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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】光変調器及びそれを用いた光送信装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/03 20060101AFI20220614BHJP
   G02F 1/035 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
G02F1/03 505
G02F1/035
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017230088
(22)【出願日】2017-11-30
(65)【公開番号】P2019101140
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 徳一
(72)【発明者】
【氏名】菅又 徹
【審査官】井部 紗代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-134241(JP,A)
【文献】特開2015-055840(JP,A)
【文献】特開2016-212130(JP,A)
【文献】国際公開第2002/089274(WO,A1)
【文献】特開2015-045790(JP,A)
【文献】特開2008-276145(JP,A)
【文献】特開2014-199302(JP,A)
【文献】米国特許第06590691(US,B1)
【文献】特開2016-142855(JP,A)
【文献】特開2016-126054(JP,A)
【文献】特開2014-071352(JP,A)
【文献】特開2015-143765(JP,A)
【文献】特開2014-167545(JP,A)
【文献】特開2015-197451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00 - 1/125
G02F 1/21 - 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路が形成された光導波路基板と、
該光導波路基板に設けられ、該光導波路に電界を印加する制御電極と、
該光導波路基板の一側面側に配置され、該制御電極に外部からの電気信号を中継する電気配線を備えた中継基板と
該光導波路基板と該中継基板とを収容する筐体を備え、該筐体の一側面であって、該中継基板の近傍の側面には入出力用ピンを配置した光変調器において、
該制御電極が信号電極を有し、
該信号電極を終端する終端抵抗を含む終端手段を複数備え、
該終端手段の少なくとも一つは、該中継基板に設けられ、
該光導波路を伝搬する光波の一部又は該光導波路から放射される放射光の一部を受光する受光素子を有し、
該受光素子からの受光信号を外部に導出するための受光用電気配線が、該中継基板を介さず、該光導波路基板と該入出力用ピンとの間を直接接続するワイヤーボンディングであり、該ワイヤーボンディングの長さは、該光導波路基板と該中継基板とを接続する電気接続ワイヤより長いことを特徴とする光変調器。
【請求項2】
請求項1に記載の光変調器において、
1つの終端手段には、少なくとも2つ以上の終端抵抗が設けられていることを特徴とする光変調器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光変調器において、
該制御電極が信号電極とDCバイアス電極とを備え、
該中継基板には、少なくとも該DCバイアス電極にDCバイアス電圧を中継する電気配線が設けられていることを特徴とする光変調器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の光変調器において、
前記複数の終端手段は、該光導波路基板の両側面側に分けて配置され、
該中継基板が配置された一側面側の該終端手段は、該中継基板に設けられていることを特徴とする光変調器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の光変調器において、
該受光素子は、該光導波路基板上に配置されていることを特徴とする光変調器。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれかに記載の光変調器において、
該光導波路基板と該中継基板とを搭載する筐体を備え、
該中継基板の厚さは、該光導波路基板よりも薄く形成され、
該中継基板が搭載される該筐体の搭載面と、該光導波路基板が搭載される該筐体の搭載面との間には段差が形成されていることを特徴とする光変調器。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれかに記載の光変調器と、
