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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】密封材組成物
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/04 20060101AFI20220614BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
H05B33/04
H05B33/14 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020565859
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 KR2019011683
(87)【国際公開番号】W WO2020055085
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】10-2018-0108025
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】クワク、ジ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジュン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、クク ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ミ リム
(72)【発明者】
【氏名】リー、ユン ジョン
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0066878(KR,A)
【文献】特開2006-294276(JP,A)
【文献】特開2004-111380(JP,A)
【文献】特開2012-129010(JP,A)
【文献】特表2015-502868(JP,A)
【文献】国際公開第2018/106088(WO,A1)
【文献】特表2019-528355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/04
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ以上の官能基を有する脂肪族カルボビシクロ化合物;分子構造内に環形構造を有するエポキシ化合物;直鎖又は分枝鎖の脂肪族エポキシ化合物;及びオキセタン基を有する化合物を含む密封材組成物であって、
前記脂肪族カルボビシクロ化合物は、密封材組成物100重量部に対して、1重量部~50重量部の範囲内で含まれ、
前記分子構造内に環形構造を有するエポキシ化合物は、前記脂肪族カルボビシクロ化合物100重量部に対して、5重量部~150重量部の範囲内で含まれ、
前記直鎖又は分枝鎖の脂肪族エポキシ化合物は、前記脂肪族カルボビシクロ化合物100重量部に対して、20重量部~300重量部の範囲内で含まれ、
前記オキセタン基を有する化合物は、前記脂肪族カルボビシクロ化合物100重量部に対して、40重量部~800重量部の範囲内で含まれる、密封材組成物。
【請求項2】
前記密封材組成物の硬化により形成される有機層は、誘電率が2.0~3.5の範囲内である、請求項1に記載の密封材組成物。
【請求項3】
光開始剤をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の密封材組成物。
【請求項4】
光開始剤は、脂肪族カルボビシクロ化合物100重量部に対して、5重量部~80重量部の範囲内で含まれる、請求項3に記載の密封材組成物。
【請求項5】
密封材組成物は、常温で測定した粘度が50cP以下である、請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の密封材組成物。
【請求項6】
密封材組成物は、300mJ/cm~6,000mJ/cm光量で光硬化する、請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の密封材組成物。
【請求項7】
密封材組成物の硬化物は、鉛筆硬度が2H以上である、請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載の密封材組成物。
【請求項8】
密封材組成物は、無溶剤形態のインク組成物である、請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載の密封材組成物。
【請求項9】
基板;
基板上に形成された有機電子素子;及び
前記有機電子素子の全面を密封し、請求項1から請求項8のうちいずれか1項に記載の密封材組成物により形成される有機層;を含む、有機電子装置。
【請求項10】
有機層は、20μm以下の厚さを有する、請求項9に記載の有機電子装置。
【請求項11】
上部に有機電子素子が形成された基板上に、請求項1~請求項8のうちいずれか1項に記載の密封材組成物が前記有機電子素子の全面を密封するように有機層を形成するステップを含む、有機電子装置の製造方法。
【請求項12】
有機層を形成するステップは、インクジェット印刷、グラビアコーティング、スピンコーティング、スクリーン印刷又はリバースオフセットコーティングを含む、請求項11に記載の有機電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2018年09月11日に出願された大韓民国特許出願第10-2018-0108025号に基づく優先権の利益を主張し、該当大韓民国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
技術分野
本出願は、密封材組成物、それを含む有機電子装置及び前記有機電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
有機電子装置(OED;organic electronic device)は、正孔及び電子を用いて電荷の交流を発生する有機材料層を含む装置を意味する。OEDの例としては、光電池装置(photovoltaic device)、整流器(rectifier)、トランスミッター(transmitter)及び有機発光ダイオード(OLED;organic light emitting diode)などが挙げられる。
【0004】
前記有機電子装置のうち有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)は、既存の光源に比べて電力消費量が少なく、応答速度が速く、表示装置又は照明の薄型化に有利である。また、OLEDは、空間活用性に優れて各種携帯用機器、モニター、ノートパソコン及びTVにわたる多様な分野において適用されるものと期待されている。
【0005】
