信号の誤検出を防止することができる。
【0042】
以下に、起動検出回路14の動作について説明する。起動検出回路14の入力端子T1及びT2が同電位である場合、ダイオードD1はオフ状態を維持するので、抵抗素子R3及びダイオードD1によって構成される整流部31は、電流を発生させない。従ってトランジスタM1はオフ状態を維持するので、インバータA1の入力端及びインバータA2の出力端はローレベルを維持する。これにより、ラッチ回路Laから出力される検出信号Sdの信号レベルは、起動信号の未検出を示すローレベルを維持する。入力端子T2の電位が入力端子T1の電位よりも高くなる場合についても同様である。
【0043】
一方、起動検出回路14の入力端子T1及びT2に起動信号が入力され、入力端子T1の電位が、入力端子T2の電位よりも高くなり、入力端子T1とT2との電位差が、ダイオードD1の順方向電圧VFよりも大きくなると、ダイオードD1はオン状態となり、抵抗素子R3及びダイオードD1によって構成される整流部31は、電流を発生させる。この電流により抵抗素子R3の両端に電位差が生じ、トランジスタM1がオン状態となる。トランジスタM1がオン状態となると抵抗素子R4に電流が流れ、インバータA1の入力端にはハイレベルの電圧が入力され、インバータA2の出力端には、ハイレベルの電圧が発生する。これにより、ラッチ回路Laから出力される検出信号Sdの信号レベルは、起動信号を検出したこと示すハイレベルに遷移する。ラッチ回路Laは、検出信号Sdの信号レベルをハイレベルに遷移させると、電池監視ICが稼働状態にある間、検出信号Sdの信号レベルをハイレベルに維持する。
【0044】
このように、本実施形態に係る起動検出回路14によれば、入力端子T1の電位が、入力端子T2の電位よりも高くなる場合に、検出信号Sdの信号レベルが起動信号を検出したことを示すハイレベルに遷移し、入力端子T1の電位と入力端子T2の電位が同じ場合、及び入力端子T2の電位が入力端子T1の電位よりも高くなる場合には、検出信号Sdの信号レベルはローレベルを維持する。従って、通信線L3、L4を介して初段の電池監視IC10_1から次段の電池監視IC10_2に供給される起動信号(TX、TXN、RX、RXN)に同相ノイズが重畳した場合でも、次段の電池監視IC10_2の起動検出回路14は、起動信号を適切に検出することが可能となる。
【0045】
図5は、比較例に係る起動検出回路14Xの構成を示す回路図である。起動検出回路14Xは、入力端子T11、T12、nチャネル型のトランジスタM11、M12、pチャネル型のトランジスタM13、M14、インバータA11、ラッチ回路La、抵抗素子R11、R12、R13、R14、R15を含んで構成されている。
【0046】
入力端子T11及びT12には、それぞれ通信線を介して起動信号が入力される。抵抗素子R11は、一端が入力端子T11に接続され、他端がVSSラインに接続されている。抵抗素子R12は、一端が入力端子T12に接続され、他端が電圧VSSラインに接続されている。すなわち、入力端子T11及びT12は、プルダウンされている。
【0047】
トランジスタM11は、ゲートが入力端子T11に接続され、ソースがVSSラインに接続され、ドレインがトランジスタM13のドレイン及びトランジスタM14のゲートに接続されている。トランジスタM12は、ゲートが入力端子T12に接続され、ソースがVSSラインに接続され、ドレインがトランジスタM14のドレイン及びトランジスタM13のゲートに接続されている。
【0048】
トランジスタM13及びM14は、それぞれ、ソースが抵抗素子R13及びR14を介してVCCラインに接続されている。インバータA11は、入力端がトランジスタM12のドレインに接続されるとともに抵抗素子R15を介してVCCラインに接続され、出力端がラッチ回路Laの入力端に接続されている。
【0049】
