(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】導電性組成物、導電体及びレジストパターンの形成方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/12 20060101AFI20220614BHJP
C08L 101/14 20060101ALI20220614BHJP
C08L 39/06 20060101ALI20220614BHJP
H01B 1/12 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
C08L101/12
C08L101/14
C08L39/06
H01B1/12 Z
(21)【出願番号】P 2016159542
(22)【出願日】2016-08-16
【審査請求日】2019-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2015162388
(32)【優先日】2015-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】鵜澤 正志
(72)【発明者】
【氏名】山嵜 明
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-095060(JP,A)
【文献】特開2002-226721(JP,A)
【文献】国際公開第2014/017540(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
H01B1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともスルホン酸基又はカルボキシル基を有する導電性ポリマー(a)、末端疎水性基を有する水溶性ポリマー(b)及び溶剤(c)を含む導電性組成物であって、界面活性剤としては
下記一般式(6)で表される前記末端疎水性基を有する水溶性ポリマー(b)のみを含有し、前記導電性ポリマー(a)100質量部に対する前記水溶性ポリマー(b)の量が50~80質量部である導電性組成物。
【化2】
(式(6)中、R
34
、R
35
のうちの少なくとも一つは、アルキルチオ基、アラルキルチオ基、アリールチオ基である。nは2~100000の整数を表す。)
【請求項2】
前記溶剤(c)100質量部に対する前記導電性ポリマー(a)と前記水溶性ポリマー(b)の合計量が0.01質量部以上、1.0質量部未満である、請求項1記載の導電性組成物。
【請求項3】
前記水溶性ポリマー(b)がアミド基を含む、請求項1または2記載の導電性組成物。
【請求項4】
前記水溶性ポリマー(b)の末端疎水性基が、アルキルチオ基、アラルキルチオ基及びアリールチオ基から選ばれた少なくとも1種を含む、請求項1~3の何れか一項に記載の導電性組成物。
【請求項5】
前記導電性ポリマー(a)が、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む、請求項1~4の何れか一項に記載の導電性組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1~R
4は、各々独立に、水素原子、炭素数1~24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1~24の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、-F、-Cl、-Br又は-Iを表す。また、R
1~R
4のうちの少なくとも一つは酸性基又はその塩である。また、酸性基とは、スルホン酸基又はカルボン酸基を意味する。)
【請求項6】
基材と、基材の少なくとも一つの面上に設けられた、請求項1~
5の何れか一項に記載の導電性組成物を用いた塗膜を有する導電体。
【請求項7】
化学増幅型レジストからなるレジスト層を片面上に有する基板の前記レジスト層の表面に、請求項1~
5の何れか一項に記載の導電性組成物を塗布して帯電防止膜を形成する積層工程と、前記基板に対し、前記帯電防止膜の側から電子線をパターン状に照射する露光工程を有する、レジストパターンの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性組成物、導電体及びレジストパターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子線やイオン線等の荷電粒子線を用いたパターン形成技術は、光リソグラフィーの次世代技術として期待されている。荷電粒子線を用いる場合、生産性向上には、レジストの感度向上が重要である。
従って、露光部分又は荷電粒子線が照射された部分に酸を発生させ、続いて加熱処理(PEB:Post exposure bake)で架橋反応又は分解反応を促進させる高感度な化学増幅型レジストの使用が主流となっている。
【0003】
ところで、荷電粒子線を用いる方法においては、特に基材が絶縁性の場合、基材の帯電(チャージアップ)によって発生する電界が原因で、荷電粒子線の軌道が曲げられ、所望のパターンが得られにくいという課題があった。
この課題を解決する手段として、導電性ポリマーを含む導電性組成物をレジスト表面に塗布して塗膜を形成し、レジストに帯電防止機能を付与する技術が有効であることが既に知られている。