従来の有機電子装置は、電子装置の回路間の干渉発生を防止するために有機電子装置を構成する有機層の厚さを厚く形成した。しかし、有機層が厚いと、薄型の有機電子装置を製造しにくい。
【0006】
したがって、電子装置の回路間の干渉問題の発生が改善できると共に、展延性に優れて薄型の有機電子装置に適用が可能であり、硬化後に硬化物の硬度が優れた密封材組成物が要請される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願の目的は、外部から有機電子装置に流入される水分又は酸素を効果的に遮断することができ、回路間の干渉問題が発生しない薄型の有機電子装置に適用可能な密封材組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で言及する物性のうち測定温度がその結果に影響を及ぼす場合には、特に異に規定しない限り、該当物性は、常温で測定した物性である。用語「常温」は、加温したり減温されない自然そのままの温度であって、通常、約10℃~約30℃の範囲内のいずれか一つの温度、又は約23℃又は約25℃程度である。また、本明細書で特に異に規定しない限り、温度の単位は、℃である。
【0009】
本明細書で言及する物性のうち測定圧力がその結果に影響を及ぼす場合には、特に異に規定しない限り、該当物性は、常圧で測定した物性である。用語「常圧」は、加圧したり又は減圧されない自然そのままの圧力であって、通常、約1気圧程度を常圧と称する。
【0010】
本出願に関する一例で、本出願は、密封材組成物に関する。前記密封材組成物は、例えば、OLEDなどのような有機電子装置を封止又はカプセル化することに適用される封止材であってもよい。一つの例示で、本出願の密封材組成物は、有機電子素子の全面を封止又はカプセル化することに適用され得る。したがって、前記密封材組成物がカプセル化に適用された後には有機電子装置の全面を密封する有機層の形態で存在できる。また、前記有機層は、後述する保護膜及び/又は無機層とともに有機電子素子上に積層されて封止構造を形成することができる。
【0011】
本出願の具体例で、本出願は、インクジェット印刷工程に適用可能な有機電子素子封止用密封材組成物に関するもので、前記組成物は、非接触式でパターニングが可能なインクジェット印刷を用いて基板に吐出されたときに適切な物性を有するように設計され得る。
【0012】
本出願で用語「有機電子装置」は、互いに対向する一対の電極の間に正孔及び電子を用いて電荷の交流を発生する有機材料層を含む構造を有する物品又は装置を意味し、その例としては、光電池装置、整流器、トランスミッター及び有機発光ダイオード(OLED)などが挙げられるが、これに制限されるものではない。本出願の一つの例示で、前記有機電子装置はOLEDであってもよい。
【0013】
一つの例示で、密封材組成物は、一つ以上の官能基を有する脂肪族カルボビシクロ化合物を含む。
【0014】
前記一つ以上の官能基は特に制限されないが、エポキシ基又は(メタ)アクリル基であってもよい。本出願で用語「(メタ)アクリル基」は、アクリル基又はメタクリル基を意味する。
【0015】
前記用語「ビシクロ化合物」とは、構造式の中に結合された2個の環構造を有する化合物を意味する。ビシクロ化合物は、一つの原子を2個の環が共有するスピロ環化合物(spirocyclic compounds)、隣接する2個の原子を2個の環が共有する融合された二環式化合物(fused bicyclic compounds)及び3個以上の原子を2個の環が共有する架橋された二環式化合物(bridged bicyclic compounds)に区分され得る。
【0016】
前記用語「カルボビシクロ化合物」は、結合された2個の環を構成する原子が全て炭素原子である化合物を意味する。
【0017】
前記用語「脂肪族カルボビシクロ化合物」は、カルボビシクロ化合物を構成する原子が全て水素と炭素のみからなった化合物であって、2個の環を構成する原子は全て炭素原子である化合物を意味する。
【0018】
本出願で脂肪族カルボビシクロ化合物は、水素原子と炭素原子のみで構成された化合物であり、3個以上の炭素原子を2個の環が共有する構造を有する化合物であって、前記2個の環を構成する原子が全て炭素原子である化合物を意味することができる。
【0019】
一例で、前記脂肪族カルボビシクロ化合物は、炭素数7~18の飽和脂肪族カルボビシクロを意味することができる。一具体例で、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(bicyclo[2.2.1]heptane)、ビシクロ[3.1.1]ヘプタン(bicyclo[3.1.1.]heptane)、ビシクロ[3.2.1]オクタン(bicyclo[3.2.1]octane)、ビシクロ[4.3.2]ウンデカン(bicyclo[4.3.2]undecane)、ビシクロ[3.3.3]ウンデカン(bicyclo[3.3.3]undecane)などが例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0020】
一つの例示で、前記脂肪族カルボビシクロ化合物は、下記化学式1又は化学式2で表示される構造を有する飽和脂肪族カルボビシクロ化合物であってもよい。
【0021】
[化学式1]
【化1】
【0022】
[化学式2]
【化2】
【0023】
前記化学式1及び2で、Rは、C1-4アルキル基に置換されるか非置換されたC1-6アルキレン基を示し、R~Rは、それぞれ独立的に水素、C1-4アルキル基、又は(メタ)アクリル基を示すか隣接する置換基とともに脂環族環又はエポキシ基を形成し、化学式1及び化学式2の化合物は、少なくとも一つ以上の(メタ)アクリル基又はエポキシ基を有する。
【0024】
前記化学式1及び化学式2で表示される構造を有する化合物は、ジシクロペンタジエンジオキシド(Dicyclopentadiene dioxide)、α-ピネンオキシド(α-Pinene oxide)、β-ピネンオキシド(β-Pinene oxide)、2,3-エポキシノルボルナン(2,3-Epoxynorbornane)、イソボルニルアクリレート(Isobornyl acrylate)、イソボルニルメタクリレート(Isobornyl methacrylate)、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(Tricyclodecane dimethanol diacrylate)又はトリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(Tricyclodecane dimethanol dimethacrylate)などが例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0025】
一つの例示で、前記脂肪族カルボビシクロ化合物は、密封材組成物100重量部に対して、約1重量部~約50重量部の範囲内で含まれ得る。他の例示で、約5重量部以上又は約10重量部以上であってもよく、約45重量部以下又は約40重量部以下であってもよい。