該光変調器に印加するデータ信号を発生するデータ発生部と、
該光変調器に光波を入力する光源とを備えることを特徴とする光送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器及びそれを用いた光送信装置に関し、特に、信号電極の終端に終端抵抗を配置した終端手段を備えた光変調器及びそれを用いた光送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速/大容量光ファイバ通信システムにおいて、光導波路を形成した基板を利用する光変調器や、そのような光変調器を組み込んだ光送信装置が多用されている。中でも、電気光学効果を有するLiNbO(「LN」という。)を基板に用いた光変調器は、InPやSiやGaAsなどの半導体系材料の変調器に比べ、高速/大容量光ファイバ通信システムに広く用いられている。このLNを用いた光変調器には、光をLN基板中に閉じ込め導波する光導波路を備え、さらに、光導波路に電界を印加する制御電極が形成されている。また、制御電極には、高周波信号を印加するRF電極(信号電極)と、低周波信号やDCバイアス電圧が印加するDCバイアス電極がある。
【0003】
近年の伝送容量の増大化の流れを受け、高速/大容量光ファイバ通信システム用の光変調器の変調方式は、従来の強度変調(On-Off keying)などから、位相変調を用いたQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、やDP-QPSK(Dual Polarization - Quadrature Phase Shift Keying)等、多値変調や多値変調に偏波多重を取り入れた伝送フォーマットが主流になっている。更に、このDP-QPSKチップを複数用い多素子化し、より伝送容量を高めることも提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
図1に示すように、DP-QPSK光変調器では、2つのマッハツェンダー型光導波路で構成されるネスト型光導波路を2つ配置した光導波路2をLN等の基板(光導波路基板)1に形成している。さらに、各マッハツェンダー型光導波路が構成する変調部に、変調信号を印加するため、基板1上には複数の信号電極(不図示)を備えている。各信号電極には、入力用コネクタ4を介して変調信号が入力される。また、信号電極の終端には、終端抵抗70が接続されている。各信号電極に対応して終端抵抗70が設けられる場合は、図1のように、複数の終端抵抗70を同一の終端基板7上に設け、光変調器の小型化を図る場合がある。LN等の基板(光導波路基板)1や終端基板7は、筐体9内に配置され、パッケージ化される。
【0005】
光変調器は高速で動作させるため、入力される電気信号が信号電極を伝搬して行く進行波型の電極構成が用いられる。信号電極に入力する信号周波数は、マイクロ波帯の高周波信号であり、これら入力された電気エネルギーは殆ど全て終端抵抗70で消費され、ここで熱に変換される。
【0006】
DP-QPSKでは、4つの変調部を持っている。本構成にて位相変調方式に対応するためには、従来の単一変調器構造の強度変調方式の2倍の電圧振幅(電力は4倍)で駆動される。このため、変調器内で消費される電力は、従来の単一変調器構造の変調器と比較して16倍以上になっている。しかも、光変調器の小型化要求に対応するために、終端基板7を光導波路基板1に近接して配置する必要があり、終端基板で発生する熱が大きな問題となっている。
【0007】
しかも、このDP-QPSK変調器構成を2個以上に同一筐体に組み込んで、伝送容量の向上を図る多素子化の場合、この発熱量は従来の単一変調器構造の強度変調方式の32倍以上の熱が発生することとなる。終端基板で発生した熱は、光変調器の温度ドリフトを劣化させる。また、終端抵抗自身の発熱は、終端抵抗の経時劣化や割れ・剥離等を発生させる要因となり、光変調器及びそれを用いた光送信装置の信頼性を損なうなど、深刻な問題となっている。
【0008】
これら終端基板での発熱の影響は、進行波型の電極構成を取る殆どの光変調器に内在するが、従来はこの問題について殆ど検討、対策がなされていなかった。むしろ、この発熱の影響は、光変調器が置かれる環境の温度変化や、光変調器の不安定性の中に紛れ込み、本来の光変調器が持つ温度ドリフト等の特性劣化の問題として扱われていた。
【0009】
しかしながら、これら影響は、DP-QPSK構成の光変調器などのように、(a)入力電気信号の振幅が大きいもの、(b)終端抵抗が複数有るもの、(c)終端抵抗が同一基板に有るものにおいては、特に影響が大きくなり、問題が深刻化してきた。しかも、光変調器が、(d)小型化すること、(e)複数素子化(多素子化)することにより、その影響が更に深刻化してきている。