比較例に係る起動検出回路14Xにおいては、入力端子T12にハイレベル、入力端子T11にローレベルの起動信号が入力されると、インバータA11の入力端がローレベル、出力端がハイレベルとなり、ラッチ回路Laの出力端から出力される検出信号Sdの信号レベルが、起動信号を検出したことを示すハイレベルとなる。
【0050】
図6A及び図6Bは、本発明の実施形態に係る起動検出回路14に代えて、比較例に係る起動検出回路14Xを用いた電池監視システムの起動時における各部の電圧を示すタイミングチャートであり、図6Aは、電池セル50の接続ラインにノイズが発生していない場合を示し、図6Bは、電池セル50の接続ラインにノイズが発生している場合を示している。
【0051】
図6Aに示すように、電池セル50の接続ラインにノイズが発生していない場合には、比較例に係る起動検出回路14Xは、初段の電池監視IC10_1から受信した起動信号(RX、RXN)に基づいて、適切なタイミングで検出信号Sdの信号レベルをハイレベルに遷移させる。
【0052】
一方、図6Bに示すように、電池監視IC10_2においては、電池セル50の接続ラインにノイズが発生している場合においても、起動検出回路14Xの電源電圧として印加される電圧VSS及び電圧VCCにはノイズが重畳されない。電池監視IC10_2において、電圧VSSは、接地電圧(GND)に固定され、電圧VCCは、ローパスフィルタ20の出力信号だからである。一方、電池監視IC10_2の起動検出回路14Xの入力端子T11及びT12には、通信線L3及びL4に重畳しているノイズが印加される。このような状況においては、入力端子T11及びT12にゲートが接続されたトランジスタM11及びM12が、入力端子T11及びT12に印加されたノイズによってオンオフし、トランジスタM11のドレインの寄生容量Cp1及びトランジスタM12のドレインの寄生容量Cp2が異なる場合(Cp1<Cp2)には、トランジスタM12のドレインの電圧レベルが、ハイレベルとローレベルとの間で振動し、これによってラッチ回路Laから出力される検出信号Sdのレベルが、ハイレベルに遷移して保持されてしまうおそれがある。すなわち、通信線L3、L4にノイズが重畳した場合に、次段の電池監視IC10_2の起動検出回路14Xは、起動信号を誤検出してしまうおそれがある。
【0053】
一方、本発明の実施形態に係る起動検出回路14によれば、上記のように、入力端子T1及びT2に同相ノイズが印加された場合でも、ダイオードD1はオフ状態を維持し、ラッチ回路Laの入力端にハイレベルの電圧が印加されることはないので、通信線に重畳する同相ノイズによって検出信号Sdの信号レベルがハイレベルに遷移するが防止される。
【0054】
次に、電池監視IC10_1及び10_2がそれぞれ、電池セル50の電圧を測定し、測定結果をMCU22に送信する場合の動作について説明する。
【0055】
はじめに、MCU22が、電池監視IC10_1及び10_2に、電池セル50の電圧測定を行うべき指令を出力する。この指令は、絶縁回路24を介して、初段の電池監視IC10_1の第1の通信回路17によって受信される。電池監視IC10_1の第1の通信回路17は、受信した指令を制御回路16に送信する。制御回路16は、MCU22からの指令に基づいて、セル電圧測定回路13に電池セル50のセル電圧の測定を実行させる。また、制御回路16は、MCU22からの指令を第2の通信回路18に送信する。第2の通信回路18は、MCU22からの指令を通信線L3及びL4を介して次段の電池監視IC10_2に送信する。
【0056】
初段の電池監視IC10_1から送信されたMCU22からの指令は、次段の電池監視IC10_2の第1の通信回路17によって受信される。電池監視IC10_2の第1の通信回路17は、受信した指令を制御回路16に送信する。制御回路16は、MCU22からの指令に基づいて、セル電圧測定回路13に電池セル50のセル電圧の測定を実行させる。
【0057】