【0026】
脂肪族カルボビシクロ化合物の含量範囲を制御することで、低誘電率を有する有機層を提供することができる。したがって、低誘電率の具現が可能なので厚さが薄い有機層を有機電子装置に適用しても回路間の干渉問題が発生しなくて薄型化が可能な有機電子装置を提供することができる。
【0027】
一つの例示で、前記密封材組成物は、分子構造内に環形構造を有するエポキシ化合物、直鎖又は分枝鎖の脂肪族エポキシ化合物及びオキセタン基を有する化合物からなるグループより選択された一つ以上を含むことができる。一具体例で、前記密封材組成物は、分子構造内に環形構造を有するエポキシ化合物、直鎖又は分枝鎖の脂肪族エポキシ化合物及びオキセタン基を有する化合物を全て含むことができる。
【0028】
前記分子構造内に環形構造を有するエポキシ化合物は特に制限されないが、一つの例示で、分子構造内に環構成原子が3~10、4~8又は5~7の範囲内であってもよく、前記化合物内に環形構造が1以上又は2以上であるか、10以下であってもよい。
【0029】
一具体例で、分子構造内に環形構造を有する化合物は、3,4-エポキシシクロへキシルメチル-3',4'-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート及びその誘導体、ビニルシクロヘキセンジオキシド及びその誘導体、1,4-シクロヘキサンジメタノールビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)及びその誘導体、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン及びその誘導体又は1,1'-バイ-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン及びその誘導体を例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0030】
前記分子構造内に環形構造を有する化合物は、前記脂肪族カルボビシクロ化合物100重量部に対して、5重量部~150重量部の範囲内で含むことができる。他の例示で、約10重量部以上、15重量部以上又は約20重量部以上であってもよく、約140重量部以下、130重量部以下、120重量部以下又は約110重量部以下であってもよい。
【0031】
前記直鎖又は分枝鎖の脂肪族エポキシ化合物は、一つの例示で、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル又はネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルなどを含むことができるが、これに制限されない。
【0032】
前記直鎖又は分枝鎖の脂肪族エポキシ化合物は、前記脂肪族カルボビシクロ化合物100重量部に対して、20重量部~300重量部の範囲内で含むことができる。他の例示で、約30重量部以上、35重量部以上、40重量部以上又は約45重量部以上であってもよく、約280重量部以下、260重量部以下、240重量部以下又は約220重量部以下であってもよい。
【0033】
分子構造内に環形構造を有する化合物、及び直鎖又は分枝鎖の脂肪族エポキシ化合物の含量範囲を制御することで、密封材組成物が有機電子素子を全面密封するにおいて素子の損傷を防止することができ、インクジェット印刷が可能な適正物性を有するようにし、硬化後に硬化物は優れた硬度を有するようにし、また優れた水分遮断性を一緒に具現することができる。
【0034】
前記オキセタン基を有する化合物は、一つの例示で、ビス[1-エチル(3-オキセチル)]メチルエーテル、3-エチル-3-(シクロヘキシル)メチルオキセタン、オキセタンシリケート、3-エチル-3-ヒドロキシメチル-オキセタン、1,4-ビス[{3-エチルオキセタン-1-イル}メトキシ]メチル]ベンゼン、3-エチル-3-[(2-エチルへキシルオキシ)メチル]オキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチル-オキセタン、4,4'-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビスフェニル、ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メチル]テレフタレート又は(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチルメタクリレートなどが例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0035】
前記オキセタン基を有する化合物は、前記脂肪族カルボビシクロ化合物100重量部に対して、40重量部~800重量部の範囲内で含むことができる。他の例示で、約50重量部以上又は約60重量部以上であってもよく、約750重量部以下、700重量部以下又は約650重量部以下であってもよい。
【0036】
オキセタン基を有する化合物の含量範囲を制御することで、有機電子素子にインクジェット印刷方式で有機層を形成することができ、塗布された密封材組成物は、短い時間内に優れた展延性を有し、硬化された後に硬化物は優れた硬度を有する有機層を提供することができる。
【0037】
一つの例示で、本出願の密封材組成物は、光開始剤をさらに含むことができる。前記光開始剤は、自由ラジカル光開始剤又はイオン性光開始剤であってもよい。また、前記光開始剤は、200nm~400nm範囲の波長を吸収する化合物であってもよい。本出願は、前記光開始剤を用いることで、本出願の特定の組成において優れた硬化物性を具現することができる。
【0038】
前記自由ラジカル光開始剤は、硬化速度及び有機層の物性などを考慮して適切に選択され得、一つの例示で、ベンゾイン系、ヒドロキシケトン系、アミノケトン系又はホスフィンオキシド系光開始剤などを用いることができる。一具体例で、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアニノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4'-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン(thioxanthone)、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]又は2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシドを用いることができるが、これに制限されるものではない。
【0039】