【0010】
この様な終端抵抗による発熱の問題を低減する対策として、特許文献2に示すように、終端抵抗の面積を大きくしたり、熱伝導孔を終端基板に設けたりすることが提案されている。しかしながら、これら構成、方法では終端基板自体が、大きくなり、また製造コストも増加するため、適応できる用途に制限が生じる。このため、様々な伝送フォーマットに適応でき、小型化や低コスト化の要請に合致した解決策が望まれている。また、発熱対策を施した光変調器を搭載することで、温度ドリフトが抑圧され、信頼性の高い光送信装置が求められている。
【0011】
また、特許文献3では、終端基板での発熱の影響が光導波路基板に及ぶのを抑制するため、終端基板から光導波路基板への熱量の伝達を抑制する方法を提案した。しかしながら、光変調器の更なる小型化や、終端基板での発熱の影響の抑制に対するニーズは益々高まっており、更なる改善が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2015-69162号公報
【文献】特開2014-199302号公報
【文献】特開2017-134241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、上述したように、終端抵抗による発熱の影響を抑制した光変調器やそれを用いた光送信装置を提供することである。特に、DP-QPSK光変調器のように、複数の信号入力、複数の終端抵抗を有する光変調器において、より顕著となる、終端抵抗の発熱を抑制することである。さらには、効果的な発熱対策を施すことにより、小型化、多素子化、そして、低コスト化にも対応した光変調器やそれを用いた光送信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の光変調器及びそれを用いた光送信装置は、以下のような技術的特徴を有する。
(1) 光導波路が形成された光導波路基板と、該光導波路基板に設けられ、該光導波路に電界を印加する制御電極と、該光導波路基板の一側面側に配置され、該制御電極に外部からの電気信号を中継する電気配線を備えた中継基板と、該光導波路基板と該中継基板とを収容する筐体を備え、該筐体の一側面であって、該中継基板の近傍の側面には入出力用ピンを配置した光変調器において、該制御電極が信号電極を有し、該信号電極を終端する終端抵抗を含む終端手段を複数備え、該終端手段の少なくとも一つは、該中継基板に設けられ、該光導波路を伝搬する光波の一部又は該光導波路から放射される放射光の一部を受光する受光素子を有し、該受光素子からの受光信号を外部に導出するための受光用電気配線が、該中継基板を介さず、該光導波路基板と該入出力用ピンとの間を直接接続するワイヤーボンディングであり、該ワイヤーボンディングの長さは、該光導波路基板と該中継基板とを接続する電気接続ワイヤより長いことを特徴とする。
【0015】
(2) 上記(1)に記載の光変調器において、1つの終端手段には、少なくとも2つ以上の終端抵抗が設けられていることを特徴とする。
【0016】
(3) 上記(1)又は(2)に記載の光変調器において、該制御電極が信号電極とDCバイアス電極とを備え、該中継基板には、少なくとも該DCバイアス電極にDCバイアス電圧を中継する電気配線が設けられていることを特徴とする。
【0017】
(4) 上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の光変調器において、前記複数の終端手段は、該光導波路基板の両側面側に分けて配置され、該中継基板が配置された一側面側の該終端手段は、該中継基板に設けられていることを特徴とする。
【0018】
(5) 上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の光変調器において、該受光素子は、該光導波路基板上に配置されていることを特徴とする。
【0020】
) 上記(1)乃至()のいずれかに記載の光変調器において、該光導波路基板と該中継基板とを搭載する筐体を備え、該中継基板の厚さは、該光導波路基板よりも薄く形成され、該中継基板が搭載される該筐体の搭載面と、該光導波路基板が搭載される該筐体の搭載面との間には段差が形成されていることを特徴とする。
【0021】