次段の電池監視IC10_2のセル電圧測定回路13によって測定されたセル電圧の測定結果は、制御回路16を介して第1の通信回路17に送信される。次段の電池監視IC10_2の第1の通信回路17は、セル電圧の測定結果を通信線L3及びL4を介して初段の電池監視IC10_1の第2の通信回路18に送信する。
【0058】
初段の電池監視IC10_1の第2の通信回路18は、次段の電池監視IC10_2から受信したセル電圧の測定結果を制御回路16に送信する。制御回路16は、次段の電池監視IC10_2から受信したセル電圧の測定結果を第1の通信回路17に送信する。その後、制御回路16は、電池監視IC10_1のセル電圧測定回路13によって測定されたセル電圧の測定結果を第1の通信回路17に送信する。第1の通信回路17は、電池監視IC10_2のセル電圧測定回路13によって測定されたセル電圧の測定結果、及び電池監視IC10_1のセル電圧測定回路13によって測定されたセル電圧の測定結果を、通信線L1、L2及び絶縁回路24を介してMCU22に順次送信する。
【0059】
図7A及び図7Bは、それぞれ、電池セル50の接続ラインにノイズが発生していない場合における、初段の電池監視IC10_1から次段の電池監視IC10_2への信号伝送時における、電池監視IC10_1及び10_2の各部の電圧を示すタイミングチャートである。
【0060】
初段の電池監視IC10_1の第2の通信回路18には、電池監視IC10_1に対応する電池セル群51Aにおける最も低電位側の電池セルの負極の電圧VSS及びレギュレータ15から出力される電圧VDDが電源電圧として供給される。従って、初段の電池監視IC10_1から送信される差動信号形式の送信信号TX、TXNにおけるハイレベルは、電圧VDDのレベルVddと同じレベルとなり、送信信号TX、TXNにおけるローレベルは、電圧VSSのレベルVssと同じレベルとなる。
【0061】
次段の電池監視IC10_2の第1の通信回路17には、電池監視IC10_2に対応する電池セル群51Bにおける最も高電位側の電池セルの正極の電圧VCC1及び降圧回路12から出力される電圧VCC2が電源電圧として供給される。すなわち、電池監視IC10_2の第1の通信回路17は、電池セル50の接続ラインに直接接続されており、ローパスフィルタ20を介さない電圧VCC1及び電圧VCC1から降圧した電圧VCC2が、電源電圧として第1の通信回路17に供給される。次段の電池監視IC10_2の第1の通信回路17は、初段の電池監視IC10_1から送信される送信信号TX、TXNを、受信信号RX、RXNとして受信する。受信信号RX、RXNにおけるハイレベルは、電圧VCC1のレベルVcc1と同じレベルとなり、受信信号RX、RXNにおけるローレベルは、電圧VCC2のレベルVcc2と同じレベルとなる。送信信号TX、TXN及び受信信号RX、RXNは同じ信号となるので、初段の電池監視IC10_1と次段の電池監視IC10_2との間で通信が可能となる。
【0062】
図8A及び図8Bは、電池セル50の接続ラインにノイズが発生している場合における、初段の電池監視IC10_1から次段の電池監視IC10_2への信号伝送時における、電池監視IC10_1及び10_2の各部の電圧を示すタイミングチャートである。
【0063】
図8Aに示すように、電池セル50の接続ラインにノイズが発生した場合、電圧VDD及び電圧VSSにもノイズが重畳し、電圧VDD及び電圧VSSが電源電圧として供給される電池監視IC10_1の第2の通信回路18から送信される送信信号TX、TXN及び電池監視IC10_2の通信回路17が受信する受信信号RX、RXNにもノイズが重畳する。なお、通信線L3及びL4に伝送される送信信号TX、TXN及び受信信号RX、RXNに重畳するノイズは同相ノイズである。
【0064】