前記イオン性光開始剤は、一つの例示で、陽イオン光重合開始剤であってもよい。前記陽イオン光重合開始剤の場合、当業界の公知の素材が用いられ、例えば、芳香族スルホニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族ジアゾニウム又は芳香族アンモニウムを含む陽イオン部と、AsF 、SbF 、PF 又はテトラキス(ペンタフルオルフェニル)ボレートを含む陰イオン部を有する化合物を含むことができる。また、陽イオン光重合開始剤としては、オニウム塩(onium salt)又は有機金属塩(organometallic salt)系列のイオン化陽イオン開始剤、又は有機シラン又は潜在性スルホン酸(latent sulfonic acid)系列や非イオン化陽イオン光重合開始剤が例示され得る。オニウム塩系列の開始剤としては、ジアリールヨードニウム塩(diaryliodonium salt)、トリアリールスルホニウム塩(triarylsulfonium salt)又はアリールジアゾニウム塩(aryldiazonium salt)などが例示され得る。有機金属塩系列の開始剤としては、鉄アレン(iron arene)などが例示され得る。有機シラン系列の開始剤としては、o-ニトリルベンジルトリアリールシリルエーテル(o-nitrobenzyl triaryl silyl ether)、トリアーリルシリルペルオキシド(triaryl silyl peroxide)又はアシルシラン(acyl silane)などが例示され得る。潜在性スルホン酸系列の開始剤としては、α-スルホニルオキシケトン又はα-ヒドロキシメチルベンゾインスルホネートなどが例示され得る。
【0040】
前記光開始剤は、脂肪族カルボビシクロ化合物100重量部に対して、約5重量部~約80重量部の範囲内で密封材組成物に含まれ得る。他の例示で、約8重量部以上、10重量部以上又は約12重量部以上であってもよく、約75重量部以下、70重量部以下又は約65重量部以下であってもよい。
【0041】
本出願は、前記光開始剤の含量範囲を調節することで、有機電子素子上に直接適用される本出願の密封材組成物の特性上、前記素子に物理的化学的損傷を最小化することができる。
【0042】
本出願の密封材組成物は、界面活性剤をさらに含むことができる。一つの例示で、前記界面活性剤は、極性作用基を含むことができ、前記極性作用基は、界面活性剤の化合物構造の末端に存在できる。前記極性作用基は、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシ基、リン酸塩、アンモニウム塩、カルボキシレート基、硫酸塩(sulfate)又はスルホン酸塩(sulfonate)を含むことができる。また、本出願の具体例で、前記界面活性剤は、非シリコン系界面活性剤又はフッ素系界面活性剤であってもよい。前記非シリコン系界面活性剤又はフッ素系界面活性剤は、上述した脂肪族カルボビシクロ化合物、エポキシ化合物及びオキセタン基を有する化合物と共に適用されて、有機電子素子上に優れたコーティング性を提供する。一方、極性反応基を含む界面活性剤の場合、上述した密封材組成物の他の成分との親和性が高いため、付着力の側面から優れた効果を具現することができる。本出願の具体例で、基材に対するインクジェット印刷方式でコーティング性を向上させるために、親水性(hydrophilic)フッ素系界面活性剤又は非シリコン系界面活性剤を用いることができる。
【0043】
具体的に、前記界面活性剤は、高分子型又はオリゴマー型フッ素系界面活性剤であってもよい。前記界面活性剤は、市販品が用いられ、例えば、TEGO社のGlide 100、Glide 110、Glide 130、Glide 460、Glide 440、Glide 450又はRAD2500;DIC(DaiNippon Ink & Chemicals)社のMegaface F-251、F-281、F-552、F-554、F-560、F-561、F-562、F-563、F-565、F-568、F-570又はF-571;旭硝子社のSurflon S-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141又はS-145;住友スリーエム社のFluorad FC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430又はFC-4430;デュポン社のZonyl FS-300、FSN、FSN-100又はFSO;及びBYK社のBYK-350、BYK-354、BYK-355、BYK-356、BYK-358N、BYK-359、BYK-361N、BYK-381、BYK-388、BYK-392、BYK-394、BYK-399、BYK-3440、BYK-3441、BYKETOL-AQ又はBYK-DYNWET 800などからなる群より選択されるものを用いることができる。
【0044】
前記界面活性剤は、脂肪族カルボビシクロ化合物100重量部に対して、約0.1重量部~約10重量部、約0.2重量部~約10重量部、約0.4重量部~約10重量部、約0.5重量部~約8重量部又は約1重量部~約4重量部で含まれ得る。前記含量の範囲内で、本出願は、密封材組成物がインクジェット印刷方式に適用されて薄膜の有機層を形成することができるようにする。
【0045】
一つの例示で、前記密封材組成物は、約300nm以上の長波長の活性エネルギー線での硬化性を補完するために光増感剤をさらに含むことができる。前記光増感剤は、約200nm~約400nm、約250nm~約400nm、約300nm~約400nm又は約350nm~約395nm範囲の波長を吸収する化合物であってもよい。
【0046】
前記光増感剤は、アントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセンなどのアントラセン系化合物;ベンゾフェノン、4,4-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルアミノベンゾフェノン、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、3,3-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、3,3,4,4-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;アセトフェノン;ジメトキシアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン又はプロパノンなどのケトン系化合物;9-フルオレノン、2-クロロ-9-フルオレノン又は2-メチル-9-フルオレノンなどのフルオレノン系化合物;チオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロピルオキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン(ITX)又はジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン系化合物;キサントン又は2-メチルキサントンなどのキサントン系化合物;アントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、t-ブチルアントラキノン又は2,6-ジクロロ-9,10-アントラキノンなどのアントラキノン系化合物;9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9-アクリジニル)ヘプタン、1,5-ビス(9-アクリジニルペンタン)又は1,3-ビス(9-アクリジニル)プロパンなどのアクリジン系化合物;ベンジル、1,7,7-トリメチル-ビシクロ[2,2,1]ヘプタン-2,3-ジオン又は9,10-フェナントレンキノンなどのジカルボニル化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド又はビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドなどのホスフィンオキシド系化合物;メチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、エチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート又は2-n-ブトキシエチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエートなどのベンゾエート系化合物;2,5-ビス(4-ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6-ビス(4-ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン又は2,6-ビス(4-ジエチルアミノベンザル)-4-メチル-シクロペンタノンなどのアミノ系シナジスト;3,3-カルボニルビニル-7-(ジエチルアミノ)クマリン、3-(2-ベンゾチアゾイル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン、3-ベンゾイル-7-(ジエチルアミノ)クマリン、3-ベンゾイル-7-メトキシ-クマリン又は10,10-カルボニルビス[1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H、5H、11H-C1]-ベンゾピラノ[6,7,8-ij]-キノルリジン-11-オンなどのクマリン系化合物;4-ジエチルアミノカルコン又は4-アジドベンザルアセトフェノンなどのカルコン化合物;2-ベンゾイルメチレン;及び3-メチル-b-ナフトチアゾリンからなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0047】
前記光増感剤は、光開始剤100重量部に対して、10重量部~40重量部、12重量部~38重量部又は14重量部~36重量部の範囲内で含まれ得る。本出願は、前記光増感剤の含量を調節することで、所望の波長での硬化感度の上昇作用を具現しながらも、光増感剤がインクジェット印刷方式のコーティングで溶解されず接着力を低下させることを防止することができる。
【0048】
本出願の密封材組成物は、カップリング剤をさらに含むことができる。本出願は、密封材組成物の硬化物の被着体との密着性や硬化物の耐透湿性を向上させ得る。前記カップリング剤は、例えば、チタニウム系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤又はシランカップリング剤を含むことができる。
【0049】
本出願の具体例で、前記シランカップリング剤としては、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン又は2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ系シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン又は11-メルカプトウンデシルトリメトキシシランなどのメルカプト系シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン又はN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルジメトキシメチルシランなどのアミノ系シランカップリング剤;3-ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのウレイド系シランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン又はビニルメチルジエトキシシランなどのビニル系シランカップリング剤;p-スチリルトリメトキシシランなどのスチリル系シランカップリング剤;3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン又は3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリレート系シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのイソシアネート系シランカップリング剤;又はビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系シランカップリング剤;などが挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0050】
本出願で、カップリング剤は、脂肪族カルボビシクロ化合物100重量部に対して、0.1重量部~20重量部又は0.5重量部~15重量部で含まれ得る。本出願は、前記範囲内で、カップリング剤の添加による密着性の改善効果を具現することができる。
【0051】
一つの例示で、密封材組成物は、必要に応じて、無機フィラーをさらに含むことができる。本出願で用いられるフィラーの具体的な種類は、特に制限されず、例えば、クレイ、タルク、アルミナ、炭酸カルシウム又はシリカなどの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0052】
本出願の密封材組成物は、脂肪族カルボビシクロ化合物100重量部に対して、0重量部~50重量部、1重量部~40重量部、1重量部~20重量部又は1~10重量部の無機フィラーを含むことができる。本出願は、無機フィラーを、好ましくは、1重量部以上に制御することで、優れた水分又は湿気遮断性及び機械的物性を有する封止構造を提供することができる。また、本発明は、無機フィラーの含量を50重量部以下に制御することで、薄膜で形成された場合にも優れた水分遮断特性を示す硬化物を提供することができる。
【0053】