一般的に、導電性ポリマーを含む導電性組成物を、半導体の電子線リソグラフィー工程の帯電防止剤として適用する場合、導電性組成物の塗布性と、基材及び基材上に塗布されたレジスト等の積層物への影響は、トレードオフの関係にある。
例えば、導電性組成物の塗布性を向上させるために、界面活性剤等の添加物を添加した場合、界面活性剤がレジスト特性に悪影響を及ぼし、所定のパターンを得ることができないという問題がある。
このような問題に対し、特許文献1は、塗布性等に優れる導電性組成物として、末端疎水性基を有する水溶性ポリマーを含む導電性組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の導電性組成物を含む導電体は半導体デバイスの次世代プロセスへの適用が困難であり、例えば100℃以上の高温条件下で長時間使用した場合、基材に塗布されたレジスト等の積層物が腐食して、膜減りが生じるという問題があった。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みて成されたものであり、良好な塗布性、導電性を示し、基材に塗布されたレジスト等の積層物への影響(膜減り、硬化、パターン劣化等)が少ない塗膜を形成できる導電性組成物、及び前記導電性組成物を基材に塗布して形成される塗膜を含む導電体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが上記課題を解決するために検討した結果、導電性高分子に対する末端疎水性基を有する水溶性ポリマーの添加量を45~80質量部にすることで、塗布性を維持でき、基材に塗布されたレジスト等の積層物への影響が少ない塗膜を形成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の態様は、以下の特徴を有する。
[1]少なくともスルホン酸基又はカルボキシル基を有する導電性ポリマー(a)、末端疎水性基を有する水溶性ポリマー(b)及び溶剤(c)を含む導電性組成物であって、前記導電性ポリマー(a)100質量部に対する前記水溶性ポリマー(b)の量が45~80質量部である導電性組成物。
[2]前記溶剤(c)100質量部に対する前記導電性ポリマー(a)と前記水溶性ポリマー(b)の合計量が0.01質量部以上、1.0質量部未満である、[1]記載の導電性組成物;
[3]前記水溶性ポリマー(b)がアミド基を含む、[1]または[2]記載の導電性組成物。
[4]前記水溶性ポリマー(b)の末端疎水性基が、アルキルチオ基、アラルキルチオ基、アリールチオ基から選ばれた少なくとも1種を含む、[1]~[3]何れかに記載の導電性組成物。
[5]前記導電性ポリマー(a)が、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む、[1]~[4]の何れかに記載の導電性組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1~R
4は、各々独立に、水素原子、炭素数1~24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1~24の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、-F、-Cl、-Br又は-Iを表す。また、R
1~R
4のうちの少なくとも一つは酸性基又はその塩である。また、酸性基とは、スルホン酸基又はカルボン酸基を意味する。)
[6]前記水溶性ポリマー(b)が、下記一般式(6)で表される[1]~[5]の何れかに記載の導電性組成物。
【化2】
(式(6)中、R
34、R
35のうちの少なくとも一つは、アルキルチオ基、アラルキルチオ基、アリールチオ基である。nは2~100000の整数を表す。)
[7]基材と、基材の少なくとも一つの面上に設けられた、[1]~[6]の何れかに記載の導電性組成物を用いた塗膜を有する導電体。
[8]化学増幅型レジストからなるレジスト層を片面上に有する基板の前記レジスト層の表面に、[1]~[6]の何れかに記載の導電性組成物を塗布して帯電防止膜を形成する積層工程と、前記基板に対し、前記帯電防止膜の側から電子線をパターン状に照射する露光工程を有する、レジストパターンの形成方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の導電性組成物は、良好な塗布性、及び導電性を示し、基材に塗布されたレジスト等の積層物への影響が少ない塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において「導電性」とは、1011Ω/□以下の表面抵抗値を有することである。表面抵抗値とは、一定の電流を流した場合の電極間の電位差より求められる。
また、本発明において「溶解性」とは、(1)単なる水、(2)塩基及び/又は塩基性塩を含む水、(3)酸を含む水、(4)水と水溶性有機溶媒との混合物のうち、該(1)~(4)の何れか10g(液温25℃)に、0.1g以上均一に溶解することを意味する。
また、本発明において、「末端疎水性基」の「末端」とは、ポリマーを構成する繰り返し単位以外の部位を意味する。
【0011】
<導電性組成物>
本発明の導電性組成物は、少なくともスルホン酸基又はカルボキシル基を有する導電性ポリマー(a)、末端疎水性基を有する水溶性ポリマー(b)と、溶剤(c)とを含むものであり、その含有割合が(a)100質量部に対して(b)が45~80質量部である。