) 上記(1)乃至()のいずれかに記載の光変調器と、該光変調器に印加するデータ信号を発生するデータ発生部と、該光変調器に光波を入力する光源とを備えることを特徴とする光送信装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、信号電極を終端する終端抵抗を含む終端手段を複数備え、該終端手段の少なくとも一は、中継基板に設けられているため、終端手段自体よりもより大きい基板により、終端抵抗で発生する熱を効率的に拡散放出することが可能となる。これにより、終端手段の局所的な発熱を抑え、光導波路基板への発熱の影響を抑制することが可能となる。しかも、終端手段のための基板(終端基板)を別途設けることも不要となり、装置全体の小型化、多素子化、そして、低コスト化にも寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】従来のDP-QPSK光変調器の例を示す平面図である。
図2】本発明に係る光変調器の第1の実施例を示す平面図である。
図3】本発明に係る光変調器の第2の実施例を示す平面図である。
図4】本発明に係る光変調器の第3の実施例を示す平面図である。
図5】本発明に係る光変調器の第4の実施例を示す平面図である。
図6】本発明に係る光変調器の第5の実施例を示す平面図である。
図7】本発明に係る光変調器の第6の実施例を示す図である。
図8】本発明に係る光変調器の第7の実施例を示す図である。
図9】本発明に係る光変調器の第8の実施例を示す図である。
図10】光変調器の一例を示す断面図である。
図11】本発明の光変調器を光送信装置に組み込んだ例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る光変調器について、図2乃至11を用いて詳細に説明する。
図2乃至6は、光変調器の平面図であり、本発明において、光導波路が形成された光導波路基板1と、該光導波路基板に設けられ、該光導波路に電界を印加する制御電極(不図示)と、該光導波路基板の近傍に配置され、該制御電極に外部からの電気信号を中継する電気配線を備えた中継基板3とを備えた光変調器において、該制御電極が信号電極を有し、該信号電極を終端する終端抵抗70を含む終端手段Tを備え、該終端手段の少なくとも一部は、該中継基板3に設けられていることを特徴とする。
【0025】
光導波路基板1としては、LiNbOやLiTaO等の誘電体やInPやSi等の半導体を用いたものなどがある。本発明の光変調器においても、光導波路基板の材料は特に限定されないが、従来から公知の誘電体や半導体の基板を用いることできる。また、光導波路の形成に際しても、LiNbOの誘電体基板にTiを熱拡散させ光導波路を形成する方法やリッジ型光導波路など、公知の技術を用いることが可能である。
【0026】
光導波路基板には、光導波路2に沿って、制御電極が形成されている。制御電極としては、高周波信号で変調動作をおこなうための信号電極や、バイアス制御のためDCバイアス電極が形成される。図2等では、制御電極の入力端部(バッド部)のみが描かれている。制御電極は、光導波路基板に下地電極のパターンを形成し、その後、メッキ法でAuなどで数十μmの厚みの電極が形成される。
【0027】
光導波路の構成は、1つのマッハツェンダー型光導波路、2つのマッハツェンダー型光導波路を入れ子型に配置した、所謂、ネスト型光導波路である。さらに、図2乃至6にも開示されているDP-QPSK光変調器などのように、ネスト型光導波路を2つ配置したものなど、種々の光導波路の形状を用いることができる。図2乃至6では、光変調器の一例を示しており、入力用光ファイバ20で入力された光波は、光導波路2を伝搬する際に、不図示の制御電極により光変調を受ける。光導波路基板1より出射した光波は、偏波合成手段8により、偏波合成され、出力用光ファイバ21に入射される。
【0028】
また、光導波路の変調部に入力電気信号を印加する信号電極の数についても、図2等に示すように、4つの信号電極を備えたDP-QPSK光変調器に限らず、シングル型(変調用の信号電極が1箇所)、デュアル型(変調用の信号電極が2箇所)、DQPSK構成変調器(変調用の信号電極が2箇所)など、種々のものに本発明は適用可能である。特に、信号電極の数が多い程、本発明は効果的に適用可能であり、例えば、DP-QPSK光変調器を2個組み込み、入力電気信号が8箇所ある多素子化した構成には、特に効果的に適用できる。
【0029】
光導波路基板の近傍には、中継基板3が配置される。また、必要に応じて終端基板7を配置することも可能である。中継基板や終端基板に用いられる材料はマイクロ波帯等の高周波で使用されるため、高周波特性に優れたアルミナ等のセラミック材料などが多く使われる。中継基板上には、光導波路基板の制御電極に、入出力用ピン4から入力される電気信号やDCバイアス電圧を中継するための電気配線の一部又は全部が形成されている。また、入出力用ピン4と中継基板3上の電気配線30との間や、中継基板3の電気配線30と光導波路基板1の制御電極の入力端部との間は、Au等の導電ワイヤーによりワイヤーボンディングされている。