本出願による密封材組成物には、上述した構成の外にも、上述した発明の効果に影響を及ぼさない範囲で、多様な添加剤が含まれ得る。例えば、密封材組成物は、消泡剤、粘着付与剤、紫外線安定剤又は酸化防止剤などを目的とする物性に応じて適正範囲の含量で含むことができる。
【0054】
一つの例示で、本出願の密封材組成物の硬化物は、鉛筆硬度が2H以上であってもよい。
【0055】
前記鉛筆硬度は、密封材組成物に窒素ガスで30分間パージングした後、前記密封材組成物に約1,000mJ/cmの光量でUV硬化して形成した硬化物を用いて測定することができる。
【0056】
鉛筆硬度の測定方法は、鉛筆硬度試験機を用いて測定することができる。具体的に、測定対象である密封材組成物の硬化物に500gfの荷重で、273mm/minの速度及び45度の鉛筆角度で15mm移動させて測定することができる。
【0057】
密封材組成物の硬化物の鉛筆硬度が2H以上である場合、優れた耐久性及び耐スクラッチ性を有することができる。
【0058】
一つの例示で、本出願の密封材組成物は、常温、例えば、25℃で液状であってもよい。一具体例で、前記密封材組成物は、無溶剤形態の液状であってもよい。前記密封材組成物は、有機電子素子を封止することに適用され得、具体的に、有機電子素子の全面を封止することに適用され得る。本出願の密封材組成物は、インクジェット印刷が可能に特定の組成及び物性を有することができる。
【0059】
一つの例示で、本出願の密封材組成物は、インク組成物であってもよい。一具体例で、密封材組成物は、インクジェット印刷工程が可能な無溶剤形態のインク組成物であってもよい。本出願の密封材組成物は、インクジェット印刷が可能に特定の組成及び物性を有することができる。
【0060】
一つの例示で、本出願の密封材組成物は、常温で測定した粘度が50cP以下であってもよい。具体的に、約25℃で約90%のトルク及び約5rpm~約20rpmの範囲内のせん断速度で、ブルックフィールド社のDV-3で測定した粘度が、約50cP以下であってもよい。前記密封材組成物の粘度は、他の例示で、約1cP~約46cP又は約5cP~約44cPの範囲内であってもよい。
【0061】
本出願は、組成物の粘度を前記範囲に制御することで、有機電子素子に適用される時点でのインクジェット印刷が可能な物性を具現することができ、また、コーティング性を良好にして薄膜の封止材を提供することができる。
【0062】
一つの例示で、前記密封材組成物は、光の照射で架橋を誘導して有機層を形成することができる。前記光を照射することは、約250nm~約450nm又は約300nm~約450nm領域帯の波長範囲を有する光を300mJ/cm~6,000mJ/cmの光量又は500mJ/cm~4,000mJ/cmの光量で照射することを含むことができる。
【0063】
一つの例示で、本出願の密封材組成物は、硬化後の有機層の表面エネルギーが、5mN/m~45mN/m、10mN/m~40mN/m、15mN/m~35mN/m又は20mN/m~30mN/mの範囲内であってもよい。前記表面エネルギーの測定は、当業界の公知の方法で測定され得、例えば、Ring Method方法で測定され得る。本出願は、前記表面エネルギーの範囲内で優れたコーティング性を具現することができる。
【0064】
また、本出願は、有機電子装置に関する。例示的な有機電子装置3は、図1に示したように、基板31;前記基板31上に形成された有機電子素子32;及び前記有機電子素子32の全面を密封し、上述した密封剤組成物により形成される有機層33を含むことができる。
【0065】
本出願の具体例で、有機電子素子32は、第1電極層、前記第1電極層上に形成されて少なくとも発光層を含む有機材料層及び前記有機材料層上に形成される第2電極層を含むことができる。前記第1電極層は、透明電極層又は反射電極層であってもよく、第2電極層も、透明電極層又は反射電極層であってもよい。より具体的に、前記有機電子素子32は、基板上に形成された反射電極層、前記反射電極層上に形成されて少なくとも発光層を含む有機材料層及び前記有機材料層上に形成される透明電極層を含むことができる。
【0066】
本出願で有機電子素子32は、有機発光ダイオードであってもよい。
【0067】
一つの例示で、本出願による有機電子装置は、前面発光(top emission)型であってもよいが、これに限定されず、背面発光(bottom emission)型にも適用され得る。
【0068】
前記有機電子装置3は、前記素子32の電極及び発光層を保護する保護膜35をさらに含むことができる。前記保護膜35は、無機保護膜であってもよい。前記保護膜は、化学気相蒸着(CVD、chemical vapor deposition)による保護層であってもよく、その素材は、後述する無機層と同一であるか、相異なっていてもよく、公知の無機物素材を用いることができる。例えば、前記保護膜35は、シリコンナイトライド(SiNx)を用いることができる。一つの例示で、前記保護膜で用いられるシリコンナイトライド(SiNx)を約0.01μm~約50μmの厚さで蒸着することができる。
【0069】
一つの例示で、有機電子装置3は、前記有機層33上に形成された無機層34をさらに含むことができる。無機層34は、その素材は制限されず、上述した保護膜35と同一であるか、相異なっていてもよい。また、前記無機層34は、前記保護膜35と同じ方法で形成され得る。一つの例示で、無機層34は、Al、Zr、Ti、Hf、Ta、In、Sn、Zn及びSiからなる群より選択された一つ以上の金属酸化物又は窒化物であってもよい。前記無機層の厚さは、約0.01μm~約50μm又は約0.1μm~約20μm又は約1μm~約10μmであってもよい。一つの例示で、本出願の無機層34は、ドーパントが含まれていない無機物であるか、又はドーパントが含まれた無機物であってもよい。ドーピングされ得る前記ドーパントは、Ga、Si、Ge、Al、Sn、Ge、B、In、Tl、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Co及びNiからなる群より選択された1種以上の元素又は前記元素の酸化物であってもよいが、これに限定されない。
【0070】
前記有機層の誘電率は、3.5以下である。他の例示で、誘電率は、約3.4以下、約3.3以下又は約3.2以下であってもよく、約2以上、約2.1以上、約2.2以上、約2.3以上、約2.4以上又は約2.5以上であってもよい。有機層の誘電率は、一つの例示で、Impedance/gain-phase Analyzer(HP 4194A)を用いて測定することができる。一具体例で、ガラス上にアルミニウムを約50nm程度になるように蒸着し、その上に密封材組成物をインクジェット印刷方式のコーティング及び約4,000mJ/cmの光量でUV硬化して、厚さが約20μm程度の有機層を形成した後、前記有機層上にアルミニウムを約50nm程度になるように蒸着した試片を用いて有機層の誘電率を測定することができる。有機層の誘電率が前記範囲の低誘電率に該当する場合、厚さが薄い有機層を有機電子装置に適用しても回路間の干渉問題が発生せず、したがって、薄型化が可能な有機電子装置を提供することができる。