【0012】
[導電性ポリマー(a)]
本発明の導電性組成物において、導電性ポリマー(a)は、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する導電性ポリマーであれば、本発明の効果を有する限り特に限定されない。
具体的には、特開昭61-197633号公報、特開昭63-39916号公報、特開平1-301714号公報、特開平5-504153号公報、特開平5-503953号公報、特開平4-32848号公報、特開平4-328181号公報、特開平6-145386号公報、特開平6-56987号公報、特開平5-226238号公報、特開平5-178989号公報、特開平6-293828号公報、特開平7-118524号公報、特開平6-32845号公報、特開平6-87949号公報、特開平6-256516号公報、特開平7-41756号公報、特開平7-48436号公報、特開平4-268331号公報に示された導電性ポリマーなどが、溶解性の観点から好ましい。
【0013】
具体的には、α位若しくはβ位が、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されたフェニレンビニレン、ビニレン、チエニレン、ピロリレン、フェニレン、イミノフェニレン、イソチアナフテン、フリレン、及びカルバゾリレンからなる群から選ばれた少なくとも1種を繰り返し単位として含む、π共役系導電性ポリマーが挙げられる。
また、前記π共役系導電性ポリマーがイミノフェニレン、及びガルバゾリレンからなる群から選ばれた少なくとも1種の繰り返し単位を含む場合は、前記繰り返し単位の窒素原子上に、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する、又はスルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されたアルキル基、若しくはエーテル結合を含むアルキル基を前記窒素原子上に有する導電性ポリマーが挙げられる。
この中でも、導電性や溶解性の観点から、β位がスルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されたチエニレン、ピロリレン、イミノフェニレン、フェニレンビニレン、カルバゾリレン、及びイソチアナフテンからなる群から選ばれた少なくとも1種を繰り返し単位として含む導電性ポリマーが好ましく用いられ
る。
【0014】
また、本発明で用いる導電性ポリマー(a)は、導電性や溶解性の観点から、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0015】
【0016】
式(1)中、R1~R4は、各々独立に、水素原子、炭素数1~24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1~24の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、-F、-Cl、-Br又は-Iを表す。また、R1~R4のうちの少なくとも一つは酸性基又はその塩である。また、酸性基とは、スルホン酸基又はカルボン酸基を意味する。
ここで、スルホン酸基、及びカルボキシ基は、それぞれ酸の状態(-SO3H、-COOH)で含まれていてもよく、イオンの状態(-SO3-、-COO-)で含まれていてもよい。
また、「塩」とは、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩及び置換アンモニウム塩のうち、少なくとも一種を示す。
前記一般式(1)で表される繰り返し単位としては、製造が容易な点で、R1~R4のうち、いずれか1つが炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基であり、他のいずれか一つがスルホン酸基であり、残りが水素であるものが好ましい。
【0017】
また、導電性ポリマー(a)は、導電性や溶解性の観点から下記一般式(2)~(4)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
前記一般式(2)~(4)において、Xは硫黄原子、又は窒素原子を表し、R5~R15は各々独立に、水素原子、-F、-Cl、-Br、-I、-SO3H、-R16SO3H、-OCH3、-CH3、-C2H5、-F、-Cl、-Br、-I、-N(R17)2、-NHCOR17、-OH、-O-、-SR17、-OR17、-OCOR17、-NO2、-COOH、-R16COOH、-COOR17、-COR17、-CHO、及び-CNからなる群より選ばれる基を表す。ここで、R16は炭素数1~24のアルキレン基、炭素数1~24のアリーレン基、又は炭素数1~24のアラルキレン基を表し、R17は炭素数1~24のアルキル基、炭素数1~24のアリール基、又は炭素数1~24のアラルキル基を表す。
但し、一般式(2)のR5~R6、一般式(3)のR7~R10、一般式(4)のR11~R15のうち、それぞれ少なくとも一つは-SO3H、-R16SO3H、-COOH、-R16COOH、又はこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、及び置換アンモニウム塩からなる群より選ばれた基である。
【0022】