【0030】
本発明の光変調器の特徴は、図2等に示すように、中継基板3に、終端手段Tを設けることである。信号電極の終端には変調信号を吸収し反射を抑制するための終端抵抗70が設けられている。従来は、図1にも示すように、終端抵抗70を組み込む終端基板7として形成していたが、1つの基板内に組み込む終端抵抗の数が増え、終端抵抗の発熱量が増加したため、終端基板全体が大きな熱源となり、光導波路基板を加熱するなどの不具合が顕在化している。このような不具合を解消するため、図2等に示すように、終端抵抗70の少なくとも一部を終端手段Tとして中継基板3に組み込んでいる。また、終端手段Tを設ける中継基板としては、光導波路基板のDCバイアス電極にDCバイアス電圧を中継する電気配線が少なくとも形成された中継基板を用いることが好ましい。光導波路基板の信号電極に高周波信号を中継する電気線路のみが形成される中継基板に終端手段Tを設けることも可能である。ただし、その場合には、終端手段から漏出した高周波信号が、信号電極へ電気信号を入力する電気線路に混入しないよう、対策を施すことが不可欠となる。
【0031】
図2に示すように、1つの終端手段Tには、コストや組立上の容易性から、少なくとも2つ以上の終端抵抗70が設けられていることが好ましい。1つの光変調器に設けられる終端抵抗の素子数は、光変調器の構成、電極設計、筐体設計に応じて適宜選択される。図2のDP-QPSK構成の光変調器では4個の終端抵抗が設けられ、その一部が終端手段Tとして中継基板3に形成されている。また、残りの終端抵抗70は、従来の終端基板7として形成されている。
【0032】
図2の第1の実施例のように、終端抵抗の一部を中継基板3に設けたもの以外に、図3の第2の実施例に示すように、全ての終端抵抗70を終端手段Tとして、中継基板に設けることも可能である。中継基板3に終端手段を設けることにより、終端手段自体より大きな面積や体積を有する基板を利用でき、終端抵抗で発生した熱を効率的に、基板全体に拡散・放出することができる。
【0033】
また、光変調器には、図4乃至6に示すように、バイアス制御等を行うため、光導波路を伝搬する光波の一部や、光導波路から放射される放射光を検出するための受光素子PDが設けられる。受光素子は、図4等のように光導波路基板1上に配置される場合だけでなく、光導波路基板1の近傍に配置され、当該基板から放出される光波を検出するよう構成することも可能である。
【0034】
受光素子から出力される検出(受光)信号は、図4に示すように、光導波路基板1上の配線を介して、中継基板3上の受光用電気配線31に伝送され、入出力用ピン41で外部に出力される。中継基板3に終端手段Tを設ける場合には、終端抵抗70で終端される高周波信号の一部が、終端抵抗70から放出され、受光用電気配線31に入り込み、検出信号のノイズとなり得る。受光素子PDの検出信号は、バイアス制御に使用される特定の周波数成分を含んでおり、高周波信号の擾乱・ノイズに対しより影響を受けやすい。
【0035】
本発明では、図4の第3の実施例のように、終端手段Tと受光用電気配線31とを同一の中継基板3に配置する場合には、両者の間隔を離して配置し、終端手段Tから漏れ出る高周波信号が、受光用電気配線31内に混入しないよう構成することが、好ましい。
【0036】
受光素子PDを設ける場合には、図5の第4の実施例に示すように、中継基板を2つの基板(33及び34)で形成し、終端手段Tを設ける基板33と受光用電気配線31を形成する基板34とを分離して構成することも可能である。このように基板が異なると、高周波信号の混入が効果的に抑制される。
【0037】
さらに、図6の第5の実施例のように、受光用電気配線は、中継基板に形成せず、ワイヤーボンディング6で代替することも可能である。ボンディングによる工数は若干増加するものの、受光素子PDの配置設計や各種配線パターン等の配置設計など、設計の自由度を大きく向上させる事が出来ると共に、受光素子PDの信号ラインと終端抵抗が形成された中継基板を隔離する事が可能となり、好適な実施例となる。なお、図5及び6では、入出力用ピン41は、受光素子の検出信号を出力するものであり、入出力用ピン43は、DCバイアス電圧を供給するものである。入出力用ピン44は、主に変調用の電気信号を供給するものである。なお一部は、DCバイアス用にも使用されても良い。
【0038】
また、図7乃至9に示すように、中継基板3に設けられた終端手段Tと受光用電気配線31との間には、DCバイアス電圧を中継する電気配線33、接地電極G、又は該中継基板に形成される溝Cの少なくとも1つが設けられても良い。このような構成を設けることで、終端抵抗70から漏れ出る高周波信号が受光用電気配線31に混入することを抑制することが可能となる。図8の接地電極Gは、終端手段に設けられた接地電極に電気的に接続されているが、これに限らず、制御電極への電気配線に使用される接地電極に電気的に接続しても良いし、別途、筐体等に接地しても良い。
【0039】
中継基板の放熱効果を高め、光導波路基板への熱伝導を抑制する方法として、中継基板の厚さは、光導波路基板よりも薄く形成され、該中継基板が搭載される該筐体の搭載面と、該光導波路基板が搭載される該筐体の搭載面との間には段差が形成されている構成を採用することが可能である。
【0040】
中継基板に使用されるセラミック材料は一般的に金属材料と比べ熱伝導性に劣るため、終端基板で発生した熱を効率的に基板外へ移すため、終端基板を薄板化することが効果的である。
【0041】
中継基板3の薄板化の厚さは、基板に用いる材料の強度、熱伝導性、大きさなど総合的に考慮し選定する必要があるが、少なくとも光導波路が形成され、中継基板の横に設置するチップ(光導波路基板)の厚さ(通常0.5mm~2.0mm)より薄くすることが好ましい。終端抵抗で発生する熱の放熱を考えると薄ければ薄いほど有利であるが、機械的強度や制御電極への電気線路のインピーダンスや終端抵抗のインピーダンスの設計を考慮すると、0.05mmから0.8mmの範囲に設定することが好適である。
【0042】
図10に示すように、筐体9の中継基板3の上面、光導波路基板1の実装面は、電気信号の劣化を抑制するため、互いに略同一高さとなるように構成されている。中継基板3の薄板化に伴い、中継基板3の下の筐体の厚みを、光導波路基板1の下の筐体の厚みより厚く構成し、両者の間に段差を構成している。この段差により、特許文献3でも説明したように、中継基板から光導波路基板への熱伝導を抑制することが可能となる。さらに、段差部分に溝(不図示)を形成したり、中継基板3の先端を段差から突出させる構成などを組み合わせることで、さらに熱伝導を抑制する効果を高めることが可能となる。
【0043】
図11は、本発明の光変調器を搭載した光送信装置の構成例である。
光送信装置の基本構成は、光変調器に導入する光波を発生する光源、光変調器、光変調器に信号を印加するデータ生成部、及び光変調器から発生する変調光を外部に導出するための光ファイバから構成される。
【0044】
光送信装置は、稼働を開始させると光変調器が温度ドリフトする。伝送特性を高品質で安定化させるため、光変調器の動作点を適切な状態を保つよう制御しながら運用することは必要となる。この温度ドリフトは、従来、光源やデータ生成部など光変調器周辺機器の発熱の影響、と考えられていた。
【0045】
しかしながら、DP-QPSK光変調器や小型光変調器などにおいては、光送信装置の稼働開始直後に大きな温度ドリフトが発生し、光伝送装置の伝送特性が非常に不安定になる場合が発生している。この原因の1つは、光変調器自身の内部にある終端抵抗の発熱が影響している。特に、高周波信号を複数入力する光変調器構成や、複数の終端抵抗を同一基板に形成する場合、入力信号の振幅が大きい場合、さらには光変調器を小型にした場合等に、特に当該現象が顕著となる。
【0046】
この問題に対し、本発明を施した光変調器を光送信装置に配置することにより、終端抵抗の発熱による温度ドリフトを低減することができ、伝送特性を高品で安定化させることができる。
【0047】
上述した実施例は、LiNbO基板を用いたDP-QPSK光変調器の構成に限らず、終端抵抗を有する光変調器であり、終端抵抗の発熱が光変調器の特性に影響を及ぼすものであれば、変調方式に依らず本発明を適用できる。また、光導波路基板は、InPやSi等半導体系材料のものでも良いし、LiNbO基板を用いた場でも、XcutやZcutなど結晶方位に依らず、本発明が適用できることは言うまでもない。
【0048】
また、上述した実施例では、終端抵抗だけが終端手段に形成された例を示したが、コンデンサやその他の電子部品、貫通導体や多層化含めた電子回路が同じ終端手段に組み込まれても良い。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上、説明したように、本発明によれば、温度ドリフトが抑圧され信頼性の高い、小型で低コストな光変調器を提供することができる。また本発明の光変調器を搭載した、高信頼で温度ドリフトが抑圧された光送信装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 光導波路基板
2 光導波路
3,33,34 中継基板
30,32,35 電気配線
31 受光用電気配線
4 入出力用ピン(コネクタ)
6 電気接続ワイヤ(Auボンディング)
7 終端基板
9 筐体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11