【0071】
前記有機層の厚さは、20μm以下の厚さを有することができる。他の例示で、約2μm~約20μm、約2.5μm~約15μm又は約2.8μm~約9μmの範囲内であってもよい。本出願は、有機層の厚さを薄く提供して薄型の有機電子装置を提供することができる。
【0072】
本出願の有機電子装置3は、上述した有機層33及び無機層34を含む封止構造を含むことができ、前記封止構造は、少なくとも一つ以上の有機層33及び少なくとも一つ以上の無機層34を含み、有機層33及び無機層34が繰り返して積層され得る。例えば、前記有機電子装置は、基板/有機電子素子/保護膜/(有機層/無機層)nの構造を有することができ、前記nは、1~100の範囲内の数であってもよい。図1は、nが1であるときを例示的に示す断面図である。
【0073】
一つの例示で、本出願の有機電子装置3は、前記有機層33上に存在するカバー基板をさらに含むことができる。前記基板及び/又はカバー基板の素材は、特に制限されず、当業界の公知の素材を用いることができる。例えば、前記基板又はカバー基板は、ガラス、金属基材又は高分子フィルムであってもよい。高分子フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリテトラフルオルエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-ビニルアセテートフィルム、エチレン-プロピレン共重合体フィルム、エチレン-アクリル酸エチル共重合体フィルム、エチレン-アクリル酸メチル共重合体フィルム又はポリイミドフィルムなどを用いることができる。
【0074】
また、本出願の有機電子装置3は、図2に示したように、前記カバー基板38と前記有機電子素子32が形成された基板31との間に存在する封止フィルム37をさらに含むことができる。前記封止フィルム37は、有機電子素子32が形成された基板31と前記カバー基板38を付着する用途に適用され得、例えば、粘着フィルム又は接着フィルムであってもよいが、これに限定されるものではない。前記封止フィルム37は、有機電子素子32上に積層された上述した有機層及び無機層の封止構造36の全面を密封することができる。
【0075】
また、本出願は、有機電子装置の製造方法に関する。
【0076】
一つの例示で、前記製造方法は、上部に有機電子素子32が形成された基板31上に上述した密封材組成物が前記有機電子素子32の全面を密封するように有機層33を形成するステップを含むことができる。
【0077】
上記で、有機電子素子32の基板31として、例えば、ガラス又は高分子フィルムのような基板31上に真空蒸着又はスパッタリングなどの方法で反射電極又は透明電極を形成し、前記反射電極上に有機材料層を形成して製造され得る。前記有機材料層は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入層及び/又は電子輸送層を含むことができる。引き続き、前記有機材料層上に第2電極をさらに形成する。第2電極は、透明電極又は反射電極であってもよい。
【0078】
本出願の製造方法は、前記基板31上に形成された第1電極、有機材料層及び第2電極上に保護膜35を形成するステップをさらに含むことができる。その後、前記基板31上に前記有機電子素子32を全面カバーするように上述した有機層33を適用する。このとき、前記有機層33を形成するステップは、特に限定されず、前記基板31の全面に上述した密封材組成物をインクジェット印刷(Inkjet)、グラビアコーティング(Gravure)、スピンコーティング、スクリーン印刷又はリバースオフセットコーティング(Reverse Offset)などの工程を用いることができる。
【0079】
また、前記製造方法は、前記有機層に光を照射するステップをさらに含むことができる。本発明では、有機電子装置を封止する有機層に対して硬化工程を行うこともできるが、このような硬化工程は、例えば、加熱チャンバー又はUVチャンバーで進行され得、好ましくは、UVチャンバーで進行され得る。一つの例示で、上述した密封材組成物をインクジェット印刷方式で塗布し、光の照射で塗布された密封材組成物の架橋を誘導して有機層を形成することができ、これは上述したように、250nm~450nmの波長範囲及び300mJ/cm~6,000mJ/cmの光量範囲で光を照射して有機層を形成することができる。
【0080】
また、本出願の製造方法は、前記有機層33上に無機層34を形成するステップをさらに含むことができる。前記無機層34を形成するステップは、当業界の公知の方法が用いられ得、上述した保護膜(図1の35)の形成方法と同一であるか、相異なっていてもよい。
【発明の効果】
【0081】
本出願は、外部から有機電子装置に流入される水分又は酸素を効果的に遮断することができ、回路間の干渉問題が発生しないと共に、展延性に優れ、薄型の有機電子装置に適用が可能であり、硬化後に硬化物の硬度が優れた密封材組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1】本出願の一実施例による有機電子装置を示す断面図である。
図2】本出願の一実施例による有機電子装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
以下、実施例を通じて本出願を詳しく説明するが、本出願の範囲は、下記提示された実施例によって制限されるものではない。
【0084】
有機層の誘電率評価
ガラス上にアルミニウムを約50nm程度になるように蒸着し、その上に下記実施例及び比較例で製造された密封材組成物をインクジェット印刷方式のコーティング及び約4,000mJ/cmの光量でUV硬化して、厚さが約20μm程度の有機層を形成した後、前記有機層上にアルミニウムを約50nm程度になるように蒸着して試片を製造した。Impedance/gain-phase Analyzer(HP 4194A)を用いて前記製造された試片の誘電率を測定した。
【0085】
密封材組成物の粘度
実施例及び比較例を通じて製造された密封材組成物を用いて粘度を測定した。具体的に、約25℃で約90%のトルク及び約5rpm~約20rpmのせん断速度でブルックフィールド社のDV-3で測定した。
【0086】
鉛筆硬度
実施例及び比較例を通じて製造された密封材組成物に窒素ガスで30分間パージングした後、前記密封材組成物に約1,000mJ/cmの光量でUV硬化して形成した硬化物を用いて鉛筆硬度を測定した。
【0087】
鉛筆硬度の測定は、鉛筆硬度試験機を用いた。具体的に、前記硬化物に500gfの荷重で、273mm/minの速度及び45度の鉛筆角度で15mm移動させて測定した。
【0088】
<実施例1>