導電性ポリマー(a)において、ポリマー中の芳香環の総数に対するスルホン酸基、及びカルボキシ基の含有量が50%以上であることが好ましく、70%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましく、100%が最も好ましい。前記含有量が50%以上の導電性ポリマーであれば、溶解性が非常に良好となるため好ましい。
前記含有量は、導電性ポリマー(a)製造時の、モノマーの仕込み比から算出した値のことを指す。
【0023】
また、導電性ポリマー(a)において、繰り返し単位の芳香環上のスルホン酸基、又はカルボキシ基以外の置換基は、モノマーへの反応性付与の観点から電子供与性基が好ましく、具体的には、炭素数1~24のアルキル基、炭素数1~24のアルコキシ基、-F、-Cl、-Br又は-Iが好ましく、このうち、電子供与性の観点から、炭素数1~24のアルコキシ基であることが最も好ましい。
【0024】
本発明の導電性ポリマー(a)において、上述した繰り返し単位の組み合わせの中でも、溶解性の観点から、下記一般式(5)の構造式を有するポリマーであることが好ましく、前記一般式(5)の構造式を有するポリマーの中でも、ポリ(2-スルホ-5-メトキシ-1,4-イミノフェニレン)が特に好ましい。
【0025】
【0026】
式(5)中、R18~R33は、各々独立に、水素原子、炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基、酸性基、水酸基、ニトロ基、-F、-Cl、-Br又は-Iを表し、R18~R33のうち少なくとも一つは酸性基である。また、nは重合度を示す。本発明においては、nは5~2500の整数であることが好ましい。
【0027】
本発明の導電性ポリマー(a)に含有される酸性基は、導電性向上の観点から少なくともその一部が遊離酸型であることが望ましい。
また、導電性ポリマー(a)の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下、「GPC」という)のポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算で、導電性、溶解性及び成膜性の観点から、2000~100万であることが好ましく、3000~80万であることがより好ましく、5000~50万であることがさらに好ましく、1万~10万であることが特に好ましい。
導電性ポリマー(a)の質量平均分子量が2000未満の場合、溶解性には優れるものの、導電性、及び成膜性が不足する場合がある。
一方、質量平均分子量が100万より大きい場合、導電性には優れるものの、溶解性が不十分な場合がある。
ここで、「成膜性」とは、ハジキ等が無い均一な膜となる性質のことを指し、ガラス上へのスピンコート等の方法で評価することができる。
【0028】
導電性ポリマー(a)の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、本発明の効果を有する限り特に限定はされない。
具体的には、前述の繰り返し単位を有する重合性単量体を化学酸化法、電解酸化法などの各種合成法により重合する方法等が挙げられる。このような方法としては、例えば本発明者らが提案した特開平7-196791号公報、特開平7-324132号公報に記載の合成法などを適用することができる。
【0029】
本発明の導電性組成物において、導電性ポリマー(a)の含有量は、導電性組成物の総質量(100質量部)に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、0.05~20質量部であることがより好ましい。
【0030】
[水溶性ポリマー(b)]
本発明の導電性組成物において、水溶性ポリマー(b)は、炭素数4以上、好ましくは8以上の末端疎水性基を有するポリマーのことを指す。
本発明の導電性組成物において、水溶性ポリマー(b)は、界面活性剤としての役割とレジストへの影響を抑制する効果を有する。
このため、水溶性ポリマー(b)の導電性ポリマー(a)に対する添加量が重要となってくる。
本発明における導電性組成物において、導電性ポリマー(a)100質量部に対する水溶性ポリマー(b)の量は45~80質量部であり、好ましくは50~70質量部である。このように、水溶性ポリマー(b)の量を調整し、前述の導電性ポリマー(a)と組み合わせることにより、良好な塗布性を有し、基材に塗布されたレジスト等の積層物への影響が少ない塗膜を形成することができる。
また、水溶性ポリマー(b)は、溶解性の観点から、前記含窒素官能基がアミド基であることが好ましい。
【0031】
前記末端疎水性基としては、アルキル鎖、アラルキル鎖、アリール鎖を含めば、特に限定されない。
前記末端疎水性基としては、例えば、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アラルキルチオ基、アリールチオ基、一級または二級のアルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、アリールアミノ基等が挙げられる。
【0032】
本発明の導電性組成物において、前記水溶性ポリマー(b)は、溶解性や界面活性能の観点から、前記末端疎水性基が、炭素数4~100のアルキル鎖、炭素数4~100のアラルキル鎖、及び炭素数4~100のアリール鎖からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