図8Bに示すように、電池セル50の接続ラインにノイズが発生した場合、次段の電池監視IC10_2の第1の通信回路17の電源電圧として供給される電圧VCC1及びVCC2にもノイズが重畳する。次段の電池監視IC10_2の通信回路17が受信する受信信号RX、RXNに重畳するノイズ及び電圧VCC1及びVCC2に重畳するノイズは、同相ノイズであるので、受信信号RX、RXNは、ノイズの振幅が大きくなった場合でも、電圧VCC1のレベルVcc1及び電圧VCC2のレベルVcc2でクランプされることがない。従って、送信信号TX、TXNにノイズが重畳した場合でも、次段の電池監視IC10_2の第1の通信回路17において、TXとTXNの差分に相当する差動信号を、RXとRXNとの差分に相当する差動信号として、適切に受信することが可能となる。
【0065】
図9は、比較例に係る電池監視IC10_1X及び10_2Xを備えた電池監視システム1Xの構成を示す回路ブロック図である。比較例に係る電池監視IC10_1X及び10_2Xは、ローパスフィルタ20から出力される、ノイズ成分が除去された電圧VCC及び昇圧回路11から出力されるノイズ成分を含まない電圧VUP(>VCC)が、電源電圧として第1の通信回路17に供給される点が、本発明の実施形態に係る電池監視IC10_1及び10_2と異なる。
【0066】
初段の電池監視IC10_1Xの第2の通信回路18には、電池監視IC10_1Xに対応する電池セル群51Aにおける最も低電位側の電池セルの負極の電圧VSS及びレギュレータ15から出力される電圧VDDが電源電圧として供給される。従って、電池セル50の接続ラインにノイズが発生していない場合、初段の電池監視IC10_1Xから送信される差動信号形式の送信信号TX、TXNにおけるハイレベルは、電圧VDDのレベルVddと同じレベルとなり、送信信号TX、TXNにおけるローレベルは、電圧VSSのレベルVssと同じレベルとなる。
【0067】
次段の電池監視IC10_2Xの第1の通信回路17には、ローパスフィルタ20から出力されるノイズ成分が除去された電圧VCC及び昇圧回路11から出力されるノイズ成分を含まない電圧VUPが電源電圧として供給される。次段の電池監視IC10_2Xの第1の通信回路17は、初段の電池監視IC10_1Xから送信される送信信号TX、TXNを、受信信号RX、RXNとして受信する。電池セル50の接続ラインにノイズが発生していない場合には、受信信号RX、RXNにおけるハイレベルは、電圧VUPのレベルVupと同じレベルとなり、受信信号RX、RXNにおけるローレベルは、電圧VCCのレベルVccと同じレベルとなる。電池セル50の接続ラインにノイズが発生していない場合には、送信信号TX、TXN及び受信信号RX、RXNは同じ信号となるので、初段の電池監視IC10_1Xの第2の通信回路18と次段の電池監視IC10_2Xの第1の通信回路17との間で通信が可能となる。このように、比較例に係る電池監視IC10_1X及び10_2Xにおいては、第1の通信回路17には、ノイズ成分を含まない電源電圧が供給される一方、第2の通信回路18には、ノイズ成分を含む電源電圧が供給される。
【0068】
図10A及び図10Bは、比較例に係る電池監視システム1Xにおいて、電池セル50の接続ラインにノイズが発生している場合における、初段の電池監視IC10_1Xから次段の電池監視IC10_2Xへの信号伝送時における、電池監視IC10_1X及び10_2Xの各部の電圧を示すタイミングチャートである。
【0069】
図10Aに示すように、電池セル50の接続ラインにノイズが発生した場合、電圧VDD及び電圧VSSにもノイズが重畳し、電圧VDD及び電圧VSSが電源電圧として供給される電池監視IC10_1Xの第2の通信回路18から送信される送信信号TX、TXNにもノイズが重畳する。
【0070】