常温で、脂肪族カルボビシクロ化合物(Dicyclopentadiene dioxide)、分子構造内に環形構造を有するエポキシ化合物(Daicel社のCelloxide 2021P)、直鎖又は分枝鎖の脂肪族エポキシ化合物(HAJIN CHEM TECH社、DE203)、オキセタン基含有化合物(TOAGOSEI社のOXT-221)及び光開始剤(San-Apro社のCPI-310B)をそれぞれ10:10:20:54:6(TTA27:Celloxide 2021P:DE203:OXT-221:CPI-310B)の重量割合で混合容器に投入した。
【0089】
前記混合容器をPlanetary mixer(クラボウ、KK-250s)を用いて均一な密封材組成物を製造した。
【0090】
<実施例2>
常温で、脂肪族カルボビシクロ化合物(Dicyclopentadiene dioxide)、分子構造内に環形構造を有するエポキシ化合物(Daicel社のCelloxide 2021P)、直鎖又は分枝鎖の脂肪族エポキシ化合物(HAJIN CHEM TECH社、DE203)、オキセタン基含有化合物(TOAGOSEI社のOXT-221)及び光開始剤(San-Apro社のCPI-310B)をそれぞれ20:10:20:44:6(TTA27:Celloxide 2021P:DE203:OXT-221:CPI-310B)の重量割合で混合容器に投入したこと以外は、実施例1と同一の方法で密封材組成物を製造した。
【0091】
<実施例3>
常温で、脂肪族カルボビシクロ化合物(Dicyclopentadiene dioxide)、分子構造内に環形構造を有するエポキシ化合物(Daicel社のCelloxide 2021P)、直鎖又は分枝鎖の脂肪族エポキシ化合物(HAJIN CHEM TECH社、DE203)、オキセタン基含有化合物(TOAGOSEI社のOXT-221)及び光開始剤(San-Apro社のCPI-310B)をそれぞれ30:10:20:34:6(TTA27:Celloxide 2021P:DE203:OXT-221:CPI-310B)の重量割合で混合容器に投入したこと以外は、実施例1と同一の方法で密封材組成物を製造した。
【0092】
<実施例4>
常温で、脂肪族カルボビシクロ化合物(Dicyclopentadiene dioxide)、分子構造内に環形構造を有するエポキシ化合物(Daicel社のCelloxide 2021P)、直鎖又は分枝鎖の脂肪族エポキシ化合物(HAJIN CHEM TECH社、DE203)、オキセタン基含有化合物(TOAGOSEI社のOXT-221)及び光開始剤(San-Apro社のCPI-310B)をそれぞれ40:10:20:24:6(TTA27:Celloxide 2021P:DE203:OXT-221:CPI-310B)の重量割合で混合容器に投入したこと以外は、実施例1と同一の方法で密封材組成物を製造した。
【0093】
<実施例5>
常温で、脂肪族カルボビシクロ化合物(α-Pinene oxide)、分子構造内に環形構造を有するエポキシ化合物(Daicel社のCelloxide 2021P)、直鎖又は分枝鎖の脂肪族エポキシ化合物(HAJIN CHEM TECH社、DE203)、オキセタン基含有化合物(TOAGOSEI社のOXT-221)及び光開始剤(San-Apro社のCPI-310B)をそれぞれ10:10:20:54:6(α-Pinene oxide:Celloxide 2021P:DE203:OXT-221:CPI-310B)の重量割合で混合容器に投入したこと以外は、実施例1と同一の方法で密封材組成物を製造した。
【0094】
<実施例6>
常温で、脂肪族カルボビシクロ化合物(α-Pinene oxide)、分子構造内に環形構造を有するエポキシ化合物(Daicel社のCelloxide 2021P)、直鎖又は分枝鎖の脂肪族エポキシ化合物(HAJIN CHEM TECH社、DE203)、オキセタン基含有化合物(TOAGOSEI社のOXT-221)及び光開始剤(San-Apro社のCPI-310B)をそれぞれ20:10:20:44:6(α-Pinene oxide:Celloxide 2021P:DE203:OXT-221:CPI-310B)の重量割合で混合容器に投入したこと以外は、実施例1と同一の方法で密封材組成物を製造した。
【0095】
<実施例7>
常温で、脂肪族カルボビシクロ化合物(α-Pinene oxide)、分子構造内に環形構造を有するエポキシ化合物(Daicel社のCelloxide 2021P)、直鎖又は分枝鎖の脂肪族エポキシ化合物(HAJIN CHEM TECH社、DE203)、オキセタン基含有化合物(TOAGOSEI社のOXT-221)及び光開始剤(San-Apro社のCPI-310B)をそれぞれ30:10:20:34:6(α-Pinene oxide:Celloxide 2021P:DE203:OXT-221:CPI-310B)の重量割合で混合容器に投入したこと以外は、実施例1と同一の方法で密封材組成物を製造した。
【0096】
<実施例8>
常温で、脂肪族カルボビシクロ化合物(α-Pinene oxide)、分子構造内に環形構造を有するエポキシ化合物(Daicel社のCelloxide 2021P)、直鎖又は分枝鎖の脂肪族エポキシ化合物(HAJIN CHEM TECH社、DE203)、オキセタン基含有化合物(TOAGOSEI社のOXT-221)及び光開始剤(San-Apro社のCPI-310B)をそれぞれ40:10:20:24:6(α-Pinene oxide:Celloxide 2021P:DE203:OXT-221:CPI-310B)の重量割合で混合容器に投入したこと以外は、実施例1と同一の方法で密封材組成物を製造した。
【0097】
<比較例>
常温で、分子構造内に環形構造を有するエポキシ化合物(Daicel社のCelloxide 2021P)、直鎖又は分枝鎖の脂肪族エポキシ化合物(HAJIN CHEM TECH社、DE203)、オキセタン基含有化合物(TOAGOSEI社のOXT-221)及び光開始剤(San-Apro社のCPI-310B)をそれぞれ20:20:54:6(Celloxide 2021P:DE203:OXT-221:CPI-310B)の重量割合で混合容器に投入したこと以外は、実施例1と同一の方法で密封材組成物を製造した。
【0098】
下記表1は、実施例及び比較例の密封材組成物の硬化物である誘電層の誘電率を評価した結果である。
【0099】
【表1】
【0100】
前記表1を通じて、脂肪族カルボビシクロ化合物を密封材組成物100重量部に対して、10重量部、20重量部、30重量部又は40重量部を含む実施例1~実施例8の場合、その硬化物である有機層の誘電率は、3.5以下で測定されて電子装置の回路間の干渉問題の発生を改善することができ、また、粘度が全て30cP以下で測定されて展延性に優れ、その硬化物は、鉛筆硬度が2H以上で耐スクラッチ性に優れることで現われた。
【0101】
これと比較して、脂肪族カルボビシクロ化合物を密封材組成物に含んでいない比較例の場合には、粘度は優れるが、鉛筆硬度がHで低く、一方、誘電率が3.52程度で高く現われた。
図1
図2