また、前記末端疎水性基が、炭素数4~70のアルキル鎖、炭素数4~70のアラルキル鎖、及び炭素数4~70のアリール鎖からなる群より選択される少なくとも1つを含むことがより好ましく、炭素数8~30のアルキル鎖、炭素数8~30のアラルキル鎖、及び炭素数8~30のアリール鎖からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが、特に好ましい。
【0033】
ここで、前記末端疎水性基は、前記アルキル鎖、前記アラルキル鎖、及び前記アリール鎖からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましいが、溶解性や界面活性能の観点から、アルキル鎖と硫黄原子を有する前記アルキルチオ基、アラルキル鎖と硫黄原子を有する前記アラルキルチオ基、アリール鎖と硫黄原子を有するアリールチオ基であることが、より好ましい。
中でも、溶解性や界面活性能の観点から、アルキルチオ基が特に好ましい。
【0034】
本発明の水溶性ポリマー(b)は、末端疎水性基を有するポリマーである。水溶性ポリマー(b)の質量平均分子量は、100~100万であることが好ましく、100~10万であることがより好ましく、100~1万であることが特に好ましい。
【0035】
前記水溶性ポリマー(b)の主鎖構造としては、ビニルモノマーのホモポリマー、又はその他のビニルモノマーとのコポリマーであり、かつ水溶性であれば、本発明の効果を有する限り特に限定されない。また、主鎖構造に、含窒素官能基を含むことが好ましい。
前記含窒素官能基としては、アミド結合であることが好ましく、アミド結合を有するビニルモノマーとしては、アクリルアミド及びその誘導体、N-ビニルラクタム等が挙げられる。具体的には、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、t-ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N-ビニル-N-メチルアクリルアミド、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等が挙げられ、更にこの中でも、溶解性の観点から、アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等が特に好ましい。
【0036】
水溶性ポリマー(b)の末端疎水性基の導入方法は、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、ビニル重合時の連鎖移動剤を選択することにより導入する方法が、簡便で好ましい。
例えば、炭素数4以上の末端疎水性基を有する水溶性ポリマー(b)は、ビニルモノマーを、重合開始剤および炭素数4以上の連鎖移動剤の存在下で重合して製造することができる。
この場合、連鎖移動剤としては、上述の末端疎水性基を導入することのできるものであれば、本発明の効果を有する限り特に限定はされないが、好ましい末端疎水性基であるアルキルチオ基、アラルキルチオ基、アリールチオ基等を容易に得ることができる、チオール、ジスルフィド、チオエーテルなどを好ましく用いることができる。
【0037】
水溶性ポリマー(b)の主鎖構造部分の繰り返し単位、すなわち、上述のビニルモノマーの重合度は、前記水溶性ポリマー(b)の溶解性の観点から、2~100000が好ましく、2~1000がより好ましく、2~200が特に好ましい。
また、界面活性能の観点から、前記水溶性ポリマー(b)の、主鎖構造部分の分子量(以下、「水溶性部分の分子量」と言うこともある)と末端疎水性部分の分子量(以下、「疎水性部分の分子量」と言うこともある)の比、すなわち、(水溶性部分の分子量)/(疎水性部分の分子量)は、1~1500であることが好ましく、5~1000であることがより好ましい。ここで、「水溶性部分の分子量」、及び「疎水性部分の分子量」は、得られた水溶性ポリマー(b)の質量平均分子量と、主鎖構造部分を構成するモノマーと、末端疎水性部分を構成する連鎖移動剤の仕込み比から算出することができる。
【0038】
上記の中で、溶解性等の観点から、水溶性ポリマー(b)が、下記一般式(6)で表されるものであることが好ましい。
【化8】
(式(6)中、R
34、R
35のうちの少なくとも一つは、アルキルチオ基、アラルキルチオ基、アリールチオ基である。nは2~100000の整数を表す。)
【0039】
水溶性ポリマー(b)は、従来の界面活性剤とは異なり、主鎖構造部分(水溶性部分)と、末端疎水性基(疎水性部分)によって界面活性能を発現することができる。
そのため、酸、塩基を含まず、加水分解により生じる副生成物もないことから、基材や、基材上に塗布されたレジスト等の積層物に悪影響を与えることなく、塗布性を向上させることができる。
更に、水溶性ポリマー(b)の末端疎水性基を炭素数4以上、好ましくは8以上とすることにより、塗膜内で炭素鎖の絡み合いを大きくすることができ、強固な塗膜にすることができる。
これにより、レジスト層上に、当該導電性組成物を塗布して、塗膜を形成した場合、当該低分子量成分が、レジストとの界面に移行して、これらの表面を溶解することを抑制することができる。
【0040】
また、本発明の導電性組成物において、導電性ポリマー(a)と水溶性ポリマー(b)の合計量は、後述の溶剤(c)100質量部に対して、0.01質量部以上、1.0質量部未満であることが好ましく、0.1質量部以上、0.7質量部以下であることがより好ましい。