一方、図10Bに示すように、電池セル50の接続ラインにノイズが発生した場合でも、次段の電池監視IC10_2Xの第1の通信回路17の電源電圧として供給される電圧VUP及び電圧VCCにはノイズが重畳されない。このような状況において、ノイズの振幅が大きくなった場合には、次段の電池監視IC10_2Xの第1の通信回路17が受信する受信信号RX、RXNは、図10Bに示すように、第1の通信回路17の電源電圧である電圧VCCのレベルVcc及び電圧VUPのレベルVupでクランプされる。この場合、受信信号RXとRXNとの差分に相当する差動信号において、図10Bにおいてハッチングで示す不定領域Zが発生し、電池監視IC10_1Xの第2の通信回路18から送信された信号を、電池監視IC10_2Xの第1の通信回路17において適切に受信することができなくなる。
【0071】
このように、比較例に係る電池監視システム1Xにおいては、初段の電池監視IC10_1Xの第2の通信回路18には、ノイズが重畳した電圧VSS及び電圧VDDが電源電圧として供給され、次段の電池監視IC10_2Xの第1の通信回路17には、ノイズが重畳していない電圧VCC及び電圧VUPが電源電圧として供給される。これにより、ノイズの振幅が大きくなった場合に、電池監視IC10_2Xの第1の通信回路17に供給される電源電圧のレベルVcc及びVupのレベルで、受信信号RX、RXNがクランプされ、電池監視IC10_1Xと電池監視IC10_2Xとの間での通信が不能となる場合がある。
【0072】
一方、本発明の実施形態に係る電池監視システム1によれば、初段の電池監視IC10_1の第2の通信回路18及び次段の電池監視IC10_2の第1の通信回路17には、互いに同じノイズを含む電源電圧が印加されるように構成されているので、ノイズの振幅が大きくなった場合でも、次段の電池監視IC10_2の第1の通信回路17において受信される受信信号RX、RXNが、当該第1の通信回路17に供給される電源電圧の電圧レベルでクランプされることはなく、電池監視IC10_1の第2の通信回路18と電池監視IC10_2の第1の通信回路17との間での通信を良好に保つことが可能となる。
【0073】
なお、上記の説明では、初段の電池監視IC10_1の第2の通信回路18から送信された信号を、次段の電池監視IC10_2の第1の通信回路17が受信する場合について説明したが、次段の電池監視IC10_2の第1の通信回路17から送信された信号を、初段の電池監視IC10_1の第2の通信回路18が受信する場合においても、同様の効果を得ることができる。
【0074】
また、本実施形態では、降圧回路12から出力される電圧VCC2を第1の通信回路17の電源電圧として供給する場合を例示したが、昇圧回路から出力される電圧を第1の通信回路17の電源電圧として供給してもよい。この場合、昇圧回路から出力される電圧に電池セル50の接続ラインに発生するノイズと同相のノイズが重畳されるようにローパスフィルタ20を介さない電圧が昇圧回路に入力される。
【0075】
なお、電池監視システム1は、本発明における電池監視システムの一例である。電池監視IC10_1及び10_2は、本発明における半導体装置の一例である。起動検出回路14は、本発明における起動検出回路の一例である。降圧回路12は、本発明における第1の電源回路の一例である。レギュレータ15は、本発明における第2の電源回路の一例である。第1の通信回路17は、本発明における第1の通信回路の一例である。第2の通信回路18は、本発明における第2の通信回路の一例である。
【符号の説明】
【0076】
1 電池監視システム
10_1、10_2 電池監視IC
11 昇圧回路
12 降圧回路
13 セル電圧測定回路
14 起動検出回路
15 レギュレータ
16 制御回路
17 第1の通信回路
18 第2の通信回路
19 スイッチ回路
20 ローパスフィルタ
31 整流部
32 電圧発生部
33 出力部
50 電池セル
L1、L2、L3、L4 通信線
R1、R2、R3、R4 抵抗素子
A1、A2 インバータ
D1 ダイオード
M1 トランジスタ
La ラッチ回路
T1、T2 入力端子
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10A
図10B