【0041】
[溶剤(c)]
本発明に用いられる溶剤(c)としては、導電性ポリマー(a)、及び水溶性ポリマー(b)を溶解することができる溶剤であれば、本発明の効果を有する限り特に限定はされないが、水、または水とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、エチルイソブチルケトン等のケトン類、エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル等のエチレングリコール類、プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のプロピレングリコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン等のピロリドン類等との混合系が好ましく用いられる。
溶剤(c)として、水との混合系を用いる場合、水/有機溶剤=1/100~100/1であることが好ましく、2/100~100/2であることがより好ましい。
【0042】
[高分子化合物(d)]
本発明の導電性組成物は、塗膜強度や表面平滑性を向上させる目的で、高分子化合物(d)を含有させることができる。
具体的には、ポリビニールホルマール、ポリビニールブチラール等のポリビニルアルコール誘導体類、ポリアクリルアミド、ポリ(N-t-ブチルアクリルアミド)、ポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸等のポリアクリルアミド類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸類、水溶性アルキド樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性尿素樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリブタジエン樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性ウレタン樹脂、水溶性アクリルスチレン共重合体樹脂、水溶性酢酸ビニルアクリル共重合体樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性スチレンマレイン酸共重合樹脂、水溶性フッ素樹脂及びこれらの共重合体が挙げられる。
【0043】
更に、本発明の導電性組成物は、必要に応じて顔料、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱性向上剤、レベリング剤、たれ防止剤、艶消し剤、防腐剤等の各種添加剤を含んでもよい。
【0044】
さらに、本発明の導電性組成物には、必要に応じて塩基性化合物(e)を添加することが出来る。この塩基性化合物(e)は導電性ポリマー(a)の酸性基と塩を形成し、中和する効果がる。中和により、レジストへの影響を抑制することが出来る。
【0045】
塩基性化合物(e)としては特に限定はされないが、導電性ポリマー(a)の酸性基と塩を形成しやすく、酸性基を安定化して帯電防止膜からの酸性物質のレジストパターンへの影響を抑制する効果に優れる点から、下記の第4級アンモニウム塩(e-1)および塩基性化合物(e-2)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
第4級アンモニウム塩(e-1):窒素原子に結合する4つの置換基のうちの少なくとも1つが炭素数3以上の炭化水素基である第4級アンモニウム化合物。
塩基性化合物(e-2):2つ以上の窒素原子を有する塩基性化合物。
【0046】
第4級アンモニウム化合物(e-1)において、4つの置換基が結合する窒素原子は、第4級アンモニウムイオンの窒素原子である。
化合物(e-1)において、第4級アンモニウムイオンの窒素原子に結合する炭化水素基としては、アルキル基、アラルキル基、アリール基等が挙げられる。
【0047】
第4級アンモニウム化合物(e-1)の具体例としては、例えば、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラペンチルアンモニウム、水酸化テトラヘキシルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
塩基性化合物(e-2)としては、例えば、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、及びそれらの誘導体等が挙げられる。
これらの塩基性化合物は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
【0048】
塩基性化合物(e)として、第4級アンモニウム化合物(e-1)および塩基性化合物(e-2)以外の他の塩基性化合物を混合することもできる。
【0049】
[導電体、及び積層体]
本発明の導電体は、基材と、前記基材の少なくとも1つの面に前記導電性組成物を塗布
することにより形成された塗膜とを含むものである。
また、本発明の積層体は、基材と、前記基材の少なくとも1つの面上形成されたレジスト層と、前記レジスト層上に、前記導電性組成物を塗布することにより形成された塗膜とを含むものである。
導電性組成物の基材への塗布方法としては、本発明の効果を有する限り特に限定はされないが、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ロールブラッシュ法、エアーナイフコート法、カーテンコート法等の手法が挙げられる。
【0050】
基材としては、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、PET、PBT等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンに代表されるポリオレフィン樹脂、塩化ビニル、ナイロン、ポリスチレン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリスルホン、ポリイミド、ポリウレタン、フェノール樹脂、シリコン樹脂、合成紙等の各種高分子化合物の成型品、及びフィルム、紙、鉄、ガラス、石英ガラス、各種ウエハ、アルミニウム、銅、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼等、及びこれらの基材表面に各種塗料や感光性樹脂、レジスト等がコーティングされているものなどを例示することができる。
前記基材に導電性組成物を塗布する工程は、これら基材の製造工程、例えば一軸延伸法、二軸延伸法、成形加工、又はエンボス加工等の工程前、または工程中に行っても良く、これら処理工程が完了した基材に対して行うこともできる。
また、本発明の導電性組成物は、塗布性が良好であるので、上記基材上に各種塗料や、感光性材料をコーティングした物に、導電性組成物を重ね塗りして塗膜を形成することも可能である。
【0051】
本発明の導電体の製造方法としては、前記導電性組成物を、前記基材の少なくとも一つの面上に塗布、乾燥して塗膜を形成した後、常温(25℃)で1分間~60分間放置する、あるいは加熱処理を行うことによって製造することができる。
加熱処理を行う場合の加熱温度としては、導電性の観点から、40℃~250℃の温度範囲であることが好ましく、60℃~200℃の温度範囲であることがより好ましい。また、処理時間は、安定性の観点から、1時間以内であることが好ましく、30分以内であることがより好ましい。
【0052】
本発明の導電性組成物は、導電体形成後、加熱することで、不溶性、又は剥離可能な可溶性の塗膜(導電性ポリマー膜)を有する導電体を形成することが可能である。
これにより、永久帯電防止膜、及びプロセス上の一時的帯電防止膜の両面での適用が可能となるという利点を有する。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、以下の実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0054】
<導電性評価>
導電性組成物を、ガラス基材上に、スピンコート塗布(2000rpm×60秒間)した後、ホットプレートにて80℃、2分間加熱処理を行い、膜厚約30nmの塗膜を形成して導電体を得た。
得られた導電体の表面抵抗値[Ω/□]を、ハイレスタMCP-HT260(三菱化学社製)を用い2端子法(電極間距離20mm)にて測定した。
【0055】
<膜減り評価>
(レジストの膜減り量)
化学増幅型電子線レジストは一般に入手が出来ないため、市販されているKrF用の化学増幅ポジ型レジスト(和光純薬社製MWPポリマー等が挙げられる。以下、「レジスト」と略す。)を使用し、レジストの膜減り量を以下の手順で評価した。
(1)レジスト膜形成:4インチシリコンウエハー(基板)上に化学増幅型レジスト0.4umを2000rpm/60秒間で回転塗布した後、130℃で90秒間プリベークを行って、溶剤を除去した。
(2)レジスト膜厚測定:基板上に形成されたレジストを一部剥離し、基板面を基準位置として、触針式段差計(Stylus profiler P-16+、 KLA-Tencor Corporation製)を用いて初期のレジスト膜厚A(nm)を測定した。
(3)帯電防止膜形成:基板上に塗布されたレジスト表面に、本発明の導電性組成物2mlを滴下し、レジスト表面全面を覆うように配置した後、スピンコーターにて2000rpm/60秒間で回転塗布して膜厚20nmの帯電防止膜を作成した。
(4)ベーク処理:帯電防止膜とレジストが積層された基板を、空気雰囲気下、ホットプレ-トにて、120℃、20分間加熱し、その後基板を空気雰囲気下、常温(25℃)で90秒間静置した。
(5)水洗:帯電防止膜を、20mlの水で洗い流した後、スピンコーターにて2000rpm/60秒間で回転させ、レジスト表面の水を除去した。
(6)現像:2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液よりなる現像液20mlをレジスト表面に滴下した。60秒間静置した後、2000rpmで回転させて現像液を除去し、その後60秒間回転を維持して乾燥させた。
(7)前記(2)でレジストを一部剥離した部分から5mm以内の部分のレジストを一部剥離した後、触針式段差計を用い現像後のレジスト膜厚B(nm)を測定した。
(8)上記Aの値からBを差し引いてレジストの膜減り量C(C=A-B)を算出した。
〇:膜減りが10nm以下
×:膜減りが10nm超
【0056】
<表面平滑性評価>
導電性組成物を4インチシリコンウエハーにスピンコート塗布(2000rpm×60sec)した後に、ホットプレートで80℃×2分乾燥し、膜厚約20nmの塗膜を形成して導電体を得た。
得られた導電体の表面平滑性(nm)を触針式段差計(stylus profiler P-16+、KLA-Tencor社製)を用いて測定した。
〇:表面平滑性が0.7nm以下
△:表面平滑性が0.7nm超1.0nm以下
×:表面平滑性が1.0nm超
【0057】
[製造例1]
<導電性ポリマー溶液(a-1)>
2-アミノアニソール-4-スルホン酸5molを、2mol/Lのピリジンのアセトニトリル水溶液(水/アセトニトリル=5:5)3000mLに25℃で溶解し、モノマー溶液を得た。別途、ペルオキソ二硫酸アンモニウム5molを、アセトニトリル水溶液(水/アセトニトリル=5:5)4Lに溶解し、酸化剤溶液を得た。ついで、前記酸化剤溶液を0℃に冷却しながら、前記モノマー溶液を滴下した。滴下終了後、更に25℃で12時間攪拌して、導電性ポリマーを含む反応混合物を得た。その後、前記反応混合物から導電性ポリマーを遠心濾過器にて濾別した。得られた導電性ポリマーをメタノールにて洗浄した後、乾燥させ、粉末状の導電性ポリマー500gを得た。
得られた導電性ポリマー2.0gを100mlの水に溶解し、導電性ポリマー水溶液としたのちに、イオン交換樹脂(オルガノ社製、アンバーライトIR-120B)にて陽イオンを交換し、導電性ポリマー溶液(a-1)を製造した。
【0058】
[製造例2]
<水溶性ポリマー(b-1)>
ビニルモノマーとして、N-ビニルピロリドン55g、重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル1g、末端疎水性基導入のための連鎖移動剤として、n-オクチルメルカプタン0.16gを、溶剤であるイソプロピルアルコール100mlに攪拌溶解して反応溶液を得た。その後、予め80℃に加熱しておいたイソプロピルアルコール中に、前記反応溶液を1ml/minの滴下速度で滴下し、滴下重合を行った。滴下重合は、イソプロピルアルコールの温度を80℃に保ちながら行われた。滴下終了後、80℃で更に2時間熟成した後、放冷した。その後、減圧濃縮を行い、得られた反応物を少量のイソプロピルアルコールに再溶解させた。この反応物のイソプロピルアルコール溶液を、過剰のイソプロピルエーテルに滴下することで得られた白色沈殿を濾別し、イソプロピルエーテルで洗浄した後乾燥させ、35gの水溶性ポリマー(b-1)を得た。
【0059】
[製造例3]
<水溶性ポリマー(b-2)>
ビニルモノマーとして、N-ビニルピロリドン100g、重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル10g、末端疎水性基導入のための連鎖移動剤として、n-ドデシルメルカプタン4gを、溶剤であるイソプロピルアルコール100mlに攪拌溶解して反応溶液を得た。その後、予め80℃に加熱しておいたイソプロピルアルコール中に、前記反応溶液を4時間で滴下し、滴下重合を行った。滴下重合は、イソプロピルアルコールの温度を80℃に保ちながら行われた。滴下終了後、80℃で更に2時間熟成した後、放冷した。その後、減圧濃縮を行い、得られた反応物を少量のイソプロピルアルコールに再溶解させた。この反応物のイソプロピルアルコール溶液を、過剰のイソプロピルエーテルに滴下することで得られた白色沈殿を濾別し、イソプロピルエーテルで洗浄した後乾燥させ、75gの水溶性ポリマー(b-2)を得た。
【0060】
[製造例4]
<水溶性ポリマー(b-3)>
ビニルモノマーとして、N-ビニルピロリドン55g、重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル1g、末端疎水性基導入のための連鎖移動剤として、1-ブタンチオール0.10gを、溶剤であるイソプロピルアルコール100mlに攪拌溶解して反応溶液を得た。その後、予め80℃に加熱しておいたイソプロピルアルコール中に、前記反応溶液を1ml/minの滴下速度で滴下し、滴下重合を行った。滴下重合は、イソプロピルアルコールの温度を80℃に保ちながら行われた。滴下終了後、80℃で更に2時間熟成した後、放冷した。その後、減圧濃縮を行い、得られた反応物を少量のイソプロピルアルコールに再溶解させた。この反応物のイソプロピルアルコール溶液を、過剰のイソプロピルエーテルに滴下することで得られた白色沈殿を濾別し、イソプロピルエーテルで洗浄した後乾燥させ、35gの水溶性ポリマー(b-3)を得た。
【0061】
[実施例1~11、比較例1~3]
<導電性組成物の調製>
製造例で得られた導電性ポリマー(a)、及び水溶性ポリマー(b)を用いて、表1の通り、導電性組成物を調製した。
【0062】
【表1】
IPA:イソプロピルアルコール
DBN:1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン
TBAH:水酸化テトラブチルアンモニウム
【0063】
実施例1~11では、導電性ポリマー(a)100質量部に対する水溶性ポリマー(b)の量が45~80質量部の範囲であるため、膜減り及び表面平滑性が良好なのに対して、30、100、200質量部である比較例1~3は膜減りが不良となった。また、導電性組成物中の固形分含有量が1.0質量%を超える比較例3では表面平滑性も悪い結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、良好な塗布性、導電性を示し、基材、及び基材に塗布されたレジスト等の積層物への影響が少ない塗膜を形成できる導電性組成物、及び導電体を提供することが出来る。